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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G16H
審判 全部申し立て 2項進歩性  G16H
管理番号 1364957
異議申立番号 異議2020-700274  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-17 
確定日 2020-08-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6596179号発明「核医学検査支援装置及び核医学検査支援方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6596179号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6596179号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年8月19日に出願した特願2016-161469号の一部を平成31年2月25日に新たな特許出願としたものであって、平成31年2月25日に出願され、令和元年10月4日にその特許権の設定登録がされ、令和元年10月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年4月17日に特許異議申立人鈴木香織(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6596179号の請求項1?8に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
検査枠及び検査種を示す検査予約情報を格納する検査予約テーブルを参照し、少なくとも前記検査予約情報の前記検査種に基づいて放射性医薬品を特定し、該特定された放射性医薬品の発注情報であって前記検査予約情報の前記検査枠に対応する検定日時情報を含む発注情報を生成する発注生成部、
を備える核医学検査支援装置。
【請求項2】
前記発注生成部は、前記検査予約テーブルに格納される前記検査予約情報の中で未発注の検査予約情報を特定し、該未発注の検査予約情報を対象にして前記発注情報を生成する、
請求項1に記載の核医学検査支援装置。
【請求項3】
前記発注生成部は、前記発注情報を生成すると、前記検査予約テーブルに格納されている該生成された発注情報に対応する検査予約情報に該生成された発注情報に対応する発注識別子を反映させる、
請求項1又は2に記載の核医学検査支援装置。
【請求項4】
前記検査予約情報は、前記検査枠又は被検者情報を含み、
前記発注情報で発注された放射性医薬品を用いた核医学検査の検査画像を取得する画像取得部と、
前記取得された検査画像を画像解析して解析情報を生成する解析部と、
前記生成された解析情報を前記検査枠又は前記被検者情報と関連付けて保持する解析保持部と、
を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の核医学検査支援装置。
【請求項5】
前記検査予約情報は、被検者情報を含み、
前記発注情報で発注された放射性医薬品の配送情報を取得する配送情報取得部と、
前記配送情報に関する所定条件を満たしたことを契機に、前記発注情報に対応する前記検査予約情報により示される被検者宛てに検査予定情報を提供する情報提供部と、
を更に備える請求項1から4のいずれか一項に記載の核医学検査支援装置。
【請求項6】
検査枠ごとに予約可否を示す検査予約状況表示を表示装置に出力させる表示処理部、
を更に備え、
前記表示処理部は、放射性医薬品の発注期限の情報に基づいて、前記検査予約状況表示で示される検査枠ごとの予約可否を変更する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の核医学検査支援装置。
【請求項7】
核医学検査を行う検査施設宛てに予約依頼情報を送信する依頼送信部と、
前記予約依頼情報に対する返信を受信する返信受信部と、
を更に備え、
前記検査枠は、検査日時ごとに設けられており、
前記予約依頼情報は、前記検査枠、前記検査種、依頼元機関、及び核医学検査の被検者を示し、
前記受信された返信に従って、前記発注生成部により前記発注情報が生成されるか否かが異なる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の核医学検査支援装置。
【請求項8】
少なくとも一つのコンピュータにより実行される核医学検査支援方法であって、
検査枠及び検査種を示す検査予約情報を格納する検査予約テーブルを参照し、
少なくとも前記検査予約情報の前記検査種に基づいて放射性医薬品を特定し、
前記特定された放射性医薬品の発注情報であって前記検査予約情報の前記検査枠に対応する検定日時情報を含む発注情報を生成する、
ことを含む核医学検査支援方法。」

3 申立理由の概要
異議申立人の主張する申立理由と提出された甲号証は、次のとおりである。
(1)申立理由1
請求項1、3、7?8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明についてなされたものであって、同項の規定に違反してされたものである。(甲第1号証)

(2)申立理由2
請求項1?8に係る特許は、甲第2号証に記載された発明を主引用発明として、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、請求項2、4?6に係る特許は、甲第1号証に記載された発明を主引用発明として、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(甲第1号証?甲第7号証)

(3)提出された甲号証
甲第1号証:特開2003-185749号公報
甲第2号証:特開2003-150830号公報
甲第3号証:特開2006-323634公報
甲第4号証:“検定日・納入日・ご注文締切日|日本メジフィジックス株式会社”[online]の写し
甲第5号証:「核医学における臨床解析ソフトウェアの基礎と応用」
甲第6号証:特開2003-196404号公報
甲第7号証:国際公開第2012/039148号

4 甲第1号証、甲第2号証の記載
(1)甲第1号証には、次のとおり、記載されている。

「【0009】・・・本発明は、放射性薬剤の製造装置を備える薬剤製造サイトから検診装置を備える検診サイトに放射性薬剤を供給し、検診サイトにおいて放射性薬剤を使用して被検診者に検診を行う放射線検診システムにおいて、被検診者の検診の希望日時の情報と放射性薬剤の製造から検診までのジョブの情報とに基づいて検診サイトに放射性薬剤を供給可能な日時を決定し、決定した日時と各サイトの資源の情報とに基づいて各サイトにおけるスケジュールを生成する。」

「【0025】放射線検診システムにおいて薬剤の製造から放射線検診までの全てを含むプロセスにおいて、主要資源毎の処理や作業のまとまりをオペレーションと呼ぶことにする。また、一人の被検診者(一つの検診)に着目したオペレーションの系列であって、各種の制約条件を考慮した上で実行可能なものをジョブと呼ぶ。
【0026】ジョブは、それを構成するオペレーションと、各オペレーションの開始時刻、終了時刻、開始時刻における薬剤の種類や量等の情報で構成する。そして、具体的な被検診者(すなわち、被検診者に対する検診)が決定されているジョブをオーダと呼ぶ。
【0027】本実施の形態に係る詳細スケジュールは、オーダに基づいて全ての資源についての各種の制約条件を考慮した上で実行可能となるようにタスクを割り付けた結果であり、タスクの実行に必要な各種の資源についての開始時刻や終了時刻の情報等で構成する。ここで、タスクは、各オペレーションを分割して詳細化した作業の単位である。オペレーションが一つのタスクで構成される場合もある。
【0028】本実施の形態では、薬剤製造サイトにおける核種製造装置、薬剤合成装置、配送サイトにおける配送用車両、検診サイトにおける薬剤注入器、ベッド、撮像装置等の放射線検診に関係する装置と、これらの装置のオペレータ、配送者および検診の実行に関係する医師、看護婦、技師が資源である。特に、これらの資源のうち、放射線検診システムのプロセスにおいて重要であるか、あるいはその装置の購入に関し高額の設備投資を必要とする核種製造装置、薬剤合成装置、配送用車両、撮像装置が主要資源である。
【0029】図6には、ジョブの一例としてジョブJを示している。ジョブJは、放射線検診システムの主要なプロセスとして、核種製造装置を使用して核種を製造するオペレーションM1、薬剤合成装置を使用して薬剤を合成するオペレーションM2、配送用車両を使用して薬剤を薬剤製造サイトから検診サイトに配送するオペレーションD1および撮像装置を使用して撮像するオペレーションC1の4つのオペレーションで構成される。この図6では、TAが時間軸であり、オペレーションM1は、午前4時に核種の製造を開始し、1時間後の午前5時に終了することを示している。同様に、オペレーションM2,D1,C1についても、それぞれの開始時刻および終了時刻が設定されている。これらは、それぞれのオペレーションにおいて実際に対応する装置における所要時間に基づき、その時間軸上における時間を決定する。このように各オペレーションは、それぞれの開始時刻と終了時刻のデータを持ち、さらに薬剤に関する種類や量に関するデータを含む情報を持っている。
【0030】また、各オペレーションの情報は、そのオペレーションについて開始時刻を変更し得る範囲の情報、すなわち、最早開始時刻と最遅開始時刻のデータが付与される場合がある。図6の両端に矢印を伴った実線(開始時刻変更可能範囲)TWは、オペレーションC1に対して開始時刻を変更し得る範囲を示している。この場合、オペレーションC1は、午前7時から午前8時10分の間で開始時刻を変更できることを示している。」

「【0042】放射線検診システム1Aは、放射線薬剤(以下、「薬剤」と記載する)Mの製造からその薬剤Mを用いた放射線検診までを行うシステムであり、このシステムを効率的に稼動させるために薬剤Mの製造からその薬剤Mを用いた放射線検診までの詳細なスケジュールを生成するシステムである。そのために、放射線検診システム1Aは、薬剤製造サイト2A、配送サイト3A,多数の検診サイト4Aおよびスケジューリングサービス提供サイト5Aから構成される。特に、スケジューリングサービス提供サイト5Aには、放射線検診スケジュール生成システム6Aが構築される。
【0043】放射線検診システム1Aでは、スケジューリングサービス提供サイト5Aと薬剤製造サイト2A、配送サイト3Aおよび多数の検診サイト4Aとの間が公衆電話回線、インターネットあるいは専用回線等の通信回線により接続されており、この通信回線を介して情報を送受信している。そして、放射線検診システム1Aでは、スケジューリングサービス提供サイト5Aにおいて各サイトの装置や従事者に対するスケジュールを生成し、このスケジュールに基づいて薬剤製造サイト2Aで薬剤Mを製造し、配送サイト3Aが製造した薬剤Mを検診サイト4Aまで配送し、検診サイト4Aで配送された薬剤Mを用いて被検診者に対して放射線検診を行っている。」

「【0062】・・・検診サイト4Aは、スケジューリング提供サイト5Aの放射線検診スケジュール生成システム6Aから検診詳細スケジュールSCを受信し、この検診詳細スケジュールSCに従って薬剤注入器4a、ベッド4b、撮像装置4cおよび医師、看護婦、専門の技師を管理するために、スケジュール管理装置4d、詳細スケジュール記憶装置4eおよび検診情報入出力装置4hを備えている。なお、第1の実施の形態では、スケジュール管理装置4dが特許請求の範囲に記載する管理手段の一つに相当する。」

「【0068】ある被検診者が検診の予約を行うと、検診情報入出力装置4では、オペレータの指令に応じてディスプレイに検診予約画面4iを表示する(図4参照)。すると、オペレータは、被検診者の希望に応じて、検診予約画面4iに対して検診サイト、検診種別、放射線検診システム1Aにおいて各被検診者を識別するためのコード(記号)である被検診者IDおよび検診希望日と時刻を入力する。・・・オペレータによって検診予約画面4iに入力後に送信ボタン4jが押されると、検診情報入出力装置4hでは、検診予約画面4iに入力された情報を検診予約要求QRとして放射線検診スケジュール生成システム6Aに送信する。なお、本実施の形態では、検診情報入出装置4hを操作するオペレータが特許請求の範囲に記載する利用者に相当する。
【0069】放射線検診スケジュール生成システム6Aからの検診の予約の結果(予約結果RR)を受信すると、検診情報入出力装置4hでは、ディスプレイにその予約結果RRを書き込んだ検診予約結果画面4kを表示する。すると、オペレータは、検診予約結果画面4kの検診サイト、検診種別、被検診者IDおよび検診希望日と時刻を確認し、さらに放射線検診スケジュール生成システム6Aで決定した予約結果として検診の開始日と時刻および使用撮像装置を確認する。図5に示す例では、図4に示す検診の予約要求に対し、2001年6月14日午前8時にA検診サイトの撮像装置1を使用して検診を行うことが可能であることを示している。これは、同時に、この日時にFDGの薬剤Mを供給できることを意味している。・・・
【0070】そして、オペレータは、検診予約結果画面4kに表示された予約結果に同意する場合には検診予約結果画面4kの登録ボタン4lをマウスを操作してクリックし、・・・。すると、検診情報入出力装置4hでは、このクリックされたボタンの情報を放射線検診スケジュール生成システム6Aに送信する。また、登録ボタン4lがクリックされた場合、検診情報入出力装置4hでは、検診予約要求QRと予約結果RRを関連付けして詳細スケジュール記憶装置4eに格納する。・・・」

「【0071】図1を参照して、スケジューリングサービス提供サイト5Aについて説明する。スケジューリングサービス提供サイト5Aは、スケジューリングサービス会社であり、独立した事業者によって運営されている。スケジューリングサービス提供サイト5Aでは、薬剤製造サイト2A、配送サイト3Aおよび検診サイト4Aからの資源の情報(主要資源の稼動予定の情報を含む)と検診サイト4Aからの検診予約の要求に基づいて製造詳細スケジュールSM、配送詳細スケジュールSDおよび検診詳細スケジュールSCを生成し、各詳細スケジュールSM,SD,SCを各サイト2A,3A,4Aに送信している。そのため、スケジューリングサービス提供サイト5Aでは、検診サイト4Aで行う放射線検診の予約管理も行っている。このような処理を行うために、スケジューリングサービス提供サイト5Aには、放射線検診スケジュール生成システム6Aが構築されている。・・・
【0072】放射線検診スケジュール生成システム6Aについて説明する。放射線検診スケジュール生成システム6Aは、予約管理装置6a、詳細スケジュール生成装置6b、ジョブ記憶装置6c、オーダ記憶装置6d、資源情報記憶装置6e、詳細スケジュール記憶装置6fおよび課金情報記憶装置6gを備えている。・・・
【0073】放射線検診スケジュール生成システム6Aは、放射線検診スケジュール生成ソフトウエアによってサーバコンピュータ(以下、「サーバ」と記載する)(図示せず)に構成される。また、このサーバは、各サイト2A,3A,4Aと情報を送受信するために通信制御装置(図示せず)を備えており、特に、インターネットで情報を送受信する場合にはWWWサーバプログラムを備えている。通信制御装置は、モデム、DSU等から構成されている。
【0074】予約管理装置6aについて説明する。予約管理装置6aは、サーバの主制御装置(図示せず)に構成されている。予約管理装置6aは、検診サイト4Aから検診予約要求QRが送信されると、ジョブ記憶装置6cに格納されているジョブスケジュールSJを読み出し、ジョブスケジュールSJから検診予約要求QRの検査サイトや検診希望日時に適合するジョブを抽出する(図4、図7参照)。・・・さらに、抽出したジョブの中から、開始時刻変更可能範囲TWに検診希望日時が入るジョブを抽出する。・・・
【0075】検診予約要求QRを満たすジョブJを抽出できた場合、予約管理装置6aは、決定した検診開始日時および撮像装置の情報を含む予約結果RRを検診サイト4Aに送信する(図5参照)。そして、予約管理装置6aでは、検診サイト4Aから検診予約結果画面4kでのボタン4l,4m,4nのクリックされた情報を待つ(図5参照)。登録ボタン4lの情報の場合、予約管理装置6aは、そのジョブJをジョブスケジュールSJから削除し、さらに、そのジョブJをオーダとして設定し、オーダ記憶装置6dにそのオーダおよび検診予約要求QRと予約結果RRを関連付けして格納する(図11参照)。」

「【0077】詳細スケジュール生成装置6bについて説明する。詳細スケジュール生成装置6bは、サーバの主制御装置(図示せず)に構成されている。詳細スケジュール生成装置6bでは、オーダ記憶装置6dに格納されているオーダスケジュールSO(図12参照)と資源記憶装置6eに格納されている各サイト2A,3A,4Aの資源の情報に基づいて各サイト2A,3A,4Aにおける詳細スケジュールSM,SD,SCを生成する。・・・」

「【0082】オーダ記憶装置6dについて説明する。オーダ記憶装置6dは、サーバの記憶装置(ハードディスク等)に構成される。オーダ記憶装置6dは、ジョブ記憶装置6cに格納されているジョブスケジュールSJの割付可能なジョブJ1,・・・のうち(図7参照)、予約管理装置6aで設定したオーダOR1,・・・(確定したジョブ)を、オーダスケジュールSOとして将来の一定期間(例えば、数日)分時系列で配列して格納している(図12参照)。なお、オーダOR1,・・・には検診予約要求QRと予約結果RRも関連付けられて格納されている。」

「【0093】薬剤製造サイト2Aでは、製造詳細スケジュールSMを受信すると、詳細スケジュール記憶装置2eに格納する。そして、薬剤製造サイト2Aでは、製造詳細スケジュールSMに従って、薬剤製造装置2a,2bを決められた時刻に稼動し、決められた量と種類の薬剤Mを製造する(S6)。」

「【0097】次に、図1乃至図9を参照して、放射線検診スケジュール生成システム6Aでの検診サイト4A(検診情報入出力装置4h)との検診の予約処理を図11のフローチャートに沿って説明する。・・・
【0104】続いて、予約管理装置6aでは、設定したオベレーションの検診開始日時に基づいて製造する薬剤Mおよび核種の量を前記した式(3)および式(4)により算出する(S17)。」

以上の記載によれば、甲第1号証には、
「放射性薬剤の製造装置を備える薬剤製造サイトから検診装置を備える検診サイトに放射性薬剤を供給し、検診サイトにおいて放射性薬剤を使用して被検診者に検診を行う放射線検診システムであって、
薬剤製造サイト、配送サイト、多数の検診サイト、および、放射線検診スケジュール生成システムが構築されたスケジューリングサービス提供サイトから構成され、これらの間が通信回線により接続されており、
放射線検診スケジュール生成システムは、検診サイトで行う放射線検診の予約管理を行い、その際、検診サイトから検診予約要求が送信されると、ジョブ記憶装置に格納されているジョブスケジュールを読み出し、ジョブスケジュールから検診予約要求の検査サイトや検診希望日時に適合し、かつ、開始時刻変更可能範囲に検診希望日時が入るジョブ(核種製造装置を使用して核種を製造するオペレーションM1、薬剤合成装置を使用して薬剤を合成するオペレーションM2、配送用車両を使用して薬剤を薬剤製造サイトから検診サイトに配送するオペレーションD1および撮像装置を使用して撮像するオペレーションC1の4つのオペレーションで構成されたもの)を抽出し、ジョブを抽出できた場合、抽出したジョブのオペレーションの検診開始日時として検診希望日時を設定し、設定した検診開始日時に基づいて製造する薬剤および核種の量を算出し、検診開始日時および撮像装置の情報を含む予約結果を検診サイトに送信し、検診サイトからの登録ボタンの情報の送信に応じてジョブをオーダとして設定してオーダ記憶装置にオーダを検診予約要求と予約結果と関連付けして格納し、
検診予約要求と関連付けして格納されたオーダと薬剤製造サイト、配送サイトおよび検診サイトからの主要資源の稼働予定の情報を含む資源の情報とに基づいて製造詳細スケジュールSM、配送詳細スケジュールSDおよび検診詳細スケジュールSCを生成し、
各詳細スケジュールSM,SD,SCをそれぞれ薬剤製造サイト、配送サイトおよび検診サイトに送信し、
薬剤製造サイトでは、受信した製造詳細スケジュールSMに従って、薬剤製造装置を決められた時刻に稼動し、決められた量と種類の薬剤を製造する、
放射線検診システム。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲第2号証には、次のとおり、記載されている。

「【0011】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、RI検査で使用する薬品を調べることなく、発注すべき薬品を求めることができ、発注作業を容易にすることを実現する発注システムを提供することにある。」

「【0016】本実施の形態の薬品発注システム1は、薬品の管理ならびに薬品発注を行うものであり、図1に示すように、大きく、放射線部門側のシステム2と、このシステム2とネットワークN2ないしはN3などの各種通信網を介してデータ通信可能な薬品メーカー側のシステム3とを有する。
【0017】システム2は、放射線部門情報管理システム(以下RIS)とRI薬品在庫管理システムとが組み合わせて構成される。」

「【0019】より詳細には、システム2は、RI薬品の予約ないしは発注を希望する希望者(ユーザー)側の一又は複数のRI薬品発注端末10と、RISの端末であってRI検査予約情報を操作入力するための一又は複数の(RI検査予約情報を入力する装置)端末12と、RI薬品管理情報を操作入力するための一又は複数の(RI薬品管理情報を入力する装置)端末14と、これら端末10、12、14、とネットワークN1などの通信網を介して無線、有線等により各々データ通信可能に形成されて薬品発注の管理を行うサーバー20と、システム2からシステム3に対してデータ通信を行うためのモデム又はターミナルアダプタ等の通信機器22と、を含んで構成されている。」

「【0024】端末10は、RI薬品を発注するためのものであり、サーバー等にアクセス可能なコンピュータ機器である。この端末10は、ネットワークを介してデータ通信可能な機能を有していれば、デスクトップ、ラップトップコンピュータ、携帯電話端末・パームコンピュータ・PDA、モバイル、ページャその他無線・有線通信機能を有する情報機器、またはこれに類するコンピュータなどいかなるコンピュータでもよく、移動式・固定式を問わない。」

「【0033】なお、端末12、14は、端末10とほぼ同様の構成を有する。端末12は、RI検査予約情報(予約日、RI薬品名、数量)を登録するとともに、検査を実施した後の実施日等の入力を行うこともできる。端末14は、RI薬品在庫管理、RI薬品の半減期、及びメーカー情報(TEL、FAX、電子メールアドレス)を管理する。RI薬品も入庫情報、及びRISから入力される検査実施情報に基づき、出庫情報を管理する。出庫は、検査を実施した時をいう。」

「【0036】上述のような構成を有する薬品発注システム1において、ある一定の時刻、または操作により翌日以降のRI検査を調べ、半減期、及び現在の在庫量に基づき、発注すべきRI薬品をメーカー別(発注先別)に検索し、表示画面上に発注薬品リスト(ないしは発注先別の各発注薬品リスト)として表示される。検索されたRI薬品の発注薬品リストは、FAX又は電子メール等のいずれかの通信手段により注文書として送信される。」

「【0040】(表示画面について)ここに、端末10に表示される表示画面の一例について、図2?図3を用いて説明する。図2には、放射性医薬品使用予定一覧の表示画面の表示態様の一例が開示されている。
【0041】同図に示すように、表示画面40には、放射性医薬品名を表示するための放射性医薬品名表示部41、当該薬品の量を表示する薬品量表示部42、注射予定日を表示した注射予定日表示部43、患者IDを表示した患者ID表示部44a、患者氏名を表示した患者氏名表示部44b、患者の性別を表示した患者性別表示部44c、患者の年齢を表示した患者年齢表示部44d、当該患者が入院患者であるのかあるいは外来患者であるのかの識別情報を表示した入外識別部44e、患者の病棟を示した病棟表示部45、患者にRI薬品を投与する部位を示した部位表示部46などが表示形成されている。これら各部の各項目において各々データ入力が可能である。
【0042】また、図3には、薬品発注を行うための発注リストを表示した表示画面の一例が開示されている。同図に示すように、表示画面50には、各薬品メーカー、例えば、A社、B社、C社等の各々に対する薬品発注リストを表示した各表示欄51、52、53が設けられている。
【0043】表示欄51は、さらに、発注すべき放射性医薬品名を表示した放射性医薬品名表示部51a並びに当該医薬品の発注される量を表示した薬品量表示部51bが形成されている。他のB社、C社用の表示欄52、53においても同様に表示部52a・52b及び表示部53a・53bが表示形成されている。」

「【0047】一方、ユーザーは、RI検査予約情報を入力する装置(端末)12を用いて、検査予約情報を入力すると、当該検査予約情報をサーバーに対して送信する(S104)。検査予約情報とは、RI検査を何月何日の何時に行うという予約情報である。
【0048】前記検査予約情報がサーバーにて受信されると(S105)、サーバーは、メーカー毎の各医薬品情報に基づいて、メーカー毎のRI検査に用いられる医薬品の半減期、使用量を算出処理を行い(S106)、当該算出結果をデータベース(DB)に対して登録する処理を行う(S107)。なお、サーバーは、S106において、データベース(DB)に対して当該検索予約情報の登録処理をも行うこととなる。
【0049】このように、入力した段階で、RI検査に用いられる薬品の半減期、使用量等をメーカー(発注先)毎に算出し導き出す。これは、殆ど必ず毎日やる場合が多い。つまり、端末14にて入庫情報が入力されるとともに、検査実施情報に基づき出庫情報を更新するので、RI薬品の在庫量を算出することができる。このようにして、在庫量と半減期に基づいて発注が必要な(有効期限が切れる)薬品を抽出する。
【0050】在庫管理に関しては、ある人に対する検査を行う場合に、その人に対する医薬品名、医薬品使用量等の入力を行う。医薬品が使用されると施登録となる。
【0051】この結果、前記データベース(DB)に登録、格納されるRI薬品管理情報としては、例えば、検査実施情報、検査予約情報、メーカー毎の医薬品情報、医薬品に対応する半減期情報等が格納されることとなる。」

「【0052】このような前処理とも呼ぶべき前提処理がなされた状態において、ユーザーがRI薬品発注端末10を用いて、RI薬品を新たに発注する旨の操作を行うと、発注要求が当該RI薬品発注端末10からサーバーに対して送信されることとなる(S108)。
【0053】サーバーは、前記発注要求を受領すると(S109)、前記データベース(DB)を参照しながら、半減期等を鑑み、この時間において発注するべき発注薬品のリスト(発注薬品リスト)を抽出する処理を行う(S110)。そして、この抽出された発注薬品リストに基づき、RI薬品発注端末10に対して当該リストに関する情報を送信する処理を行うこととなる(S111)。
【0054】前記発注薬品リストに関する情報がRI薬品発注端末にて受信されると(S112)、当該リストは、RI薬品発注端末上の表示画面に表示されることとなる。
【0055】これにより、RI薬品発注端末10にて、例えば、翌日のRI検査に必要な一覧を表示して、発注を促すことができる。
【0056】この時、(必要な期限管理された)発注しなければならない薬品の一覧を抽出(検索)し、当該RI薬品発注端末10に情報が表示される。
【0057】この際の演算ならびに抽出(検索)は、自動的になされ、注文と関係なく明日使えるものが全てリストアップされる。なお、各薬品メーカー毎の薬品情報等は、予め端末14を用いて入力(手動で登録)をしておく必要がある。このようにして、予約情報、管理情報の入力等を行い、薬品の発注端末から指定した検査日を入力すると、自動的に薬品の発注リストが生成、抽出される。
【0058】この際、表示画面上には、当該リストが一覧表示されており、発注する薬品として何があるのかを確認することができる。その際、リストに不適切なRI薬品が抽出されていた場合には、適宜選択することにより、リストを変更する処理を行えばよい。
【0059】また、表示画面上には、発注を電子メールで行うのか、あるいはFAXで行うのかを選択する選択部が表示形成されており、当該選択部での選択操作により、送信形態の選択を処理がなされる(S113)。
【0060】そして、当該一覧に表示されたRI薬品についての発注書を電子メールないしはFAXにより薬品メーカー(薬品提供者)に送付することとなる。なお、発注の際のFAXによる送信もしくは、電子メールによる送信はユーザーが選択できる。
【0061】そして、送信形態を例えば電子メールに選択した場合には、電子メールによって発注要求が送信される(S114)。送信された電子メールは、サーバーを介し、メーカー側のサーバーにて受信される(S115)。」

以上の記載によれば、甲第2号証には、
「放射線部門側システムと薬品メーカー側システムとを有する薬品発注システムであって、
放射線部門側システムは、放射線部門情報管理システムとRI薬品在庫管理システムとが組み合わせて構成されたものであって、ある一定の時刻、または操作により翌日以降のRI検査を調べ、半減期、及び現在の在庫量に基づき、発注すべきRI薬品をメーカー別(発注先別)に検索し、表示画面上に発注薬品リスト(ないしは発注先別の各発注薬品リスト)として表示され、検索されたRI薬品の発注薬品リストが、FAX又は電子メール等により注文書として送信されるものであり、
端末を用いて入力されたRI検査予約情報(予約日、RI薬品名、数量)が放射線部門側システムのサーバに送信され、
このサーバは、この検査予約情報を受信し、この検査予約情報のデータベースへの登録処理を行うとともに、メーカー毎のRI検査に用いられる医薬品の半減期、使用量の算出処理を行って算出結果をデータベースに登録する処理を行い、端末からの入庫情報の入力と検査実施情報に基づく出庫情報の更新によりRI薬品の在庫量を算出し、算出された在庫量と半減期に基づいて発注が必要な(有効期限が切れる)薬品を抽出し、その際、検査を行う場合に医薬品使用量等が入力され、医薬品が使用される場合に実施登録がされて、結果として、データベースに、例えば、検査実施情報、検査予約情報、メーカー毎の医薬品情報、医薬品に対応する半減期情報等のRI薬品管理情報が格納され、
このような前提処理がなされた状態における、当該RI薬品発注端末10から送信された発注要求を受領すると、
データベースを参照しながら、半減期等を鑑み、この時間において発注するべき発注薬品のリスト(発注薬品リスト)を抽出する処理を行い、この抽出された発注薬品リストに基づき、RI薬品発注端末10に対して当該リストに関する情報をRI薬品発注端末上の表示画面に表示すべく送信する処理を行い、この時、(必要な期限管理された)発注しなければならない薬品の一覧が抽出(検索)され、
この一覧に表示されたRI薬品についての発注書が電子メール等により薬品メーカー(薬品提供者)に送付される、
システム」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

5 当審の判断(申立理由1及び申立理由2について)
(1)請求項1に係る発明(本件発明1)について
ア 甲第1号証に記載された発明を主引用発明とした申立理由について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「オーダ」「オーダ記憶装置」は、それぞれ、本件発明1の、「検査予約情報」「検査予約テーブル」に相当する。
引用発明1の「ジョブ」に含まれる、撮像装置を使用した撮像オペレーションの時間と核種製造装置で製造される核種の情報は、核医学検査の時間枠と核医学検査のために製造される放射性医薬品の特定のための情報であり、それぞれ、本件発明1の「検査枠」と「検査種」に相当する。
また、引用発明1の「製造詳細スケジュールSM」は、決められた量と種類の薬剤を製造すべき旨を製造サイトに対して発注することを示す情報であり、本件発明1の「発注情報」に相当する。
引用発明1の、放射線検診システム放射線検診スケジュール生成システムが構築されたスケジューリングサービス提供サイトは、検査予約情報を格納する検査予約テーブルを参照し、発注情報を生成するものであり、後述する相違点を除いて、本件発明1の「核医学検査支援装置」に対応する。

してみると、本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
検査枠及び検査種を示す検査予約情報を格納する検査予約テーブルを参照し、少なくとも前記検査予約情報の前記検査種に基づいて放射性医薬品を特定し、該特定された放射性医薬品の発注情報を生成する発注生成部と、
を備える核医学検査支援装置。

<相違点1>
本件発明1の「発注情報」が「検査予約情報」の「検査枠に対応する検定日時情報」を含むのに対し、引用発明1の「発注情報」はこれを含んでいない点。

(イ)相違点の判断
本件発明1の「検定日時」とは、「医薬品が表示された放射能を有すべき日時」(平成25年3月29日、厚生労働省告示第83号による「放射性医薬品基準」)であり、発注を受ける側において検定日時において放射能の存在する量が確保できるように製造量を算出しない限り、発注情報に検定日時情報を含める必要がない。そして、引用発明1の「製造詳細スケジュールSM」は、ある時間に製造されるべき薬剤の種類と量の情報を含んでおり、これらの算出は、発注を受ける側となる製造サイトではなく、発注を行う側となるスケジューリングサービス提供サイトにおいて行われており、引用発明においては、発注情報に検定日時情報を含める必要がない。
このことに鑑みれば、引用発明1における相違点1に係る構成の採用は、動機付けられることがなく、むしろ阻害されるものである。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は、申立理由1について、甲第1号証の【0029】【0034】【0038】【0040】【0104】の記載を示し、放射性医薬品を特定するためには、放射能の量に加えて、その量がいつの時点での量かを特定する必要があるという技術常識を考慮すれば、製造する核種の量NM1又は検診に必要な薬剤の量NC1がいつの時点(つまり製造する時刻又は撮像する時刻)の量であるか通知を受けなければ、発注を受ける側で放射性医薬品を特定することができないことから、製造詳細スケジュールSMは、「検定日時情報」を実質的に含んでいる、等として、上記相違点1が一致点であると主張している。
しかしながら、(イ)において上記したように、引用発明1の「製造詳細スケジュールSM」は、ある時間に製造されるべき薬剤の種類と量の情報を含んでいれば十分であって、「検定日時情報」又はこれと同等の情報を含んでいないし、これを含む必要はない。仮に「製造詳細スケジュールSM」が製造する時刻を含むものであったとしても、製造する時刻は、「医薬品が表示された放射能を有すべき日時」ではないため「検定日時」に該当せず、「検定日時」と同等の情報でもない。また、撮像する時刻は、検診サイトのオペレーションC1に関連するものであって、薬剤製造サイトには不要な情報であり、「製造詳細スケジュールSM」に含める必要性がない。
よって、この点を一致点とすることはできない。

イ 甲第2号証に記載された発明を主引用発明とした申立理由について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「RI検査予約情報(予約日、RI薬品名、数量)」「データベース」は、それぞれ、本件発明1の「検査予約情報」「検査予約テーブル」に相当する。
また、引用発明2の検査予約情報の「予約日」と「RI薬品名」は、それぞれ本件発明1の「検査枠」と「検査種」に相当する。
また、引用発明における、抽出された発注薬品リストに基づいてメーカに送付される発注書は、本件発明1の「発注情報」に相当する。

してみると、本件発明1と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
検査枠及び検査種を示す検査予約情報を格納する検査予約テーブルを参照し、放射性医薬品を特定し、該特定された放射性医薬品の発注情報を生成する発注生成部と、
を備える核医学検査支援装置。

<相違点>
<相違点2-1>
本件発明1の「発注情報」に係る放射性医薬品の特定は、「少なくとも前記検査予約情報の前記検査種に基づいて」なされるのに対し、引用発明2は、「発注情報」に係る放射性医薬品の特定は、データベースを参照して半減期等を鑑み抽出される発注薬品リストによるものであって、検査予約情報の検査種に基づいてなされるか否かが明確でない点。
<相違点2-2>
本件発明1の「発注情報」が「検査予約情報」の「検査枠に対応する検定日時情報」を含むのに対し、引用発明2の「発注情報」はこれを含んでいない点。

(イ)相違点の判断
上記相違点2-1、2-2について検討する。(以下、相違点2-1と相違点2-2を併せて「相違点2」という。)
引用発明2は、「発注情報」に係る放射性医薬品の特定は、データベースを参照して半減期等を鑑み抽出される発注薬品リストによるものであり、これは、RI薬品の在庫量と半減期に基づいて発注が必要な(有効期限が切れる)薬品を抽出して発注するものであるから、「発注情報」は「検査予約情報」の「検査枠」に対応するものとなっていない。
このことに照らせば、引用発明2において、「発注情報」に係る放射性医薬品の特定を「検査予約情報」の「検査種」により行うこと及び「発注情報」に「検査予約情報」の「検査枠に対応する検定日時情報」を含めることは、動機付けられることがなく、むしろ阻害されるものである。

(ウ)異議申立人の主張について
A 異議申立人は、甲第2号証の段落【0033】【0036】【0051】【0053】の記載を示し、甲第2号証の放射性医薬品の特定は、半減期と在庫量に基づいて行われるものであるとしても、「半減期、及び現在の在庫量」は、翌日以降のRI検査で使用するRI薬品の「半減期、及び現在の在庫量」であることは明らかであること、翌日以降のRI検査は、RI薬品名を含むRI検査予約情報に基づいて調べられることも明らかであること、及び、検査予約情報に基づかずに在庫量がないという理由だけで使用予定のない放射性医薬品を発注することは不合理であることに鑑みれば、甲第2号証において、発注情報(発注薬品リスト)に係る放射性医薬品の特定は、少なくとも検査予約情報(RI検査予約情報)の検査種(RI薬品名)に基づいて行われているものと看取できるとして、上記相違点2-1は一致点であると主張している。
しかし、甲第2号証の記載を参酌しても、半減期及び現在の在庫量の管理を、翌日以降のRI検査で使用するRI薬品に限定するとは認められない。むしろ、段落【0049】に「在庫量と半減期に基づいて発注が必要な(有効期限が切れる)薬品を抽出する。」との記載があるように、有効期限が切れるRI薬品については、検査予約情報の如何に関わらず、発注が必要な薬品として抽出すると認められる。(イ)において上記したとおり、甲第2号証における放射線部門側システムは、放射線部門情報管理システムとRI薬品在庫管理システムとが組み合わせて構成されたものであり、「半減期」及び「現在の在庫量」に基づいて発注薬品リストを表示するものであるから、発注される検査種は、検査予約情報に基づくものというより現在の在庫量に基づいて発注が必要となったものであるといわざるを得ない。
よって、この点を一致点とすることはできない。

B 異議申立人は、相違点2-2(異議申立人のいう相違点a)について、甲第2号証の図3の表示画面に示された発注情報に対応する薬品発注リストにおける放射能量の値が図2の表示画面に示された検査予約情報における注射予定日の検査ごとに必要な特定の放射能量の値の総量であることが看取でき、また、検定日における検定時間が一時点に固定されうることが周知技術であり、放射性医薬品を発注するために、その放射性医薬品の検定日時が必須であることに鑑みれば、甲第2号証の発注情報が検定日時情報として含んでいることが看取されると主張している。
相違点2-1及び2-2について、引用発明2において、「発注情報」に係る放射性医薬品の特定を「検査予約情報」の「検査種」により行うこと及び「発注情報」に「検査予約情報」の「検査枠に対応する検定日時情報」を含めることは、動機付けられることがなく、むしろ阻害されるものであることは、(イ)において上記したとおりである。
また、異議申立人が指摘する甲第2号証の図2と図3に図示された放射能量の値について検討すると、確かに、図3の表示画面に示された発注情報に対応する薬品発注リストにおける放射能量が図2の表示画面に示された検査予約情報における注射予定日の検査ごとに必要な特定の放射能量の総量と同じ値となっているものの、段落【0047】?【0054】の記載からみて、図3の発注情報に対応する薬品発注リストにおける放射能量は、検査予約情報における放射能量の総量としてではなく、在庫量を踏まえて必要な量として決定されていることが明らかであるし、甲第2号証では、放射線部門側システムが放射線部門情報管理システムとRI薬品在庫管理システムとが組み合わせられたものであることが前提となっているから、発注量の決定にあたって在庫量を踏まえるというRI薬品在庫管理システムの機能を除外することはできない。してみると、異議申立人が指摘する甲第2号証の図2と図3における放射能量の値は、在庫量を踏まえて決定された結果の例として示されたものであり、在庫量を踏まえることなく検査予約情報から発注情報における放射能量を決定することを示唆するものということはできない。
異議申立人の主張は、甲第2号証の記載を正解したものとなっておらず、採用することができない。

ウ 以上によれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でなく、また、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)請求項2、4?6に係る発明について
請求項2、4?6に係る発明は、本件発明1を限定したものであり、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明と対比すると、それぞれ上記相違点1又は相違点2において、少なくとも相違する。
そして、上記のとおり、これらの相違点はいずれも容易想到ということができないから、請求項2、4?6に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)請求項3、7に係る発明について
請求項3、7に係る発明は、本件発明1を限定したものであり、甲第1号証に記載された発明と対比すると、上記相違点1において、少なくとも相違する。
よって、請求項3、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でない。
また、請求項3、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と対比すると、上記相違点2において、少なくとも相違する。
そして、上記のとおり、係る相違点は容易想到ということができないから、請求項3、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)請求項8に係る発明について
請求項8に係る発明は、本件発明1に対応する方法発明であって、甲第1号証に記載された発明と対比すると、上記相違点1に対応する相違点において相違する。
よって、請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でない。
また、請求項8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と対比すると、上記相違点2に対応する相違点において、少なくとも相違する。
そして、上記に示したのと同様に、この相違点は容易想到ということができないから、請求項8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)小括
以上のとおり、申立理由1、2はいずれも理由がない。

6 むすび
以上によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-07-30 
出願番号 特願2019-31297(P2019-31297)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G16H)
P 1 651・ 113- Y (G16H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永野 一郎  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 速水 雄太
相崎 裕恒
登録日 2019-10-04 
登録番号 特許第6596179号(P6596179)
権利者 日本メジフィジックス株式会社
発明の名称 核医学検査支援装置及び核医学検査支援方法  
代理人 田中 俊夫  
代理人 右田 俊介  

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