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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1364846 |
審判番号 | 不服2019-9497 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-16 |
確定日 | 2020-08-06 |
事件の表示 | 特願2016-227162「光ファイバカッタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日出願公開、特開2018- 84659〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成28年11月22日 :特許出願 平成31年 2月13日付け :拒絶理由通知(同年2月19日発送) 平成31年 4月 1日 :意見書 平成31年 4月25日付け :拒絶査定(令和元年5月14日送達) 令和 元年 7月16日 :本件審判請求・手続補正書 第2 令和元年7月16日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年7月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?4の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 光ファイバを載置する載置面を有し、該載置面に前記光ファイバの位置を決める位置決め溝が形成された載置台と、 前記光ファイバを前記載置面に対して保持するクランプ面を備え、前記位置決め溝が延びる延在方向に略平行な揺動軸を中心に揺動するクランプ部と、 前記光ファイバを切断する刃体と、を有し、 前記載置面には、前記載置面における前記位置決め溝の前記延在方向に延びる開口周縁部のうち、前記揺動軸から遠い側に配置され、前記位置決め溝からの前記光ファイバの移動を規制する移動規制部が備えられ、 前記移動規制部は、前記載置面から突出していることを特徴とする光ファイバカッタ。 【請求項2】 前記移動規制部は、前記載置面から突出する2つの突起を有し、 前記2つの突起の間の前記延在方向における距離は、前記クランプ面の前記延在方向における幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカッタ。 【請求項3】 前記クランプ部には、前記載置台に形成された被係合部に係合することで、前記クランプ部の前記載置面に平行な方向であって前記延在方向に直交する方向における移動を規制する係合部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の光ファイバカッタ。 【請求項4】 前記クランプ部は、前記クランプ面を備える当接部材及び該当接部材を保持する保持部材を有し、 前記保持部材は前記載置面に向けて付勢され、 前記係合部は、前記保持部材に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバカッタ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 出願当初の特許請求の範囲の請求項1?5の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 光ファイバを載置する載置面を有し、該載置面に前記光ファイバの位置を決める位置決め溝が形成された載置台と、 前記光ファイバを前記載置面に対して保持するクランプ面を備え、前記位置決め溝が延びる延在方向に略平行な揺動軸を中心に揺動するクランプ部と、 前記光ファイバを切断する刃体と、を有し、 前記載置面若しくは前記クランプ面には、前記載置面における前記位置決め溝の前記延在方向に延びる開口周縁部のうち、前記揺動軸から遠い側に配置され、前記光ファイバの移動を規制する移動規制部が備えられていることを特徴とする光ファイバカッタ。 【請求項2】 前記移動規制部は、前記載置面から突出していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカッタ。 【請求項3】 前記移動規制部は、前記載置面から突出する2つの突起を有し、 前記2つの突起の間の前記延在方向における距離は、前記クランプ面の前記延在方向における幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカッタ。 【請求項4】 前記クランプ部には、前記載置台に形成された被係合部に係合することで、前記クランプ部の前記載置面に平行な方向であって前記延在方向に直交する方向における移動を規制する係合部が形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ファイバカッタ。 【請求項5】 前記クランプ部は、前記クランプ面を備える当接部材及び該当接部材を保持する保持部材を有し、 前記保持部材は前記載置面に向けて付勢され、 前記係合部は、前記保持部材に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバカッタ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「前記載置面若しくは前記クランプ面には」との記載について、「前記載置面には」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすか)について検討する。 (1)本件補正発明1について 本件補正発明1は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献について ア 引用例1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用例1である、特開2014-238574号公報(平成26年12月18日公開)には、図面とともに、次の記載がある。 a 「【技術分野】【0001】 この発明は、光ファイバ切断方法および光ファイバカッタに関する。」 b 「【0033】 (第2実施形態) 次に、図6?図15を参照して本発明の第2の実施形態である光コネクタ20について説明する。 以下、図6等に示すXYZ直交座標系を参照しつつ構造説明を行う。X方向は前後方向であって、第1光ファイバホルダ32と第2光ファイバホルダ33 との並び方向である。X方向は光ファイバ9の長さ方向でもある。Y方向は、基体28の載置凹部45aの底面に平行な面内でX方向に直交する方向(幅方向)である。Z方向はX方向およびY方向と直交する高さ方向である。なお、上述した第1の実施形態と同じ構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。 【0034】 図6?図8に示すように、光ファイバカッタ20は、光ファイバ9を載置する載置台25と、光ファイバ9に引張力を付与する張力付与機構26と、光ファイバ9に初期傷を形成する刃具ユニット27と、基体28と、刃具ユニット27を載置台25に接近および離間する方向に移動させる移動機構29と、を備えている。 ・・・ 【0043】 図7に示すように、張力付与機構26は、光ファイバ9の第1固定箇所9Aを保持し固定する第1光ファイバホルダ32(固定部)と、光ファイバ9の第2固定箇所9Bを保持し固定する第2光ファイバホルダ33と、第2スプリング40(付勢手段)と、張力調整機構39とを備えている。 【0044】 第1光ファイバホルダ32は、第1ベース部35と、第1ベース部35に対してヒンジ結合された第1蓋体36と、を備える。 第1ベース部35は、ベース部本体35dと、ベース部本体35dの前端および後端に設けられた壁部35aと、を有する。壁部35aには、光ファイバ9を位置決めする第1位置決め溝35bが形成されている。 第1蓋体36は、第1ベース部35との間に光ファイバ9の第1固定箇所9Aを挟み込んで保持することができる。」 c 図7は以下のとおりである。 (イ)上記記載及び図面から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 引用発明 「光ファイバカッタに関し、 光ファイバカッタ20は、光ファイバ9を載置する載置台25と、光ファイバ9に引張力を付与する張力付与機構26と、光ファイバ9に初期傷を形成する刃具ユニット27と、基体28と、刃具ユニット27を載置台25に接近および離間する方向に移動させる移動機構29と、を備えており、 張力付与機構26は、光ファイバ9の第1固定箇所9Aを保持し固定する第1光ファイバホルダ32(固定部)と、光ファイバ9の第2固定箇所9Bを保持し固定する第2光ファイバホルダ33と、第2スプリング40(付勢手段)と、張力調整機構39とを備え、 第1光ファイバホルダ32は、第1ベース部35と、第1ベース部35に対してヒンジ結合された第1蓋体36と、を備え、 第1ベース部35は、ベース部本体35dと、ベース部本体35dの前端および後端に設けられた壁部35aと、を有し、壁部35aには、光ファイバ9を位置決めする第1位置決め溝35bが形成されており、 第1蓋体36は、第1ベース部35との間に光ファイバ9の第1固定箇所9Aを挟み込んで保持することができる、 光ファイバカッタ。」 イ 引用例2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用例2である、特開2014-219518号公報(平成26年11月20日公開)には、図面とともに、次の記載がある。 a 「【技術分野】【0001】 本発明は、光ファイバを把持固定する光ファイバホルダに関する。 【背景技術】 【0002】 光ファイバ素線、光ファイバ心線といった、裸光ファイバ外周の側面に樹脂被覆が被着された構成の光ファイバ(以下、被覆光ファイバ) の被覆除去、該被覆除去によって露出させた裸光ファイバの長さ調整のためのカット等のファイバ処理は、被覆光ファイバを把持固定する光ファイバホルダを用いて行なうことが多い。光ファイバホルダを用いて行なう被覆光ファイバの被覆除去、裸光ファイバのカットに際しては、光ファイバホルダとは別体のスペーサ等のアタッチメントを使用してストリップ長、カット長の調整を行なっていた(例えば特許文献1)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、スペーサ等のアタッチメントを使用してストリップ長、カット長を調整する技術は、現場へのアタッチメントの持ち込みを失念する、アタッチメントが光ファイバホルダとファイバ処理装置との間から不用意に脱落したときに、これに気が付かずにアタッチメント不使用のまま作業を続行してしまう、といった不都合が生じ得る。また、この技術では、アタッチメントを紛失する、といった不都合を確実に防止することが容易でなかった。 【0005】 本発明は、前記課題に鑑みて、アタッチメントを別途使用しなくても、ストリップ長、カット長等の調整を実現できる光ファイバホルダの提供を目的としている。」 b 「【0014】 図3に示すように、図示例の光ファイバホルダ110において、ホルダ本体20の光ファイバ溝22はV溝である。但し、光ファイバ溝22としては、光ファイバ50を位置決め可能なものであれば良く、V溝に限定されない。光ファイバ溝22としては、例えば、断面半円状の丸溝、U溝等であっても良い。 なお、光ファイバ溝22の溝幅方向は、ホルダ本体20幅方向に一致している。 【0015】 図1?図3等に例示した蓋部材30はプラスチック製の一体成形品である。係合片部32は、蓋主板部31の回転軸11に軸支された基端部とは反対の先端部から延出している。 蓋部材30の係合片部32は、蓋主板部31の先端部から延出する係合片部本体32aと、この係合片部本体32aから突出する係合爪部32bとを有する。 【0016】 図3に示すように、ホルダ本体20前端部の幅方向中央部を介して回転軸11とは反対側の端部(他端部)には、蓋部材30の係合爪部32bを係合させる蓋係止部23が設けられている。蓋係止部23は、蓋部材30の係合爪部32bを係合させることで、蓋部材30の開方向への回転を規制して、蓋部材30がホルダ本体20に閉じた状態を保つ機能を果たす。 【0017】 ホルダ本体20の光ファイバ溝22には、光ファイバ50の裸光ファイバ51が樹脂被覆材52によって覆われた被覆部53が配置される。 蓋部材30は、蓋主板部31をホルダ本体上面20aに閉じ、係合爪部32bをホルダ本体20の蓋係止部23に係合させることで、蓋主板部31のファイバ押さえ部33によって、光ファイバ溝22に配置された光ファイバ50を光ファイバ溝22の溝底に向かって押圧して、ホルダ本体20に押さえ込む。」 c 「【0050】 ファイバ処理装置60が被覆除去装置である場合は、ホルダ本体20前側への可動片本体41の出没切り換えによって、光ファイバホルダ110のホルダ本体20前端から被覆除去開始位置までの距離と、被覆除去開始位置から被覆除去終了位置までの距離(ストリップ長)とを調整できる。 ファイバ処理装置60が光ファイバ50の被覆部53先端から突出する裸光ファイバ51(図1参照)をカットするファイバカッタである場合は、光ファイバホルダ110のホルダ本体20前側への可動片本体41の出没切り換えによって、光ファイバ50の被覆部53先端から裸光ファイバ51のカット位置までの距離(カット長)を調整できる。」 d 図2は以下のとおりである。 e 上記a?cの記載を参酌すれば、図2から、蓋部材30が閉じられるホルダ本体上面20aには光ファイバ溝22が形成されており、光ファイバ溝22の前後方向に一対の壁部材がホルダ本体上面20aから立ち上がって設けられており、当該壁部材にはV字溝が形成され、当該V字溝の底は光ファイバ溝22に一致していることが看て取れる。 (イ)上記記載及び図面から、引用例2には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「ファイバカッタに用いられる光ファイバホルダにおいて、蓋部材30が閉じられるホルダ本体上面20aには光ファイバ溝22が形成されており、光ファイバ溝22の前後方向に壁部材がホルダ本体上面20aから立ち上がって設けられており、当該壁部材にはV字溝が形成され、当該V字溝の底は光ファイバ溝22に一致していること。」 ウ 引用例3 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用例3である、米国特許出願公開第2011/0026896号明細書(2011年2月3日公開)には、図面とともに、次の記載がある。 a 「[0001]1. Field of the Invention [0002]The present invention is directed to an optical fiber clampmechanism.」 (仮訳;[0001]1.発明の分野 [0002]本発明は、光ファイバクランプ機構に関するものである。) b 「[0036]As shown in FIG. 1A, fiber clampingmechanism 170 includes a fiber clamping portion 190A and fiber constraintportion 190B. The fiber clamping portion is provided to support and temporarilysecure an optical fiber, such as optical fiber 135A, during a stripping,cleaving, polishing or termination process. The fiber clamping portion andfiber constraint portion can each include one or more aligned fiber guides orchannels to provide more axial support of the fiber along a substantialdistance of the platform. For example, fiber guides or channels 191A-E can beprovided.」 (仮訳;[0036]図1(a)に示すように、ファイバクランプ機構170は、ファイバクランプ部190Aと、ファイバ拘束部190Bとを備えている。ファイバクランプ部は、剥離、劈開、研磨、成端プロセス中に、光ファイバ135aのような光ファイバを、支持して一時的に固定するために設けられている。ファイバクランプ部およびファイバ拘束部は、それぞれ、プラットフォームの実質的な距離に沿ってファイバの軸方向の支持を提供するために、一つまたは複数の整列されたファイバガイドまたはチャネルを含むことができる。例えば、ファイバガイド又はチャネル191A-Eを設けることができる。) c 「[0043]・・・such as shown in FIG. 1B,・・・The fiber canrest in the appropriate channel 177A or 177B prior to clamping.・・・」 (仮訳;[0043]・・・図1(b)に示すように・・・ファイバは、クランプに先立って適切なチャンネル177A又は177Bに載置することができる。・・・) d FIG.1A、FIG.1Bは以下のとおりである。 e 上記a?cの記載を参酌すれば、FIG.1A、FIG.1Bからファイバガイドまたはチャネル191A-Cの両サイドは、ファイバの載置面からV字状に立ち上がっていることが看て取れる。 (イ)上記記載及び図面から、引用例3には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「ファイバの劈開プロセスにおいて用いられるファイバクランプ部において、プラットフォームの実質的な距離に沿ってファイバの軸方向の支持を提供するために、一つまたは複数の整列されたファイバガイドまたはチャネル191A-E、177A、Bが設けられ、ファイバガイドまたはチャネル191A-Cの両サイドは、ファイバの載置面からV字状に立ち上がっていること。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「光ファイバ」、「光ファイバカッタ」は、それぞれ本件補正発明の「光ファイバ」、「光ファイバカッタ」に相当する。 イ 引用発明の「光ファイバ9に初期傷を形成する刃具ユニット27」は、本件補正発明の「光ファイバを切断する刃体と、を有し」に相当する。 ウ 引用発明において「第1光ファイバホルダ32は、第1ベース部35と、第1ベース部35に対してヒンジ結合された第1蓋体36と、を備え」「第1蓋体36は、第1ベース部35との間に光ファイバ9の第1固定箇所9Aを挟み込んで保持することができる」ことから、引用発明の「第1ベース部35」、「第1蓋体36」は、それぞれ本件補正発明の「載置台」、「クランプ部」に相当する。 また、引用発明の上記構成は、本件補正発明の「光ファイバを載置する載置面を有し、該載置面に前記光ファイバの位置を決める位置決め溝が形成された載置台と、前記光ファイバを前記載置面に対して保持するクランプ面を備え、前記位置決め溝が延びる延在方向に略平行な揺動軸を中心に揺動するクランプ部」と、「光ファイバを載置する載置面を有する載置台と、前記光ファイバを前記載置面に対して保持するクランプ面を備え、揺動軸を中心に揺動するクランプ部」の点で共通する。 エ 上記ア?ウから、本件補正発明と引用発明は、 以下の一致点で共通し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「光ファイバを載置する載置面を有する載置台と、 前記光ファイバを前記載置面に対して保持するクランプ面を備え、揺動軸を中心に揺動するクランプ部と、 前記光ファイバを切断する刃体と、を有する、 光ファイバカッタ。」 <相違点> 本件補正発明が、「載置面に前記光ファイバの位置を決める位置決め溝」を形成し、「前記位置決め溝が延びる延在方向に略平行な」揺動軸を設け、「載置面には、前記載置面における前記位置決め溝の前記延在方向に延びる開口周縁部のうち、前記揺動軸から遠い側に配置され、前記位置決め溝からの前記光ファイバの移動を規制する移動規制部が備えられ、前記移動規制部は、前記載置面から突出している」のに対し、引用発明は「ベース部本体35dの前端および後端に設けられた壁部35a」「には、光ファイバ9を位置決めする第1位置決め溝35bが形成されて」いる点。 (4)判断 ア 相違点について 上記相違点につき検討するに、引用例2、3に記載されているように、光ファイバカッタにおいて用いられる光ファイバホルダ(クランプ)において、光ファイバホルダの載置面に光ファイバを位置決めする位置決め溝を設けるとともに、当該位置決め溝の側部にV字状の溝を設けることは周知技術であり、また、引用例3には当該V字状の溝が載置面から立ち上がって設けられることが記載されている。 そして、光ファイバを光ファイバホルダの溝部に位置決めするにあたり、光ファイバをより正確に位置決めできるようにすることは周知な課題であり、また、溝部を光ファイバの長手方向に沿って設ければより位置決めしやすくなることも自明な事項であるから、引用発明において、そのような課題に基づいて、上記周知技術を採用して、引用発明の「第1位置決め溝35b」に代えて、あるいは加えて、位置決め溝及びV字状の溝を設けることは当業者が適宜なしうる事項にすぎない。さらに、その際にV字状の溝を載置面から立ち上げるように形成することは、引用例3にも記載されているように、光ファイバホルダの形状や配置に応じて、適宜選択しうる設計事項にすぎない。 ここで、本件補正発明において「移動規制部」とは、「前記載置面における前記位置決め溝の前記延在方向に延びる開口周縁部のうち、前記揺動軸から遠い側に配置され、前記位置決め溝からの前記光ファイバの移動を規制」し、「載置面から突出している」ものである。そして、上記周知技術等を採用して実現される載置面から立ち上がるV字状の溝は、その形状から見て、「位置決め溝からの前記光ファイバの移動を規制」するものであるといえることは明らかであって、さらに、当該V字状の溝の内側の面は載置面から突出しているから、当該V字状の溝の内側の面のうち、光ファイバを上から押さえつける部材の揺動軸から遠い側の面は、本件補正発明の「移動規制部」に相当する部材であるといえる。 したがって、引用発明に上記周知事項等を適用し実現されるものは、本件補正発明と同様の構成を有するようになるから、引用発明において、相違点に係る本件補正発明のようにすることは当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。 イ 作用効果について 相違点に係る本件補正発明の効果について、引用発明及び周知技術から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。 ウ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「3.本願発明と引用文献1?3に記載された発明との比較について・・・(4)ここで、本願発明の移動規制部は「載置面から突出している」との特徴を有していますが、引用文献1または引用文献2では、載置面の外側に設けられた板状部にV字溝が形成されております。このため、引用文献1または引用文献2のV字溝は、本願発明の移動規制部とは明らかに異なっています。(5)さらに、引用文献1および引用文献2において、V字溝を設ける目的は、光ファイバを所定の位置に導入させることにあります。例えば引用文献2では、光ファイバ溝22に光ファイバを導入させるためにV字溝を設けています。これに対して本願発明の移動規制部は、位置決め溝に光ファイバを導入する目的ではなく、あくまで「位置決め溝からの光ファイバの移動を規制する」目的で移動規制部を設けています。そして、位置決め溝からの光ファイバの移動を規制するために、載置面から突出した移動規制部を設けることは、引用文献1?4のいずれにも記載も示唆もされていません。」と主張している。 しかしながら、請求人が主張する本件補正発明の「載置面から突出している」との特徴点については、上記アで説示したように、周知技術等を採用して実現できるV字状の溝の内側の面においても載置面から突出しているといえるものである。 また、請求人が主張する「位置決め溝からの光ファイバの移動を規制する」目的で移動規制部を設けている点についても、上記アで説示したように、周知技術等を採用して実現できるV字状の溝は「位置決め溝からの光ファイバの移動を規制する」ものであるといえる。 よって、請求人の主張は採用できない。 (5)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年7月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項2に係る発明であるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項2に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、 「この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に頒布された引用例1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」 というものである。 3 進歩性について (1)引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1?3及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である、「前記載置面若しくは前記クランプ面には」との記載について、「前記載置面には」との限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに 相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-20 |
結審通知日 | 2020-05-26 |
審決日 | 2020-06-16 |
出願番号 | 特願2016-227162(P2016-227162) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 奥村 政人 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 井上 博之 |
発明の名称 | 光ファイバカッタ |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 清水 雄一郎 |
代理人 | 小室 敏雄 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 小室 敏雄 |
代理人 | 五十嵐 光永 |
代理人 | 五十嵐 光永 |
代理人 | 清水 雄一郎 |