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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1365339
審判番号 不服2019-2544  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-25 
確定日 2020-08-12 
事件の表示 特願2015-555755「インプラント部品洗浄用治療液」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/122187、平成28年 5月12日国内公表、特表2016-513145〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)2月5日 独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 9月29日 :翻訳文の提出
平成29年12月26日付け :拒絶理由通知
平成30年 6月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月18日付け :拒絶査定
平成31年 2月25日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 平成31年2月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「細菌で汚染された骨インプラント部の表面、歯インプラント部の表面またはバイオフィルムで汚染された他のコンポーネントの表面を洗浄するための治療液であって、前記治療液が酸の水溶液を含み、前記水溶液が、電気伝導度が少なくとも150mS/cmとなるように金属塩を含んでおり、前記酸はカルボン酸である治療液。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年6月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「細菌で汚染された骨インプラント部の表面、歯インプラント部の表面またはバイオフィルムで汚染された他のコンポーネントの表面を洗浄するための治療液であって、前記治療液が酸の水溶液を含み、前記水溶液が、電気伝導度が少なくとも30mS/cmとなるように金属塩を含んでいる治療液。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「電気伝導度が少なくとも30mS/cm」について「電気伝導度が少なくとも150mS/cm」へと範囲を狭める限定をするとともに、「治療液」の「酸」について、「前記酸はカルボン酸である」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2007-167527号公報(2007年7月5日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、小型で扱いやすく、義歯の清掃に起因する義歯の劣化が生じにくく、有効塩素による殺菌効果や洗浄効果が十分に得られ、義歯性口内炎の原因菌となるカンジタ菌を短時間かつ簡単に殺菌できる義歯清掃用具を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0010】
本発明の義歯清掃用具は、一対の電極を塩化物イオン含有液に接触させた状態で、前記一対の電極間に電流が流されることによって、5ppm?35ppmの有効塩素を発生させるものであるため、義歯洗浄装置の小型化が実現でき、義歯の掃掃に起因する義歯の劣化が生じにくく、有効塩素による殺菌効果や洗浄効果が十分に得られる。
また、清掃部にブラシ毛が植毛されている義歯清掃用具とすることで、従来の義歯ブラシを用いた清掃時のブラッシング操作と同様にして容易に使用できる。
さらに、ブラシ毛が導電性を有するものからなり、前記ブラシ毛が前記一対の電極として機能する義歯清掃用具とすることで、効率よく塩化物イオン含有液を電気分解することができる。
また、塩化物イオン含有液が、塩化物イオンを含有する助剤を含む義歯清掃用具とすることで、容易に十分な量の有効塩素を発生させることができる。」
「【0021】
図1に示す義歯清掃用具10は、カソード電極21およびアノード電極22を塩化物イオン含有液に接触させた状態で、カソード電極21とアノード電極22との間に電源3から電流が流されると、塩化物イオン含有液が電気分解して5ppm?35ppmの有効塩素が発生するものである。
本発明において、カソード電極21とアノード電極22との間で回路が完成(通電)してから上記範囲の有効塩素濃度なるまでの時間(通電時間)は、短時間でかつ十分に清掃できるように、0.5分?12分であることが望ましく、0.5分?5分であることがより望ましく、0.5分?3分であることがさらに好ましい。
塩化物イオン含有液としては、塩素イオンを含む溶液であればいかなるものであってもよく、例えば、水道水や助剤を含む水などを用いることができる。しかし、有効塩素発生量は塩素イオン(Cl^(-))濃度に依存するので、通常の水道水では、塩素イオン(Cl^(-))濃度が低く、カソード電極21とアノード電極22との間で回路が完成(通電)しても、有効塩素の発生量が少なく口腔内細菌に対する殺菌力が不十分となる場合がある。したがって、塩化物イオン含有液として、助剤を含む水を用いることが望ましい。
【0022】
助剤は、塩化物イオンを含有するものであればいかなるものであってもよく、例えば、生理食塩水や塩洗口液、塩歯磨などの塩化ナトリウムを含有するものとすることができる。塩化物イオン含有液が、塩化ナトリウム(NaCl)を含む水溶液である場合、塩化ナトリウムを0.5%?20%含むことが望ましく、10%?15%とすることがより好ましい。NaClの濃度が0.5%未満である場合、有効塩素の発生量が不十分となる場合が生じる。有効塩素の発生量が不十分であると殺菌力が不足するので、清掃時間が長時間となる恐れがある。具体的には、NaClの濃度が0.5%である場合、5ppmの有効塩素濃度を確保するために、長時間(10分以上)通電する必要が生じ、清掃時間の点から非効率である。NaClの濃度を1%以上とすることで、5ppmの有効塩素を発生させる通電時間を5分未満とすることができ、効果的に義歯を殺菌できる。さらに、NaClの濃度を3%以上とすることで、短時間でかつ効果的に義歯を殺菌できる。また、NaClの濃度を10%以上とすることで、5ppm?35ppmの有効塩素を発生させる通電時間を0.5分?3分とすることができ、短時間で義歯を効率よく殺菌できる。
また、NaClの濃度が15%を越えると、塩化物イオン含有液中のNaCl以外の配合成分の影響でNaClが析出してしまう場合があり、20%を超えるとより一層NaClが析出しやすくなり、NaClを含む水溶液の保存安定性が悪くなる。また、NaClの濃度が20%を越えると、NaCl及び水以外の成分を配合した場合に、析出により助剤の液自体の保存安定性が悪くなる可能性があること以外に、保存容器の蓋の開閉により蓋にNaClが析出(結晶)付着し、容器の取り扱い(蓋の開閉ができない等)で問題が発生する。さらに、NaClの濃度を25%とした場合、飽和に達しそれ以上溶解しないためNaClを含む水溶液の調整が困難となる。
【0023】
また、助剤は、塩化物イオンを含有するもののみであってもよいが、清掃時の作業性(助剤の取り扱い性)向上、及び電極間通電の安定性(有効塩素が発生している状態)の確保等のため、湿潤剤、清掃剤、発泡剤、粘結剤、薬用成分、清涼剤、香味剤、香料、保存剤、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、等の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、以下に示すものや、一般的な歯磨剤に使用されるものを用いることができる。なお、添加剤は、下記の成分に限定されるものではない。」
「【0029】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸等、緩衝液及びそれらの塩類を1種または2種類以上を用いることができる。なお、pH安定化のため各種公知の技術を用いることができる。
清掃時における助剤のpHは3?7であることが望ましく、より好ましくは4?6とされる。有効塩素(Cl_(2)、HClO、ClO^(-))の存在比率は、pHに依存する。清掃時における助剤のpHを3?7の範囲、好ましくは4?6の範囲とすることで、有効塩素中において、殺菌力が最も強い次亜塩素酸(HClO)の存在比率が高い状態となる。なお、電気分解後の助剤のpHは、電気分解前の助剤のpHよりアルカリ側に変化するため、予め電気分解前の助剤のpHを酸性側に調整しておくことが望ましい。
【0030】
また、助剤の性状は、液状、ペースト状、泡状(フォーム)のいずれであってもよいが、保形性(性状の保持)に優れるペースト状や泡状(フォーム)であることが好ましい。これらの中でも、泡状(フォーム)は保形性が非常に優れているため好ましい。助剤の保形性が優れるほど、電極周辺に助剤の存在する時間が長くなり、電極と助剤とを広範囲かつ安定して長い時間接触させることができ、通電を長時間持続させることができ望ましい。」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 段落【0007】の「義歯性口内炎の原因菌となるカンジタ菌を短時間かつ簡単に殺菌できる義歯清掃用具を提供することを目的とする。」との記載、段落【0010】の「本発明の義歯清掃用具は、一対の電極を塩化物イオン含有液に接触させた状態で、前記一対の電極間に電流が流されることによって、5ppm?35ppmの有効塩素を発生させるものであるため・・・有効塩素による殺菌効果や洗浄効果が十分に得られる。」との記載、段落【0022】の「NaClの濃度を1%以上とすることで、5ppmの有効塩素を発生させる通電時間を5分未満とすることができ、効果的に義歯を殺菌できる。」との記載から、カンジタ菌を有する義歯を殺菌できる義歯清掃用具に用いられる塩化物イオン含有液、が記載されているといえる。

b 段落【0010】の「塩化物イオン含有液が、塩化物イオンを含有する助剤を含む」との記載、段落【0021】の「塩化物イオン含有液として、助剤を含む水を用いることが望ましい。」との記載、段落【0022】の「塩化物イオン含有液が、塩化ナトリウム(NaCl)を含む水溶液である場合、塩化ナトリウムを0.5%?20%含むことが望ましく、10%?15%とすることがより好ましい。」との記載から、塩化物イオン含有液は助剤を含む水溶液であり、塩化ナトリウムを10%?15%含む、といえる。

c 段落【0023】の「助剤は・・・清掃時の作業性(助剤の取り扱い性)向上、及び電極間通電の安定性(有効塩素が発生している状態)の確保等のため、湿潤剤、清掃剤、発泡剤、粘結剤、薬用成分、清涼剤、香味剤、香料、保存剤、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、等の添加剤を配合することができる。」との記載、段落【0029】の「pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸等、緩衝液及びそれらの塩類を1種または2種類以上を用いることができる。」との記載から、助剤は酢酸を含む、といえる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「カンジタ菌を有する義歯を殺菌できる義歯清掃用具に用いられる塩化物イオン含有液であって、塩化物イオン含有液は助剤を含む水溶液であり、塩化ナトリウムを10%?15%含み、助剤は酢酸を含む塩化物イオン含有液」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「カンジタ菌」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本件補正発明の「細菌」に相当する。以下同様に、「殺菌できる」は「洗浄する」に、「塩化物イオン含有液」は「治療液」に、「塩化ナトリウム」は「金属塩」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明の「酢酸」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本件補正発明の「酸」に相当するとともに、「カルボン酸」にも相当する。
(ウ)引用発明の「塩化物イオン含有液は助剤を含む水溶液であ」る態様は、助剤として酢酸を含むことから、本件補正発明の「治療液が酸の水溶液を含」む態様に相当する。
(エ)引用発明の「義歯」と本件補正発明の「歯インプラント」とは歯科用補綴物である点で共通し、細菌はその歯科用補綴物の表面に付着することは明らかであるから、引用発明の「カンジタ菌を有する義歯」と、本件補正発明の「細菌で汚染された歯インプラント部の表面」とは、細菌で汚染された歯科用補綴物の表面である点で共通する。
(オ)引用発明の「酢酸を含む」態様は、上記(イ)に示したとおり引用発明の「酢酸」が本件補正発明の「酸」、「カルボン酸」のいずれにも相当することから、本件補正発明の「酸はカルボン酸である」態様に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「細菌で汚染された歯科用補綴物の表面を洗浄するための治療液であって、前記治療液が酸の水溶液を含み、前記水溶液が金属塩を含んでおり、前記酸はカルボン酸である治療液。」

【相違点】
(相違点1)
歯科用補綴物について、本件補正発明では「歯インプラント」であるのに対して、引用発明では「義歯」である点。
(相違点2)
金属塩を含む水溶液について、本件補正発明では、電気伝導度が少なくとも150mS/cmとなる金属塩を含むものであるのに対して、引用発明における金属塩は塩化ナトリウムであって、当該塩化ナトリウムを10%?15%含むものである点。

(4)判断
相違点1について検討すると、歯科用補綴物としてインプラントは広く知られたものであることから、引用発明における「義歯」を「インプラント」とし、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到できたものである。
また相違点2について検討すると、溶液の濃度と電気伝導度との間に一定の関係があることは広く知られているところ、塩化ナトリウム水溶液の場合、塩化ナトリウム濃度が10%?15%溶液(25℃)における電気伝導度は121.1mS/cm?164.2mS/cmであることは技術常識である(http://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/qa-conductivity/measurement/4/)。そうすると、引用発明の「塩化ナトリウムを10%?15%含」む態様は、塩化ナトリウム水溶液の電気伝導度を代替する指標と理解し得るものであって、電気伝導度に関する対比においては、本件補正発明の「少なくとも150mS/cm」と重複する範囲を有するものといえる。
ここで、引用文献1の段落【0022】に「また、NaClの濃度を10%以上とすることで、5ppm?35ppmの有効塩素を発生させる通電時間を0.5分?3分とすることができ、短時間で義歯を効率よく殺菌できる。」と記載されるとともに、「また、NaClの濃度が15%を越えると、塩化物イオン含有液中のNaCl以外の配合成分の影響でNaClが析出してしまう場合があり、20%を超えるとより一層NaClが析出しやすくなり、NaClを含む水溶液の保存安定性が悪くなる。」と記載されている(下線は、当審にて付与した。)ことを踏まえると、引用発明における塩化ナトリウムの濃度として、短時間で効率よく殺菌できるとともにNaClが析出しない程度のものとするために、上記の範囲の中で15%を選択すること、すなわち電気伝導度として164.2mS/cmを選択し、本件補正発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

請求人は平成31年2月25日付け審判請求書において、「引用文献1に係る発明は、カルボン酸又はα‐ヒドロキシカルボン酸に関するに記載された補正されたクレーム1の技術的意義や効果に関する記載はない」旨主張する(以下「主張1」という。)とともに、引用文献1に記載された発明は「本願発明のように、「バイオフィルムを除去して洗浄する治療液に関する発明」ではない」旨主張する(以下「主張2」という。)。
主張1について検討すると、引用文献1における酢酸はpH調整剤として用いられる(段落【0029】)ところ、本件補正発明のカルボン酸は本願明細書の段落【0051】によると、pH値を低減するために用いられており、引用文献1における酢酸と、本件補正発明のカルボン酸とは、pHを調整するという同じ目的のために用いられていることから、請求人の当該主張1は当を得たものとは言えない。
また主張2について検討すると、本件補正発明は「細菌で汚染された骨インプラント部の表面、歯インプラント部の表面またはバイオフィルムで汚染された他のコンポーネントの表面」を洗浄対象とするところ、洗浄対象は「細菌で汚染された」インプラント部の表面であればよく、「バイオフィルム」は必須ではないため、当該主張2は請求項の記載に基づいた主張とはいえない。また、バイオフィルムとは細菌が層状に付着したものであるところ、引用文献1に記載された発明はカンジタ菌、すなわち細菌を洗浄対象としたものであることを踏まえると、引用文献1に記載された発明においてもバイオフィルムに対して洗浄効果を有することは、当業者であれば容易に理解できることであることから、請求人の当該主張2は当を得たものとは言えない。
したがって、請求人の上記主張1、2を採用することはできない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年6月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明について、「電気伝導度が少なくとも150mS/cm」としていたものを「電気伝導度が少なくとも30mS/cm」として数値限定の範囲を広げるとともに、「治療液」の「酸」について、「カルボン酸である」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、上記第2 2(3)?(4)に示したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-03-16 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-03-30 
出願番号 特願2015-555755(P2015-555755)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 沖田 孝裕
莊司 英史
発明の名称 インプラント部品洗浄用治療液  
代理人 山本 浩  
代理人 山口 巖  

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