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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 H01H 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01H |
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管理番号 | 1364871 |
異議申立番号 | 異議2019-700383 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-05-13 |
確定日 | 2020-06-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6423384号発明「保護素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6423384号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、〔5?9〕について訂正することを認める。 特許第6423384号の請求項1、2、4?7及び9に係る特許を維持する。 特許第6423384号の請求項3及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6423384号の請求項1?9に係る特許についての出願(以下「本件特許出願」という。)は、平成28年4月6日に出願され、平成30年10月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、特許異議申立人赤松智信(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和1年 5月13日 :特許異議申立人による特許異議の申立て 令和1年 7月11日付け:取消理由通知書 令和1年 9月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和1年11月 5日 :特許異議申立人による意見書の提出 令和1年11月22日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和2年 1月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和2年 4月16日 :特許異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和2年1月30日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)?(7)のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材とを備え、前記中間構造材は、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなり、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有することを特徴とするヒューズエレメント。」と記載されているのを、 「金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなり、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有し、 前記接合材は、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材を用いた、ヒューズエレメント。」に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2および4も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、「前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載のヒューズエレメント。」と記載されているのを、 「前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項1または請求項2に記載のヒューズエレメント。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、「絶縁基板と、この絶縁基板の表面に設けた複数のパターン電極と、このパターン電極に電気接続したヒューズエレメントと、このヒューズエレメントの上部を覆った蓋体とを備え、前記ヒューズエレメントは、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材とを備え、前記中間構造材は、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有することを特徴とする保護素子。」と記載されているのを、 「絶縁基板と、この絶縁基板の表面に設けた複数のパターン電極と、このパターン電極に電気接続したヒューズエレメントと、このヒューズエレメントの上部を覆った蓋体とを備え、前記ヒューズエレメントは、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有し、 前記接合材は、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材を用いた、保護素子。」に訂正する(請求項5の記載を直接的または間接的に引用する請求項6、7および9も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に、「前記被覆材は、SnまたはSn合金を用いたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の保護素子。」と記載されているのを、 「前記被覆材は、SnまたはSn合金を用いたことを特徴とする請求項6に記載の保護素子。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項9も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項9に、「前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項5ないし請求項8の何れか一つに記載の保護素子。」と記載されているのを、 「前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項5ないし請求項7の何れか一つに記載の保護素子。」に訂正する。 ここで、訂正事項1?3は、訂正前に引用関係を有する請求項1?4に対して、また、訂正事項4?7は、訂正前に引用関係を有する請求項5?9に対して請求されたものである。 よって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されている。 2 訂正の要件 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「ヒューズエレメント」が「3層からな」ることを特定するとともに、訂正前の請求項1に記載されていた「接合材」について、その材質を具体的に特定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「ヒューズエレメント」の層数を特定するとともに、訂正前の請求項1に記載されていた「接合材」について、その材質を具体的に特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1は、訂正前の請求項3、願書に添付した明細書の段落【0016】、及び図1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、請求項3を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は、訂正事項2の請求項3を削除する訂正に伴って、請求項4が引用する請求項から請求項3を除く訂正であるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項3は、削除した請求項3を引用する請求項から除くものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項3は、削除した請求項3を引用する請求項から除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載されていた「ヒューズエレメント」が「3層からな」ることを特定するとともに、訂正前の請求項5に記載されていた「接合材」について、その材質を具体的に特定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載されていた「ヒューズエレメント」の層数を特定するとともに、訂正前の請求項5に記載されていた「接合材」について、その材質を具体的に特定するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、訂正前の請求項8、願書に添付した明細書の段落【0016】、及び図1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、訂正前の請求項7が請求項6または請求項7を引用していたのを、明らかな誤記である請求項7の引用の記載を除いて請求項6を引用するものに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項5は、明らかな誤記を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項5は、明らかな誤記を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、請求項8を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項6は、請求項8を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項6は、請求項8を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、訂正事項6の請求項8を削除する訂正に伴って、請求項9が引用する請求項から請求項8を除く訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項7は、削除した請求項8を引用する請求項から除くものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項7は、削除した請求項8を引用する請求項から除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 3 小括 上記2のとおり、訂正事項1?7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、本件特許異議の申立てにおいては、訂正前のすべての請求項1?9について特許異議の申立てがされているため、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、〔5?9〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなり、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有し、 前記接合材は、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材を用いた、ヒューズエレメント。 【請求項2】 前記被覆材は、SnまたはSn合金を用いたことを特徴とする請求項1に記載のヒューズエレメント。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項1または請求項2に記載のヒューズエレメント。 【請求項5】 絶縁基板と、この絶縁基板の表面に設けた複数のパターン電極と、このパターン電極に電気接続したヒューズエレメントと、このヒューズエレメントの上部を覆った蓋体とを備え、前記ヒューズエレメントは、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有し、 前記接合材は、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材を用いた、保護素子。 【請求項6】 前記絶縁基板は、さらに抵抗発熱素子を設けたことを特徴とする請求項5に記載の保護素子。 【請求項7】 前記被覆材は、SnまたはSn合金を用いたことを特徴とする請求項6に記載の保護素子。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項5ないし請求項7の何れか一つに記載の保護素子。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要 訂正前の請求項1、2、4?7及び9に係る特許に対して、当審が令和1年11月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件特許の請求項1?9に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願(特願2014-229360号。以下「先願1」という。)であって、本件特許出願後に出願公開(特開2016-95899号公報(甲第1号証))がされた特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1、2、4?7及び9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 第5 引用文献等の記載 1 先願1 取消理由通知において引用した先願明細書等には、【請求項1】?【請求項10】、段落【0013】?【0014】、【0019】?【0027】、【0046】?【0047】、【0075】?【0084】及び図5、15の記載によれば、次の発明がそれぞれ(以下「先願発明1」、「先願発明2」という。)記載されていると認められる。 <先願発明1> 「高融点金属層2と、この高融点金属層2の片面に第1の低融点金属層3と、さらに高融点金属層2のもう一方の面に第2の低融点金属層4とを備え、高融点金属層2は、Ag、CuまたはAg若しくはCuを主成分とする合金からなり、リフロー炉によって絶縁基板上に実装を行う場合においても溶融しない融点を有し、第1の低融点金属層3は、高融点金属層2よりも低い融点を有し、第2の低融点金属層4は、リフロー炉の温度よりも低く、かつ、第1の低融点金属層3の融点よりも低い融点を有するヒューズエレメント1。」 <先願発明2> 「絶縁基板91と、この絶縁基板の表面に設けた第1、第2の電極94,95と、この電極に接続したヒューズエレメント1と、このヒューズエレメント1の上部を覆ったカバー部材97とを備え、ヒューズエレメント1は、Ag、CuまたはAg若しくはCuを主成分とする合金からなる高融点金属層2と、この高融点金属層2の片面に第1の低融点金属層3と、さらに高融点金属層2のもう一方の面に第2の低融点金属層4とを備え、高融点金属層2は、リフロー炉によって絶縁基板上91に実装を行う場合においても溶融しない融点を有し、第1の低融点金属層3は、高融点金属層2よりも低い融点を有し、第2の低融点金属層4は、リフロー炉の温度よりも低く、かつ、第1の低融点金属層3の融点よりも低い融点を有する保護素子90。」 2 引用文献2 引用文献2(鶴田加一、「マイクロ接合実装品(材料編)-Pbフリーはんだ材料-」、溶接学会誌、一般社団法人溶接学会、2011年、第80巻(2011)第7号、p.625-632)の表2には、はんだ材料として、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Zn-Bi合金、Sn-Bi合金、Sn-In合金が記載されている。 3 引用文献3 引用文献3(芹沢弘二、外2名、「Sn-Bi系はんだの実用化状況と今後の課題」、エレクトロニクス実装学会誌、一般社団法人エレクトロニクス実装学会、2003年8月1日、Vol.6、No.5 (2003)、p.394-399)の表1には、はんだ材料として、Sn-Ag-Bi合金が記載されている。 4 引用文献4 引用文献4(特開平10-156579号公報)の請求項1及び表1には、はんだ材料として、Sn-Ag-In合金が記載されている。 5 引用文献5 引用文献5(特許第2665328号公報)の段落【0010】及び表1には、はんだ材料として、Sn-Ag-In合金が記載されている。 6 引用文献6 引用文献6(北嶋雅之、外5名、「Sn-Zn-Alはんだのはんだ付け性と接合信頼性に関する研究」、エレクトロニクス実装学会誌、一般社団法人エレクトロニクス実装学会、2003年8月1日、Vol.6、No.5 (2003)、p.433-438)の論文タイトルには、はんだ材料として、Sn-Zn-Al合金が記載されている。 7 引用文献7 引用文献7(宝藏寺裕之、外6名、「低炭素社会を支える高性能パワーモジュール材料」、日立評論、日立評論社、2013年5月1日、Vol.95、No.5、p.36-42)の「2.2 亜鉛/アルミニウム/銅クラッド材」の欄には、はんだ材料として、Zn-Al合金が記載されている。 なお、引用文献2?7は、それぞれ、特許異議申立人が令和1年11月5日に提出した意見書に添付された参考資料1?6である。 第6 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 ア 先願発明1の「高融点金属層2」は、溶融した第1、第2の低融点金属層3,4によって浸食(ハンダ食われ)されることにより、融点よりも低い温度で溶融するものであるから(先願明細書等の段落【0014】、【0026】等を参照。)、「金属に拡散または溶解し易い固体金属」からなる部材であると認められる。また、実装時にヒューズエレメント1の溶断や変形を防止する(段落【0013】、【0024】等を参照。)という機能、及び第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層されることに鑑みれば、当該「高融点金属層2」は、「中間構造材」として機能する部材であるといえる。 してみると、先願発明1の「高融点金属層2」は、本件発明1の「金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材」に相当する。 イ 先願発明1の「第1の低融点金属層3」は、発熱により溶融する部材であるから(段落【0026】等を参照。)、「可溶性の金属」であると認められる。また、図5の図示内容に鑑みれば、当該「第1の低融点金属層3」は、高融点金属層2の上面を覆う部材であるといえる。 してみると、先願発明1の「第1の低融点金属層3」は、本件発明1の「可溶性の金属からなる被覆材」に相当する。 なお、先願明細書等の図5には、第1の低融点金属層3の上にさらに別の高融点金属層2を設け、4層の金属層からなるヒューズエレメント40に関する実施例が記載されている。しかしながら、先願明細書等の【請求項1】において3層のみの金属層からなるヒューズエレメントが排除されていないことに鑑みれば、先願明細書等には、下層から第2の低融点金属層4、高融点金属層2、第1の低融点金属層3の順序で積層した3層からなるヒューズエレメントに関する発明も実質的に開示されていると認められる。 ウ 先願発明1の「第2の低融点金属層4」は、発熱により溶融する部材であるから(段落【0026】等を参照。)、「可溶金属」であると認められる。また、段落【0047】には、当該「第2の低融点金属層4」を、各素子の電極にヒューズエレメントを接続するための接続材料として用いることも記載されている。 してみると、先願発明1の「第2の低融点金属層4」は、本件発明1の「可溶金属からなる接合材」に相当する。 エ 先願発明1の「高融点金属層2は、Ag、CuまたはAg若しくはCuを主成分とする合金からなり、リフロー炉によって絶縁基板上に実装を行う場合においても溶融しない融点を有し」との構成に関し、先願明細書等における「高融点金属層2は、例えば、Ag、Cu又はAg若しくはCuを主成分とする合金が好適に用いられ」(段落【0020】)との記載、並びに、当該記載にある「Ag」及び「Cu」とは、それぞれAg及びCuが実質的に100質量%の金属である点に鑑みれば、「Ag若しくはCuを主成分とする合金」として「Ag若しくはCuを50質量%以上含む合金」が導き出されることは明らかであるといえる。 また、「リフロー炉によって絶縁基板上に実装を行う場合においても溶融しない融点」は、本件発明1の「接合作業温度を超える第1の溶融温度」(当審注:本件明細書等の記載に鑑みれば、ヒューズエレメントの接合作業を通じて最も高温となる温度でも溶融しない温度のことであると解される)に相当する。 してみると、先願発明1は、本件発明1の「前記中間構造材は、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなり、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し」との構成を備えているといえる。 オ 先願発明1の「第1の低融点金属層3は、高融点金属層2よりも低い融点を有し」との構成は、本件発明1の「前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し」との構成に相当する。 また、先願発明1の「第2の低融点金属層4は、リフロー炉の温度よりも低く、かつ、第1の低融点金属層3の融点よりも低い融点を有する」構成に関し、リフロー炉の温度よりも低い融点を有するということは、リフロー炉での実装作業温度で溶融する溶融温度を有することを意味するから、先願発明1の当該構成は、本件発明1の「前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有する」構成に相当する。 カ 先願発明1の「ヒューズエレメント1」は、本件発明1の「ヒューズエレメント」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなり、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有するヒューズエレメント。」 <相違点> 本件発明1では、接合材として、「Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材」を用いているのに対し、先願発明1では、第2の低融点金属層4に用いられる金属材として、上記合金が具体的に特定されていない点。 (2)判断 ア 相違点について 上記相違点について検討する。 先願明細書等の段落【0046】?【0047】には、図5に示されたヒューズエレメント40の第2の低融点金属層4を、各素子の電極上に接続する接続材料として用いてもよいことが記載され、また、段落【0026】には、「例えば、第2の低融点金属層4をSn-Bi系合金やIn-Sn系合金などで構成した場合、ヒューズエレメント1は、140℃や120℃前後という低温度から溶融を開始する。」と記載されている。 そして、上記第5の2に記した引用文献2の記載事項のとおり、Sn-Bi系合金やIn-Sn系合金は、本件特許出願前、はんだ材料として知られていたものであるから、先願明細書等には、第2の低融点金属層4を構成する材料として、はんだ材料のうちの2つが例示されているといえる。 しかしながら、先願明細書等の段落【0022】及び【0026】の記載によれば、第2の低融点金属層4には、融点が120℃?140℃程度の金属を用いることが想定され、その例示として、Sn-Bi系合金やIn-Sn系合金が挙げられているにすぎないのであって、はんだ材料一般が適用され得ることが示唆されているとは認められない。 仮に、先願明細書等に、第2の低融点金属層4を構成する材料として、はんだ材料一般が適用され得ることが示唆されているといえたとしても、第2の低融点金属層4より融点の高い第1の低融点金属層3を構成する材料として、「Sn又はSnを主成分とする合金で『Pbフリーハンダ』と一般的に呼ばれる材料」(段落【0021】参照。)が例示されていることを考慮すると、先願明細書等に接した当業者は、第2の低融点金属層4を構成する材料として「Pbフリーハンダ」よりも融点の低い周知のはんだ材料が適用される旨を認識すると解するのが相当であり、本件発明1において接合材に用いられる金属材として特定されている、周知のPbフリーハンダにあたるSn-Ag合金等を用いることは、周知技術の単なる適用とはいえない。 したがって、上記相違点は、単なる周知技術の適用とはいえず、本件発明1は、先願発明1と実質的に同一であるとはいえない。 イ 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、令和2年4月16日の意見書において、特開2016-12407号公報、特開2013-239405号公報の記載からみて、高融点金属層と低融点金属層の積層構造からなるヒューズエレメントであって、高融点金属層及び低融点金属層のいずれの材料についてもはんだ材料からなるものは周知である旨を主張している。 しかしながら、特許異議申立人が提示した文献において、はんだ材料を用いた低融点金属層及び高融点金属層の積層構造からなるヒューズエレメントは、特開2013-239405号公報及び当該文献を引用する特開2016-12407号公報にしか記載されておらず、このことのみから、はんだ材料を用いた低融点金属層及び高融点金属層の積層構造からなるヒューズエレメントが周知技術であると認定することはできない。 なお、付言すれば、上記の特開2013-239405号公報には、従来、ヒューズ素子(ヒューズエレメント)を構成する可融性金属材をパターン電極に、レーザー溶接などの接合手段により取り付けていたところ、段落【0003】及び【0004】に記載の課題があったことから、低融点被覆材を用いたヒューズ素子(【請求項1】及び段落【0007】を参照。)を提供することとした旨が記載され、かかる低融点被覆材の具体例として一連のはんだ材料が挙げられている(段落【0012】を参照。)のであるから、かえって、少なくとも当該公報に係る特許出願の出願時点においては、はんだ材料を用いた低融点金属層及び高融点金属層の積層構造からなるヒューズエレメントが周知とはいえなかったことが示唆されているとさえいい得る。 したがって、上記主張は採用することができない。 2 本件発明2及び4について 本件発明2及び4も、本件発明1と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、先願発明1と実質的に同一であるとはいえない。 3 本件発明5について 本件発明5と先願発明2とを対比すると、後者の「絶縁基板91」は前者の「絶縁基板」に相当し、以下同様に、「第1、第2の電極94,95」は「複数のパターン電極」に、「接続」は「電気接続」に、「カバー部材97」は「蓋体」に、「保護素子90」は「保護素子」にそれぞれ相当する。 そして、本件発明5の「ヒューズエレメント」に係る構成は、本件発明1と実質的に同一であるところ、先願発明2の「ヒューズエレメント1」に係る構成も、先願発明1と実質的に同一であるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明5は、先願発明2と実質的に同一であるとはいえない。 4 本件発明6、7及び9について 本件発明6、7及び9も、本件発明5と同一の構成を備えるものであるから、本件発明5と同じ理由により、先願発明2と実質的に同一であるとはいえない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 サポート要件違反について 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、本件発明1?9は、ヒューズエレメント板が波打ったりカールしたりすることを防止することを課題の一つとしているところ、本件特許明細書の段落【0011】によれば、当該課題を解決するためには、「接合材が被覆材より先に溶けて絶縁基板のパターン電極と接合し始め、その後で被覆材が溶けてゆく」必要があるとのことであるが、本件発明1?9は、接合材の溶融温度と被覆材の溶融温度が等しいものをも含んでおり、この場合、接合材が被覆材より先に溶けるとはいえず、課題を解決できないから、サポート要件に違反している旨を主張している。 そこで検討すると、本件特許明細書において、上記の「ヒューズエレメント板が波打ったりカールしたりする」(段落【0011】)という点は、「ヒューズエレメントを薄板化」した場合に生じ得る現象として説明されているのであって、本件特許明細書の当該段落は、「ヒューズエレメントを薄板化しても接合材の接合温度でヒューズエレメント板が波打ったりカールしたりするのを防」ぐことで、「より一層の保護素子の小型薄型化に寄与できる」ことを述べているものである。他方、本件特許明細書の「【発明が解決しようとする課題】」の記載箇所である段落【0007】には、「本発明の目的」に関し、その記載の一部に「また、併せて保護素子の小型薄型化にさらに適応したヒューズエレメントを実現する。」との記載はあるものの、特許異議申立人がいう「ヒューズエレメント板が波打ったりカールしたりすることを防止すること」は、発明が解決しようとする課題ないし発明の目的として記載されているわけではない。 そうすると、本件特許明細書によれば、発明が解決しようとする課題の一部に「保護素子の小型薄型化にさらに適応したヒューズエレメントを実現する」ことがあることは認められるものの、「ヒューズエレメント板が波打ったりカールしたりすることを防止すること」までが課題であるということはできない。 よって、特許異議申立人のサポート要件違反に係る主張は、その前提において妥当性を欠くものといわなければならない。 さらに検討するに、仮に特許異議申立人の主張のとおり、「ヒューズエレメント板が波打ったりカールしたりすることを防止すること」が、発明が解決しようとする課題の一つであるとしたとしても、本件発明1?9が当該課題を解決できないものであるとはいえない。すなわち、接合材の溶融温度と被覆材の溶融温度が等しかったとしても、パターン電極に接合させるために、パターン電極と接する接合材を溶融させるのであるから、接合材の方に加熱源が設けられて、接合材の方が被覆材よりも先に溶けるということは十分に考えられ、少なくとも、接合材が被覆材より先に溶けることが起こり得ないとはいい切れず、必ずしも、特許異議申立人がいう上記課題が解決できないわけではない。 したがって、上記主張は採用することができない。 2 明確性要件違反(1)について 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、本件発明1?9は、「金属に拡散または溶解し易い」ことを発明特定事項としているが、何をもって拡散し易い、溶解し易いと判断するのか意味内容が不明であるから、明確性要件に違反している旨を主張している。 確かに、「金属に拡散または溶解し易い」との記載のみでは、不明確ともいい得るものの、本件特許明細書の段落【0016】の、「中間構造材11には、183℃以上400℃未満の接合作業温度において固体を維持できる拡散性の溶質金属、例えばAg、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金が好適に利用できる。」との記載を考慮すれば、本件発明1?9において、「金属に拡散または溶解し易い固体金属」とは、具体的には、同じく本件発明1?9に特定されている「Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金」のことであると理解することができる。 したがって、上記主張は採用することができない。 3 明確性要件違反(2)について 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、本件発明1?9は、「接合作業温度で溶融」することを発明特定事項としているが、何をもって「接合作業温度で溶融」すると判断するのか意味内容が不明である、すなわち、「接合作業」には、その準備工程から含めて種々の工程があるところ、そのうちのどの工程であっても溶融する必要があるのか、また、「接合作業」にはどの工程までが含まれるのか、意味内容が不明であるから、明確性要件に違反している旨を主張している。 しかしながら、上記第6の1(1)エでも示したように、本件明細書等の記載に鑑みれば、本件発明1?9に特定されている「接合作業温度」とは、ヒューズエレメントの接合作業を通じて最も高温となる温度であると理解することができる。 したがって、上記主張は採用することができない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2、4?7及び9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、2、4?7及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項3及び8に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、本件特許異議の申立てについて、請求項3及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 金属に拡散または溶解し易い固体金属からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなり、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有し、 前記接合材は、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材を用いた、ヒューズエレメント。 【請求項2】 前記被覆材は、SnまたはSn合金を用いたことを特徴とする請求項1に記載のヒューズエレメント。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項1または請求項2に記載のヒューズエレメント。 【請求項5】 絶縁基板と、この絶縁基板の表面に設けた複数のパターン電極と、このパターン電極に電気接続したヒューズエレメントと、このヒューズエレメントの上部を覆った蓋体とを備え、前記ヒューズエレメントは、Ag、Cuまたはこれらを50質量%以上含む合金からなる中間構造材と、この中間構造材の少なくとも片面に可溶性の金属からなる被覆材と、さらに前記中間構造材のもう一方の面に可溶金属からなる接合材との3層からなり、前記中間構造材は、接合作業温度を超える第1の溶融温度を有し、前記被覆材は、前記中間構造材より溶融温度が低い第2の溶融温度を有し、前記接合材は、前記接合作業温度で溶融し、かつ、前記第2の溶融温度以下の第3の溶融温度を有し、 前記接合材は、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Zn合金、Sn-Sb合金、Sn-Ag-Bi合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Ag-In合金、Sn-Zn-Al合金、Sn-Zn-Bi合金、Zn-Al合金または前記合金にAu、Ni、Ge、Ga、Mg、Pをさらに添加した合金の群から選択された少なくとも1つの金属材を用いた、保護素子。 【請求項6】 前記絶縁基板は、さらに抵抗発熱素子を設けたことを特徴とする請求項5に記載の保護素子。 【請求項7】 前記被覆材は、SnまたはSn合金を用いたことを特徴とする請求項6に記載の保護素子。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 前記接合作業温度が183℃以上400℃未満の請求項5ないし請求項7の何れか一つに記載の保護素子。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-06-01 |
出願番号 | 特願2016-76279(P2016-76279) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(H01H)
P 1 651・ 161- YAA (H01H) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 関 信之 |
特許庁審判長 |
大町 真義 |
特許庁審判官 |
井上 信 内田 博之 |
登録日 | 2018-10-26 |
登録番号 | 特許第6423384号(P6423384) |
権利者 | ショット日本株式会社 |
発明の名称 | 保護素子 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |