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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1365290
審判番号 不服2019-7584  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-07 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 特願2017-136160「無線通信システムにおける端末のACK/NACK送信方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月16日出願公開、特開2017-204875〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)10月7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年10月7日 米国,2013年11月28日 米国)を国際出願日とする特願2016-546721号の一部を平成29年7月12日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 5月14日付け 拒絶理由通知書
平成30年 8月 7日 意見書,及び手続補正書の提出
平成30年 9月28日付け 拒絶理由通知書
平成30年12月27日 意見書,及び手続補正書の提出
平成31年 2月 6日付け 拒絶査定
令和 元年 6月 7日 拒絶査定不服審判の請求,
及び手続補正書の提出


第2 令和元年6月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和元年6月7日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
(1)本件補正前の,平成30年12月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりである。

「データチャネルを受信する方法であって,前記方法は,プライマリセル(PCell),第1のセカンダリセル(SCell)及び第2のSCellが設定されたUE(user equipment)により実行され,前記方法は,
スケジューリングのための情報を受信することと,
前記第2のSCellから前記スケジューリングのための情報に基づいて前記データチャネルを受信することと
を含み,
前記PCellは,前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセルであり,
前記第1のSCell及び前記第2のSCellは,前記PCellとともにアグリゲーションされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellによってスケジューリングされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellと比較して動作の一部をサポートしない,方法。」

(2)本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「データチャネルを受信する方法であって,前記方法は,プライマリセル(PCell),第1のセカンダリセル(SCell)及び第2のSCellが設定されたUE(user equipment)により実行され,前記方法は,
スケジューリングのための情報を受信することと,
前記第2のSCellから前記スケジューリングのための情報に基づいて前記データチャネルを受信することと
を含み,
前記PCellは,前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセルであり,
前記第1のSCell及び前記第2のSCellは,前記PCellとともにアグリゲーションされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellによってスケジューリングされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellと比較して動作の一部をサポートせず,
他のセルと違って,前記第1のSCell上でも前記第2のSCell上でも特定情報が提供されない,方法。」


2 補正の適否
上記補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1のセカンダリセル(SCell)」及び「第2のSCell」について,「他のセルと違って,前記第1のSCell上でも前記第2のSCell上でも特定情報が提供されない」との限定を付加するものであるところ,当該明細書には,当該事項に対応する記載はない。そして,「他のセル」,「特定情報」の定義は,請求項及び発明の詳細な説明には何ら規定されていないため,「他のセル」は「第1,第2のSCell以外のセル」と解され,「特定情報」は「所定の情報」と解されるから,「第1のSCellでも第2のSCell上でも,第1,第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」と解される。
しかし,例えば,第1のSCellでも第2のSCell上でも,第1,第2のSCell以外のSCellでは提供される所定の情報が提供されないことは,当初明細書等に直接的に記載されておらず,また,出願時の技術常識を参酌しても,当初明細書等に記載されているとはいえない。
そうすると,上記補正事項は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,「第1のSCellでも第2のSCell上でも,第1,第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」との新たな技術的事項を導入するものである。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 独立特許要件
上記2のとおり,本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが,更に進めて,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして,本件補正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて検討する。

(1)特許法第36条第6項第1号,及び,第2号について
ア 請求項1の「他のセル」,「特定情報」は,請求項及び発明の詳細な説明を見ても定義が記載されておらず,技術事項を特定できないから,発明として不明確である。
よって,請求項1に係る発明は,不明確である。

イ 請求項1の「第1のセカンダリセル(SCell)」及び「第2のSCell」について,「他のセルと違って,前記第1のSCell上でも前記第2のSCell上でも特定情報が提供されない」との記載は,「他のセル」,「特定情報」の定義について,請求項及び発明の詳細な説明には何ら規定されていないため,「第1のSCellでも第2のSCell上でも,第1,第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」と解することができる。
一方,発明の詳細な説明には,「第1のSCellでも第2のSCell上でも,第1,第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」との事項に対応する記載はなく,また,当該事項は,当業者の技術常識を参酌しても記載されているとはいえない。
よって,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。

したがって,本件出願は,請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号,又は第2号に規定する要件を満たしていないため,特許出願の際に独立して特許を受けることができない。


(2)特許法第29条第2項について
ア 本件補正発明
上記(1)のとおり、請求項1の「他のセルと違って,前記第1のSCell上でも前記第2のSCell上でも特定情報が提供されない」との記載は,「他のセル」及び「特定情報」の定義について請求項及び発明の詳細な説明には何ら規定されていないため,「他のセル」は「第1,第2のSCell以外のセル」と解され,「特定情報」は「所定の情報」と解されるから,「前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」と解される。
よって,本件補正発明は,以下のとおりのものと認める。

「データチャネルを受信する方法であって,前記方法は,プライマリセル(PCell),第1のセカンダリセル(SCell)及び第2のSCellが設定されたUE(user equipment)により実行され,前記方法は,
スケジューリングのための情報を受信することと,
前記第2のSCellから前記スケジューリングのための情報に基づいて前記データチャネルを受信することと
を含み,
前記PCellは,前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセルであり,
前記第1のSCell及び前記第2のSCellは,前記PCellとともにアグリゲーションされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellによってスケジューリングされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellと比較して動作の一部をサポートせず,
前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない,方法。」


イ 引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された,ZTE,Discussion on mapping between CIF and Cell Index(当審訳:CIFとセルインデックスとの間のマッピングに関する議論)[online],3GPP TSG-RAN WG2♯71bis R2-105339,3GPP,2010.10.03掲載,インターネット(以下,「引用例」という。)には以下の記載がある。

a 「RAN1 has agreed that CIF is used for cross scheduling in CA. It means if a secondary carrier is cross scheduled, DCI format 0, 1, 1A, 1B, 1D, 2, 2A, 2B in UE specific search space should be supported by explicit CIF always. Otherwise, the scheduling just follows R8/9. If cross scheduling is used, the search space in PDCCH is caculated according to CIF and the PDCCH is specified by RRC. When scheduling relationship is changed then for a specific CC, search space will be anyway changed. So does it when CIF changes. So changes of scheduling relationship or CIF for a specific CC will introduce the ambiguity issue.」(1葉13行-18行,下線は当審で付加した。以下同様。)
(当審訳:RAN1は,CIFがCAのクロススケジューリングに使用されることに同意している。これは,セカンダリキャリアがクロススケジュールされている場合,UE特定検索空間のDCIフォーマット0,1,1A,1B,1D,2,2A,2Bは常に明示的なCIFでサポートされる必要があることを意味する。そうでない場合,スケジューリングはR8 / 9にのみ従う。クロススケジューリングが使用される場合,PDCCHの検索空間はCIFに従って計算され, PDCCHはRRCによって指定される。スケジュールの関係が変更されると,特定のCCの検索空間が変更される。CIFが変更された場合も同様である。そのため,スケジューリングの関係,又は,特定のCCのCIFの変更により,あいまいさの問題が発生する。)

b 「Based on RAN1’s agreement, if a Scell is cross scheduled, CIF should be included in PDCCH, otherwise no CIF. It’s our understanding that this is only for CCs which are scheduled by the same PDCCH. An example is shown in figure 2.1. Both Pcell and Scell1 are scheduled by itself so no CIF is used. Scell2 and Scell3 are scheduled by Scell2, so CIF is used. In this case, group a, b and c won’t interact. 」(1葉34行-37行)
(当審訳:RAN1の合意に基づいて,Scellがクロススケジュールされている場合,CIFをPDCCHに含める必要がある。そうでない場合はCIFを含めない。これは,同じPDCCHによってスケジュールされるCCのみであると理解される。図2.1に例を示す。 PcellとScell1はどちらも単独でスケジュールされるため,CIFは使用されない。 Scell2とScell3はScell2によってスケジュールされるため,CIFが使用される。この場合,グループa,b,cは相互作用しない。)

c 「


Figure 2.1
」(2葉)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例には,次の技術事項が記載されている。

(a)キャリアアグリゲーションは,UEがアグリゲーションされたPCellとSCellとを用いてデータを送受信することが,当業者の技術常識であるところ,上記aによると,引用例は,キャリアアグリゲーション(CA)を前提したものであり,また,上記b,及びのFigure 2.1(以下,「図2.1」という。)に記載された,PCellと,SCell1-3は,キャリアアグリゲーションによってアグリゲーションされたものであることは明らかである。
そうすると,引用例には,UEがアグリゲーションされたPCellとSCell1-3とを用いてデータを送受信する方法が記載されているといえる。

(b)上記bの記載,及び図2.1によると,SCell3はSCell2によってクロススケジュールされることが記載されているといえるから,引用例には,SCell3はSCell2によってクロススケジュールされることが記載されているといえる。

したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「UEが,アグリゲーションされたPCellとSCell1-3とを用いてデータを送受信する方法において,
SCell3はSCell2によってクロススケジュールされる,
方法。」


ウ 周知例の記載及び周知技術
(ア)周知例1
柳生健吾ほか,LTE-Advancedにおけるキャリアアグリゲーションの制御方法に関する一検討,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.110 No.433,社団法人電子情報通信学会,2011年2月23日発行,第110巻,p.145-150(以下,「周知例1」という。)には,以下の記載がある。

a 「
各UEは複数存在するCCのうちから一つをPrimaryCCとし(以下 PCC),他のCCのうちから一つ又は複数をSecondaryCC(以下 SCC)とする.UEはどのCCをPCC,SCCとするかは,eNBの指示により決定する.UEがPCCを用いて通信するセルをPrimary cell(以下 Pcell),SCCを用いて通信するセルをSecondary cell(以下 Scell)と呼ぶ.本稿ではPce11と同一eNB配下に所属しているPce11と別CCのセルのみSce11としてCAが可能であるとする.
なお,UEとPce11は常に通信が維持される必要があり,Pce11の品質を維持できない場合はリンク断(Radio Link Failure:以下 RLF)となり再接続・再発信の処理が発生する.また,上りリンク物理レイヤの制御信号はPce11のみで送信する.そのためPcell品質の維持管理は重要である.eNBはUEの移動に伴う無線伝搬状況の変動によりUEの通信品質が劣化しRLFとなる前に適切な隣接セルへのPce11の切替(以下 Pcell handover)を行うことでRLFを防ぐ必要がある.Sce11については,UEはScellを常に保持する必要はなくトラフィック状況やSCC内に存在するセルの品質に応じて,Scel1を保持していない状態からの追加(以下Scell addition),Scellを追加している状態からのSce11の削除(以下Scell removal),より高品質な隣接セルへのScell切替(Scell handover)がeNBから指示される.」(146ページ右欄17行-147ページ6行)

(イ)周知例2
3GPPの技術仕様書である,3GPP TS 36.300 V10.11.0[online],3GPP,2013.09.19掲載,インターネット,p.55-56(以下,「周知例2」という。)には,以下の記載がある。

b 「
7.5 Carrier Aggregation
When CA is configured, the UE only has one RRC connection with the network. At RRC connection establishment/re-establishment/handover, one serving cell provides the NAS mobility information (e.g. TAI), and at RRC connection re-establishment/handover, one serving cell provides the security input. This cell is referred to as the Primary Cell (PCell). In the downlink, the carrier corresponding to the PCell is the Downlink Primary Component Carrier (DL PCC) while in the uplink it is the Uplink Primary Component Carrier (UL PCC).」(55ページ29行-34行)
(当審訳:
7.5 キャリアアグリゲーション
CAが構成されている場合,UEはネットワークとの1つのRRC接続のみを有する。RRC接続の確立/再確立/ハンドオーバでは,1つのサービングセルがNASモビリティ情報(TAIなど)を提供し,RRC接続の再確立/ハンドオーバでは,1つのサービングセルがセキュリティ入力を提供する。このセルは,プライマリセル(PCell)と呼ばれている。ダウンリンクでは,PCellに対応するキャリアはダウンリンクプライマリコンポーネントキャリア(DL PCC)であり,アップリンクではアップリンクプライマリコンポーネントキャリア(UL PCC)である。)

c「
Depending on UE capabilities, Secondary Cells (SCells) can be configured to form together with the PCell a set of serving cells. In the downlink, the carrier corresponding to an SCell is a Downlink Secondary Component Carrier (DL SCC) while in the uplink it is an Uplink Secondary Component Carrier (UL SCC).

The configured set of serving cells for a UE therefore always consists of one PCell and one or more SCells:
-For each SCell the usage of uplink resources by the UE in addition to the downlink ones is configurable (the number of DL SCCs configured is therefore always larger than or equal to the number of UL SCCs and no SCell can be configured for usage of uplink resources only);
-From a UE viewpoint, each uplink resource only belongs to one serving cell;
-The number of serving cells that can be configured depends on the aggregation capability of the UE (see subclause 5.5);
-PCell can only be changed with handover procedure (i.e. with security key change and RACH procedure);
-PCell is used for transmission of PUCCH;
-Unlike SCells, PCell cannot be de-activated (see subclause 11.2);
-Re-establishment is triggered when PCell experiences RLF, not when SCells experience RLF;
-NAS information is taken from PCell.」(54ページ35行-56ページ5行)
(当審訳:
UEの能力に応じて,PCellとサービングセルのセットを形成するため,セカンダリセル(SCell)が構成されることができる。ダウンリンクでは,SCellに対応するキャリアはダウンリンクセカンダリコンポーネントキャリア(DL SCC)であり,アップリンクでは,それはアップリンクセカンダリコンポーネントキャリア(UL SCC)である。

したがって,UE用に構成されたサービングセルのセットは,常に1つのPCellと1つ以上のSCellで構成される。
-各SCellについて,ダウンリンクのものに加えてUEによるアップリンクリソースの使用が構成可能である(したがって,構成されたDL SCCの数は常にUL SCCの数以上であり,アップリンクの使用のためにSCellを構成することはできない)リソースのみ);
-UEの観点から,各アップリンクリソースは1つのサービングセルにのみ属する。
-構成できるサービングセルの数は,UEのアグリゲーション能力に依存する(5.5節を参照)。
-PCellは,ハンドオーバー手順(つまり,セキュリティキーの変更とRACH手順)でのみ変更できる。
-PCellは,PUCCHの送信に使用される。
-SCellとは異なり,PCellは非アクティブ化され得ない(11.2節を参照)。
-再確立は,SCellがRLFとなるときではなく,PCellがRLFとなるときにトリガーされる。
-NAS情報はPCellから取得される。)

[周知技術1]
周知例1の上記a,及び周知例2の上記cによると,「PCellは,UEからPUCCHを送信するために用いられるセルである。」ことは,3GPPの技術仕様書にも記載されている技術常識ともいえる周知技術(以下,「周知技術1」という。)であると認められる。

[周知技術2]
周知例2の上記bによると,PCellを用いてRRC接続の確立/再確立が行わることが記載されているところ,前記RRC接続の確立/再確立に用いられる情報は,当該確立が行われるPCell上のみで提供されることは明らかである。
よって,「RRC接続の確立/再確立に用いられる情報は,PCell上のみで提供される。」ことは,3GPPの技術仕様書にも記載されている技術常識ともいえる周知技術(以下,「周知技術2」という。)である。


エ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア) キャリアアグリゲーションのために,UEにアグリゲーションされるセルの構成を設定することは,当業者の技術常識であるから,引用発明の「UEが,アグリゲーションされたPCellとSCell1-3とを用いてデータを送受信する方法」は,アグリゲーションされたPCellとSCell2とSCell3の構成を設定されたUEによって実行されるデータの送受信方法に含まれるといえる。
そして,引用発明の「データを送受信する」ことを「データチャネルを受信する」と称すること,及び,「SCell2」を「第1のセカンダリセル(SCell)」と称し,「SCell3」を「第2のSCell」と称することは,任意である。 そうすると,引用発明の「UEが,アグリゲーションされたPCellとSCell-3とを用いてデータを送受信する方法」は,本件補正発明の「データチャネルを受信する方法であって,前記方法は,プライマリセル(PCell),第1のセカンダリセル(SCell)及び第2のSCellが設定されたUE(user equipment)により実行され」ることに対応する。

(イ) 引用発明の「アグリゲーションされたPCellとSCell1-3」は,本件補正発明の「前記第1のSCell及び前記第2のSCellは,前記PCellとともにアグリゲーションされ」ることに含まれる。

(ウ) 引用発明の「SCell3はSCell2によってクロススケジュールされる」ことは,SCell2がSCell3のスケジュールを行い,SCell3では自身のスケジュールを行わないことであることは明らかであるから,引用発明のSCell3は,SCell2と比較して動作の一部をサポートしないものであることは明らかである。
そうすると,引用発明の「SCell3はSCell2によってクロススケジュールされる」ことと,本件補正発明とは,「前記第2のSCellは,前記第1のSCellによってスケジューリングされ」,「前記第2のSCellは,前記第1のSCellと比較して動作の一部をサポート」しない点で共通する。

したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
「データチャネルを受信する方法であって,前記方法は,プライマリセル(PCell),第1のセカンダリセル(SCell)及び第2のSCellが設定されたUE(user equipment)により実行され,前記方法は,
データチャネルを受信することと
を含み,
前記第1のSCell及び前記第2のSCellは,前記PCellとともにアグリゲーションされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellによってスケジューリングされ,
前記第2のSCellは,前記第1のSCellと比較して動作の一部をサポートしない,
方法。」

[相違点1]
本件補正発明は,「スケジューリングのための情報を受信」し,「前記第2のSCellから前記スケジューリングのための情報に基づいて前記データチャネルを受信する」ものであるのに対して,引用発明の「SCell3はSCell2によってクロススケジュールされる」ことは,当該事項を特定していない点。

[相違点2]
本件補正発明の「PCell」は,「前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセル」であるのに対して,引用発明は「PCell」について,当該事項を明示していない点。

[相違点3]
本件補正発明は,「前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」ものであるのに対して,引用発明は,当該事項を特定していない点。


オ 判断
(ア) 相違点1について
キャリアアグリゲーションにおいて,クロススケジュールされるセルのスケジュールのための情報を受信し,当該セルから前記スケジュールのための情報に基づいてデータチャネルを受信することは,当業者の技術常識であるから,引用発明において,「SCell3はSCell2によってクロススケジュールされる」ためには,SCell3のスケジュールのための情報を受信し,SCell3から前記スケジュールのための情報に基づいてデータチャネルを受信する」ものであることは明らかである。
よって,引用発明は,「スケジューリングのための情報を受信」し,「前記第2のSCellから前記スケジューリングのための情報に基づいて前記データチャネルを受信する」ものであるといえるから,上記相違点1は実質的な相違点ではない。

(イ) 相違点2について
上記ウで認定した周知技術2のとおり,「RRC接続の確立/再確立に用いられる情報は,PCell上のみで提供される。」ことが周知技術であるところ,RRC接続を確立/再確立することは,UEと基地局との間の連結を行うための動作に含まれることが,当業者の技術常識であるから,「PCell」が「前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセル」であることも周知技術であるといえる。
また,本件補正発明の「前記UEと基地局との間の連結の動作」は,発明の詳細な説明(段落0152)に記載された「アップリンク制御チャネル(PUCCH)送信などのように,基地局と端末との間の連結を維持するための動作」であるとしても,上記ウで認定した周知技術1のとおり,「PCellは,UEからPUCCHを送信するために用いられるセルである」ことが,周知技術であるから,「PCell」が「前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセル」であることも周知技術であるといえる。
したがって,引用発明の「PCell」は,「前記UEと基地局との間の連結の動作をサポートするセル」とするものであるから,上記相違点2は,実質的な相違点ではない。

(ウ) 相違点3について
上記周知技術2の「RRC接続の確立/再確立に用いられる情報は,PCell上のみで提供される。」ことは,前記「PCell」が本件補正発明の「前記第1,前記第2のSCell以外のセル」に含まれることが明らかであるといえるから,本件補正発明の「前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」ことに含まれるといえる。
そして,引用発明に周知技術2を採用することは,格別の困難性はなく,阻害要因も見出せない。
したがって,引用発明において,「前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」ものとすることは,当業者が容易に想到できたことである。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

したがって,本件補正発明は,引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[請求人の主張について]
請求人は,審判請求書において,以下のとおり主張する。
「引用文献1では,他のセルをスケジューリングするセル上あるいは他のセルによってスケジューリングされるセル上(例えば,引用文献1のFigure2.1のSCell2,SCell3等)では,他のセル(例えば,引用文献1のFigure2.1のPCell,SCell1等)と比較して特定情報(例えば,CIF)がさらに提供されます。
上述のとおり,補正後の請求項1の特徴と引用文献1の特徴とは,全く逆のものであり,両者の相違点は明確です。」
しかしながら,請求項1の「他のセルと違って,前記第1のSCell上でも前記第2のSCell上でも特定情報が提供されない」との記載は,「他のセル」及び「特定情報」の定義について請求項及び発明の詳細な説明には何ら規定されておらず,「他のセル」は「第1,第2のSCell以外のセル」と解され,「特定情報」は「所定の情報」と解されるから,「第1のSCellでも第2のSCell上でも,第1,第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」と解される。
そうすると,上記オ(ウ)で述べたとおり,上記周知技術2の「RRC接続の確立/再確立に用いられる情報は,PCell上のみで提供される。」ことは,本件補正発明の「前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」ことに含まれるといえる。
よって,引用発明に周知技術2を採用し,「前記第1のSCellでも前記第2のSCell上でも,前記第1,前記第2のSCell以外のセルでは提供される所定の情報が提供されない」とすることは,格別困難なことではない。
なお,審判請求書の「(3)補正後の請求項1の効果」の項の記載は,意味不明である。
したがって,上記請求人の主張は採用できない。


4 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり,また,同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
令和元年6月7日に提出された手続補正書による補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年12月27日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2 1(1)」に記載のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,本願の請求項1に係る発明に対して,以下の引用例1,2が引用されている。

1 ZTE,Discussion on mapping between CIF and Cell Index(当審訳:CIFとセルインデックスとの間のマッピングに関する議論)[online],3GPP TSG-RAN WG2♯71bis R2-105339,3GPP,2010.10.03掲載,インターネット
2 柳生健吾ほか,LTE-Advancedにおけるキャリアアグリゲーションの制御方法に関する一検討,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.110 No.433,社団法人電子情報通信学会,2011年2月23日発行,第110巻,p.145-150


3 引用発明,及び周知技術
引用例の記載事項及び引用発明,周知例の記載事項及び周知技術は,上記「第2 3(2)イ,ウ」の項で認定したとおりである。


4.対比・判断
本願発明は本件補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,相違点は上記「第2 3(2)エ」の相違点1,2であるところ,本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した本件補正発明が,上記「第2 3」の「独立特許要件」の項で検討したとおり,引用例に記載された発明,及び周知技術に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例に記載された発明,及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明,及び周知技術に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-18 
結審通知日 2020-03-19 
審決日 2020-03-31 
出願番号 特願2017-136160(P2017-136160)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 561- Z (H04W)
P 1 8・ 537- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 吉宏  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中元 淳二
脇岡 剛
発明の名称 無線通信システムにおける端末のACK/NACK送信方法及び装置  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
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