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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1364845 |
審判番号 | 不服2019-8576 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-26 |
確定日 | 2020-08-06 |
事件の表示 | 特願2015- 19215「偏光板,液晶パネル及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 8日出願公開,特開2016-142942〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2015-19215号(以下「本件出願」という。)は,平成27年2月3日の出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成30年10月16日付け:拒絶理由通知書 平成30年12月25日付け:意見書 平成30年12月25日付け:手続補正書 平成31年 4月 3日付け:拒絶査定 令和 元年 6月26日付け:審判請求書 令和 元年 6月26日付け:手続補正書 令和 元年 9月 4日付け:上申書 2 補正について (1) 本件補正前の特許請求の範囲 令和元年6月26日にした手続補正(以下「本件補正」という。)前の(平成30年12月25日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1及び請求項4の記載は,以下のとおりである。 ア 請求項1 「 吸収型の偏光子と, 前記偏光子の上に配置され,380?500nmの波長域内にある青色光の透過を抑制する青色光透過抑制層と, 前記偏光子における前記青色光透過抑制層とは反対側に配置され,面内位相差値が10nm以下である熱可塑性樹脂フィルムと, を含む,偏光板。」 イ 請求項4 「 前記青色光透過抑制層と前記偏光子との間に配置される熱可塑性樹脂フィルムをさらに含む,請求項1?3のいずれか1項に記載の偏光板。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。 「 吸収型の偏光子と, 前記偏光子の上に配置され,380?500nmの波長域内にある青色光の透過を抑制する青色光透過抑制層と, 前記偏光子における前記青色光透過抑制層とは反対側に配置され,面内位相差値が10nm以下である熱可塑性樹脂フィルムと, 前記青色光透過抑制層と前記偏光子との間に配置される熱可塑性樹脂フィルムと, を含む,偏光板。」 3 補正について 請求項1についてした本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を削除して,請求項4を請求項1とする補正と考えることができる。 したがって,請求項1についてした本件補正は,特許法17条の2第5項1号に掲げる事項(36条5項に規定する請求項の削除)を目的とするものである。 4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,概略,本件補正前の請求項4に係る発明は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である,特開2014-202864号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 なお,周知技術を示す文献として,本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,国際公開第2014/185318号(以下「引用文献2」という。)が挙げられている。 第2 当合議体の判断 1 本願発明 本件出願の請求項1?請求項7に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,前記「第1」2(2)に記載したとおりのものである。 2 引用文献等の記載及び引用発明 (1) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2014-202864号公報)は,本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は,液晶表示装置に関し,特に,液晶表示パネルの一部に特定範囲波長の光の透過率を低下させる樹脂層を形成した液晶表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来,液晶表示装置の光源装置であるバックライトの光源には,金属陰極を用いた蛍光管である冷陰極管が使用されていた。しかしながら,…(省略)…バックライトの光源としては,冷陰極管から白色LEDへの置換えが進んでいる。 …(省略)… 【0004】 白色LEDとしては,…(省略)…高い発光効率を得られることなどから,擬似白色LEDが多用されている。 …(省略)… 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 前述した擬似白色LEDは,図9に示すように,波長470nm付近と波長575nm付近とにピークを持つ分光特性を示す。このうち,波長470nm付近にピークを持つ光は,発光素子である青色LEDの主要ピークである。 …(省略)… 【0012】 青色LEDから発光される光は,いわゆるブルーライトと呼ばれる波長380?495nmの光である。このブルーライトは,紫外線に最も近い性質を持っており,眼球の角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達する性質があるため,ブルーライトを長時間見た場合には,目が疲れ易くなるなどの不具合が懸念される。 【0013】 また,24時間の生体リズムを持つ人間は,朝日の青色光を全身に浴びることにより身体が覚醒し,夕暮れのオレンジ色の光を浴びることにより休眠状態へと導かれる。そのため,ブルーライトを含む光を夜間に浴びると生体リズムに乱れが生じ,昼間に疲れが残るなどの不具合も懸念される。 …(省略)… 【0015】 本発明の目的は,バックライト光源から発光され,液晶表示パネルを透過する光のうち,所定波長範囲の光の量を低減することのできる液晶表示装置を提供することにある。」 イ 「【発明を実施するための形態】 【0022】 …(省略)… 【0023】 (実施の形態1) 図1は,本実施の形態1の液晶表示装置の要部断面図である。本実施の形態1の液晶表示装置20Aは,エッジライト方式を採用した携帯端末向け液晶表示装置であり,観察者側(図1においては上側)から順に,波長430?480nmの光の透過を抑制する樹脂層1,液晶表示パネル2,バックライト光源である白色LED9と反射板,導光板など数枚の光学フィルムとで構成されたバックライトアセンブリ10を備えている。 【0024】 液晶表示パネル2は,第1偏光板3と,ガラスなどの透明な絶縁材料からなる第1基板4および第2基板5と,第2偏光板8とを有している。液晶表示パネル2の前面側,すなわち観察者側に配置された第1基板4,および液晶表示パネル2の裏面側に配置された第2基板5は,枠状のシール材6を介して互いに貼り合わされており,シール材6の内側には,第1基板4および第2基板5によって挟持された液晶層7が配置されている。シール材6は,この液晶層7を囲むように,液晶表示パネル2の表示領域よりも外側の周辺部に配置されている。 …(省略)… 【0027】 第1基板4の前面に配置された樹脂層1は,紫外線もしくは可視光によって硬化する光硬化性樹脂や,透明エポキシ樹脂などからなるベース樹脂に着色材を所定量混合した透明材料で構成されている。 …(省略)… 【0034】 図2のグラフの実線は,上記の樹脂材料を第1偏光板3の表面に200μm塗布して得られた樹脂層1の光透過率を示している。図示のように,この樹脂層1は,波長430?480nmの光の透過率が40?60%であった。 …(省略)… 【0036】 液晶表示パネル2の前面側に上記樹脂層1を設けた本実施の形態1の液晶表示装置20Aによれば,樹脂層1を設けない場合と比較してわずかに黄色味がかった表示になるが,観察者に照射されるブルーライトが抑制されるため,目に優しいだけでなく,生体リズムにも配慮した液晶表示装置を実現することができる。 …(省略)… 【産業上の利用可能性】 【0060】 本発明は,白色LEDをバックライト光源に用いた液晶表示装置に適用することができる。」 ウ 図1 「 ![]() 」 エ 図2 「 ![]() 」 オ 図9 「 ![]() 」 (2) 引用発明 引用文献1の【0023】?【0036】には,【図1】とともに,引用文献1でいう「本実施の形態1の液晶表示装置」として,次の「液晶表示装置」の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,「透明材料」と「樹脂材料」は,「樹脂材料」に用語を統一した。 「 観察者側から順に,波長430?480nmの光の透過を抑制する樹脂層1,液晶表示パネル2,バックライト光源である白色LED9とバックライトアセンブリ10を備えた液晶表示装置であって, 液晶表示パネル2は,第1偏光板3と,ガラスなどの透明な絶縁材料からなる第1基板4及び第2基板5と,第2偏光板8とを有し,第1基板4及び第2基板5は,枠状のシール材6を介して互いに貼り合わされており,シール材6の内側には,第1基板4及び第2基板5によって挟持された液晶層7が配置され, 第1基板4の前面に配置された樹脂層1は,ベース樹脂に着色材を所定量混合した樹脂材料で構成され, 樹脂材料を第1偏光板3の表面に200μm塗布して得られた樹脂層1は,波長430?480nmの光の透過率が40?60%である, 観察者に照射されるブルーライトが抑制されるため,目に優しいだけでなく,生体リズムにも配慮した液晶表示装置。」 (3) 引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(国際公開第2014/185318号)は,本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ,そこには,以下の記載がある。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は,画像表示装置に関するものである。 …(省略)… 発明を実施するための形態 [0009] 本発明の画像表示装置は,画像表示セル,及び画像表示セルよりも視認側に位置する偏光板を有し,前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層されており,偏光子保護フィルムの少なくとも一方は,活性エネルギー線硬化性接着剤を介して偏光子と積層されており,画像表示セルよりも視認側に紫外線吸収性粘着層を有する。」 イ 「[0011]2.偏光板及び偏光子保護フィルム 一般的に,液晶ディスプレイは画像表示セルの両側に偏光板を有する。この場合,視認側の偏光板を視認側偏光板,光源側の偏光板を光源側偏光板と称する。 …(省略)… [0012] 偏光板は,フィルム状の偏光子の両側を2枚の保護フィルム(「偏光子保護フィルム」という)で挟んだ構造を有する。偏光子は,当該技術分野において使用される任意の偏光子(又は偏光フィルム)を適宜選択して使用することができる。代表的な偏光子としては,ポリビニルアルコール(PVA)フィルム等にヨウ素等の二色性材料を染着させたものを挙げることができるが,これに限定されるものではなく,公知及び今後開発され得る偏光子を適宜選択して用いることができる。 …(省略)… [0016] 視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルムの種類は任意であり,従来から保護フィルムとして使用されるフィルムを適宜選択して使用することができる。例えば,ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート,及びポリエチレンナフタレート等)フィルム,ポリカーボネートフィルム,ポリスチレンフィルム,トリアセチルセルロース(TAC)フィルム,アクリルフィルム,及び環状オレフィン系フィルム(例えば,ノルボルネン系フィルム),ポリプロピレンフィルム,及びポリオレフィン系フィルム(例えば,TPX)などが挙げられる。 [0017] 視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルム及び光源側偏光子の保護フィルムの種類は任意であり,従来から保護フィルムとして使用されるフィルムを適宜選択して使用することができる。取り扱い性及び入手の容易性といった観点から,例えば,トリアセチルセルロース(TAC)フィルム,アクリルフィルム,及び環状オレフィン系フィルム(例えば,ノルボルネン系フィルム),ポリプロピレンフィルム,及びポリオレフィン系フィルム(例えば,TPX)等から成る群より選択される一種以上の複屈折性を有さないフィルムを用いることが好ましい。」 ウ 「[0021] 視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルムおよび視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルムの少なくともいずれか一方が低透湿性フィルムである場合には,揮発成分のない活性エネルギー線硬化性接着剤が用いられる場合が多く,本発明を適応する上で好ましい形態である。中でも視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルムが低透湿性フィルムであると高温多湿での反りや偏光子機能の低下を抑制できるため好ましい。」 3 対比及び判断 (1) 対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア 偏光子,青色光透過抑制層 引用発明の「液晶表示装置」は,「観察者側から順に,波長430?480nmの光の透過を抑制する樹脂層1,液晶表示パネル2,バックライト光源である白色LED9とバックライトアセンブリ10を備えた」ものである。また,引用発明の「液晶表示パネル2」は,「第1偏光板3と,ガラスなどの透明な絶縁材料からなる第1基板4及び第2基板5と,第2偏光板8とを有し」ている。 ここで,上記「樹脂層1」の光に対する機能からみて,引用発明の「樹脂層1」は,380?500nmの波長域内にある青色光の透過を抑制する層,すなわち青色光透過抑制層といえる。また,液晶表示装置に用いられる偏光板が,少なくとも偏光子として機能するフィルムを具備することは,技術常識である。そして,「樹脂層1」及び「第1偏光板3」の位置関係からみて,引用発明の「樹脂層1」は,偏光子として機能するフィルムの,視認側に配置されたものといえる。加えて,「視認側」を「上」と捉えることは,当業者の随意である。 そうしてみると,引用発明の「液晶表示装置」と本願発明の「偏光板」は,「偏光子と」,「前記偏光子の上に配置され,380?500nmの波長域内にある青色光の透過を抑制する青色光透過抑制層と」,「を含む」点で共通する。 イ 偏光板 上記アの相当関係を踏まえると,引用発明の「第1偏光板3」及び「樹脂層1」を併せたものは,本願発明でいう「偏光板」に相当する。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 本願発明と引用発明は,次の構成において一致する。 「 偏光子と, 前記偏光子の上に配置され,380?500nmの波長域内にある青色光の透過を抑制する青色光透過抑制層と, を含む,偏光板。」 イ 相違点 本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。 (相違点1) 「偏光子」が,本願発明は,「吸収型の」ものであるのに対して,引用発明は,「吸収型の」ものとは特定されていない点。 (相違点2) 「偏光板」が,本願発明は,「前記偏光子における前記青色光透過抑制層とは反対側に配置され,面内位相差値が10nm以下である熱可塑性樹脂フィルム」を含むに対して,引用発明は,これが明らかではない点。 (相違点3) 「偏光板」が,本願発明は,「前記青色光透過抑制層と前記偏光子との間に配置される熱可塑性樹脂フィルム」を含むに対して,引用発明は,これが明らかではない点。 (3) 判断 ア 相違点1について 偏光子を,吸収型偏光子として構成するか,反射型偏光子として構成するかは,当業者が適宜決定し得る事項にすぎないところ,引用発明の「第1偏光板3」は,視認側の偏光板である。 そして,視認側の偏光板は,通常,吸収型の偏光子を用いて構成される。 (当合議体注:バックライト側の偏光子は,光のリサイクルを目的として,反射型偏光子が用いられる場合もあるが,視認側については,高い偏光度を確保するため,吸収型の偏光子が採用される。) したがって,引用発明において,相違点1に係る本願発明の構成を採用することは,当業者における通常の選択肢にとどまるものである。 イ 相違点2について 偏光子の前面側,背面側の少なくとも一方に,複屈折を有しない熱可塑性樹脂フィルムを積層することは,周知技術である。例えば,引用文献2の[0017]にも,「視認側偏光子の光源側偏光子保護フィルム」として,「トリアセチルセルロース(TAC)フィルム」等の「複屈折性を有さないフィルムを用いることが好ましい」との記載がある。 また,引用発明の「第1偏光板3」は,視認側の偏光板であるから,「樹脂層1」とは反対側,すなわち,光源側偏光子保護フィルムには,「トリアセチルセルロース(TAC)フィルム」等の「複屈折性を有さないフィルムを用いることが好ましい」といえる。そして,「トリアセチルセルロース(TAC)フィルム」は,熱可塑性樹脂フィルムであり,また,「複屈折性を有さない」,すなわち面内位相差値が10nm以下であるものも一般的である。 したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,周知技術を心得た当業者における,通常の創作能力の発揮の範囲内の事項である。 ウ 相違点3について 偏光板の耐久性を高めるということは自明な課題であるし,そのために必要な熱可塑性フィルムを適切な位置に積層させることは当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である。例えば,引用文献2の[0016]にも,「視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルム」として,「ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート,及びポリエチレンナフタレート等)フィルム」等が挙げられている。そして,「ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート,及びポリエチレンナフタレート等)フィルム」は,熱可塑性樹脂フィルムである。 したがって,引用発明において,相違点3に係る本願発明の構成を採用することも,周知技術を心得た当業者における,通常の創作能力の発揮の範囲内の事項である。 (4) 発明の効果について 本願発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0014】には,「本発明によれば,画面からの青色光の出射量が低減された液晶表示装置を提供することができる。この液晶表示装置によれば,専用の眼鏡がかけたり,画面にフィルムを外付けしたりすることなく,眼に入る青色光を軽減することができる。」と記載されている。 しかしながら,引用発明の「液晶表示装置」は,「観察者に照射されるブルーライトが抑制されるため,目に優しいだけでなく,生体リズムにも配慮した」ものである。また,この作用は,引用発明の「波長430?480nmの光の透過を抑制する樹脂層1」の機能によるものと理解される。 したがって,本願発明の効果は,引用発明も奏する効果にすぎない。 (5) 請求人の主張について 相違点3に関連して,審判請求人は,「引用文献2(国際公開第2014/185318号)は,偏光板の耐久性を高めることを開示しません。」(上申書の(3))と主張する。 しかしながら,引用文献2の[0021]には,「視認側偏光子の視認側偏光子保護フィルムが低透湿性フィルムであると高温多湿での反りや偏光子機能の低下を抑制できるため好ましい」と記載されている。そして,上記(3)ウで挙げた「ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート,及びポリエチレンナフタレート等)フィルム」(典型的には,PETフィルム)は,偏光板における保護フィルムとして多用されてきたTACフィルムと比較して,低透湿性フィルムである。 偏光板の耐久性を高めることは,引用文献2の記載からも理解可能な,自明な課題であるから,請求人の主張は採用できない。 4 まとめ 本願発明は,引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-19 |
結審通知日 | 2020-05-26 |
審決日 | 2020-06-16 |
出願番号 | 特願2015-19215(P2015-19215) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) P 1 8・ 572- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 大思、清水 督史 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
宮澤 浩 樋口 信宏 |
発明の名称 | 偏光板、液晶パネル及び液晶表示装置 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |