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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B66B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B66B
管理番号 1365358
審判番号 不服2019-2725  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-27 
確定日 2020-08-13 
事件の表示 特願2018-526822「交換工事方法および信号変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月4日国際公開、WO2019/064400〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)9月27日を国際出願日とする出願であって、平成30年5月23日に手続補正がされ、同年7月6日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月18日に意見書の提出及び手続補正がされたが、同年11月30日付けで拒絶査定(原査定)がされた。これに対して、平成31年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和1年12月13日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和2年1月29日に意見書の提出及び手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?15に係る発明は、令和2年1月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項8】
カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、当該エレベーターが備える複数の構成部を制御する制御盤を、当該制御盤とは別の種類の新制御盤に交換する際に、当該新制御盤と前記構成部との間に接続され、
前記新制御盤から出力される、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる下り信号の入力を受け付ける入力部と、
前記下り信号を、当該伝達情報にかかる下り信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換部と、
前記信号変換部が変換した、前記伝達情報にかかる信号を、前記構成部へ出力する出力部と、
を備えたことを特徴とする信号変換装置。」

第3 当審拒絶理由通知の概要
補正前の請求項1?15に係る発明に対して、当審が通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。

1)この出願の請求項1?3、5?10、13?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2)この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-12161号公報

第4 当審の判断
1 引用文献1の記載
引用文献1には、「エレベータのリニューアル方法及びリニューアルされたエレベータ装置」に関し、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
(1)
「【請求項3】
昇降路側に、エレベータの運行を制御する機器が設けられ、前記昇降路外に設けられた制御装置は、これら各機器との間にそれぞれ設けられた配線によりパラレル通信方式で信号授受を行うと共に、このパラレル通信方式による配線の中間部には、前記配線を昇降路側と制御装置側に区分し、かつ、これらの間をそれぞれ突き合わせ接続する集線ボックスを設けた既存方式のエレベータ装置を、新規な制御装置を有し、この新規な制御装置が用いるシリアル通信方式を用いて各機器との信号授受を行う新方式にリニューアルされたエレベータ装置であって、
前記各機器から前記集線ボックスまでにそれぞれ配線された既存の配線と、
前記集線ボックスと前記新規な制御装置との間に敷設されたシリアル通信方式の配線と、
この集線ボックス内に設けられ、各制御機器との間の前記既存の配線によりパラレル信号の授受を行い、前記新規な制御装置との間では前記シリアル通信方式で信号の授受を行い、これらパラレル信号をシリアル通信方式へ、また、シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する信号変換ユニットと、
を備えたことを特徴とするリニューアルされたエレベータ装置。」
(2)
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、旧方式から新方式にリニューアルするエレベータのリニューアル方法及びリニューアルされたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、比較的低層の建物におけるエレベータ装置としては、機械室を昇降路直上や昇降路に近接した場所に設置しなくてよく、高さ制限といった建物でのレイアウト制限を余り受けないことから油圧式のエレベータ装置が多く設置されていた。このようなエレベータ装置がリニューアルの時期を迎えた場合、最近では省エネルギー化など環境への対応が重視されていることから、マシンルームレスエレベータヘのリニューアルが行われるケースが多くなっている。
【0003】
従来、油圧式のエレベータ装置をリニューアルする場合は、これまで使用してきた用品類を昇降路より撤去し、マシンルームレスエレベータに更新するといった方法が採られる。
【0004】
しかし、この方法では工事期間中、エレベータは全面停止するので、建物での上下移動設備が失われることとなる。工事期間は規模にもよるが3週間以上になることもあり、該当期間は建物利用者に不便を強いることとなっていた。
【0005】
そこで撤去する用品は最小限に留め、昇降駆動用の油圧シリンダを残存させ、この油圧シリンダで乗りかごの昇降駆動を継続しながら、夜間など運転が行われない時間帯に、昇降路内の隙間の空間に、マシンルームレスエレベータ用の巻上機などの用品を配置する所謂,間欠的停止により工事を行い、しかるべき時点で全面停止して、残工事工程を完了させるというような工法が考えられている。
・・・(中略)・・・
【0007】
このように、油圧エレベータのリニューアルエ事において、再度油圧エレベータが設置されることは少なくなり、機械室なしのエレベータを設置する傾向にある。この時、旧用品は全撤去し、新しく用品類を昇降路内に設置していく方法が主流であったが、撤去ならびに新既用品取付にかかる期間、エレベータは当然のごとく連続して利用が出来ない。そこで間欠停止する期間、完全に停止しなければならない期間とを分けて利用停止期間の短縮を図る方法が考えられるようになっている。この中で、昇降路内を引き回す配線を扱う工程は、その撤去及び新たな敷設作業に長時間を要する。
【0008】
通常、リニューアルに当たっては、エレベータの運転制御などに用いる信号の取り扱い方式が異なってくることから、旧方式での配線撤去及び新方式での配線敷設作業が必要となる。これらの作業はエレベータを完全停止する期間に行わなければならないことから、停止期間、ひいては工事期間の短縮を実現する上での障害となっていた。すなわち、昇降路内外の配線取付ならびに引き回しは、撤去新設において時間を消費する工程であり、しかも、エレベータを完全に停止しなければならない期間でもある。
【0009】
したがって、これら信号の取り扱い方式が異なる場合の、配線の取り扱い期間を如何に短縮できるかが、工事日程を短縮するための大きなポイントとなる」
(3)
「【0019】
図3は、上記従来方式における昇降路10側のパラレル配線の敷設状態を表す図である。図3において、図示しない乗りかごから導出されたテールコード11は、昇降路10の中間高さ地点に設けられた中間支持部12を経て、昇降路10内下部に設けられた集線ボックス13内に、その図示左側面に形成された開口13aから挿入される。このテールコード11は、乗りかご内に設けられた表示器や操作ボタンスイッチなどの機器とそれぞれ接続するパラレル配線を有し、これら各機器からの信号を外部に設けられた制御装置14に伝えると共に、外部の制御装置14からの表示制御信号を、乗りかご側の各機器に伝えるものである。
【0020】
また、乗りかごが停止する各階ホールには、乗場呼び用のスイッチや表示器などの機器15がそれぞれ設けられている。これら各ホールの機器15にも、それぞれ信号授受用の配線16がパラレル配線されており、それらの図示していない各端部も、集線ボックス13内に開口13aを通って挿入される。
【0021】
さらに、昇降路10内には、乗りかごの位置を検出して、それを停止制御するためのリミットスイッチなどの機器17が複数個設置されている。これら昇降路10内の各機器17にも、それぞれ信号授受用の配線18がパラレル配線されており、それらの図示していない各端部も、集線ボックス13内に開口13aを通って挿入される。
【0022】
集線ボックス13内に開口13aを通って挿入された各配線11,16,18の端部は、集線ボックス13において、外部制御装置14への図示しない配線束の先端とそれぞれ突合せ接続される。この配線束は、昇降路10壁に穿たれた開口19を通って外部に導出され、配線ダクト20により、機械室などに設けられた既設の制御装置14まで敷設される。
【0023】
この実施の形態では、上述した昇降路10側の集線ボックス13までの配線11,16,18は撤去せずに、そのまま利用する。一方、既存の制御装置14は、それが設けられた機械室がそもそも廃しされるので、配線ダクト20と共に撤去される。そして既存の油圧に変わるロープ式エレベータ用の新規な制御装置が適切な設置場所に設置される。このため、集線ボックス13と新規な制御装置との間はシリアル通信方式の配線を新たに施し、この集線ボックス13内には信号変換ユニットを設ける。
・・・(中略)・・・
【0025】
集線ボックス内に設けられる信号変換ユニットは、各機器との間で授受される既存の配線によるパラレル信号と、新規な制御装置との間で授受されるシリアル通信方式による信号との相互変換を可能とするものである。すなわち、パラレル信号をシリアル通信方式へ、また、シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する。この信号変換ユニットを介して昇降路10側の各機器と新たな制御装置との間で相互に信号通信を行う。
【0026】
図2は集線ボックス13を、そのカバーを取り去った状態で示す構成図である。集線ボックス13は昇降路10の下部、ただし最下階レベルよりは上部に設置されている。その側面両側の中央部には配線を入線するための開口13a,13bが設けられている。これら関ロ13a,13bのうち、一方13aには、前述のようにテールコードを含む昇降路10内外からの配線11,16,18が入線し、他方13bには制御装置から来る配線が入線する。従来は、これら配線端末はコネクタ加工されており、ボックス13内に設置した上下2段のケーブル懸架用パイプ22に対しケーブルを載せて固定し、端末コネクタをフリーハンギングで接続するというのが通例で、この集線ボックス13の内部で突き合わせ接続されていた。
【0027】
しかし、リニューアル後の制御装置は、昇降路10側の各機器側に通信装置があることを前提としたシリアル通信方式であり、各機器と制御装置との間で通信することで信号入出力を行い、操作や表示を可能としている。よって、基本的に電源ならびに1対のツイスト信号線を敷設接続すれば良い。
【0028】
この実施の形態では、昇降路10内はもちろんのこと、ホール表示装置といった昇降路10外や乗りかごからの信号配線は全て集線ボックス13に配線されている。したがって、集線ボックス13に入線した一方はパラレル配線であり、他方はリニューアル後におけるシリアル配線であるため、信号方式が異なる。したがって、ボックス13内で直接接続することができない。そこで、集線ボックス13に信号変換ユニット24を取り付ける。
【0029】
この信号変換ユニット24は、図1で示すように、基板上に設けられた電源ユニット33、変換処理ユニット34及びその自己診断確認ユニット35、通信内容処理ユニット36、既設信号入出力ユニット37を有し、外部との接続用として電源入力コネクタ31、伝送信号接続コネクタ32、既存信号接続コネクタ38を有する。
【0030】
昇降路10側の配線11,16,18は、集線ボックス13内において、図1で示した既存信号コネクタ38にそれぞれ接続される。また、新規な制御装置との間のシリアル通信方式による配線は、伝送信号コネクタ32に接続される。電源入力コネクタ31には、図示しない電源線が接続されるので、電源ユニット33は、この電源入力コネクタ31により入力された電源を変換処理ユニット34及び既設信号入出力ユニット37に供給する。
【0031】
昇降路10側に設けられた各機器からの既設配線を介したパラレル信号は、既設信号接続コネクタ38を介して入力され、既設信号入出力ユニット37を経て変換処理ユニット34に入力され、ここでシリアル通信用の信号に変換される。その後、通信内容処理ユニット36及び伝送信号接続コネクタ32を経て、シリアル通信方式により新たな制御装置に送信される。
【0032】
反対に、新たな制御装置からの信号は、伝送信号接続コネクタ32および通信内容処理ユニット36を経て変換処理ユニット34に入力され、ここでシリアル通信用の信号から、各機器へのパラレル信号に変換され、既設信号入出力ユニット37及び既存信号接続コネクタ38を経て、対応する機器へ出力される。
・・・(中略)・・・
【0034】
このようにすれば、集線ボックス13から昇降路10側の機器側配線を撤去新設することなく、そのまま流用して工事を進めることが可能となる。また、新規の制御装置からは、集線ボックス13に収納した信号変換用基板24までの通信線のみを引き回し接続することで機器配線の工程を終了できる。このように、配線の撤去ならびに取付引き回しの工程を省略することで、工期の短縮が可能となる。」

2 引用文献1に記載の発明
引用文献1には、「エレベータのリニューアル方法及びリニューアルされたエレベータ装置」に関する記載が成されているところ、段落【0001】?【0007】の記載内容からすれば、引用文献1に記載のエレベータのリニューアルは、群管理された複数のエレベータの各自をリニューアルするものではなく、乗りかごが一つのみ設けられたエレベータをリニューアルするものであると認定できる。
また、引用文献1の段落【0019】に記載された、乗りかご内に設けられた表示器や操作ボタンスイッチなどの「機器」、段落【0020】に記載された、乗りかごが停止する各階ホールに設けられた、乗場呼び用のスイッチや表示器などの「各ホールの機器15」、及び、段落【0021】に記載された、昇降路10内に設けられた、乗りかごの位置を検出して、それを停止制御するためのリミットスイッチなどの「昇降路10内の各機器17」は、「エレベータの運行を制御するための複数の機器15,17等」と認定できる。
上記認定事項及び引用文献1の、特に、【請求項3】及び【請求項4】並びに【図1】?【図3】の記載内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「引用発明」
「乗りかごが一つのみ設けられたエレベータ装置であって、エレベータの運行を制御するための複数の機器15,17等とパラレル通信方式で信号授受を行う既存の制御装置14をシリアル通信方式の新たな制御装置にリニューアルする際に、当該新たな制御装置と前記各機器15,17等との間に接続され、
前記各機器15,17等からのパラレル通信方式の信号をシリアル信号へ、また、新たな制御装置からのシリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換することにより、前記各機器15,17等と新たな制御装置との間で相互に信号通信を行う、信号変換ユニット24。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「乗りかごが一つのみ設けられたエレベータ装置」は、本願発明の「カゴが一つのみ設けられたエレベーター」に相当する。
以下同様に、
「エレベータの運行を制御するための複数の機器15,17等」は、「エレベーターが備える複数の構成部」に、
複数の機器15,17等と「パラレル通信方式で信号授受を行う」ことは、技術的意味からみて、複数の機器を「制御する」ことに、
「既存の制御装置14」は、「制御盤」に、
「シリアル通信方式の新たな制御装置」は、「当該制御盤とは別の種類の新制御盤」に、
「リニューアル」は、「交換」に、
「当該新たな制御装置と前記各機器15,17等との間に接続され」ることは、「当該新制御盤と前記構成部との間に接続され」ることに、それぞれ相当する。
また、引用発明の「信号変換ユニット」は、「前記各機器15,17等と新たな制御装置との間で相互に信号通信を行う」ために、「パラレル通信方式の信号をシリアル信号へ」、また、「シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する」ものであり、「信号変換ユニット」が、新たな制御装置及び複数の機器(各機器)15,17等それぞれに対して入出力する信号を受け付ける入出力部を備えることは技術的に明らかといえる。そして、制御装置から制御対象の機器に発せられる信号を「下り信号」と定義すれば、逆は、「上り信号」となる。
さらに、引用発明の「信号変換ユニット24」は、新たな制御装置から各機器15,17等へのシリアル通信方式の信号(下り信号)を、各機器が理解できる別の信号であるパラレル信号へと変換するものである。
してみると、引用発明の「前記各機器15,17等からのパラレル通信方式の信号をシリアル信号へ、また、新たな制御装置からのシリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する」「信号変換ユニット24」は、本願発明の「前記新制御盤から出力される、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる下り信号の入力を受け付ける入力部と、前記下り信号を、当該伝達情報にかかる下り信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換部と、前記信号変換部が変換した、前記伝達情報にかかる信号を、前記構成部へ出力する出力部と、を備えた」「信号変換装置」との対比において、少なくとも、「前記新制御盤から出力される、当該新制御盤から前記構成部への下り信号の入力を受け付ける入力部と、前記下り信号を、前記構成部が理解できる、別の信号へ変換する信号変換部と、前記信号変換部が変換した信号を、前記構成部へ出力する出力部と、を備えた」「信号変換装置」との限度で共通する。
以上のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、
「カゴが一つのみ設けられたエレベーターであって、当該エレベーターが備える複数の構成部を制御する制御盤を、当該制御盤とは別の種類の新制御盤に交換する際に、当該新制御盤と前記構成部との間に接続され、
前記新制御盤から出力される、当該新制御盤から前記構成部への下り信号の入力を受け付ける入力部と、
前記下り信号を、前記構成部が理解できる、別の信号へ変換する信号変換部と、
前記信号変換部が変換した信号を、前記構成部へ出力する出力部と、を備えた信号変換装置。」
との点で一致する。
そして、本願発明と引用発明とは、
本願発明は、新制御盤から出力される下り信号が、「当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる」「信号」であり、「信号変換部」において、「当該伝達情報にかかる下り信号と同じ意味の信号であって」、「当該伝達情報にかかる別の信号へ変換」し、出力するものであるのに対し、引用発明は、新たな制御装置から出力される信号が「シリアル通信方式の信号」であり、「信号変換ユニット」において、「シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ」変換し、出力するものである点で一応相違する。

4 判断
上記一応の相違点について検討する。
(1)本願発明における「伝達情報にかかる」「信号」とは、例えば、エンコーダの信号、各種センサの信号、操作ボタン信号、呼びボタン信号などの、各構成部における具体的な構成から制御盤へと発せられる、構成に応じた構成特有の信号、あるいは、制御盤が各構成部の具体的な構成を制御するための、構成に応じた構成特有の信号である(本願明細書の段落【0033】、【0042】、【0047】、【0048】、【0052】、【0054】、【0056】、【0059】、【0060】、【0061】及び【0062】。)。
これに対して、引用発明における信号は、「前記各機器15,17等と新たな制御装置との間で相互に信号通信を行」い各機器を制御するもの、引用発明の実施例に即していえば、乗りかご内に設けられた表示器や操作ボタンスイッチの信号、乗場呼び用のスイッチや表示器の信号、昇降路内に設置されたリミットスイッチの信号であり(引用文献1の段落【0019】?【0021】を参照。)、各機器15,17等から新たな制御装置へと発せられる、機器に応じた機器特有の信号、あるいは、新たな制御装置が各機器15,17等の具体的な構成を制御するための、機器に応じた機器特有の信号であり、本願発明の「伝達情報にかかる」「信号」と何ら相違するものではない。
また、引用発明の「信号変換ユニット」は、その技術的意義及び配置からみて、新たな制御装置から発せられるシリアル信号を、各機器15,17等で同じ意味のものとして理解可能なパラレル信号に変換するものであるとともに、各機器15,17等から発せられたパラレル信号を、新たな制御装置で同じ意味のものとして理解可能なシリアル信号に変換するものである。
してみると、引用発明の「パラレル通信方式の信号をシリアル信号へ」、また、「シリアル通信方式の信号をパラレル信号へ、それぞれ変換する」「信号変換ユニット」は、本願発明の「前記新制御盤から出力される、当該新制御盤から前記構成部への伝達情報にかかる下り信号の入力を受け付ける入力部と、前記下り信号を、当該伝達情報にかかる下り信号と同じ意味の信号であって、前記構成部が理解できる、当該伝達情報にかかる別の信号へ変換する信号変換部と、前記信号変換部が変換した、前記伝達情報にかかる信号を、前記構成部へ出力する出力部と、を備えた」「信号変換装置」に相当するといえる。
したがって、上記一応相違するとした点は、実質的な相違点であるとはいえない。
(2)仮に、上記一応の相違点が実質的な相違点であるとしても、引用発明における各機器15,17等と新たな制御装置との技術的な関係に鑑みれば、両者の信号を、上記相違点に係る本願発明の「伝達情報」にかかる「信号」とすることは当業者であれば容易に想到しうるものであり、その作用効果も格別顕著なものということはできない。
(3)よって、本願発明は引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明であるか、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求人は、令和2年1月29日提出の意見書において、次のように主張する。
「この引用文献1に記載の発明における信号変換ユニットは、単に信号の通信方式をパラレル通信方式(各信号を複数の信号線(パラレル配線(段落[0018]?[0021]、[0028]))を用いて送信する通信方式)からシリアル通信方式(各信号を一本の信号線(シリアル配線(段落[0028]))を用いて送信する通信方式)へ、あるいは、シリアル通信方式からパラレル通信方式へと変換しただけ(通信方式のみが変換されただけ)であって、本願発明における『伝達情報にかかる信号』を別の信号に変換するという構成を備えてはおりません。具体的には、この信号変換ユニットは、構成部においてパラレルに出力された各『伝達情報にかかる信号』を(パラレル配線の各信号線からそれぞれ)入力し、いずれの『伝達情報にかかる信号』をも変換することなく、各『伝達情報にかかる信号』を(シリアル配線の一本の信号線から)シリアルに順次出力しているだけの構成であると思量します。すなわち、本願発明にかかる『伝達情報にかかる信号』については何ら変換処理がなされてはおりませんので、たとえば、構成部から出力された伝達情報にかかる信号を、当該伝達情報にかかる別の信号へは変換することはできないものであると思量します。引用文献1に記載の発明には、具体的に信号の通信方式をどのように変換しているかについての明確な記載はありませんが、一般的な技術常識として、通信方式におけるパラレル-シリアル変換は、このようなものであることは明らかです。また、引用文献1に記載の発明には、信号の通信方式をパラレル-シリアル変換する以外に、さらに、別の信号に変換していることについての記載も示唆もありません。
したがって、この信号変換ユニットから、本願発明の信号変換装置を当業者が容易に想到することはできないことから、補正後の本願発明は、引用文献1にかかる発明とは同一ではなく、かつ、引用文献1にかかる発明を勘案しても十分に進歩性を有しているものと思量します。」(第5ページ第2行?第23行。)
しかしながら、パラレル通信規格、シリアル通信規格ともに、数多くの規格が存在し、その規格ごとに信号の形式(例えば、信号電圧、信号長、ビット数、ヘッダ、フッタ、タイミング制御信号、フロー制御信号等の取決め(いわゆる通信プロトコル))が異なるものであることは技術常識であるといえる。
そのため、あるパラレル通信規格の信号をシリアル通信規格の信号にする装置においては、パラレルに入力された各伝達情報にかかる信号を、何ら変換することなく、シリアルに順次出力しているものではなく、出力先のシリアル通信の規格に定まった信号に加工変換して出力しているものであるといえる。
したがって、引用発明においては、伝達情報にかかる信号について変換処理がなされていないということを根拠とした、請求人の上記主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-03 
結審通知日 2020-06-09 
審決日 2020-06-24 
出願番号 特願2018-526822(P2018-526822)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (B66B)
P 1 8・ 121- WZ (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽月 竜治  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 井上 信
尾崎 和寛
発明の名称 交換工事方法および信号変換装置  
代理人 酒井 昭徳  
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