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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1365501
審判番号 不服2018-9532  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-10 
確定日 2020-08-20 
事件の表示 特願2016-569171「連携システム及び集中コントローラ及び集中制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月21日国際公開、WO2016/113874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年1月15日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年10月31日付:拒絶理由通知
平成29年12月27日:意見書
平成29年12月27日:手続補正書
平成30年 5月10日付:拒絶査定
平成30年 7月10日:審判請求
平成30年 7月10日:手続補正書
令和 元年 9月 2日付:拒絶理由通知
令和 元年10月 4日:意見書
令和 元年10月 4日:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
令和 元年12月10日付:拒絶理由通知
令和 2年 1月24日:意見書

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「冷蔵庫周辺の湿度を検知するセンサを有し、前記センサにより検知された湿度の情報を送信する家庭内の冷蔵庫と、
室内の湿度を調節する調節機能を有し、前記冷蔵庫と同じ部屋に設置される機器と、
前記冷蔵庫から送信された、前記冷蔵庫の前記センサにより検知された湿度の情報を受信し、受信した情報が示す湿度に応じて、前記機器の前記調節機能を制御する集中コントローラと
を備え、
前記冷蔵庫は、室内の湿度を調節する調節機能を有しておらず、
前記機器は、前記冷蔵庫以外の機器である連携システム。」

第3 拒絶理由の概要
令和元年12月10日付の当審が通知した拒絶理由は、おおむね次のとおりのものである。
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2002-238081号公報
2.特開平11-166784号公報
3.特開2014-119170号公報
4.特開2002-22342号公報
5.特開2003-148856号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載、引用発明
(1) 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

ア 段落【0002】-【0003】
「【0002】
【従来の技術】家庭内の電化製品は、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、加湿器、除湿器、換気扇等それぞれ単体で稼働しており、それぞれの操作・設定は各製品毎に使用者の手により行われている。使用者は、室内の状況を体感や各家庭内に設置される温度計、湿度計等により確認し、それぞれの装置の運転や制御を手動で行うのが一般的である。製品によっては、搭載されているセンサ等で自動運転を行うものもあり、例えば空気清浄機では、室内の臭いや埃を製品に搭載されているセンサで感知し、自動で運転する。加湿器、除湿器では、室内の湿度を搭載されているセンサで感知し、設置した湿度まで加湿や除湿を行い、エアコンでは、室内の温度を搭載されているセンサで感知し、設定した温度まで空調を行う。
【0003】しかしながら、これらの製品を個々に操作・設定することは非常に煩わしく、手間がかかる。また、設定温度・湿度等も周辺の天候により、大きく変動するため、設定を頻繁に手動で変える必要がある。さらに、例えば空気清浄機の場合、自動運転を実施しても、埃や臭いがセンサで感知されないと、運転を実施しないため、少しの花粉でも反応する花粉症の人にとっては、花粉濃度が低い時から運転を実施したいという要望があった。」

イ 段落【0018】-【0019】
「【0018】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1に係わる電化製品の制御システムの構成を示す概念図、図2は電化製品の制御システムの情報の授受を示す模式図、図3は電化製品の制御システムのブロック図である。図1において1は仲介者が管理するサーバでありローカルな通信網であるLAN2を介して経路制御装置3と接続され、この経路制御装置3は、外部通信媒体であるインターネット、パソコン通信、ISDN等のコンピュータ通信網システムのネットワーク4に接続される。5は一般家庭、事務所、オフィス、店舗等の電化製品使用者である。本実施の形態1では一般家庭を対象として説明する。この電化製品使用者5は、他の複数の電化製品使用者5aと同様に、保有するコンピュータ等の電化製品使用者側端末である端末装置6、6aによって上記ネットワーク4に接続されている。
【0019】7は上記端末装置6に常時接続された内部通信媒体である配線であり、配線7により端末装置6と家庭用電化製品が接続されている。配線7は、家庭用電化製品に電力を供給する電力線もしくは電話線のようなもので構成され、配線7により家庭内LANが構成される。また、無線モデムを使用して、無配線で構成してもよい。その場合、各家庭用電化製品は無線モデムと無線通信可能な通信部を備えている。端末装置6と家庭用電化製品は配線7を介して情報の送信・受信を行う。8はエアコン、9は空気清浄機、10は冷蔵庫、11は換気扇である。8?11の家庭用電化製品は、配線7を介して端末装置6と接続される。本実施の形態1では上記電化製品を代表とし記載するが、他に加湿器、除湿器、電気温水器等が接続される。12は気象庁等の公共の気象情報を送信する機関である。本実施の形態1では12は気象庁に特定して説明するが、気象庁に限らず、気象情報をネットワークを介して送信している気象サービス等の機関でもよい。」

ウ 段落【0030】-【0039】
「【0030】実施の形態2.図4はこの発明の実施の形態2に係わる電化製品の制御システムの情報の授受を示す模式図、図5は電化製品の制御システムのブロック図である。本実施の形態の構成及び動作の詳細説明に先立ち、概要を図4により説明する。仲介者が管理するサーバ1は、気象庁12から気象情報を受信し、蓄積する。端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1に家庭内の電化製品の運転状況、位置情報、および各家庭用電化製品に搭載されているセンサの値を送信する。
【0031】仲介者が管理するサーバ1は、端末装置6から得た家庭内電化製品の運転状況と位置情報から、端末装置6が設置されている地域と各電化製品の運転状況を認識し、センサの値からその地域の天候を認識する。その後、気象庁12から得た気象情報と端末装置6から送信されたセンサ情報に基づいてその地域の今後の天候予測を行う。その後、仲介者が管理するサーバ1は、その地域の今後の天候予測による家庭電化製品の制御条件情報を端末装置6に送信する。端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1から送信された制御条件情報を各家庭用電化製品に送信し、家庭用電化製品の運転を行う。
【0032】次に、この発明の実施の形態2に係わる電化製品の制御システムの詳細構成を図5を用いて説明する。図において実施の形態1と同一または相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。端末装置6は、第1、第2の入出力部13、14と記憶部15から構成され、仲介者が管理するサーバ1は、第3の入出力部を構成する入出力部23、24と記憶部25と処理部26から構成される。各部の構成は実施の形態1と同様であるが、本実施の形態2では端末装置6の第1の入出力部13に家庭用電化製品のセンサ情報を受信してセンサ情報を監視するセンサ情報監視部36を付与し、記憶部15にセンサ情報監視部36で得たセンサ情報を記憶するセンサ情報記憶部37を付与し、第2の入出力部14にセンサ情報を送信するセンサ情報配信部38を付与した。また、仲介者が管理するサーバ1の入出力部23に、端末装置6から送信されたセンサ情報を受信するセンサ情報受信部39を付与した。
【0033】次に、実施の形態2に係る電化製品の制御システムの動作例を図5を用いて説明する。本実施の形態2では、家庭内電化製品としてエアコンを使用した例について説明する。端末装置6は、その家庭の存在する位置情報とその家庭を特定するための特定番号をあらかじめ位置情報記憶部22に蓄積している。位置情報は、その位置の座標値(x,y)のような形式で与えられており、その座標値により地域が判別できるようになっている。また、特定番号は上記位置座標の先頭に数値で与えられる。
【0034】家庭内に設置されるエアコンの運転が行われると、端末装置6はその運転状況を監視し、運転状況記憶部21に記憶する。そのときの運転状況は、例えば、ファンの回転速度や、除湿・暖房・冷房・送風等の運転モードである。このとき、端末装置6は複数台の家庭用電化製品と接続されているため、各電化製品に特定の番号を与え、識別できるようになっている。同時に、エアコン室内機に搭載されている温度センサや湿度センサ等のセンサの値を監視し、センサ情報記憶部37に記憶する。端末装置6は所定の時間間隔で定期的に上記位置情報と運転状況とセンサ情報を仲介者が管理するサーバ1に運転状況配信部18、位置情報配信部20、センサ情報配信部を介して、送信する。このとき、上記位置情報には、家庭を特定する特定番号を、運転状況には、電化製品を特定するための特定番号を、センサ情報には家庭、電化製品を特定するための特定番号を含んでいる。
【0035】仲介者が管理するサーバ1は、気象庁12から当日の気象情報、この場合、風速、天気、湿度、温度、雨量等を、例えば1時間間隔で気象情報受信部30を介して、受信する。受信した気象情報は、気象情報蓄積部33に記憶され、当日の情報は、最新情報を受信次第、更新される仕組みとなっている。また、当日の情報とは別に、同様にして数週間や、数ヶ月の予報も受信し、気象情報蓄積部33に記憶する。同時に、仲介者が管理するサーバ1は、端末装置6から送信された運転状況、位置情報、センサ情報をそれぞれ運転状況受信部27、位置情報受信部28、センサ情報受信部39で受信し、それぞれ運転状況記憶部31、位置情報記憶部32、気象情報蓄積部33に記憶する。気象情報蓄積部33では、気象庁から得た短期・長期的な気象予測情報と各家庭のセンサから得た、例えば、温度、湿度等の局所的な天候状態の情報等を蓄積する。気象予測部34では、記憶された位置情報と気象情報からその位置(地域)での今後数時間後の気象を予測し、気象情報変換部35に送る。
【0036】気象予測は、例えば、風速、天気、湿度、温度、雨量等から、その位置での温度、湿度等を予測する。気象情報変換部35では、気象予測部34から送られたその位置での数時間後の気象予測と運転状況記憶部31に記憶されたエアコンの運転状況に基づいて、今後数時間のエアコンの運転条件を決める。このとき、運転状況は例えばファンの回転速度や、除湿・暖房・冷房・送風等の運転モードである。上記制御条件情報は、制御条件配信部29から端末装置6に送信される。このときの制御条件情報の例としては、例えば、現状曇りであるその地域の天気の回復時間を約1時間後と予測し、温度が1時間以内に20℃から30℃に上昇するとした場合、その数分前からエアコンの運転を冷蔵強運転とし、あらかじめ室内を冷却する。
【0037】端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1から送信された制御条件情報を制御条件受信部19で受信し、制御条件配信部17からエアコンに送信する。これにより、エアコンはその制御条件情報で運転を開始する。
【0038】なお、上記実施の形態2では、エアコンに関して記載したが、この他に空気清浄機、冷蔵庫、加湿器、除湿器等の家庭用電化製品に適用可能である。この場合、例えば空気清浄機では、花粉の飛散状況、風向き、風速、天気等の予測により、運転条件を決定し、冷蔵庫では、室内の温度予測により、運転条件を決定し、加湿器、除湿器では、湿度、天気等により、運転条件を決定する。また、端末装置6は各家庭に1台設置され、各家庭用電化製品と接続されているが、これに限らず、各家庭用電化製品に端末装置6の機能を付与してもよい。また、センサはエアコン室内機や各家庭用電化製品に搭載するもの以外に、センサ単独での設置や、エアコン室外機への搭載等によりより精度を増すことが可能である。
【0039】以上のように、気象情報とセンサ情報を通信媒体を介して受信し、受信した気象情報に応じて家庭内の電化製品を制御する制御条件情報を設定し、その制御条件情報を通信媒体を介して送信して、送信された制御条件情報に基づいて家庭用電化製品を運転するよう構成したことにより、各家庭で電化製品の使用者が頻繁に運転条件を設定変更することなく適切な運転制御を行うことができ、また、例えば、数時間後の予測により運転を実施することにより、室内の快適性が増す。また、電化製品の制御手段を簡単なものとすることができる。また、前もって運転を実行することにより、消費電力の低減が図れる。また、インターネット等の普及した通信手段を使用することにより、比較的簡便に構成することが可能である。さらに、各家庭から得たセンサ情報はその地域のリアルタイムの局所的な天候状態情報を得ることができるため、より精度のよい気象予測が可能となる。」

(2) 引用発明
上記1(1)からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。

「電化製品の制御システムは、一般家庭を対象としており、
8はエアコン、9は空気清浄機、10は冷蔵庫、11は換気扇であり、8?11の家庭用電化製品は、配線7を介して端末装置6と接続され、
端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1に家庭内の電化製品の運転状況、位置情報、および各家庭用電化製品に搭載されているセンサの値を送信し、
仲介者が管理するサーバ1は、気象庁12から得た気象情報と端末装置6から送信されたセンサ情報に基づいてその地域の今後の天候予測を行い、その地域の今後の天候予測による家庭電化製品の制御条件情報を端末装置6に送信し、
端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1から送信された制御条件情報を各家庭用電化製品に送信し、家庭用電化製品の運転を行うものであって、
家庭内電化製品としてエアコンを使用した例について、
家庭内に設置されるエアコンの運転が行われると、端末装置6はその運転状況を監視し、運転状況記憶部21に記憶し、
このとき、端末装置6は複数台の家庭用電化製品と接続されているため、各電化製品に特定の番号を与え、識別できるようになっており、
同時に、エアコン室内機に搭載されている温度センサや湿度センサ等のセンサの値を監視し、センサ情報記憶部37に記憶し、
端末装置6は所定の時間間隔で定期的に上記位置情報と運転状況とセンサ情報を仲介者が管理するサーバ1に運転状況配信部18、位置情報配信部20、センサ情報配信部を介して、送信し、このとき、上記位置情報には、家庭を特定する特定番号を、運転状況には、電化製品を特定するための特定番号を、センサ情報には家庭、電化製品を特定するための特定番号を含んでおり、
仲介者が管理するサーバ1は、端末装置6から送信された運転状況、位置情報、センサ情報を、受信し、それぞれ運転状況記憶部31、位置情報記憶部32、気象情報蓄積部33に記憶し、
気象情報蓄積部33では、各家庭のセンサから得た、例えば、温度、湿度等の局所的な天候状態の情報等を蓄積し、
気象予測部34では、記憶された位置情報と気象情報からその位置(地域)での今後数時間後の気象を予測し、
気象予測は、例えば、風速、天気、湿度、温度、雨量等から、その位置での温度、湿度等を予測し、
気象情報変換部35では、気象予測部34から送られたその位置での数時間後の気象予測と運転状況記憶部31に記憶されたエアコンの運転状況に基づいて、今後数時間のエアコンの運転条件を決め、運転状況は例えばファンの回転速度や、除湿・暖房・冷房・送風等の運転モードであり、
端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1から送信された制御条件情報を制御条件受信部19で受信し、制御条件配信部17からエアコンに送信し、これにより、エアコンはその制御条件情報で運転を開始し、
エアコンの他に冷蔵庫等の家庭用電化製品に適用可能であり、この場合、例えば、冷蔵庫では、室内の温度予測により、運転条件を決定し、
センサは、各家庭用電化製品に搭載するもの以外に、センサ単独での設置や、エアコン室外機への搭載等によりより精度を増すことが可能であり、
前もって運転を実行することにより、消費電力の低減が図れる、
電化製品の制御システム。」

2 引用文献2の記載
引用文献2の段落【0004】には、以下の事項が記載されている。
「【0004】図10及び図11は従来の電気冷蔵庫の防露システムの構成を示すものである。図11に示すマイコン10は周囲の相対湿度を検知する湿度センサー11と外気温サーミスタ12との信号を検知し、湿度センサー11が示す相対湿度値を外気温サーミスタの値により温度補正を行い、現在の相対湿度を判断する。その結果から予めマイコン10に記憶しているテーブルデータにて発露条件にあるか否かを判断し、発露条件下であれば図10に示す冷蔵室13、冷凍室14、野菜室15等の各庫室の開口周縁部に設けた防露ヒーター16を一定時間通電させる。」

3 引用文献3の記載
引用文献3の段落【0022】-【0023】には、以下の事項が記載されている。
「【0022】
冷蔵庫1は、設置された周囲環境の温度及び湿度(外気温度、外気湿度)を検知する検知手段である外気温度センサ26と外気湿度センサ27を備えている。
【0023】
制御装置として、冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板28が配置されている(図2参照)。制御基板28は、前記した外気温度センサ26、外気湿度センサ27、各貯蔵室扉の開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ、左冷蔵室扉7に設けられた温度設定器、省電力モード設定器等と接続する。前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、防露ヒータON/OFF制御等を行う。」

4 引用文献4の記載
引用文献4の段落【0013】-【0015】には、以下の事項が記載されている。
「【0013】また、図2に示す如く店舗30内の湿度を調節するために除湿空調機31が設けられ、店舗30の天井に設けられた空気吸込口32から店舗内の空気を吸い込むと共に、戻り空気ダクト33より除湿空調機31に導いている。ここで、除湿空調機31内には、コントローラ34が設けられており、このコントローラ34は、戻り空気ダクト33又は店舗30内の柱等に設けられた湿度センサ35の出力によって除湿空調機31内での除湿度合いを決定している。そして除湿空調機31で除湿された空気は供給空気ダクト36を通過してショーケース1の下部の空気吐出口37より店舗30内に供給されている。ここで、店舗内の湿度は、店舗内の温度によっても変化するが、店舗内の温度は一年を通してあまり変化がない(20度?30度程度)ため、店舗内の温度をあまり考慮する必要性が無い。
【0014】更に、コントローラ34はショーケース1と接続されており、図3に示す如く、ショーケース1内の結露防止用ヒータ23,24は、湿度センサ35の出力値である店内湿度により出力値を変更している。ただし、図3の出力値は単なる一例に過ぎない。
【0015】上記構成により、結露防止用のヒータ23,24の設定は一年を通して一番過酷な条件を基準としているが、店内湿度により出力値を変更しているので、結露防止用ヒータ23,24による無駄な消費電力を防止すると共に、結露防止用ヒータ23,24は、ショーケース1に対して冷却負荷になっているが、無駄な冷却負荷を防止することができる。」

5 引用文献5の記載
引用文献5の段落【0027】-【0031】には、以下の事項が記載されている。
「【0027】さらに、本発明に係わるショーケースの防露ヒータ制御装置を用いた第2の制御方法について図6に示す制御フローチャートに沿って説明する。本第2の制御方法はエアコンの制御も行うものである。
【0028】予め店舗内の第1の温湿度値を設定する。温湿度センサー4で検出された店舗内の露点温度と第1の設定値を比較する(S11)。店舗内の露点温度が第1の設定値以上の場合(No)、コンピュータ9によりエアコン用I/Oユニット6aを介してエアコン6を除湿可能モードで運転させる(S12)。制御用露点温度を算出する(S13)。この算出された制御用露点温度に基づき通電パターンを選択する(S14)。防露ヒータ7の通電制御は、算出された制御用露点温度に基づき表2から選択される通電パターンより1ランク下の通電時間が短い通電パターンを選択し、防露ヒータの制御を行う。
【0029】通電パターンの1サイクルが終了した時点(S15)で、温湿度センサー4により店舗内の露点温度を検出し、この露点温度が予め設定された第2の設定値を下回った場合(No)、上記の1ランクシフトさせる制御を中止し、ノンシフトの通常の通電制御を行う(S16)。
【0030】エアコン6を用いて店舗内を除湿することで、店舗内の露点温度は低下し、防露ヒータ7ヘの通電率を低減することができる。
【0031】S11において、検出された露点温度が第1の設定値より小さい場合(Yes)は、直ちに通常の通電制御を行う。これは、エアコン6の除湿範囲には限界があることと、露点温度が低くなるほど、エアコン6による除湿効果が小さくなるためである。なお、上記の除湿可能モードとは、除湿運転のほか冷房運転も含まれ、店舗内の露点温度が高い時には冷房運転、それより低い温度の時には除湿運転というように切替えを行っても良い。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のことがいえる。

1 引用発明の「冷蔵庫10」は、本願発明の「冷蔵庫」に対応する。
よって、引用発明の「冷蔵庫10」は、家庭用電化製品であるから、本願発明の「冷蔵庫周辺の湿度を検知するセンサを有し、前記センサにより検知された湿度の情報を送信する家庭内の冷蔵庫」と、「家庭内の冷蔵庫」である点で共通するといえる。

ここで、引用発明の「冷蔵庫10」が、冷蔵庫の庫内の温度等の調節機能を有する一方、冷蔵庫が設置される「室内の湿度を調節する調節機能を有して」いないことは自明である。

2 引用発明の「エアコン8」は、本願発明の「機器」に対応する。
よって、引用発明の「家庭内電化製品」である「エアコン8」は、「例えばファンの回転速度や、除湿・暖房・冷房・送風等の運転モード」を備えるから、本願発明の「室内の湿度を調節する調節機能を有し、前記冷蔵庫と同じ部屋に設置される機器」と、「室内の湿度を調節する調節機能を有し、前記冷蔵庫と同じ家庭内に設置される機器」である点で共通するといえる。

ここで、引用発明の「エアコン8」が、「前記冷蔵庫以外の機器である」ことは自明である。

3 引用発明の「端末装置6」は、本願発明の「集中コントローラ」に対応する。
よって、引用発明の「端末装置6」が、「エアコン室内機に搭載されている温度センサや湿度センサ等のセンサの値を監視し、センサ情報記憶部37に記憶し」、「端末装置6は所定の時間間隔で定期的に上記位置情報と運転状況とセンサ情報を仲介者が管理するサーバ1に運転状況配信部18、位置情報配信部20、センサ情報配信部を介して、送信し」、「仲介者が管理するサーバ1は、気象庁12から得た気象情報と端末装置6から送信されたセンサ情報に基づいてその地域の今後の天候予測を行い、その地域の今後の天候予測による家庭電化製品の制御条件情報を端末装置6に送信し」、「端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1から送信された制御条件情報を制御条件受信部19で受信し、制御条件配信部17からエアコンに送信し、これにより、エアコンはその制御条件情報で運転を開始し」ていることは、本願発明の「前記冷蔵庫から送信された、前記冷蔵庫の前記センサにより検知された湿度の情報を受信し、受信した情報が示す湿度に応じて、前記機器の前記調節機能を制御する集中コントローラ」と、「センサにより検知された湿度の情報を受信し、受信した情報が示す湿度に応じて、前記機器の前記調節機能を制御する集中コントローラ」である点で共通するといえる。

4 引用発明の「電化製品の制御システム」は、本願発明の「連携システム」と「システム」である点で共通するといえる。

5 よって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「家庭内の冷蔵庫と、
室内の湿度を調節する調節機能を有し、前記冷蔵庫と同じ家庭内に設置される機器と、
センサにより検知された湿度の情報を受信し、受信した情報が示す湿度に応じて、前記機器の前記調節機能を制御する集中コントローラと
を備え、
前記冷蔵庫は、室内の湿度を調節する調節機能を有しておらず、
前記機器は、前記冷蔵庫以外の機器である、
システム。」

[相違点1]
「家庭内の冷蔵庫」に関して、本願発明では、「冷蔵庫周辺の湿度を検知するセンサを有し、前記センサにより検知された湿度の情報を送信する」のに対して、引用発明の「冷蔵庫10」は、「冷蔵庫周辺の湿度を検知するセンサを有し、前記センサにより検知された湿度の情報を送信する」ものではない点。

[相違点2]について
「機器」に関して、本願発明の「機器」は、「前記冷蔵庫と同じ室内に設置される」のに対して、引用発明の「家庭内電気機器」である「エアコン8」は、「冷蔵庫10」と「同じ家庭内」に設置されるものであるが、「同じ室内」に設置されることは特定されていない点。

[相違点3]
「集中コントローラ」に関して、本願発明では、「前記冷蔵庫から送信された、前記冷蔵庫の前記センサにより検知された湿度の情報を受信し、受信した情報が示す湿度に応じて、前記機器の前記調節機能を制御する」のに対して、引用発明の「端末装置6」は、「エアコン8」に搭載された湿度センサを監視するものであって、「前記冷蔵庫から送信された、前記冷蔵庫の前記」センサにより検知された湿度の情報を受信していない点。

[相違点4]
本願発明は、「連携システム」に係るのに対して、引用発明の「電化製品の制御システム」は、「連携」システムであることが特定されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。

1 [相違点2]について
家庭において、例えば「ワンルームマンション」のように一部屋だけの場合は当然に、また、複数の部屋がある場合についても、「LDK」などの部屋において、エアコンと冷蔵庫とを「同じ室内」に設置することは、極めて普通に行われている。
よって、引用発明において、エアコン8を冷蔵庫10と「同じ室内」に設置することで、上記[相違点2]に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

2 [相違点1]、[相違点3]、[相違点4]について
[相違点1]、[相違点3]、[相違点4]について、まとめて検討する。
引用文献1のものは、段落【0002】-【0003】の「従来の技術」欄に、「【従来の技術】家庭内の電化製品は、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、加湿器、除湿器、換気扇等それぞれ単体で稼働しており、・・・製品によっては、搭載されているセンサ等で自動運転を行うものもあり・・・しかしながら、これらの製品を個々に操作・設定することは非常に煩わしく、手間がかかる。」と記載されるように、従来、冷蔵庫、エアコン等の家庭内の電化製品を単独で稼働する場合には、単体での操作・設定に手間がかかることに着目してなされたものであるといえる。
引用発明において、冷蔵庫のセンサ情報を、エアコン等の他の機器の制御に利用することは特定されていない。しかし、引用発明の「端末装置6は、仲介者が管理するサーバ1に家庭内の電化製品の運転状況、位置情報、および各家庭用電化製品に搭載されているセンサの値を送信し」ており、「端末装置6」が管理する「センサ情報には家庭、電化製品を特定するための特定番号を含んでおり」、「仲介者が管理するサーバ1は、気象庁12から得た気象情報と端末装置6から送信されたセンサ情報に基づいてその地域の今後の天候予測を行い、その地域の今後の天候予測による家庭電化製品の制御条件情報を端末装置6に送信」する構成を備えるから、引用発明の家庭用電化製品を制御する「端末装置6」側では、「各家庭用電化製品に搭載されているセンサの値」を集中管理するものであって、かつ、センサ情報には、個々の家庭用電化製品を識別可能な情報が付加されているといえる。

そして、引用発明は、エアコン制御に用いるための「センサは、各家庭用電化製品に搭載するもの以外に、センサ単独での設置や、エアコン室外機への搭載等によりより精度を増すことが可能であ」るから、制御の精度向上のために、「センサ単独での設置や、エアコン室外機への搭載等」、すなわち、制御する「エアコン」から独立した別の位置に設置されるセンサに基づいて、当該エアコンを制御することの示唆があるといえる。

また、引用発明において「電化製品の制御システムは、一般家庭を対象としており、8はエアコン、9は空気清浄機、10は冷蔵庫、11は換気扇であり、8?11の家庭用電化製品は、配線7を介して端末装置6と接続され」るから、引用発明の「電化製品の制御システム」は、「冷蔵庫10」を含むものである。

一般に、冷蔵庫として、冷蔵庫周囲の湿度を検出する湿度センサを有する冷蔵庫は、周知技術である。(例えば、上記「第4」の「2 引用文献2の記載」、及び、「3 引用文献3の記載」を参照。)

よって、制御の精度向上のために、「センサ単独での設置や、エアコン室外機への搭載等」、すなわち、制御する「エアコン」から独立した別の位置に設置されるセンサに基づいて、当該エアコンを制御することの示唆がある、引用発明の「電化製品の制御システム」において、「冷蔵庫」として、周知技術である、冷蔵庫周囲の湿度を検出する湿度センサを有するものを採用することによって、「端末装置6」が、「冷蔵庫10」の湿度センサに基づいて、「エアコン8」を制御するように構成して、家庭用電化製品が相互に「連携」するシステムとすることで、上記[相違点1]、[相違点3]、[相違点4]に係る構成とすることは、当業者が容易に推考し得ることである。

さらに、一般に、「冷蔵庫」が設置された室内の湿度に応じて、「空調機器」で湿度を調整することによって、冷蔵庫の結露防止用のヒータにおける消費電力を低減することは、周知技術である。(例えば、上記「第4」の「4 引用文献4の記載」、及び、「5 引用文献5の記載」を参照。)

よって、「端末装置6」が、「冷蔵庫10」の湿度センサに基づいて、「エアコン8」を制御するように構成する場合に、冷蔵庫の消費電力を低減することができるという本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-09 
結審通知日 2020-06-16 
審決日 2020-06-30 
出願番号 特願2016-569171(P2016-569171)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之久島 弘太郎  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
野崎 大進
発明の名称 連携システム及び集中コントローラ及び集中制御方法  
代理人 溝井国際特許業務法人  

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