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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1364968
異議申立番号 異議2020-700357  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-22 
確定日 2020-08-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6611754号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6611754号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6611754号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成29年4月25日に出願した特願2017-86548号であって、令和1年11月8日にその特許権の設定登録がされ、同年11月27日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和2年5月22日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。

2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(当審において請求項1をA?Dに分説した。)。
「【請求項1】
A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 遊技者による特定動作に応じて特定表示の態様を変化させることで特典が付与されるか否かを示唆する示唆手段を備え、
C 前記示唆手段は、
C1 特典が付与される場合、前記特定動作に応じて特定条件が成立したことに応じて前記特定表示の態様を特定態様に変化させ、当該特定条件が成立してから所定期間経過した後、当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで特典が付与されることを示唆し、
C2 特典が付与されない場合、前記特定条件が成立しても前記特定表示の態様を前記特定態様に変化させずに、当該特定条件が成立してから所定期間経過した後、当該特定表示を消去して特典が付与されないことを示唆する、
D 遊技機。」

3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1?3号証を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された事項及び周知技術(甲第2及び3号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、同法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである旨主張する。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2016-144505号公報
甲第2号証:特開2013-180137号公報(周知技術を示す文献)
甲第3号証:特開2013-106627号公報(周知技術を示す文献)

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ)。

ア 記載事項
(1-ア)「【0033】
スロットマシン1においてゲームを行う場合には、まず、メダルをメダル投入部4に投入するかMAXBETスイッチ6操作などにより規定数の賭数(例えば3)を設定する。これにより、入賞ラインLNが有効となり、スタートスイッチ7への操作が有効となり、ゲームが開始可能な状態となる。賭数設定済の状態でメダルが投入された場合には、その分はクレジットに加算される。・・・
【0035】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7が操作されると、リール2L?2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L?8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させることで、透視窓3の上中下段に3つの図柄を表示結果として導出表示する。入賞ラインLN上に入賞図柄の組合せが停止し入賞が発生したときには、入賞に応じて、所定枚数のメダルが遊技者に対して付与されて、クレジット加算か、クレジットが上限数(50)に達した場合にはメダル払出口9からメダルが払い出される。」

(1-イ)「【0061】
メイン制御部41は、内部抽選において同時当選役に当選してAT抽選が行われたときには、BB当選およびAT当選したか否かを示唆する当選示唆演出を所定タイミングで実行するための処理を行う。当選示唆演出としては、たとえば、スタートスイッチ7を操作したときにゲームの進行を所定期間に亘って遅延させるフリーズ演出や、所定画像を液晶表示器51に表示させる演出などが設けられている。フリーズ演出中においては、リール2L?2Rを所定態様で回転させて、特定の図柄組合せ(たとえば、黒7の3つ揃い)を停止させるようにリール演出を実行するようにしてもよい。所定画像を表示させる演出には、たとえば、キャラクタA演出、キャラクタB演出、ボタン演出、連打演出、フリーズ用演出などが含まれる。」

(1-ウ)「【0095】
図15(a)は、連打演出の種類を説明するための図である。連打演出は、パターン1?パターン6が設けられている。連打演出は、所定操作期間(たとえば、10秒)内において、演出用スイッチ56が5回操作される毎に、メータを1段階増やし(更新し)、4段階まで増えてメータがMAXに到達することによりBB当選あるいはAT当選している旨を示唆し、MAXに到達しなかったことによりBB当選もAT当選もしていない旨を示唆する演出である。連打演出の種類には、MAXに到達しなかった後に復活演出として再度連打演出を行うパターンが設けられており、再度の連打演出によりMAXに到達するか否かで実際にBB当選あるいはAT当選しているか否かを示唆する演出が設けられている。なお、連打演出は、パターン1?パターン6のいずれであるかにかかわらず、共通の演出態様(図16(a)参照)で開始される。
【0096】
図15(a)を参照して、パターン1および2は、ともに、所定操作期間内において演出用スイッチ56が5回操作されることでメータの段階が増えて、20回操作されたときにMAXに到達可能となる演出である。より具体的に、パターン1では、1段階目において青色のメータを増やし、2段階目において緑色のメータを増やし、3段階目において赤色のメータを増やし、4段階目でメータ全体を虹色にして「MAX」と表示される。一方、パターン2では、1段階目、2段階目、4段階目においてはパターン1と同じ態様でメータ表示が行われる一方、最終段階の一つ手前の3段階目においては特殊態様である桜模様のメータを増やす表示を行う。以下では、パターン1のように3段階目において赤色のメータを増やす態様を通常態様といい、パターン2のように3段階目において桜模様のメータを増やす態様を特殊態様という。また、通常態様で演出が実行される当選示唆演出を通常の当選示唆演出ともいい、特殊態様で演出が実行される当選示唆演出を特殊な当選示唆演出ともいう。
【0097】
パターン3よび4は、ともに、所定操作期間内において演出用スイッチ56が5回操作されることでメータの段階が増えるが、20回操作されてもメータが4段階のMAXに到達せずにメータ全体を白色にして「失敗」と表示する演出を行った後、復活演出としてMAXに到達可能となる演出である。なお、パターン3は、復活演出前の1回目の連打演出においてメータが2段階から3段階に増えるときに通常態様でメータを増やす演出が行われるのに対し、パターン4は、復活演出前の1回目の連打演出においてメータが2段階から3段階に増えるときに特殊態様でメータを増やす特殊な当選示唆演出である点で、両パターンは異なる。
【0098】
パターン5は、所定操作期間内において演出用スイッチ56が20回操作されてもメータが4段階のMAXに到達しない演出である。また、パターン5は、メータが2段階から3段階に増えるときに通常態様でメータを増やす通常の当選示唆演出である。一方、パターン6は、所定操作期間内において演出用スイッチ56が20回操作されてもメータが4段階のMAXに到達しない演出を行った後に復活演出を実行するが、当該復活演出においてもMAXに到達しない演出である。なお、パターン6は、復活演出前の1回目の連打演出においてメータが2段階から3段階に増えるときに特殊態様でメータを増やす特殊な当選示唆演出である。」

(1-エ)「【0105】
図16は、連打演出の演出内容の一例を説明するための図である。連打演出は、液晶表示器51aの所定領域で演出画像を表示することにより実行される。図16では、液晶表示器51aの所定領域の表示状態を示している。
【0106】
まず、連打演出が開始されると、図16(a)に示すように、「連打だ!」といったメッセージとともに、メータの外枠画像が表示される。これにより、遊技者に演出用スイッチ56を操作させることができる。
【0107】
図16(b)は、メータが1段階増加した態様を示している。図16(b)に示すように、「まだまだ!」といったメッセージとともに、青色のメータが増加した態様に更新されている。その後、演出用スイッチ56が5回操作される毎に、2段階目の態様(緑色のメータが増加した態様)に更新される。2段階目までは、通常態様であるか特殊態様であるかにかかわらず、共通の態様で当選示唆演出が実行される。
【0108】
図16(c)および(e)は、メータが3段階目に更新されたときの態様を示している。図16(c)は通常態様に更新された例であり、図16(e)は特殊態様に更新された例である。通常態様に更新されたときには、図16(c)に示されるように、「あと少し!」といったメッセージとともに、緑色のメータが増加した3段階目の態様に更新されている。一方、特殊態様に更新されたときには、図16(e)に示されるように、「チャンスだ!」といったメッセージとともに、桜模様のメータが増加した3段階目の態様に更新されている。
【0109】
図16(d)は、演出用スイッチ56を20回操作して4段階目のMAXに到達したときの態様を示している。図16(d)では、「AT確定!」といったメッセージとともに、メータ全体が虹色になり「MAX」と表示される。なお、MAX到達時において、AT当選時には、図16(d)に示すように「AT確定!」といったメッセージを表示し、BB当選時には「BB確定!」といったメッセージを表示し、BB+AT当選時には「BB+AT確定!」といったメッセージを表示する。
【0110】
図16(f)は、演出用スイッチ56を20回操作したが4段階目のMAXに到達しなかったときの態様を示している。図16(f)では、「残念…」といったメッセージとともに、メータがMAXに到達できなかった旨を示す「失敗」といったメッセージが表示される。」

(1-オ)「【0144】
[遊技機の他の例について]
前述した実施の形態では、本発明をスロットマシンに適用した例について説明したが、これに限らず、遊技を行うことが可能な遊技機であればよく、たとえば、いわゆるパチンコ遊技機に適用することもできる。・・・」

イ 認定事項
(1-カ)
段落【0106】の、「連打演出が開始されると、図16(a)に示すように、「連打だ!」といったメッセージとともに、メータの外枠画像が表示される。」との記載、段落【0107】の「図16(b)は、メータが1段階増加した態様を示している。」との記載、段落【0108】の「図16(c)および(e)は、メータが3段階目に更新されたときの態様を示している。」との記載、段落【0110】の「演出用スイッチ56を20回操作したが4段階目のMAXに到達しなかったとき・・・図16(f)では、「残念…」といったメッセージとともに、メータがMAXに到達できなかった旨を示す「失敗」といったメッセージが表示される。」との記載、段落【0097】の「20回操作されてもメータが4段階のMAXに到達せずにメータ全体を白色にして「失敗」と表示する」との記載、及び、図16(a)?(c)、(e)及び(f)を考慮すると、図16(f)には、「メータがMAXに到達できなかった旨を示す「失敗」といったメッセージ」(【0110】)を、「メータの外枠画像」(【0106】)の内側に表示する点が図示されている。

【図16】


上記(1-ア)?(1-オ)の記載事項及び上記(1-カ)の認定事項を総合すれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(本件発明の構成A?Dに対応させて、記号a?dを付した。)。

「a メダルをメダル投入部4に投入するかMAXBETスイッチ6操作などにより規定数の賭数(例えば3)を設定し、スタートスイッチ7が操作されると、リール2L?2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L?8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させることで、透視窓3の上中下段に3つの図柄を表示結果として導出表示し、入賞ラインLN上に入賞図柄の組合せが停止し入賞が発生したときには、入賞に応じて、所定枚数のメダルが遊技者に対して付与されて、クレジット加算か、クレジットが上限数(50)に達した場合にはメダル払出口9からメダルが払い出されるスロットマシン1であって(【0033】、【0035】)、
b 当選示唆演出を所定タイミングで実行し、当選示唆演出として(【0061】)、演出が開始されるとメータの外枠画像が表示され(【0106】、図16(a))、所定操作期間内に演出用スイッチ56が5回操作される毎にメータを1段階増やし、4段階まで増えてメータがMAXに到達することによりBB当選あるいはAT当選している旨を示唆する演出連打を(【0095】、図16(a)?(f))、液晶表示器51に表示させるメイン制御部41を備え(【0061】)、
c 液晶表示器51及びメイン制御部41は(【0061】)、
c1 BB当選あるいはAT当選している場合、所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作すると、メータがMAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色にして「MAX」と表示し、AT当選時には「AT確定!」、BB当選時には「BB確定!」、BB+AT当選時には「BB+AT確定!」というメッセージを表示し(【0095】、【0096】、【0109】、図16(d))、
c2 BB当選もAT当選もしていない場合、所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作したがメータが4段階目のMAXに到達しなかったとき、「残念…」というメッセージを表示するとともに、メータ全体を白色にして、「失敗」というメッセージをメータの外枠画像の内側に表示する(【0095】、【0097】、認定事項(1-カ))、
d スロットマシン1(【0033】)。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2-ア)「【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。・・・」

(2-イ)「【0446】
図54は、大当り時連打予告演出Aが実行されるときの演出態様を示す説明図である。D10?D13に示すように、プッシュボタン120の連打によって連打カウンタ値が更新されて、これに伴いゲージ表示も更新される(ステップS8122及びS8123)。この例では、演出終了タイマが9,8,7,6と減少するのに伴って、連打カウンタ値が4,8,12,16と増加し、連打カウンタ値に概ね比例して、ゲージ表示が20%,40%,60%,80%と上昇している。そして、演出終了タイマが残り5秒のときに連打カウンタ値が閾値である20に達している(D14)。このとき、ステップS8124でYESと判定され、ステップS8140でもYESと判定されるため、連打有効フラグがリセットされ(ステップS8141)、表示されている連打示唆画像1100が消去されることになる。また、演出終了タイマが2秒以上残っているため(ステップS8143でYES)、特殊演出実行中フラグがセットされて(ステップS8144)、特殊演出として勝利演出が実行されることになる。
【0447】
D15に示される勝利演出は、演出終了タイマの残り時間(この場合は5秒)で実行される。この勝利演出では、100%まで更新されたゲージ画像1000(連打有効フラグがリセットされる時点におけるゲージ画像1000)が表示されると共に、味方キャラ1200が敵キャラ1300に勝利した映像が表示される。さらに、ゲージ画像1000の下方に、バトルに勝利した旨を報知する「完勝!」の文字も表示される。そして、この勝利演出終了後(演出終了タイマのタイムアウト後)には、大当り図柄(この例では「777」)が停止表示される(D16)」

(2-ウ)【図54】


(2-エ)「【0450】
図56は、はずれ時連打予告演出Aが実行されるときの演出態様の他の例を示す説明図である。D30?D31に示すように、プッシュボタン120の連打によって連打カウンタ値が更新されて、これに伴いゲージ表示も更新される(ステップS8122及びS8123)。この例では、演出終了タイマが9,8と減少するのに伴って、連打カウンタ値が8,16とハイペースで増加し、連打カウンタ値に概ね比例して、ゲージ表示が40%,80%とハイペースで上昇している。そして、演出終了タイマが残り8秒のときに、連打カウンタ値が閾値である16に達している(D31)。このとき、ステップS8124でYESと判定され、ステップS8140でNO、ステップS8150でNOと判定されるため、カウントダウンタイマが設定され(ステップS8151)、カウントダウン実行中フラグがセットされて(ステップS8152)、残り2秒を示すカウントダウン画像1500が表示されることになる。
【0451】
そして、D31?D33に示すように、カウントダウンタイマの減算に応じて、カウントダウン画像1500が更新されて、残り2秒、1秒、0秒というように、連打が有効である期間の残り時間の報知を行うカウントダウン演出が実行される。この例では、図50の「連打カウンタ値が閾値以上の場合」に示されるように、カウントダウンタイマ値と演出終了タイマの残り時間が合致しておらず、カウントダウンタイマ値が0となる時点で、演出終了タイマの残り時間が6秒である(D33)。なお、この例では、連打カウンタ値が閾値以上となった後も、カウントダウン演出実行中(D31?D33)は連打が継続されているため、連打カウンタ値は上昇している。しかし、カウントダウン演出が開始される時点で既に閾値に達しているため、ゲージ表示は更新されず、80%のままである。
【0452】
この例では、カウントダウンタイマ値が0となるときに(ステップS8131でYES)、演出終了タイマの残時間が2秒以上あることから(ステップS8134でYES)、D34に示すように、はずれ時連打予告演出Aに応じた特殊演出である敗北演出が実行されることになる(ステップS8135,S8136)。
【0453】
この敗北演出では、連打有効フラグがリセットされる時点におけるゲージ画像1000が表示される。・・・
【0454】
さらに、敗北演出においては、ゲージ画像1000の下方に、バトルに敗北した旨を報知する「残念!」の文字も表示される。そして、この敗北演出終了後(演出終了タイマのタイムアウト後)には、はずれ図柄(この例では「767」)が停止表示される(D35)。このように、演出終了タイマの残り時間によらず、連打カウンタ値が閾値以上であることを条件として(ステップS8124でYES)、カウントダウン演出を開始する(ステップS8151,S8152)。そして、カウントダウン演出が最終段階(「残り0秒」を示すカウントダウン画像1500の表示)となったことに伴い、連打示唆画像1100を消去して(ステップS8132に伴う処理)、D34の敗北演出を実行する。」

(2-オ)【図56】


(3)甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(3-ア)「【0015】
以下、添付の図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1に示す遊技機1は、遊技媒体として遊技球を用いるパチンコ遊技機であって、・・・」

(3-イ)「【0072】
操作用演出では、まず図30の(D)のように前記表示装置10に、逆ピラミッド型に1?5まで段階的に積み上げれられたメータ画像Q1と、前記遊技操作スイッチ67を示すPUSHボタンの図及び「連打でメータを最大値に引き上げろ」のメッセージ(押下指示表示)が表示され、遊技者に遊技操作スイッチ67を連打して前記メータ画像Q1のメータの段階を引き上げるように指示する。前記メータ画像Q1における1?5の数字はメータの段階を示す値であり、図29に示した前記振り分けテーブルのLv(レベル)1?5に対応し、着色された部分の最上段が現状のメータの段階を表す。図30の(D)のようにメータの全ての段階が未着色の状態は、前記振り分けテーブルのデフォルトに対応する。また、前記特別図柄の変動表示が操作用演出の邪魔にならないようにするため、前記特別図柄は縮小されて前記表示装置10の右下隅で変動表示を続けるように構成されている。」

(3-ウ)「【0079】
図31の(J)は、前記(I)の後8回目と9回目の遊技操作スイッチ67の操作(押下)に対して前記演出反映判定手段により操作演出反映(レベルアップ成功)と判定された場合を示す。この場合、メータの4の段階まで着色され、メータの5の段階については未着色が維持され、前記演出反映判定手段による次回の判定に使用される判定値振り分けデータは、前記演出反映判定手段により操作演出反映(レベルアップ成功)と判定される毎にLvがアップし、10回目の遊技操作スイッチ67の操作(押下)に対して前記演出反映判定手段により使用される判定値振り分けデータがLv4までアップする。
【0080】
なお、前記当否判定手段による当否判定結果が外れの場合には、メータの4の段階(Lv4)が最大メータ(最大Lv)であり、10回目以降の遊技操作スイッチ67の操作(押下)に対しては、前記演出反映判定手段による判定が行われず、操作有効期間(有効時間)終了まで、図31の(K1)のように、メータの4の段階までの着色状態が維持される。操作有効期間(有効時間)終了後に、図31の(L1)のように表示装置10で失敗演出が行われ、その後に前記表示装置10で特別図柄が外れの組み合わせで停止表示される。前記当否判定結果が外れの場合、最大Lv4になるまでの「デフォルト」?「Lv3」までの4回が、本発明における操作演出の反映可能な回数の最大、すなわち最大反映回数となる。
【0081】
一方、前記当否判定手段による当否判定結果が大当たりの場合に変動パターンが選択されている場合には、メータの5の段階(Lv5)が最大メータ(最大Lv)である。図31の(K2)は、10回目の遊技操作スイッチ67の操作(押下)に対して前記演出反映判定手段により操作演出反映(レベルアップ成功)と判定された場合を示す。この場合、メータの5の段階まで着色された後、図31の(L2)のように表示装置10で成功演出が行われ、その後に前記表示装置10で特別図柄が大当たりの組み合わせで停止表示される。また、メータが5の段階になるのが操作有効期間(有効時間)よりも早い場合は、残りの変動演出内で調整演出(残り時間に応じた演出や繰り返し同じ演出を行うことで時間調整をする演出)を行い、予め設定された変動時間内での演出を調整するように構成されている。前記当否判定結果が当たりの場合には、最大Lv5になるまでの「デフォルト」?「Lv4」までの5回が、本発明における操作演出の反映可能な回数の最大、すなわち最大反映回数である。本実施例では、メータの5の段階まで着色された後に成功演出を行うように構成されているが、操作有効期間(有効時間)の終了まで他の演出を表示した後に成功演出を行うように構成してもよいとする。」

(3-エ)【図31】


5 当審の判断
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する(本件発明の構成A?Dに対応させて、見出し(a)?(d)を付した。)。
(a)甲1発明の「メダルをメダル投入部4に投入するかMAXBETスイッチ6操作などにより規定数の賭数(例えば3)を設定し、スタートスイッチ7が操作されると、リール2L?2Rを回転させて図柄を変動表示し、ストップスイッチ8L?8Rが操作されると対応するリールの回転を停止させることで、透視窓3の上中下段に3つの図柄を表示結果として導出表示し、入賞ラインLN上に入賞図柄の組合せが停止し入賞が発生したときには、入賞に応じて、所定枚数のメダルが遊技者に対して付与されて、クレジット加算か、クレジットが上限数(50)に達した場合にはメダル払出口9からメダルが払い出される」ことは、本件発明の「遊技を行うことが可能」に相当し、甲1発明の「スロットマシン1」は、本件発明の「遊技機」に相当する。
してみると、甲1発明の構成aは、本件発明の構成Aに相当する。

(b)甲1発明の「所定操作期間内」の「演出用スイッチ56」の「操作」は、本件発明の「特定動作」に相当し、甲1発明の「メータの外枠画像」及び「メータ」は、本件発明の「特定表示」に相当することから、甲1発明の「所定操作期間内において、演出用スイッチ56が5回操作される毎に、メータを1段階増や」す構成は、本件発明の「遊技者による特定動作に応じて特定表示の態様を変化させること」に相当する。したがって、甲1発明の「所定操作期間内に演出用スイッチ56が5回操作される毎にメータを1段階増やし、4段階まで増えてメータがMAXに到達することによりBB当選あるいはAT当選している旨を示唆する」構成は、本件発明の「遊技者による特定動作に応じて特定表示の態様を変化させることで特典が付与されるか否かを示唆する」構成に相当する。
そして、甲1発明の「連打演出」は、「液晶表示器51」及び「メイン制御部41」によって実行されることから、甲1発明の「液晶表示器51」及び「メイン制御部41」は、本件発明の「示唆手段」に相当する。
してみると、甲1発明の構成bは、本件発明の構成Bに相当する。

(c)上記(b)で説示したとおり、甲1発明の「液晶表示器51」及び「メイン制御部41」は、本件発明の「示唆手段」に相当する。
してみると、甲1発明の構成cは、本件発明の構成Cに相当する。

(c1)甲1発明の「BB当選あるいはAT当選している場合」は、本件発明の「特典が付与される場合」に相当する。
上記(b)で説示したとおり、甲1発明の「所定操作期間内」の「演出用スイッチ56」の「操作」が、本件発明の「特定動作」に相当することから、甲1発明の当該「操作」が「20回」行われることは、本件発明の「特定条件が成立したこと」に相当する。また、上記(b)で説示したとおり、甲1発明の「メータ」は、本件発明の「特定表示」の一部に相当することから、甲1発明の「メータがMAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色にし」た状態は、本件発明の「特定態様」に相当する。
そして、甲1発明の「「MAX」と表示し、AT当選時には「AT確定!」、BB当選時には「BB確定!」、BB+AT当選時には「BB+AT確定!」というメッセージを表示」する構成は、本件発明の「特典が付与されることを示唆」する構成に相当し、甲1発明の「MAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色にし」た「メータ」と、「MAX」、「AT確定!」、「BB確定!」又は「BB+AT確定!」という「メッセージ」とが一緒に表示される構成は、本件発明の「当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで特典が付与されることを示唆」する構成に相当する。
してみると、甲1発明の構成c1は、本件発明の構成C1と、「特典が付与される場合、前記特定動作に応じて特定条件が成立したことに応じて前記特定表示の態様を特定態様に変化させ、」「当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで特典が付与されることを示唆」する点で共通する。

(c2)甲1発明の「BB当選もAT当選もしていない場合」は、本件発明の「特典が付与されない場合」に相当する。
上記(b)で説示したとおり、甲1発明の「所定操作期間内」の「演出用スイッチ56」の「操作」が、本件発明の「特定動作」に相当することから、甲1発明の当該「操作」が「20回」行われることは、本件発明の「前記特定条件が成立」に相当する。また、上記(b)で説示したとおり、甲1発明の「メータ」は、本件発明の「特定表示」の一部に相当するものであり、上記(c1)で説示したとおり、甲1発明の「メータがMAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色にし」た状態が、本件発明の「特定態様」に相当することから、甲1発明の「メータが4段階目のMAXに到達しなかったとき、」「メータ全体を白色に」する構成は、本件発明の「前記特定表示の態様を前記特定態様に変化させ」ない構成に相当する。
そして、甲1発明の「「残念…」というメッセージ」及び「「失敗」というメッセージを」「表示する」構成は、本件発明の「特典が付与されないことを示唆する」構成に相当する。
ここで、甲1発明の「メータ全体を白色にして、「失敗」というメッセージをメータの外枠画像の内側に表示する」構成について更に検討すると、「メータ全体を白色」にした状態であっても、当該「メータ」の背景の色や模様次第で当該「白色」が視認可能であることは技術常識であって、甲第1号証には、「メータ」の背景の色や模様については何ら記載もされておらず、「白色」とすることで「メータ」を消去するといった記載も存在しないことから、甲1発明の「メータ全体を白色」とすることが、「メータ」を消去することと同義であるとは認められない。さらに、上記(b)で説示したとおり、甲1発明の「メータの外枠画像」及び「メータ」が、本件発明の「特定表示」に相当するものであって、「メータ全体を白色にして、「失敗」というメッセージ」が表示された状態(図16(f)の状態)においては、「メータの外枠画像」(「特定表示」の一部)は、表示されたままであって消去されているとは認められない。
してみると、甲1発明の構成c2は、本件発明の構成C2と、「特典が付与されない場合、前記特定条件が成立しても前記特定表示の態様を前記特定態様に変化させずに、」「特典が付与されないことを示唆する」点で共通する。

(d)上記(a)で説示したとおり、甲1発明の「スロットマシン1」は、本件発明の「遊技機」に相当する。
してみると、甲1発明の構成dは、本件発明の構成Dに相当する。

したがって、本件発明と甲1発明とは、
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 遊技者による特定動作に応じて特定表示の態様を変化させることで特典が付与されるか否かを示唆する示唆手段を備え、
C 前記示唆手段は、
C1’ 特典が付与される場合、前記特定動作に応じて特定条件が成立したことに応じて前記特定表示の態様を特定態様に変化させ、当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで特典が付与されることを示唆し、
C2’ 特典が付与されない場合、前記特定条件が成立しても前記特定表示の態様を前記特定態様に変化させずに、特典が付与されないことを示唆する、
D 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成C1)
「特典が付与される場合、」「当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで特典が付与されることを示唆」するのが、本件発明では、「当該特定条件が成立してから所定期間経過した後」であるのに対し、甲1発明では、「所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作」(「当該特定条件が成立」)した後において、「メータがMAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色」とする(「前記特定表示の態様を特定態様に変化」)のと、「「MAX」と表示し、AT当選時には「AT確定!」、BB当選時には「BB確定!」、BB+AT当選時には「BB+AT確定!」というメッセージを表示」(「特典が付与されることを示唆」)するのとが、それぞれどのようなタイミングで実行されるのか明らかではない点。

[相違点2](構成C2)
「特典が付与されない場合、」「前記特定条件が成立しても前記特定表示の態様を前記特定態様に変化させずに、」「特典が付与されないことを示唆する」のが、本件発明では、「当該特定条件が成立してから所定期間経過した後」であるのに対し、甲1発明では、「所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作」(「当該特定条件が成立」)した後において、「「残念…」というメッセージ」及び「「失敗」というメッセージを」「表示する」(「特典が付与されないことを示唆」)のが、どのようなタイミングで実行されるのか明らかではない点。

[相違点3](構成C2)
「特典が付与されないことを示唆する」際に、本件発明では、「当該特定表示を消去」するのに対し、甲1発明では、「メータの外枠画像」及び「メータ」(「当該特定表示」)を消去しない点。

(2)判断
上記相違点1乃至3について検討する。
ア 相違点1について
(ア)甲第2、3号証
申立人が周知技術の根拠として提示する甲第2号証には、「大当り時連打予告演出Aが実行されるとき」、「プッシュボタン120の連打によって」「演出終了タイマが残り5秒のときに連打カウンタ値が閾値である20に達し」た(本件発明の「特定条件が成立」に相当。)状態(「D14」の状態)から、「100%まで更新されたゲージ画像1000(連打有効フラグがリセットされる時点におけるゲージ画像1000)が表示されると共に」(本件発明の「当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで」に相当。)、「味方キャラ1200が敵キャラ1300に勝利した映像が表示され」「ゲージ画像1000の下方に、バトルに勝利した旨を報知する「完勝!」の文字も表示される」(本件発明の「特典が付与されることを示唆」に相当。)「勝利演出」(「D15」の状態)を実行する「パチンコ遊技機1」が記載されているが、「連打カウンタ値が閾値である20に達し」たタイミングと、「味方キャラ1200が敵キャラ1300に勝利した映像が表示され」「ゲージ画像1000の下方に、バトルに勝利した旨を報知する「完勝!」の文字も表示される」タイミングとがどのような関係にあるのかは特定されていない。
また、同じく申立人が周知技術の根拠として提示する甲第3号証には、「当否判定結果が大当たりの場合」、「10回目の遊技操作スイッチ67の操作(押下)」(本件発明の「特定条件が成立」に相当。)で「メータの5の段階まで着色された後」、「表示装置10で成功演出が行われ」る「パチンコ遊技機」が記載されているが、当該「成功演出」がどのような演出であるかについては具体的には開示されておらず、当該「成功演出」において「メータの5の段階まで着色された」画像が表示されるか不明であることに加え、「メータの5の段階まで着色された」タイミングと、「表示装置10で成功演出が行われ」るタイミングとがどのような関係にあるのかは特定されていない。
してみると、甲第2号証及び甲第3号証には、上記相違点1に係る構成に関する周知技術が開示されているとは認められない。

したがって、上記相違点1に係る構成は、甲1発明、又は、甲1発明及び周知技術(甲第2及び3号証)に基いて、当業者が容易に想到し得たとする異議申立理由は採用できない。また、上記相違点1に係る構成は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。

(イ)申立人の主張
申立人は、制御装置等の処理能力等によって一定の処理時間を要することが「所定期間経過」である旨を主張する(特許異議申立書第13頁第5?13行)。しかしながら、本件発明の構成C1(「前記特定動作に応じて特定条件が成立したことに応じて前記特定表示の態様を特定態様に変化させ、当該特定条件が成立してから所定期間経過した後、当該特定表示の態様を前記特定態様に変化させたままで特典が付与されることを示唆」)における(1)「前記特定動作に応じて特定条件が成立」、(2)「前記特定表示の態様を特定態様に変化」、(3)「特典が付与されることを示唆」の実行タイミングは、(1)、(2)、(3)の順であるのに対し、甲1発明では、「所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作」((1)「当該特定条件が成立」)した後において、「メータがMAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色」とする((2)「前記特定表示の態様を特定態様に変化」)タイミングと、「「MAX」と表示し、AT当選時には「AT確定!」、BB当選時には「BB確定!」、BB+AT当選時には「BB+AT確定!」というメッセージを表示」((3)「特典が付与されることを示唆」)するタイミングが特定されていない以上、申立人が主張するように制御装置等の処理能力等によって一定の処理時間が生じたとしても、甲1発明から上記相違点1に係る構成が導かれるものではない。

(ウ)効果
申立人は、本件特許の「なお、図4(b)の態様になることなく、演出用スイッチ56への20回目の操作が行われたときに図4(c)に示す表示態様に変化させるようにしてもよい。」(段落【0037】)との記載を根拠として、「かかる「所定期間」は、期間を設けないことまでをも含む概念のものであるか、期間を設けないことを含めて任意に選択可能な事項」であり、「格別の技術的意義を有するものではない」と主張する(特許異議申立書第12頁第21?26行)。しかしながら、申立人が根拠とする上記記載は、「・・・にしてもよい。」と記載されており、実施の形態における選択肢を示しただけであって、本件発明の「所定期間」が期間を設けないことまでをも含むことを示すものとはいえない。そして、本件発明は、上記相違点1に係る構成(構成C1)を備えることで、「遊技者がメータが最大値に到達した態様に変化したことを認識することができる」(段落【0037】)という甲1発明や甲第2、3号証に記載された事項から予測し得ない格別の効果を奏することから、本件発明における「所定期間」という発明特定事項が、申立人が主張するように「格別の技術的意義を有するものではない」とは認められない。

イ 相違点2について
(ア)甲第2、3号証
甲第2号証には、「はずれ時連打予告演出Aが実行されるとき」、「プッシュボタン120の連打によって」「連打カウンタ値が閾値である16に達し」た場合(本件発明の「前記特定条件が成立」に相当。)には、「カウントダウン演出実行中(D31?D33)」に「連打が継続され」ても「ゲージ表示は更新されず、80%のまま」であり、その後「敗北演出が実行され」、「この敗北演出では、連打有効フラグがリセットされる時点におけるゲージ画像1000」(本件発明の「当該特定表示」に相当。)「が表示され」、「ゲージ画像1000の下方に、バトルに敗北した旨を報知する「残念!」の文字も表示される」(本件発明の「特典が付与されないことを示唆」する構成に相当。)(「D34」の状態)「パチンコ遊技機1」が記載されている(以下、「甲第2号証に記載の事項」という。)。
ここで、甲第2号証に記載の事項は、「連打カウンタ値が閾値」に達してから、「バトルに敗北した旨を報知する「残念!」の文字」が表示されるまでの間に、「カウントダウン演出」が実行されるものであることから、甲第2号証に記載の事項の「カウントダウン演出」が実行される期間は、本件発明の「所定期間」に相当する。してみると、甲第2号証に記載の事項は、上記相違点2に係る構成を備えると認められる。
また、甲第3号証には、「当否判定結果が外れの場合には、メータの4の段階(Lv4)が最大メータ(最大Lv)であり、10回目以降の遊技操作スイッチ67の操作(押下)に対しては、」「メータの4の段階までの着色状態が維持され」、「操作有効期間(有効時間)終了後に、図31の(L1)のように表示装置10で失敗演出が行われ」る「パチンコ遊技機」が記載されている(以下、「甲第3号証に記載の事項」という。)。
ここで、甲第3号証に記載の事項は、「遊技操作スイッチ67」が「10回」操作されてから(本件発明の「前記特定条件が成立」に相当。)、「操作有効期間」の「終了」まで、「メータの4の段階までの着色状態が維持され」ることから、甲第3号証に記載の事項の「遊技操作スイッチ67」が「10回」操作されてから「操作有効期間」の「終了」までの期間は、本件発明の「所定期間」に相当する。してみると、甲第3号証に記載の事項は、上記相違点2に係る構成を備えると認められる。

甲第1号証には、「パチンコ遊技機に適用することもできる」(【0144】)と記載されていることから、甲1発明と甲第2、3号証に記載の事項は、遊技者のスイッチの連打に応じてメータ画像を変化させる連打演出を備えたパチンコ遊技機に関するものである点で、技術分野及び機能が共通する。そして、連打演出の興趣を高めることは周知の課題であって甲1発明においても当然考慮される事項であることから、甲1発明において甲第2号証に記載の事項の「カウントダウン演出」又は甲第3号証に記載の事項の「操作有効期間」を採用し、「所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作」して、「メータが4段階目のMAXに到達」せず「メータ全体を白色に」した状態を、「カウントダウン演出」又は「操作有効期間」の終了まで表示し、当該「カウントダウン演出」又は「操作有効期間」の終了後に、「「残念…」というメッセージ」及び「「失敗」というメッセージ」を表示することで、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点2に係る構成は、甲1発明と、甲第2号証に記載の事項又は甲第3号証に記載の事項とに基いて、当業者が容易に想到し得た事項である。

ウ 相違点3について
(ア)甲1発明
甲第1号証には、「「残念…」というメッセージ」及び「「失敗」というメッセージを」「表示する」(「特典が付与されないことを示唆する」)際に、「メータの外枠画像」及び「メータ」(「当該特定表示」)を消去することについて記載も示唆もされておらず、上記相違点3に係る構成は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。

(イ)甲第2、3号証
甲第2号証には、「はずれ時連打予告演出Aが実行されるとき」、「プッシュボタン120の連打によって」「連打カウンタ値が閾値である16に達し」た場合には、「カウントダウン演出実行中(D31?D33)」に「連打が継続され」ても「ゲージ表示は更新されず、80%のまま」であり、その後「敗北演出が実行され」、「この敗北演出では、連打有効フラグがリセットされる時点におけるゲージ画像1000」(本件発明の「当該特定表示」に相当。)「が表示され」、「ゲージ画像1000の下方に、バトルに敗北した旨を報知する「残念!」の文字も表示される」(本件発明の「特典が付与されないことを示唆」する構成に相当。)(「D34」の状態)構成が記載されているものの、「敗北演出」においては、「連打有効フラグがリセットされる時点におけるゲージ画像1000が表示」されていることから、甲第2号証には、上記相違点2に係る構成における、「特典が付与されないことを示唆」する際に「当該特定表示を消去」する構成については記載も示唆もされていない。

また、甲第3号証には、「当否判定結果が外れの場合には、メータの4の段階(Lv4)が最大メータ(最大Lv)であり、10回目以降の遊技操作スイッチ67の操作(押下)に対しては、」「メータの4の段階までの着色状態が維持され」、「操作有効期間(有効時間)終了後に、図31の(L1)のように表示装置10で失敗演出が行われ」る構成が開示されているものの、当該「失敗演出」がどのような演出であるかについては具体的に開示されておらず、仮に、図31の(L1)で当該「失敗演出」において「メータの4の段階までの着色状態」にされた画像が消去されると解した場合、図31の(L2)の「成功演出」においても「メータの5の段階まで着色された」画像が消去されると解することが自然である。
そうすると、甲第3号証には、当該「失敗演出」においてのみ「メータ」の画像を消去する構成は開示されているとは認められず、甲1発明に甲第3号証に記載された構成を適用したとしても、甲1発明の構成c1(「BB当選あるいはAT当選している場合、所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作すると、メータがMAXの4段階目に到達してメータ全体を虹色にして「MAX」と表示し、AT当選時には「AT確定!」、BB当選時には「BB確定!」、BB+AT当選時には「BB+AT確定!」というメッセージを表示」)及び構成c2(「BB当選もAT当選もしていない場合、所定操作期間内に演出用スイッチ56を20回操作したがメータが4段階目のMAXに到達しなかったとき、「残念…」というメッセージを表示するとともに、メータ全体を白色にして、「失敗」というメッセージをメータの外枠画像の内側に表示する」)の両方において「メータ」及び「メータの外枠画像」が消去されないか、或いは、構成c1及び構成c2の両方において「メータ」及び「メータの外枠画像」が消去されるか、のいずれか一方が実行されるにすぎず、甲1発明の「メータ」及び「メータの外枠画像」が構成c1では消去されずに構成c2では消去される構成に至るとは認められない。
したがって、上記相違点3に係る構成は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、甲1発明において、「色、模様、パターンなどの表示が、それまでの状態から白色になるということは、すべて表示が消えているということ」と主張するが(特許異議申立書第11頁第3?5行)、上記5(1)(c2)で説示したとおり、甲1発明の「メータ全体を白色」とすることが、「メータ」を消去することと同義であるとは認められないことから、申立人の上記主張は採用できない。

(エ)効果
本件発明は、上記相違点3に係る構成により、「演出用スイッチへの操作という特定動作に応じてメータという特定表示の態様を変化させ、ATという特典が付与されないときは、特定表示の態様をMAXに到達させた態様である特定態様に変化させず、特定態様に変化しなかった特定表示を表示させたままであった。その結果、遊技者が特定表示の態様が特定態様に変化しなかったことを十分認識しているにも関わらず、特定表示が表示されたままとなることにより、遊技の興趣の低下を招いていた」(段落【0005】)という課題に対して、「特定態様に変化しなかった場合における遊技の興趣の低下を防止する」(段落【0006】)という格別の効果を奏するものであり、当該効果は、甲1発明や甲第2、3号証に記載の事項から予測し得るものではない。

(3)まとめ
以上のことから、本件発明は、甲1発明、又は、甲1発明及び周知技術(甲第2及び3号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとする異議申立理由は採用できない。また、本件発明は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-08-05 
出願番号 特願2017-86548(P2017-86548)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 櫻井 茂樹  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 小島 寛史
鷲崎 亮
登録日 2019-11-08 
登録番号 特許第6611754号(P6611754)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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