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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F |
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管理番号 | 1364954 |
異議申立番号 | 異議2020-700160 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-03-06 |
確定日 | 2020-08-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6574608号発明「光硬化性樹脂組成物、該組成物から形成される硬化被膜および被膜付き基材、並びに硬化被膜および被膜付き基材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6574608号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6574608号(請求項の数19。以下、「本件特許」という。)は、2015年(平成27年)5月18日(優先権主張 平成26年12月26日)を出願日とする出願に係る特許であって、令和1年8月23日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年9月11日である。)。 その後、令和2年3月6日に、本件特許の請求項1?19に係る特許に対して、特許異議申立人である谷口俊春(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 「【請求項1】 脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、前記反応性基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物(a1)と水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)とを反応させて得られ、化学構造中に前記脂環式骨格および前記光重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、 光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B)と、 光重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(C)と、 トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)と、 光重合開始剤(E)と、 を含有し、 前記含フッ素化合物(C)は、パーフルオロポリエーテル骨格をさらに有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 前記脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量が1,000以上10,000以下であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 前記脂環式イソシアネート化合物(a1)が水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 前記光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)が光重合性不飽和基を3つ以上有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項5】 前記脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)とを比率20:80?70:30の範囲内で含有することを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項6】 前記含フッ素化合物(C)を、固形分100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項7】 前記トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)を、固形分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項8】 光安定剤(F)をさらに含有することを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項9】 コロイダルシリカ(G)をさらに含有することを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項10】 前記コロイダルシリカ(G)が光重合性不飽和基を有することを特徴とする請求項9に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項11】 ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)をさらに含有することを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項12】 前記ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)が光重合性不飽和基を有することを特徴とする請求項11に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項13】 前記ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)が2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールであることを特徴とする請求項12に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項14】 前記トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)と前記ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)とを比率99:1?1:99の範囲内で含有することを特徴とする請求項11?13のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項15】 前記トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)と前記ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)とを比率90:10?50:50の範囲内で含有することを特徴とする請求項14に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項16】 請求項1?15のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成されることを特徴とする硬化被膜。 【請求項17】 基材と前記基材上に設けられる請求項16に記載の硬化被膜とを備えることを特徴とする被膜付き基材。 【請求項18】 請求項1?15のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を光照射により硬化させる硬化工程を有することを特徴とする硬化被膜の製造方法。 【請求項19】 請求項1?15のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を基材の少なくとも一方の主面に塗布する塗布工程と、 前記塗布工程の後、光照射により前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、 を有することを特徴とする被膜付き基材の製造方法。」 第3 特許異議申立ての申立理由 請求項1?19に係る発明は、下記1?3のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1?19に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記4の甲第1号証?甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出する。 1 取消理由1(新規性)(申立書53頁17行?55頁20行、56頁14行?62頁9行、64頁24行?65頁10行、72頁2行?74頁3行) 請求項1、3?9、11、16?19に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3?9、11、16?19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 取消理由2(進歩性) (1)取消理由2-1:請求項1、3?9、11、16?19に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2、10、12?15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明、甲1?甲3に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書8頁「理由の要点」欄、55頁21行?56頁13行、62頁10行?64頁23行、65頁11行?72頁1行、74頁4行?75頁1行) (2)取消理由2-2:請求項1?19に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲2に記載された発明、甲2及び甲3に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(申立書75頁2行?96頁19行) 3 取消理由3(サポート要件) 特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 本件明細書の実施例には、(a1)成分として「水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)」と、(a2)成分として「ペンタエリスリトールトリアクリレート」を反応させた、重量平均分子量が2000、2800、5500の「ウレタンアクリレートオリゴマー」である脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)しか記載されておらず、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものではない。 4 証拠方法 甲1:特開2014-91786号公報 甲2:特開2010-222524号公報 甲3:特開2013-136706号公報 第4 当審の判断 1 取消理由1及び取消理由2-1(甲1を主引用文献とする新規性及び進歩性)について (1)甲号証に記載された事項 ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 甲1には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び/又はビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを構成単位としてなる(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(A1)を含有する硬化性樹脂(A)と、 一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)、並びに/又はこのポリオキシアルキレン化合物(B1)及びジイソシアネートの反応物(B2)と を含有してなることを特徴とする放射線硬化性組成物。 {H-(OX)ni-}mQ (1) Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OXはオキシアルキレン基、Hは水素原子、niは0?100の整数、mは2?4の整数、iは1?mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OXの総数(Σni×m)は20?100の整数である。 ・・・ 【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載の放射線硬化性組成物をプラスチックベースフィルムにコーティングし、硬化させて得られることを特徴とするプラスチックフィルム。」 (イ)「【背景技術】 【0002】 撥水撥油性、防汚性、耐擦傷性、耐加水分解性、塗液のレベリング性に優れた光学フィルムの提供を目的として、「透明基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を設けた光学フィルムにおいて、前記ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂を主成分とし、かつ前記ハードコート層は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂に対してフッ素化アルキル基を含む(メタ)アクリレートを0.02重量%以上、30重量%以下含んでなることを特徴とする光学フィルム」が知られている(特許文献1)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、従来の放射線硬化性組成物では、硬化被膜の表面へのリコート性が著しく悪く、硬化塗膜表面への印刷や多層コーティングができないという問題がある。 すなわち、本発明の目的は、指紋の拭き取り性とリコート性を両立し、耐久性に優れたフィルムが容易に得られる放射線硬化性組成物を提供することである。」 (ウ)「【0010】 <硬化性樹脂(A)> 硬化性樹脂(A)とは、放射線(好ましくは紫外線及び電子線、さらに好ましくは紫外線)により硬化する物質を意味し、(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(A1)の他に、(メタ)アクリレート(A2)及び/又は光重合開始剤(A3)等を含むことが好ましい。」 (エ)「【0049】 <フィラー(C)> 本発明の放射線硬化性組成物には、フィラー(C)を含有することができる。フィラー(C)を含有すると、耐擦傷性をさらに良好にできる。 【0050】 フィラー(C)としては、無機フィラー(C1)及び有機フィラー(C2)が含まれる。 ・・・ 【0052】 無機フィラー(C1)は、溶剤等に分散された無機フィラーゾル分散液の形態であってもよい。このような無機フィラーゾル分散液は、市場から容易に入手でき、たとえば、オルガノシリカゾルシリーズ及びセルナックスシリーズ(日産化学工業株式会社製、「セルナックス」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。」 (オ)「【0080】 <紫外線吸収剤(H)> 本発明の放射線硬化性組成物には、耐候性を向上させる目的で、紫外線吸収剤(光安定剤を含む。)(H)を含有することができる。紫外線吸収剤(H)としては、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(H1)、ヒンダードアミン紫外線吸収剤(H2)、ベンゾフェノン紫外線吸収剤(H3)、サリチル酸紫外線吸収剤(H4)及びトリアジン紫外線吸収剤(H5)が含まれる。 ・・・ 【0086】 これらの紫外線吸収剤(H)は単独で用いてもよいし、また2種類以上を併用してもよく、2種以上併用する場合、ヒンダードアミン紫外線吸収剤(H2)とトリアジン紫外線吸収剤(H5)との併用が好ましい。これらの紫外線吸収剤(H)のうち、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(H1)、ヒンダードアミン紫外線吸収剤(H2)及びトリアジン紫外線吸収剤(H5)が好ましく、さらに好ましくはヒンダードアミン紫外線吸収剤(H2)及びトリアジン紫外線吸収剤(H5)である。 【0087】 紫外線吸収剤(H)を含有する場合、紫外線吸収剤(H)の含有量(重量%)は、硬化性樹脂(A)の重量に基づいて、0.1?10が好ましく、さらに好ましくは0.3?8、特に好ましくは0.5?5である。」 (カ)「【0096】 本発明の放射線硬化性組成物は、各種プラスチックの保護層に適用でき、特にタッチパネルなど、指紋が付着するプラスチックベースフィルムの保護層として好適である。 保護層は、プラスチックベースフィルムに、本発明の放射線硬化性組成物をコーティングし、必要により加熱乾燥した後、放射線を照射することにより硬化させて得ることができる。 コーティング方法としては、ロールコート法、ディップ法、スプレー法、フローコート法及びスクリーン印刷法等が適用できる。」 (キ)「【0104】 <製造例1> 冷却管、撹拌装置、温度計を取り付けた反応容器に、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)(商品名:デスモジュールW、住化バイエルウレタン株式会社製、「デスモジュール」はバイエル アクチエンゲゼルシヤフト社の登録商標である。)262部(1モル部)、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(hm1){商品名:ライトアクリレートPE-3A、共栄社化学株式会社製、ペンタエリスリトールのテトラ-、トリ-、ジ-アクリレートの混合物(重量比でそれぞれ35:60:5)}826部(トリアクリレート1.7モル部、ジアクリレート0.2モル部、含有するヒドロキシ基2モル部)、ジブチルスズジラウレート(反応触媒)0.05部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(重合禁止剤)0.5部及びメチルエチルケトン273部(加熱残分が80%となる理論値)を入れ30分攪拌後、徐々に環流するまで昇温した。さらにイソシアネート基含有率が0.2%となるまで環流を継続した。その後30℃以下まで冷却し、目開き45μmのステンレス製金網でろ過し、ろ液の加熱残分を測定し、80%となるようメチルエチルケトンで調整した後、アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(a11)のメチルエチルケトン溶液を得た。 なお、アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(a11)は、ウレタン化反応に関与しない(メタ)アクリレート(a21)(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)を27%含有(加熱残分中)する。 また、イソシアネート基含有率はJIS K1603-1:2007「A法」に準拠して測定した。」 (ク)「【0126】 <比較例1{特開2009-104054号公報に記載された実施例に相当する例}> 攪拌羽及びモーター付ステンレス製配合槽に、製造例1で作成したアクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(a11)のメチルエチルケトン溶液50部(加熱残分として40部)、(メタ)アクリレート(a22){ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物}55部、光重合開始剤(a31){1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン}5部、フッ素化アルキル基を有するアクリレート(商品名:メガファックRS-75、DIC株式会社製、加熱残分40%(メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン=93/7(%/%)溶液(「メガファック」は同社の登録商標である。))12.5部(加熱残分として5部)及び溶剤(f1){メチルエチルケトン}140部(加熱残分が40%となる理論値)仕込み、40℃で1時間混合し、その後加熱残分を測定し加熱残分が40%となるよう溶剤(f1)で調整し、保留粒子径2μmのろ紙{東洋濾紙株式会社製、PF020}でろ過することにより比較用の放射線硬化性組成物(H1)を得た。 ・・・ 【0128】 【表2】 ・・・ 【0130】 <評価用試料の調製> 易接着処理ポリエステルフィルム{東洋紡績株式会社製、品番A4100、厚み100μm}を30cm(縦)×15cm(横)角に切り出し、塗工面をイソプロピルアルコールで拭き取り、イソプロピルアルコールを乾燥して、被塗工用のプラスチックベースフィルムを用意した。次いで、JISK5101-4:2004「顔料試験方法-第4部:隠ぺい力-隠ぺい率試験紙法-4.装置及び器具、(d)バーコーター」と同等のバーコーター(No.12:ステンレス綱径0.30mm)を用いて、評価試料(放射線硬化性組成物)を被塗工用のプラスチックベースフィルムに、テスター産業株式会社製自動塗工装置PI-1210を用い、100mm/秒の塗工速度で、プラスチックベースフィルムの縦方向へ塗工した後、塗工面が水平になるようにして塗工フィルムを、循風式乾燥機内で80℃で1分間加熱乾燥し、塗工面に紫外線(高圧水銀灯、300mJ/cm^(2))を塗工面に対して垂直に照射した。 その後、指紋拭き取り性、リコート性及び耐久性の評価用として、10cm×10cm角に切り出し、評価用試料を調製した。 【0131】 <指紋拭き取り性> 評価用試料(各5枚)の塗工面に、無作為に5人の試験者の親指を押しつけて塗工面に指紋を付着させた後(1人/1枚)、指紋の付いた試料を試料台に取り付け、付着した指紋を株式会社井元製作所製ラビングテスターB1052の加重腕に日本薬局タイプIの脱脂綿を取り付け、500g/cm^(2)の荷重をかけながら試料台を移動させてて拭き取り、指紋の跡が見えなくなるまで試料台の往復回数を測定し、評価用試料5枚の算術平均を指紋拭き取り性とした(拭き取り性が30以上の場合は回数の欄に『-』で表示した。)。数値が小さいほど指紋拭き取り性に優れることを意味する。 【0132】 指紋拭き取り性の評価は以下でおこない、評価は◎、○、△及び×で記載した。 ◎:10回以下(指紋拭き取り性に非常に優れる) ○:11?15回(指紋拭き取り性に優れる) △:16?30回(指紋拭き取り性がやや劣る) ×:30回を超える(指紋拭き取り性に劣る) 【0133】 <リコート性> ゼブラ(株)製ハイマッキー(油性マーカー、6mm巾、4色;黒、赤、青及び黄色)を用いて、評価用試料の塗工面に直線を5cmの長さ、約1.5cm間隔で各色1本づつ引き、この直線について、次の基準に従って評価した。 【0134】 ◎: はじきがない(リコート性に非常に優れる) ○: 1?2ヶ所にはじきを確認できた(リコート性に優れる) △: 3ヶ所以上にはじき又は線の端の一部欠けていた(リコート性がやや劣る) ▲: 線の端が全て欠けていた(リコート性に劣る) ×: 線として残っていなかった(リコート性に著しく劣る) 【0135】 <耐久性> 評価用試料(各5枚)を、60℃×95RH%環境下96時間保管し、上述の指紋拭き取り試験を実施した(拭き取り性が60以上の場合は『-』を表示した。)。 指紋拭き取り性試験と比較して、往復回数(算術平均)の増加回数で評価した。 【0136】 耐久性の評価は以下でおこない、評価は◎、○、△、▲及び×で記載した。 ◎:増加回数が2回以下(耐久性が非常に優れる) ○:増加回数が3?5回(耐久性が優れる) △:増加回数が6?10回(耐久性がやや劣る) ▲:増加回数が11?20回(耐久性が劣る) ×:増加回数が20回を超える(耐久性が不良) 【0137】 総合評価として、以下の評価をおこなった。 全ての評価が◎及び○であり、 ◎が2?3個のものを、非常に優れる(◎) ◎が1?0個のものを、優れる(○) 評価に▲及び×があるものは、劣る(×)とした。 【0138】 【表3】 」 (ケ)甲1に記載された発明 甲1には、比較例1として、反応容器に、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)262部(1モル部)、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールのテトラ-、トリ-、ジ-アクリレートの混合物(重量比でそれぞれ35:60:5))826部、反応触媒であるジブチルスズジラウレート0.05部、重合禁止剤であるヒドロキノンモノメチルエーテル0.5部及びメチルエチルケトン273部を入れ、攪拌後、徐々に環流するまで昇温してイソシアネート基含有率が0.2%となるまで環流を継続し、アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(a11)のメチルエチルケトン溶液を得たこと、ステンレス製配合槽に、上記アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(a11)のメチルエチルケトン溶液50部、(メタ)アクリレート(a22){ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物}55部、光重合開始剤(a31){1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン}5部、フッ素化アルキル基を有するアクリレート(「メガファックRS-75」)12.5部及び溶剤であるメチルエチルケトン140部を仕込み、40℃で1時間混合し、ろ過することにより放射線硬化性組成物を得たことが記載されている(上記(キ))。 そうすると、甲1には、次の発明が記載されているといえる。 「4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールのテトラ-、トリ-、ジ-アクリレートの混合物(重量比でそれぞれ35:60:5))とを反応させて得られたアクリロイル基含有ウレタンオリゴマーと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物である(メタ)アクリレートと、光重合開始剤である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、フッ素化アルキル基を有するアクリレート(「メガファックRS-75」)を含有する放射線硬化性組成物」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲2に記載された事項 甲2には以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と反応性フッ素防汚剤とを含有するフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、前記反応性フッ素防汚剤は、濁度が20%未満であり、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素-炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤であることを特徴とするフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。 【請求項2】 前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、ポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β-不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)、とを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である請求項1記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。 【請求項3】 前記ポリイソシアネート(a1)が、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートである請求項2記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。 【請求項4】 前記アクリレート(a2)が、1分子中に1つの水酸基及び3?5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートである請求項2又は3項記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。 ・・・ 【請求項7】 前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、さらに前記(A)及び(B)以外のラジカル重合性単量体類(C)を含有する請求項1?6のいずれか1つに記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。 【請求項8】 請求項1?7のいずれか1つに記載のフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなるハードコート層を、基材フィルムの片面に設け、反対面に粘着剤層を設けた保護粘着フィルム。」 (イ)「【0006】 前記の問題点を解決するため、例えば、反応性フッ素防汚剤を添加することが提案されている。指紋拭き取り性等の防汚性付与には、撥水・撥油性の高いフッ素防汚剤が有効である(例えば、特許文献1参照。)。しかし、樹脂との相溶性不良を生じ、塗材の安定性不良や塗膜の欠陥などの問題が発生する。更に、反応性フッ素防汚剤を前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に添加して用いると、防汚性は向上するものの、塗膜欠陥(例えば、ハジキ・ブツ)による顧客製品の不良率が増加する問題点があった。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明が解決しようとする課題は、塗装欠陥が無く、表面の防汚性に優れ、高い耐擦傷性の保護フィルムを形成することが出来る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。」 (ウ)「【発明の効果】 【0011】 本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化した際、塗膜欠陥がなく、表面の指紋拭き取り性に優れ、かつ硬化収縮が小さく、高い硬度、高い耐擦傷性を有する硬化被膜を得ることができ、かつフィルム用保護層として有用である。また、硬化収縮が小さいことから、大型のフィルムでもカールの発生が抑制でき、液晶ディスプレイ等の大画面ディスプレイの光学フィルム用保護フィルムとしても好適である。」 (エ)「【0015】 また、これらのポリイソシアネート(a1)のうち、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートが好ましく、中でも、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。とりわけ、ノルボルナンジイソシアネートが最も好ましい。」 (オ)「【0017】 また、これらのアクリレート(a2)のうち、1分子中に1つの水酸基及び3?5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。このようなアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、これらは高硬度の硬化被膜が得られるので特に好ましい。」 (カ)「【0020】 前記ウレタンアクリレート(A)の分子量は、500?1,500の範囲が好ましい。分子量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するフィルムのカールも小さくすることができる。」 (キ)「【0033】 本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記ウレタンアクリレート(A)及び重合体(B)に加え、前記ウレタンアクリレート(A)及び重合体(B)以外のラジカル重合性単量体類(C)を加えても良い。ラジカル重合性単量体類(C)としては、例えば、以下のものが挙げられる。 ・・・ 【0036】 また、前記ラジカル重合性単量体類(C)の中でも、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートは、硬度を高める効果があるため好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。」 (ク)「【0043】 前記反応性フッ素防汚剤として、例えば、活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(I-1)と活性水素と炭素-炭素二重結合とを有するモノマー(I-2)とを必須成分とする活性水素含有化合物類(I)と、ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート化合物(II)とを反応させて得られる炭素-炭素二重結合含有組成物が挙げられる。」 (ケ)「【0055】 前記反応性フッ素防汚剤の添加量は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100質量部に対して、0.05質量部以上添加することが防汚性が顕著となることから好ましく、4質量部以下にすることが塗膜欠陥(例えば、ハジキ・ブツ)を生じさせにくい点から好ましい。更に0.1?2質量部であることが、特に好ましい。」 (コ)「【0087】 <ウレタンアクリレート(A-1)の合成> 攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という。)222質量部、p-メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」という。)/ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」という。)混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm-1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応を行い、ウレタンアクリレート(A-1)/PE4A混合物(質量比80/20の混合物、不揮発分80質量%の酢酸ブチル溶液)を得た。なお、ウレタンアクリレート(A-1)の分子量は818であった。 ・・・ 【0090】 上記で得られたウレタンアクリレート(A-1)?(A-2)及び重合体(B)を用いて、下記のように活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(主剤)を調製した。 【0091】 (主剤の調製1) 酢酸エチル35.2質量部、ウレタンアクリレート(A-1)/PE4A混合物(質量比87/13の混合物)の酢酸ブチル溶液(不揮発分80%)50.0質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」という。)40.0質量部、光開始剤1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、「HCPK」という。)3.2質量部、光開始剤ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン=オキシド(以下、「TPO」という。)0.8質量部を均一に混合し、主剤1(不揮発分65%)を調製した。 ・・・ 【0095】 (ハードコート材の調製1) 主剤の調製1において調製した主剤1(不揮発分65質量%)100質量部、濁度13%の反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」という。)で希釈して、ハードコート材(1)を得た。 ・・・ 【0103】 (ハードコートフィルムの調製) 上記で得られたハードコート材(1)?(8)をポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)製フィルム基材(東洋紡績株式会社製「コスモシャインA4300 #100」、厚さ:100μm)の片面に、ワイヤーバー(#4)を用いて塗布し、60℃で1分間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(日本電池株式会社製「GS30型UV照射装置」、ランプ:120W/cmメタルハライドランプ2灯、ランプ高さ:20cm、照射光量:0.5J/cm2)を用いて紫外線を照射し、膜厚10μmの硬化被膜を有するハードコートフィルム(1)?(8)を得た。 ・・・ 【0105】 (実施例1) 上記で得られたハードコートフィルム(1)のハードコート層を有さない表面を、コロナ処理装置に掛け、表面張力55ダイン/cm(単位確認必要)になるよう表面処理し、粘着剤層Aを4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ93μmの保護粘着フィルム(1)を得た。 ・・・ 【0108】 (反応性フッ素防汚剤の濁度の測定) 1mmセルに反応性フッ素防汚剤を満たし、濁度を測定した。なお、濁度測定は、上記のJIS K7136に準拠し、濁度計NDH2000(日本電色工業株式会社製)にて測定した。 【0109】 (ハードコートフィルムの塗膜欠陥評価) 上記で得られたハードコートフィルム5cm×5cmにある、塗膜欠陥数を目視にて数えた後、下記の基準で評価した。 ○:塗膜欠陥0個 △:塗膜欠陥1?10個 ×:塗膜欠陥10個以上 【0110】 (ハードコートフィルムの微細塗膜欠陥評価) 上記で得られたハードコートフィルム10cm×10cmにある、微細塗膜欠陥数を目視にて数えた後、下記の基準で評価した。前記微細塗膜欠陥とは、塗膜中にある、完全にははじいていないが、かすかなはじきが認められる塗膜欠陥のことである。 ○:塗膜欠陥0個 ×:塗膜欠陥10個以上 【0111】 (指紋拭き取り性評価) 上記で得られたハードコートフィルム表面に、人差し指の指紋を付けた。その指紋を、ベンコットS-2(旭化成せんい株式会社製)にて指紋を拭き取れる回数を測定した。評価基準は以下の通り。 ○:拭き取り回数1?10回 △:拭き取り回数11?20回 ×:拭き取り回数30回以上 【0112】 (表面鉛筆硬度の測定) 上記で得られたハードコートフィルム、及び、上記の実施例及び比較例で得られた保護粘着フィルムをガラス板に貼り付け、その表面鉛筆硬度を、JISK 5600-5-4(1999年版)の規定に基づき、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(手動式)を用いて測定した。ハードコートフィルム単体の試験は、フィルムの4隅をセロハンテープでガラス板に固定し、測定した。 【0113】 (重量平均分子量の測定) なお、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。 分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。 【0114】 上記の評価結果を表1に示す。 【0115】 」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 下記(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を20?80質量部、該(B)成分を10?70質量部、該(C)成分を1?35質量部、(D)成分としてラジカル重合開始剤を0.1?10質量部、(E)成分として紫外線吸収剤を1?12質量部および(F)成分として有機溶剤を10?1000質量部含有することを特徴とする硬化型コーティング剤組成物。 (A)成分: 下記一般式(1)で表されるイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物 【化1】 (一般式(1)において、R^(1)、R^(2)およびR^(3)はそれぞれ独立して炭素数2?10の2価の有機基を表し、R^(4)、R^(5)およびR^(6)はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。) (B)成分: 下記一般式(2)で表されるウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物 【化2】 (一般式(2)において、R^(7)、R^(8)およびR^(9)はそれぞれ独立して炭素数2?10の2価の有機基を表し、R^(10)、R^(11)およびR^(12)はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、n^(1)、n^(2)およびn^(3)は、それぞれ独立して1?3の数を表し、n^(1)+n^(2)+n^(3)=3?9である。) (C)成分: 下記(C-1)成分および(C-2)成分を含む。 (C-1)成分: 下記一般式(3)で表されるアルコキシシラン化合物(c1)とコロイダルシリカ(c2)とを、(c1)と(c2)の質量比を9:1?1:9で反応させた反応生成物の不揮発性成分であって、(c1)で(c2)を化学修飾したものを含む。 【化3】 (一般式(3)において、R^(13)は水素原子または1価の有機基を表し、R^(14)は炭素数1?6の2価の炭化水素を表し、zは0.1以上3以下の正の数を表す。また、zが3未満の場合に(c1)は縮合物を含み、該縮合物の1分子中のR^(13)は2種以上の異なる基を含んでいてもよい。) (C-2)成分: ラジカル重合性不飽和基およびアルコキシシリル基を有する化合物(c3)とコロイダルシリカ(c4)との合計を100質量%としたときに(c3)を1.0?45.0質量%の割合で(c4)と反応させた反応生成物の不揮発性成分。 ・・・ 【請求項3】 前記(E)成分は、(メタ)アクリロイル基を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む請求項1または2記載の硬化型コーティング剤組成物。 ・・・ 【請求項7】 さらに(G)成分として、前記(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対してヒンダードアミン系光安定剤を0.05?1.5質量部含有する請求項1?6のいずれかに記載の硬化型コーティング剤組成物。 【請求項8】 さらに(H)成分として、前記(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対してシリコーン系および/またはフッ素系表面改質剤を0.01?1.0質量部含有する請求項1?7のいずれかに記載の硬化型コーティング剤組成物。 【請求項9】 前記(D)成分が光ラジカル重合開始剤である請求項1?8のいずれかに記載の硬化型コーティング剤組成物。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、硬化後の耐摩耗性および耐候性に優れ、屋外で使用される基材、特に樹脂製基材の保護膜として好ましく適用できる硬化型コーティング剤組成物に関する。」 (ウ)「【0007】 本発明は、これらの問題点に鑑み、屋外で使用される基材、特に樹脂製基材のコーティング剤として優れた耐摩耗性および耐候性を発揮する硬化型コーティング剤組成物を提供することを目的とする。」 (エ)「【0066】 <(C-2)成分> (C-2)成分は、ラジカル重合性不飽和基およびアルコキシシリル基を有する化合物(c3)とコロイダルシリカ(c4)との合計を100質量%としたときに(c3)を1.0?45.0質量%の割合で(c4)と反応させた反応生成物の不揮発性成分である。 【0067】 (c3)におけるラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびアリル基等が挙げられる。 (c3)の具体例としては、下記一般式(6)で表される化合物および(7)で表される化合物のうちの一種以上が好ましい。」 (オ)「【0086】 <(E)成分:紫外線吸収剤> 本発明の(E)成分は、紫外線吸収剤であり、種々の化合物または物質を使用することができる。 紫外線吸収剤の具体例としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子等の紫外線を吸収する無機微粒子等が挙げられる。 以上列挙した紫外線吸収剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 【0087】 これらのうち、(メタ)アクリロイル基を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、硬化膜の耐候性と耐摩耗性を両立させる点で、特に好ましい。 【0088】 本発明の組成物における(E)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、1?12質量部であり、より好ましくは3?12質量部さらには6?9質量部である。 (E)成分の含有割合を1?12質量部とすることで、硬化膜の耐摩耗性および耐候性を両立させることができる。(E)成分が1質量部未満では、十分な耐候性を示す硬化膜が得られない。一方、(E)成分が多すぎると、硬化膜の耐摩耗性が低下するだけでなく、耐候性も低下する傾向にあることから、(E)成分を12質量部以下とする。特に、(E)成分の含有割合を3?12質量部とすることで、優れた耐摩耗性と耐候性とを両立する硬化膜が得られる。」 (カ)「【0093】 <(G)成分:ヒンダードアミン系光安定剤> 本発明の組成物は、前記(A)?(F)成分を必須とするものであるが、耐候性を向上させる目的で、ヒンダードアミン系光安定剤(G)(以下、「(G)成分」という)を配合してもよい。・・・ 【0094】 <(H)成分:表面改質剤> 本発明の組成物には、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化膜の滑り性を高めて耐擦傷性を高める目的等のため、各種表面改質剤を添加してもよい。表面改質剤としては、表面調整剤、レベリング剤、スベリ性付与剤、防汚性付与剤等の名称で市販されている、表面物性を改質する各種添加剤を使用することができる。それらのうち、シリコーン系表面改質剤およびフッ素系表面改質剤が好適である。」 (キ)「【0099】 本発明の組成物には、1分子中に1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する、(A)成分および(B)成分以外の化合物を配合してもよい。 1分子中に1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物(以下、「不飽和化合物」という)は、硬化膜と樹脂製基材との密着性を高めるために配合することができる。 不飽和化合物におけるラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。 不飽和化合物の配合割合としては、耐摩耗性および耐候性が悪化するのを防ぐ観点から、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。」 (ク)「【0102】 多官能不飽和化合物としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、具体例としては、以下の化合物が挙げられる。 ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ダイマー酸ジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリおよびテトラアクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のトリおよびテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサおよびペンタアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン樹脂等が挙げられる。」 (ケ)「【0105】 ウレタン(メタ)アクリレートとしては、有機ポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物や、有機ポリイソシアネートとポリオールとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物が挙げられる。 ・・・ 有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。 ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)」は、本件発明1の「脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、前記反応性基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物(a1)」に相当し、甲1発明の「ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールのテトラ-、トリ-、ジ-アクリレートの混合物(重量比でそれぞれ35:60:5))」は、本件発明1の「(メタ)アクリレートモノマー(a2)」に由来する「光重合性不飽和基」が(メタ)アクリロイル基であってもよいことから(後掲3(2)ウの【0032】)、本件発明1の「水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)」に相当する。そして、甲1発明の「アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー」は、甲1発明の上記「4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート」と「ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート」の反応物であるから(上記(1)ア(キ))、本件発明1の「化学構造中に前記脂環式骨格および前記光重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)」に相当する。 甲1発明の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物である(メタ)アクリレート」は、本件発明1の「(メタ)アクリレートモノマー(B)」の「光重合性不飽和基」が(メタ)アクリロイル基であってもよいから(後掲3(2)エの【0050】)、本件発明1の「光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B)」に相当し、甲1発明の「光重合開始剤である1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」は、本件発明1の「光重合開始剤(E)」に相当する。 甲1発明の「フッ素化アルキル基を有するアクリレート(「メガファックRS-75」)」は、本件発明1における「含フッ素化合物(C)」の具体例として本件明細書に記載された(メタ)アクリル基を有するパーフルオロポリエーテルオリゴマーであり、「含フッ素化合物(C)」の「光重合性不飽和基」は(メタ)アクリロイル基であってもよいから(後掲3(2)カの【0107】、3(2)エの【0052】及び【0053】)、本件発明1の「光重合性不飽和基を有」し「パーフルオロポリエーテル骨格をさらに有する」「含フッ素化合物(C)」に相当する。 そして、甲1発明の「放射線硬化性組成物」は、上記「放射線」が紫外線であってもよいことから(上記1(1)ア(ウ))、本件発明1の「光硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、「脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、前記反応性基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物(a1)と水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)とを反応させて得られ、化学構造中に前記脂環式骨格および前記光重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、 光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B)と、 光重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(C)と、 光重合開始剤(E)と、 を含有し、 前記含フッ素化合物(C)は、パーフルオロポリエーテル骨格をさらに有する光硬化性樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:本件発明1は、「トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)」を含有するのに対して、甲1発明は、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を含有しない点。 イ 検討 相違点1について検討する。 甲1発明は、甲1の特許請求の範囲に記載された発明の効果を確認するための比較例にすぎず、甲1には、甲1発明が他の添加成分を含有することは記載も示唆もされていない。甲1には、耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤(光安定剤を含む)を含有することができ、その具体例としてトリアジン紫外線吸収剤があることが記載されているが、当該紫外線吸収剤は甲1の請求項に係る発明のための添加成分であって、上記請求項に係る発明の比較例として記載された甲1発明のための添加成分ではない。 また、甲1発明がトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を含有することが、本願出願時の技術常識であるともいえない。 そうすると、甲1発明はトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を含有するものではなく、相違点1は実質的な相違点であるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 次に本件発明1の進歩性について検討する。 上述のように、甲1には、耐候性を向上させる目的でトリアジン紫外線吸収剤を用いることが記載されているが、これは甲1の請求項に係る発明のための添加成分であって、上記請求項に係る発明の比較例として記載された甲1発明のための添加成分ではない。 そうすると、甲1発明において、甲1に記載された事項に基づいて、トリアジン紫外線吸収剤を含有することが動機付けられるとはいえない。 一方、甲3には、所定のイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A成分)、所定のウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物(B成分)、所定のアルコキシシラン化合物とコロイダルシリカとを所定の質量比で反応させた反応生成物の不揮発性成分(C-1成分)、ラジカル重合性不飽和基およびアルコシキシリル基を有する化合物とコロイダルシリカを所定の質量比で反応させた反応生成物の不揮発性成分(C-2成分)、ラジカル重合開始剤(D成分)、紫外線吸収剤(E成分)、有機溶剤(F成分)を所定の質量比で含有する硬化型コーティング剤組成物が記載されている。 また、甲3には、従来の光硬化型組成物として、脂環式骨格を有するウレタン(ポリ)メタクリレートを含むものや、モノまたはポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートと少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレートを併用したものは、耐摩耗性および耐候性を高いレベルで両立することはできないため、従来の光硬化型組成物に代わる、耐摩耗性および耐候性に優れたコーティング剤の提供を課題とすること、当該耐候性を硬化膜の密着性と割れの有無で評価すること、及び、上記紫外線吸収剤(E成分)の含有割合を所定量とすることにより硬化膜の耐摩耗性と耐候性を両立することができ、上記紫外線吸収剤はトリアジン系であってもよいことも記載されている。 そして、甲3に記載されたイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、甲1発明の、水添MDIとペンタエリスリトールのテトラ、トリ、ジアクリレートの混合物を反応させて得た脂環式骨格を有するアクリロイル基含有ウレタンオリゴマーとは、骨格構造が全く異なるウレタン(メタ)アクリレートである。 また、上述のように、甲1発明は、甲1の請求項に係る発明の効果を確認するための比較例にすぎず、甲1には、甲1発明が解決しようとする課題が明示的に記載されておらず、甲1に記載された事項や本願出願時の技術常識に基づいて、甲1発明の課題を把握することはできず、甲1発明と甲3に記載された組成物の課題が共通するともいえない。 そうすると、甲1発明において、甲3に記載された事項に基づいて、紫外線吸収剤を用いることが動機づけられるとはいえず、甲3に例示された種々の紫外線吸収剤の中からトリアジン系のものを用いることも動機づけられるとはいえない。 仮に、甲1の表3の評価結果から、甲1発明はリコート性に劣ることが理解でき、甲1発明の課題が、硬化被膜の表面へのリコート性を向上することであると認識できる場合であっても、以下に述べるように、本件発明1は、甲1又は甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことではない。 甲1に記載されたリコート性とは、硬化塗装表面への印刷や多層コーティングができることであり(上記1(1)ア(イ)の【0004】)、紫外線吸収剤を添加する目的である耐候性とは異なるものであるし、甲3に記載された組成物の課題である耐候性及び耐摩耗性とも異なるものである。また、甲1発明が上記リコート性に劣るため、指紋拭き取り性に優れると解しても、甲1発明において、甲1又は甲3に記載された事項に基づいて、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を含有することが動機づけられるとはいえない。 また、甲2には、上記(1)イ(ア)?(コ)のとおりの記載があるが、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤は記載されていない。 したがって、甲1発明において、甲1?甲3に記載された事項に基づいて、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を含有することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 本件発明1の効果 本件発明1は、硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性に優れる硬化被膜を形成できる光硬化性樹脂組成物が得られるという格別顕著な効果を奏するものであり(後掲3(2)イの【0028】)、その効果は、実施例及び比較例から理解できる。実施例1?19は本件発明1の具体例であり、【0134】?【0147】に記載された評価方法による黄変度(耐候性)、撥油性及び撥水性(防汚性)、紫外線に曝露後の撥油性及び撥水性(防汚持続性)、耐擦傷性及び硬度(ハードコート性)、試験片の4隅の浮き上がり値(硬化収縮)において、本件発明1のいずれかの構成成分を含まない比較例1?11よりも優れるものである。また、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)に着目すると、これを含まない比較例9?11は、組成が酷似する実施例2、9、10?12、15、17及び19よりも耐候性に劣り、特に、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤の代わりにベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H2)を含む比較例10であっても、実施例2よりも耐候性に劣ることが示されている。 エ 小括 本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明、及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2?19について 本件発明2?19は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(2)で述べたのと同じ理由により、本件発明3?9、11、16?19は、甲1に記載された発明でないし、本件発明2?19は、甲1に記載された発明、並びに、甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件発明1、3?9、11、16?19は、甲1に記載された発明でないし、本件発明1?19は、甲1に記載された発明、及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由1(新規性)及び取消理由2-1(甲1を主引用文献とする進歩性)によっては、本件特許の請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2-2(甲2を主引用文献とする進歩性)について (1)本件発明1について ア 甲2に記載された発明 甲2には、請求項1?3を順に引用する請求項7に係る発明が記載されており、これを独立形式で表現すると次のようになる。 「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と反応性フッ素防汚剤とを含有するフィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、 前記反応性フッ素防汚剤は、濁度が20%未満であり、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素-炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤であり、 前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであるポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(A)と、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(b1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β-不飽和化合物(b2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(B)とを含有し、 前記(A)及び(B)以外のラジカル重合性単量体類(C)を含有する、 フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」(以下、「甲2発明」という。) イ 対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「濁度が20%未満であり、且つ、1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および、活性水素と炭素-炭素二重結合とを有するモノマーを含有する反応性フッ素防汚剤」は、本件発明1の「光重合性不飽和基を有」し「パーフルオロポリエーテル骨格をさらに有する」「含フッ素化合物(C)」に相当する。甲2発明の「フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」は本件発明1の「光硬化性樹脂組成物」に相当する。 また、甲2発明の「1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)」は、本件発明1の「(メタ)アクリレートモノマー(a2)」の「光重合性不飽和基」が(メタ)アクリロイル基を含むことが明らかであるから(本件明細書の【0046】)、本件発明1の「水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)」に相当する。 甲2発明の「脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであるポリイソシアネート(a1)」と本件発明1の「イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、前記反応基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物(a1)」とは、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合されたイソシアネート化合物である限りにおいて共通する。 また、甲2発明の「ウレタンアクリレート(A)」は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであるポリイソシアネート(a1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(a2)との付加反応物であるから、本件発明1の「化学構造中に前記脂環式骨格および前記光重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)」とは、化学構造中に光重合性不飽和基を有するウレタンアクリレートである限りにおいて共通する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合されるイソシアネート化合物と水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)とを反応させて得られ、化学構造中に前記光重合性不飽和基を有するウレタンアクリレートと、 光重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(C)と、 を含有し、 前記含フッ素化合物(C)は、パーフルオロポリエーテル骨格をさらに有する光硬化性樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点2a:イソシアネート化合物が、本件発明1では、「脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、前記反応性基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物(a1)」であるのに対して、甲2発明では、「脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであるポリイソシアネート」であり、ウレタンアクリレートが、本件発明1では、上記「脂環式イソシアネート化合物(a1)」と上記「(メタ)アクリレートモノマー(a2)」とを反応させて得られた「脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート」であるのに対して、甲2発明では、上記「脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートであるポリイソシアネート」と上記「アクリレート(a2)」とを反応させて得られた「ウレタンアクリレート」である点。 相違点2b:本件発明1は「光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(B)」を含むのに対して、甲2発明は「ラジカル重合性単量体類(C)」を含む点。 相違点2c:本件発明1は、「トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)」を含むのに対して、甲2発明は、紫外線吸収剤を含むものではない点。 相違点2d:本件発明1は、「光重合開始剤(E)」を含むのに対して、甲2発明は、光重合開始剤を含むか否か不明である点。 ウ 検討 上記相違点について検討する。 事案に鑑みて、相違点2cから検討する。 甲2発明は、塗装欠陥が無く、表面の防汚性に優れ、高い耐擦傷性の保護フィルムを形成することが出来る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の提供を課題とするものである。そして、甲2には、上記1(1)イのとおりの記載があるが、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を含有することは、一切記載されていない。 そうすると、甲2発明において、甲2に記載された事項に基づいて、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤を用いることは動機付けられない。 一方、甲3には、上記1(2)イで述べたとおり、所定のイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A成分)や紫外線吸収剤(E成分)などを所定の質量比で含有する硬化型コーティング剤組成物、耐摩耗性および耐候性に優れたコーティング剤の提供を課題とすること、及び、上記紫外線吸収剤(E成分)の含有割合を所定量とすることにより硬化膜の耐摩耗性と耐候性を両立することができ、上記紫外線吸収剤はトリアジン系であってもよいことが記載されている。 一方、甲2発明は、上記アで述べたとおり、フィルム保護層用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に係る発明であり、従来技術においてフッ素防汚剤を含む組成物は、樹脂との相溶性不良による塗材の安定性不良や塗膜の欠陥や、ハジキ・ブツの塗膜欠陥が生じる問題があったため、甲2発明の課題は、塗装欠陥が無く、表面の防汚性に優れ、高い耐擦傷性の保護フィルムを形成できる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の提供を課題とするものであるが、耐候性の向上を課題とするものはない。 また、甲2発明は、甲3に記載のイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有するものでなく、甲3に記載の硬化型コーティング組成物とは組成物の主たる構成成分が共通するものではない。 そうすると、甲2発明において、甲3に記載された事項に基づいて、紫外線吸収剤を含有することが動機づけられるとはいえないし、甲3に例示された種々の紫外線吸収剤の中からトリアジン系のものを含有することが動機づけられるともいえない。 そして、本件発明1は、上記1(2)ウで述べたとおり、格別顕著な効果を奏し、その効果は実施例及び比較例から具体的に確認できるものである。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)本件発明2?19について 本件発明2?19は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(1)で述べたのと同じ理由により、本件発明2?19は、甲2に記載された発明、並びに、甲2及び甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1?19は、甲1に記載された発明、及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2-2(甲2を主引用文献とする進歩性)によっては、本件特許の請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由3(サポート要件)について (1)特許法第36条第6項第1号について 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号、「偏光フィルムの製造法」事件)。そこで、この点について、以下に検討する。 (2)発明の詳細な説明に記載された事項 ア 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜では、ハードコート性、耐候性および防汚性といった各種特性を高い水準で満たすことが困難であった。各種特性を向上させるために硬化被膜を厚くすることも考えられるが、硬化被膜を厚く形成すると、光硬化性樹脂組成物が硬化するときに収縮する硬化収縮量が大きくなるため、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮に伴いフィルム等の薄い基材がカールしてしまうことがある。 【0007】 また、特許文献1の硬化被膜は、紫外線に曝されることにより防汚性が低下しやすいため、初期状態では高い防汚性を示すものの、長期間、紫外線に曝された後の状態では十分な防汚性を示さないことが本発明者の検討により明らかとなった。つまり、高い防汚性を長期にわたって維持することが困難であり、防汚持続性が不十分となっている。 【0008】 本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性に優れる硬化被膜を形成できる光硬化性樹脂組成物、硬化被膜および被膜付き基材、並びに硬化被膜および被膜付き基材の製造方法を提供することを目的とする。」 イ 「【発明の効果】 【0028】 本発明によれば、硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性に優れる硬化被膜を形成できる光硬化性樹脂組成物、硬化被膜および被膜付き基材が得られる。」 ウ 「【0032】 〔脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)〕 脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、少なくとも、脂環式イソシアネート化合物(a1)と(メタ)アクリレートモノマー(a2)とを反応させて得られるオリゴマー又は樹脂であり、(a1)成分に由来する脂環式骨格と(a2)成分に由来する光重合性不飽和基((メタ)アクリロイル基)とを有している。光重合性不飽和基を有する(A)成分は、光硬化性樹脂組成物に紫外線が照射されたときに(B)成分や(C)成分と重合する。(A)成分は、耐候性に優れる化学構造を有しており、(B)成分や(C)成分と重合することで、紫外線や結露による硬化被膜の劣化や変色を抑制することができる。また、高いハードコート性を維持しながら、硬化収縮を抑制することができる。さらに、硬化被膜の劣化による(C)成分の劣化を抑制できるので、硬化被膜の防汚性を長時間にわたって高く維持することができる。 【0033】 脂環式イソシアネート化合物(a1)は、脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、反応性基が同一の化学構造となる化合物である。脂環式骨格としては、例えば、シクロ環、ビシクロ環、デカリン環などが挙げられる。イソシアネート基を有する反応性基とは、イソシアネート基(-NCO)そのもの、もしくは、例えば-CH2-NCOのようにイソシアネート基を含むイソシアネート含有基を示す。反応性基は、その化学構造の違いにより(a2)成分との反応性が相違する。つまり、本実施形態では、2つ以上の反応性基が同一の化学構造を有しており、各反応性基の反応性が同一の(a1)成分を用いている。このような(a1)成分を反応させて得られる(A)成分を用いることにより、硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性を高い水準で満たす硬化被膜を形成することができる。 【0034】 (a1)成分としては、例えば、下記一般式(1-1)に示す水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、下記一般式(1-2)?(1-4)に示す水素添加キシレンジイソシアネート(水添XDI)、下記一般式(1-5)および(1-6)に示す水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、下記一般式(1-7)に示すノルボルナンジイソシアネート、下記一般式(1-8)?(1?10)に示すシクロへキシレンジイソシアネート、下記一般式(1-11)に示す1,1-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、下記一般式(1-12)に示す2-イソシアネート-4-[(4-イソシアネートシクロヘキシル)メチル]-1-シクロヘキサン、下記一般式(1-13)?(1-16)に示すデカリンジイソシアネート等を用いることができる。 【0035】 ・・・ 【0043】 (a1)成分は、脂環式骨格としてシクロ環を有することが好ましく、2つ以上のシクロ環を有することがさらに好ましい。また、(a1)成分においては、複数の反応性基のそれぞれが脂環式骨格に対称となるように結合していることが好ましく、また反応性基としてのイソシアネート基が脂環式骨格に直接結合していることがより好ましく、また脂環式骨格には反応性基以外の置換基が結合していないことがさらに好ましい。すなわち、(a1)成分としては、一般式(1-1)に示す水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)が好ましい。水添MDIによれば、硬化収縮を抑制しつつ、硬化被膜の耐候性及びハードコート性をより向上させることができる。 【0044】 なお、脂環式イソシアネート化合物として、脂環式骨格に結合する2つ以上の反応性基が同一とならない化合物は、例えば、下記一般式(2)に示すイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。イソホロンジイソシアネートにおいては、脂環式骨格に、イソシアネート基と、それとは化学構造の異なるイソシアネート含有基(-CH2-NCO)が結合している。つまり、イソホロンジイソシアネートは、反応性の異なる反応性基を有している。このような化合物を反応させて得られる脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートでは、詳細を後述するように、硬化被膜のハードコート性が劣る。 【0045】 ・・・ 【0046】 (メタ)アクリレートモノマー(a2)は、水酸基および光重合性不飽和基を有している。(a2)成分は、水酸基により(a1)成分と反応して脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)を形成し、その化学構造中に光重合性不飽和基を導入する。(a2)成分としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。硬化被膜を高硬度としてハードコート性を向上させる観点から、光重合性不飽和基が3つ以上であることが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。 【0047】 脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、(a1)成分および(a2)成分にポリオール(a3)をさらに反応させてもよい。(a3)成分としては、特に限定されないが、硬化被膜の耐候性の観点から、化学構造中に芳香環を含まない化合物であることが好ましく、例えば1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4'-(1-メチルエチリデン)ビスシクロヘキサノール等を用いることができる。 【0048】 脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、硬化被膜の硬度を向上させて高いハードコート性を得る観点からは、光重合性不飽和基の数が多いほど好ましく、3つ以上であることが好ましい。 【0049】 脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で1,000以上10,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満となると、光硬化性樹脂組成物が硬化するときに収縮する硬化収縮量が大きくなるおそれがある。その結果、例えば薄い基材上に硬化被膜を形成するときに基材がカールしてしまうおそれがある。一方、重量平均分子量が10,000を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して塗工性が悪くなったり、架橋密度が低下するために硬化被膜の硬度が低下してハードコート性が低くなったりするおそれがある。」 エ 「【0050】 〔(メタ)アクリレートモノマー(B)〕 (メタ)アクリレートモノマー(B)は、光重合性不飽和基((メタ)アクリロイル基)を有しており、(A)成分や(C)成分と重合する。(B)成分は、(A)成分と比較して分子量が小さく、硬化被膜を高硬度としてハードコート性を向上させる。(B)成分としては、光重合性不飽和基を3つ以上有する3官能以上のモノマーであることが好ましい。3官能のモノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。4官能のモノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、6官能のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化被膜をより高硬度としてハードコート性をより向上させる観点からは、4官能以上のモノマーが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(B)成分は上述した(a2)成分と同一の化合物であってもよい。」 オ 「【0052】 〔含フッ素化合物(C)〕 含フッ素化合物(C)は、化学構造中にフッ素原子を有し、撥水性および撥油性に優れているので、硬化被膜の防汚性を向上させる。(C)成分は、光重合性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーであり、例えば、パーフルオロポリエーテル骨格を有し、その一端または両端に光重合性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物である。パーフルオロポリエーテル骨格は、例えば、-(O-CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2)-、又は-(O-CF2C(CF3)F)-等の繰り返し構造を示す。この(C)成分は、光硬化性樹脂組成物が硬化する際に(A)成分や(B)成分と重合することで硬化被膜中に組み込まれる。そのため、紫外線や結露によって硬化被膜から(C)成分がブリードしにくく、また、耐候性に優れる(A)成分との併用によって(C)成分の劣化を抑制できるため、硬化被膜では防汚性の低下が抑制されることになる。つまり、(C)成分が組み込まれた硬化被膜は長期間にわたって高い防汚性を維持することができるので、防汚持続性に優れている。また、(C)成分は耐候性に優れ、硬化被膜に組み込まれるため、硬化被膜は紫外線等により劣化しにくく、基材との密着性に優れている。 【0053】 (C)成分における光重合性不飽和基は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(A)成分や(B)成分との反応性の観点からは(メタ)アクリロイル基が好ましい。」 カ 「【0099】 (合成例1) 脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、反応性基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物(a1)として、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI、イソシアネート基含有量31.8%)を準備した。また、水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価110mg/KOH)を準備した。そして、攪拌装置、温度計、空気導入管を備えた200mL反応容器に、(a1)である水添MDIを32.8g、(a2)であるペンタエリスリトールトリアクリレートを102g、ジエチレングリコールを3.3g、p-メトキシフェノールを0.05g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.17g、ジブチルスズジラウレートを0.17g、酢酸ブチルを15.4gを添加し、80℃で5時間反応させることにより、ウレタンアクリレートオリゴマー(A1)を得た。この(A1)成分は、官能基数が5、重量平均分子量(MW)が2000、固形分が90%であった。 【0100】 (合成例2) 合成例2では、合成例1と同様の化合物を用いて、重量平均分子量が2800であるウレタンアクリレートオリゴマー(A2)を得た。 【0101】 (合成例3) 合成例3では、合成例1と同様の化合物を用いて、重量平均分子量が5500であるウレタンアクリレートオリゴマー(A3)を得た。 【0102】 (比較合成例1) 比較合成例1では、比較用の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A´)を合成した。具体的には、(a1)成分である水添MDIを、上記式(2)に示すイソホロンジイソシアネート(IPDI)に変更した以外は、合成例1と同様に反応させ、重量平均分子量が2800であるウレタンアクリレートオリゴマー(A1´)を得た。 【0103】 <原料> 実施例および比較例で用いた原料は次のとおりである。 【0104】 脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、以下の(A1)?(A3)を用いた。 (A1):合成例1で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数5、重量平均分子量2000) (A2):合成例2で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数5、重量平均分子量2800) (A3):合成例3で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数5、重量平均分子量5500) 【0105】 脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)の比較用オリゴマー(A´)として、以下の(A1´)?(A3´)を用いた。 (A1´):比較合成例1で得られたウレタンアクリレートオリゴマー(官能基数5、重量平均分子量2800、固形分90%) (A2´):ダイセル・オルネクス株式会社製「KRM8200AE」(脂環式骨格を持たない脂肪族ウレタンアクリレート、官能基数6、重量平均分子量1000、固形分85%) (A3´):ダイセル・オルネクス株式会社製「EBECRYL1830」(ポリエステルアクリレート、官能基数6、重量平均分子量1000、固形分100%) 【0106】 (メタ)アクリレートモノマー(B)として、以下の(B1)?(B3)を用いた。 (B1):BASFジャパン株式会社製「LaromerDPHA」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、官能基数5および6、固形分100%) (B2):ダイセル・オルネクス株式会社製「PETIA」(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、官能基数3および4、固形分100%) (B3):ダイセル・オルネクス株式会社製「EBECRYL180」(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、官能基数3および4、固形分100%) 【0107】 含フッ素化合物(C)として、以下の(C1)?(C3)を用いた。 (C1):DIC株式会社製「メガファックRS-75」((メタ)アクリル基を有するパーフルオロポリエーテルオリゴマー、固形分40%) (C2):信越化学工業株式会社製「KY-1203」(末端に(メタ)アクリル基を有するパーフルオロポリエーテルオリゴマー、固形分20%) (C3):ソルベイ ソレクシス株式会社製「FLUOROLINKAD1700」(パーフルオロポリエーテル-4官能ウレタンアクリレートオリゴマー、固形分70%) 【0108】 含フッ素化合物(C)の比較用化合物(C´)として、以下の(C1´)および(C2´)を用いた。 (C1´):DIC株式会社製「メガファックF-568」(光重合性不飽和基を持たないフッ素オリゴマー、固形分5%) (C2´):エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製「TEGO2100」(光重合性不飽和基を有するシリコーン系オリゴマー、固形分100%) 【0109】 トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)として、以下の(D1)?(D4)を用いた。 (D1):BASFジャパン株式会社製「チヌビン479」(2-(2-ヒドロキシ-4-[イソオクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、固形分100%) (D2):BASFジャパン株式会社製「チヌビン405」(2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、固形分100%) (D3):BASFジャパン株式会社製「チヌビン400」(2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの混合物、固形分85%) (D4):BASFジャパン株式会社製「チヌビン460」(2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、固形分100%) 【0110】 比較用の紫外線吸収剤(D´)として、以下の(D1´)を用いた。 (D1´):クラリアントジャパン株式会社製「HOSTAVIN3026」(N-(4-ドデシルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)-エタンジアミド、固形分100%) 【0111】 光重合開始剤(E)として、以下の(E1)および(E2)を用いた。 (E1):BASFジャパン株式会社製「Irgacure184D」(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、固形分100%) (E2):BASFジャパン株式会社製「LucirinTPO」(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、固形分100%) 【0112】 その他の添加剤として、以下を用いた。 (F)光安定剤:BASFジャパン株式会社製「チヌビン123」(デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチロキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、固形分100%) (G)コロイダルシリカ:日産化学工業株式会社製「MEK-AC-2140Z」(アクリロイル基で表面修飾された、有機溶媒分散コロイダルシリカ、固形分46%) (H)ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤 (H1):大塚化学株式会社製「RUVA-93」(2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、固形分100%)(H2):BASFジャパン株式会社製「チヌビン928」(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)フェノール、固形分100%) 有機溶剤:酢酸ブチル 【0113】 <光硬化性樹脂組成物の調製> 実施例では、上記原料を下記表1?表3に示す配合で混合することにより光硬化性樹脂組成物を調製した。 【0114】 【表1】 【0115】 【0116】 【表3】 ・・・ 【0132】 (比較例9?11) 比較例9では、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)を配合しない以外は、実施例2と同様に光硬化性樹脂組成物を調製した。比較例10では、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)を配合せずに、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)として(H2)成分を用いた以外は、実施例2と同様に光硬化性樹脂組成物を調整した。比較例11では、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)の種類を(D1)成分から、トリアジン骨格を持たないシュウ酸アニリド系の(D1´)成分に変更した以外は、実施例2と同様に光硬化性樹脂組成物を調製した。 ・・・ 【0148】 <評価結果> 実施例1?19および比較例1?11について、それぞれの評価結果を下記表4?6に示す。 【0149】 【表4】 【0150】 【表5】 【0151】 【表6】 【0152】 表4,5に示すように、実施例1?19では、いずれも光硬化性樹脂組成物の硬化収縮量が少ないことが確認された。また、形成される硬化被膜は、いずれも、透明性が高く、ハードコート性、耐候性および初期の防汚性に優れていることが確認された。また、曝露後であっても高い防汚性を維持しており、防汚持続性に優れていることが確認された。また、いずれも硬化被膜と基材との密着性が高いことが確認された。特に、実施例19に示すように、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(D)とベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤(H)を併用した場合、曝露後であっても優れた密着性を示すことが確認された。」 (3)本件発明が解決しようとする課題 本件明細書の上記(2)アからみて、本件発明の課題は、「硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性に優れる硬化被膜を形成できる光硬化性樹脂組成物、硬化被膜および被膜付き基材、並びに硬化被膜および被膜付き基材の製造方法を提供すること」であると解される。 (4)本件発明1について ア 発明の詳細な説明には、反応性基は、その化学構造の違いにより(メタ)アクリレートモノマー(a2)との反応性が相違すること、脂環式イソシアネート化合物(a1)は、2つ以上の反応性基が同一の化学構造を有しており、各反応性基の反応性が同一であることにより、硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性を高い水準で満たす硬化被膜を形成することができること(上記(2)ウの【0034】)、2つ以上の反応性基が同一とならない化合物、例えば、イソホロンジイソシアネート等、を反応させて得られる脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)では、硬化被膜のハードコート性が劣ること(上記(2)ウの【0044】)、(メタ)アクリレートモノマー(a2)は、硬化被膜を高硬度としてハードコート性を向上させる観点から、光重合性不飽和基が3つ以上であることが好ましいこと(上記(2)ウの【0046】)、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000未満となると、光硬化性樹脂組成物が硬化するときに収縮する硬化収縮量が大きくなるおそれがあり、10,000を超えると、光硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して塗工性が悪くなったり、架橋密度が低下するために硬化被膜の硬度が低下してハードコート性が低くなったりするおそれがあること(上記(2)ウの【0049】)が記載されている。 また、発明の詳細な説明には、本件発明1の具体例である実施例1?19、並びに、脂環式イソシアネート化合物(a1)としてイソホロンジイソシアネートを用いた比較例7、脂環式骨格を持たない脂肪族ウレタンアクリレートを用いた比較例5、ポリエステルアクリレートを用いた比較例6が記載されており(上記(2)カ)、脂環式骨格に、イソシアネート基を有する反応性基が少なくとも2つ結合され、当該反応性基が同一の化学構造である脂環式イソシアネート化合物を用いることにより、紫外線に曝露後の撥油性及び撥水性(防汚持続性)、耐擦傷性及び硬度(ハードコート性)、試験片の4隅の浮き上がり値(硬化収縮)に優れることが、具体的なデータとともに示されているといえる。 そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものである。 イ 申立人の主張について 申立人は、本件発明が、「硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性に優れる」(【0008】)ためには、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)に使用する成分や分子量に依存することは本件出願時の技術常識であるから、実施例で用いられた成分や分子量を特定していない本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張する。 しかしながら、上記(3)で述べたように、本件発明1の課題は、硬化収縮が少なく、ハードコート性、耐候性、防汚性および防汚持続性に優れる硬化被膜を形成できる光硬化性樹脂組成物の提供であり(【0008】)、本件発明1が、上記硬化収縮等に優れることが示されていれば、本件発明1が上記課題を解決できることを認識できるものと解され、これを否定する本件出願時の技術常識は見当たらない。 そして、発明の詳細な説明には、上記アで述べたように、脂環式イソシアネート化合物(a1)は、2つ以上の反応性基が同一の化学構造を有することにより、上記硬化収縮等に優れる硬化被膜を形成することができることが記載され(【0034】)、2つ以上の反応性基が同一とならないイソホロンジイソシアネートを用いた比較例7は、実施例2、9?12等と比べてハードコート性に劣ることも示されている。 また、申立人は、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)に使用する成分や分子量によっては、本件発明1の奏される効果が大きく変化することを述べるにとどまり、実施例で用いられた「脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(A)」以外のものを用いる場合に、上記課題を解決しないことを、実験データなどの具体的な証拠を提示して説明していない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (5)本件発明2?19について 本件発明2?19は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(4)で本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明に記載したものである。 (6)まとめ 以上のとおり、本件発明1?19は発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由3(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。 4 結び 以上のとおりであるから、請求項1?19に係る特許は、特許異議申立書に記載された取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-07-27 |
出願番号 | 特願2015-100709(P2015-100709) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08F)
P 1 651・ 113- Y (C08F) P 1 651・ 537- Y (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 内田 靖恵 |
特許庁審判長 |
佐藤 健史 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 近野 光知 |
登録日 | 2019-08-23 |
登録番号 | 特許第6574608号(P6574608) |
権利者 | 中国塗料株式会社 |
発明の名称 | 光硬化性樹脂組成物、該組成物から形成される硬化被膜および被膜付き基材、並びに硬化被膜および被膜付き基材の製造方法 |
代理人 | 奥山 知洋 |
代理人 | 橘高 英郎 |
代理人 | 福岡 昌浩 |
代理人 | 阿仁屋 節雄 |