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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1365278
審判番号 不服2019-14704  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-05 
確定日 2020-09-01 
事件の表示 特願2018- 47206「基板処理装置および半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019-161071、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成30年3月14日にされた特許出願であって,平成31年2月20日に手続補正書が提出され,令和元年5月23日付けで拒絶理由通知がされ,同年7月25日に意見書及び手続補正書が提出され,同年8月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和元年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和元年8月21日付け拒絶査定)の概要は,本願の請求項1?20に係る発明は,以下の引用例1?3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである

引用例一覧
1.特開2007-138295号公報
2.米国特許出願公開第2012/0231628号明細書
3.特開平03-281780号公報


第3 審判請求時の補正について
審判請求時(令和元年11月5日)にされた補正は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に「プラズマを生成する一つの工程の中で」,「前記一つの工程の中で」との事項を追加する補正,及び,請求項12に「前記プラズマを生成する工程の際に,当該プラズマを生成する一つの工程の中で」,「当該ガスの」,「前記一つの工程の中で」との事項を追加する補正は,いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,以下の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」において示すとおり,上記補正後の請求項1?20に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。)は,令和元年11月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される発明であり,そのうちの本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基板を処理する処理室と,
前記基板を支持する基板支持部と,
前記基板支持部を昇降させる昇降部と,
前記基板にガスを供給するガス供給口と,
前記ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と,
前記ガス供給口からガスを供給してプラズマを生成する一つの工程の中で前記プラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記昇降部の昇降動作を制御する制御部と,
を有する基板処理装置。」

本願発明2?20の概要は,以下のとおりである。
・本願発明2?11は,本願発明1を減縮した発明である。
・本願発明12は,本願発明1のうち,特に制御部における制御に対応する「半導体装置の製造方法」の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なる発明である。
・本願発明13?20は,本願発明12を減縮した発明である。


第5 引用例の記載と引用発明
1.引用例1について
(1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には,次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同じ。)

「【0002】
本発明は,堆積システムおよびその操作方法に関し,より詳しくは,本発明は,材料堆積のための複数の処理空間を有する堆積システムに関する。」

「【0014】
図面を参照すると,参照番号がいくつかの図の全体にわたって同一であるか対応する部品を示すようになされ,図1は,蒸着プロセス,例えば化学気相成長(CVD)プロセス,プラズマ増強CVD(PECVD)プロセス,原子層堆積(ALD)プロセス,またはプラズマ増強ALD(PEALD)プロセスを使用して,基板上に薄膜,例えばバリア膜を堆積させるための堆積システム1を示す。配線工程(BEOL)オペレーションにおける半導体デバイスに対する相互接続(inter-connection)および内部接続(intra-connect)構造のメタライゼーションにおいて,薄い一様な(conformal)バリア層は,層間または同層間誘電体内の金属のマイグレーションを最小にするためにトレンチまたはビアを配線する上に堆積されることができ,薄い一様なシード層は,バルク金属の埋め込みに対する許容できる密着性を有する膜を提供するためにトレンチまたはビアを配線する上に堆積されることができ,および/または,薄い一様な密着層は,金属シード堆積に対する許容できる密着性を有する膜を提供するためにトレンチまたはビアを配線する上に堆積されることができる。これらのプロセスに加えて,銅のようなバルク金属は,トレンチまたはビアを配線する内部に堆積されなければならない。

「【0018】
図1において,本発明の1つの実施形態に係る堆積システム1は,薄膜が形成される基板25を支持するように構成された基板ステージ20を有する処理チャンバ10を含む。加えて,図1 にて図示したように,堆積システム1は,処理チャンバ10および基板ステージ20に組み合わせられ,並びに,基板25に隣接する処理空間のボリュームを調整するように構成されたプロセスボリューム調整システム80を含む。例えば,プロセスボリューム調整システム80は,第1のボリュームを有する第1の処理空間85( 図1を参照) を形成する第1の位置と,第2のボリュームを有する第2 の処理空間85’( 図2を参照) を形成する第2の位置との間で基板ステージ20を垂直に移動するように構成されることができる。」

「【0022】
処理チャンバ10は,第1のプロセス材料ガス供給システム40と,第2のプロセス材料ガス供給システム42と,パージガス供給システム44とに組み合わせられる上部チャンバアセンブリ30を更に含むことができる。このように,上部チャンバアセンブリ30は,処理空間85に第1のプロセス材料および第2のプロセス材料を提供することができる。シャワーヘッドデザインは,周知のように,処理空間85に均等に第1および第2のプロセスガス材料を分配するために用いることができる。典型的なシャワーヘッドは,係属中の米国特許出願公報番号20040123803号において更に詳細に記載されている。そして,それの全体の内容は,その全体の参照によってここに取り入れられる。そして先の米国特許出願シリアル番号11/090,255号を参照することにより,ここに取り入れられる。」

「【0024】
本発明の1つの実施形態に係る,第1のプロセス材料ガス供給システム40と,第2のプロセス材料ガス供給システム42とは,基板25に第1および第2の膜をシーケンシャルに,および,任意に交互に堆積させるために,処理チャンバ10に第1のプロセスガス材料を,処理チャンバ10に第2のプロセスガス材料を,シーケンシャルに,および,任意に交互に導入するように構成されることができる。第1のプロセスガス材料の導入と第2のプロセスガス材料の導入との交替は,周期的であり得て,または,それは,第1および第2のプロセスガス材料の導入の間の可変的な時間によって周期的であり得る。第1および第2のプロセスガス材料は,例えば,ガス状の膜プリカーサ,例えば基板25上に形成される膜内に見つかる主要な原子であるか分子種を有する組成を含むことができる。ガス状の膜プリカーサは,固相,液相または気相として始まることができ,そして,気相で処理チャンバ10に供給されることができる。第1および第2のプロセスガス材料は,例えば,還元ガスを含むことができる。例えば,還元ガスは,固相,液相,または気相をとして始まることができ,そして,気相で処理チャンバ10に供給されることができる。ガス状の膜プリカーサ,および還元ガスの実施例は,下で挙げられる。」

「【0027】
さらに図1を参照して,本発明の1つの実施形態の堆積システム1は,処理チャンバ10に第1のプロセスガス材料および第2のプロセスガス材料のシーケンシャルおよびオプションの交互導入の少なくとも一部の間,プラズマを生成するように構成されたプラズマ発生システムを含むことができる。プラズマ発生システムは,処理チャンバ10に組み合わせられ,第1のプロセスガス材料または第2のプロセスガス材料に,または両方に,または第1のプロセスガス材料のガス状のコンポーネントまたは第2 のプロセスガス材料のガス状のコンポーネントにパワーを結合させるように構成された第1の電源50を含むことができる。第1の電源50は,ラジオ周波数(RF)発生器,および,インピーダンス整合ネットワーク(図示せず)を含むことができ,および,RF電力が処理チャンバ10のプラズマに結合する電極( 図示せず) を更に含むことができる。電極は,上部アセンブリ30に形成されることができ,および,基板ステージ20に向かい合わせるように構成されることができる。」

「【0035】
ここで図5を参照すると,堆積システム1または1 ’は,複数の蒸着プロセス,例えば熱的にアクティブにされた蒸着プロセス(すなわちプラズマを利用しない堆積プロセス)に続いて,プラズマ増強蒸着プロセス(すなわちプラズマ利用する堆積プロセス)を実行するように構成されることができる。熱的にアクティブにされた蒸着プロセスは,熱原子層堆積(ALD)プロセスまたは熱化学気相成長(CVD)プロセスを含むことができ,プラズマ増強蒸着プロセスは,プラズマ増強ALDプロセスまたはプラズマ増強CVDプロセスを含むことができる。一つの実施例において,複数のタンタルを含む膜を堆積させるときに,熱ALDまたは熱CVDプロセスのような第1の堆積プロセスは,Ta(C)Nを含んでいる第1の膜を堆積させるために利用されることができ,プラズマ拡張ALDプロセスのような第2の堆積プロセスは,第1の膜の上にTaを含んでいる第2の膜を堆積させるために利用されることができる。」

「【0036】
図5にて図示したように,第1の堆積プロセスを実行するときに,第1のプロセスガス材料は,処理チャンバに導入され,そこにおいて,第1のプロセスガス材料は,タンタルから成る膜プリカーサ,例えば金属ハロゲン化物(例えば五塩化タンタル)または有機金属(例えば,Ta(NC(CH_(3))_(2)C_(2)H_(5))(N(CH_(3))_(2))_(3);以下でTAIMATA(登録商標)と称する;さらに詳細は,米国特許番号6,593,484号を参照)および還元ガスを含む。還元ガスは,例えば,水素またはアンモニアを含む。」

「【0039】
次に,図5にて図示したように,第2の堆積プロセスを実行するときに,第2のプロセスガス材料は処理チャンバに導入される。第2のプロセスガス材料が並列に,または処理空間がV1からV2にボリュームを増加するときに直ちに導入される。第2のプロセスガス材料は,タンタルから成る膜プリカーサ,例えば金属ハロゲン化物(例えば五塩化タンタル),または有機金属(例えば,Ta(NC(CH_(3))_(2)C_(2)H_(5))(N(CH_(3))_(2))_(3);以下でTAIMATA(登録商標)と称する;さらに詳細は,米国特許番号6,593,484号を参照)および還元ガスを含む。還元ガスは,例えば,水素またはアンモニアを含むことができる。」

「【0057】
さらに,図5に示される上記の交互プロセスで,プロセスボリュームは,第1の時間の間の第1のプロセスガス材料の導入および任意に第2の時間の間のパージガスの導入の間の第1のボリューム(V1)と,第3の時間の間の第2のプロセスガス材料の導入および任意に第4の期間の間のパージガスの導入の間の第2のボリューム(V2)と,の間に変化することができる。V1およびV2に対する最適のボリュームは,PEALDプロセスの各々のプロセスステップに対する処理空間に対して選ばれることができる。
【0058】
例えば,第1のプロセスガス材料が処理空間を通り抜け,そして第1のプロセスガス材料のある割合いが基板の表面上に吸着されるように,第1のボリューム(V1)は十分に小さくされ得る。処理空間の第1のボリュームが減少されるとき,基板表面上の吸着に対して必要な第1のプロセスガス材料の量は減少し,第1の処理空間の中で第1のプロセスガス材料を交換することを必要とする時間は,減少される。例えば,処理空間の第1のボリュームが減少されるとき,それ故,滞留時間は減少される。そして,第1の期間の短縮を可能にする。
【0059】
さらに,例えば,第2のボリューム(V2) は,第2のプロセス材料からのプラズマの形成が基板より上に均一なプラズマの形成に至るボリュームにセットされ得る。熱処理プロセスジオメトリーに相当する均一性のプラズマプロセスジオメトリーを提供することが可能である本発明に係る能力は,異なる処理システムの間のプロセスウェハを移送することを必要とせず,同じシステムでの連続的な熱,および,プラズマプロセスを実行することを本発明に許容する。そして,このことによりプロセス時間を節約し,プロセス膜の間のインターフェースで表面汚染を減少する。そして,その結果として膜に対する改良された材料特性に至る。
【0060】
本発明の一実施態様において,処理空間の第2のボリュームV2は,0.1を超え,好ましくは0.5を超える,幅に対する高さのアスペクト比を有する処理空間を規定する。例えば,アスペクト比が減少するとき,プラズマ均一性が悪化するように観測され,一方,アスペクト比が増加させるとき,プラズマ均一性は,改良するように観測された。
【0061】
半導体ウェハを含む基板を処理するとき,処理空間は,実質的に円筒状であり,そして,基板と,上部アセンブリとの間の直径,および,高さまたは間隔によって特徴づけられる。間隔(または高さ)が,処理空間のボリュームを調整するための変数パラメータであり得るのに反して,直径は,基板のサイズに関連する。第1のプロセス材料の導入の間の第1のボリュームは,例えば,基板ステージ20から上部アセンブリ30まで20mm以下の間隔に,および,第2のプロセス材料の導入の間の第2のボリュームは,例えば,20mmより大きい間隔を有することができる。」

「【0071】
図1-図4に示すように,堆積システム1および1’は,処理チャンバ10に組み合わせられることができるコントローラ70と,基板ステージ20と,上部アセンブリ30と,第1のプロセス材料供給システム40と,第2のプロセス材料供給システム42と,パージガス供給システム44と,第1の電源50と,基板温度コントロールシステム60と,および/またはプロセスボリューム調整システム80とをを含む。
【0072】
コントローラ70は,マイクロプロセッサ,メモリ,および,膜堆積のための上記で議論されたプロセスを制御しモニタするために堆積システム1(1’)と通信し,堆積システム1(1’)への入力をアクティブにし,同じく堆積システム1(1’)からの出力をモニタするために十分な制御電圧を生成することが可能なデジタルI/Oポートを含むことができる。例えば,コントローラ70は,図6に関して上で記載されているステップを達成するように実行するプログラム命令を有するコンピュータ読み取り可能なメディアを含むことができる。さらに,コントローラ70は,処理チャンバ10,基板ステージ20,上部アセンブリ30,第1のプロセス材料ガス供給システム40,第2のプロセス材料供給ガスシステム42,パージガス供給システム44,第1の電源50,第2の電源52,基板温度コントローラ60,および/または圧力制御システム32に組み合わせられることができ,それらと情報を交換することができる。例えば,メモリに格納されたプログラムは,上記のプラズマ無し,またはプラズマ増強堆積プロセスの1つを実行するために,プロセスレシピに係る堆積システム1(1’)の上述したコンポーネントへの入力をアクティブにするために利用されることができる。」

(2)摘記の整理と引用発明
以上の摘記を整理すると,引用例1には次の事項が記載されているものと理解できる。

ア 堆積システム1が,蒸着プロセスを使用して基板25上に薄膜を堆積させるためのものであること(段落[0014])。
イ 堆積システム1が,処理チャンバ10に組み合わせられることができるコントローラ70,基板ステージ20と,上部アセンブリ30と,第1のプロセス材料供給システム40と,第2のプロセス材料供給システム42と,パージガス供給システム44と,第1の電源50と,基板温度コントロールシステム60と,および/またはプロセスボリューム調整システム80とを含むこと(段落[0071])。
ウ 基板ステージ20が基板25を支持するように構成されていること(段落[0018])。
エ プロセスボリューム調整システム80が,基板25に隣接する処理空間のボリュームを調整するように構成されていること(段落[0018])。また,処理空間のボリュームを調整するための変数パラメータが,基板ステージ20から上部アセンブリ30までの距離であること(段落[0061])。
オ 処理チャンバ10が,上部チャンバアセンブリ30を含むこと,及び,上部チャンバアセンブリ30が,処理空間85に第1のプロセス材料ガス及び第2のプロセス材料ガスを提供するものであること(段落[0022])。
カ 堆積システム1が,処理チャンバ10に第1のプロセス材料ガス及び第2のプロセス材料ガスを導入する少なくとも一部の間,プラズマを生成するプラズマ発生システムを含むこと(段落[0027])。
キ 第1の堆積プロセスを実行するときに,第1のプロセスガス材料が処理チャンバ10に導入され,第2の堆積プロセスを実行するときに,第2のプロセスガス材料が処理チャンバ10に導入されること(段落[0036],[0039])。
ク 第1の時間の間の第1のプロセスガス材料の導入の間の第1のボリューム(V1)と,第3の時間の間の第2のプロセスガス材料の導入の間の第2のボリューム(V2)と,の間にプロセスボリュームを変化させること(段落[0057])。
ケ 第2のボリューム(V2)が,第2のプロセス材料からのプラズマ形成が基板より上に均一なプラズマの形成に至るボリュームにセットされ得ること(段落[0059])
コ コントローラ70が,プロセスを制御するために堆積システム1と通信すること。また,コントローラ70が,基板ステージ20に組み合わせられることができ,それらと情報を交換することができること(段落[0072])。

上記オについて,第1のプロセス材料ガス及び第2のプロセス材料ガスは,基板25に第1及び第2の膜を堆積させるためのものであるから(段落[0024]),上部チャンバアセンブリ30は,基板25に第1のプロセス材料ガス及び第2のプロセス材料ガスを提供するものであるといえる。

上記クについて,上記キから,上記「第1の時間の間の第1のプロセスガス材料の導入の間」が,「第1の堆積プロセスを実行する時」であり,上記「第2の時間の間の第2のプロセスガス材料の導入の間」が,「第2の堆積プロセスを実行する時」であることが理解できる。また,上記ケから,第2のボリュームで実行される第2の堆積プロセスが,プラズマプロセスであることが理解できる。

上記ク,コから,コントローラ70は,第1の堆積プロセスを実行する時には第1のボリューム,第2の堆積プロセスを実行する時には第2のボリュームとなるように基板ステージ20を制御しているものと理解できる。また,上記エから,プロセスボリュームを変化させることとは,基板ステージ20から上部アセンブリ30までの距離を変化させることであると理解できる。

以上によれば,上記引用例1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「処理チャンバ10と,
基板25を支持するように構成された基板ステージ20と,
前記基板25に第1のプロセス材料ガス及び第2のプロセス材料ガスを提供する上部チャンバアセンブリ30と,
前記基板ステージ20から前記上部チャンバアセンブリ30までの距離を調整するプロセスボリューム調整システム80と,
前記処理チャンバ10に前記第1のプロセス材料ガス及び前記第2のプロセスガス材料を導入する少なくとも一部の間,プラズマを生成するように構成されたプラズマ発生システムと,
前記第1のプロセス材料ガスを用いた第1の堆積プロセスの間の第1のボリューム(V1)と,前記第2のプロセスガス材料を用いたプラズマプロセスである第2の堆積プロセスの間の第2のボリューム(V2)とにプロセスボリュームを変化させるように,前記基板ステージ20から前記上部チャンバアセンブリ30までの距離を変化させるように前記プロセスボリューム調整システム80を制御するコントローラ70と,
を含む堆積システム1。」

2.引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例2には次の記載がある。(和訳は当審による。)

“[0018]Referring now to FIGS. 1 and 2, an example of a processing chamber 100 according to the present disclosure is shown. The processing chamber 100 reduces process volume, which reduces the cost of process chemicals (such as precursor) that are used during substrate processing. The processing chamber 100 includes side chamber walls 104 and a bottom surface 106. The processing chamber 100 includes a lid 112 that is shown in a closed position. One or more seals 114 may be used to seal the lid 112. The processing chamber 100 may include an isolation valve 115 and a slit valve plate 117, although other types of valves and plates may be used. The processing chamber 100 further includes a pedestal 116 that moves between a loading position (as shown in FIG. 1) and a processing position (as shown in FIG. 2).”
(当審訳:次に,図1及び図2を参照すると,本開示による処理チャンバ100の一例が示されている。処理チャンバ100はプロセス容積を削減し,それによりプロセスで用いる化学物質(例えば前駆体)のコストを削減する。処理チャンバ100は,チャンバ側壁104と底面106とを含む。処理チャンバ100は,閉じた位置に示されている蓋112を含む。1つ以上のシール114は,蓋112を封止するために使用することができる。処理チャンバ100は,遮断バルブ115とスリットバルブプレート117を含むことができるが,他のタイプのバルブおよびプレートが使用されてもよい。処理チャンバ100は,さらに,ローディング位置(図1に示す)と処理位置(図2に示す)との間を移動する基台116を含む。)

“[0022] In FIG.1, a first inert volume 142 is defined between the lift actuator 120, the adjustable seal structure 124, the bottom surface of the pedestal 116 and the bottom surface 106 of the processing chamber 100. A first process volume 144 is defined between the lid 112, side walls 104, the bottom surface 106 of the processing chamber and the adjustable seal structure 124. As can be seen, the first inert volume 142 of FIG. 1 is smaller than a second inert volume 142 of FIG.2 while the first process volume 144 of FIG.1 is larger than a second process volume 144 in FIG.2.”
(当審訳:図1において,第1の不活性容積142は,リフトアクチュエータ120,調節可能なシール構造124と,基台116の下面と処理チャンバ100の底面106との間に画定される。第1処理容積144は,蓋112と,側壁104と,処理チャンバの底部表面106と,調節可能なシール構造124との間に画定される。図から分かるように,図1の第1の不活性容積142は,図2の第2の不活性容積142よりも小さく,これに対し,図1の第1処理容積144は図2の第2の処理容積144よりも大きい。)

“[0023] To move from the substrate processing position shown in FIG.2 to the substrate loading position shown in FIG.1, the lift actuator 120 expands to move the pedestal 116 while the adjustable seal structure 124 contracts to maintain a seal. An upper surface 138 of the pedestal 116 moves away from the lid 112.”
(当審訳:図2に示された基板処理位置から図1に示された基板のローディング位置に動かすため,調節可能なシール構造124が収縮して封止を維持しつつ,リフトアクチュエータ120が基台116を動かすために伸長する。基台116の上面138は,蓋112から離れる方向に移動する。)

“[0024] In other words, the processing chamber 100 reduces processing volume by adding a secondary and isolated(sealed) inert volume under the pedestal 116 that expands from that shown in FIG.1 as the pedestal 116 is raised into the substrate processing position. The sealed and isolated inert volume occupies the space that would otherwise be open under the pedestal 116. The process volume 144 and the inert volume 142 may be sealed from one another using O-ring seals such as seals 128 and 134 and the upper and lower portions of the first bellows 121.”
(当審訳:つまり,処理チャンバ100は,基台116が基板処理位置に持ち上げられるにつれて図1に見られる状態から拡張する,基台116下方の副次的かつ隔離(封止)された不活性容積が付加することで処理容積を削減する。封止され隔離された不活性容積は,そうでなければ開放されていた基台116の下の空間を占有する。プロセス容積144および不活性容積142は,シール128及び134のようなOリングシールと,第1のベローズ121の上側部分及び下側部分を用いて互いに封止することができる。)

“[0030]Referring now to FIG.4, an example ofa method 300 is shown. At 302, control adjusts a pressure difference between the inert volume and the process volume. At 304, control determines whether a position change is needed. At 306, if the pedestal is being moved to a loading position, control moves the lift actuator to the extended position at 310.At 314, control moves the adjustable seal to a contracted position. Control returns to 304. If 306 is false and if the pedestal is being moved to the process position, control moves the actuator to the contracted position at 320.At 324, control moves the adjustable seal to the extended position. As can be appreciated, coordinated movement of the lift actuator and the adjustable seal may be performed if desired.”
(当審訳: ここで図4を参照すると,方法300の一例が示されている。302で,制御は,不活性容積および処理容積との間の圧力差を調整する。304で,制御は,位置変更が必要であるか否かを判定する。306では,基台がローディング位置に移動されている場合,制御は,310でリフトアクチュエータを伸張位置へ動かす。314で,制御は,調節可能なシールを収縮した位置へ動かす。制御は304に戻る。306が偽,かつ基台が処理位置に移動されている場合,制御は,320でアクチュエータを収縮位置に動かす。324で,制御は,調節可能なシールを拡張位置に動かす。理解されるように,リフトアクチュエータと調節可能なシールの協調した動作を所望により行うことができる。)

以上の記載から,引用例2には,基板処理位置において基台をローディング位置よりも持ち上げて,基板処理位置における処理容積をローディング位置における処理容積よりも削減し,基板処理時に用いる化学物質の量を削減する技術が,公知技術として記載されているものと理解できる。


3.引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例3には,次の記載がある。

「〔発明が解決しようとする課題〕
上述した反応管形状,サセプタ形状及び両者間の距離による幾何学的なガスフローの均一化は,特定の条件下においてのみ有効で,全ガス圧やサセプタ温度の影響を受けるので汎用的とは言い離い。本発明の目的は広範囲なガス圧領域,サセプタ温度領域に対応して均一なガスフローを得ることが可能なCVD装置を提供することにある

〔課題を解決するための手段〕
CVD装置において,反応管内にサセプタと対向し且つ同心円状に分布したガスノズルを設け,該半径方向に分割した複数のノズル群毎にガス流量及びコンダクタンスを調整できる機能を有するCVD装置を採用することにより上記課題を解決した。
〔作用〕
円筒型反応管においてガスの流れに垂直に置かれたサセプタ上におけるガス分圧の分布は同心円状の分布になっている。そこでサセプタと対向し同心円状に分布したガスノズルを用い,ガス流量及びコンダクタンスを複数の同心円状ノズル群毎に調整して,前記ガス分圧の分布を補正し,均一化を図ることが可能なCVD装置を用いることにより,広範囲のガス圧力下及び広範囲の温度領域において試料表面におけるガス圧を均一にすることができる。その結果,CVD膜厚の面内分布が良好になる。」(第1頁右下欄第20行?第2頁右上欄第6行)

「リアクタ15内には加熱が可能なサセプタ16と対向したガスノズル17が具備されている。ガスノズルのガス供給面は第2図に示したように円状であり同心円状に分布した複数の細孔よりなるガス供給用開孔部を有している。同心円状に分布したガス供給用開孔群は3種類のガス系統(a),(b),(c)に割り当ててガス系統(a)に対応する供給孔群21,ガス系統(b)に対応する供給孔群22.ガス系統(c)に対応する供給孔群23に分類できる。該供給孔群を流れるガスは各々独立に流量制御,コンダクタンス制御を行っている。排気系はターボ分子ポンプ18とロータリポンプ19より構成され,コンダクタンスバルブ110を用いてリアクタ15内の圧力を調整している。
ガス系統(a)にはWF_(6)を2SCCM,ガス系統(b)にはSiH_(4)を1SCCM及びガス系統(c)にはH_(2)を10SCCM各々のガス流量制御装置13(マスフローコントローラ:日本タイランFC260)及びコンダクタンスバルブ14を通して上記ガスノズル17からコールドウオール型リアクタに流した。サセプタ16は抵抗加熱により280?320℃の間で制御した。またサセプタ16とガスノズル17間の距離111は5?15mmとした。ガス排気系はターボ分子ポンプ(アルカテル5150,排気速度140l/s)18と補助ポンプとしてロータリポンプ19を用いた。このときの全ガス圧力範囲は0.05?0.1torrである。」(第2頁右上欄第17行?右下欄第5行)

「実施例2
実施例1では反応ガスの混合をガスノズルから流出させた後リアクタ内で行っている。本実施例では第4図に示すように各々のガス流量制御装置群42を通した後,ガス混合用配管43を通して反応ガスの混合を行った。その際,ガスの逆流防止弁を適所に設置したことは言うまでもない。然る後,コンダクタンスバルブ群44及び第2図と同様のガスノズル45を通して反応ガスをリアクタ47に導入した。その他のCVD条件は実施例1と同じで同様な結果を得た。本実施例を用いると各反応ガス流量に対応させて各反応ガス用コンダクタンスバルブを調整する煩雑さが無くなる。この場合,全反応ガス流量のみに注目して各ガスノズル開孔部分に対応してコンダクタンスバルブを調整すれば良い。またサセプタ46とガスノズル45間の距離411が成膜特性に与える影響が小さい。
本実施例では全反応ガス流量と全反応ガスの圧力に応じてガス供給系のコンダクタンスバルブ並びにサセプタとノズル間の距離を調整する必要がある。これらの調整をコンピュータ制御により自動化を図ることが可能であることは言うまでもない。
実施例3
上述した実施例では全反応ガス流量と全反応ガスの圧力に応じてガス供給系のコンダクタンスバルブ並びにサセプタとノズル間の距離等のパラメータを設定し開ループ制御で膜形成を行っている。
本実施例では第5図に示すようにガスノズル55のガス供給面半径方向に複数の圧力センサ56及び複数の膜厚センサ57を具備させて非破壊で試料表面近傍のガス圧並びCVD膜厚をモニタしてガス流量調整装置52並びにコンダクタンスバルブ54にフィードバックをかけてW膜を形成した。
本実施例を用いて5インチ-ウェファ上でのW膜厚分布を±0.5?1.0%以下に低減できた。」(第3頁左上欄第2行?右上欄第18行)

以上の記載から,引用例3には次の事項が開示されているものと理解できる。

(ア)均一なガスフロー及びガス圧分布を得るために,反応管内にサセプタと対向し且つ同心円状に分布したガスノズルを設け,該半径方向に分割した複数のノズル群毎にガス流量及びコンダクタンスを調整できる機能を有するCVD装置を採用すること。(第2頁左上欄第5行?右上欄第6行)
(イ)当該CVD装置において,全反応ガス流量と全反応ガスの圧力に応じてガス供給系のコンダクタンスバルブ並びにサセプタとノズル間の距離等のパラメータを設定し,それらをコンピュータ制御により自動的に調整し,開ループ制御で膜形成を行うこと。(第3頁左上欄第20行?右上欄第10行)
(ウ)当該CVD装置において,複数の圧力センサ56及び複数の膜厚センサ57を具備させて非破壊で試料表面近傍のガス圧並びCVD膜厚をモニタしてガス流量調整装置52並びにコンダクタンスバルブ54にフィードバックをかけて膜形成を行うこと。(第3頁右上欄第11行?第16行)


第6 対比・判断
1.本願発明1について
1.1 対比
本願発明1と引用発明1とを比較する。

ア 引用発明1の「基板25」が本願発明1の「基板」に相当し,以下同様に,「基板ステージ20」が「基板支持部」に,「プロセスボリューム調整システム80」が「昇降部」に,「上部チャンバアセンブリ30」が「ガス供給口」に,「プラズマ発生システム」が「プラズマ生成部」に,「堆積システム1」が「基板処理装置」に,それぞれ相当する。

イ 引用発明1における「処理チャンバ10」は,基板25を収容し,第1のプロセス材料ガスを用いた第1の堆積プロセス及び第2のプロセス材料ガスを用いた第2の堆積プロセスを実行する場であるから,本願発明1における「基板を処理する処理室」に相当する。

ウ 引用発明1における「コントローラ70」は,本願発明1における「制御部」に対応し,引用発明1における「前記基板ステージ20から前記上部アセンブリ30までの距離を変化させるように前記プロセスボリューム調整システム80を制御する」ことは,本願発明1における「前記昇降部の昇降動作を制御する」ことに対応する。
そうすると,本願発明1と引用発明1は「前記ガス供給口からガスを供給してプラズマを生成する一つの工程の中で前記プラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記昇降部の昇降動作を制御する」との事項について,「前記昇降部の昇降動作を制御する」点で共通する。

以上ア?ウによれば,本願発明1と引用発明1の一致点,相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「基板を処理する処理室と,
前記基板を支持する基板支持部と,
前記基板支持部を昇降させる昇降部と,
前記基板にガスを供給するガス供給口と,
前記ガスのプラズマを生成するプラズマ生成部と,
前記昇降部の昇降動作を制御する制御部と,
を有する基板処理装置。」

<相違点>
本願発明1は,「前記ガス供給口からガスを供給してプラズマを生成する一つの工程の中で前記プラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記昇降部の昇降動作を制御する制御部」を有するのに対し,引用発明1では,「コントローラ70」が「前記第2のプロセスガス材料を用いたプラズマプロセスである第2の堆積プロセス」の中で「前記基板ステージ20から前記上部アセンブリ30までの距離」を変化させるように制御することは特定されていない点。

1.2 相違点についての判断
(1)引用発明1及び引用例3からの容易想到性について
引用例3には,CVD装置においてサセプタとノズル間の距離をコンピュータ制御で自動的に調整し,当該距離をパラメータとして設定する開ループ制御で膜形成を行う技術が公知技術として記載されている(第5の3.(イ))。

しかしながら,当該公知技術では,サセプタとノズル間の距離は開ループ制御におけるパラメータとして設定されるものであるところ,引用例3において当該距離を膜形成中に所定の関数に従って変動させることは記載されていない。
また,上記第5の3.(ウ)で述べたとおり,引用例3には,試料表面近傍のガス圧並びにCVD膜厚をモニタして,ガス流量調整装置52並びにコンダクタンスバルブ54にフィードバックをかけることは記載されているが,当該モニタ結果をサセプタとノズル間の距離を調整する手段にフィードバックすることは記載されていない。
そうすると,引用例3に記載された上記公知技術には,膜形成中にサセプタとノズル間の距離を調整する,との技術的事項は含まれていないものと認められる。

さらに,上記第5の3.(ア)で述べたとおり,引用例3の課題は,均一なガスフロー及びガス圧を得ることであり,その解決手段は,反応管内にサセプタと対向し且つ同心円状に分布したガスノズルを設け,該半径方向に分割した複数のノズル群毎にガス流量及びコンダクタンスを調整できる機能を有することであるところ,サセプタとノズル間の距離を調整することと,均一なガスフロー及びガス圧を得ることとの関係は,引用例3において特に示されていない。すなわち,引用例3には,膜形成中にサセプタとノズル間の距離を調整することについての示唆は見られない。

よって,引用例3に記載された公知技術から,引用発明1において上記相違点に係る構成,すなわち,
「前記ガス供給口からガスを供給してプラズマを生成する一つの工程の中で前記プラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記昇降部の昇降動作を制御する制御部」
との構成を有するようにすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって,本願発明1は,引用発明1と引用例3に記載された公知技術から,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用例2について
上記第5の2.での検討のとおり,引用例2には,基板処理位置において基台をローディング位置よりも持ち上げて,基板処理位置における処理容積をローディング位置における処理容積よりも削減し,基板処理時に用いる化学物質の量を削減する技術は記載されているものの,一つの基板処理工程の中で基台の位置を異ならせる技術については記載も示唆もされていない。

1.3 小括
以上のとおり,本願発明1は,引用発明1と,引用例2及び引用例3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2?20について
(1)本願発明2?11について
本願発明2?11も,上記相違点に係る構成,すなわち,本願発明1の
「前記ガス供給口からガスを供給してプラズマを生成する一つの工程の中で前記プラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記昇降部の昇降動作を制御する制御部」
との構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明1及び引用例2?3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明12?20について
本願発明12における
「前記プラズマを生成する工程の際に,当該プラズマを生成する一つの工程の中で,前記ガス供給口からガスを供給して当該ガスのプラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記基板支持部を昇降させる工程」
との構成は,上記相違点に係る構成に対応するものであり,上記1.2で検討したのと同様にして,引用例2?3から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって,本願発明12は,引用例1?3に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとはいえない。
本願発明13?20は,本願発明12を減縮したものであり,上記本願発明12の構成と同一の構成を有するものであるから,本願発明12と同じ理由により,引用例1?3に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により,本願発明1?11は,
「前記ガス供給口からガスを供給してプラズマを生成する一つの工程の中で前記プラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記昇降部の昇降動作を制御する制御部」
という事項を,本願発明12?20は,
「前記プラズマを生成する工程の際に,当該プラズマを生成する一つの工程の中で,前記ガス供給口からガスを供給して当該ガスのプラズマの生成を開始した直後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔と,前記一つの工程の中で前記プラズマの生成開始から一定時間経過後の前記ガス供給口と前記基板支持部に支持される前記基板との間隔とを異ならせるように,前記基板支持部を昇降させる工程」
という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用例1?3に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-08-12 
出願番号 特願2018-47206(P2018-47206)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宇多川 勉  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小川 将之
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 基板処理装置および半導体装置の製造方法  
代理人 福岡 昌浩  

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