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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 一部申し立て 2項進歩性  C09K
管理番号 1364902
異議申立番号 異議2019-700478  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-12 
確定日 2020-06-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6435871号発明「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6435871号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?24、26?29]、25について訂正することを認める。 特許第6435871号の請求項1?8、10?13、15?24、26?29に係る特許を維持する。 特許第6435871号の請求項14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯

特許第6435871号の請求項1?29に係る特許についての出願は、平成27年1月19日になされたものであって、平成30年11月22日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年12月12日)がされたものである。その後、その特許についての異議申立てのの経緯は以下のとおりである。

令和1年6月12日 特許異議申立人 宮本 邦彦(以下「申立人」という)による本件特許の請求項1?8、10?24、26?29に係る特許に対する特許異議の申立て
令和1年8月16日付け 取消理由通知
令和1年10月21日 特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和1年12月5日 申立人による意見書の提出
令和1年12月11日 訂正拒絶理由通知
令和2年1月15日 特許権者による意見書の提出及び手続補正書の提出
令和2年1月27日 取消理由通知(決定の予告)
令和2年3月18日 特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和2年4月27日 申立人による意見書の提出

第2.本件訂正についての判断

1.訂正の内容

令和1年10月21日付けの訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたとみなされるところ、令和2年3月18日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第6435871号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?29について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項1?19を含むものである。

なお、訂正箇所に下線を付した。

(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1において、
「Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-COOR^(5)、-CONH_(2)、-P
(O)(OH)_(2)、-OP(O)(OH)_(2)、または-NR^(5)_(2)を表し;」及び「R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;」
とあるのを
「Aは?OHを表し;」
に訂正し
「R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;」とあるのを削除し、
「Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;」とあるのを「Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC_(1-6)アルキレン基を表し;」と訂正し、
「X^(3)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;」とあるのを「X^(3)は、単結合を表し;」と訂正し、
「εは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;ε’は、それぞれ独立して、1?9の整数である。」とあるのを「εは、1であり;ε’は、1である。」と訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?13、15?24、26?29も同様に訂正する。

(2)訂正事項2(請求項10に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項10において、
「請求項1?9のいずれかに記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。」とあるのを、「請求項1?9のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11?13、15?24、26?29も同様に訂正する。

(3)訂正事項3(請求項11に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項11において、
「請求項1?10のいずれかに記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。」とあるのを、「請求項1?10のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項11を直接又は間接的に引用する請求項12?13、15?24、26?29も同様に訂正する。

(4)訂正事項4(請求項12に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項12において、
「請求項1?11のいずれかに記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。」とあるのを、「請求項1?11のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13、15?24、26?29も同様に訂正する。

(5)訂正事項5(請求項14に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(6)訂正事項6(請求項15に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項15において、
「請求項1?14のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項15を直接又は間接的に引用する請求項16?24、26?29も同様に訂正する。

(7)訂正事項7(請求項16に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項16において、
「請求項1?15のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項16を直接又は間接的に引用する請求項17?24、26?29も同様に訂正する。

(8)訂正事項8(請求項17に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項17において、
「請求項1?16のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?16のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項17を直接又は間接的に引用する請求項18?24、26?29も同様に訂正する。

(9)訂正事項9(請求項18に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項18において、
「請求項1?17のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?17のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項18を直接又は間接的に引用する請求項19?24、26?29も同様に訂正する。

(10)訂正事項10(請求項19に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項19において、
「請求項1?18いずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項18に記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項19を直接又は間接的に引用する請求項20?24、26?29も同様に訂正する。

(11)訂正事項11(請求項20に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項20において、
「請求項1?19のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項18?19のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項20を直接又は間接的に引用する請求項21?24、26?29も同様に訂正する。

(12)訂正事項12(請求項21に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項21において、
「請求項1?20のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13、15?20のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項21を直接又は間接的に引用する請求項22?24、26?29も同様に訂正する。

(13)訂正事項13(請求項22に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項22において、
「請求項1?21のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?21のいずれかに記載の表面処理剤。」と訂正する。
請求項22を直接又は間接的に引用する請求項23?24、26?29も同様に訂正する。

(14)訂正事項14(請求項23に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項23において、
「請求項1?22のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。」とあるのを「請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。」と訂正する。
請求項23を直接又は間接的に引用する請求項24、26?29も同様に訂正する。

(15)訂正事項15(請求項24に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項24において、
「基材と、該基材の表面に、請求項1?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。」とあるのを「基材と、該基材の表面に、請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。」と訂正する。
請求項24を直接又は間接的に引用する請求項26?29も同様に訂正する。

(16)訂正事項16(請求項25に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項25において、「前記表面処理剤より形成された層は、基材に接する下層と、表面処理剤より形成された層の表面に位置する上層とを含み、下層の含フッ素化合物の含有割合より、上層の含フッ素化合物の含有割合のほうが高い、請求項24に記載の物品。」とあるうち、請求項1を引用する請求項24を引用するものについて、独立形式に改め、
「基材と、該基材の表面に、
(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:
【化6】


[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(1)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1?22のアルキル基を表し;
R^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(11)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R^(12)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n))単位毎に独立して、0?3の整数であり;
ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR^(2)が存在し;
X^(4)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
X^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2?10の整数であり;
αは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(5)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
βは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(7)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
γは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
R^(a)は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR^(71)_(p)R^(72)_(q)R^(73)_(r)を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R^(71)は、各出現においてそれぞれ独立して、R^(a’)を表し;
R^(a’)は、R^(a)と同意義であり;
R^(a)中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R^(72)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(73)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
ただし、一のRaにおいて、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR^(72)が存在し;
R^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(c)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、2?3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]
および
(2)下記式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:
【化7】


[式中:Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-COOR^(5)、-CONH_(2)、-P(O)(OH)_(2)、-OP(O)(OH)_(2)、または-NR^(5)_(2)を表し;
R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
X^(3)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
εは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
ε’は、それぞれ独立して、1?9の整数である。]
を含んでなる真空蒸着用の表面処理剤より形成された層とを含む物品であって、
前記表面処理剤により形成された層は、基材に接する下層と、表面処理剤より形成された層の表面に位置する上層とを含み、下層の含フッ素化合物の含有割合より、上層の含フッ素化合物の含有割合の方が高い、物品。」と訂正する。

(17)訂正事項17(請求項26に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項26において、
「請求項24または25に記載の物品。」とあるのを、「請求項24に記載の物品。」と訂正する。
請求項26を直接又は間接的に引用する請求項27?29も同様に訂正する。

(18)訂正事項18(請求項28に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項28において、
「請求項24?27に記載の物品。」とあるのを、「請求項24に記載の物品。」と訂正する。
請求項28を直接又は間接的に引用する請求項29も同様に訂正する。

(19)訂正事項19(請求項29に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項29において、
「請求項24?28に記載の物品。」とあるのを、「請求項24に記載の物品。」と訂正する。

2.本件訂正の適否
(1)訂正事項1?19に係る本件訂正前の請求項1?29について、請求項2?29は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1?29に対応する本件訂正後の請求項1?29は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項1?19による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとになされたものである。

(2)訂正事項1は、訂正前の 「Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-COOR^(5)、-CONH_(2)、-P(O)(OH)_(2)、-OP(O)(OH)_(2)、または-NR^(5)_(2)を表し;」及び「R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;」とあるのを「Aは?OHを表し;」とする訂正事項、
「Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;」とあるのを「Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC_(1-6)アルキレン基を表し;」とする訂正事項、
「X^(3)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;」とあるのを「X^(3)は、単結合を表し;」とする訂正事項、及び、
「εは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;ε’は、それぞれ独立して、1?9の整数である。」とあるのを「εは、1であり;ε’は、1である。」とする訂正事項を含むものであるが、これらの訂正事項はいずれも択一的記載の要素の削除にあたるものであるから、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による訂正は、択一的記載の要素を削除するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

なお、上記のとおり、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件特許異議申立においては、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正される請求項9に対して、特許異議の申立てがなされていない。
したがって、訂正事項1に係る訂正のうち、請求項9に対する部分については、特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満足するといえるか検討を要するものであるが、後記第5のとおり、本件訂正後の請求項1に係る発明の特許は、令和2年1月27日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した理由によって取り消すべきものとすることはできないものであり、また、後記第6のとおり、本件特許異議の申立ての理由によっても取り消すべきものとすることはできないものであるから、いわゆる独立特許要件を満足する発明であるといえる。
そして、請求項9に係る発明は、請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用してさらに限定したものである。
そうすると、本件訂正後の請求項9に係る発明について、訂正事項1に係る訂正のうち、請求項2?8を引用する部分も、特許法第126条第7項に規定する要件を満足すると認められる。

(3)訂正事項2?4に係る訂正前の請求項10?12が引用している、訂正前の請求項1?9の末尾には「表面処理剤」と記載されている。また、訂正事項2?4に係る訂正前の請求項10?12を引用する形式で記載されている、訂正前の請求項13の末尾には「請求項1?12のいずれかに記載の表面処理剤」と記載されており、訂正前の請求項14?22の末尾にも訂正前の請求項13と同様の記載がある。
そうすると、訂正前の請求項10?12の末尾の「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。」という記載が、「表面処理剤」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項2?4は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項2?4は、上記のとおり明らかな誤記を訂正するものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5、6項に適合するものである。

(4)訂正事項5の、特許請求の範囲の請求項14を削除する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項6の、「請求項1?14のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正は、多数項引用形式請求項の引用請求項を減少させるものであるから、訂正事項6は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

同様に、訂正事項7の「請求項1?15のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項8の「請求項1?16のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?16のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項9の「請求項1?17のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?17のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項10の「請求項1?18いずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項18に記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項11の「請求項1?19のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項18または19のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項12の「請求項1?20のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?20のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項13の「請求項1?21のいずれかに記載の表面処理剤。」とあるのを「請求項1?13および15?21のいずれかに記載の表面処理剤。」とする訂正、訂正事項14の「請求項1?22のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。」とあるのを「請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。」とする訂正、訂正事項15の「基材と、該基材の表面に、請求項1?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。」とあるのを「基材と、該基材の表面に、請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。」とする訂正、訂正事項17の「請求項24または25に記載の物品。」とあるのを、「請求項24に記載の物品。」とする訂正、訂正事項18の「請求項24?27に記載の物品。」とあるのを、「請求項24に記載の物品。」とする訂正、訂正事項19の「請求項24?28に記載の物品。」とあるのを、「請求項24に記載の物品。」とする訂正も、いずれも多数項引用形式請求項の引用請求項を減少させる訂正であるから、訂正事項6?15、17?19は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項6?15、17?19はいずれも多数項引用形式請求項の引用請求項を減少させるものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項16は、訂正前の請求項25に前記表面処理剤より形成された層は、基材に接する下層と、表面処理剤より形成された層の表面に位置する上層とを含み、下層の含フッ素化合物の含有割合より、上層の含フッ素化合物の含有割合のほうが高い、請求項24に記載の物品。」とあり、訂正前の請求項24に「基材と、該基材の表面に、請求項1?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。」とあったことに基づき、請求項1を引用する請求項24を引用するものについて、独立形式に改め、
「基材と、該基材の表面に、
(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:
【化6】


[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(1)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1?22のアルキル基を表し;
R^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(11)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R^(12)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n))単位毎に独立して、0?3の整数であり;
ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR^(2)が存在し;
X^(4)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
X^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2?10の整数であり;
αは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(5)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
βは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(7)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
γは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
R^(a)は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR^(71)_(p)R^(72)_(q)R^(73)_(r)を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R^(71)は、各出現においてそれぞれ独立して、R^(a’)を表し;
R^(a’)は、R^(a)と同意義であり;
R^(a)中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R^(72)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(73)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
ただし、一のRaにおいて、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR^(72)が存在し;
R^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(c)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、2?3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]
および
(2)下記式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:
【化7】


[式中:Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-COOR^(5)、-CONH_(2)、-P(O)(OH)_(2)、-OP(O)(OH)_(2)、または-NR^(5)_(2)を表し;
R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
X^(3)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
εは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
ε’は、それぞれ独立して、1?9の整数である。]
を含んでなる真空蒸着用の表面処理剤より形成された層とを含む物品であって、
前記表面処理剤により形成された層は、基材に接する下層と、表面処理剤より形成された層の表面に位置する上層とを含み、下層の含フッ素化合物の含有割合より、上層の含フッ素化合物の含有割合の方が高い、物品。」と訂正するものであり、この訂正は、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるためのものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。

そして、訂正事項16は願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.小括
以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5、6項及び同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?24、26?29]、25について訂正することを認める。

第3.本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1?29に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?29に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、訂正特許請求の範囲の請求項1?29に係る発明を、以下「本件発明1」?「本件発明29」、あるいはまとめて「本件発明」という。

「【請求項1】
(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:
【化1】


[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(1)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1?22のアルキル基を表し;
R^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(11)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R^(12)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n))単位毎に独立して、0?3の整数であり;
ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR^(2)が存在し;
X^(4)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
X^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2?10の整数であり;
αは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(5)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
βは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(7)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
γは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
R^(a)は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR^(71)_(p)R^(72)_(q)R^(73)_(r)を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R^(71)は、各出現においてそれぞれ独立して、R^(a’)を表し;
R^(a’)は、R^(a)と同意義であり;
R^(a)中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R^(72)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(73)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
ただし、一のRaにおいて、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR^(72)が存在し;
R^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(c)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、2?3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]
および
(2)下記式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:
【化2】

[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OHを表し;
R5は、それぞれ独立して、水素原子または基を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC_(1-6)アルキレン基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
X^(3)は、それぞれ独立して、単結合を表し;
εは、1であり;
ε’は、1である。]
を含んでなる、真空蒸着用の表面処理剤。
【請求項2】
Rfが、炭素数1?16のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物において、PFPEが下記式(a)、(b)または(c):
(a):-(OC_(3)F_(6))_(b)-
[式(a)中、bは1以上200以下の整数である];
(b):-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-
[式(b)中、aおよびbは、それぞれ独立して、0以上30以下の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して、1以上200以下整数であり、a、b、cおよびdの和は、10以上200以下であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である];
(c):-(OC_(2)F_(4)-R_(8))_(n)”-
[式(c)中、R^(8)は、OC_(2)F_(4)、OC_(3)F_(6)およびOC_(4)F_(8)から選択される基で
あり;
n”は、2?100の整数である。]
で表される基である、請求項1または2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物における、PFPEにおいて:
OC_(4)F_(8)が、OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)であり、
OC_(3)F_(6)が、OCF_(2)CF_(2)CF_(2)であり、
OC_(2)F_(4)が、OCF_(2)CF_(2)である、
請求項1?3のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項5】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して、2?4価の有機基であり、α、βおよびγが、それぞれ独立して、1?3であり、α’、β’およびγ’が1である、請求項1?4のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項6】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が2価の有機基であり、α、βおよびγが1であり、α’、β’およびγ’が1である、請求項1?5のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項7】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して、-(R^(31))_(p”)-(X^(a))_(q”)-
[式中:
R^(31)は、単結合、-(CH_(2))_(s’)-(式中、s’は、1?20の整数である)またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し;
X^(a)は、-(X^(b))_(l’)-(式中、l’は、1?10の整数である)を表し;
X^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R^(33))_(2)-、-(Si(R^(33))_(2)O)_(m’)-Si(R^(33))_(2)-(式中、m’は1?100の整数である)、-CONR^(34)-、-O-CONR^(34)-、-NR^(34)-および-(CH_(2))_(n’)-(式中、n’は1?20の整数である)からなる群から選択される基を表し;
R^(33)は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C_(1-6)アルキル基またはC_(1-6)アルコキシ基を表し;
R^(34)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC_(1-6)アルキル基を表し;
p”は、0または1であり;
q”は、0または1であり;
ここに、p”およびq”の少なくとも一方は1であり、p”およびq”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R^(31)およびX^(a)は、フッ素原子、C_(1-3)アルキル基およびC_(1-3)フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。]
で表される基である、請求項1?6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項8】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して:
-CH_(2)O(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(6)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(2)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(3)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(10)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(20)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)OCF_(2)CHFOCF_(2)-、
-CH_(2)OCF_(2)CHFOCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCF_(2)CHFOCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-
-CH_(2)OCH_(2)(CH_(2))_(7)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(2)(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(2)-、
-(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(4)-、
-(CH_(2))_(6)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)-、
-CON(CH_(3))-(CH_(2))_(3)-、
-CON(Ph)-(CH_(2))_(3)-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CH_(2))_(6)-、
-CON(CH_(3))-(CH_(2))_(6)-、
-CON(Ph)-(CH_(2))_(6)-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CH_(2))_(2)NH(CH_(2))_(3)-、
-CONH-(CH_(2))_(6)NH(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)O-CONH-(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)O-CONH-(CH_(2))_(6)-、
-S-(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(2)S(CH_(2))_(3)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(2)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(3)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(10)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(20)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-
-C(O)O-(CH_(2))_(3)-、
-C(O)O-(CH_(2))_(6)-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-CH(CH_(3))-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-CH(CH_(3))-CH_(2)-、

【化3】

からなる群から選択される、請求項1?7のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項9】
X^(4)が、-O-CFR^(13)-(CF_(2))_(e)-であり、
R^(13)が、フッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、
eが、0または1である、
請求項1?8のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項10】
X^(2)が、-(CH_(2))_(s)-であり、
sが、0?2の整数である、
請求項1?9のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項11】
式(C1)および(C2)において、kが3であり、R^(a)中、qが3である、請求項1?10のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項12】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して、3?10価の有機基である、請求項1?11のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項13】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して:
【化4】

[式中、各基において、Tのうち少なくとも1つは、式(A1)、(A2)、(B1)、
(B2)、(C1)および(C2)においてPFPEに結合する以下の基:
-CH_(2)O(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)-、
-CF_(2)O(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(2)-、
-(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(4)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)-、
-CON(CH_(3))-(CH_(2))_(3)-、
-CON(Ph)-(CH_(2))_(3)-(式中、Phはフェニルを意味する)、および
【化5】

であり、
別のTのうち少なくとも1つは、式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)において炭素原子またはSi原子に結合する-(CH_(2))_(n)-(nは2?6の整数)であり、残りは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基またはアルコキシ基であり、
R^(41)は水素原子、フェニル基、炭素数1?6のアルコキシ基でありまたは炭素数1?6のアルキル基であり、
R^(42)は水素原子、C_(1-6)のアルキル基またはC_(1-6)のアルコキシ基を表す。]
からなる群から選択される、請求項1?12のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項14】(削除)
【請求項15】
(1)パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、(2)含フッ素化合物との質量比が、1:50?50:1である、請求項1?13のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項16】
(1)パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、(2)含フッ素化合物との質量比が、1:10?10:1である、請求項1?13および15のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項17】
(1)パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、(2)含フッ素化合物との質量比が、1:4?4:1である、請求項1?13および15?16のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項18】
含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1?13および15?17のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項19】
含フッ素オイルが、式(3):
R^(21)-(OC_(4)F_(8))_(a’)-(OC_(3)F_(6))_(b’)-(OC_(2)F_(4))_(c’)-(OCF_(2))_(d’)-R^(22)
・・・(3)
[式中:
R^(21)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(22)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基、フッ素原子または水素原子を表し;
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1であり、添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される1種またはそれ以上の化合物である、請求項18のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項20】
含フッ素オイルが、式(3a)または(3b):
R^(21)-(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(b’’)-R^(22) ・・・(3a)
R^(21)-(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(a’’)-(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(b’’)-(OCF_(2)CF_(2))_(c’’)-(OCF_(2))_(d’’)-R^(22) ・・・(3b)
[式中:
R^(21)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(22)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基、フッ素原子または水素原子を表し;
式(3a)において、b’’は1以上100以下の整数であり;
式(3b)において、a’’およびb’’は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c’’およびd’’は、それぞれ独立して1以上300以下の整数であり;
添字a’’、b’’、c’’またはd’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される1種またはそれ以上の化合物である、請求項18または19のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項21】
さらに溶媒を含む、請求項1?13および15?20のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項22】
防汚性コーティング剤または防水コーティング剤として使用される、請求項1?13および15?21のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項23】
請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項24】
基材と、該基材の表面に、請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
【請求項25】
基材と、該基材の表面に、
(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:
【化6】


[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(1)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1?22のアルキル基を表し;
R^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(11)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R^(12)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n))単位毎に独立して、0?3の整数であり;
ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR^(2)が存在し;
X^(4)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
X^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2?10の整数であり;
αは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(5)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
βは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(7)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
γは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
R^(a)は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR^(71)_(p)R^(72)_(q)R^(73)_(r)を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R^(71)は、各出現においてそれぞれ独立して、R^(a’)を表し;
R^(a’)は、R^(a)と同意義であり;
R^(a)中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R^(72)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(73)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
ただし、一のRaにおいて、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR^(72)が存在し;
R^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(c)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、2?3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]
および
(2)下記式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:
【化7】

[式中:Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-COOR^(5)、-CONH_(2)、-P(O)(OH)_(2)、-OP(O)(OH)_(2)、または-NR^(5)_(2)を表し;
R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
X^(3)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
εは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
ε’は、それぞれ独立して、1?9の整数である。]
を含んでなる真空蒸着用の表面処理剤より形成された層とを含む物品であって、
前記表面処理剤により形成された層は、基材に接する下層と、表面処理剤より形成された層の表面に位置する上層とを含み、下層の含フッ素化合物の含有割合より、上層の含フッ素化合物の含有割合の方が高い、物品。
【請求項26】
基材がガラスまたはサファイアガラスである、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
ガラスが、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラスおよび石英ガラスから成る群から選択されるガラスである、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記物品が光学部材である、請求項24のいずれかに記載の物品。
【請求項29】
前記物品がディスプレイである、請求項24のいずれかに記載の物品。

第4 令和2年1月27日付の取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要

本件特許の請求項1?29に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由とその概要は、次のとおりである。

理由1.(サポート要件)本件特許の請求項1?8、10?24、26?29に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2.(進歩性)本件特許の請求項1?8、10?13、15、16、18?24、26?29は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8、10?13、15、16、18?24、26?29に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1.理由1(サポート要件)の概要
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0007】の記載からみて、「撥水性、撥油性、防汚性、防水性を有し、かつ、高い摩擦耐久性を有する層を形成することのできるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤を提供すること」であると認められる。

発明の詳細な説明の【0008】?【0009】、【0187】には、「アルコールなどの官能基が層を形成するパーフルオロポリエーテル鎖の酸素原子と、水素結合等の相互作用が働き、層への担持力が大きくなり、耐摩耗性が向上したと考えられる」、すなわち、
(a)特定のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物により形成された「層」の「パーフルオロポリエーテル鎖の酸素原子」と、特定の含フッ素化合物の「アルコールなどの官能基」との間に、「水素結合等の相互作用」が生じる
(b)当該相互作用により、特定の含フッ素化合物の「層への担持力が大きくな」る
(c)特定の含フッ素化合物の「層への担持力が大きくな」ることにより、「耐摩耗性が向上」する
と考えられることが記載されている。
しかしながら、本件特許発明1において、どのような作用機序に基いて、上述の(a)?(c)が実現されるのかについて、発明の詳細な説明には明確に説明されておらず、またそれが当業者にとって明らかでもない。
また、発明の詳細な説明の実施例には、特定のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物に、「CF_(3)O(CF_(2)CF_(2)O)_(19)(CF_(2)O)_(16)CF_(2)CH_(2)OH」、「CF_(3)CF_(2)CF_(2)O(CF_(2)CF_(2)CF_(2)O)_(20)CF_(2)CF_(2)CH_(2)OH」、また「CF_(3)CF_(2)CF_(2)O(CF_(2)CF_(2)CF_(2)O)_(30)CF_(2)CF_(2)CH_(2)OH」を加えた表面処理剤の摩擦耐久性を確認した例が記載されているものの、当該特定の実施例の効果が確認できれば、本件特許発明1の全般に渡って同様の作用効果が奏され、本件特許発明の課題が解決できることが、本件特許の出願日時点の技術常識からみて自明なものともいえない。

2.理由2(進歩性)で引用する刊行物

引用例1:特表2010-502784号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特開2008-144144号公報(異議申立人が提出した甲第3号証)

第5 令和2年1月27日付の取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由についての当審の判断

1.理由1(サポート要件)について

特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(1)本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0007】の記載からみて、「撥水性、撥油性、防汚性、防水性を有し、かつ、高い摩擦耐久性を有する層を形成することのできるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤を提供すること」(以下、「本件特許発明の課題」という)であると認められる。

(2)発明の詳細な説明の記載と技術常識について
発明の詳細な説明の【0008】?【0009】等には、本件特許発明は、上記課題を解決するために、特定のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含んで成る表面処理剤に、官能基(水酸基等)を有する特定の含フッ素化合物を加えた旨記載されている。
また、【0187】には、「アルコールなどの官能基が層を形成するパーフルオロポリエーテル鎖の酸素原子と、水素結合等の相互作用が働き、層への担持力が大きくなり、耐摩耗性が向上したと考えられる」、すなわち、

(a)特定のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物により形成された「層」の「パーフルオロポリエーテル鎖の酸素原子」と、特定の含フッ素化合物の「アルコールなどの官能基」との間に、「水素結合等の相互作用」が生じる
(b)当該相互作用により、特定の含フッ素化合物の「層への担持力が大きくな」る
(c)特定の含フッ素化合物の「層への担持力が大きくな」ることにより、「耐摩耗性が向上」する
と考えられることが記載されている。

また、発明の詳細な説明の実施例には、特定のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物に、「CF_(3)O(CF_(2)CF_(2)O)_(19)(CF_(2)O)_(16)CF_(2)CH_(2)OH」、「CF_(3)CF_(2)CF_(2)O(CF_(2)CF_(2)CF_(2)O)_(20)CF_(2)CF_(2)CH_(2)OH」、また「CF_(3)CF_(2)CF_(2)O(CF_(2)CF_(2)CF_(2)O)_(30)CF_(2)CF_(2)CH_(2)OH」を加えた表面処理剤の摩擦耐久性を確認した例が記載されている。

ここで、上記発明の詳細な説明の実施例に記載されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物は、いずれもPFPE基にCH_(2)が単結合で結合し、末端にOH基を有するものである点で共通の化学構造を有している。また、末端のOH基は、上記【0187】の記載から、耐摩擦性の向上に寄与すると説明されているアルコールなどの官能基に該当する。
そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
したがって、本件特許を、取消理由1により取り消すべきものとすることはできない。

2.理由2(進歩性)について
(1)本件発明
本件発明は、第3に記載のとおりである。
(2)証拠一覧
理由2において採用する証拠は以下のとおりである。

引用例1:特表2010-502784号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特開2008-144144号公報(異議申立人が提出した甲第3号証)

(3)証拠の記載事項
引用例1、2には、それぞれ、次の記載がある。

ア 引用例1

摘記1a:請求項1、10?11、14
「【請求項1】 式:R_(f)[-R^(1)-C_(2)H_(4)-S-R^(2)-Si(Y)_(x)(R^(3))_(3-x)]_(y)(式中、R_(f)は、一価又は二価ペルフルオロポリエーテル基であり、R^(1)は、共有結合、-O-、又は二価アルキレン若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、R^(2)は、二価アルキレン若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、Yは、加水分解性基であり、R^(3)は、一価アルキル又はアリール基であり、xは1、2又は3であり、yは1又は2である)のペルフルオロポリエーテルシラン。・・・(中略)・・・
【請求項10】 表面上に請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシランのコーティングを有する基材を含むコーティングされた物品。【請求項11】 前記基材が、ガラス、セラミックス、金属、石、熱可塑性ポリマー、塗装、粉末コーティング、及び木材から選択される、請求項10に記載のコーティングされた物品。・・・(中略)・・・
【請求項14】 請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシラン、有機溶媒、所望により有機又は無機酸、及び所望により水を含むコーティング組成物。」

摘記1b:【0001】、【0008】
「【技術分野】【0001】 本発明は、新規ペルフルオロポリエーテルシラン、新規ペルフルオロポリエーテルシランを含有する組成物、並びに基材、具体的にはセラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材を、撥水性、撥油性、防染性及び/又は防汚性にするための基材の処理方法に関する。本発明はまた、かかる方法で使用するための組成物に関する。・・・(中略)・・・
【0008】 本発明はさらに、基材、具体的には硬質基材を、ペルフルオロポリエーテルシランでコーティングし、それに防汚性コーティングを提供する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、例えば蒸着技術により、ペルフルオロポリエーテルシランを蒸発させ、それを基材に堆積させることを含む、基材にペルフルオロポリエーテルシランを堆積させる方法を提供する。」

摘記1c:【0018】?【0019】
「【0018】 好ましいペルフルオロポリエーテルシランの例としては、以下の近似平均構造が挙げられるが、これらに限定されない。反復単位の数n及びmは、nが1?50、一般に3?30、n+mは30以下で変動する。
【0019】・・・(中略)・・・C_(3)F_(7)O[CF_(2)CF_(2)CF_(2)O]_(n)C_(2)F_(4)CH_(2)OC_(3)H_(6)SC_(3)H_(6)Si(OCH_(3))_(3)」

摘記1d:【0032】
「【0032】 蒸着法により式Iの化合物を適用することが望ましい場合、ペルフルオロポリエーテル部分の分子量は、好ましくは10,000g/モル未満、より好ましくは1000?5000g/モルである。」

摘記1e:【0038】?【0039】
「【0038】 水に加えて、本発明の組成物はまた有機酸又は無機酸を含んでもよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、ギ酸等;CF_(3)SO_(3)H、C_(3)F_(7)CO_(2)K又は式R_(f)^(2)[-(L)_(a)-Z]_(b)(IV)(式中、R_(f)^(2)は、一価又は二価ペルフルオロアルキル又はペルフルオロポリエーテル基を表し、Lは有機二価連結基を表し、Zはカルボン酸、スルホン酸又はリン酸基などの酸基を表し、aは0又は1であり、bは1又は2である)により表すことができるもののようなフッ素化有機酸が挙げられる。
【0039】 好適なR_(f)^(2)基の例としては、所与の上記R_(f)が挙げられる。式(IV)の有機酸の例としては、デュポン(DuPont)から市販されているC_(3)F_(7)O(CF(CF_(3))CF_(2))_(10?30)CF(CF_(3))COOH、又はCF_(3)(CF_(2))_(2)OCF(CF_(3))COOHが挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、塩酸等が挙げられる。酸は、一般に、シランの質量に対して、約0.01?10質量%、より好ましくは0.05質量%?5質量%の量で、組成物中に含まれる。」

摘記1f:【0043】?【0044】
「【0043】 フッ素化溶媒は、単独で用いてよく、又はペルフルオロポリエーテルシランの溶解度を向上させるために有機溶媒と併用してもよい。かかるフッ素化溶媒は、一般に、存在する場合、水及び酸に対する溶解度の要件を満たさない可能性があるため、そのままでの使用に好適ではない。一般に、ペルフルオロポリエーテルシランは、まずフッ素化溶媒でコーティングし、次いで酸性水溶液と接触させることができる。
【0044】 フッ素化溶媒の例としては、3Mから入手可能なペルフルオロヘキサン又はペルフルオロオクタンなどのフッ素化炭化水素;ソルベイ(Solvay)から入手可能なペンタフルオロブタン又はデュポン(DuPont)から入手可能なCF_(3)CFHCFHCF_(2)CF_(3)などの部分的にフッ素化された炭化水素;3Mからノベック(Novec)(商標)HFE7100及びノベック(商標)HFE 7200としてそれぞれ入手可能なメチルペルフルオロブチルエーテル又はエチルペルフルオロブチルエーテルなどのアルキルペルフルオロアルキルエーテルを含むヒドロフルオロエーテルが挙げられる。これらの物質と有機溶媒との種々のブレンドを使用することができる。」

摘記1g:【0045】
「【0045】 特に好ましい基材は、反射防止基材である。反射防止(AR)表面は、眼科用装置及び電子装置の表示装置で有用である、ガラス又はプラスチックで作製された基材上に、金属酸化物の薄膜を真空蒸着又はスパッタリングすることにより調製される基材である。かかる金属酸化物フィルムは、比較的多孔質であり、比較的粗い輪郭を形成する粒子のクラスターからなる。かかるコーティングは、グレア及び反射を減少させるのに役立つ。それらを眼科用眼鏡に使用すると、眼精疲労を低減させる。それらが導電性コーティングであるとき、静電放電及び電磁放射線の低減にも役立つ。従って、これらのコーティングの1つの用途は、コントラストを強化し、反射防止特性を与え、コンピュータのモニタなどの表示装置の可読性を向上させることである。反射防止基材は、米国特許第5,851,674号に記載されている。」

摘記1h:【0059】
「【0059】 一実施形態では、蒸発は、ペルフルオロポリエーテルシラン及び反射防止基材を槽内に定置し、槽内の圧力を低下させ、ペルフルオロポリエーテルシランを加熱することを含む。ペルフルオロポリエーテルシランは、典型的には、るつぼ中に維持されるが、いくつかの実施形態では、シランを、セラミックペレットなどの多孔質マトリックスに吸収させ、該ペレットを真空槽内で加熱する。」

イ 引用例2

摘記2a:請求項1、4?6
「【請求項1】(A)下記式(1)又は(2)で表される含フッ素有機ケイ素化合物の少なくとも一種
Rf^(1)-QZ^(1)A_(α) (1)
A_(α)Z^(1)Q-Rf^(2)-(Q-Z^(2)-Q-Rf^(2))_(x)-QZ^(1)A_(α) (2)[式中、Rf^(1)はパーフルオロアルキル基、またはパーフルオロオキシアルキル基、Rf^(2)はパーフルオロオキシアルキレン基、Z^(1)は単結合又はケイ素原子1?15個を含む2?9価の有機基、Z^(2)はケイ素原子2?100個を含む2価のポリオルガノシロキシレン基であり、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2?12の、2?9価の基であり、但し式(2)において、互いに異なっていてもよく、αは1?8の整数、xは0?5の整数であり、及び、Aは下記一般式で示される基である-C_(b)H_(2b)SiR_(3-a)X_(a)(式中、Rは炭素数1?4のアルキル基またはフェニル基、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは0?6の整数である)]、及び(B)数平均分子量が100?10,000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸を、前記(A)成分100質量部に対して、0.001?10質量部で、含有することを特徴とするコーティング剤組成物。・・・(中略)・・・
【請求項4】 前記(B)成分が、下記のいずれかの式で表されることを特徴とする請求項1または2記載のコーティング剤組成物。

(nは1?200の整数である)・・・(中略)・・・
【請求項5】(C)フッ素系溶媒を、(A)成分と(B)成分の合計質量%が0.01?1%になる量でさらに含むことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項記載のコーティング剤組成物。
【請求項6】 式(1)において、Rf^(1)が下記式(3)、(4)または(5)で示されることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項記載のコーティング剤組成物。【化1】

(式中、mは2?200、dは1?3の整数、YはF又はCF_(3)基である)・・・(中略)・・・」

摘記2b:【0001】
「【技術分野】【0001】 本発明は、短時間で硬化し、撥水性、撥油性、汚れ防止性に優れた硬化皮膜を得ることができ、種々の基材表面に防汚性を付与するコーティング剤組成物を提供する。」
摘記2c:【0024】?【0031】
「【0024】 Qは上記Rf^(1)またはRf^(2)基と、Z^(1)又はZ^(2)基とを、夫々連結するための基であり、式(2)においては、互いに異なっていてもよい。但し、Z^(1)が単結合である場合には、QがAに結合されており、Qが、Rf^(1)またはRf^(2)基とAを結合する基となる。該Qは、炭素数2?12の2?9価の有機基であり、酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい。該Qとしては、下記式で示される、炭化水素基、アミド、エーテル、エステル結合等を含む有機基が挙げられる。
【0025】【化7】


(nは0?4の整数である)
【0026】【化8】


(nは1?6の整数である)

(nは1?5の整数である)
【0027】【化9】

【0028】【化10】

【0029】 Z^(1)は単結合、又は、ケイ素原子1?15個を含む2?9価の基であり、例えば、下記式で表される基が挙げられる。なお、上述のとおり、Z^(1)が単結合であるときには、加水分解性基AがQに直接結合されている。
【0030】【化11】


(nは0?14の整数)
【0031】【化12】


摘記2d:【0049】
「【0049】[溶媒] 本発明のコーティング剤組成物は使用直前に溶媒によって希釈してもよいが、予めフッ素系溶媒を混合しておいてもよい。好適なフッ素系溶媒としては、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン及び下記式で示されるものを例示することができる。これらの溶媒は、例えば、商品名Novec HFE-7100、Novec HFE-7200、Novec 7300 、Fluorinert FC-77(住友3M 社製)、アサヒクリン AK-225(旭硝子社製)として、市販されている。これらを混合して使用したり、本発明の目的を阻害しない範囲で、非フッ素系の溶媒を添加することもできる。溶媒は、(A)成分と(B)成分の合計質量%が0.01?1%、好ましくは0.05?0.5重量%になるように添加することが好ましい。」

摘記2e:【0052】
「【0052】上記コーティング剤で処理する基材は、特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミックなど各種材質のものであってよく、これらに撥水撥油性、防汚性を付与することができる。」

(4)引用例1、2に記載された発明

ア.引用例1に記載された発明
引用例1の請求項1を引用する請求項14には、式:R_(f)[-R^(1)-C_(2)H_(4)-S-R^(2)-Si(Y)_(x)(R^(3))_(3-x)]_(y)(R_(f)は、一価又は二価ペルフルオロポリエーテル基、R^(1)は、共有結合、-O-、又は二価アルキレン若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、R^(2)は、二価アルキレン若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、Yは、加水分解性基、R^(3)は、一価アルキル又はアリール基、xは1、2又は3、yは1又は2)で表されるペルフルオロポリエーテルシランと、有機溶媒と、有機酸とを含むコーティング組成物が記載され(摘記1a参照)、当該コーティング組成物を蒸着により基材に堆積させ、防汚性コーティングを形成することが記載されている(摘記1b参照)。
そうすると、引用例1には、「式:R_(f)[-R^(1)-C_(2)H_(4)-S-R^(2)-Si(Y)_(x)(R^(3))_(3-x)]_(y)(R_(f)は、一価又は二価ペルフルオロポリエーテル基、R^(1)は、共有結合、-O-、又は二価アルキレン若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、R^(2)は、二価アルキレン若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、Yは、加水分解性基、R^(3)は、一価アルキル又はアリール基、xは1、2又は3、yは1又は2)で表されるペルフルオロポリエーテルシランと、有機溶媒と、有機酸とを含む、蒸着により基材に防汚性コーティングを形成する組成物」(以下、この発明を「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。

イ.引用例2に記載された発明
引用例2の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6には、Rf^(1)-QZ^(1)-(C_(b)H_(2b)SiR_(3-a)X_(a))_(α)で表される含フッ素有機ケイ素化合物(Z^(1)は単結合又はケイ素原子1?15個を含む2?9価の有機基、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2?12の、2?9価の基、αは1?8の整数、Rは炭素数1?4のアルキル基、Xは加水分解性基、aは2又は3、bは0?6の整数)であって、Rf^(1)がF(CFYCF_(2)O)_(m)C_(d)F_(2d)(mは2?200、dは1?3の整数、YはF又はCF_(3)基)である化合物、及び数平均分子量が100?10,000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含むF(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)CF(CF_(3))-COOH(nは1?200の整数)で表される含フッ素カルボン酸を、前記含フッ素有機ケイ素化合物100質量部に対して、0.001?10質量部で含有することを特徴とするコーティング剤組成物が記載され(摘記2a参照)、当該コーティング組成物を基材表面で硬化させ、防汚性を付与することが記載されている(摘記2b参照)。
そうすると、引用例2には、「式:Rf^(1)-QZ^(1)-(C_(b)H_(2b)SiR_(3-a)X_(a))_(α)で表される含フッ素有機ケイ素化合物(Z^(1)は単結合又はケイ素原子1?15個を含む2?9価の有機基、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2?12の、2?9価の基、αは1?8の整数、Rは炭素数1?4のアルキル基、Xは加水分解性基、aは2又は3、bは0?6の整数)であって、Rf^(1)がF(CFYCF_(2)O)_(m)C_(d)F_(2d)(mは2?200、dは1?3の整数、YはF又はCF_(3)基)である化合物、及び数平均分子量が100?10,000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含むF(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(n)CF(CF_(3))-COOH(nは1?200の整数)で表される含フッ素カルボン酸を、前記含フッ素有機ケイ素化合物100質量部に対して、0.001?10質量部で含有する、基材表面で硬化させ防汚性を付与するコーティング剤組成物」(以下、この発明を「引用例2発明」という)が記載されていると認められる。

(5)対比・判断

ア.本件特許発明1について

(ア)引用例1を主引例とした場合

まず、本件特許発明1と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明の「ペルフルオロポリエーテルシラン」は、Rf(一価または二価のペルフルオロポリエーテル基)を含むシラン化合物であるから、パーフルオロポリエーテル部位含有シラン化合物といえる。また、本願特許発明1の「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」もパーフルオロポリエーテル部位含有シラン化合物といえる。
引用例1発明の「蒸着」は一般に真空下で行われるから、本件特許発明1の「真空蒸着」に相当し、引用例1発明の「基材に防汚性コーティングを形成する組成物」は基材の表面に防汚性コーティングを形成するものであるから、本件特許発明1の「表面処理剤」に相当する。

してみると、本件特許発明1と引用例1発明とは、「パーフルオロポリエーテル部位含有シラン化合物を含む真空蒸着用の表面処理剤」である点において一致し、以下の点において相違が認められる。

(相違点1) 「パーフルオロポリエーテル部位含有シラン化合物」について、本件特許発明1は式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)(いずれも、化学式とその説明の記載を省略する。)のいずれかで表されるものに特定されているのに対し、引用例1発明はR_(f)[-R^(1)-C_(2)H_(4)-S-R^(2)-Si(Y)_(x)(R^(3))_(3-x)]_(y)で表されるペルフルオロポリエーテルシラン(化学式の説明の記載を省略する。)に特定されている点。

(相違点2) 本件特許発明1の組成物は式(E1)および(E2)(化学式とその説明の記載を省略する。)のいずれかで表される「含フッ素化合物」を有するのに対し、引用例1発明は、そのような特定を有していない有機酸を含む点。

まず、事案に鑑み、相違点2について検討する。引用例1には、式(E1)又は(E2)で表される含フッ素化合物やこれを含有させることについては記載も示唆もされていないから、引用例1発明において、当業者といえども、式(E1)又は(E2)で表される含フッ素化合物を含有させることを容易に着想することができたとはいえない。
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)引用例2を主引例とした場合

まず、本件特許発明1と引用例2発明とを比較する。
引用例2発明の「式:Rf^(1)-QZ^(1)-(C_(b)H_(2b)SiR_(3-a)X_(a))_(α)で表される含フッ素有機ケイ素化合物」(化学式の説明の記載を省略する。)のうちα=1、d=2の化合物は、本件特許発明1の式(B1)の「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」(化学式の説明の記載を省略する。)において、「Rf」=FCYFCF_(2)、「PFPE」のc=2?200でa、b、dが0(YがFの場合)、またはb=1?199、c=1でa、dが0(YがCF_(3)の場合)、X^(5)が-QZ^(1)-C_(b)H_(2b)、β’=β=1、n=0または1、R^(1)が炭素数1?4のアルキル基、R^(2)が加水分解性基の化合物に相当する。
引用例2発明の「基材表面で硬化させ防汚性を付与するコーティング剤組成物」は基材表面に適用して防汚性を付与するものであるから、本件特許発明1の「表面処理剤」に相当する。
してみると、本件発明1と引用例2発明とは、 「式(B1)に該当するパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(化学式の説明の記載を省略する。)を含有する表面処理剤」 である点において一致し、以下の点において相違が認められる。

(相違点3) 本件発明1の表面処理剤は「真空蒸着用」であると特定されているのに対し、引用例2発明にはコーティング剤組成物は、そのような特定を備えていない点。
(相違点4) 本件発明1は式(E1)および(E2)のいずれかで表される「含フッ素化合物」(化学式の説明の記載を省略する。)を含有することが特定されているのに対し、引用例2発明は、そのような特定を備えていない点。

まず、事案に鑑み、相違点4について検討する。
引用例4には、式(E1)および(E2)のいずれかで表される「含フッ素化合物」(化学式の説明の記載を省略する。を含有することは記載も示唆もされていないから、引用例2発明において、当業者といえども、式(E1)又は(E2)で表される含フッ素化合物を含有させることを容易に着想することができたとはいえない。
したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2?8、10?13、15?16、18?24、26?29について

本件発明2?8、10?13、15?16、18?24、26?29は、本件発明1の構成を更に特定したものである。したがって、本件発明1が引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、その余の点を論ずるまでもなく、本件発明2?8、10?13、15?16、18?24、26?29は、引用例1、2のいずれに記載された発明からも、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 令和2年1月27日付の取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議の申立理由及び証拠

1 概要
令和2年1月27日付の取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議の申立理由、その概要及び証拠は以下のとおりである。

理由A.(新規性)本件出願の請求項1?8、14?16、18?24、26?29に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由B.(進歩性)本件出願の請求項1?8、10?24、26?29に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由A、Bの概要

理由Aは、主たる刊行物として甲1号証、甲2号証を引用するものである。
また、理由Bは、主たる刊行物として、甲2号証、甲4号証を、従たる刊行物として甲1?4号証を引用するものである。

証拠

理由A?Bにおいて採用する証拠は以下のとおりである。

甲1号証:特表2010-502784号公報
甲2号証:特開2014-198822号公報
甲3号証:特開2008-144144号公報
甲4号証:国際公開第2002/030848号


2.理由Aについて

(1)甲1号証(引用例1)を主な引用例とする理由について

甲1号証に記載の発明と本件発明1を対比すると、第5の2.(5)のア.の(ア)のとおり、両者は相違点1、2で相違している。したがって、本件発明1及び本件発明1を直接または間接的に引用する本件発明2?8、14?16、18?24、26?29は、甲1号証に記載された発明ではない。

(2)甲2号証を主な引用例とする理由

甲2号証には、一般式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル基含有フッ素ポリマー化合物を含む表面処理剤が開示され、上記処理剤には触媒としてパーフルオロアルコールなどを、シラン化合物100部に対し、0.05?5部含みうること、この処理剤を蒸着処理により基材に施与することが記載されている。
また、甲2号証【0037】には「上記表面改質剤は、取扱いが容易で且つ加水分解を促進させる触媒を使用せずとも速やかに加水分解が進行するが、更に早い硬化速度を必要とする場合は、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒の例としては、有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機スズ化合物、有機カルボン酸の金属塩、アミン化合物、及びその塩、4級アンモニウム化合物、アルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジアルキルヒドロキシアミン、グアジニル基含有有機ケイ素化合物、無機酸、パーフルオロカルボン酸、パーフルオロアルコールなどが挙げられ、好ましくはパーフルオロカルボン酸が使用される。」と、パーフルオロカルボン酸、パーフルオロアルコールを用いることが記載されている。
しかしながら、パーフルオロカルボン酸、パーフルオロアルコールなどは、いずれも「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」ではない。したがって、甲2号証には、「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を含有する表面処理剤は記載されていない。
一方、本件発明1は、「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を含有することが特定されている表面処理剤である。してみれば、本件発明1は甲2号証に記載された発明ではない。
また、本件発明2?8、14?16、18?24、26?29は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2号証に記載された発明ではない。

3.理由Bについて

(1)甲2号証を主な引用例とする理由

本件発明1と甲2号証に記載の発明の比較については第6の2.の(2)を参照。

上記によれば、少なくとも本願発明1と甲2号証に記載の発明は、
本願発明1が「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」含有することが特定されている表面処理剤であるのに対して、甲2号証に記載の発明は、そのような特定を備えていない点において少なくとも相違する。

また、甲2号証には、その他に、「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を添加することについて記載も示唆もされていない。

そして、申立人は、異議申立書において、甲3号証には式(1)又は(2)で表される含フッ素有機ケイ素化合物及び含フッ素カルボン酸を含有する撥水性、汚れ防止性に優れた硬化被膜を与えるコーティング組成物の発明が、甲4号証には、式(1)で表されるフッ素化ポリエーテルシラン化合物及びフッ素化有機酸を含む、基材に撥水性、防汚性を付与する基材処理用組成物の発明が、それぞれ記載されていると主張している。
しかしながら、甲3号証に記載される含フッ素カルボン酸や甲4号証に記載されるフッ素化有機酸は、いずれも「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」ではない。
また、甲3?4号証には、その他に「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を添加することについての記載や示唆もされていない。
してみれば、甲1、甲3?4号証の記載事項を参酌しても、甲2号証の発明において、「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を添加することについて何ら動機付けも根拠もないと言わざるを得ない。

(2)甲4号証を主な引用例とする理由

甲4号証には、式(1)で表されるフッ素化ポリエーテルシラン化合物及びフッ素化有機酸を含む、基材に撥水性、防汚性を付与する基材処理用組成物の発明が記載されているが、第6の3の(1)に記載のとおり、甲4号証の請求項4?6、第7頁15?25行目に記載される、CF_(3)SO_(3)H、C_(3)H_(7)COOH、C_(7)H_(15)COOH、あるいはR_(f)^(2) -[-(L)_(m)-Z]_(n) (II)で表されるカルボン酸基を有するフッ素化有機酸は、「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」ではないため、本件発明1と甲4号証に係る発明は、本件発明1が「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を含むものであるのに対して、フッ素化有機酸を含むものである点においても相違する。
また、甲4号証および甲1?3号証の何れにも「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を添加することについて記載も示唆もされていない。
してみれば、甲1?3号証の記載事項を参酌しても、甲4号証の発明において、「式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物」を添加することについて何ら動機付けも根拠もないと言わざるを得ない。

4.小括

よって、本件発明1?8、14?16、18?24、26?29は、甲1号証又は甲2号証に記載された発明ではない。
また、本件発明1?8、10?24、26?29は、甲2号証及び甲1、3?4号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
同様に、本件発明1?8、15?22、24、26?29は、甲4号証及び甲1?3号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 申立人の意見書における主張について

申立人は、令和2年4月27日付の意見書において、本件特許の訂正後の請求項25に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない要件(「独立特許要件」)が課されるべきであることを主張している。
上記申立人の主張について検討するに、本件特許の請求項25に係る特許に対しては、特許異議の申立てがされていない。
しかしながら、本件特許の請求項25に対する訂正(訂正事項16)の目的は、第2の3.の(5)のとおり「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」であるから、本件特許の訂正後の請求項25に係る発明に独立特許要件は課されない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?8、10?13、15?24、26?29に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?8、10?13、15?24、26?29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項14は訂正により削除されたので、本件特許の請求項14に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:
【化1】

[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(1)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1?22のアルキル基を表し;
R^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(11)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R^(12)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n))単位毎に独立して、0?3の整数であり;
ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR^(2)が存在し;
X^(4)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基
を表し;
X^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2?10の整数であり;
αは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(5)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
βは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(7)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
γは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
R^(a)は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR^(71)_(p)R^(72)_(q)R^(73)_(r)を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R^(71)は、各出現においてそれぞれ独立して、R^(a’)を表し;
R^(a’)は、R^(a)と同意義であり;
R^(a)中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R^(72)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(73)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
ただし、一のR^(a)において、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR^(72)が存在し;
R^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(c)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、2?3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]
および
(2)下記式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:
【化2】

[式中:
Aは、-OHを表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC_(1-6)アルキレン基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
X^(3)は、単結合を表し;
εは、1であり;
ε’は、1である。]
を含んでなる、真空蒸着用の表面処理剤。
【請求項2】
Rfが、炭素数1?16のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物において、PFPEが下記式(a)、(b)または(c):
(a):-(OC_(3)F_(6))_(b)-
[式(a)中、bは1以上200以下の整数である];
(b):-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-
[式(b)中、aおよびbは、それぞれ独立して、0以上30以下の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して、1以上200以下整数であり、a、b、cおよびdの和は、10以上200以下であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である];
(c):-(OC_(2)F_(4)-R^(8))_(n”)-
[式(c)中、R^(8)は、OC_(2)F_(4)、OC_(3)F_(6)およびOC_(4)F_(8)から選択される基であり;
n”は、2?100の整数である。]
で表される基である、請求項1または2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物における、PFPEにおいて:
OC_(4)F_(8)が、OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)であり、
OC_(3)F_(6)が、OCF_(2)CF_(2)CF_(2)であり、
OC_(2)F_(4)が、OCF_(2)CF_(2)である、
請求項1?3のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項5】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して、2?4価の有機基であり、α、βおよびγが、それぞれ独立して、1?3であり、α’、β’およびγ’が1である、請求項1?4のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項6】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が2価の有機基であり、α、βおよびγが1であり、α’、β’およびγ’が1である、請求項1?5のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項7】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して、-(R^(31))_(p”)-(X^(a))_(q”)-
[式中:
R^(31)は、単結合、-(CH_(2))_(s’)-(式中、s’は、1?20の整数である)またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し;
X^(a)は、-(X^(b))_(l’)-(式中、l’は、1?10の整数である)を表し;
X^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R^(33))_(2)-、-(Si(R^(33))_(2)O)_(m’)-Si(R^(33))_(2)-(式中、m’は1?100の整数である)、-CONR^(34)-、-O-CONR^(34)-、-NR^(34)-および-(CH_(2))_(n’)-(式中、n’は1?20の整数である)からなる群から選択される基を表し;
R^(33)は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C_(1-6)アルキル基またはC_(1-6)アルコキシ基を表し;
R^(34)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC_(1-6)アルキル基を表し;
p”は、0または1であり;
q”は、0または1であり;
ここに、p”およびq”の少なくとも一方は1であり、p”およびq”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;
R^(31)およびX^(a)は、フッ素原子、C_(1-3)アルキル基およびC_(1-3)フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。]
で表される基である、請求項1?6のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項8】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して:
-CH_(2)O(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(6)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(2)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(3)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(10)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(20)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)OCF_(2)CHFOCF_(2)-、
-CH_(2)OCF_(2)CHFOCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCF_(2)CHFOCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CHFCF_(2)OCF(CF_(3))CF_(2)OCF_(2)CF_(2)CF_(2)-
-CH_(2)OCH_(2)(CH_(2))_(7)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)OCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(2)(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(2)-、
-(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(4)-、
-(CH_(2))_(6)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)-、
-CON(CH_(3))-(CH_(2))_(3)-、
-CON(Ph)-(CH_(2))_(3)-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CH_(2))_(6)-、
-CON(CH_(3))-(CH_(2))_(6)-、
-CON(Ph)-(CH_(2))_(6)-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CH_(2))_(2)NH(CH_(2))_(3)-、
-CONH-(CH_(2))_(6)NH(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)O-CONH-(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)O-CONH-(CH_(2))_(6)-、
-S-(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(2)S(CH_(2))_(3)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(2)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(3)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(10)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)O(Si(CH_(3))_(2)O)_(20)Si(CH_(3))_(2)(CH_(2))_(2)-
-C(O)O-(CH_(2))_(3)-、
-C(O)O-(CH_(2))_(6)-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-CH(CH_(3))-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(3)-、
-CH_(2)-O-(CH_(2))_(3)-Si(CH_(3))_(2)-(CH_(2))_(2)-Si(CH_(3))_(2)-CH(CH_(3))-CH_(2)-、
【化3】

からなる群から選択される、請求項1?7のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項9】
X^(4)が、-O-CFR^(13)-(CF_(2))_(e)-であり、
R^(13)が、フッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、
eが、0または1である、
請求項1?8のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項10】
X^(2)が、-(CH_(2))_(s)-であり、
sが、0?2の整数である、
請求項1?9のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項11】
式(C1)および(C2)において、kが3であり、R^(a)中、qが3である、請求項1?10のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項12】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して、3?10価の有機基である、請求項1?11のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項13】
X^(4)、X^(5)およびX^(7)が、それぞれ独立して:
【化4】

[式中、各基において、Tのうち少なくとも1つは、式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)においてPFPEに結合する以下の基:
-CH_(2)O(CH_(2))_(2)-、
-CH_(2)O(CH_(2))_(3)-、
-CF_(2)O(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(2)-、
-(CH_(2))_(3)-、
-(CH_(2))_(4)-、
-CONH-(CH_(2))_(3)-、
-CON(CH_(3))-(CH_(2))_(3)-、
-CON(Ph)-(CH_(2))_(3)-(式中、Phはフェニルを意味する)、および
【化5】

であり、
別のTのうち少なくとも1つは、式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)において炭素原子またはSi原子に結合する-(CH_(2))_(n)-(nは2?6の整数)であり、残りは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基またはアルコキシ基であり、
R^(41)は水素原子、フェニル基、炭素数1?6のアルコキシ基でありまたは炭素数1?6のアルキル基であり、
R^(42)は水素原子、C_(1-6)のアルキル基またはC_(1-6)のアルコキシ基を表す。]
からなる群から選択される、請求項1?12のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項14】(削除)
【請求項15】
(1)パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、(2)含フッ素化合物との質量比が、1:50?50:1である、請求項1?13のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項16】
(1)パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、(2)含フッ素化合物との質量比が、1:10?10:1である、請求項1?13および15のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項17】
(1)パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、(2)含フッ素化合物との質量比が、1:4?4:1である、請求項1?13および15?16のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項18】
含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1?13および15?17のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項19】
含フッ素オイルが、式(3):
R^(21)-(OC_(4)F_(8))_(a’)-(OC_(3)F_(6))_(b’)-(OC_(2)F_(4))_(c’)-(OCF_(2))_(d’)-R^(22)
・・・(3)
[式中:
R^(21)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(22)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基、フッ素原子または水素原子を表し;
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1であり、添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される1種またはそれ以上の化合物である、請求項18に記載の表面処理剤。
【請求項20】
含フッ素オイルが、式(3a)または(3b):
R^(21)-(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(b’’)-R^(22) ・・・(3a)
R^(21)-(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(a’’)-(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(b’’)-(OCF_(2)CF_(2))_(c’’)-(OCF_(2))_(d’’)-R^(22) ・・・(3b)
[式中:
R^(21)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(22)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基、フッ素原子または水素原子を表し;
式(3a)において、b’’は1以上100以下の整数であり;
式(3b)において、a’’およびb’’は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c’’およびd’’は、それぞれ独立して1以上300以下の整数であり;
添字a’’、b’’、c’’またはd’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される1種またはそれ以上の化合物である、請求項18または19に記載の表面処理剤。
【請求項21】
さらに溶媒を含む、請求項1?13および15?20のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項22】
防汚性コーティング剤または防水コーティング剤として使用される、請求項1?13および15?21のいずれかに記載の表面処理剤。
【請求項23】
請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項24】
基材と、該基材の表面に、請求項1?13および15?22のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
【請求項25】
基材と、該基材の表面に、
(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:
【化6】

[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
R^(1)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1?22のアルキル基を表し;
R^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(11)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R^(12)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n))単位毎に独立して、0?3の整数であり;
ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR^(2)が存在し;
X^(4)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
X^(2)は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2?10の整数であり;
αは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(5)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
βは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
X^(7)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
γは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
R^(a)は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR^(71)_(p)R^(72)_(q)R^(73)_(r)を表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R^(71)は、各出現においてそれぞれ独立して、R^(a’)を表し;
R^(a’)は、R^(a)と同意義であり;
R^(a)中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R^(72)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(73)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0?3の整数であり;
ただし、一のR^(a)において、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR^(72)が存在し;
R^(b)は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R^(c)は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、2?3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0?1の整数であり;
ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]
および
(2)下記式(E1)および(E2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:
【化7】

[式中:
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-COOR^(5)、-CONH_(2)、-P(O)(OH)_(2)、-OP(O)(OH)_(2)、または-NR^(5)_(2)を表し;
R^(5)は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し;
X^(3)は、それぞれ独立して、単結合または2?10価の有機基を表し;
εは、それぞれ独立して、1?9の整数であり;
ε’は、それぞれ独立して、1?9の整数である。]
を含んでなる真空蒸着用の表面処理剤より形成された層とを含む物品であって、
前記表面処理剤より形成された層は、基材に接する下層と、表面処理剤より形成された層の表面に位置する上層とを含み、下層の含フッ素化合物の含有割合より、上層の含フッ素化合物の含有割合のほうが高い、物品。
【請求項26】
基材がガラスまたはサファイアガラスである、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
ガラスが、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラスおよび石英ガラスから成る群から選択されるガラスである、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記物品が光学部材である、請求項24に記載の物品。
【請求項29】
前記物品がディスプレイである、請求項24に記載の物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-17 
出願番号 特願2015-7918(P2015-7918)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C09K)
P 1 652・ 121- YAA (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 恵理  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 古妻 泰一
蔵野 雅昭
登録日 2018-11-22 
登録番号 特許第6435871号(P6435871)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤  
代理人 吉田 環  
代理人 山田 卓二  
代理人 山田 卓二  
代理人 吉田 環  

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