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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1365357 |
審判番号 | 不服2019-2678 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-27 |
確定日 | 2020-08-13 |
事件の表示 | 特願2014-193617「光学部材および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 65928〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2014-193617号(以下「本件出願」という。)は、平成26年9月24日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成30年 4月17日付け:拒絶理由通知書 平成30年 6月19日付け:意見書、手続補正書 平成30年11月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 平成31年 2月27日付け:審判請求書 平成31年 2月27日付け:手続補正書 令和 元年12月17日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 2月28日付け:意見書、手続補正書(この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。) 2 本願発明 本件出願の請求項1?13に係る発明は、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のものである。 「 偏光子と位相差フィルムと平滑化層とを有し、該位相差フィルムの周縁部に印刷層が形成されており、 該平滑化層が粘着剤で構成されており、 該印刷層がベゼルに対応する位置に形成され、 ベゼルのない画像表示装置の視認側偏光板として用いられる、 光学部材。」 3 当合議体の拒絶の理由の概要 令和元年12月17日付け拒絶理由通知書において通知した、当合議体の拒絶の理由の概要は、次のとおりのものを含む。 (1)(新規性)本件出願の請求項1、3、10、11、14?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて利用可能となった発明が記載された以下の引用文献に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し、特許を受けることができない。 (2)(進歩性)本件出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて利用可能となった発明が記載された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2007/055189号 第2 当合議体の判断 1 引用文献1の記載 引用文献1(国際公開第2007/055189号)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は、携帯電話機、スマートフォン等のディスプレイ装置を備える電子機器に用いられる意匠パネルに関する。 背景技術 [0002] 従来、前記電子機器においては、その内側にディスプレイ装置が配置され、当該ディスプレイ装置の表示面を外側から視認可能にするように形成された開口の全面を覆うように、ガラスやプラスチック板等の透明パネルが外側から取り付けられている。 ・・・省略・・・ 発明が解決しようとする課題 [0003] このように構成される従来の電子機器においては、パネルが透明であるために、デイスプレイ装置の表示面と透明パネルを保持する前記電子機器用筐体の前記開口周囲のフレーム部分との識別が、その透明パネル越しに容易にできる。近年、前記電子機器においては、使用者のデザインに対する要望が日増しに強まっており、ディスプレイ装置が文字や絵などの情報を表示面に表示している時に、その表示面と前記フレーム部分とがー目して識別できないようにする、すなわち、ディスプレイ装置の表示面を隠蔽することは、意匠的に非常に有用である。 ・・・省略・・・ [0006] 本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、ディスプレイ装置の情報表示時には、外側力もその表示面が視認できるようにするとともに、ディスプレイ装置の待機時には、その表示面を隠蔽できる意匠パネルを提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0007] 本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の意匠パネルを提供する。 ・・・省略・・・ 発明の効果 [0018] 本発明によれば、本意匠パネルを保持する電子機器用筐体の開口周囲のフレーム部分に対応する位置に黒色着色部を有しており、また、開口の部分には隠蔽部が設けられているので、ディスプレイ装置の待機時には、ディスプレイ装置の表示面と前記フレーム部分とは、本意匠パネル越しには一体化して見え、視覚的に識別(視認)することができない。したがって、使用者(観察者)からは、意匠パネルの外側からはディスプレイ装置を視覚的に判別することができず、本意匠パネルが黒色窓の意匠と受け止められる。すなわち、ディスプレイ装置の待機時は、ディスプレイ装置の存在を意識させない、のっぺりとした黒色窓の意匠を演出することが可能となる。 ・・・省略・・・ 発明を実施するための最良の形態 ・・・省略・・・ [0023] 《第1実施形態》 図1Aは、本発明の第1実施形態に係る意匠パネル1を用いた携帯電話機の基本構成を示す斜視図である。図1Bは、そのA-A断面の概略図である。 [0024] 意匠パネル1(図1A中の斜線部)は、アルミ等の金属や樹脂で形成された筐体2の一部表面に設けられた開口2aを外側から覆うように、開口2a周囲のフレーム部分2bに保持され、両面粘着テープ4によって貼り付けられている。筐体2の開口2aは、筐体2の内側に配置されたディスプレイ装置3の表示面3aを、外側から視認可能にするように形成されている。意匠パネル1は、開口2aよりも大きな面積を有するように形成され、ディスプレイ装置3の表示面3aと空気層4を挟んで対向するように配置されている。筐体2の開口2a側の上面(外面)2cは、意匠パネル1の上面1aと面一になるように形成されている。すなわち、開口2a及びフレーム部分2bは、筐体2の開口2a側の上面2cから凹んでおり、その凹みに意匠パネル1が嵌め込まれている。これにより、意匠性を向上させるとともに、意匠パネル1が筐体2から剥がれにくくなっている。 [0025] ディスプレイ装置3は、待機時、すなわち表示面3aに文字や絵などの情報を表示していない時、表示面3aが黒色である液晶ディスプレイ装置である。例えば、ディスプレイ装置が携帯電話機に用いられる場合においては、当該携帯電話機の非使用時に表示面3aが黒色一色であるときが「待機時」である。 ・・・省略・・・ [0028] 図3Aは、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1を用いた携帯電話機の一部拡大断面図であり、図3Bは、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1の構成を示す断面図である。意匠パネル1は、透明支持基板11と、透明支持基板11の下面11a全面に形成された隠蔽部12と、筐体2の開口2a周囲のフレーム部分2bの形状に合わせて隠蔽部12の下面に設けられた黒色着色部13とを有している。 ・・・省略・・・ [0031] 隠蔽部12は、外側から順に、図10Aに示すように、ディスプレイ装置3の上部偏光板40と吸収軸が同じになるように構成され、入射する光を直線偏光に変換する偏光フィルム14と、偏光フィルム14の吸収軸と光学軸とが45度又は135度(図10Aでは135°の状態を示す)の角度をなすように配置され、1/4波長の位相遅れを与えることで、直線偏光された光を円偏光に変換する1/4波長位相差フィルム15とを備えている。 ・・・省略・・・ [0036] 黒色着色部13は、例えば、筐体2の開口2a周囲のフレーム部分2bの形状に合わせて、1/4波長位相差フィルム15に直接印刷された黒色インキであってもよいし、図6に示すように、別の基材フィルム16に印刷された黒色インキであってもよい。別の基材フィルム16は、図6では1/4波長位相差フィルム15の下面15aに貼り合わせたが、1/4波長位相差フィルム15の上面15bに全面粘着剤にて貼り合わされても良い。また、この場合、黒色着色部13は、図6では別の基材フィルム16の上面16bに印刷したが、下面16aに印刷されてもよい。 ・・・省略・・・ [0039] 本発明の第1実施形態の意匠パネル1によれば、使用者(観察者)は、ディスプレイ装置3の待機時、表示面3aが黒色になり、その周囲のフレーム部分2bが黒色着色部13により黒色着色されるので、図7に示すように全体的に黒い窓のように見えて、両者の識別ができない。したがって、意匠パネル1の下方にあるディスプレイ装置3の存在を意識させない、のっぺりとした黒色窓の意匠を演出することが可能となる。一方、ディスプレイ装置3の点灯時には、図8に示すように、筐体2の外側力ディスプレイ装置3が視認できるようになっているので、ディスプレイ装置3の表示面3aの画像が浮かび上がってくるような意匠性に優れた演出をすることが可能になる。 ・・・省略・・・ [0048] 《第2実施形態》 ・・・省略・・・ 本発明の第2実施形態にかかる意匠パネル1Aは、隠蔽部12に代えて、図9A及び図9Bに示すように、偏光板14と1/4波長位相差フィルム15との間に1/2波長位相差フィルム17を備える隠蔽部12Aを有する点で、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1と異なる。それ以外の点については、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1と同様である。 ・・・省略・・・ [0051] 図11は、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1と、本発明の第2実施形態にかかる意匠パネル1Aの光の反射特性を示すグラフである。図11のグラフにおいては、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1の光の反射特性を実線で示し、本発明の第2実施形態にかかる意匠パネル1Aの光の反射特性を点線で示している。 ・・・省略・・・ [0053] ・・・省略・・・ 上記のように構成される本発明の第2実施形態にかかる意匠パネル1Aにおいては、図11に示すように、本発明の第1実施形態にかかる意匠パネル1に比べて、400nm付近の低波長領域から750nm付近の長波長領域にわたって光の反射率が一様に低く抑えられている。 したがって、本発明の第2実施形態にかかる意匠パネル1Aによれば、低波長領域及び長波長領域の光が意匠パネル1Aを透過するのをさらに抑えることができるので、意匠パネル1Aをより黒色窓のように見せて、意匠性を向上させることができる。」 イ [図1A] 「 」 ウ [図1B] 「 」 エ [図3A] 「 」 オ [図6] 「 」 カ [図7] 「 」 キ [図8] 「 」 ク [図9A] 「 」 ケ [図9B] 「 」 コ [図11] 「 」 2 引用文献1に記載された発明 引用文献1の[0024]、[0028]、[0031]、[0036]、[0039](特に、[0036])には、図6に記載された、第1実施形態にかかる意匠パネル1(図1A?図1B、図3A)のさらに他の構成として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 透明支持基板11と、透明支持基板11の下面11a全面に形成された隠蔽部12と、黒色着色部13とを有する意匠パネル1であって、 隠蔽部12は、外側から順に、入射する光を直線偏光に変換する偏光フィルム14と、偏光フィルム14の吸収軸と光学軸とが45度又は135度の角度をなすように配置され、直線偏光された光を円偏光に変換する1/4波長位相差フィルム15とを備え、 黒色着色部13は、別の基材フィルム16に印刷された黒色インキであってもよく、別の基材フィルム16は、1/4波長位相差フィルム15の上面15bに全面粘着剤にて貼り合わされても良く、黒色着色部13は、別の基材フィルム16の下面16aに印刷されてもよく、 意匠パネル1は、携帯電話機の筐体2の一部表面に設けられた開口2aを外側から覆うように、開口2a周囲のフレーム部分2bに保持され、貼り付けられ、筐体2の開口2aは、筐体2の内側に配置されたディスプレイ装置3の表示面3aを、外側から視認可能にするように形成され、 使用者は、ディスプレイ装置3の待機時、表示面3aが黒色になり、その周囲のフレーム部分2bが黒色着色部13により黒色着色されるので、全体的に黒い窓のように見えて、両者の識別ができない、 意匠パネル1。」 3 対比及び判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 ア 偏光子、位相差フィルム 引用発明の「意匠パネル1」は、「透明支持基板11と、透明支持基板11の下面11a全面に形成された隠蔽部12」を有し、「隠蔽部12は、外側から順に、入射する光を直線偏光に変換する偏光フィルム14と、偏光フィルム14の吸収軸と光学軸とが45度又は135度の角度をなすように配置され、直線偏光された光を円偏光に変換する1/4波長位相差フィルム15とを備え」る。 引用発明の「偏光フィルム14」及び「1/4波長位相差フィルム15」は、その機能からみて、それぞれ本願発明の「偏光子」及び「位相差フィルム」に相当する。 イ ベゼル 本願発明の「ベゼル」は、通常、画像表示装置における非表示領域を覆う額縁を意味する。そうすると、機能的にみて、引用発明の「フレーム部分2b」が、本願発明の「ベゼル」に相当する。 ウ 印刷層 引用発明の「黒色着色部13は、」「別の基材フィルム16に印刷された黒色インキであって」、引用発明の「意匠パネル1」の積層構造において「かさなりをなすものの一つ」を構成している。そうすると、引用発明の「黒色着色部13」は、本願発明の「印刷層」に相当する。 (当合議体注:「層」は、「かさなりをなすものの一つ」を意味する。(広辞苑第7版、岩波書店)) また、引用発明の「意匠パネル1は、携帯電話機の筐体2の一部表面に設けられた開口2aを外側から覆うように、開口2a周囲のフレーム部分2bに保持され、貼り付けられ、筐体2の開口2aは、筐体2の内側に配置されたディスプレイ装置3の表示面3aを、外側から視認可能にするように形成され」、「使用者は、ディスプレイ装置3の待機時、表示面3aが黒色になり、その周囲のフレーム部分2bが黒色着色部13により黒色着色されるので、全体的に黒い窓のように見えて、両者の識別ができない」ものである。 上記の位置関係からみて、引用発明の「フレーム部分2b」は、「位相差フィルム」を含む「意匠パネル1」の周縁部に位置する。 そうしてみると、引用発明の「黒色着色部13」は、本願発明の「印刷層」における、「位相差フィルムの周縁部に」「形成されており」及び「ベゼルに対応する位置に形成され」という要件を満たす。 エ 平滑化層 引用発明の「意匠パネル1」において、「黒色着色部13は、別の基材フィルム16に印刷された黒色インキであってもよく、別の基材フィルム16は、1/4波長位相差フィルム15の上面15bに全面粘着剤にて貼り合わされても良く、黒色着色部13は、下面16aに印刷されてもよい、意匠パネル1であ」る。 ここで、意匠パネル1において、「全面粘着剤」からなる層(以下「粘着剤層」という。)が、別の基材フィルム16の下面16aにおける黒色着色部13に起因した段差を多少なりとも吸収する、すなわち、平滑化する機能を有することは明らかである。 そうすると、引用発明の「粘着剤層」は、本願発明の「平滑化層」に相当する。また、引用発明の「粘着剤層」は、本願発明の「平滑化層」における、「粘着剤で構成されており」という要件を満たす。 オ 光学部材 引用発明の「意匠パネル1」は、「偏光フィルム14」及び「1/4波長位相差フィルム15」を有する点において、光学部材といえる。 そして、上記ア、ウ及びエを総合すれば、引用発明の「意匠パネル1」は、本願発明の「光学部材」における、「偏光子と位相差フィルムと平滑化層とを有し、該位相差フィルムの周縁部に印刷層が形成されており」という要件を満たす。 カ 光学部材と画像表示装置の関係 引用発明の「意匠パネル1」は、前記アで述べた構成を有し、また、「携帯電話機」の「ディスプレイ装置3」と、前記ウで述べた位置関係にある。 ここで、引用発明の「意匠パネル1」は、「透明支持基板11」及び「偏光フィルム14」を備えることから、偏光板ともいえる。また、引用発明の「意匠パネル1」は、「携帯電話機」の「ディスプレイ装置3」の視認側の偏光板として用いられるものである。 以上によれば、引用発明の「意匠パネル1」と、本願発明の「光学部材」とは、「画像表示装置の視認側偏光板として用いられる」という点において共通する。 (2)一致点及び相違点 ア 一致点 本願発明と引用発明は、次の構成で一致する。 「 偏光子と位相差フィルムと平滑化層とを有し、該位相差フィルムの周縁部に印刷層が形成されており、 該平滑化層が粘着剤で構成されており、 該印刷層がベゼルに対応する位置に形成され、 画像表示装置の視認側偏光板として用いられる、 光学部材。」 イ 相違点 本願発明と引用発明とは、次の点で一応相違する。 (相違点) 「光学部材」が、本願発明は、「ベゼルのない画像表示装置の視認側偏光板として用いられる」ものであるのに対して、引用発明は、「携帯電話機の筐体2の一部表面に設けられた開口2aを外側から覆うように、開口2a周囲のフレーム部分2bに保持され」るものである(ベゼルのある画像表示装置の視認側偏光板として用いられる)点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 引用文献1には、引用発明の「意匠パネル1」を、「ベゼルのない画像表示装置」の「視認側偏光板」として用いることは記載されていない。しかしながら、引用発明の「意匠パネル1」が、「ベゼルのない画像表示装置の視認側偏光板として用いられる」ことに適したものであれば、物としての相違点を見いだすことができず、上記相違点は、実質的な相違点とはいえない。 この点について、以下検討する。 引用発明の「意匠パネル1」は、「使用者は、ディスプレイ装置3の待機時、表示面3aが黒色になり、その周囲のフレーム部分2bが黒色着色部13により黒色着色されるので、図7に示すように全体的に黒い窓のように見えて、両者の識別ができない」ものである。そして、このような効果は、「遮蔽部12」及び「黒色着色部13」がともに十分な遮光性を備え、同程度に黒色に着色されることで得られる効果といえる。 そうすると、引用発明の「意匠パネル1」を、「ベゼルのない画像表示装置の視認側偏光板」として用いた場合であっても、上記十分な遮光性を備える「遮蔽部12」及び「黒色着色部13」が、ディスプレイ装置の表示面及び非表示領域(周縁部)を十分に遮蔽し、両者の識別ができなくなると認められる。 また、引用発明の「意匠パネル1」は、その「ディスプレイ装置3」側の面が、「1/4位相差フィルム15」の下面(平坦な面)であり、「ディスプレイ装置3」に貼り合わせるのに好適な構成を具備する。 あるいは、仮に、引用発明における「黒色着色部13」が十分な遮光性を備えていなかったとしても、上記効果をより一層高めるために、例えば、「黒色着色部13」の厚さを十分に厚くしたり、黒色顔料の濃度を十分に高く設計したりすることは、引用発明の目的に適うものである。 そして、そのように設計された意匠パネルは、上記相違点に係る用途に適したものとなる。 (当合議体注:「黒色着色部13」の遮光性を一層高めることが、引用発明の目的に適うことは、引用文献1の[0048]?[0053]及び図11に記載された、第2実施形態にかかる意匠パネル1Aが、引用発明の「意匠パネル1」を改良したものであることからも理解できることである。) 以上のとおりであるから、相違点は、実質的な相違点ではないか、または、当業者の通常の創意工夫の範囲内の事項である。 (4)発明の効果 本件出願の明細書の【0006】には、発明の効果として、「ベゼルを用いずに画像表示装置の非表示領域を隠蔽することができる、その結果、最表面に段差がなく、きわめて優れた外観を有する画像表示装置を実現することができる。」と記載されている。 しかしながら、上記(3)で述べたとおり、上記効果は、引用発明の意匠パネルも奏する効果である。あるいは、引用発明から容易に想到し得る発明が奏する効果である。 (5)審判請求人の主張 審判請求人は、令和2年2月28日付け意見書において、引用文献1の発明は、ベゼルを印刷層で代替する本願発明とは明確に異なる点を主張する。 しかしながら、本願発明は、光学部材という物に関する発明であり、引用発明と本願発明との間に、物としての相違点が見いだせないことは、既に述べたとおりである。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 第3 むすび 本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し、特許を受けることができない。あるいは、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-06-04 |
結審通知日 | 2020-06-09 |
審決日 | 2020-06-26 |
出願番号 | 特願2014-193617(P2014-193617) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
P 1 8・ 113- WZ (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小西 隆 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 里村 利光 |
発明の名称 | 光学部材および画像表示装置 |
代理人 | 籾井 孝文 |