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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F25C
管理番号 1365292
審判番号 不服2019-10577  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-08 
確定日 2020-08-11 
事件の表示 特願2017- 6261「人工雪による降雪模擬システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日出願公開、特開2018-115796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月17日の出願であって、平成30年11月1日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年12月21日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに平成30年12月25日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和1年5月14日付け(発送日:令和1年5月16日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年8月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年12月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
人工雪を造雪する造雪部と、
該造雪部の下方に位置し造雪された人工雪を降雪する降雪部とを有する人工雪による降雪模擬システムにおいて、
前記造雪部において、氷粒による人工雪を製造する氷粒製造部が設けられ、前記造雪部と該氷粒製造部とを接続する人工雪の搬送部が設けられ、
前記降雪部の上方には、前記搬送部により搬送された氷粒を拡散するための拡散部が設けられ、
該拡散部内の温度領域と該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域とを区分して、該降雪部から該拡散部への上昇気流を抑制可能なように、
前記拡散部と前記降雪部との間に、拡散領域に亘って仕切りを設けることを特徴とする、
人工雪による降雪模擬システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
人工雪を造雪する造雪部と、
該造雪部の下方に位置し造雪された人工雪を降雪する降雪部とを有する人工雪による降雪模擬システムにおいて、
前記造雪部において、氷粒による人工雪を製造する氷粒製造部が設けられ、前記造雪部と該氷粒製造部とを接続する人工雪の搬送部が設けられ、
前記降雪部の上方には、前記搬送部により搬送された氷粒を拡散するための拡散部が設けられ、該拡散部内の温度領域は、-10℃前後、該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合において、
該拡散部内の温度領域と該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域とを区分して、該降雪部から該拡散部への上昇気流を抑制可能なように、前記拡散部と前記降雪部との間に、拡散領域に亘って仕切りを設け、
前記降雪部において、降雪中に湿雪化する場合、該造雪部内の温湿度領域と該降雪部内の温湿度領域とを区分可能なように、該造雪部と該降雪部との間に前記仕切りを設け、
前記仕切りは、それぞれ、周面に多数の毛が植設され、ほぼ水平方向に延び水平方向を中心に回転可能な複数の回転ブラシ体により構成され、
隣接する回転ブラシ体同士の間隔および多数の毛の周面上の密度は、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するように設定され、
前記降雪部には、前記造雪部内の温湿度領域より高い前記降雪部内の温湿度領域を設定して、降雪する雪を湿雪化する湿雪化手段が前記仕切りの下方に設けられる、
ことを特徴とする、人工雪による降雪模擬システム。」
(下線部は、補正箇所である。)

2 補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「拡散部」と「降雪部」に関して、「該拡散部内の温度領域は、-10℃前後、該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合において」と限定するとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「仕切り」に関して、「前記降雪部において、降雪中に湿雪化する場合、該造雪部内の温湿度領域と該降雪部内の温湿度領域とを区分可能なように、該造雪部と該降雪部との間に前記仕切りを設け、前記仕切りは、それぞれ、周面に多数の毛が植設され、ほぼ水平方向に延び水平方向を中心に回転可能な複数の回転ブラシ体により構成され、隣接する回転ブラシ体同士の間隔および多数の毛の周面上の密度は、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するように設定され、前記降雪部には、前記造雪部内の温湿度領域より高い前記降雪部内の温湿度領域を設定して、降雪する雪を湿雪化する湿雪化手段が前記仕切りの下方に設けられる、」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する(下線は当審にて付した。以下同様。)。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2016-6362号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、造雪した雪粒を雪片化することにより、雪質を所望に変えることが可能な雪片の生成方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、雪を利用した環境試験において、既存の試験室に設置可能であり、試験室における試験条件の融通性を向上した雪片の生成装置を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、造雪工程と降雪工程とを分離し、その間で、造雪工程により造雪された雪粒を雪片化し、生成された雪片を所望に降雪することが可能な雪片の生成方法を提供する。」

(1-b)「【0019】
以下に本発明の環境試験方法および環境試験装置の第1実施形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
まず、雪環境試験システムについて説明すれば、図1に示すように、雪環境試験システム10は、氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪により試験供試体である車両Vに対して降雪を模擬するように構成され、そのために、雪環境試験システム10は、人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部と、拡散した雪粒から雪片を生成する雪片生成部と、生成した雪片を降雪させる降雪部とを有し、このうち、搬送部の一部と、拡散部と、雪片生成部と、降雪部とが、車両Vが配置される試験室内に配置され、造雪部と搬送部とが試験室外に配置される。」

(1-c)「【0024】
造雪部においてフレーク状の氷片を破砕して氷粒にするのに用いる砕氷機(図示せず)は、主に、上部に配置されたロータリーフィーダー(図示せず)と、下部に配置された一対の砕氷ドラム(図示せず)とからなり、供給された氷片をロータリーフィーダーにより分量化して一対の砕氷ドラムに供給し、一対の砕氷ドラムにより砕氷して、所定粒径の氷粒として雪供給管40に供給するようにしている。
【0025】
拡散部において、人工雪の拡散装置34について説明すれば、人工雪の拡散装置34は、搬送される氷粒を所望拡散範囲に亘って拡散するのに用いられる。」

(1-d)「【0036】
なお、最狭部304において、隣接するローラー306同士は、凹凸310を介して噛み合っており、実質的に、複数のローラー306により、試験室308の上部スペースと下部スペースとは仕切られていることから、従来においては、試験室308の上部において、人工雪を製造するのに零度以下に試験室308内の温度を維持する必要があり、上下スペースが連通することに起因して、試験室308の下部において、降雪部のスペースも同様な温度となっていたことから、たとえば、降雪部において、雪片を湿雪化することが技術的に困難であった点を克服している。
なお、生成した雪片をローラーから剥離して降雪を模擬するのに、剥離手段として、別途ローラーを加振することでもよいし、エアをそれぞれのローラー306の内部から貫通穴316を通じて噴出して、生成した雪片を担体手段の表面から剥離させてもよい。
【0037】
変形例としては、図11および図12に示すように、複数のローラー306は、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置され、それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成し、外周面312には、多数の貫通穴316が設けられ、剥離手段は、エアをそれぞれのローラー306の内部から貫通穴316を通じて噴出するのでもよい。
回転ブラシ314は、たとえば、樹脂製の柔軟性を有する材質からなり、ゴムローラー306の場合と異なり、その先端が、対向するローラー306の外周面312に接触する長さを有してもよく、回転ブラシ314の径および回転ブラシ314のローラー306の外周面312上の密度は、回転ブラシ314を除くローラー306の外周面312上に雪粒が付着し得る面積の観点から適宜定めればよい。
エアの噴出は、パルス的に噴出するのでもよく、エアの温度を-1℃以下の冷風とすることにより、試験室308内の温度が零度以上であっても、この雰囲気が回転ブラシ314及びローラー306に直接接触しないようにし、以って生成された雪片が溶解するのを防止することが可能である。エアの貫通穴316の密度は、このような観点から定めればよい。
【0038】
なお、ゴムローラー306の場合には、隣接するローラー306の最狭部304において、付着した雪粒を圧密化することから、硬化した雪片を模擬するのに適し、回転ブラシ314付きローラー306の場合には、ゴムローラー306とは異なり、付着した雪粒を圧密化しないことから、結晶雪を回転ブラシ314によりローラー306から剥離し、降雪を模擬するのに適するが、いずれにせよ、ゴムローラー306の場合も、回転ブラシ314付きローラー306の場合も、特に、回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとすることにより、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、たとえば、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することも可能となる。
図13に示すように、さらなる変形例として、複数のゴムローラー306と、回転ブラシ314付きローラー306とを組み合わせ、回転ブラシ314付きローラー306を複数のゴムローラー306より上側に配置して、まず、回転ブラシ314付きローラー306により、雪粒から雪片を生成し、さらに、複数のゴムローラー306により圧密化してもよい。
加えて、担体手段としてのローラー306について、帯電可能な材質から構成し、担体であるローラー306に向かって搬送される帯電した雪粒を静電気力による吸引するのでもよく、この場合には、雪粒は、担体に向かって搬送される間に、粒の大きさに応じてプラス電荷またはマイナス電荷に帯電され、それにより、担体手段において、粒径の異なる雪粒が混在した雪片として形成し、雪質を変えることが可能となる。
【0039】
以上の構成を有する雪環境試験システム10について、雪片の生成方法を含め、その作用を以下に説明する。
まず、担体が配置される試験室308内の温度および/湿度を所定に設定するとともに、複数のローラー306を連続的に回転させておく。回転数は、たとえば、10RPMである。
次いで、リーマ式製氷機22により、氷片を製造し、砕氷機26により、氷片を破砕し、氷粒を生成し、雪供給管40を通じて拡散装置34に圧送し、拡散プレート74と協働して、雪粒をゴムローラー306の上面320に向けて下方に拡散する(図9のA参照)。
次いで、拡散装置により拡散した雪粒が、複数のローラー306の上部に積もる。
次いで、積もった雪粒は、隣接するローラー306間の最狭部304において、圧密化されることにより、多数の雪粒同士が付着して、不定形だが、たとえば3mm辺から10mm辺に雪片化される。すなわち、最狭部304において、隣接するローラー306の一方の凹部と他方の凸部とにより、雪粒同士を圧密化するようにしている。
【0040】
次いで、隣接するローラー306間において、1つおきに、下方への送り出しが行われ、生成された雪片は、ローラー306の回転により下方に送り出され、そのまま下方に落下し、降雪を模擬し、試験体である車両Vの上部に積雪する(図9のB参照)。
なお、複数のローラー306による雪片の生成段階と、拡散装置34による雪粒の拡散段階とは、バッチ的に行ってもよい。すなわち、拡散装置による雪粒の拡散する際、駆動ローラー306を停止しておき、複数のローラー306を回転しない状態としておき、それにより、拡散する雪粒が複数のローラー306の上部に積雪する。次いで、所望高さまで積雪した段階で、駆動ローラー306を駆動し、複数のローラー306を回転させ、複数のローラー306の上部の積雪層がなくなるまで、雪片を生成して、降雪を模擬してもよい。
【0041】
以上の構成を有する雪片の生成方法によれば、造雪した雪粒をそのまま利用せずに、担体が配置される周囲温度および/周囲湿度を所定に設定したうえで、予め造雪された雪粒を担体に向かって搬送し、搬送された雪粒を担体の表面で捕捉して、雪粒同士を担体表面上で付着成長させることにより、雪片を生成し、生成した雪片を担体表面から剥離することにより、造雪した雪粒の雪片化を通じて、たとえば、担体表面から剥離する雪片を降雪させる場合において、降雪する雪粒の大きさを変えたり、造雪工程と降雪工程とを分離することにより、造雪環境と異なる環境(温度条件、湿度条件)で降雪させ、降雪中に湿雪化することも可能であり、総じて、雪質を所望に変えることが可能である。
また、造雪工程と降雪工程とを分離することが可能であるので、造雪工程において造雪した人工雪をいったん貯雪し、試験を行う際、貯雪中の雪を搬送して、降雪に利用することが可能である。」

上記(1-a)?(1-d)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪により降雪を模擬するように構成された雪環境試験システム10において、
人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部と、拡散した雪粒から雪片を生成する雪片生成部と、生成した雪片を降雪させる降雪部とを有し、このうち、搬送部の一部と、拡散部と、雪片生成部と、降雪部とが、試験室308内に配置され、造雪部と搬送部とが試験室308外に配置され、
複数のローラー306が、試験室308内の上方において、試験室308を仕切るように配置され、それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成し、
回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとし、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、
試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することが可能な雪環境試験システム10。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部と、拡散した雪粒から雪片を生成する雪片生成部」は、本願補正発明の「人工雪を造雪する造雪部」に相当する。

イ 引用発明において「搬送部の一部と、拡散部と、雪片生成部と、降雪部とが、試験室308内に配置」され、「試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用」しているから、降雪スペースに配置された「降雪部」は、造雪スペースに配置された「搬送部の一部」、「拡散部」、「雪片生成部」より下方に位置しているといえる。
よって、引用発明の「生成した雪片を降雪させる降雪部」は、本願補正発明の「該造雪部の下方に位置し造雪された人工雪を降雪する降雪部」に相当する。
また、引用発明の「人工雪により降雪を模擬するように構成された雪環境試験システム10」は、本願補正発明の「人工雪による降雪模擬システム」に相当する。

ウ 引用発明は「氷粒からなる人工雪を利用し、人工雪により降雪を模擬するように構成された雪環境試験システム10」であるから、「人工雪を造る造雪部」は「氷粒からなる人工雪」を製造しているといえる。
よって、引用発明の「人工雪を造る造雪部」は、本願補正発明の「氷粒による人工雪を製造する氷粒製造部」に相当する。
また、引用発明は「人工雪を造る造雪部と、造雪した雪粒を搬送する搬送部と、搬送される雪粒を拡散させる拡散部」とを有するから、引用発明の「搬送部」は、「造雪部」(本願補正発明の「氷粒製造部」)と「拡散部」(本願補正発明の「造雪部」を構成する部分)とを接続するものといえる。
よって、引用発明の「搬送部」は、本願補正発明の「前記造雪部と該氷粒製造部とを接続する人工雪の搬送部」に相当する。
さらに、上記イにおける検討を踏まえれば、引用発明において「降雪部」の上方に「拡散部」があるから、引用発明は、本願補正発明の「前記降雪部の上方には、前記搬送部により搬送された氷粒を拡散するための拡散部が設けられ」るとの構成を備えている。

エ 引用発明においては、「試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することが可能」であるから、引用例では、造雪スペースに配置された「拡散部」内の温度領域を「零下」に設定し、降雪スペースに配置された「降雪部」内の温度領域を「零度以上」に設定する場合があるといえる。
よって、引用発明の上記構成と本願補正発明の「該拡散部内の温度領域は、-10℃前後、該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合」とは、「該拡散部内の温度領域は、零下、該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合」という点で共通する。

オ 引用発明の、「回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとし、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域と」する構成について、独立の温度領域とするために、上昇気流を抑制可能な仕切りが設けられている構成であるということができる。
なお、本願補正発明の「降雪部から該拡散部への上昇気流を抑制可能な」「仕切り」に関して、本願明細書の段落【0034】には、「回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとすることにより、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり、試験室308内において、拡散スペースと降雪スペースとを互いに独立の温湿度領域とし、・・・拡散部内と降雪部内との温度差に起因する上昇気流により降雪自体が妨害されるのを防止しつつ、降雪中に湿雪化することも可能となる。」との記載があり、引用発明と同様の回転ブラシ314の構成により上昇気流を抑制することが記載されている。
そうすると、引用発明の上記構成は、本願補正発明の「該拡散部内の温度領域と該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域とを区分して、該降雪部から該拡散部への上昇気流を抑制可能なように、前記拡散部と前記降雪部との間に、拡散領域に亘って仕切りを設け」る構成に相当する。

カ 引用発明は、「ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であり」、「試験室308内において、造雪スペースと降雪スペースとを互いに独立の温度領域とし、試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化することが可能な雪環境試験システム10」という構成を備え、造雪スペースと降雪スペースとは、ローラ306により仕切られており、独立の温度領域となっている。
そして、造雪スペースと降雪スペースは、仕切られて独立した領域となっているから、湿度においても区分されていることは明らかであり、温湿度領域として区分されているといえる。
そうすると、引用発明の上記構成は、本願補正発明の「前記降雪部において、降雪中に湿雪化する場合、該造雪部内の温湿度領域と該降雪部内の温湿度領域とを区分可能なように、該造雪部と該降雪部との間に前記仕切りを設け」るとの構成に相当する。
また、引用発明の「それぞれのローラー306は、外周面312に植毛された回転ブラシ314を構成し」、「ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切る」構成は、本願補正発明の「前記仕切りは、それぞれ、周面に多数の毛が植設され、ほぼ水平方向に延び水平方向を中心に回転可能な複数の回転ブラシ体により構成され」る構成に相当する。

キ 引用発明の「回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さと」する点は、本願補正発明の「隣接する回転ブラシ体同士の間隔および多数の毛の周面上の密度は、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯」する点に相当する。
よって、引用発明の「回転ブラシ314を高密度にして、対向するローラー306の外周面312まで及ぶ長さとし、ローラー306を水平方向に整列配置することにより、試験室308内を仕切ることが可能であ」る点は、本願補正発明の「隣接する回転ブラシ体同士の間隔および多数の毛の周面上の密度は、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するように設定され」る点に相当する。

ク 引用発明の「試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し」、「降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化する」点は、本願補正発明の「湿雪化手段が仕切りの下方に設けられる」点に相当する。
よって、引用発明の「試験室308の上部スペースを零下として造雪スペースとして利用し、一方試験室308の下部スペースを降雪スペースとして利用し、造雪され、生成された雪片を用いて、降雪模擬する場合に、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化する」点は、本願補正発明の「降雪部には、造雪部内の温湿度領域より高い前記降雪部内の温湿度領域を設定して、降雪する雪を湿雪化する湿雪化手段が仕切りの下方に設けられる」点に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「人工雪を造雪する造雪部と、
該造雪部の下方に位置し造雪された人工雪を降雪する降雪部とを有する人工雪による降雪模擬システムにおいて、
前記造雪部において、氷粒による人工雪を製造する氷粒製造部が設けられ、前記造雪部と該氷粒製造部とを接続する人工雪の搬送部が設けられ、
前記降雪部の上方には、前記搬送部により搬送された氷粒を拡散するための拡散部が設けられ、該拡散部内の温度領域は、零下、該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合において、
該拡散部内の温度領域と該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域とを区分して、該降雪部から該拡散部への上昇気流を抑制可能なように、前記拡散部と前記降雪部との間に、拡散領域に亘って仕切りを設け、
前記降雪部において、降雪中に湿雪化する場合、該造雪部内の温湿度領域と該降雪部内の温湿度領域とを区分可能なように、該造雪部と該降雪部との間に前記仕切りを設け、
前記仕切りは、それぞれ、周面に多数の毛が植設され、ほぼ水平方向に延び水平方向を中心に回転可能な複数の回転ブラシ体により構成され、
隣接する回転ブラシ体同士の間隔および多数の毛の周面上の密度は、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するように設定され、
前記降雪部には、前記造雪部内の温湿度領域より高い前記降雪部内の温湿度領域を設定して、降雪する雪を湿雪化する湿雪化手段が前記仕切りの下方に設けられる、人工雪による降雪模擬システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
拡散部内の温度領域に関して、本願補正発明では、「-10℃前後」に設定する場合があるのに対し、引用発明では「零下」である点。

(3)判断
ア 上記[相違点]について検討する。
引用発明には、拡散部のある造雪スペースを零下とするものが開示されているが、拡散部内の温度は当業者が所望の雪質に応じて適宜設定するものであり、本願補正発明において「-10℃前後」とした点に格別な技術的意義は見いだせない。
よって、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

イ 本願補正発明が奏する効果について
本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「以上より、引用文献1には、降雪スペースを零度以上として、降雪中に湿雪化する点も開示(【0038】)されているが、結晶雪製造部と結晶雪降雪部との間の温度差を明示し、このような温度差に起因する上昇気流の抑制は、引用文献1には開示はおろか示唆すらなされていない。
それに対して、今回の補正手続において、拡散部内の温度領域は、-10℃前後、拡散部より高温の降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合に限定しており、このような拡散部と拡散部との温度差ゆえに、降雪部から拡散部へ向かう上昇気流の発生は顕著であるとしても、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するように設定されていることから、降雪部と拡散部との境界部の仕切りが、顕著な上昇気流の抑制作用を奏することになる。換言すれば、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するからこそ、このような温度差であっても、それによる顕著な上昇気流の抑制が可能となる。」と主張する。
しかしながら、本願補正発明において、拡散部内の温度領域を-10℃前後とした点は、上記(3)アで検討したとおり、拡散部内の温度は当業者が所望の雪質に応じて適宜設定するものであり、上昇気流を抑制可能な仕切りを設ける点については、上記(2)オで検討したとおり、引用発明は、本願明細書に記載された回転ブラシ314と同様の構成を有している。そして、引用発明において、拡散部内の温度領域をどのように設定しても、仕切りとしての回転ブラシ314の構成により本願補正発明と同様に上昇気流の抑制が可能となることは明らかである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年12月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-6362号公報

3 引用文献
引用文献1及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)」に記載した引用例1及びその記載事項と同じである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「拡散部」と「降雪部」に関して、「該拡散部内の温度領域は、-10℃前後、該拡散部より高温の該降雪部内の温度領域は、0℃以上に設定する場合において」との限定を削除するとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「仕切り」に関して、「前記降雪部において、降雪中に湿雪化する場合、該造雪部内の温湿度領域と該降雪部内の温湿度領域とを区分可能なように、該造雪部と該降雪部との間に前記仕切りを設け、前記仕切りは、それぞれ、周面に多数の毛が植設され、ほぼ水平方向に延び水平方向を中心に回転可能な複数の回転ブラシ体により構成され、隣接する回転ブラシ体同士の間隔および多数の毛の周面上の密度は、隣接する回転ブラシ体同士の最狭部において、一方の回転ブラシ体の多数の毛と他方の回転ブラシ体の多数の毛とが交錯して、仕切りを構成するように設定され、前記降雪部には、前記造雪部内の温湿度領域より高い前記降雪部内の温湿度領域を設定して、降雪する雪を湿雪化する湿雪化手段が前記仕切りの下方に設けられる、」との限定を削除するものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると全ての点において一致し、相違点はない。
よって、本願発明は引用発明である。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-11 
結審通知日 2020-06-12 
審決日 2020-06-25 
出願番号 特願2017-6261(P2017-6261)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25C)
P 1 8・ 113- Z (F25C)
P 1 8・ 121- Z (F25C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 槙原 進
平城 俊雅
発明の名称 人工雪による降雪模擬システム  
代理人 岡 潔  
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