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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1365378
審判番号 不服2020-5696  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-27 
確定日 2020-08-13 
事件の表示 特願2016-532977「電荷輸送性ワニス」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日国際公開、WO2016/006673〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)7月10日(優先権主張 平成26年7月11日)を国際出願日とする出願であって、平成31年4月3日付けで拒絶理由が通知され、令和元年5月23日に意見書が提出され、同年9月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月15日に意見書が提出され、令和2年1月28日付けで拒絶理由が通知され、同年3月26日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年4月16日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1、7?10に係る発明は、引用出願1に係る発明と同一であり、本願請求項1、7?10に係る発明は、引用出願2に係る発明と同一であり、本件請求項1、4?10に係る発明は、引用出願3に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用出願1:特願2015-506757号
(特許第6004083号公報)
引用出願2:特願2015-502871号
(特許第6048571号公報)
引用出願3:特願2013-534697号
(特許第5761357号公報)

3 本件発明
本願請求項1?11に係る発明は、令和2年3月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりである。
「 【請求項1】
電荷輸送性物質とドーパント物質と、1種または2種以上の有機溶媒とを含み、
前記電荷輸送性物質が、N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする電荷輸送性ワニス。」

4 引用出願
(1)引用出願1
ア 原査定の拒絶の理由において引用された、特願2015-506757号(以下、「引用出願1」という。)は、本願の優先権主張の日より前の平成26年3月17日(優先権主張 平成25年3月18日)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月22日に特許料が納付され、同年9月16日にその特許権の設定の登録がされたものである(平成28年10月5日に特許掲載公報が発行された特許第6004083号)。
そうすると、引用出願1は、本願の先願にあたる。

イ 引用出願1の特許請求の範囲の請求項1及び請求項8には、以下のとおり記載されている。
「【請求項1】
式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質、式(2)で表されるN,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質、ドーパント及び有機溶媒を含むことを特徴とする電荷輸送性ワニス。
【化1】

(式中、R^(1)は、それぞれ独立して、水素原子、Z^(1)で置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基若しくは炭素数2?20のアルキニル基、又はZ^(2)で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基若しくは炭素数2?20のヘテロアリール基を表し、
R^(2)?R^(7)は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、水酸基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、Z^(1)で置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基若しくは炭素数2?20のアルキニル基、Z^(2)で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基若しくは炭素数2?20のヘテロアリール基、-NHY^(1)、-NY^(2)Y^(3)、-C(O)Y^(4)、-OY^(5)、-SY^(6)、-SO^(3)Y^(7)、-C(O)OY^(8)、-OC(O)Y^(9)、-C(O)NHY^(10)又は-C(O)NY^(11)Y^(12)基を表し、
Y^(1)?Y^(12)は、それぞれ独立して、Z^(1)で置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基若しくは炭素数2?20のアルキニル基、又はZ^(2)で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基若しくは炭素数2?20のヘテロアリール基を表し、
Z^(1)は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、水酸基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、又はZ^(3)で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基若しくは炭素数2?20のヘテロアリール基を表し、
Z^(2)は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、水酸基、チオール基、スルホン酸基、カルボン酸基、又はZ^(3)で置換されていてもよい炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基若しくは炭素数2?20のアルキニル基を表し、
Z^(3)は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、水酸基、チオール基、スルホン酸基又はカルボン酸基を表し、nは、2?20の整数を表す。)
【化2】

[式中、R^(8)?R^(15)は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基又は炭素数2?20のアルキニル基を表し、
Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立して、式(3)又は(4)で表される基を表す。
【化3】

(式中、R^(16)?R^(25)は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基又は炭素数2?20のアルキニル基を表し、
X^(1)及びX^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基、炭素数2?20のアルキニル基、ジフェニルアミノ基、1-ナフチルフェニルアミノ基、2-ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基又は1-ナフチル-2-ナフチルアミノ基を表す。)]」

「【請求項8】
前記オリゴアニリン誘導体が、式(a)?(i)のいずれかで表され、前記N,N'-ジアリールベンジジン誘導体が、式(j)?(m)のいずれかで表される請求項1記載の電荷輸送性ワニス。
【化4】



ウ 引用発明1
引用出願1の請求項8に係る発明は、その発明特定事項である「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」に選択肢を有するので、選択肢中の一の選択肢である「式(l)」のみをその選択肢に係る発明特定事項と仮定したときの請求項8に係る発明を、以下、「引用発明1」とする。なお、引用発明1における「式(l)」の化合物は個別具体的な化合物である。したがって、引用発明1は、当業者が引用出願1の請求項8から単独で把握できるものであり、また、式(l)の化合物が製造不可能であるといった、特段の事情もない。

(2)引用出願2
ア 原査定の拒絶の理由において引用された、特願2015-502871号(以下、「引用出願2」という。)は、本願の優先権主張の日より前の平成26年2月18日(優先権主張 平成25年2月26日)を国際出願日とする出願であって、平成28年11月7日に特許料が納付され、同年12月2日にその特許権の設定の登録がされたものである(平成28年12月21日に特許掲載公報が発行された特許第6048571号)。
そうすると、引用出願2は、本願の先願にあたる。

イ 引用出願2の特許請求の範囲の請求項1及び請求項5には、以下のとおり記載されている。
「【請求項1】
式(1)で表されるN,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質、ヘテロポリ酸のみからなる電荷受容性ドーパント及び有機溶媒を含み、ヘテロポリ酸の質量比が、電荷輸送性物質1に対して1.0?11.0であることを特徴とする電荷輸送性ワニス。
【化1】

[式中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基又は炭素数2?20のアルキニル基を表し、Ar^(1)及びAr^(2)は、それぞれ独立して、式(2)又は(3)で表される基を表す。
【化2】

(式中、R^(9)?R^(18)は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基又は炭素数2?20のアルキニル基を表し、X^(1)及びX^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?20のアルケニル基、炭素数2?20のアルキニル基、ジフェニルアミノ基、1-ナフチルフェニルアミノ基、2-ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基又は1-ナフチル-2-ナフチルアミノ基を表す。)]」

「【請求項5】
前記N,N'-ジアリールベンジジン誘導体が、式(1-1)?(1-3)のいずれかで表される請求項1記載の電荷輸送性ワニス。
【化3】



ウ 引用発明2
引用出願2の請求項5に係る発明は、その発明特定事項である「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」に選択肢を有するので、選択肢中の一の選択肢である「式(1-2)」のみをその選択肢に係る発明特定事項と仮定したときの請求項5に係る発明を、以下、「引用発明2」とする。なお、引用発明2における「式(1-2)」の化合物は、個別具体的な化合物である。したがって、引用発明2は、当業者が引用出願2の請求項5から単独で把握できるものであり、また、式(1-2)の化合物が製造不可能であるといった、特段の事情もない。

5 対比・判断
(1)引用出願1
ア 対比
以下、本件発明と引用発明1とを対比する。

(ア)電荷輸送性物質
引用発明1の「式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質」及び「式(2)で表されるN,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質」は、本件発明の「電荷輸送性物質」に相当する。また、引用発明1の「式(l)」の「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」は、「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン」であるから、引用発明1は、本件発明の「前記電荷輸送性物質が、N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種を含む」という要件を満たす。

(イ)ドーパント物質
引用発明1の「ドーパント」は、本件発明の「ドーパント物質」に相当する。

(ウ)有機溶媒
引用発明1の「有機溶媒」は、本件発明の「有機溶媒」に相当する。そして、引用発明1の「有機溶媒」は、本件発明の「1種または2種以上」とする要件を満たしている。

(エ)電荷輸送性ワニス
引用発明1の「電荷輸送性ワニス」は、「式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質、式(2)で表されるN,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質、ドーパント及び有機溶媒を含む」ものである。そうすると、引用発明1の「電荷輸送性ワニス」は、本件発明の「電荷輸送性物質とドーパント物質と、1種または2種以上の有機溶媒とを含み」とされる、「電荷輸送性ワニス」に相当する。

イ 判断
本件発明と引用発明1は、「電荷輸送性物質とドーパント物質と、1種または2種以上の有機溶媒とを含み、前記電荷輸送性物質が、N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種を含む電荷輸送性ワニス。」の点で一致し、相違しない。
そうしてみると、本件発明と引用出願1の請求項8に係る発明とは、引用発明1において重なる部分が存在するものであるから、本件発明と引用出願1の請求項8に係る発明とは、同一の発明である。

ウ 審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の請求の理由(3)(c)(I)(i)(ロ)において、本件発明と引用先願1の請求項8に係る発明とは、以下の[相違点1-2]で相違すると主張している。
[相違点1-2]
電荷輸送性物質が、本願発明1では、「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種を含む」とされ、マーカッシュ形式で規定されているものの、「N,N′-ジナフチルベンジジン」として「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種」のみを具体的に特定しているのに対し、引用先願発明1-8では、「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質」を含むとされるとともに、当該「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」が、「式(j)?(m)のいずれかで表される」とのマーカッシュ形式で規定され、当該「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」が、本願発明1のように「N,N′-ジナフチルベンジジン」として「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種」のみを具体的に特定しておらず、「N,N′-ジナフチルベンジジン」以外の「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」も包含すること。

そして、審判請求人は、「「式(j)?(m)のいずれかで表される(N,N'-ジアリールベンジジン誘導体)」とのマーカッシュ形式の選択肢の中に「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン」が含まれるため、本願発明1と引用先願発明1-8とでは、重なる部分が存在するものの、引用先願発明1-8においては、「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」として「N,N′-ジフェニルベンジジン」等の「N,N′-ジナフチルベンジジン」以外の他の選択肢も挙げられている一方、本願発明1においては、「N,N′-ジナフチルベンジジン」として、「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン」の他に、「N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジン」及び「N-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジン」も挙げられているため、両発明の範囲は異なっている。」、「本願の記載に基づけば、「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」を「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン」等の「N,N′-ジナフチルベンジジン」に特定したことにより、「有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度の耐久性向上」という効果が付加されていることは明らかであるから、上記[相違点1-2]は、課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。」と主張している。
しかしながら、引用出願1の請求項8の記載から引用発明1を認定できることは、前記4(1)ウで述べたとおりである。そして、本件発明と引用発明1の間に相違点は存在しないから、課題解決のための具体化手段における微差であるかの判断を要しない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用出願1の請求項8に係る発明と同一の発明である。

(2)引用出願2
ア 対比
以下、本件発明と引用発明2とを対比する。

(ア)電荷輸送性物質
引用発明2の「式(1)で表されるN,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質」は、本件発明の「電荷輸送性物質」に相当する。また、引用発明2の「式(1-2)」の「N,N'-ジアリールベンジジン誘導体」は、「N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン」であるから、引用発明2は、本件発明の「前記電荷輸送性物質が、N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種を含む」という要件を満たす。

(イ)ドーパント物質
引用発明2の「ヘテロポリ酸のみからなる電荷受容性ドーパント」は、本件発明の「ドーパント物質」に相当する。

(ウ)有機溶媒
引用発明2の「有機溶媒」は、本件発明の「有機溶媒」に相当する。そして、引用発明2の「有機溶媒」は、本件発明の「1種または2種以上」とする要件を満たしている。

(エ)電荷輸送性ワニス
引用発明2の「電荷輸送性ワニス」は、「式(1)で表されるN,N'-ジアリールベンジジン誘導体からなる電荷輸送性物質、ヘテロポリ酸のみからなる電荷受容性ドーパント及び有機溶媒を含み」とされている。そうすると、引用発明2の「電荷輸送性ワニス」は、本件発明の「電荷輸送性物質とドーパント物質と、1種または2種以上の有機溶媒とを含み」とされる、「電荷輸送性ワニス」に相当する。

イ 判断
本件発明と引用発明2は、「電荷輸送性物質とドーパント物質と、1種または2種以上の有機溶媒とを含み、前記電荷輸送性物質が、N,N′-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N′-ジ(2-ナフチル)ベンジジンおよびN-(1-ナフチル)-N′-(2-ナフチル)ベンジジンから選ばれる少なくとも1種を含む電荷輸送性ワニス。」の点で一致し、相違しない。
そうしてみると、本件発明と引用出願2の請求項5に係る発明とは、引用発明2において重なる部分が存在するものであるから、本件発明と引用出願2の請求項5に係る発明とは、同一の発明である。

ウ 審判請求人の主張
(ア) 審判請求人は、審判請求書の請求の理由(3)(c)(II)(i)(ロ)において、本件発明と引用先願の請求項5に係る発明との間には相違点があり、また、この相違点は、課題解決のための具体化手段における微差ということはできないと主張しているが、この点についての判断は、前記(1)ウで述べたのと同様である。

(イ) 審判請求人は、審判請求書の請求項理由(3)(b)において、本件発明は、選択発明に該当し得ないとする審査官の判断は、審査基準と整合しないとも主張する。
しかしながら、本件発明は、引用出願2の請求項5に記載された発明により同一性が否定されないものに該当しない(請求項2?6に係る発明のように、相違点が見いだされる発明に該当しない)から、選択発明になり得ない。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、審判請求人の主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用出願2の請求項5に係る発明と同一の発明である。

6 むすび
本願の請求項1に係る発明は、引用出願1の請求項8に係る発明及び引用出願2の請求項5に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-06-04 
結審通知日 2020-06-09 
審決日 2020-06-24 
出願番号 特願2016-532977(P2016-532977)
審決分類 P 1 8・ 4- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 好子  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
宮澤 浩
発明の名称 電荷輸送性ワニス  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  

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