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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B26D
管理番号 1365398
審判番号 不服2019-3759  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-20 
確定日 2020-09-01 
事件の表示 特願2014-38109「根菜類切削切断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年9月7日出願公開、特開2015-160291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 1月30日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 7月25日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月11日付け:拒絶査定
平成31年 3月20日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出


第2 平成31年3月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月20日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所について請求人が付したものである。)
「【請求項1】
人参、牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は、
この根菜類を切削切断する切削切断部と
この根菜類を固定する固定部と、
この固定部を直線運動させ、前記切削切断部(1)に送込む送り部と、を備えており、
前記切削切断部は、この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段、及び根菜類の切削対象部位を二片、又は多片の形状に切断するための切断手段を備える根菜類切削切断装置において、
前記切削手段(1A)-(1E)、及び前記切断手段(1a)-(1e)により、前記根菜類に、角(RC)を備えた切削切断片(KS)を形成可能とし、
また前記根菜類を、前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に、固定可能とし、た根菜類切削切断装置であって、
前記切削切断部(1)は、軸(23)に枢設されてモータ(21)により回転される軸(23)が挿通螺着される中心孔(111)を備えた円盤状の回転盤(11)と、この回転盤(11)の周方向に等間隔で装着された5カ所の前記切削手段(1A)-(1E)、
及び5カ所の前記切断手段(1a)-(1e)から構成されており、
前記回転盤(11)には、略径方向に長手方向を有する長方形状の貫通孔(11α)-(11ε)が周方向に等間隔で穿設されているとともに、その背面には、前記貫通孔に接して、略径方向に長手方向を有する長方形状の凸部(11a)-(11e)が周方向に等間隔で突設され、かつ正面には、前記貫通孔近傍に、略径方向に長手方向を有する長方形状の凹部(11A)-(11E)が周方向に等間隔で穿設されており、
前記切削手段(1A)は、前記凹部(11A)に、前記切削手段(1B)は前記凹部(11B)に、前記切削手段(1C)は前記凹部(11C)に、前記切削手段(1D)は前記凹部(11D)に、前記切削手段(1E)は前記凹部(11E)に、夫々装着し、
また、前記切断手段(1a)は前記貫通孔(11α)と、前記凸部(11a)に、前記切断手段(1b)は前記貫通孔(11β)と前記凸部(11b)に、前記切断手段(1c)は前記貫通孔(11γ)と前記凸部(11c)に、前記切断手段(1d)は前記貫通孔(11δ)と前記凸部(11d)に、前記切断手段(1e)は前記貫通孔(11ε)と前記凸部(11e)に、夫々装着し、たことを特徴とする根菜類切削切断装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年8月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
人参、牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は、
この根菜類を切削切断する切削切断部と
この根菜類を固定する固定部と、
この固定部を直線運動させ、前記切削切断部に送込む送り部と、を備えており、
前記切削切断部は、この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段、及び根菜類の切削対象部位を二片、又は多片の形状に切断するための切断手段を備える根菜類切削切断装置において、
前記切削手段、及び前記切断手段により、前記根菜類に、角(RC)を備えた切削切断片(KS)を形成可能とし、
また前記根菜類を、前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に、固定可能とし、
前記切断手段の刃物ユニット(BU)は、複数枚の切断刃(BC)と、この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1)、(BU2)と、この切断刃(BC)、及びスペーサ(BU1)、(BU2)を固定する固定具とで構成したことを特徴とする根菜類切削切断装置。」

2 補正の適否
本件補正は、大略、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記切断手段の刃物ユニット(BU)は、複数枚の切断刃(BC)と、この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1)、(BU2)と、この切断刃(BC)、及びスペーサ(BU1)、(BU2)を固定する固定具とで構成した」との構成を削除し(下線部については、当審合議体で付した。)、上記「前記切削切断部(1)は、軸(23)に枢設されてモータ(21)により回転される軸(23)が挿通螺着される中心孔(111)を備えた円盤状の回転盤(11)と、この回転盤(11)の周方向に等間隔で装着された5カ所の前記切削手段(1A)-(1E)、及び5カ所の前記切断手段(1a)-(1e)から構成されており、前記回転盤(11)には、略径方向に長手方向を有する長方形状の貫通孔(11α)-(11ε)が周方向に等間隔で穿設されているとともに、その背面には、前記貫通孔に接して、略径方向に長手方向を有する長方形状の凸部(11a)-(11e)が周方向に等間隔で突設され、かつ正面には、前記貫通孔近傍に、略径方向に長手方向を有する長方形状の凹部(11A)-(11E)が周方向に等間隔で穿設されており、前記切削手段(1A)は、前記凹部(11A)に、前記切削手段(1B)は前記凹部(11B)に、前記切削手段(1C)は前記凹部(11C)に、前記切削手段(1D)は前記凹部(11D)に、前記切削手段(1E)は前記凹部(11E)に、夫々装着し、また、前記切断手段(1a)は前記貫通孔(11α)と、前記凸部(11a)に、前記切断手段(1b)は前記貫通孔(11β)と前記凸部(11b)に、前記切断手段(1c)は前記貫通孔(11γ)と前記凸部(11c)に、前記切断手段(1d)は前記貫通孔(11δ)と前記凸部(11d)に、前記切断手段(1e)は前記貫通孔(11ε)と前記凸部(11e)に、夫々装着し、」との構成を付加するものであるから、
(a)請求項の削除(第17条の2第5項第1号)
(b)特許請求の範囲の限定的減縮(第17条の2第5項第2号)
(c)誤記の訂正(第17条の2第5項第3号)
(d)明瞭でない記載の釈明(第17条の2第5項第4号)
のいずれを目的とするものとは認められない。
なお、請求人は、審判請求書の3.(2)において、「本件補正は、請求項の限定的減縮、明りょうでない記載の釈明、又は誤記の訂正を目的とするものです。」と述べているが、補正前の請求項1から発明特定事項を削除して拡張する補正は請求項の限定的減縮には該当しないし、上記本件補正が、明りょうでない記載の釈明、又は誤記の訂正を目的とするものとはいえない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年3月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成30年8月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
人参、牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は、
この根菜類を切削切断する切削切断部と
この根菜類を固定する固定部と、
この固定部を直線運動させ、前記切削切断部に送込む送り部と、を備えており、
前記切削切断部は、この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段、及び根菜類の切削対象部位を二片、又は多片の形状に切断するための切断手段を備える根菜類切削切断装置において、
前記切削手段、及び前記切断手段により、前記根菜類に、角(RC)を備えた切削切断片(KS)を形成可能とし、
また前記根菜類を、前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に、固定可能とし、
前記切断手段の刃物ユニット(BU)は、複数枚の切断刃(BC)と、この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1)、(BU2)と、この切断刃(BC)、及びスペーサ(BU1)、(BU2)を固定する固定具とで構成したことを特徴とする根菜類切削切断装置。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-3に記載された発明及び引用文献7-8に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
同様に、請求項2に係る発明は引用文献1-5、7-8に基づいて、請求項3、5に係る発明は引用文献1-3、7-8に基づいて、請求項4に係る発明は引用文献1-8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2003-236793号公報
2.特開昭57-201198号公報
3.特開2010-42494号公報
4.実願昭59-177584号(実開昭61-92595号)のマイクロフィルム
5.実願昭57-96360号(実開昭58-196098号)のマイクロフィルム
6.特開昭60-9700号公報
7.実願昭61-187235号(実開昭63-91400号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
8.実願昭59-160950号(実開昭61-75994号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)


3 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ごぼう等の棒状野菜のささがき装置に関する。」

イ 「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態を図1乃至図5により説明する。図1に示すように、架台1上には箱型の支持枠2が固定されており、架台1の前面部には支持枠2の前面に当接するように支持板3が固定されている。架台1上には、円盤回転用モータ4が固定されており、円盤回転用モータ4の出力軸には、回転軸5の一端が連結部材6を介して連結されている。回転軸5は、支持枠2及び支持板3に固定された軸受7に回転自在に支承されており、回転軸5の先端部には円盤8が固定されている。
【0015】図2に示すように、円盤8には、8個のささがき刃10が等間隔で放射状に配設され、ささがき刃10は、刃部10aが円盤8の回転方向Cになるように円盤8に固定されている。また円盤8には、各ささがき刃10の刃部10aに対向して2つ割り刃11が配設され、2つ割り刃11は、刃部11aがささがき刃10の刃部10aに直角になるように円盤8に固定されている。刃部10a、11aに対応した円盤8の部分には、ささがきされたごぼうを円盤8の裏面側に排出するための排出孔8aが形成されている。」

ウ 「【0023】次に作用について説明する。円盤回転用モータ4及びごぼう回転送り用モータ51が駆動した状態で、ごぼう60を支持板50のごぼう挿入穴50aより筒状体31のごぼう挿入孔31aを通して、ごぼう60の先端がごぼう受15、15に当接するまで挿入する。ごぼう60の挿入により、3個のプーリ41がばね44に抗して拡げられ、ごぼう60は3個のプーリ41のベルト42の部分によってばね44の付勢力で挟持された状態となる。
【0024】円盤回転用モータ4の駆動によって円盤8が矢印C方向に回転し、2つ割り刃11及びささがき刃10が回転する。これにより、2つ割り刃11の刃部11aによってごぼう60に縦溝が入れられた直後にささがき刃10の刃部10aによってささがきされる。2つ割りにささがきされたごぼうは、円盤8に形成された排出孔8aより円盤8の裏面側に排出され、図示しない製品収納箱に収納される。
【0025】ごぼう回転送り用モータ51の駆動によってギア52、減速ギア54を介して筒状体31が回転する。筒状体31にはギア支持板33が固定されているので、ギア支持板33が回転し、ギア支持板33と共にレバー40が回転する。また3個のプーリ41はばね44の付勢力でごぼう60を挟持しているので、レバー40の回転によってごぼう60が回転させられる。ごぼう60は、円盤8に対して傾斜しているので、ごぼう60は回転させられながら下端部分の外周がささがき刃10及び2つ割り刃11によってささがきされる。
【0026】またギア支持板33に固定された支軸34に回転自在に支承されたウオームホイル35は、ウオームギア30に噛合しているので、前記のようにギア支持板33が回転すると、これにより、ベルト42が回転してごぼう60の先端をごぼう受15、15に押し付ける。即ち、ごぼう60は回転させられながら下方に送られる。」

エ 「【0032】なお、上記実施の形態においては、8個のささがき刃10及び2つ割り刃11を設けたが、この個数は特に限定されるものではない。また2つ割りする必要がない場合には2つ割り刃11は設けなくてよいことは言うまでもない。また上記実施の形態においては、筒状体31にギア部31bを形成し、ごぼう回転用モータ51の回転をギア52、減速ギア54を介して筒状体31に伝達したが、ごぼう回転用モータ51の回転をベルトを介して筒状体31に伝達してもよい。またウオームホイル35を3個設け、3個のプーリ41でごぼう60を挟持する場合について説明したが、ウオームホイル35を2個又は4個設け、2個又は4個のプーリ41でごぼう60を挟持するようにしてもよい。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「ごぼう60のささがきを生成するささがき装置は、
ごぼう60を挟持して円盤8に送るレバー40及びプーリ41を備えており、
前記円盤8が、このごぼう60の外周からささがきするささがき刃10、及びごぼう60の外周を2つ割りにする2つ割り刃11を備えるささがき装置において、
前記ささがき刃10及び前記2つ割り刃11により、ごぼう60が2つ割りにささがきされる、ささがき装置。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「本発明はごぼう、縦割にしたにんじん等の棒状根菜の上端部を回転及び下降可能なチヤツカーで把持して回転下降を施し、その下降方向に対して斜めに回転する傾斜回転刃によつて下降周面を順次斜めに切削して、笹がきや、きんぴら等に使用する細条切削物を生ぜしめるようにした棒状根菜の切削装置に関し、」(第1ページ右下欄第4-10行)

イ 「刃物装着円板12の前面には第3?6図に示すように蓋板5の内面に接近して回転する二枚の半月形の刃物16、16の各弦形刃先16a、16aを回転方向に向けて駆動軸11の両側の対称位置に皿ねじによつて取付け、それらの刃物16、16の後側の半径方向外側寄りで刃物装着円板12に設けた凹形の嵌装溝17、17に多数の櫛刃19、19を回転方向の直角に並列して設けた刃物装着板18、18を嵌めて皿ねじにより取付け、」(第2ページ右上欄第6-14行)

ウ 「支柱25には上端部に第2図に示した叉状片26、26を設け、その各叉状片に取付けた一対の軸支片27、27に渡した軸28によつて、叉状片26、26間で一部を回転する溝車29を軸支し、さらに該支柱25には上下各一対のロール31、31を前後両面に接して上下動する昇降ブラケツト30を設け、そのブラケツト30に一端を固着したロープ32を溝車29に掛けて他端に重錘33を取付ける。また、昇降ブラケツト30から前側に突出するアーム34の先端の垂下片35につまみ37を設けた筐体36を取付ける。この筐体36内にはつまみ37の移動によつて回転速度を可変にする減速モータ(図示せず)を内装し、その出方軸38を下側に突出してチヤツカー39を固着する。チヤツカー39は第5図に示すように出方軸38に取付けた軸40の下端面に螺旋針41を取付けたものであつて、」(第2ページ左下欄第9行-右下欄第11行)

エ 「チヤツカー39により上端部を後記のように把持された棒状根菜aは、チヤツカー39の直下方の挿入案内筒45内に入り、傾斜出口47を斜めに横切つて回転する刃物16、16により切削される」(第3ページ左上欄第12行-右上欄第1行)

オ 「前記した挿入案内筒45の第1図の左隣りには、傾斜出口52を櫛刃19と刃物16の回転圏に合致させた第2挿入案内筒50を横帯板7の挿入口51に挿入固定して刃物ケース3の内部に突出する。この第2挿入案内筒50は棒状根菜aを櫛刃19と刃物16とにより二度切りするものであつて」(第3ページ右上欄第8-14行)

カ 第1-2図から、チヤツカー39は、昇降ブラケツト30によって直線運動することが看取される。

したがって、上記引用文献2には、「細条切削物を生ぜしめるようにした棒状根菜の切削装置が、棒状根菜aを固定するチヤツカー39と、このチヤツカー39を直線運動させ、櫛刃19と刃物16を取り付けた刃物装着円板12に送込む昇降ブラケツト30を備え、前記棒状根菜aを、前記チヤツカー39に設けた昇降する軸40の螺旋針41に、固定可能とする。」という技術的事項が記載されていると認められる。

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、モータによって回転駆動される切刃により、簡便にごぼうのささがきを作ることのできるこぼうのささがき装置に関するものである。」

イ 「【0018】
図1?11は、本発明のごぼうのささがき装置1の一実施形態を示すものである。
図1?3に示すように、ごぼうのささがき装置1は、モータによって回転駆動される切刃3を備えたカッターアセンブリ2を、切刃3側を上方に向けて傾斜させ、脚部18によって支承するとともに、カッターアセンブリ2の上部に、ガイドレール4を切羽3の回転面3aに対し傾斜して立設させ、このガイドレール4に、ごぼうtの下端部を切刃3の回転面3aに向けて送り込むための送り装置5が昇降自在に設けられた構造のものである。
【0019】
図3に示すように、上記カッターアセンブリ2のモータを内設したハウジング14の上記モータの回転主軸には、軸回転する回転盤16が設けられている。この回転盤16には、この中心部を径方向に横断して円周部の近傍に達する位置に、長方形の貫通穴16aが形成されている。また回転盤16は、上記モータの回転主軸に摺動自在に設けられた円筒状の摺動体17の一端面に、一体的に取り付けられている。この摺動体17には、内周面の軸方向に、半円形のキー溝が形成されている。また上記モータの回転主軸には、外周面の軸方向に、半円形のキー溝が形成されている。そして、摺動体17の半円形のキー溝と、モータの回転主軸に形成された半円形のキー溝を合致させ、丸棒状のキーを挿入することにより、摺動体17の軸回転を阻止するように構成されている。また摺動体17には、外周面から中心に向かって穿設されたネジ穴17aが形成されている。そして、このネジ穴17aにネジを螺合することによって、上記モータの回転主軸の軸線方向の摺動を規制するように構成されている。
【0020】
また、上記モータの回転主軸の端部には、螺杆28が設けられている。この螺杆28は、切刃3の中心部に形成されている貫通穴に挿通して、蝶ナットにより螺着し固着されている。切刃3は、回転盤16の貫通穴16aと同寸法の長方形で形成されるとともに、長手方向の一端面には、短手方向の端部より2/5の寸法で、刃部3bが形成されている。この刃部3bは、その中心部に対して回転対称となる上記長手方向の他端面にも形成されている。」

ウ 「【0027】
また、送り装置5の内部には、第2の歯車列9bが設けられている。この第2の歯車列は、第1のかさ歯車24aが、送り装置5の内壁に突出した第4の歯車23dの回転軸の端部に設けられている。この第1のかさ歯車24aには、昇降方向Wに対して上方に、第2のかさ歯車24bが歯合されている。この第2のかさ歯車24bは、昇降方向Wに延在する回転軸27の一端部側に設けられている。この回転軸27は、送り装置5の底面を貫通し、昇降方向Wの下方に延在するとともに、この回転軸27の他端部側に、円筒状の回転ホルダ8が、送り装置の底面の下方に設けられている。この回転ホルダ8には、ごぼうtの端面に挿入されて保持するための針部材8aが、下端面の周方向に等間隔で4本設けられるとともに、中心部にネジ部材8bが突出して設けられている。」

エ 図2、4から、回転ホルダ8は送り装置5によって直線運動することが看取される。

したがって、上記引用文献3には、「ごぼうのささがき装置1が、ごぼうtを固定する回転ホルダ8と、この回転ホルダ8を直線運動させ、切刃3を取り付けた回転盤16に送込む送り装置5を備え、前記ごぼうtを、昇降する回転軸27の前記回転ホルダ8に設けた針部材8aに、固定可能とする。」という技術的事項が記載されていると認められる。

4 対比・判断
(1)引用発明との対比
ア 本願発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「ごぼう60」は、本願発明の「人参、牛蒡の根菜類」又は「この根菜類」に相当し、以下同様に、「ささがき装置」は「根菜類切削切断装置」に、「円盤8」は「切削切断部」に、「ごぼう60の外周」は「この根菜類の表面」又は「根菜類の切削対象部位」に、「ささがきする」は「切削対象部位を削り出す」に、「ささがき刃10」は「切削手段」に、「2つ割りにする」は「二片、又は多片の形状に切断するための」に、「2つ割り刃11」は「切断手段」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「ごぼう60が2つ割りにささがきされ」ることは、物品が2つ割りにささがきされると角を備えた切削切断片となることは自明であるから、本願発明の「根菜類に、角を備えた切削切断片を形成可能とし」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「人参、牛蒡の根菜類のささがきを生成する根菜類切削切断装置は、
この根菜類を切削切断する切削切断部とを備えており、
前記切削切断部は、この根菜類の表面から切削対象部位を削り出す切削手段、及び根菜類の切削対象部位を二片、又は多片の形状に切断するための切断手段を備える根菜類切削切断装置において、
前記切削手段、及び前記切断手段により、前記根菜類に、角を備えた切削切断片を形成可能とした、根菜類切削切断装置。」

[相違点1]
本願発明は、「この根菜類を固定する固定部と、この固定部を直線運動させ、前記切削切断部に送込む送り部」を備え、「また前記根菜類を、前記固定部に設けた昇降する軸(33)の固定機構(34)の固定針(35)に、固定可能」とされているのに対し、引用発明は、ごぼう60を挟持して円盤8に送るレバー40及びプーリ41を備えているものの、固定部及び送り部が本願発明のように特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は、「切断手段の刃物ユニット(BU)は、複数枚の切断刃(BC)と、この切断刃(BC)を支持する多数枚のスペーサ(BU1)、(BU2)と、この切断刃(BC)、及びスペーサ(BU1)、(BU2)を固定する固定具とで構成」されているのに対し、引用発明は、2つ割り刃11がそのような構成を有するものでない点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記3(2)に示したとおり、引用文献2には、「細条切削物を生ぜしめるようにした棒状根菜の切削装置が、棒状根菜aを固定するチヤツカー39と、このチヤツカー39を直線運動させ、櫛刃19と刃物16を取り付けた刃物装着円板12に送込む昇降ブラケツト30を備え、前記棒状根菜aを、前記チヤツカー39に設けた昇降する軸40の螺旋針41に、固定可能とする。」との技術的事項(以下、「引用文献2の技術的事項」という。)が記載されており、該引用文献2の技術的事項の「棒状根菜a」は、本願発明の「根菜類」に相当し、以下同様に、「チヤツカー39」は「固定部」に、「櫛刃19と刃物16を取り付けた刃物装着円板12」は「切削切断部」に、「昇降ブラケツト30」は「送り部」に、「チヤツカー39に設けた昇降する軸40の螺旋針41」は「固定部に設けた昇降する軸の固定機構の固定針」に、「細条切削物を生ぜしめるようにした棒状根菜の切削装置」は「根菜類切削切断装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明と引用文献2の技術的事項とは、ごぼう等の棒状根菜を、直線運動させながら回転円盤に送って切削切断をするとの技術分野及び機能の点で共通するため、引用発明に上記引用文献2の技術的事項を適用して、ごぼう60を円盤8に送るための機構が、ごぼう60を固定する固定部と、この固定部を直線運動させ前記円盤8に送込む送り部を備え、ごぼう60を固定部に設けた昇降する軸の固定針に固定可能とすることは、当業者が容易になし得るものである。
また、上記3(3)に示したとおり、引用文献3には、「ごぼうのささがき装置1が、ごぼうtを固定する回転ホルダ8と、この回転ホルダ8を直線運動させ、切刃3を取り付けた回転盤16に送込む送り装置5を備え、前記ごぼうtを、昇降する回転軸27の前記回転ホルダ8に設けた針部材8aに、固定可能とする。」という技術的事項(以下、「引用文献3の技術的事項」という。)が記載されており、引用発明と引用文献3の技術的事項とは、ごぼう等の棒状根菜を、直線運動させながら回転円盤に送って切削するとの技術分野及び機能の点で共通するため、引用発明に上記引用文献3の技術的事項を適用して、ごぼう60を円盤8に送るための機構が、ごぼう60を固定する固定部と、この固定部を直線運動させ前記円盤8に送込む送り部を備え、ごぼう60を固定部に設けた昇降する軸の固定針に固定可能とすることは、当業者が容易になし得るものであるともいえる。
したがって、引用発明及び引用文献2の技術的事項又は引用文献3の技術的事項により、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
野菜を切断する装置において、切断手段の刃物ユニットを、複数枚の切断刃と、この切断刃を支持する多数枚のスペーサと、この切断刃及びスペーサを固定する固定具とで構成することは、従来周知の技術的事項(例えば、引用文献7の第5ページ下から第1行-第8ページ第16行及び第1-5図、引用文献8の第5ページ第2-12行及び第3図-第6図B、等を参照。)である。
そして、上記3(1)エの事項に示されているように、引用文献1には、「上記実施の形態においては、8個のささがき刃10及び2つ割り刃11を設けたが、この個数は特に限定されるものではない。」と記載されているから、引用発明に、2つ割り刃11の刃の個数を設計変更することは示唆されている上に、引用発明と上記従来周知の技術的事項とは野菜を切断する機能の点で共通するため、引用発明に上記従来周知の技術的事項を適用して、切断手段として、2つ割り刃11に換えて、複数枚の切断刃と多数枚のスペーサと、この切断刃及びスペーサを固定する固定具とで構成された刃物ユニットでごぼう60を切断する(割る)ようにして、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。
したがって、引用発明及び引用文献7、8にみられる従来周知の技術的事項により、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 効果について
全体としてみても、本願発明の効果は、引用発明、引用文献2の技術的事項又は引用文献3の技術的事項及び引用文献7、8にみられる従来周知の技術的事項から、当業者が予測し得るものであって格別なものとはいえない。

エ まとめ
本願発明は、引用発明、引用文献2の技術的事項又は引用文献3の技術的事項及び引用文献7、8にみられる従来周知の技術的事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


なお、上記「第2 平成31年3月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定」で示したとおり、本件補正(平成31年3月20日にされた手続補正書による補正)は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり却下されるべきものであるが、仮に、該本件補正が、「特許請求の範囲の限定的減縮(第17条の2第5項第2号)」を目的とするものであるとしても、以下に示すとおり、該本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正後の発明」という。)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

上記第2の2で示した、本件補正後の発明に付加された構成について検討すると、本件補正後の発明は、「円盤状の回転盤」が「中心孔を備え」、「モータにより回転される軸が挿通螺着される」のに対し、引用文献1では、円盤回転用モータ4の出力軸が円盤8に連結されているものの、円盤8が中心孔を備えるものではない点で相違するが、円盤状の回転盤が中心孔を備えて、該中心孔にモータにより回転される軸が挿通螺着されることは従来周知の技術的事項(必要ならば、引用文献2の第6図、引用文献3の段落【0020】及び図3等を参照。)である。また、モータの出力軸と円盤とをどのように連結するかは単なる設計事項でもある。
また、本件補正後の発明では、回転盤の周方向に等間隔で装着された切削手段及び切断手段が「5カ所」であるのに対し、引用文献1では「8カ所」である点で相違しているが、上記第2の3(1)エの事項に示されているように、引用文献1の段落【0032】には、「なお、上記実施の形態においては、8個のささがき刃10及び2つ割り刃11を設けたが、この個数は特に限定されるものではない。」と記載されているから、ささがき刃10及び2つ割り刃11の個数を8カ所以外とすることは示唆されているところ、5カ所とすることは、切削及び切断性能や、切削切断された根菜類の用途等に応じて、当業者が適宜設計する設計事項にすぎない。
さらに、本件補正後の発明では、「回転盤」において、切削手段が凹部に装着され、切断手段が貫通孔と凸部に装着されるのに対し、引用文献1では、円盤8に、略径方向に長手方向を有する長方形状の排出孔8aを周方向に等間隔に設け、該排出孔8aの近傍にささがき刃10及び2つ割り刃11とを取り付けているものの、円盤8に凹部、凸部を設けることは記載されていない点で相違するが、引用文献8(第2-3図を参照。特に、「凹部」については第3図から看取される。)には、円盤10の背面に略径方向に長手方向を有する長方形状の突片16、円盤10の正面に略径方向に長手方向を有する長方形状の凹部を設けて、凹部に平刃19を装着し、スリット13と突片16に薄板刃物22を装着するとの技術的事項(以下、「引用文献8の技術的事項」という。)が記載されており、引用発明に上記引用文献8の技術的事項を適用して、円盤8の背面に略径方向に長手方向を有する長方形状の凸部、円盤8の正面に略径方向に長手方向を有する長方形状の凹部を設けて、該凹部にささがき刃10を装着し、排出孔8aと凸部に2つ割り刃11を装着することは、当業者が容易になし得るものである。また、切削切断する円盤において、排出孔に対して、どのように切削手段と切断手段を取り付けるかは、当業者が適宜設計する事項でもある。

したがって、本件補正後の発明は、引用発明、引用文献2の技術的事項又は引用文献3の技術的事項、引用文献7、8にみられる従来周知の技術的事項、引用文献2、3にみられる従来周知の技術的事項及び引用文献8の技術的事項により、当業者が容易になし得たものである。
 
審理終結日 2019-10-24 
結審通知日 2019-10-25 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2014-38109(P2014-38109)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B26D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒石 孝志岩瀬 昌治  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 中川 隆司
大山 健
発明の名称 根菜類切削切断装置  
代理人 竹中 一宣  
代理人 木村 満  
代理人 榊原 靖  

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