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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1364921
異議申立番号 異議2019-700941  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-22 
確定日 2020-07-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6517106号発明「分散液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6517106号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕〔2、3、5、6〕について訂正することを認める。 特許第6517106号の請求項1及び4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6517106号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年7月23日に出願され、平成31年4月26日にその特許権の設定登録がされ、令和元5月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1及び4に係る特許に対し、令和元年11月22日に特許異議申立人金山愼一(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年1月29日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年4月2日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
なお、特許権者から令和2年4月2日に訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月22日付けで特許異議申立人に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記分散液中の前記金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上である」との要件を追加する訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、かつシランカップリング剤で表面処理されている請求項1に記載の分散液。」とあるのを、独立形式に改め、
「屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化4】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化5】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化6】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、かつシランカップリング剤で表面処理されている分散液。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メク)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである請求項1又は2に記載の分散液。」とあるうち、請求項2を引用しないものとし、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化7】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを合む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化8】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化9】


(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R2、R3、R4を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、 は200以下、qは200以下、rは200以下である。)]で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、
前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである分散液。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項1?3のいずれかに記載の分散液」とあるのを、請求項1に従属するものに限定して、
「前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の分散液」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に、「前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである請求項1又は2に記載の分散液。」とあるうち、請求項2を引用するものについて従属関係を改め、
「前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである請求項2に記載の分散液。」と改め、新たに請求項5とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に、「前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項1?3のいずれかに記載の分散液。」とあるうち、請求項2又は3を引用するものについて従属関係を改め、
「前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項2、3または5に記載の分散液。」と改め、新たに請求項6とする。

(7)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2、3、5及び6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。

2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項の適否について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の分散液に、「前記分散液中の前記金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上である」との要件を追加する訂正を行うものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)で説明した通り、訂正事項1は、請求項1の分散液に更に要件を追加して特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1について、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0070】には「分散液中の金属酸化物粒子の濃度は、…より好ましくは60質量%以上であり」と記載されている。
従って、「前記分散液中の前記金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上である」との要件を追加する訂正を行うことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)で説明した通り、訂正事項2は、引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)で説明した通り、訂正事項2は、引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項2は特許異議申立ての対象とされておらず、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号または第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項2に係る訂正事項2に関し、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
なお、訂正前の請求項2を引用する請求項3は、訂正後の請求項5に対応している(訂正事項5)。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)で説明した通り、訂正事項3は、引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)で説明した通り、訂正事項3は、引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項3は、特許異議の申立ての対象とされていないが、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号を目的とするものであるから、請求項3に係る訂正事項3に関し、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1?3を引用する記載であるところ、請求項2及び3を引用しないものとした上で、請求項1の訂正に係る訂正事項1と連動して、訂正後の請求項4を限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
なお、訂正前の請求項2又は3を引用する請求項4は、訂正後の請求項6に対応している(訂正事項6)。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)で説明した通り、訂正事項4は、訂正事項1に連動して特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正事項1に連動して特許請求の範囲を減縮するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項5
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項3が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとするとともに、訂正事項2と連動して、請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項へ改められた請求項2の記載を引用する形式とするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)で説明した通り、訂正事項5は、請求項1との引用関係を解消するため従属関係を改めるための訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなくカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)で説明した通り、訂正事項5は、請求項1との引用関係を解消するため従属関係を改めるための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項3は、特許異議の申立ての対象とされておちず、また上記aで説明した通り、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号を目的とするものであるから、請求項3に係る訂正事項5に関し、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

カ 訂正事項6
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項4が請求項1?3の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとするとともに、訂正事項2、3、5と連動して、請求項1との引用関係を解消し独立形式請求項へ改められた請求項2、3、及び、請求項2の記載を引用する請求項5の記載を引用する形式とするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)で説明した通り、訂正事項6は、請求項1との引用関係を解消するため従属関係を改めるための訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなくカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)で説明した通り、訂正事項6は、請求項1との引用関係を解消するため従属関係を改めるための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正前の請求項2、3は、特許異議の申立ての対象とされておらず、訂正前の請求項4のうち、請求項2、3を引用する発明については、請求項2または3の要件を備える以上特許異議の申立ての対象ではないが、また上記aで説明した通り、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号を目的とするものであるから、請求項4に係る訂正事項6に関し、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び6項の規定に適合する。
したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕〔2、3、5、6〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正請求は認められるものであるので、本件特許の請求項1?6に係る発明は、令和2年4月2日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」?「本件発明6」ともいう。)である。

「【請求項1】
屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化1】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化2】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化3】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]
で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、
前記分散液中の前記金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上であることを特徴とする分散液。
【請求項2】
屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化1】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化2】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化3】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]
で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、かつシランカップリング剤で表面処理されている分散液。
【請求項3】
屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化1】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化2】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化3】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]
で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、
前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである分散液。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである請求項2に記載の分散液。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項2、3または5に記載の分散液。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び4に係る特許に対して、当審が令和2年1月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[理由1]本件特許発明1、4は、本件出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1、4に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
[理由2]本件特許発明1、4は、本件出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び甲第6?8、10、11及び17号証に記載された事項に基いて、本件出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1?12に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第2号証:特開2010-189506号公報
甲第3号証:特開2010-195967号公報
甲第6号証:特開2009-230938号公報
甲第7号証:特開2011-65966号公報
甲第8号証:中山勉著「超微粒子・ナノ粒子をつくる ビーズミル」初版第1刷、株式会社工業調査会、平成22年5月1日、pp28-31
甲第10号証:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典3」縮刷版第11刷、共立出版株式会社、昭和46年2月5日、pp912-913
甲第11号証:報告書1(特開2010-189506号公報の実施例2の分散液の水分含有量)、異議申立人、令和元年11月8日
甲第17号証:報告書2(特開2010-195967号公報の実施例1の分散液の水分含有量)、異議申立人、令和元年11月8日

第5 取消理由についての判断
1 甲号証の記載について
(1)甲第2号証
2a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機を用いた無機微粒子分散液の製造方法であって、
下記(A)?(D)を湿式撹拌粉砕機に供給するに際し、少なくとも(D)を最後に供給することを特徴とする無機微粒子分散液の製造方法。
(A)酸化ジルコニウムナノ粒子
(B)分散剤
(C)分散媒
(D)シランカップリング剤
但し、(D)シランカップリング剤は、一括で全量を供給しないものとする。
・・・
【請求項6】
(B)分散剤が、リン酸エステル系界面活性剤である1?5のいずれかに記載の無機微粒子分散液の製造方法。
・・・
【請求項10】
請求項1?9のいずれかに記載の製造方法で得られた無機微粒子分散液を含む、熱又は紫外線硬化性組成物。」
2b「【0002】
本発明に係る光学樹脂層については、例えば輝度向上用プリズムシートの場合、硬化樹脂層を高屈折率化することによってバックライトの正面輝度を向上させることができ、また、例えばフレネルレンズの場合、光学樹脂層を高屈折率とする程レンズパターンを浅くすることが可能なので、金型からの離型が容易となることにより生産性が向上できる等の理由から、光学樹脂層の高屈折率化が望まれていた。
このような光学樹脂層の製造方法として、特許文献1には、液晶向上用プリズムシート、プロジェクションテレビ用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の光学シートの製造方法が記載されており、プレス法、切削法、押し出し法等の方法が開示されている。しかし、何れの製法も生産性が低いことから、現在は透明プラスチックシート等の透明シート状基材の上に活性エネルギー線硬化性組成物によりプリズム層、レンズ層等の光学樹脂層を形成する方法が利用されている。
【0003】
このような硬化性組成物に、高屈折率、高硬度および耐擦傷性を付与するために、特許文献2には、ジルコニア粒子分散液が使用されることが記載されている。
特許文献3には、透明分散させるためにアセチルアセトン系分散助剤を用いて、0.05mm以上のメディアで分散し、ジルコニア分散体を得る方法が記載されている。当該法によれば、分散粒径の小さなジルコニア粒子分散液を得ることができるという。しかし、アセチルアセトン系分散助剤を用いた場合には、熱や光による劣化・着色を起こしやすい欠点を有する。」
2c「【0011】
(A)酸化ジルコニウムナノ粒子としては、通常公知のものを用いることができ、粒子の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形であり、好ましくは球状である。また、一次粒径は、1?50nmものが好ましく、特に1?30nmのものが好ましい。
結晶構造も特に限定されないが、単斜晶系が好ましい。
【0012】
(B)分散剤は、ナノ粒子と親和性を有する基を有する分散剤であれば、特に限定されないが、好ましい分散剤として、カルボン酸、硫酸、スルホン酸或いはリン酸、又はそれらの塩等の酸基を有するアニオン系の高分子量又は低分子量分散剤を挙げることができ、更
に好ましくは、前記酸基を有してもよいリン酸エステル系分散剤を挙げることができる。使用される量は特に制限がないが、酸化ジルコニウムナノ粒子に対して、0.1?30質量%、好ましくは0.5?15質量%を挙げることができる。」
2d「【実施例】
【0037】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0038】
(実施例1)
酸化ジルコニウムナノ粒子粉体(商品名:RC-100、第一稀元素化学工業(株)製、一次粒径10nm)27g、リン酸エステル系分散剤(商品名:ディスパーBYK106、ビックケミー社製)1.35g、トルエン270gを混合し、攪拌しながら超音波を10分照射して粗分散した。
得られた混合液を、遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機である寿工業(株)製ウルトラアペックスミルUAM-015を用いて分散処理した。メディアは平均粒子径が0.03mmの安定化ジルコニアビーズ(高周波熱錬(株)製)を400g用い、ビーズミルのベッセル容積中の充填率を64容積%とした。ビーズミルのローター周速は10m/sとした。
【0039】
スラリー供給ポンプの流量を調整し、循環流量を10L/時間とした。分散処理開始直後30分から120分にかけて、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM-303、信越化学工業(株)製)1.35gを一定速度で原料スラリータンクに添加した。分散処理開始から180分後に分散処理を終了し、分散液を回収した。分散処理時、ベッセル出口における分散液の温度は24℃?38℃であった。
分散液の配合量、シランカップリング剤の供給条件、装置条件、および、分散処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の分散粒径を表1に示す。
【0040】
(実施例2)?(実施例4)
表1に示した配合量、シランカップリング剤の供給条件、装置条件で分散液を作製した。分散処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の分散粒径を表1に示す。
【0041】
(実施例5)
表1に示した配合量、装置条件で、シランカップリング剤を分割供給した。
【0042】
(比較例1)
実施例1における、KBM-303の供給を分散処理開始直後に一括供給で行った以外は実施例1と同様にして分散処理を行った。分散処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の分散粒径を表1に示す。
(比較例2)
実施例3における、KBM-503の供給を分散処理開始直後に一括供給で行った以外は実施例1と同様にして分散処理を行った。分散処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の分散粒径を表1に示す。
【0043】
(測定例)分散液中の酸化ジルコニウムナノ粒子の分散粒径測定
作製1日後(25℃保管)の分散液中の酸化ジルコニウムナノ粒子の分散粒径を、堀場製作所(株)社製の粒度分布測定装置LB-550を用いて25℃で測定した。分散液と同等の分散媒で酸化ジルコニウム濃度0.1重量%に希釈して、メジアン径を体積基準で測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
注1)ジルコニア粒子:UEP-100(商品名、第一稀元素化学工業(株)製、一次粒径12nm)
注2)ディスパロンPW-36(商品名、楠本化成(株)製)
注3)ディスパーBYK-111(商品名、ビックケミー社製)
注4)KBM-503(商品名、信越化学工業(株)製)
注5)KBM-5103(商品名、信越化学工業(株)製)」

(2)甲第3号証
3a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基を有する表面修飾剤により表面が修飾された無機酸化物を含む無機酸化物分散液において、
反応性基を有する表面修飾剤が、スチリル基、ビニル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤(1)であり、且つスチレンを含むことを特徴とする無機酸化物分散液。
【請求項2】
無機酸化物が、酸化ジルコニウムである請求項1に記載の無機酸化物分散液。
【請求項3】
無機酸化物分散液が、更に分散剤及び溶剤を含むものである請求項1又は2に記載の無機酸化物分散液。
【請求項4】
前記分散剤が、リン酸エステル系界面活性剤である請求項3に記載の無機酸化物分散液。
【請求項5】
前記溶剤が、トルエン、エチルベンゼン又はキシレンである請求項3に記載の無機酸化物分散液。
3b「【0007】
従来の無機酸化物フィラーを用いた樹脂との複合体は、透明性や高い屈折率を有するものの、成形性に劣る問題点があった。
そこで、本発明の課題は、成形性に優れ、透明性と高い屈折率を有する樹脂複合体を提供するための無機酸化物分散液、その製造方法及び該分散液を用いた透明複合体を提供することにある。」
3c「【0011】
以下、詳細に本発明を説明する。
本発明に用いられる無機酸化物は、特に限定されないが、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO_(2))、酸化チタン(TiO_(2))、酸化ケイ素(SiO_(2))、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、酸化鉄(Fe_(2)O_(3)、FeO、Fe_(3)O_(4))、酸化銅(CuO、Cu_(2)O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y_(2)O_(3))、酸化ニオブ(Nb_(2)O_(5))、酸化モリブデン(MoO_(3))、酸化インジウム(In_(2)O_(3)、In_(2)O)、酸化スズ(SnO_(2))、酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))、酸化タングステン(WO_(3)、W_(2)O_(5))、酸化鉛(PbO、PbO_(2))、酸化ビスマス(Bi_(2)O_(3))、酸化セリウム(CeO_(2)、Ce_(2)O_(3))、酸化アンチモン(Sb_(2)O_(3)、Sb_(2)O_(5))、酸化ゲルマニウム(GeO_(2)、GeO)、酸化ランタン(La_(2)O_(3))、酸化ルテニウム(RuO_(2))等が挙げられる。また、これらの無機酸化物は、単独でも複数を複合して用いることもできるが、特に酸化ジルコニウムが好ましい。
これらの無機化酸化物粒子の平均粒径は、分散液中における分散性、透明複合体を作製した場合の透明性、屈折率等を鑑み、1?100nmのものを好ましく用いることができ、特に10?50nmであるものが好ましい。」
3d「【0020】
本発明の無機酸化物分散液は、さらに分散剤及び溶剤を含んでもよい。
分散剤としては、無機酸化物と親和性を有する基を有する分散剤であれば、特に限定されないが、好ましい分散剤として、カルボン酸、硫酸、スルホン酸或いはリン酸等の酸基、又はそれらの酸基の塩を有するアニオン系の高分子量又は低分子量分散剤を挙げることができ、更に好ましくは、前記酸基を有してもよいリン酸エステル系分散剤を挙げることができる。使用される量は特に制限がないが、酸化ジルコニウムナノ粒子に対して、0.1?30質量%、好ましくは0.5?15質量%を挙げることができる。
溶剤は、トルエン、エチルベンゼン或いはキシレンが好ましい。本発明の溶剤は、スチレンを含むことに特徴を有し、トルエン、エチルベンゼン或いはキシレン等は含んでも含まなくてもよい。」
3e「【0038】
(実施例1)
酸化ジルコニウム粉体(第一稀元素化学工業(株)製、UEP100:一次粒径12nm)13.5g、リン酸エステル系分散剤(楠本化成(株)製、ディスパロンPW36)0.675g、トルエン270gを混合し、攪拌しながら超音波を10分照射して粗分散した。
得られた混合液を、遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌粉砕機である寿工業(株)製ウルトラアペックスミルUAM-015を用いて分散処理した。メディアは平均粒子径が15μmの安定化ジルコニアビーズ(高周波熱錬(株)製)を400g用い、ビーズミルのベッセル容積中の充填率を65容積%とした。ビーズミルのローター周速は12m/sとした。
【0039】
スラリー供給ポンプの流量を調整し、循環流量を10L/時間とした。分散処理開始30分後から、スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1403)0.56g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)2.82gを一定速度で原料スラリータンクに滴下した。分散処理開始から90分後に滴下及び分散処理を終了し、分散液を回収した。分散終了後、不揮発成分が40質量%となるようにトルエンで調整し、分散液(1)を得た。
【0040】
(実施例2)
用いるシランカップリング剤を、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1003)0.56g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)2.84gとし、シランカップリング剤の供給方法を表1に示した方法で行った以外は、実施例1と同様にして分散液(2)を得た。
(実施例3)
用いるシランカップリング剤を、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-503)0.56g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)2.84gとした以外は、実施例1と同様にして、本実施例を実施し、分散液(3)を得た。
(実施例4)
用いるシランカップリング剤を、スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1403)0.014g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)3.36gとした他は実施例1と同様にして分散液(4)を得た。
(実施例5)
用いるシランカップリング剤を、スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1403)2.03g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)1.35gとした他はとした他は実施例1と同様にして分散液(5)を得た。
(実施例6)
用いるシランカップリング剤を、スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1403)3.38g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)1.35gとした他は実施例1と同様にして分散液(6)を得た。
(実施例7)
用いるシランカップリング剤を、スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1403)5.41g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-103)1.35gとした他は実施例1と同様にして分散液(6)を得た。
(実施例8)
用いるシランカップリング剤を、スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-1403)0.56g、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM-3063)2.84gを用いた他は、実施例1と同様にして、本実施例を実施し、分散液(8)を得た。」

(3)甲第6号証
6a「【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、(1)基材の表面に透明性に優れ且つ高屈折率、帯電防止機能を有する透明導電膜を形成することができ、分散処理過程で使用される金属製機器や塗布機材を腐食させることのない透明導電膜形成用組成物、(2)該透明導電膜形成用組成物から得られる透明性に優れ且つ高屈折率及び帯電防止機能を有する透明導電膜、(3)該透明導電膜を有するディスプレイ、及び(4)そのような透明導電膜形成用組成物の調製に用いられる保存安定性に優れた分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の諸目的を達成するために鋭意検討した結果、分散媒中に高屈折率金属酸化物微粒子、導電性金属酸化物微粒子及びアルコキシドを含まない金属錯体を分散させるが水分を3質量%以下にすることにより、また、そのような分散液を用いることにより、目的とする効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
6b「【0017】
本発明の分散液及び透明導電膜形成用組成物においては、含有される金属酸化物粒子の粒子径が経時的に大きくなるのを防止するために、含まれる水分量を3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下にする。それで、本発明で用いる分散媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、2-ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等を挙げることができる。それらの中でも、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、2-ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく、メチルエチルケトン、ブタノール、キシレン、エチルベンゼン、トルエンがより好ましい。本発明においては、分散媒として一種単独で用いることも、二種以上を併用することもできる。」

(4)甲第7号証
7a「【0027】
本発明において、透明導電膜等の特に高屈折率特性が求められる用途の場合に配合される分散媒については、導電性微粒子分散液や透明導電膜形成用の導電性微粒子含有光硬化性組成物中に含有される微粒子の粒子径が経時的に大きくなるのを防止するために、含まれる水分量を3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下にする。」

(5)甲第8号証
8a「3.4 含有水分
粉体の含有水分は粉体に含まれる水分量である。砕料は水分を含むと強度が変化する。含有水分が増すことで砕料の強度が低下するが,中には水分によって粘結性を呈するものがある。湿式粉砕では,含有水分量は水が溶媒のときには固形分濃度に影響し,水を嫌う溶媒には含有水分に注意しなければならない。」(第30ページ下から第2行?第31ページ最終行)

(6)甲第10号証
10a「 さんかジルコニウム 酸化-,ジルコニア[英zirconium oxide, zirconia 独Zirconium-oxyd, Zirkonerde] ZrO_(2)=123.22.無水ジルコニウム酸とよぶことがある.・・・n(複屈折)2.13. 2.19ないし2.20・・・」(第912ページ右欄下から第26行?第913ページ左欄第12行)

(7)甲第11号証
11a「



ク 甲第17号証
17a「



2 甲号証に記載された発明
(1)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の実施例2、請求項1、6、10及び【0011】の記載からみて、ジルコニア粒子であるUEP-100を40g、分散剤としてリン酸エステル系分散剤であるディスパロンPW-36を10g、分散媒としてトルエンを210g、シランカップリング剤としてKBM5103を10g混合して得られた混合液を、遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌機を用いて分散した無機粒子分散液が記載されており、ジルコニア粒子は約15%(=40/(40+10+210+10)であるから、「平均一次粒子径が1?30nmの酸化ジルコニウムナノ粒子を約15質量%、分散媒としてトルエン、分散剤としてリン酸エステル系分散剤であるディスパロンPW-36、シランカップリング剤を遠心分離によりメディアを分離する機構を備えた湿式撹拌機を用いて分散した無機粒子分散液」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2a、2c、2d参照)。

(2)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の実施例1、請求項3?5及び【0011】の記載からみて、平均一次粒子径が10?50nmの酸化ジルコニウム、溶媒としてトルエン、分散剤としてリン酸エステル系分散剤であるディスパロンPW-36を含有している無機酸化物分散液の不揮発成分が40%となっていることが、記載されており、ここで、不揮発成分は酸化ジルコニウムであるから、「平均一次粒子径が10?50nmの酸化ジルコニウムを40質量%、溶媒としてトルエン、分散剤としてリン酸エステル系分散剤であるディスパロンPW-36を含有している無機酸化物分散液」の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3a、3d、3e参照)。

3 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 甲2発明を主たる引用発明とする場合
(ア)甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「平均一次粒子径が1?30nmの酸化ジルコニウムナノ粒子」は、甲第10号証によれば、屈折率が2.13. 2.19ないし2.20であるので、本件特許発明1の「屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有する分散液。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
分散液中の金属酸化物粒子の濃度が、本件特許発明1では60質量%以上であるのに対し、甲2発明では約15質量%である点。

<相違点2>
本件特許発明1では水分含有量が0.8質量%以下であると特定されているのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。

<相違点3>
分散剤が、本件特許発明1では下記式(1):
【化1】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化2】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化3】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]
で表される有機リン化合物又はその塩であるのに対し、甲2発明ではリン酸エステル系分散剤であるディスパロンPW-36である点。

(イ)相違点についての検討
相違点について検討する。
<相違点1>について
甲第2号証には、分散液中の金属酸化物粒子の濃度を60質量%以上とすることは記載もされていないし、その示唆もない。
よって、本件特許発明1は甲2発明ではないし、甲第6?8、10、11及び17号証にも、甲2発明において分散液中の金属酸化物粒子の濃度を60質量%以上とすることは、記載も示唆もないから、当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件特許発明1は、請求項1に記載されている発明特定事項を備えることによって、分散液中の屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上であっても、保存中の粘度上昇を抑制することができるといった優れた効果を奏するものである。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、上記相違点2及び3を検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明及び甲第6?8、10、11及び17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第1甲第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

イ 甲3発明を主たる引用発明とする場合
(ア)甲3発明との対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「平均一次粒子径が10?50nmの酸化ジルコニウムナノ粒子」は、甲第10号証によれば、屈折率が2.13. 2.19ないし2.20であるので、本件特許発明1の「屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、「屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有する分散液。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4>
分散液中の金属酸化物粒子の濃度が、本件特許発明1では60質量%以上であるのに対し、甲3発明では40質量%である点。

<相違点5>
本件特許発明1では水分含有量が0.8質量%以下であると特定されているのに対し、甲3発明ではそのような特定がない点。

<相違点6>
分散剤が、本件特許発明1では下記式(1):
【化1】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化2】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化3】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]
で表される有機リン化合物又はその塩であるのに対し、甲3発明ではリン酸エステル系分散剤であるディスパロンPW-36である点。

(イ)相違点についての検討
相違点について検討する。
<相違点4>について
甲第3号証には、分散液中の金属酸化物粒子の濃度を60質量%以上とすることは記載もされていないし、その示唆もない。
よって、本件特許発明1は甲3発明ではないし、甲第6?8、10、11及び17号証にも、甲3発明において分散液中の金属酸化物粒子の濃度を60質量%以上であるとすることは、記載も示唆もないから、当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件特許発明1は、請求項1に記載されている発明特定事項を備えることによって、分散液中の屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上であっても、保存中の粘度上昇を抑制することができるといった優れた効果を奏するものである。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、上記相違点5及び6を検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明ではなく、甲第3号証に記載された発明及び甲第6?8、10、11及び17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第1甲第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

(2)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1において「金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である」と特定するものであるが、この点は、新たな相違点とはならない。
そうすると、本件特許発明4と甲2発明又は甲3発明との一致点及び相違点は上記(1)と同様であるから、同様の理由により、本件特許発明4は、甲第2号証又は甲第3号証に記載されたものではなく、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、主たる刊行物を上記第4 1の甲第2号証又は甲第3号証とし、従たる刊行物を甲第6?8、10、11及び17号証に加えて、甲第4、5、9、12?16、18の1及び18の2号証とする進歩性に係る取消理由があると申し立てているが、甲第5号証にはトルエンの比重が記載されており、甲第9号証及び甲第18号証にはUEP-100酸化ジルコニウムが記載され、甲第12号証及び甲第13号証にはディスパロンPW-36のデータが記載され、甲第14号証には樹脂の酸価について記載され、甲第15号証には化学当量について記載され、甲第16号証には式量について記載されているが、これらを見ても、本件特許発明1及び4は、当業者が容易に想到し得るものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、令和2年1月29日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化1】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化2】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化3】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、
前記分散液中の前記金属酸化物粒子の濃度が60質量%以上であることを特徴とする分散液。
【請求項2】
屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化4】

[式中、a bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化5】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化6】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、かつシランカップリング剤で表面処理されている分散液。
【請求項3】
屈折率が1.6以上である平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物粒子と分散媒とを含有し、水分含有量が0.8質量%以下であり、
さらに分散剤を含有しており、前記分散剤が、下記式(1):
【化7】

[式中、a、bはそれぞれ独立して1又は2であり、a+bは3である。cは0又は1である。
Aは下記式(a1)で表される置換基、又は下記式(a1)で表される基と下記式(a2)で表される連結基の少なくとも1種とを含む置換基を表す。なおAが下記式(a2)で表される連結基を有する場合には、下記式(a2)は酸素原子側でリン原子と直接又は間接に結合する。
【化8】

(式中、R^(1)は、炭素数1?50の飽和又は不飽和炭化水素基、(メタ)アクリロイル基、炭素数6?100の芳香族含有炭化水素基を表し、tは0又は1である。)
【化9】

(式中、R^(2)、R^(3)、R^(4)は炭素数1?18の2価の炭化水素基、又は炭素数6?30の2価の芳香族含有炭化水素基であり、前記R^(2)、R^(3)、R^(4)を構成する水素原子はエーテル基で置換されていてもよい。
p、q、rはそれぞれ(a1)単位1モルに対する整数のモル比を表し、p+q+r=1?200であり、pは200以下、qは200以下、rは200以下である。)]で表される有機リン化合物又はその塩である分散液であって、
前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである分散液。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子が有機酸で被覆されており、前記有機酸が、(メタ)アクリル酸類、又は、エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基、およびウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基を有するカルボン酸から選ばれる第1のカルボン酸化合物と、
1つ以上のカルボン酸基を有する炭化水素類から選ばれる第2のカルボン酸化合物との組み合わせである請求項2に記載の分散液。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子を形成する金属が、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、及びCeから選ばれる少なくとも1種である請求項2、3または5に記載の分散液。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-01 
出願番号 特願2015-146212(P2015-146212)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 瀬下 浩一
蔵野 雅昭
登録日 2019-04-26 
登録番号 特許第6517106号(P6517106)
権利者 株式会社日本触媒
発明の名称 分散液  
代理人 特許業務法人アスフィ国際特許事務所  
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