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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1365353 |
審判番号 | 不服2019-1176 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-29 |
確定日 | 2020-08-13 |
事件の表示 | 特願2014- 4652「プリフォーム、プリフォームに装着できるキャップ、およびプラスチックボトル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-131666〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年1月14日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 9月 1日付け:拒絶理由通知書 平成29年11月10日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 3月19日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 平成30年 5月25日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年10月19日付け:平成30年 5月25日にした手続補正 についての補正の却下の決定、 その後拒絶査定 平成31年 1月29日 :審判請求書の提出、 及び同時に手続補正書の提出 令和 元年12月 3日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 1月24日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明は、令和2年1月24日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7にそれぞれ記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認める。 「インナーリングとコンタクトリングを備えたキャップを口部にねじ込み可能なプリフォームであり、 結晶化処理がされていない前記口部を有するプラスチックボトル用のプリフォームであって、 前記口部は、天面と、該天面から延びる外周面と、該天面から延びるとともに前記インナーリングと接触する内周面とを有し、 前記天面は平坦面であり、 前記外周面には前記キャップと螺合するねじ部が形成されたプリフォームにおいて、 前記天面と前記内周面との接合部の稜線に面取り部を形成し、 前記面取り部は角面取りであり、 前記面取り部の前記天面側の端部と、前記面取り部の前記内周面側の端部に、それぞれR取り部を形成し、 前記面取り部の径方向の幅が、0.15mm以上かつ0.45mm以下であり、 前記キャップは、円板状の上部と、該上部の周縁から垂下される円筒状の胴部とを有し、 前記コンタクトリングは前記上部から垂下される環状の突起であり、 前記インナーリングは前記上部から垂下される環状の突起であり、 前記インナーリングには、前記キャップの外方に突出し、前記内周面と接触する突出部が形成されており、 前記コンタクトリングは、前記面取り部の前記天面側の端部近傍の前記天面で接触し、密閉性が向上することを特徴とする、プリフォーム、及びプリフォームに装着できるキャップ。」 第3 当審で通知した拒絶の理由の概要 令和元年12月3日付けで当審が通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。 (進歩性)本件出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2010/024165号 引用文献2:特開2008-273594号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:登録実用新案第3160044号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2006-120389号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5:特開2006-147703号公報(周知技術を示す文献) 引用文献6:特開2013-220459号公報(周知技術を示す文献) 引用文献7:特開2012-12101号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献 (1)引用文献1に記載された事項、引用発明 引用文献1には、次の事項が記載されている。 ア「以下、本発明の第2の実施形態によるプリフォームの圧縮成形金型及びブロー成形容器の製造方法について、PETボトル飲料無菌充填システムAを用いて説明する。 なお、本実施形態では、図1及び図2に示す上記第1の実施形態におけるPETボトル飲料無菌充填システムAの圧縮成形金型とプリフォームのみ異なるので、図1及び図2のPETボトル飲料無菌充填システムAの構成の説明については省略する。 したがって、プリフォームの圧縮成形金型とこの圧縮成形金型で成形されるプリフォームについて、詳細に説明する。」(段落[0032]) イ「先ず、図7に示すプリフォーム5から説明する。 図7のAに示すように、プリフォーム5は、上部から下部に向かって、口部5a、胴部5b及び底部5cを備えている。口部5aには、容器の成形時に飲料などの注入・注出口となる開口5d、キャップの雌ネジが螺着する雄ネジ部5e、該雄ネジ部5eの下部に配置される環状のカブラ部5f、及びネックリング部5gとからなる。プリフォーム5の胴部5bは、ネックリング部5gの下方に形成されるが、本実施形態においては、口部5aと胴部5bとを接続する、接続部5kが設けられている。本実施形態において、接続部5kはプリフォーム5の内壁が該ネックリング部5gの上端部?下端部から、下方内側に減径し、円錐台の斜面に近い形状の傾斜部5hを経て、口部5aの上部肉厚t1’よりも厚い肉厚t2’を備えた胴部5bへと接続されている。胴部5bは、接続部5kから連続する胴部上5mと、接続部5pを介して接続されている胴部下5nとを備えている。接続部5pはプリフォームの内壁が下方内周面側に減径し、円錐台の斜面に近い傾斜面5qを形成している。胴部上5mは、通常はネックリング下から20mmまでの範囲であり、胴部上5mの肉厚は胴部下5nの肉厚よりも薄く形成しているが、同じにして接続部5pを略してもよい。なお、本方式では少なくともネックリング部5gの下5mmから下部に向かっては後述の肉厚条件を満足させることにより、好適のプリフォーム金型取り出し温度を具現化できる。」(段落[0033]) ウ「また、本実施形態において、図7のAに示すように、プリフォーム5の底部5cはほぼ半球形状を有しているが、底部5cの肉厚の少なくとも胴部5bに連続する部分も口部5aの上部肉厚t1’,t3’よりも厚く形成されている。底部5c自体の肉厚はこの部分を延伸若しくはブロー成形するかどうかにより、適宜肉厚を設定してよく、成形する場合はt1’,t3’より厚く、成形しない場合は同等、若しくは薄くする。 後述の圧縮成形金型においては、図9に示すようにプリフォームの肉厚部分を形成する空間が形成され、空間幅t1,t2,t3はそれぞれ、プリフォームの肉厚t1’,t2’,t3’に近い値に設定されるが、圧縮成形する樹脂によっては、収縮率等を考慮して適宜t1’,t2’,t3’に対し僅かに大きい値に設定する。」(段落[0034]) エ「なお、口部5aの上端は、図7のBに示すように角隅がシャープエッジになっている場合でもよいし、図7のCのように、多少、角落としのため面取りが行われるか、若しくは、丸められていてもよい。多少の角落しがされている場合、t1を決めるのにあたり、図7のCに示すように、口部5a外径部上端を形成する金型内径Do(プリフォーム製品の外径doに対応する径)と内径部上端を形成する金型外径di(プリフォーム製品での内径Diに対応する径)を決め、t1=(Do-di)/2とする。なお、内外径部の上端での外径または内径の検査測定が困難な場合は、内外径部の上端近傍で、内外径部の上端と径の値が大きく変わらず検査測定しやすい箇所、例えば口部5aの天面から0.7mm下若しくは2.5mm下など、検査しやすい箇所の寸法を決めてt1を設定・製作してもよい。」(段落[0035]) オ「 」(図7) カ 摘記事項イ?エを参照すると、上記オの図7には、プリフォーム5の口部5aが、天面と、該天面から延び、雄ネジ部5eが形成された外周面と、該天面から延びる内壁とを有する点が看取できる。 キ 摘記事項イ?エを参照すると、上記オの図7には、天面が平坦面である点が看取できる。 ク 摘記事項エを参照すると、上記オの図7には、天面と内壁との接合部の稜線に角落としのための面取りを有する点が看取できる。 ケ 摘記事項イの「プリフォーム5は、上部から下部に向かって、口部5a、胴部5b及び底部5cを備えている。口部5aには、容器の成形時に飲料などの注入・注出口となる開口5d、キャップの雌ネジが螺着する雄ネジ部5e、該雄ネジ部5eの下部に配置される環状のカブラ部5f、及びネックリング部5gとからなる。」という記載から、キャップの雌ネジが雄ネジ部5eに螺着するものであることが理解できる。 上記摘記事項ア?エ、図示オ、認定事項カ?ケを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「口部5aを有するPETボトルのプリフォーム5であって、前記口部5aは、天面と、該天面から延びる外周面と、該天面から延びる内壁とを有し、前記天面は平坦面であり、前記外周面にはキャップの雌ネジが螺着する雄ネジ部5eが形成されたプリフォーム5において、前記天面と前記内壁との接合部の稜線に角落としのための面取りを有する、プリフォーム及びキャップ。」 (2)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、次の事項が記載されている。 ア「図2は、図1に記載の本発明によるプラスチック製容器にネジ込み式のキャップを装着した場合の口部断面の概略の一例を示したものである。図2の口部にあっては、ネジ上端と口部の天面との間におけるキャップとの接触部であるアウターリング接触部21、口部の天面とキャップとの接触部であるコンタクトリング接触部22、および口部内側とキャップとの接触部であるインナーリング接触部23において、口部とキャップが密着することにより、容器の密閉が実現される。」(段落[0017]) イ「本発明によるプラスチック製容器は、口部が結晶化されているもの、あるいは結晶化されていないもののいずれの容器とすることもできるが、好ましくは口部に結晶化処理が施されていない容器、特に口部結晶化処理が施されていない加温対応PETボトルとすることができる。本発明の容器は、口部の硬さを高めるための結晶化がなされていなくても温度変化や衝撃を受けても密閉性を保持でき、かつ開栓性能が確保できるといった点で特徴がある。そのため、製造過程において口部結晶化工程を省略することができ、コストや手間を削減し、良品率を向上させることができる。」(段落[0021]) ウ「本発明によるプラスチック製容器は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、キャスト成形、熱成形、その他等の成形法を用いて成形することができ、典型的には予備成形体(プリフォームとも呼ばれる)を2軸延伸ブロー成形に付す方法によって製造される。そして、好ましくは、予備成形体の成形にあたり、共射出成形法を用いることにより、ポリエチレンテレフタレート樹脂層中にガスバリア層を形成してもよい。また、好ましくは口部結晶化工程を省略できる。」(段落[0035]) エ「 」(図2) オ「 」(図3) (3)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、次の事項が記載されている。 ア「(2-1)パック本体の構成 このバッテリパック10は、図3及び図4に示すように、内部にリチウムイオン二次電池のバッテリセル10aが内蔵されたパック本体11を有する。このパック本体11は、全体が略直方体形状に形成されており、6面が略平面となるように形成されている。このパック本体11の前面11eは、図3-図6に示すように、端子面となっており、端子部21が形成されている。」(段落[0024]) イ「パック本体11の上面11a及び底面11bと相対する側面11c,11dとがなす第1及び第2のコーナ部12,13は、共に、面取り部が形成されている。図5に示すように、パック本体11の底面11bと相対する側面11c,11dとがなす第1のコーナ部12,12の面取り部は、共に、C面12aとなっており、ここでは、面取り角度が45°で面取りの寸法が3mmとなっている。また、C面12aの両側は、R面12b,12bとなっており、ここでは、半径2mmとなっている。」(段落[0025]) ウ「なお、C面12aやR面12bの寸法は、これに限定されるものではない。」(段落[0026]) エ「また、パック本体11の上面11aと相対する側面11c,11dとがなす第2のコーナ部13,13の面取り部は、図5に示すように、共に、略R面となっている。具体的に、第2のコーナ部13,13は、パック本体11の第1のコーナ部12,12の面取り部のC面12aと同じC面に内接する略R面13aとなっている。具体的に、第2のコーナ部13,13は、中程がC面13aと第1のR面13bの連続した形状となっており、ここでは、面取り角度が45°で面取りの寸法が3mmのC面13aと半径が5mmの第1のR面13bとなっている。第2のコーナ部13,13のC面13aは、第1のコーナ部12のC面12aと同じ面取りとなっている。更に、C面13aの上面11a側は、上面11aと連続するように、第2のR面13cとなっており、ここでは、半径が3.8mmとなっている。また、第1のR面13bの底面11b側は、底面11bと連続するように第3のR面13dとなっており、ここでは、半径が4.3mmとなっている。」(段落[0027]) オ「なお、C面13aや第1乃至第3のR面13b-13dの寸法は、これに限定されるものではない。また、この第2のコーナ部13において、C面13aの部分は、省略し、この省略した部分も第1のコーナ部12,12の面取り部のC面12aと同じC面に内接する第1のR面13bとしても良い。」(段落[0028]) カ「また、パック本体11の前面11eと上面11a及び底面11bとがなす前面側コーナ部14は、面取り角度が45°で面取りの寸法が1mmのC面14aの両側が半径1mmのR面14bとなっている。」(段落[0032]) キ「 」(図5) ク「 」(図6) (4)引用文献4に記載された事項 引用文献4には、次の事項が記載されている。 ア「図2(a)および図2(b)は本発明のディスプレイパネルのガラス基板の他の形状を示す説明図である。図2(a)は全体図、図2(b)は図2(a)におけるコーナー部Dの拡大図である。」(段落[0027]) イ「本実施形態のガラス基板11では、ディスプレイパネル製造時の加熱工程もしくは位置決め時のガラス基板の割れや欠けを回避するために、ガラス基板のコーナー部を、ほぼ45度の角度で加工した面取り用の直線部と、その面取り用の直線部につながる2つの円弧部とで形成し、端面エッジをアール形状にする。」(段落[0028]) ウ「 」(図2) (5)引用文献5に記載された事項 引用文献5には、次の事項が記載されている。 ア「さらに、本発明の電解コンデンサー用タブ端子にあっては、面取り加工面6と圧延部面4との境界部分R1、および面取り加工面6と圧延部側面5との境界部分R2にアール形状加工が施されてなることが好ましい。図5に示すように、圧延部断面の八箇所のエッジ部分(R1?R8)をアール形状とすることにより、さらに、電極箔の破損を防ぐことができる。また、このように圧延部断面のエッジ部分をアール形状とするとこにより、エッジ部分と電極箔との接触抵抗が低減され、コンデンサーの高周波特性がより一層改善される。このようにエッジ部分をアール形状とすることにより接触抵抗が低減されることは予期せぬものであった。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、金属のエッジ部分には電荷が集中する傾向にあり、そのエッジをなくすことにより電荷密度が均一になると考えられる。そのため、圧延部の断面のエッジ部分(R1?R8)をアール形状とすることにより、漏れ電流が低減され、その結果、端子と電極箔との接触抵抗が小さくなるものと推測される。」(段落[0023]) イ「 」(図5) (6)引用文献6に記載された事項 引用文献6には、次の事項が記載されている。 ア「[第1の実施形態]図4は、本発明の第1の実施形態による丸ビレット5の概略構成を示す縦断面図である。丸ビレット5には、その軸方向に沿って孔6が形成されている。孔6は、丸ビレット5の中心軸を通って、丸ビレット5の軸方向に延びる。孔6は、丸ビレット5両端において開口した開口部6a及び6bを含む。すなわち、孔6は、丸ビレット5を貫通している。」(段落[0029]) イ「孔6は、テーパ部61と、径が概略一定のストレート部62とを含む。テーパ部61は、開口部6aと連続して、開口部6aへ向かって径が大きくなる。本実施形態では、テーパ部61は、開口部6aからの距離と孔6の径の変化量との比が一定の、いわゆる線形テーパである。テーパ部61は、テーパ角φを有している。テーパ角φは、丸ビレット5の縦断面(図4の断面)において、テーパ部61の接線と丸ビレット5の軸方向とのなす角である。」(段落[0030]) ウ「テーパ部61のうち開口部6aと隣接する領域P1は、面取り加工されていることが好ましい。丸ビレット5と穿孔プラグ3とが、領域P1で線接触することを防止できるためである。より好ましくは、テーパ部61のうち、ストレート部62と隣接する領域P2も、面取り加工されていることが好ましい。丸ビレット5と穿孔プラグ3とが、領域P2で線接触することを防止できるためである。なお、「面取り加工」は、いわゆるR面取り加工も含む。」(段落[0058]) エ「 」(図4) 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「口部5a」、「プリフォーム5」は、それぞれ本願発明の「口部」、「プリフォーム」に相当する。 (2)引用発明の「PETボトル」は、その素材からして、本願発明の「プラスチックボトル」に相当する。 (3)引用発明の「キャップの雌ネジが螺着する雄ネジ部5e」は、その機能からして、本願発明の「キャップと螺合するねじ部」に相当する。また、引用発明の「キャップの雌ネジが」「雄ネジ部5e」に「螺着する」ことは、「雄ネジ部5e」が「口部5a」の一部であるから、本願発明の「キャップを口部にねじ込み可能」であることに相当する。 (4)引用発明の「天面と内壁との接合部の稜線に角落としのための面取りを有する」ことは、上記第4(1)の図面オを参酌すると、角部を削り角面の形状に加工するものであるから、本願発明の「天面と内周面との接合部の稜線に面取り部を形成し、面取り部は角面取り」に相当する。 (5)そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「キャップを口部にねじ込み可能なプリフォームであり、前記口部を有するプラスチックボトル用のプリフォームであって、前記口部は、天面と、該天面から延びる外周面と、該天面から延びる内周面とを有し、前記天面は平坦面であり、前記外周面にはキャップと螺合するねじ部が形成されたプリフォームにおいて、前記天面と前記内周面との接合部の稜線に面取り部を形成し、前記面取り部は角面取りである、プリフォーム及びキャップ。」 [相違点1] 本願発明は、「インナーリングとコンタクトリングを備えたキャップ」であって、「前記キャップは、円板状の上部と上部の周縁から垂下される円筒状の胴部とを有し、前記コンタクトリングは、前記上部から垂下される環状の突起であり、前記インナーリングは、前記上部から垂下される環状の突起であり、前記インナーリングには、前記キャップの外方に突出し、前記内周面と接触する突出部が形成されており、前記コンタクトリングは、前記面取り部の前記天面側の端部近傍の前記天面で接触し、密閉性が向上する」のに対して、引用発明はキャップの具体的構造が不明である点。 [相違点2] プリフォームの口部について、本願発明は、「結晶化処理がされていない」ものであるのに対して、引用発明は結晶化処理がされているか否かが不明である点。 [相違点3] 面取り部について、本願発明は、「前記天面側の端部と、前記面取り部の前記内周面側の端部にそれぞれR取り部を形成し」ているのに対して、引用発明はR取り部が形成されていない点。 [相違点4] 本願発明は、「前記面取り部の径方向の幅が、0.15mm以上かつ0.45mm以下であ」るのに対して、引用発明は、面取りの径方向の幅が不明である点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について キャップにおいて、インナーリング、コンタクトリング、円板状の上部及び該上部の周縁から垂下される円筒状の胴部とを有し、インナーリングが前記上部から垂下される環状の突起であり、キャップの外方に突出し、口部の内周面と接触する突出部が形成されており、コンタクトリングが前記上部から垂下される環状の突起であるキャップは、例えば、上記第4(2)の摘記事項のように、従前周知の技術である。また、コンタクトリングは、口部と接触することで、密閉性が向上しているといえる。 そして、本願発明は、「キャップ」の発明であるから、プリフォームに係る記載は、インナーリングとコンタクトリングを備えたキャップの形状や寸法を特定するものと解されるところ、引用発明において、キャップを具体化するにあたって、上記周知技術を適用することは、当業者が容易になし得たことである。 また、コンタクトリングが面取り部の天面側の端部近傍の天面で接触するものは、例えば、特開2013-107677号公報の段落[0016]、[0017]、[図1]に、開口端シール突起13は、開口端面21bの面取り部の端部近傍で接触することが示されているとおり、従前周知のものであり、当該周知事項を適用することに、格別の困難性は認められない。 (2)相違点2について 引用文献1には、プリフォームの口部の結晶化処理について何ら記載がなく、示唆もない。したがって、引用発明のプリフォームの口部は結晶化処理されていないものを排除していない。 そして、例えば、上記第4(2)イ及びウの摘記事項のように、口部に結晶化処理したものもしないものも従前からよく知られているから、引用発明において、プリフォームの口部を結晶化処理していないものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)相違点3について 面取りにおいて、角面取部の両端部にそれぞれR取り部を形成することは、例えば、上記第4の(3)?(6)の摘記事項に示されているとおり、従来周知の事項である。 よって、引用発明の面取りにおいて、面取り部の天面側の端部と内周面側の端部にそれぞれR取り部をさらに形成することは、上記従来周知の事項を適用したにすぎず、当業者が容易になし得たことである。 (4)相違点4について 例えば、「Ottamar Brandau,“Bottles, Performs and Closures (Second Edition)”,2012年6月19日、p.158?161」の図4.42に口部の天面と内周面との角の寸法について「R 0.30±0.05」と記載されているように、面取り部の径方向の幅を0.30mm程度とすることは、従来周知の事項であるから、引用発明において、面取りの大きさを具体的に決定するに際して、径方向の幅を0.15mm以上かつ0.45mm以下の範囲とすることは、単に上記従来周知の数値を採用することで、当業者が容易になし得た事項である。 (5)本願発明の効果について そして、本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 第7 むすび したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そして、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-06-03 |
結審通知日 | 2020-06-09 |
審決日 | 2020-06-23 |
出願番号 | 特願2014-4652(P2014-4652) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(B65D)
P 1 8・ 537- WZ (B65D) P 1 8・ 121- WZ (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 一郎 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 杉山 悟史 |
発明の名称 | プリフォーム、プリフォームに装着できるキャップ、およびプラスチックボトル |
代理人 | 渡邊 敏 |