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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 一部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1364947 |
異議申立番号 | 異議2020-700260 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-04-15 |
確定日 | 2020-08-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6589150号発明「液状又は半固体状乳化調味料及びその製造法、風味改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6589150号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6589150号の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、2018年8月21日(優先権主張 2017年8月24日 日本国(JP))を国際出願日とする特願2018-566461号の一部を、新たな特許出願としたものであり、令和1年5月23日に特許出願され、令和1年9月27日に特許権の設定登録がされ、令和1年10月16日にその特許公報が発行され、その後、令和2年4月15日に、特許異議申立人 角田 朗(以下「特許異議申立人」という。)により、請求項1?8に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。 第2 特許請求の範囲の記載 本件の特許請求の範囲の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する液状又は半固体状乳化調味料であって、 (1)食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下、 (2)食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下、及び (3)水分の含有量が20質量%以上、 であることを特徴とする、乳化調味料。 【請求項2】 (A1)水溶性食物繊維と(A2)水不溶性食物繊維との含有比(A1/A2)が0.1以上4以下である請求項1記載の乳化調味料。 【請求項3】 食物繊維として、(A1)水溶性食物繊維が、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、イヌリン、及びフコイダンから選択される1種以上であり、(A2)水不溶性食物繊維が、セルロース、ヘミセルロース、βグルカン、リグニン、及びキチンから選択される1種以上である、請求項1又は2記載の乳化調味料。 【請求項4】 食品由来の乳化剤が、卵黄、豆類、種実類及びトマトペーストから選ばれる1種以上を含有する請求項1?3のいずれか1項記載の乳化調味料。 【請求項5】 豆類が、大豆、レンズ豆及びヒヨコ豆から選ばれる1種以上である請求項4記載の乳化調味料。 【請求項6】 種実類が、アーモンドである請求項4記載の乳化調味料。 【請求項7】 マヨネーズ、マヨネーズ様調味料又はトマト含有ソースである請求項1?6のいずれか1項記載の乳化調味料。 【請求項8】 『「穀粉の吸水性測定法」変法』による測定開始後2分から90分の期間における最大吸水率が、乳化調味料1g当り0.20質量%以下であって、かつ、同法による最大吸油率が、乳化調味料1g当り1.0質量%以上である請求項1?7のいずれか1項記載の乳化調味料。」 第3 特許異議申立理由 1 新規性 異議申立理由1:請求項1?8に係る発明は、下記の甲第2号証?甲第9号証、甲第12号証、甲第13号証、甲第16号証?甲第18号証を参照すると、本件特許優先日前に日本国内において、甲第1号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第14号証、甲第15号証に係る電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 進歩性 異議理由2:請求項1?8に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内において、甲第1号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第14号証、甲第15号証に係る電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、及び甲第2号証?甲第9号証、甲第12号証、甲第13号証、甲第16号証?甲第18号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 実施可能要件 異議申立理由3:請求項8に係る発明で特定されている「最大吸水率」、「最大吸油率」をいかにして制御できるかを認識できないし、課題解決手段を反映しておらず、具現すべき材料等が不明確であり当業者が実施できないし、「最大吸水率」、「最大吸油率」を液状、すなわち低粘度の場合に測定できないので実施できず、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 また、請求項1?8に係る発明について、請求項1に特定されている「食品微粒子」が「湿潤食材」由来の微細化物である場合、湿潤食材由来でない「食品微粒子」を除外して湿潤食材由来の食品微粒子のモード径のみを測定できないので、本件特許発明を当業者が実施できず、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 明確性要件 異議申立理由4:請求項8に係る発明で特定されている「最大吸水率」、「最大吸油率」の測定方法が不明であり、請求項1において2度記載されている「食品微粒子」との用語が同一のものであるのか異なるものであるのか関係が不明確であり、誤認するような記載である。 したがって、請求項1?8に係る発明について、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 5 サポート要件 異議申立理由5:請求項1の「(2)食品微粒子のモード径」の食品微粒子が「調味料に含まれる全ての食品微粒子」という意味である場合、食物繊維を含む湿潤食材由来以外のものの含有率が高い場合は、課題が解決されるとは認識できず、請求項1?8に係る発明について、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 甲第1号証:レシピ詳細 レシピ名 アーモンドミルク入りつけだれ (https://www2.infomart.co.jp/kikaku/kikakurecipedisplay.page?0&is Seller=2&recipe_number=1001639)、及び、筑波乳業株式会社 商品・レシピ情報サイト レシピ検索 登録日2017年5月12日, (https://www2.infomart.co.jp/kikaku/kikakuhomepagesearchrecipe?2&C=10114&keyword=濃いアーモンドミルク) 甲第2号証:濃いアーモンドミルク|筑波乳業株式会社の掲載日が2017年7月5日とされるウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20170705193646/http://www.tsukuba-milk.co.jp/almondmilkpage2)検索日2020年4月10日 甲第3号証:濃いアーモンドミルク?まろやかプレーン?(検体)の粒度分布の測定(表題)に関する試験報告書 一般財団法人 日本食品分析センター 2020年3月10日 甲第4号証:特開2017-77219号公報 甲第5号証:キッコーマン わが家は焼肉屋さん W Rich 塩だれ|キッコーマン|商品情報の掲載日が2017年6月16日とされるウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20170616022740/http://www.kikkoman.co.jp/products/product/K200572/index.html)検索日2020年4月10日 甲第6号証:Amazon|キッコーマン 焼肉屋さん塩だれ370g|キッコーマン食品|たれ・料理ソース 通販(https://www.amazon.co.jp/キッコーマン-35624-焼肉屋さん塩だれ-370g/dp/B008CLZ5MW)取り扱い開始日2012年6月19日 甲第7号証:キッコーマン わが家は焼肉屋さん 香味野菜たっぷり 塩だれ|キッコーマン|商品情報(https://www.kikkoman.co.jp/products/product/K200526/index.html)印刷日2020年4月10日 甲第8号証:焼肉応援団 まろやか塩だれ|エバラ食品|商品情報の掲載日が2017年6月30日とされるウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20170630023342/https://www.ebarafoods.com/products/detail/MSD215.html)検索日2020年4月10日 甲第9号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)について 文部科学省(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365295.htm)公表日平成27年12月25日 甲第10号証:ASCII.jp:人気のアンチエイジング飲料“アーモンドミルク”その仕掛け人に密着取材!(https://ascii.jp/elem/000/000/892/892703/2/) 更新日2014年5月12日 甲第11号証:SHIORIの作ってあげたいアーモンド効果レシピ「冷やし担担麺」|レシピ|アーモンド効果|グリコの掲載日が2017年4月10日とされるウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20170410071926/http://cp.glico.jp/almond-k/recipe/shiori/08tantanmen.html)検索日2020年4月10日 甲第12号証:アーモンド効果/アーモンド効果 カロリーLight 2種計60本を税込・送料込でお試し|サンプル百貨店|江崎グリコ株式会社(https://www.3ple.jp/pay4ship/item/100000078459)印刷日2020年4月10日 甲第13号証:最安値|江崎グリコ アーモンド効果 1Lの価格比較(https://www.smashop.jp/dp/4971666410808)発売日2016年3月28日 甲第14号証:低糖質 アーモンドミルク胡麻だれ bya777 【クックパッド】簡単おいしいみんなのレシピが326万品(https://cookpad.com/recipe/3237675)レシピ更新日2015年7月5日 甲第15号証:レシピ詳細 レシピ名 アーモンドミルクのトマトクリームスープパスタ (https://www2.infomart.co.jp/kikaku/kikakurecipedisplay.page?3&isSeller=2&recipe_number=80532)、及び、筑波乳業株式会社 商品・レシピ情報サイト レシピ検索 登録日2014年12月1日(https://www2.infomart.co.jp/kikaku/kikakuhomepagesearchrecipe?2&C=10114&keyword=濃いアーモンドミルク) 甲第16号証:【業務用】トマト煮込みソース 2kg|メーカー直営|日本食研業務用ストア 本店の掲載日が2016年9月8日とされるウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20160908230033/https://www.nihonshokken-gh.com/shopdetail/000000000145/)検索日2020年4月10日 甲第17号証:Amazon|光食品 オーガニックトマトソース あっさり トマト味 365g|光食品|パスタソース 通販(https://www.amazon.co.jp/光食品-オーガニックトマトソース-あっさりトマト味-365g/dp/B003GXJYDW)取り扱い開始日2010年4月12日 甲第18号証:デルモンテ 基本の完熟トマトソース|キッコーマン|食品情報 掲載日が2017年6月30日とされるウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20170820025834/https://www.kikkoman.co.jp/products/product/K452005/index.html)検索日2020年4月10日 甲第19号証:日本家政学会誌 1992年 43巻2号 p.159-163「味噌を乳化剤としたエマルションの分散状態」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhei1987/43/2/43 2 159/_pdf)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhei1987/43/2/432 159/_article/-char/ja/) 甲第20号証:特開2017-99308号公報 第4 当審の判断 異議申立理由1及び2について 1 甲号証の記載事項 (1)甲第1号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第1号証には、以下の記載がある。 (1a)「【つけだれ】 焼肉用 塩だれ 20g 濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン? 30g」(1/1頁 材料(1人分)の項目) (1b)「4.塩だれにアーモンドミルクを加えて混ぜつけだれにする。」(1/1頁 作り方の項目) (2)甲第2号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第2号証には、以下の記載がある。 (2a)「自社のナッツ専門工場で識別したアーモンドを皮むきし、まるごとつぶし、成分を濃いまま逃さない製法を生み出しました(微細化・まるごと粉砕)。」(3/6頁 濃くつくるための技術の項目) (2b)「まろやかプレーン(砂糖不使用) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・栄養成分表示(100mlあたり) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・-食物繊維 0.8g」(4/6頁 栄養成分表示) (3)甲第3号証 甲第3号証の試験報告書には、以下の記載がある。 (3a)「2 検 体 濃いアーモンドミルク?まろやかプレーン? 3 試験概要 レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2200型[株式会社 島津製作所]により粒度分布を測定した。」(2/4頁 検体及び試験概要の項目) (3b)「 4 試験結果 ・・・ 表-1 粒度分布の測定結果(単位:%) ・・・ 粒子径(μm)・・・頻度q3 ・・・ 23.538・・・16.921 ・・・」(3/4頁 試験結果の項目) (4)甲第4号証 本願の優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。 (4a)「 【0041】 (アーモンドミルク1) 筑波乳業株式会社製「アーモンドミルク12」(アーモンド12%配合 メジアン径φ 6.229μm モード径4.562μm)を用いた。成分は表1に記載した。 (アーモンドミルク2) 筑波乳業株式会社製「アーモンドミルク10」(アーモンド10%配合 メジアン径φ 1.037μm モード径0.536μm)を用いた。成分は表1に記載した。 (アーモンドミルク3) 筑波乳業株式会社製「ローストアーモンドミルク」(ローストアーモンド10%配合 メジアン径φ9.277μm モード径19.023μm)を用いた。成分は表1に記載した。」 (5)甲第5号証 本願の優先日前と解される電子的情報である甲第5号証には、以下の記載がある。 (5a)「原材料名 香味野菜だれ:たまねぎ、果糖ぶどう糖液糖、食塩、レモン果汁、にんにく、しょうが、酵母エキス、醸造酢、香辛料、小麦発酵調味料、ほたてエキス/アルコール、増粘剤(加工でん粉、増粘多糖類) 香味油:ごま油、レモンピール」(1/3頁 原材料名の項目) (5b)「栄養成分 (21.0gあたり) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・食物繊維・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.2g・・・・・・・・・・」(2/3頁 栄養成分の項目) (6)甲第6号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第6号証には、以下の記載がある。 (6a)「原材料 野菜(たまねぎ、白ねぎ、にんにく、しょうが)、果糖ぶどう糖液糖、レモン果汁、食塩、ごま油、醸造酢、小麦発酵調味料、酵母エキス、香辛料、ほたてエキス、ごま、アルコール、増粘剤(加工でん粉、キサンタン)」(1/5頁 原材料の項目) (7)甲第7号証 電子的情報である甲第7号証には、以下の記載がある。 (7a)「栄養成分・・・・・・・・・・・・(16.0gあたり) ・・・・・・・・・・・・食物繊維・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・0.2g・・・・・・・・・・・・」(2/4頁 栄養成分の項目) (8)甲第8号証 本願の優先日前と解される電子的情報である甲第8号証には、以下の記載がある。 (8a)「 原材料名/ イソマルトオリゴ糖シロップ、還元水あめ、食塩、レモン果汁、ごま油、にんにく、長ねぎ、醸造酢、白ごま、玉ねぎ、香辛料、ポークエキス、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、塩化マグネシウム含有物、増粘剤(キサンタンガム) (原材料の一部に小麦を含む)」(1/3頁 原材料名の項目) (9)甲第9号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第9号証の日本食品成分表には、以下の記載がある。 (9a)「 5種実類 可食部100gあたり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・食品名・・・・・・・・・・・食物繊維 ・・・・・・・・・・・・・・水溶性 不溶性 総量(原文では縦書き) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・アーモンド・・・・・・ ・・・・乾・・・・・・・・・0.8 9.3 10.1・・・・・・ ・・・フライ、味付け・・・0.6 11.3 11.9・・・・・・ ・・・いり、無塩・・・・・1.1 10.0 11.0・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ごま・・・・・・・・ ・・・・乾・・・・・・・・・1.6 9.2 10.8・・・・・・ ・・・・ねり・・・・・・・2.5 10.2 12.7・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(5種実類の項目) (9b)「 17調味料及び香辛料類 可食部100gあたり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・食品名・・・・・・・・・・・食物繊維 ・・・・・・・・・・・・・・水溶性 不溶性 総量(原文では縦書き) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・こいくちしょうゆ・(0) (0) (0)・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・食塩・・・・・・・(0) (0) (0)・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・かつおだし・・・・(0) (0) (0)・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・トマトソース・・・0.3 0.8 1.1・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・甘みそ・・・・・・0.3 5.3 5.6・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・だし入りみそ・・・0.6 4.0 4.6・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(17調味料及び香辛料類の項目) (10)甲第10号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第10号証には、以下の記載がある。 (10a)「 【アーモンドミルクスープ】 ・アーモンドミルク200g ・出汁200g ・すりしょうが2g ・白みそ40g ・薄口しょうゆ10g ・酒15g ・塩4.5g」(2/6頁 材料の項目) (10b)「●作り方 1.【アーモンドミルクスープ】の材料を、全て混ぜ合わせる。」(3/6頁 作り方の項目 1.) (10c)「-実際にアーモンドミルクを使用して、どのような味、食感を得られましたか? 中島眞介シェフ 「味わいにキレがあり、100%のアーモンドミルクで使うより、牛乳、生クリーム、カスタードといったものと合わせて使うと、今までにない感覚で新しい味ができあがりました。アーモンドミルクは、他の素材の味を壊さない、影の力持ちといった存在ですね」(4/6頁 4?9行) (11)甲第11号証 本願の優先日前と解される電子的情報である甲第11号証には、以下の記載がある。 (11a)「材料(2人前) ・・・・ そうめん ・・・・・・・・・・・・・・・2束 アーモンド効果(カロリーLight)・・・200ml 練りごま(白)・・・・・・・・・・・・・・大さじ2 めんつゆ(3倍濃縮)・・・・・・・・・・・大さじ2 ラー油・・・・・・・・・・・・・・・・・・お好みで かいわれ大根・・・・・・・・・・・・・・・適量 アーモンド・・・・・・・・・・・・・・・・適量」(1/4頁 材料の欄) (11b)「step 03 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ボウルに練りごま、めんつゆを合わせてよく混ぜてからアーモンド効果を加えて混ぜる。」(3/4頁 作り方 step03の欄) (11c)「step 04 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 器(小ぶりの丼または深さのある平皿)にそうめんを盛り、01をのせて03をかける。かいわれ大根をのせ、炒って刻んだアーモンドをふり、ラー油をお好みで回しかける。」(3/4頁 作り方 step04の欄) (12)甲第12号証 電子的情報である甲第12号証には、以下の記載がある。 (12a)「【アーモンド効果 カロリーLight】 食物繊維(ポリデキストロース)、アーモンドペースト、食塩、アーモンドオイル加工品、セルロース、乳化剤、pH調整剤、香料、ビタミンE 栄養成分(1本200ml当たり) 【アーモンド効果】 エネルギー73kcal、たんぱく質1.0g、脂質3.1g、糖質9.9g、食物繊維4.0g、ナトリウム155mg、ビタミンE10.0mg、コレステロール0mg 【アーモンド効果 カロリーLight】 エネルギー40kcal、たんぱく質0.9g、脂質3.0g、糖質2.1g、食物繊維5.5g、ナトリウム144mg、ビタミンE10.0mg、コレステロール0mg、ショ糖0.2g」(2/4頁 原材料及び栄養成分の欄) (13)甲第13号証 電子的情報である甲第13号証には、以下の記載がある。 (13a)「硬いアーモンドを細かくすりつぶして、滑らかに仕上げたアーモンドミルクです。」(2/2頁 商品説明の欄) (13b)「発売日 2016/3/28」(2/2頁 商品説明の発売日の欄) (13c)「・原材料:アーモンドペースト、砂糖、食物繊維(イヌリン)、デキストリン、果糖ぶどう糖液糖、ハチミツ、食塩、植物油脂、アーモンドオイル加工品/セルロース、クエン酸Ca、pH調整剤、香料、乳化剤、増粘剤(キサンタンガム)、ビタミンE、甘味(ソーマチン、スクラロース)」(2/2頁 商品説明の材料の欄) (14)甲第14号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第14号証には、以下の記載がある。 (14a)「材料 白練り胡麻 100g 白胡麻 大3 アーモンドミルク(無糖) 250ml ☆ココナッツシュガー 大4 ☆お醤油 大4 ☆だし入り味噌 大4 レモン汁 大1/2 胡麻油(入れなくても良い) 適量 にんにく(お好みで) 適量 辣油(お好みで) 適量」(1/2頁 材料の欄) (15)甲第15号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第15号証には、以下の記載がある。 (15a)「 材料(2人分) 市販のトマトソース 1食分 濃いアーモンドミルク?まろやかプレーン?200?250cc 塩、こしょう 適量 パスタ 160g むきえび 50g アスパラガス 3本 オリーブオイル 5g 白ワイン 30cc 塩、こしょう 適量」(1/1頁 材料の欄) (15b)「【ポイント】 ※アーモンドミルクはトマトソースの1.5?2倍量を目安に、お好みで加えてください。」(1/1頁 作り方の欄) (16)甲第16号証 本願の優先日前と解される電子的情報である甲第16号証には、以下の記載がある。 (16a)「原材料 トマト、ぶどう発酵調味料、砂糖、玉ねぎ、植物油、醸造酢、食塩、にんにく、肉エキス、酵母エキス、香辛料、増粘剤(加工澱粉)、調味料(アミノ酸等)、(原材料の一部に小麦、乳成分、大豆、鶏、りんごを含む)」(1/3頁 原材料の欄) (17)甲第17号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第17号証には、以下の記載がある。 (17a)「原材料:有機トマト、有機米酢、有機たまねぎ、糖類(有機砂糖、麦芽水飴)、食塩、有機にんにく、香辛料、有機しょうが」(1/5頁 原材料の欄) (18)甲第18号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第18号証には、以下の記載がある。 (18a)「原材料名 トマト、たまねぎ、植物油脂(グレープシードオイル、オリーブオイル)、砂糖、にんにく、食塩、香辛料、セルリー、酸味料」(1/3頁 原材料名の欄) (19)甲第19号証 本願の優先日前の電子的情報である甲第19号証には、以下の記載がある。 (19a)「Fig.1-(1)の写真より,味噌サスペンションは,味噌水不溶性固形物(大豆子葉細胞の一部)が攪拌しても全部砕かれずに残り,その周囲には味噌水可溶性成分が分散していることがわかる.Fig.1-(2)では,不溶性固形物および油滴が観察されて,その不溶性固形物の平均絶対最大長(ML)は111.5±1.9μmであり,円相当径(HD)では55.2±8.7μmであり,味噌サスペンションの場合とほとんど変わらない.」(160頁左欄下から8?1行) (20)甲第20号証 本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である甲第20号証には、以下の記載がある。 (20a)「【解決手段】脂質含有量が10%以下、20℃における粘度が15Pa・s以下である酸性液状調味料において、ネギ属野菜を含有し、澱粉粒の体積平均粒子径が3?15μm以下の加工澱粉が分散している、酸性液状調味料。」(【要約】の【解決手段】の欄) (20b)「 【0040】 <ノンオイルの酸性液状調味料の配合割合> アルコール酢(酸度4.5%) 5% ブドウ酢(酸度4.5%) 3% 体積平均粒子径が7μmの加工澱粉※1 5% すりおろし生玉ねぎ※2 15% (固形分配合量1.5%) すりおろし生生姜※3 0.5% (固形分配合量0.05%) 砂糖 5% 食塩 4% コショウ 0.3% グルタミン酸ナトリウム 0.8% レモン果汁 0.3% キサンタンガム 0.5% 清水 残余 ???????????????????????????? 合計 100% ※1:体積平均粒子径が7μmの加工澱粉は、原料澱粉が米のリン酸架橋澱粉 ※2:すりおろし生玉ねぎの大きさは、60%以上が15μm?1mmである ※3:すりおろし生生姜の大きさは、60%以上が15μm?1mmである」 2 甲号証に記載された発明(甲号証で電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を以下、「甲号証に記載された発明」という。) (1)甲第1号証に記載された発明 摘記(1a)には、つけだれの材料として、焼肉用塩だれと「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」の量が示され、摘記(1b)には、 作り方として、両者を混ぜつけだれにすることが記載されているので、甲第1号証には、 「焼肉用塩だれ20gと「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」30gからなるつけだれ」に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)甲第10号証に記載された発明 摘記(10a)には、アーモンドミルクスープの材料として、アーモンドミルク、出汁、すりしょうが、白みそ、薄口しょうゆ、酒、塩 の量が示され、摘記(10b)には、作り方として、アーモンドミルクスープの材料を全て混ぜ合わせることが記載されているので、甲第10号証には、 「アーモンドミルク200g、出汁200g、すりしょうが2g、白みそ40g、薄口しょうゆ10g、酒15g、塩4.5gからなるアーモンドミルクスープ」に係る発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているといえる。 (3)甲第11号証に記載された発明 摘記(11a)には、冷やし担担麺の材料として、そうめん2束、アーモンド効果(カロリーLight)200ml、練りごま(白)大さじ2、めんつゆ(3倍濃縮)大さじ2、ラ-油・お好みで、かいわれ大根適量、アーモンド適量との量が示され、摘記(11b)には、作り方のステップ03として、練りごま、めんつゆを合わせてよく混ぜてから、アーモンド効果を加えること、ステップ04で、そうめんに肉みそをのせ、ステップ03をかけ、かいわれ大根、アーモンド、ラー油を加えることが記載されている。 したがって、甲第11号証には、 「そうめん2束、アーモンド効果(カロリーLight)200ml、練りごま(白)大さじ2、めんつゆ(3倍濃縮)大さじ2、ラ-油・お好み量、かいわれ大根適量、アーモンド適量と肉みそからなる冷やし担担麺」に係る発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているといえる。 (4)甲第14号証に記載された発明 摘記(14a)には、低糖質アーモンドミルク胡麻だれの材料として、白練り胡麻、白胡麻、アーモンドミルク(無糖)、ココナッツシュガー、お醤油、だし入り味噌、レモン汁、胡麻油、にんにく、辣油の量が記載されている。 したがって、甲第14号証には、 「白練り胡麻100g、白胡麻大3、アーモンドミルク(無糖)250ml、ココナッツシュガー大4、お醤油大4、だし入り味噌大4、レモン汁大1/2、胡麻油入れなくても良いが適量、にんにくお好みで適量、辣油お好みで適量からなる低糖質アーモンドミルク胡麻だれ」に係る発明(以下「甲14発明」という。)が記載されているといえる。 (5)甲第15号証に記載された発明 摘記(15a)には、アーモンドミルクのトマトクリームスープパスタの材料として、市販のトマトソース、「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」、塩、こしょう、パスタ、むきえび、アスパラガス、オリーブオイル、白ワインの量が記載されている。 したがって、甲第15号証には、 「市販のトマトソース1食分、「濃いアーモンドミルク?まろやかプレーン?」200?250cc、塩、こしょう 適量、パスタ 160g、むきえび 50g、アスパラガス 3本、オリーブオイル 5g、白ワイン30ccからなるアーモンドミルクのトマトクリームスープパスタ」に係る発明(以下「甲15発明」という。)が記載されているといえる。 3 対比・判断 (1)本件特許発明1について ア 甲1発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、アーモンドミルクからなる湿潤食材であることは明らかであるから、本件特許発明1の「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材」に該当する。 また、甲1発明の「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」と「焼肉用塩たれ」からなる「つけだれ」は、本件特許発明1の「液状又は半固体状乳化調味料」と、「液状又は半固体状調味料」である限りにおいて共通している。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明と、「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材を含有する液状又は半固体状調味料」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1-1:本件特許発明1においては、湿潤食材が、「微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と特定されているのに対して、甲1発明においては、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子であることは特定されていない点 相違点2-1:液状又は半固体状調味料の成分に関して、本件特許発明1は、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが特定されているのに対して、甲1発明においては、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが明らかではない点。 相違点3-1:本件特許発明1においては、食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることが特定されているのに対して、甲1発明においては、食物繊維が水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維として含有されていることや、それらの合計量が明らかでない点。 相違点4-1:本件特許発明1においては、食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下であることが特定されているのに対して、甲1発明においては、食品微粒子のモード径が明らかでない点。 相違点5-1:本件特許発明1においては、水分の含有量が20質量%以上であることが特定されているのに対して、甲1発明においては、水分の含有量が明らかでない点。 (イ)判断 a 相違点1-1について 甲1発明で用いられる「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、甲1発明で用いられている同一商品の説明をしている甲第2号証摘記(2a)から、アーモンドが微細化されたものとして含有されていること、摘記(2b)から食物繊維を含むものであることが理解できる。 したがって、甲1発明の湿潤食材である「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子である、といえるので相違点1-1は、実質的な相違点であるとはいえない。 b 相違点2-1について 甲1発明の成分である、「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」の栄養成分をみても、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されていない(摘記(2b))。 また、甲1発明の他方の成分である焼肉用塩だれに何が含まれているかは、この焼肉用塩だれがどのようなものであるかが不明である以上理解できない。 たとえ、特定の商品名の焼肉用塩だれについて、特定の商品名の焼肉用塩だれについて甲第5号証摘記(5a)、甲第6号証摘記(6a)、甲第8号証摘記(8a)に、醸造酢が含まれていることが示され、甲第7号証摘記(7a)に脂質が含まれていることが示されているとしても、甲第7号証が優先日時点で公知とはいえないことはさておき、甲第5?8号証は、特定の商品の成分を示しているにすぎず、何ら成分の記載のない甲1発明における焼肉用塩だれが、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点2-1は、実質的な相違点であり、甲1発明のつけだれにおいて、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を同時に含有させなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 c 相違点3-1について 甲1発明において、用いられる一方の成分である「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」の食物繊維含有量に関して、甲第2号証の摘記(2b)の100mlあたりの栄養成分表示から食物繊維が0.8g含まれているといえる。 また、甲第9号証摘記(9a)からアーモンド中に含まれる食物繊維に、水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維が存在していることは技術常識であるといえる。 しかしながら、甲1発明の材料である焼肉用塩だれにどの程度の量の食物繊維が含まれるかは、そもそも明らかではない。 甲第5号証摘記(5a)、甲第7号証摘記(7a)に、特定の商品名の焼肉用塩だれが含有する食物繊維量が示されているとしても、甲第7号証が優先日時点で公知とはいえないことはさておき、甲第5、7、8号証は、特定の商品の成分を示しているにすぎず、何ら食物繊維量を含め他の成分量についても記載のない甲1発明における焼肉用塩だれが、100mlあたり食物繊維が0.8g含まれた「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」を合わせて用いられた場合に、全体として、食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることは記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点3-1は、実質的な相違点であり、甲1発明のつけだれ全体として、食物繊維に関する上記相違点3-1の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 d 相違点4-1について 甲1発明で湿潤食材であって、甲第2号証摘記(2a)(2b)からみて、本件特許発明1の食物繊維を含む食品微粒子に相当する「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、甲第3号証摘記(3a)(3b)の試験報告書からみて、モード径が混合時の粒径変化を考慮しても、0.3μm以上115μm以下であると理解できるため、相違点4-1は、実質的な相違点であるとはいえない。 したがって、相違点5-1を検討するまでなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証記載の発明および甲第2?9号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 e 本件特許発明1の効果について 本件特許発明1は、前記第2の請求項1に特定したように、湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する液状又は半固体状乳化調味料において、(1)食物繊維に関する成分と合計含有量範囲の特定、(2)食品微粒子のモード径範囲の特定、(3)水分の含有量範囲の特定をした構成によって、【0013】に示した当業者の予測を超える効果を得ている。 f 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、特定の焼肉用塩だれ商品の説明である甲第5?8号証を示して、甲1発明の焼肉用塩だれに関して、含まれる成分や食物繊維量が推認できる旨の主張や、数値範囲に差異があっても単なる最適化・好適化である旨主張している。 しかしながら、甲第1号証に記載された焼肉用塩だれの含まれる成分や食物繊維量が記載されているに等しいものといえるわけではないことは上述のとおりであるし、本件特許発明1において特定された数値範囲において、効果を奏するための技術的意義が本件特許明細書の一般的記載や実施例において明らかにされているのであるから、単なる最適化・好適化であるということはできない。 よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 本件特許発明1は、甲1号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第9号証に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 イ 甲10発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲10発明とを対比すると、甲10発明のアーモンドミルクは、アーモンドミルクという湿潤食材であることは明らかであるから、本件特許発明1の「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材」に該当する。 また、甲10発明のアーモンドミルクスープは、アーモンドミルク鍋のスープとして使用されているのであるから、本件特許発明1の「液状又は半固体状乳化調味料」と、「液状又は半固体状調味料」である限りにおいて共通している。 したがって、本件特許発明1は、甲10発明と、「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材を含有する液状又は半固体状調味料」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1-10:本件特許発明1においては、湿潤食材が、「微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と特定されているのに対して、甲10発明においては、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子であることは特定されていない点 相違点2-10:液状又は半固体状調味料の成分に関して、本件特許発明1は、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが特定されているのに対して、甲10発明においては、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが明らかではない点。 相違点3-10:本件特許発明1においては、食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることが特定されているのに対して、甲10発明においては、食物繊維が水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維として含有されていることや、それらの合計量が明らかでない点。 相違点4-10:本件特許発明1においては、食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下であることが特定されているのに対して、甲10発明においては、食品微粒子のモード径が明らかでない点。 相違点5-10:本件特許発明1においては、水分の含有量が20質量%以上であることが特定されているのに対して、甲10発明においては、水分の含有量が明らかでない点。 (イ)判断 a 相違点1-10について 甲10発明で用いられる湿潤材料に相当するアーモンドミルクについては、どのような製品のアーモンドミルクを使用したのか直接の記載がなく、微細化や食物繊維に関して特定することができない。 また、甲10発明のアーモンドミルクスープの材料に関して、本件優先日時点で記載されているに等しいといえる技術常識があるわけでもない。 したがって、相違点1-10は、実質的な相違点である。 また、甲10発明の湿潤食材は、アーモンドミルクであればよく、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子にしなければならない動機付けはないのであるから、当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 b 相違点2-10について 甲10発明の材料をみても、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されていない(摘記(10a))。 また、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されているに等しい事項であるともいえない。 したがって、相違点2-10は、実質的な相違点であり、甲10発明において、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を同時に含有させなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 c 相違点3-10について 甲10発明において、用いられる材料であるアーモンドミルク、出汁、すりしょうが、白みそ、薄口しょうゆ、酒、塩の食物繊維含有量に関して、甲第9号証の摘記(9a)(9b)をみると、類似の成分に関して、食品標準成分表として食物繊維が含まれていることや、食物繊維に、水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維が存在していることは示されているといえる。 しかしながら、甲10発明で用いられる材料であるアーモンドミルク、出汁、すりしょうが、白みそ、薄口しょうゆ、酒、塩の食物繊維含有量はそもそも明らかではない。 したがって、相違点3-10は、実質的な相違点であり、甲10発明のアーモンドミルクスープ全体として、食物繊維に関する上記相違点3-10の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 d 相違点4-10について 甲10発明の湿潤食材であるアーモンドミルクに関しては、そもそも微細化に関する情報がなく、モード径が0.3μm以上115μm以下であると理解できるとはいえないので、相違点4-10は、実質的な相違点である。 また、甲10発明のアーモンドミルクを上記相違点4-10の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 したがって、相違点5-10を検討するまでなく、本件特許発明1は、甲第10号証に記載された発明とはいえないし、甲第10号証記載の発明および甲第1?9号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 e 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、醤油や味噌中に油脂及び酢酸が含まれていることや、甲10発明の成分であるアーモンドミルクが甲1発明の「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」であることや、甲第9号証の食品標準成分表の値から食物繊維量を計算することを前提として、本件特許発明1が甲第10号証に記載された発明であることや、甲第2号証のアーモンドミルクを用いれば容易に発明することができる旨主張している。 しかしながら、異議申立人の上記多数の前提自体が仮定にすぎず、甲第10号証に記載されたに等しい事項であるといえるわけではないことは上述のとおりであるし、甲10発明に甲第2号証のアーモンドミルクを用いる動機付けはないし、上記相違点2-10?4-10に関する結論に影響があるわけではない。 また、前記ア(イ)eで述べたように、本件特許発明1において特定された数値範囲において、効果を奏するための技術的意義が本件特許明細書の一般的記載や実施例において明らかにされているのであるから、その効果は、当業者の予測を超えるものである。 よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 本件特許発明1は、甲10号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第9号証に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 ウ 甲11発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲11発明とを対比すると、甲11発明の「アーモンド効果(カロリーLight)」は、アーモンドミルクからなる湿潤食材であることは明らかであるから、本件特許発明1の「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材」に該当する。 また、甲11発明の「アーモンド効果(カロリーLight)」200ml、練りごま(白)大さじ2、めんつゆ(3倍濃縮)大さじ2、ラー油・お好み量、かいわれ大根適量、アーモンド適量と肉みそ」の部分は、本件特許発明1の「液状又は半固体状乳化調味料」と、「液状又は半固体状」成分を含む「調味料」である限りにおいて共通している。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明と、「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材を含有する液状又は半固体状成分を含む調味料」に係るものである点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1-11:本件特許発明1においては、湿潤食材が、「微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と特定されているのに対して、甲11発明においては、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子であることは特定されていない点 相違点2-11:液状又は半固体状成分を含む調味料の成分に関して、本件特許発明1は、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが特定されているのに対して、甲11発明においては、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが明らかではない点。 相違点3-11:本件特許発明1においては、食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることが特定されているのに対して、甲11発明においては、食物繊維が水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維として含有されていることや、それらの合計量が明らかでない点。 相違点4-11:本件特許発明1においては、食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下であることが特定されているのに対して、甲11発明においては、食品微粒子のモード径が明らかでない点。 相違点5-11:本件特許発明1においては、水分の含有量が20質量%以上であることが特定されているのに対して、甲11発明においては、水分の含有量が明らかでない点。 相違点6-11:本件特許発明1は、液状又は半固体状乳化調味料であるのに対して、甲11発明は、液状又は半固体状成分を含む調味料を混ぜて製造した冷やし担担麺である点。 (イ)判断 a 相違点1-11について 甲11発明で用いられる「アーモンド効果(カロリーLight)」は、甲11発明で用いられているものと同一商品名のものについて記載のある甲第12号証摘記(12a)が優先日当時公知の資料といえない以上、甲第13号証摘記(13a)(13b)において、異なる商品の説明について、細かくすりつぶすことや食物繊維に関する記載があるからといって、同様に理解できるとはいえない。 したがって、甲11発明の湿潤食材である「アーモンド効果(カロリーLight)」は、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子であるとはいえないので相違点1-1は、実質的な相違点である。 また、甲11発明の湿潤食材は、「アーモンド効果(カロリーLight)」を用いたレシピを示せば良いのであって、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子にしなければならない動機付けはないのであるから、当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 b 相違点2-11について 甲11発明の成分である、「アーモンド効果(カロリーLight)」をみても、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されていない(摘記(13b)。 また、甲11発明のその他の材料である練りごま(白)や肉みそ中の味噌に食物繊維が存在していることは食品標準成分表から想定できても(摘記(9a)(9b))、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは理解できない。 そして、甲11発明に油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されているに等しい事項であるとはいえる技術常識はない。 したがって、相違点2-11は、実質的な相違点であり、甲11発明において、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を同時に含有させなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 c 相違点3-11について 甲11発明において、用いられる成分である「アーモンド効果(カロリーLight)」は、甲11発明で用いられているものとは異なる商品の説明をしている甲第13号証摘記(13b)からでは、食物繊維を含むものであることが理解できない(甲第12号証は公知のものではなく参酌できない。)。 甲第9号証摘記(9a)からアーモンド中に含まれる食物繊維に、水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維が存在していることは技術常識であるといえるが、甲11発明は、冷やし担担麺全体の発明であり、各成分の液状又は半固体状調味料に対する割合や食物繊維含有量が明確でないのであるから、調味料における食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることは記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点3-11は、実質的な相違点であり、甲11発明の調味料部分において、食物繊維に関する上記相違点3-11の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 d 相違点4-11について 甲11発明で湿潤食材であって、甲11発明の湿潤食材である「アーモンド効果(カロリーLight)」に関しては、そもそも微細化に関する具体的な情報がなく、モード径が0.3μm以上115μm以下であると理解できるとはいえないので、上記相違点4-11は、実質的な相違点である。 また、甲11発明のアーモンドミルクを上記相違点4-11の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 したがって、相違点5-11、相違点6-11を検討するまでなく、本件特許発明1は、甲第11号証に記載された発明とはいえないし、甲第11号証記載の発明および甲第1?9、11?13号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 e 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、練りごまやめんつゆに油脂及び酢酸がそれぞれ含まれていることや、甲第3号証や甲第4号証の他のアーモンドミルクとモード径が同様である蓋然性が高いことや、甲第9号証の食品標準成分表の値から食物繊維量を計算することを前提として、本件特許発明1が甲第11号証に記載された発明であることや、甲第2号証や甲第4号証のアーモンドミルクを用いれば容易に発明することができる旨主張している。 しかしながら、異議申立人の上記多数の前提自体が仮定にすぎず、甲第11号証に記載されたに等しい事項であるといえるわけではないことは上述のとおりであるし、甲11発明は、「アーモンド効果(カロリーLight)」を用いたレシピであって、甲第2号証や甲第4号証のアーモンドミルクを用いる動機付けはないし、上記相違点2-11?4-11に関する結論に影響があるわけではない。 さらに、異議申立人の主張は、アーモンドミルク、練りごま(白)、めんつゆのみからなる発明が記載されている旨主張しているが、摘記(11a)の材料から3成分を抽出して認定することはできないし、摘記(11b)に作り方のステップの途中の一工程として3成分を混ぜることの記載があるからといって、その部分のみから発明を認定することもできない。 また、前記ア(イ)eで述べたように、本件特許発明1において特定された数値範囲において、効果を奏するための技術的意義が本件特許明細書の一般的記載や実施例において明らかにされているのであるから、その効果は、当業者の予測を超えるものである。 よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 本件特許発明1は、甲11号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第9号証、甲第11号証?甲第13号証に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 エ 甲14発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲14発明とを対比すると、甲14発明のアーモンドミルク(無糖)は、アーモンドミルクという湿潤食材であることは明らかであるから、本件特許発明1の「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材」に該当する。 また、甲14発明の「低糖質アーモンドミルク胡麻だれ」は、本件特許発明1の「液状又は半固体状乳化調味料」と、「液状又は半固体状調味料」である限りにおいて共通している。 したがって、本件特許発明1は、甲14発明と、「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材を含む液状又は半固体状調味料」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1-14:本件特許発明1においては、湿潤食材が、「微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と特定されているのに対して、甲14発明においては、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子であることは特定されていない点 相違点2-14:液状又は半固体状調味料の成分に関して、本件特許発明1は、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが特定されているのに対して、甲14発明においては、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有する乳化調味料であることが明らかではない点。 相違点3-14:本件特許発明1においては、食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることが特定されているのに対して、甲14発明においては、食物繊維が水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維として含有されていることや、それらの合計量が明らかでない点。 相違点4-14:本件特許発明1においては、食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下であることが特定されているのに対して、甲14発明においては、食品微粒子のモード径が明らかでない点。 相違点5-14:本件特許発明1においては、水分の含有量が20質量%以上であることが特定されているのに対して、甲14発明においては、水分の含有量が明らかでない点。 (イ)判断 a 相違点1-14について 甲14発明で用いられるアーモンドミルク(無糖)については、どのようなアーモンドミルクを使用したのか直接の記載がなく、微細化や食物繊維に関して特定することができない。 また、甲14発明の低糖質アーモンドミルク胡麻だれの材料に関して、本件優先日時点で記載されているに等しいといえる技術常識があるわけでもない。 したがって、相違点1-14は、実質的な相違点である。 また、甲14発明の湿潤食材は、アーモンドミルクであればよく、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子にしなければならない動機付けはないのであるから、当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 b 相違点2-14について 甲14発明の成分をみても、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されていない(摘記(14a))。 また、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されているに等しい事項であるともいえない。 したがって、相違点2-14は、実質的な相違点であり、甲14発明において、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を同時に含有させなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 c 相違点3-14について 甲14発明において、用いられる材料である白練り胡麻、白胡麻、アーモンドミルク(無糖)、ココナッツシュガー、お醤油、だし入り味噌、レモン汁、胡麻油、にんにく、辣油の食物繊維含有量に関して、甲第9号証の摘記(9a)(9b)をみても、類似の成分に関して、食品標準成分表として食物繊維が含まれていることや、食物繊維に、水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維が存在していることは示されているといえる。 しかしながら、甲14発明で用いられる材料である白練り胡麻、白胡麻、アーモンドミルク(無糖)、ココナッツシュガー、お醤油、だし入り味噌、レモン汁、胡麻油、にんにく、辣油の食物繊維含有量はそもそも明らかではない。 したがって、相違点3-14は、実質的な相違点であり、甲14発明の低糖質アーモンドミルク胡麻だれ全体として、食物繊維に関する上記相違点3-14の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 d 相違点4-14について 甲14発明の湿潤食材であるアーモンドミルク(無糖)に関しては、そもそも微細化に関する情報がなく、モード径が0.3μm以上115μm以下であると理解できるとはいえないので、相違点4-14は、実質的な相違点である。 また、甲14発明のアーモンドミルク(無糖)を上記相違点4-14の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 したがって、相違点5-14を検討するまでなく、本件特許発明1は、甲第14号証に記載された発明とはいえないし、甲第14号証記載の発明および甲第1?9号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 e 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、油脂及び酢酸が含有されていることや、甲14発明の成分である白練りごま、白胡麻、だし入り味噌の食物繊維量を甲第9号証の食品標準成分表の値から計算すること、アーモンドミルク(無糖)が甲1発明の「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」であることを前提として、本件特許発明1が甲第14号証に記載された発明であることや、甲第2号証や甲第4号証のアーモンドミルクを用いれば容易に発明することができる旨主張している。 しかしながら、異議申立人の上記多数の前提自体が仮定にすぎず、甲第14号証に記載されたに等しい事項であるといえるわけではないことは上述のとおりであるし、甲14発明に甲第2号証や甲第4号証のアーモンドミルクを用いる動機付けはないし、上記相違点2-14?4-14に関する結論に影響があるわけではない。 また、前記ア(イ)eで述べたように、本件特許発明1において特定された数値範囲において、効果を奏するための技術的意義が本件特許明細書の一般的記載や実施例において明らかにされているのであるから、その効果は、当業者の予測を超えるものである。 よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 本件特許発明1は、甲14号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第9号証に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 オ 甲15発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲15発明とを対比すると、甲15発明の「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、アーモンドミルクからなる湿潤食材であることは明らかであるから、本件特許発明1の「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材」に該当する。 また、甲15発明の「市販のトマトソース、濃いアーモンドミルク?まろやかプレーン?、塩、こしょう、オリーブオイル、白ワイン」の部分は、本件特許発明1の「液状又は半固体状乳化調味料」と、「液状又は半固体状調味料」である限りにおいて共通している。 したがって、本件特許発明1は、甲15発明と、「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材を含む液状又は半固体状成分を含む調味料」に係る部分で一致し、以下の点で相違する。 相違点1-15:本件特許発明1においては、湿潤食材が、「微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と特定されているのに対して、甲1発明においては、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子であることは特定されていない点 相違点2-15:液状又は半固体状調味料の成分に関して、本件特許発明1は、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有した乳化調味料であることが特定されているのに対して、甲15発明においては、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有した乳化調味料であることが明らかではない点。 相違点3-15:本件特許発明1においては、食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることが特定されているのに対して、甲15発明においては、食物繊維が水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維として含有されていることや、それらの合計量が明らかでない点。 相違点4-15:本件特許発明1においては、食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下であることが特定されているのに対して、甲15発明においては、食品微粒子のモード径が明らかでない点。 相違点5-15:本件特許発明1においては、水分の含有量が20質量%以上であることが特定されているのに対して、甲15発明においては、水分の含有量が明らかでない点。 相違点6-15:本件特許発明1は、液状又は半固体状乳化調味料であるのに対して、甲15発明は、液状又は半固体状成分を含む調味料を用いて製造したアーモンドミルクのトマトクリームスープパスタである点。 (イ)判断 a 相違点1-15について 甲15発明で用いられる「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、甲15発明で用いられている同一商品の説明をしている甲第2号証摘記(2a)から、アーモンドが微細化されたものとして含有されていること、摘記(2b)から食物繊維を含むものであることが理解できる。 したがって、甲1発明の湿潤食材である「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子である、といえるので相違点1-15は、実質的な相違点であるとはいえない。 b 相違点2-15について 甲15発明の成分である、「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」をみても、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されていない(摘記(2b)。 また、甲15発明の他の成分である市販のトマトソースに何が含まれているかは、このトマトソースの種類が不明である以上理解できない。 たとえ、甲第16号証摘記(16a)、甲第17号証摘記(17a)、甲第18号証摘記(18a)に、醸造酢や酸味料が含まれていることが示されていても、甲第16?18号証は、特定の商品の成分を示しているにすぎず、何ら成分の記載のない甲15発明におけるトマトソースが、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を含有していることは記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点2-15は、実質的な相違点であり、甲15発明において、油脂、酢酸を含む有機酸及び食品由来の乳化剤を同時に含有させなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 c 相違点3-15について 甲15発明において、用いられる一成分である「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」の食物繊維含有量に関して、甲第2号証の摘記(2b)の100mlあたりの栄養成分表示から食物繊維が0.8g含まれているといえる。 また、甲第9号証摘記(9a)からアーモンド中に含まれる食物繊維に、水溶性食物繊維及び水不溶性食物繊維が存在していることは技術常識であるといえる。 しかしながら、甲15発明は、アーモンドミルクのトマトクリームスープパスタの発明であり、各成分の液状又は半固体状調味料に対する割合や食物繊維含有量が明確でないのであるから、調味料における食物繊維(結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する結晶セルロース複合化物を除く)が(A1)水溶性食物繊維及び(A2)水不溶性食物繊維を含有し、その合計量が0.8質量%以上23質量%以下であることは記載されているに等しい事項であるとはいえない。 したがって、相違点3-15は、実質的な相違点であり、甲15発明の調味料部分において、食物繊維に関する上記相違点3-15の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 d 相違点4-15について 甲15発明で湿潤食材であって、甲第2号証摘記(2a)(2b)からみて、本件特許発明1の食物繊維を含む食品微粒子に相当する「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」は、甲第3号証摘記(3a)(3b)の試験報告書からみて、モード径が混合時の粒径変化を考慮しても、0.3μm以上115μm以下であると理解できる。 一方の湿潤食材であるといえるトマトソースについては、微粒子化に関する情報が具体的に不明であり、モード径が不明であるから、相違点4-15は、実質的な相違点である。 また、「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」とトマトソースを含めた湿潤食材の微粒子化後のモード径を上記4-15の構成としなければならない動機付けはないのであるから当業者が容易に想到する技術的事項であるともいえない。 したがって、相違点5-15及び相違点6-15を検討するまでなく、本件特許発明1は、甲第15号証に記載された発明とはいえないし、甲第15号証記載の発明および甲第2?9号証、甲15?18号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 e 特許異議申立人の主張の検討 特許異議申立人は、特定の市販のトマトソースの商品の説明である甲第16?18号証を示して、甲15発明の市販のトマトソースに酢や酸味料が含まれるとして、甲9号証や、甲15号証摘記(15b)の記載から含まれる成分や食物繊維量が推認できる旨の主張や、数値範囲に差異があっても単なる最適化・好適化である旨主張している。 しかしながら、甲第15証に記載された市販のトマトソースに含まれる成分や食物繊維量が記載されているに等しいものといえるわけではないことは上述のとおりであるし、本件特許発明1において特定された数値範囲において、効果を奏するための技術的意義が本件特許明細書の一般的記載や実施例において明らかにされているのであるから、単なる最適化・好適化であるということはできない。 さらに、異議申立人の主張は、市販のトマトソースと「濃いアーモンドミルク ?まろやかプレーン?」のみからなる発明が記載されている旨主張しているが、摘記(15a)の材料から2成分を抽出して認定することはできない。 よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 本件特許発明1は、甲15号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第9号証、甲15号証?甲18号証に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (2)本件特許発明2?8について 本件特許発明2?4は、本件特許発明1において、さらに、(A1)水溶性食物繊維と(A2)水不溶性食物繊維との含有比(A1/A2)、(A1)水溶性食物繊維と(A2)の種類、食品由来の乳化剤の種類をさらに技術的に限定したものであり、本件特許発明5,6は、本件特許発明4において、豆類の種類、種実の種類をさらに技術的に限定したものであり、本件特許発明7,8は、本件特許発明1において、乳化調味料が、「マヨネーズ、マヨネーズ様調味料又はトマト含有ソースである」ことや『「穀粉の吸水性測定法」変法』による測定開始後2分から90分の期間における最大吸水率が、乳化調味料1g当り0.20質量%以下であって、かつ、同法による最大吸油率が、乳化調味料1g当り1.0質量%以上である」ことをさらに技術的に限定したものである。 したがって、本件特許発明1に関して上記(1)で検討した点が少なくとも当てはまるといえ、本件特許発明2?8は、甲第1号証又は甲第10号証又は甲第11号証又は甲第14号証又は甲第15号証に記載された発明及び甲第1号証?甲18号証に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 4 異議申立理由1,2の判断のまとめ 以上のとおり、本件特許発明1?8は、甲第1号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第14号証、甲第15号証に記載された発明ではなく、甲第1号証?甲第18号証記載の発明から当業者が容易に発明することができるものとはいえないので、異議申立理由1,2には、理由がない。 異議申立理由3(実施可能要件)について 特許異議申立人は、第3 3に記載のように実施可能要件について理由を述べている。 1 異議申立理由3の概要 (1)異議申立理由3-1:請求項8に係る発明で特定されている「最大吸水率」、「最大吸油率」をいかにして制御できるかを認識できないし、課題解決手段を反映しておらず、具現すべき材料等が不明確であり当業者が実施できないし、明細書に記載された測定法では容器底面に穴やメッシュスクリーンを設けており、「最大吸水率」、「最大吸油率」を液状、すなわち低粘度の場合に測定できないので実施できず、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備である。 (2)異議申立理由3-2:請求項1?8に係る発明について、請求項1に特定されている「食品微粒子」が「湿潤食材」由来の微細化物である場合、湿潤食材由来でない「食品微粒子」を除外して湿潤食材由来の「食品微粒子」のモード径のみを測定できないので、本件特許発明を当業者が実施できず、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備である。 2 判断 (1)異議申立理由3-1について 請求項8に係る発明は、「『「穀粉の吸水性測定法」変法』による測定開始後2分から90分の期間における最大吸水率が、乳化調味料1g当り0.20質量%以下であって、かつ、同法による最大吸油率が、乳化調味料1g当り1.0質量%以上である請求項1?7のいずれか1項記載の乳化調味料。」との特定事項をもつ物の発明であり、請求項1?7に係る乳化調味料の物としての発明特定事項を有する乳化調味料であって、本件特許明細書【0081】?【0093】において、その技術的意義、具体的測定方法が示された上で、実施例10において、具体的に、パラメータ条件を満たす実施例と満たさない比較例を示して具体的結果を明らかにしているのであるから、本件特許発明が制御方法の発明であればともかく、上記技術的意義、具体的測定方法、具体的結果参考に、当業者が請求項1?7に係る乳化調味料を製造した上で、請求項8に係る『「穀粉の吸水性測定法」変法』により個々の「最大吸水率」、「最大吸油率」を確認すれば良いのであるから、当業者に過度な試行錯誤を要求し、発明を容易に実施することができないとはいえない。 また、「最大吸水率」、「最大吸油率」を液状、すなわち低粘度の場合に測定できないという点については、当然現実的に「最大吸水率」、「最大吸油率」が測定できるような粘度のサンプルを用いれば良いことは当業者であれば容易に理解できる技術的事項であるから、極端な場合を想定して測定に支障がある可能性があるからといって、発明を容易に実施することができないとはいえない。 (2)異議申立理由3-2について 湿潤食材由来でない「食品微粒子」を除外して、「湿潤食材」由来の食品微粒子のモード径のみを測定できないので、本件特許発明を当業者が実施できないという点について、特許異議申立人は、甲第19号証、甲第20号証を挙げて、味噌や加工澱粉も本件特許発明の数値範囲程度の粒子が存在することを指摘している。 しかしながら、本件特許明細書【0059】【0060】に記載されるように、乳化調味料中の食品微粒子原料段階においての含有量を測定するために分画できることが記載されている。 また、そのような食品微粒子となり得る成分について各成分のモード径を求めることは可能であり、あらかじめ分けて測定しておけば「湿潤食品」由来の食品微粒子のモード径のみを測定できないとはいえず、発明を容易に実施することができないとまではいえない。 3 異議申立理由3の判断のまとめ 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載が、請求項1?8に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、異議申立理由3には、理由がない。 異議申立理由4(明確性要件)について 特許異議申立人は、第3 4に記載のように明確性要件について理由を述べている。 1 異議申立理由4の概要 (1)異議申立理由4-1:請求項8に係る発明について、請求項8で特定されている『「穀粉の吸水性測定法」変法』が「最大吸水率」、「最大吸油率」の測定方法として不明確である。 (2)異議申立理由4-2:請求項1?8に係る発明について、請求項1において特定されている「食品微粒子」という2つの用語が同一のものであるのか異なるものであるのか関係が不明確であり(「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と「(2)食品微粒子のモード径が・・・」とが同一の「食品微粒子」を指すのか否か)、誤認するような記載であり、請求項1?8に係る発明について、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不明確である。 2 判断 (1)異議申立理由4-1について 異議申立理由3(実施可能要件)について、述べたように、請求項8に係る発明は、「『「穀粉の吸水性測定法」変法』による測定開始後2分から90分の期間における最大吸水率が、乳化調味料1g当り0.20質量%以下であって、かつ、同法による最大吸油率が、乳化調味料1g当り1.0質量%以上である請求項1?7のいずれか1項記載の乳化調味料。」との特定事項をもつ物の発明であり、請求項1?7に係る乳化調味料の物としての発明特定事項を有する乳化調味料であって、本件特許明細書【0081】?【0093】において、その技術的意義、具体的測定方法が詳細に示された上で、実施例10において、具体的に、パラメータ条件を満たす実施例と満たさない比較例を示して具体的結果を明らかにしているのであるから、明細書で定義された測定方法である『「穀粉の吸水性測定法」変法』は明確であるといえ[T.T1]、[90422]本件特許発明8が不明確であるとはいえない。 (2)異議申立理由4-2について 請求項1において特定されている「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」と「(2)食品微粒子のモード径が・・・」とが同一の「食品微粒子」を指すのか否か、誤認するような記載である旨主張しているが、同一のクレームに存在する同一の用語を異なる用語であると理解する理由はなく、第三者に不測の不利益を与えるような不明確な記載であるとはいえない。 3 異議申立理由4の判断のまとめ 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載について、請求項1?8に係る発明は、明確であるといえるので、異議申立理由4には、理由がない。 異議申立理由5(サポート要件)について 特許異議申立人は、第3 5に記載のようにサポート要件について理由を述べている。 1 異議申立理由5の概要 請求項1?8に係る発明について、請求項1に特定されている「(2)食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下」との「食品微粒子」が「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」だけでなく、それ以外の調味液中に含まれる全ての「食品微粒子」を意味する場合、湿潤食材以外に由来する食品微粒子(例えば味噌)の含有量が高い場合には、食物繊維は特定の範囲に微細化されていないため、【0093】の食物繊維の含有量が特定範囲にあることが課題解決の要件である旨の記載からみて、本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できるといえず、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備である。 2 判断 (1)本願発明に関する特許法第36条第6項第1号の判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件特許発明の課題 本件特許発明の課題は、【0006】?【0009】の【発明が解決しようとする課題】の記載及び明細書全体の記載からみて、本件特許発明課題は、有機酸、食品由来の乳化剤(例えば卵黄、豆類、種実類、トマトペースト等)及び油脂を含有する調味料において、風味素材の好ましい味や香りを殺すことなく、有機酸、食品由来の乳化剤(例えば卵黄、豆類、種実類、トマトペースト等)、油脂に由来する不快風味を同時に抑制し、風味素材が本来有する好ましい味や香りを十分に感じられる、風味が改善された乳化調味料を提供することにあるといえる。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書には、【0010】の【課題を解決するための手段】として、食物繊維の効果に着目したことが記載され、「【0022】 本発明における、(A1)水溶性食物繊維と(A2)水不溶性食物繊維の合計含有量は、酸味や酸臭による刺激の抑制、卵黄の不快風味の抑制、油脂由来の不快風味の抑制の作用効果の観点から、乾燥状態で、0.8質量%以上であれば良いが、1.6質量%以上が好ましく、2.4質量%以上がより好ましい。一方で、喫食性に優れた物性の観点から、23質量%以下であれば良いが、20質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましい。」との記載、「【0023】 また、本発明における、(A1)水溶性食物繊維と(A2)水不溶性食物繊維との乾燥状態での含有質量比(A1/A2)は、特に制限されないが、酸味や酸臭による刺激の抑制、卵黄の不快風味の抑制、油脂由来の不快風味の抑制の作用効果の観点から、0.1以上であるのが好ましいが、0.17以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。一方で、喫食性に優れた物性の観点から、4以下であるのが好ましいが、2.4以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましい。」との記載、「【0046】 本発明の乳化調味料においては、食品微粒子のモード径は、0.3μm以上115μm以下である。モード径をこの範囲に調整することにより、水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維が微細状となって、調味料中での分散均一性が向上すると共に、それぞれの表面積が高まり、これらによって、水溶性/水不溶性食物繊維の相互ネットワークがより強固になるため、好ましい。100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。また、モード径が0.3μm未満となると、生産性が悪化する他、これ以上小さいサイズの超微細粒子については、ナノマテリアルの安全性に関する疑義の観点から、モード径は0.3μm以上が製造上効率的かつ安心であり、1.0μm以上がさらに効率的かつ安心であり、2.0μm以上が最も効率的かつ安心である。」との記載、「【0068】 本発明の乳化調味料には調味料の乳化安定性と適度な流動性付与の点から「水分」が20質量%以上含有される。乳化調味料の水分の含有量が25質量%以上であることが望ましく、30質量%以上であることがさらに望ましい。本発明の乳化調味料における水分の含有量は、組成物全体の水分含有量(即ち、調味料の調製時に配合した水のみならず、食品やその他の任意成分に含まれる水分も含めた全水分)の組成物全体に対する重量比率を表す。組成物全体の水分含有量は、例えば農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)によって規定された「水分」の測定方法で組成物を分析することで測定することができる」との記載があり、各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載が示されているといえる。 また、「【0074】 本発明の調味料は、特に、微細化された水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維の合計含有量によって、作用効果が奏されるが、そのメカニズムとしては必ずしも明らかではないものの、水溶性食物繊維が水溶性の有機酸や各種水溶性の不快風味成分を水と共に抱き込むこと、水不溶性食物繊維が各種親油性の不快風味成分を油脂と共に抱きこむこと、さらに、これら微細化された水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維が、乳化調味料中で均一に分散し、何らかのネットワーク構造をとることで、分離することなくこれらを液中に留める働きをもって、各種不快風味(味と臭い)を抑制するものと推察される。」との一応の微細化された食物繊維の作用発現のメカニズムの推論も記載されている。 さらに、実施例1?13においてなされた、試験例1?49と比較例1?30との比較によって、食物繊維と作用効果との相関、水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維の合計含有量、比率の重要性、水含有量の重要性、トマト含有ソースの場合における作用効果、粒子径と風味改善効果の検証、乳化調味料の乳化安定性の検証、吸油、吸水特定の検証、乳化調味料添加による被添加食品の食感及び風味の改善効果に及ぼす影響の検証、種実類による効果の検証が行われ、本件特許発明の課題の改善が確認できたことが示されている。 (4)判断 したがって、本件特許明細書の上記各パラメータの上下限の技術的意義の一般的記載、微細化された食物繊維の作用発現のメカニズムの推論も記載、食物繊維と作用効果との相関、水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維の合計含有量、比率の重要性、水含有量の重要性等に関する具体的検証結果の記載を参考にすることで、当業者であれば上記本件特許発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 特許異議申立人は、請求項1に特定されている「(2)食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下」との「食品微粒子」が「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」だけでなく、それ以外の調味液中に含まれる全ての「食品微粒子」を意味する場合であって、湿潤食材以外に由来する食品微粒子(例えば味噌)の含有量が高い場合に課題が解決できない旨の主張をしているが、特許異議理由4-2で述べたとおり、「(2)食品微粒子のモード径が0.3μm以上115μm以下」との「食品微粒子」は「トマトペースト、アーモンドミルク、キャベツペースト及びタマネギペーストから選択される1種以上の湿潤食材の微細化物であって食物繊維を含む食品微粒子」のことであり、食物繊維が特定範囲含まれることを請求項1において、発明特定事項としているのであるから、そのような前提を無視した仮定の場合について主張する特許異議申立人の主張を採用することはできない。 3 異議申立理由5の判断のまとめ 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載について、請求項1?8に係る発明は、明確であるといえるので、異議申立理由5には、理由がない。 第5 むすび したがって、請求項1?8に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-07-28 |
出願番号 | 特願2019-96928(P2019-96928) |
審決分類 |
P
1
652・
537-
Y
(A23L)
P 1 652・ 113- Y (A23L) P 1 652・ 121- Y (A23L) P 1 652・ 536- Y (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西 賢二 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
冨永 保 瀬良 聡機 |
登録日 | 2019-09-27 |
登録番号 | 特許第6589150号(P6589150) |
権利者 | 株式会社Mizkan Holdings |
発明の名称 | 液状又は半固体状乳化調味料及びその製造法、風味改善方法 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |