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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1365372
審判番号 不服2019-11552  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-03 
確定日 2020-08-13 
事件の表示 特願2016-184230号「登録装置、システム、方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月29日出願公開、特開2018- 49443号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月21日に出願されたものであって、平成30年9月21日に手続補正書及び上申書が提出され、平成31年2月12日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年5月23日付けで拒絶査定がされ、同年9月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、令和1年9月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「店員の操作に基づいて顧客の購入対象の商品を登録するための登録装置と、当該顧客の操作に基づいて精算処理を行うための精算装置とを有し、
前記精算装置は、釣り銭を検知する検知手段を有し、
前記登録装置は、前記検知手段により釣り銭が検知されていない精算装置を前記商品の登録データの送信先として選択可能とする制御手段を有する
システム。」

第3 原査定の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1?3、5?9、11?13
・引用文献 1?3

・請求項 4
・引用文献 1?4

・請求項 10、14
・引用文献 4?5

<刊行物等一覧>
引用文献1.特開2014-86032号公報
引用文献2.特開2016-162108号公報
引用文献3.特開2012-48319号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2013-242839号公報
引用文献5.特開2010-237910号公報

なお、令和1年9月3日に提出された手続補正書により、補正前の請求項10、14を削除し、請求項1?9、11?13を、請求項1?12とする補正がされている。

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
購入する商品を登録し、当該登録した商品の取引に関するデータを複数の精算装置のうちいずれかに送信する商品登録装置と、前記取引に関するデータに基づき精算する複数の前記精算装置とを有するPOSシステムであって、
前記商品登録装置は、
前記精算装置において発生した障害に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が障害に関する情報を取得すると、当該障害の発生した前記精算装置への前記取引に関するデータの送信を禁止する禁止手段と、
を備えることを特徴とするPOSシステム。」

(1b)「【0017】
商品登録装置20は、客が購入しようとする商品のデータを登録する処理を行う。データの登録は、例えば、商品に付されているバーコードを読み取ることで行う。そのため、商品登録装置20には、例えば、客が購入する商品に付されたバーコードを店員の操作により読み取るスキャナが設けられている。」

(1c)「【0022】
一方、精算装置30は、客が自ら操作して精算処理を行うための装置であって、自動釣銭機やカードリーダ(例えばクレジットカードやポイントカード用)、RF(Radio Frequency)リーダ(例えば電子マネー用)などの決済用の機器を備えている。」

(1d)「【0056】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、障害に関する情報を入出金不可情報としたが、これに限らず、例えば、精算装置30の備える自動釣銭機やクレジットカードリーダ、電子マネーリーダ、プリンタ、スキャナ、タッチパネル等の故障に関する情報等であってもよい。・・・」

(2)認定事項
記載事項(1a)の「購入する商品」は、客が購入する商品であることが明らかである。
また、記載事項(1b)の「客が購入しようとする商品のデータを登録する」のは、店員の操作によるものであることが明らかである。

(3)引用発明
上記(1)、(2)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「店員の操作により客が購入する商品を登録し、当該登録した商品の取引に関するデータを複数の客が自ら操作して精算処理を行う精算装置のうちいずれかに送信する商品登録装置と、前記取引に関するデータに基づき精算する複数の前記精算装置とを有するPOSシステムであって、
前記商品登録装置は、
前記精算装置において発生した障害に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が障害に関する情報を取得すると、当該障害の発生した前記精算装置への前記取引に関するデータの送信を禁止する禁止手段と、
を備えるPOSシステム。」

2 引用文献2
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【0005】
スーパーマーケットの管理者(店長等)は、多数の商品登録装置と決済装置のそれぞれについて動作状態などを管理し、また商品登録装置や決済装置を使用する従業員や買物客の状態を把握したいという要求がある。」

(2b)「【0114】
図14は、例えば決済装置12Aから異なるタイミングで「釣銭機補充」と「お釣り取り忘れ」の通知があった場合の表示例を示す図である。
【0115】
「釣銭機補充」と「お釣り取り忘れ」を通知した決済装置12Aに対応するシンボルが選択されると、CPU20aは、図14に示すように、シンボルの近傍に、例えば「釣機補充」の通知内容83と「お釣り取り忘れ」の通知内容84を同時に表示する。このように、複数の通知が異なるタイミングで出力される場合あっても、1つのシンボルを選択することで、1つの装置に関する複数の通知内容を同時に確認することができる。」

3 引用文献3
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3a)「【0018】
ここで、図3および図4を用いて、硬貨払出口214の構造について説明する。図3および図4は、硬貨払出口の構造を示す拡大図である。図3および図4に示すように、硬貨払出口214は、ベースハウジング202aの奥側の位置に配置されている。そして、硬貨払出口214は、ベースハウジング202aの上方に向って開口した開口部214aを有するとともに、払い出された硬貨を保持する釣皿214bを有している。釣皿214bは、その底部214cの裏面(開口部214aが設けられた面と反対側の面)に、磁気センサ214dを有している。磁気センサ214dは、通常、ベースハウジング202aの上方に向って高周波の磁界を発生させている。そして、磁気センサ214dは、釣皿214bに硬貨(金属)が保持されていない状態における磁気レベルを基準にして、釣皿214bに払い出された硬貨により磁界(磁気レベル)が変化した場合に、釣皿214bに払い出された硬貨(貨幣)を検知する貨幣検知部である。なお、磁気センサ214dは、硬貨の検知結果を連続的に制御部253(図5参照)出力するものとする。なお、本実施形態では、硬貨が払い出される釣皿214bにのみ貨幣検知部を設けているが、これに限定するものではなく、例えば、紙幣払出口216に払い出された紙幣(貨幣)を検知する透過型センサ等を貨幣検知部として設けても良い。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「店員」は前者の「店員」に相当し、以下同様に、「客」は「顧客」に、「商品」は「商品」に、「商品登録装置」は「登録装置」に、「精算装置」は「精算装置」に、「POSシステム」は「システム」にそれぞれ相当する。

(2)上記(1)を踏まえると、後者の「店員の操作により購入する商品を登録」する「商品登録装置」は、前者の「店員の操作に基づいて顧客の購入対象の商品を登録するための登録装置」に相当する。

(3)上記(1)を踏まえると、後者の「客が自ら操作して精算処理を行う精算装置」は、前者の「該顧客の操作に基づいて精算処理を行うための精算装置」に相当する。

(4)後者の「商品登録装置」の「当該登録した商品の取引に関するデータを複数の精算装置のうちいずれかに送信する」こと、及び、「前記精算装置において発生した障害に関する情報を取得する取得手段と、前記取得手段が障害に関する情報を取得すると、当該障害の発生した前記精算装置への前記取引に関するデータの送信を禁止する禁止手段と、を備える」という事項について検討するに、データの送信や送信の禁止に係る制御を行う手段を有していることは技術的に明らかであり、当該手段は、前者の「制御手段」に相当するといえる。
そして、上記事項の「当該登録した商品の取引に関するデータを複数の精算装置のうちいずれかに送信する」ということ、及び、「当該障害の発生した前記精算装置への前記取引に関するデータの送信を禁止する」ということは、具体的には、本願明細書の段落【0021】に記載される「決定部121は、利用可能な精算装置110を決定する。決定部121は、会計システム100に含まれる精算装置110の一部を利用対象から除外することができる。ここでいう利用可能な精算装置110は、1台に限定されず、2台以上であってもよい。」というものであるから、障害の発生していない精算装置への選択を可能としていることは明らかといえる。
また、精算装置に釣り銭が残されていた場合、顧客がそのまま精算を行うと、自分の釣り銭が混じるおそれ等があるため、店員を呼んで残された釣り銭を取り出してもらう、あるいは、顧客が残されたた釣り銭を取り出して店員に渡す等の何らかの対応をする必要があることが常識的であることから、後者の「精算装置において発生した障害」がある状態と、前者の「釣り銭を検知」された状態とは、「精算装置の正常な使用が行えない状態」であることで共通するといえる。
さらに、後者の「取得手段」は、「精算装置において発生した障害に関する情報を取得する」ものであるから、「精算装置」は、障害を検知する手段を有していることは技術的に明らかであり、当該手段は、前者の「検知手段」に相当するといえる。
そうすると、上記(1)?(3)をも踏まえると、後者の上記事項と、前者の「前記精算装置は、釣り銭を検知する検知手段を有し、前記登録装置は、前記検知手段により釣り銭が検知されていない精算装置を前記商品の登録データの送信先として選択可能とする制御手段を有する」ということとは、「前記精算装置は、精算装置の正常な使用が行えない状態を検知する検知手段を有し、前記登録装置は、前記検知手段により精算装置の正常な使用が行えない状態が検知されていない精算装置を前記商品の登録データの送信先として選択可能とする制御手段を有する」ということにおいて共通するといえる。

(5)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「店員の操作に基づいて顧客の購入対象の商品を登録するための登録装置と、当該顧客の操作に基づいて精算処理を行うための精算装置とを有し、
前記精算装置は、精算装置の正常な使用が行えない状態を検知する検知手段を有し、
前記登録装置は、前記検知手段により精算装置の正常な使用が行えない状態が検知されていない精算装置を前記商品の登録データの送信先として選択可能とする制御手段を有する
システム。」

〔相違点〕
「精算装置の正常な使用が行えない状態」に関し、本願発明が「釣り銭を検知」された状態であるのに対し、引用発明は「精算装置において発生した障害」がある状態である点。

2 判断
(1)相違点について
上記相違点について検討する。
引用文献1において、「精算装置において発生した障害」に関し、実施例として具体的に説明されているのは「入出金不可情報」であるが、「精算装置において発生した障害」は「入出金不可情報」に限らないことが示されている(記載事項(1d)参照。)。
ここで、引用文献2には、管理者が決済装置(本願発明の「精算装置」に相当)の動作状態を管理するため、その動作状態の一つとして「お釣り取り忘れ」の状態を決済装置から通知する技術が記載されており(記載事項(2a)、(2b)参照。)、当該「お釣り取り忘れ」の状態は、店舗ないし顧客にとって「精算装置の正常な使用が行えない状態」であることは、当業者であれば当然に理解することである。
そして、精算装置において、顧客による釣り銭の取り忘れが生じ得るものであることは常識的なことであるから、引用発明においても、釣り銭が残っている状態が生じ得ることは、当業者であれば十分に想定可能なことといえ、そのような状態であれば、精算装置の正常な使用が行えない状態であることは明らかである。
したがって、そのような状態に対応すべく、引用文献2に記載された技術を参考に、引用発明において、「釣り銭を検知」するように構成して、釣り銭が検知されていない精算装置を選択可能とするよう構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ここで、引用文献2には、「お釣り取り忘れ」を通知するのに、どのようにして「お釣り取り忘れ」を判定しているのか、具体的手段についての記載はないが、精算装置において、釣り銭を検知する検知手段を用いることは、例えば、引用文献3に示されているように(記載事項(3a)参照。)、本願出願前の周知技術といえるものであり、上記の「釣り銭を検知」するように構成する際に、このような周知技術を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得た設計的事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果について検討しても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に示された周知技術に対し、当業者が予測できないような格別のものはない。

よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に示された周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

(2)請求人の主張について
請求人は審判請求書の「3.(4)」において、「引用文献1における『障害に関する情報』は、入出金が不可であること、または、精算装置を構成する部品・機器の故障のことであることは明らかです。一方、本願発明の『お釣りの取り忘れ』は、入手金が不可であること、および、精算装置を構成する部品の異常とは何ら関係がなく、引用文献1における『障害』とは異なる性質を有していると思料致します。そうすると、引用文献1の発明において、『精算装置が異常状態であると判断すべき情報』として『お釣りの取り忘れ』を採用することは、引用文献1の発明の性質を変えることにつながります。よって、引用文献1の発明において『精算装置が異常状態であると判断すべき情報』として『お釣りの取り忘れ』を採用することは、当業者が適宜に設定すべき事項に該当しないものと思料致します。また、『お釣りの取り忘れ』が引用文献1における『障害』と性質を異とすることから、引用文献1の『精算装置の障害に関する情報』として引用文献2の『お釣りの取り忘れの通知』を組み合わせる動機付けは何ら存在しないものと思料いたします。」と主張する。
しかしながら、引用文献1には「障害に関する情報」が「入出金情報が不可であること、または、精算装置を構成する部品・機器の故障」に限定されるものであるとの記載はなく、「入出金情報が不可であること」は、精算装置を構成する部品・機器自体の故障の状態ではなく、「精算装置を構成する部品・機器の故障」とは精算装置の状態としては異なる状態であって、少なくともその両者を含めて「障害に関する情報」として記載されていることに鑑みれば、請求人が主張するような2種類に限定して引用発明を解釈すべき事情があるとはいえない。
仮に、請求人が主張するような2種類のものと解釈したとしても、引用発明の「精算装置において発生した障害」がある状態と、本願発明の「釣り銭を検知」された状態とは、精算装置自体が使用可能であるか否かということに関わらず、店舗ないし顧客にとって「精算装置の正常な使用が行えない状態」であることで共通するといえるのは、上記「1(4)」で述べたとおりであって、その容易想到性の判断については上記(1)で述べたとおりである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に示された周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-06-02 
結審通知日 2020-06-09 
審決日 2020-06-23 
出願番号 特願2016-184230(P2016-184230)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國武 史帆永石 哲也須賀 仁美  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
氏原 康宏
発明の名称 登録装置、システム、方法及びプログラム  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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