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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
管理番号 1364842
審判番号 不服2019-7689  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-10 
確定日 2020-08-06 
事件の表示 特願2015-108877「制御システム及び操作端末」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-225747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年5月28日に出願された特願2015-108877号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 8月 3日付け:拒絶理由の通知
平成30年11月 2日 :意見書及び手続補正書の提出
平成31年 3月 6日付け:拒絶査定
令和 1年 6月10日 :拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の 提出
令和 2年 2月 5日付け:当審による拒絶理由の通知
令和 2年 4月20日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和2年4月20日にした手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
所定の処理を行う処理部と、
前記処理部において前記所定の処理を行う複数の電動機と、
複数の前記電動機を操作する中央制御部と、
前記中央制御部との間で情報を送信及び受信し、複数の前記電動機を操作可能な操作部と、を備え、
前記中央制御部は、プログラムによって前記電動機を操作する機能、及び、前記操作部からの情報に基づいて前記電動機を操作する機能を有し、
一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される制御システム。」

第3 拒絶の理由
当審が令和2年2月5日付けで通知した拒絶の理由は、概略、次のとおりである。

1 請求項1、5及び6に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-30496号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 請求項1及び5に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-152505号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
(1)「【0014】
図1は本発明を実施するためのシステム構成例を示す。プラント設備現場に設置されている監視・制御対象である機器に取り付けてあるセンサやアクチュエータの一例である熱電対1や弁・コントロールドライブ2に演算処理を行う演算装置8-1,8-2(これらを「演算装置」と総称する。アクチュエータの如くの機能と、熱電対の如くの機能とが一体的であっても、或いは、別体であっても、「演算装置」に含まれる。すなわち、分散的に配置されていても、該機能を有していれば「演算装置」に含まれる。)とそれぞれに無線通信のための通信機器7-1,7-2を接続する。また、プラント設備を制御する制御装置3やプラントデータを元に計算を行うユニット計算機4が設置されている部屋のそれぞれの制御装置・ユニット計算機にも無線通信のための通信機器7-3,7-4を接続する(プラント設備を制御する制御装置3とユニット計算機4とを総称して「制御装置」と称する)。中央制御室にはプラント情報の集中管理のためのヒューマンマシンインターフェース装置5(或いは、単に監視装置と称する。なお、制御機能をも有していても、表示機能を有すれば「監視装置」に含まれる)を置いても良い。これにも無線通信のための通信機器7-5を接続する。持ち運び自由な携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6は無線通信のための通信機器7-6を接続することでプラント内の場所を選ばない。これらの機器は無線通信によりプラント情報を共有する構成にする。このように、プラント設備現場,制御装置・計算機室,中央制御室すべてを無線通信によりプラント情報を共有する構成にする。」

(2)「【0023】
図4はプラント情報をヒューマンマシンインターフェース装置5または携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6で表示するときのデータの流れを示す。プラント設備を監視するために設置されている熱電対などのセンサによって取得されたプロセスデータ101はそのまま、あるいは各センサによって定められる変換を行うことによって得られる工学値102を伝送データとし、エバネセント通信などの無線通信装置7により常時あるいは定期的に送信される(103)。制御装置3,ユニット計算機4,ヒューマンマシンインターフェース装置5,携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6などにそれぞれ設置されている無線通信装置7によりそれらのデータは受信され(105)、制御,計算,監視に使用される(106)。また、同様に、制御装置3で制御に使用したデータやユニット計算機4で計算に使用したデータも無線通信によりヒューマンマシンインターフェース装置5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6に通信させることも可能であり、運転員はヒューマンインターフェース装置(あるいはヒューマンマシンインターフェース装置と称する。以下同様)5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6でプラントデータの表示を行うことでプラント機器状態の監視が可能になる。
【0024】
図5はヒューマンマシン装置5または携帯型ヒューマンマシン装置(あるいは携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置と称する。以下同様)6からプラント機器を操作するときのデータの流れを示す。前述のようにヒューマンマシンインターフェース装置5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6によりプラント機器の状態を監視しながら(111)、または携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6により実機の近傍などで機器を見ることができる運転員により機器を観察しながら(111)、運転員に入力された制御要求(あるいはCRTオペレーション操作と称する。以下同様)112はエバネセント通信などの無線通信装置7-5,7-6により無線送信(あるいは無線通信と称する。以下同様)114される。無線通信装置7-3により無線受信されたデータを制御装置3で演算することにより制御信号に変換されてアクチュエータなどの操作端2に出力される。
【0025】
制御装置3からの信号はヒューマンマシンインターフェース装置5または携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6による制御要求と制御装置3内で行われるフィードバック制御などの自動モード時の制御信号が競合して操作端2に出力されることはない。また、ある操作端に対して一つの制御要求が出されている状態のとき、新たに他のヒューマンマシンインターフェース装置や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置から同じ操作端に対して別の制御要求が出された場合は制御装置3内で制御中であることを示すフラグを使用することにより競合を回避する。同様に、操作端2に対して制御要求が出されているときには操作端2に取り付けてある演算装置8-2内で制御中であることを示すフラグを使用することでも可能となる。」

(3)「【0032】
また、必要なときに運転員がプラント機器の近傍でプラント機器を直接観察しながらタイムロスなしに操作可能となるため、CRTオペレーション操作の操作性を向上させることができ、中央操作室要員と現場パトロール要員の兼任が可能となるため、少人化の効果がある。また、プラント機器を観察している運転員が直接、制御要求の抑止操作が可能となるため、安全性能向上の効果もある。また、制御装置の負荷分散・高信頼性確保が可能となる。」

(4)図1及び図5は、次のとおりである。




2 引用発明1
上記1(1)?(4)の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「プラント設備現場に設置されている監視・制御対象である機器と、
当該機器に取り付けてあるセンサやアクチュエータの一例である熱電対1や弁・コントロールドライブ2に演算処理を行う演算装置8-1,8-2(これらを「演算装置」と総称する。アクチュエータの如くの機能と、熱電対の如くの機能とが一体的であっても、或いは、別体であっても、「演算装置」に含まれる。)と、
無線通信のための通信機器7-3,7-4がそれぞれ接続される、プラント設備を制御する制御装置3及びプラントデータを元に計算を行うユニット計算機4(総称して「制御装置」と称する。)と、
中央制御室に置かれ、無線通信のための通信機器7-5が接続された、プラント情報の集中管理のためのヒューマンマシンインターフェース装置5、及び、プラント内の場所を選ばない、無線通信のための通信機器7-6が接続された、持ち運び自由な携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6を備え、
プラント設備現場,制御装置・計算機室,中央制御室すべてを無線通信によりプラント情報を共有する構成にしたシステムであって、(【0014】、図1)
制御装置3で制御に使用したデータやユニット計算機4で計算に使用したデータを無線通信によりヒューマンマシンインターフェース装置5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6に通信させることが可能であり、(【0023】)
携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6によりプラント機器の状態を監視しながら(111)、または携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6により実機の近傍などで機器を見ることができる運転員により機器を観察しながら(111)、運転員に入力された制御要求112が無線通信装置7-5,7-6により無線送信114され、無線通信装置7-3により無線受信されたデータを制御装置3で演算することにより制御信号に変換されてアクチュエータなどの操作端2に出力され、(【0024】、図5)
制御装置3からの信号はヒューマンマシンインターフェース装置5または携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6による制御要求と制御装置3内で行われるフィードバック制御などの自動モード時の制御信号が競合して操作端2に出力されることはなく、(【0025】)
必要なときに運転員がプラント機器の近傍でプラント機器を直接観察しながらタイムロスなしに操作可能となる、(【0032】)
システム。」

3 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「【背景技術】
【0002】
上下水道、工場設備、発電所等のプラント設備には、プラント設備を正常に稼働させるためにプラント監視制御システムが設置されている。プラント監視制御システムは、流量計や濁度計等の計測機器から得られる情報を収集して、プラント機器の監視を行うと共に、広大な敷地に設置されているポンプや弁等のプラント機器を制御する。
プラント監視制御システムは、ネットワークにプラントコントローラとマルチコントローラが接続されて構成される。マルチコントローラは複数のプラント機器の制御情報系統を集約する。そして、マルチコントローラはプラントコントローラから送信される制御指令を受信して、その制御指令に基づいて制御対象となるプラント機器を制御する。また、マルチコントローラはプラント機器等に設置されている計測機器から得られる情報をプラントコントローラに送信する。
【0003】
プラント機器の制御方法は、自動制御と手動制御に分けられる。
自動制御は、プラント機器を正常状態に維持するために、プラントコントローラが所定のプログラムに従って、人手を介することなくプラント機器を制御する。
手動制御は、プラント機器を正常状態に維持するために、操作者がプラント機器に対して直接的に手作業の制御命令を送信する。
手動制御は更に、中央監視装置を用いてプラントコントローラを通じて行う手動制御と、プラント機器が備える操作盤を直接操作する手動制御と、現場携帯端末を用いた手動制御に分けられる。特に、近年ではプラント機器を点検したり、異常が発生した時に対応する際に、機器を目視しながら監視制御を行うことができる、無線通信を用いる現場携帯端末が利用され始めている。特許文献1及び特許文献2に現場携帯端末の一例を示す。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の現場携帯端末は、マルチコントローラに集約されたプラント機器の情報を、プラントコントローラを介してゲートウェイから無線ネットワークを介して受信することで、プラント設備の監視を行っていた。つまり、従来の現場携帯端末は、プラントコントローラがなくてはプラント設備の監視や制御が遂行出来なかった。
ところが、プラント設備の定期点検や、プラント設備を増設したり改良する等の際には、プラントコントローラを停止させることもある。また、プラント設備の運営時に、不慮の事故等でプラントコントローラが故障することも想定される。このような場合、プラントコントローラが停止しているため、現場携帯端末はマルチコントローラからプラント機器の情報を受信できない。したがって、プラントコントローラが停止している状態では、プラント機器を監視及び制御する手段は、プラント機器が備える操作盤を直接操作する手動制御以外になくなってしまう。
【0006】
特に、上下水道は市民の生活に不可欠なインフラであるので、上下水道のプラント設備は常に正常に運営されることが求められている。万一、上下水道のプラント設備に異常が発生した場合は、その状況をすぐに把握した上で対応しなければならない。よって、上下水道のプラント設備は常時監視制御が行われる必要がある。
しかし、先に述べたように、上下水道のプラント設備のプラントコントローラが停止・故障した場合には、プラント機器の異常の発見が遅れたり、プラント機器が誤動作したり、プラント機器を動かすモータ等に過負荷等に起因する事故が発生する可能性が生じる。つまり、上下水道のプラント設備のプラントコントローラが停止・故障した場合、プラント設備の信頼性を保つことができない。」

(3)「【0026】
本実施形態のプラント監視制御システム101は、従来のものと異なり、現場携帯端末106がマルチコントローラ104と直接通信を行う。現場携帯端末106は、プラント機器110の状態情報をマルチコントローラ104から直接取得すると共に、操作モードが「現場」で、制御モードが「手動制御」の場合は、現場携帯端末106がプラントコントローラ103を介さずにマルチコントローラ104に対して直接制御コマンドを送信する。」

4 引用発明2
上記3(2)の「従来の現場携帯端末は、プラントコントローラがなくてはプラント設備の監視や制御が遂行出来なかった。」(【0005】)及び(3)の「本実施形態のプラント監視制御システム101は、従来のものと異なり、現場携帯端末106がマルチコントローラ104と直接通信を行う。現場携帯端末106は、・・・操作モードが「現場」で、制御モードが「手動制御」の場合は、現場携帯端末106がプラントコントローラ103を介さずにマルチコントローラ104に対して直接制御コマンドを送信する。」(【0026】)の記載によれば、上記3(1)及び(2)に背景技術として記載された「従来の現場携帯端末」は、「手動制御の場合は、現場携帯端末106がプラントコントローラ103を介」して「制御コマンドを送信」することが把握できる。

したがって、引用文献2には、「従来のプラント監視制御システム」として、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「上下水道、工場設備、発電所等のプラント設備に設置され、流量計や濁度計等の計測機器から得られる情報を収集して、プラント機器の監視を行うと共に、広大な敷地に設置されているポンプや弁等のプラント機器を制御するプラント監視制御システムであって、(【0002】)
ネットワークにプラントコントローラとマルチコントローラが接続されて構成され、
マルチコントローラは複数のプラント機器の制御情報系統を集約し、
マルチコントローラはプラントコントローラから送信される制御指令を受信して、その制御指令に基づいて制御対象となるプラント機器を制御し、プラント機器等に設置されている計測機器から得られる情報をプラントコントローラに送信し、(【0002】)
プラント機器の制御方法は、自動制御と手動制御に分けられ、
自動制御は、プラント機器を正常状態に維持するために、プラントコントローラが所定のプログラムに従って、人手を介することなくプラント機器を制御し、
手動制御は、プラント機器を正常状態に維持するために、操作者がプラント機器に対して直接的に手作業の制御命令を送信する制御であり、中央監視装置を用いてプラントコントローラを通じて行う手動制御と、プラント機器が備える操作盤を直接操作する手動制御と、現場携帯端末を用いた手動制御に分けられ、
プラント機器を点検したり、異常が発生した時に対応する際に、機器を目視しながら監視制御を行うことができる、無線通信を用いる現場携帯端末が利用され、(【0003】)
現場携帯端末は、マルチコントローラに集約されたプラント機器の情報を、プラントコントローラを介してゲートウェイから無線ネットワークを介して受信することで、プラント設備の監視を行い、(【0005】)
手動制御の場合は、現場携帯端末106がプラントコントローラ103を介して制御コマンドを送信する、(【0005】、【0026】)
プラント監視制御システム」

第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明1との対比・判断
(1)対比
ア 引用発明1の「プラント設備」又は「プラント設備現場に設置されている監視・制御対象である機器」は、本願発明の「所定の処理を行う処理部」に相当する。また、引用発明1の「アクチュエータなどの操作端2」は、本願発明の「前記処理部において前記所定の処理を行う」「電動機」に対応する。

イ 引用発明1の「プラント設備を制御する制御装置3及びプラントデータを元に計算を行うユニット計算機4(総称して「制御装置」と称する。)」は、「無線通信装置7-3により無線受信されたデータを制御装置3で演算することにより制御信号に変換」し、「アクチュエータなどの操作端2に出力」するから、本願発明の「前記電動機を操作する中央制御部」に対応する。

ウ 引用発明1の「中央制御室に置かれ、無線通信のための通信機器7-5が接続された、プラント情報の集中管理のためのヒューマンマシンインターフェース装置5、及び、プラント内の場所を選ばない、無線通信のための通信機器7-6が接続された、持ち運び自由な携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6」は、「プラント機器の状態を監視しながら(111)、または携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6により実機の近傍などで機器を見ることができる運転員により機器を観察しながら(111)、運転員に入力された制御要求112」を「制御装置3」に「無線通信装置7-5,7-6により無線送信」することで「アクチュエータなどの操作端2」を操作する。また、「制御装置3で制御に使用したデータやユニット計算機4で計算に使用したデータを無線通信によりヒューマンマシンインターフェース装置5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6に通信させることも可能」である。
よって、引用発明1の「ヒューマンマシンインターフェース装置5」及び「携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6」は、本願発明の「前記中央制御部との間で情報を送信及び受信し、複数の前記電動機を操作可能な操作部」に相当する。

エ 引用発明1の「制御装置」(総称)は「制御装置3内で行われるフィードバック制御などの自動モード」で「アクチュエータなどの操作端2」を操作する機能も有するといえるから、本願発明の「中央制御部」と同様、「前記電動機を操作する機能」を有するといえる。
また、引用発明1の「制御装置」(総称)は、「ヒューマンマシンインターフェース装置5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6」から「無線通信装置7-5,7-6により無線送信」された「制御要求」を、「無線通信装置7-3により無線受信」し、「制御信号に変換」して「アクチュエータなどの操作端2に出力」することにより「アクチュエータなどの操作端2」を操作するといえる。よって、本願発明の「中央制御部」と同様、「前記操作部からの情報に基づいて前記電動機を操作する機能を有」するといえる。
以上より、引用発明1の「制御装置」(総称)は、本願発明の「中央制御部」と同様、「前記電動機を操作する機能、及び、前記操作部からの情報に基づいて前記電動機を操作する機能を有」するといえる。

したがって、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「所定の処理を行う処理部と、
前記処理部において前記所定の処理を行う電動機と、
前記電動機を操作する中央制御部と、
前記中央制御部との間で情報を送信及び受信し、前記電動機を操作可能な操作部と、を備え、
前記中央制御部は、前記電動機を操作する機能、及び、前記操作部からの情報に基づいて前記電動機を操作する機能を有する、
制御システム。」

<相違点1>
「電動機」が、本願発明では、「複数の電動機」であり、「中央制御部」及び「操作部」によって「複数の電動機」を操作するのに対し、引用発明1では、「複数の電動機」であるか特定がない点。

<相違点2>
本願発明では、「一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される」のに対し、引用発明1では、「一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される」ことについて特定がない点。

<相違点3>
中央制御部が電動機を操作する機能が、本願発明では、「プログラムによって」操作するのに対し、引用発明1では、「プログラムによって」操作することについて特定がない点。

(2)判断
ア 相違点1について
プラント設備には複数の電動機が存在することは当然であり、引用発明1においても、複数のアクチュエータなどの操作端が存在することは明らかである。
したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

イ 相違点2について
操作者が操作手段により1つの電動機を操作する場合に、当該操作手段による他の電動機の操作を禁止することは、周知技術(例えば、特開2000-244990号公報(特に、【0001】、【0030】-【0034】、図4)参照。)であり、引用発明1において、1つの「ヒューマンマシンインターフェース装置5や携帯型ヒューマンマシンインターフェース装置6」で1つの「操作端」を操作する場合に、他の「操作端」の操作を禁止すること(請求項1の「一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される」ことに相当。)は、当業者が適宜なし得ることにすぎない。

ウ 相違点3について
引用発明1の「制御装置」(総称)は、「自動モード時」には、「制御装置3内で行われるフィードバック制御など」を「自動」で行い、「操作端2」に「制御信号」を出力して操作を行うものであるところ、これを「プログラムによって」行うことは、当業者が適宜なし得る。

2 本願発明と引用発明2との対比・判断
(1)対比
ア 引用発明2の「プラント監視制御システム」において、「上下水道、工場設備、発電所等のプラント設備」、「複数の」「広大な敷地に設置されているポンプや弁等のプラント機器」、「プラントコントローラ」は、それぞれ本願発明の「所定の処理を行う処理部」、「前記処理部において前記所定の処理を行う複数の電動機」、「複数の前記電動機を操作する中央制御部」に対応する。

また,引用発明2の「現場携帯端末」は,「プラント機器の情報を、プラントコントローラを介してゲートウェイから無線ネットワークを介して受信することで、プラント設備の監視を行」って,「プラントコントローラ103を介して制御コマンドを送信」するから,「前記中央制御部との間で情報を送信及び受信」しており,また,「広大な敷地に設置されているポンプや弁等のプラント機器を制御する」にあたり「機器を目視しながら監視制御を行うことができる」のであるから,「複数の前記電動機を操作可能」である。
つまり,引用発明2の「現場携帯端末」は,本願発明の「前記中央制御部との間で情報を送信及び受信し、複数の前記電動機を操作可能な操作部」に対応する。

イ 引用発明2では、「プラント機器の制御方法は、自動制御と手動制御に分けられ」、「自動制御は、プラント機器を正常状態に維持するために、プラントコントローラが所定のプログラムに従って、人手を介することなくプラント機器を制御」する。
また、引用発明2の「手動制御」には、「プラント機器を正常状態に維持するため」の「現場携帯端末を用いた手動制御」が含まれ、「手動制御の場合は、現場携帯端末106がプラントコントローラ103を介して制御コマンドを送信」する。
よって、本願発明と引用発明2とは、「前記中央制御部は、プログラムによって前記電動機を操作する機能、及び、前記操作部からの情報に基づいて前記電動機を操作する機能を有」する点で一致するといえる。

したがって、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「 所定の処理を行う処理部と、
前記処理部において前記所定の処理を行う複数の電動機と、
複数の前記電動機を操作する中央制御部と、
前記中央制御部との間で情報を送信及び受信し、複数の前記電動機を操作可能な操作部と、を備え、
前記中央制御部は、プログラムによって前記電動機を操作する機能、及び、前記操作部からの情報に基づいて前記電動機を操作する機能を有する、
制御システム。」

<相違点>
本願発明では、「一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される」のに対し、引用発明2では、「一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される」ことについて特定がない点。

(2)判断
上記1の相違点2について検討したのと同様に、プラント設備において、操作者が操作手段により1つの電動機を操作する場合に、当該操作手段による他の電動機の操作を禁止することは、周知技術(例えば、特開2000-244990号公報(特に、【0001】、【0030】-【0034】、図4)参照。)であり、引用発明2において、現場携帯端末を用いて1つのポンプや弁等のプラント機器を手動制御により操作する場合に、他のプラント機器の操作を禁止すること(請求項1の「一の前記操作部により一の電動機を操作する場合には、一の当該操作部による他の電動機の操作が禁止される」ことに相当。)は、当業者が適宜なし得る。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-30496号公報に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-152505号公報に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-05-29 
結審通知日 2020-06-02 
審決日 2020-06-16 
出願番号 特願2015-108877(P2015-108877)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 北岡 浩
中野 浩昌
発明の名称 制御システム及び操作端末  
代理人 特許業務法人雄渾  

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