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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1365522
審判番号 不服2019-12497  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-20 
確定日 2020-08-20 
事件の表示 特願2015-112847「NFCによる充電システム、モバイル機器、充電器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-226230〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月3日に出願された特願2015-112847号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成31年 1月10日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 6月17日付け:拒絶査定
令和 1年 9月20日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和1年9月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和1年9月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(以下、「本件補正発明」という。なお、下線部は補正箇所である。)
「第1NFCアンテナおよび電磁誘導により前記第1NFCアンテナに誘起する電流に基づいて充電される充電池を有するモバイル機器と、前記第1NFCアンテナに電磁誘導を誘起させる第2NFCアンテナ、前記第2NFCアンテナに電磁誘導のための給電電流を供給する供給部を有する充電器と、第3NFCアンテナを有し前記モバイル機器とともに前記充電器に近接可能なICカードとを含む充電システムであって、前記モバイル機器の前記第1NFCアンテナに前記電流を誘起させるために前記充電器の前記第2NFCアンテナに前記給電電流が供給されることで前記ICカードの前記第3NFCアンテナに電磁誘導が生じ前記ICカードが誤って破壊されないようにする防護手段を設け、前記防護手段は、前記充電器に前記モバイル機器が所定の状態で近接するよう案内するとともに前記第3NFCアンテナが前記第2NFCアンテナに近接するのを前記ICカードに対して阻害する案内手段を含むことを特徴とする充電システム。」

2 補正の適否
本件補正により追加された「前記モバイル機器の前記第1NFCアンテナに前記電流を誘起させるために前記充電器の前記第2NFCアンテナに前記給電電流が供給されることで前記ICカードの前記第3NFCアンテナに電磁誘導が生じ前記ICカードが誤って破壊されないようにする防護手段」について、以下、補正の適否を検討する。

本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。なお、下線部は当審で付与した。

「【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る充電システムにおける実施例1の全体構成を示すブロック図である。図1の充電システムは、デジタルカメラ2、充電器となる充電/データ転送ステーション4、およびパソコン6、を含み、パソコン6にUSBケーブル8で接続された充電/データ転送ステーション4からNFCにより充電対象であるデジタルカメラ2を充電する。なお、図1には、充電/データ転送ステーション4との間でNFCによる通信が可能なICカードを図示している。充電システムとの関係は後述する。
(中略)
【0020】
充電制御部34は、パソコン6からの給電に基づく電源部36からの電力により、上記のような移動式NFCアンテナ/IC28に電磁誘導のための給電電流を供給する。なお、充電制御部34は、デジタルカメラ2が充電用正規位置にないと判断されるとき、または充電用正規位置にあるのが電磁場発生で破損する恐れのあるICカード10であると判断されるとき、電磁誘導のための給電電流供給を禁止する。近接センサ38は、この目的のため、充電/データ転送ステーション4の充電面にある機器が充電用正規位置にあるかどうか、また、機器が充電用正規位置に置かれたとしてもそれがICカード10でないかどうかを検知する。その詳細は後述する。
(中略)
【0023】
ICカード10には、パソコン6との間の認証やデータ通信等のためのカード機能部44および、移動式NFCアンテナ/IC28または他のデータリーダ/ライタとの間でデータやり取りを行うカードNFCアンテナ46を有する。
【0024】
パソコン6は、上記のような充電/データ転送ステーション4の機能の制御のためのパソコン制御部48を有する。パソコン記憶部50は、パソコン制御部50の機能に必要なプログラム、データなどを記憶するとともに、デジタルカメラから転送された画像データ等を記憶する。電源部52は、充電/データ転送ステーション4の電源部36に給電する。USBケーブル8は、上記のようなパソコン制御部48による充電/データ転送ステーション4の機能の制御のための制御情報のやり取り、および充電/データ転送ステーション4の電源部36への給電のため、充電/データ転送ステーション4とパソコン6を接続する。なお、図1に図示された接続ラインは各構成要素の関連を模式的に示したものであり、実際のUSBケーブルの構造を示すものではない。充電/データ転送ステーション4とパソコン6との間の実際の制御信号および電力は通常のUSBケーブルの規格に従ったケーブル構造によって行われる。
(中略)
【0036】
図5は、図1の実施例1における充電/データ転送ステーション4の上面図であり、ICカードが誤って位置決めストッパー54に押し当てられた状態で充電/データ転送ステーション4に載置された場合について説明している。図2と同じ構成に同じ番号を付し、必要のない限り説明を省略する。図5(A)は、図3(A)と同じものである。
【0037】
これに対し、図5(B)は、ICカード10が位置決めストッパー54に押し当てられた状態で充電/データ転送ステーション4に載置さている。この場合、正規位置検知用センサ38aおよび誤方向検知センサ38cがICカード10に覆われてしまうが、ICカードは幅が広いので同時にカード検知用センサ38bを覆う。従って、正規位置検知用センサ38a、カード検知用センサ38bおよび誤方向検知センサ38cの出力の組み合わせにより、充電/データ転送ステーション4に載置された機器がICカード10であると判断される。この結果、図4(A)等と同様にして、移動式NFCアンテナ/IC28は通信用位置に留め置かれるとともに、電磁誘導のための給電電流供給が禁止される。そしてNFCによるデータ転送のみが行われる。カードNFCアンテナ46は通信用位置に留め置かれた移動式NFCアンテナ/IC28の通信圏内にあるので、ICカードの検知および情報交換は可能である。なお、ICカードが図4のような状態に置かれた場合も同様の結果となる
【0038】
図6は、上記実施例1におけるパソコン制御部48の動作を説明する基本フローチャートである。なお、パソコン6は種々の機能を実行するが、図6のフローは充電/データ転送ステーション4に載置される機器に関する充電と通信に関する部分だけを抽出したものである。従って、実際のパソコン6のフローは図示されていない種々の機能を達成する。図6のフローは、パソコン電源部52の電源が投入されることによりスタートし、ステップS2で立上処理を行ってステップS4に移行する。
【0039】
ステップS4では、移動式NFCアンテナ/IC28を通信用位置にセットし、ステップS6に進んで、移動式NFCアンテナ/IC28の通信圏内に他の機器があるか否かチェックする。該当機器があればステップS8に進み、該当機器とのNFC通信が確立したか否かチェックする。そして通信が確立すればステップS10に進み、所定のNFC通信ができたか否かおよびNFC通信による認証によって短距離通信に進むべき対象機種である旨の認証ができたか否かをチェックし、所定のNFC通信および上記の認証ができればステップS12に進む。ステップS12では、認証した該当機器との間の短距離通信が確立したか否かチェックし、確立していればステップSS14に進んで所定の短距離通信(例えば画像データ転送)を開始する処理を行ってステップS16に移行する。
【0040】
一方、ステップS8において該当機器とのNFC通信の確立ができないとき、またはステップS10において所定のNFC通信およびNFC通信による該当機器の認証ができないとき、またはステップS12において認証した該当機器との間の短距離通信の確立が確認できないときは、いずれも、直ちにステップS16に移行する。なお、ステップS12から直接ステップS16に移行した場合は、所定のNFC通信またはNFC通信機器としての認証は行われている。
【0041】
ステップS16では、NFC通信が確立した機器が充電用正規位置にあるか否かが近接センサ38の出力により判断される。機器が充電用正規位置にあればステップS18に進み、NFC通信によって、その機器が充電可能機器か否かチェックする。そして、充電可能機器であれば、移動式NFCアンテナ/IC28をまず通信用位置から充電用初期位置まで移動させ、次いで、アンテナ制御部の情報に基づき、充電のための最適位置(移動式NFCアンテナ/IC28がデジタルカメラNFCアンテナ24に対応する位置にあってもっとも強い電磁誘導が得られる状態)のサーチを開始する。このサーチはトライアルアンドエラーによる。
【0042】
ステップS22では、充電最適位置が確定したか否かチェックし、確定するまでトライアルエラーを繰り返す。ステップS22で充電最適位置が確定するとステップS24に移行し、充電制御部34から移動式NFCアンテナ/IC28に電磁誘導のための給電電流を供給開始する処理を行ってステップS26に移行する。
(中略)
【実施例3】
【0049】
図8は、本発明の実施の形態に係る充電システムにおける実施例3の全体構成を示すブロック図である。実施例3は、実施例1と共通するところが多いので、対応する部分には同じ番号を付し、必要のない限り説明を省略する。図8に示す実施例2が図1に示す実施例1と異なるのは、異種のデジタルカメラにおいてデジタルカメラNFCアンテナが配置される位置が互いに異なっていることへの対策、およびICカード10が電磁場発生で破損する恐れのあることへの対策を、充電/データ転送ステーション204へのアダプタの提供、およびアダプタ取付/挿入検知部238の設置によって行うようにした点である。
【0050】
具体的には、図8の実施例3では、デジタルカメラ毎に専用のアダプタを交換可能にそれぞれ用意し、このアダプタによって、いずれのデジタルカメラでも、そのデジタルカメラNFCアンテナが常に固定式NFCアンテナ/ICに対応する位置に来るよう誘導する。これによって、実施例3の充電/データ転送ステーション204では、固定式NFCアンテナ/IC228を採用しており、実施例1におけるようなアンテナ駆動機構およびその制御部は不要である。さらに、後述のようにアダプタは、その形状によってICカード10のカードNFCアンテナ46が電磁場発生の大きい部位に近づかないようにする。アダプタの詳細は後述する。また、図8の実施例3におけるパソコン制御部248は、アダプタ取付/挿入検知部238の検知出力を受け、上記のようなアダプタが取り付けられておらずICカード10が接近する可能性があるとき固定式NFCアンテナ/IC228に対する電磁誘導のための給電電流供給を禁止する。また、パソコン制御部248は、アダプタ取付/挿入検知部238の検知出力を受け、アダプタが取付けられた充電/データ転送ステーション204にデジタルカメラが挿入されると、固定式NFCアンテナ/IC228に対する電磁誘導のための給電電流の供給を行う。
(中略)
【0056】
図11は、実施例3における充電/データ転送ステーション204、デジタルカメラ202、デジタルカメラ202専用のアダプタ254およびICカード10の斜視図である。図11は、図9(B)と同様のものであるが、デジタルカメラ202を挿入する前の状態を示す。アダプタ254はデジタルカメラ202専用のものであるから、当然ながら、図11(A)の状態から図9(B)の状態にデジタルカメラ202を挿入することができる。
【0057】
これに対し、図11(B)は、ICカード10が誤って通孔254aに挿入されようとしている状態を示す。しかしながら、ICカード10の幅は、通孔254aの幅よりも広いので挿入ができない。図11(B)の状態は、アダプタ254が充電/データ転送ステーション204が結合されているので、電磁誘導のための給電電流を供給する条件の一つが満たされているが、ICカード10が挿入できないので、電磁誘導によりICカード10が破壊されることはない。
【0058】
なお、デジタルカメラ202は比較的幅の狭いものであるが、図10の異種デジタルカメラ258のように幅が広い場合、これに対応してアダプタ255の通孔255aの幅も広い。従って、ICカード10が誤って挿入される可能性がある。しかしながら、万一挿入が可能であっても図11(B)からわかるように、ICカード10はカードNFCアンテナのアンテナコイルの向きが、充電/データ転送ステーション204の固定式NFCアンテナ/ICのアンテナコイルと平行となる状態では挿入できない。このように、充電/データ転送ステーションに結合されるアダプタは、ICカードNFCアンテナのアンテナコイルが充電/データ転送ステーションの固定式NFCアンテナ/ICのアンテナコイルと平行な状態で近接することを防止し、強い電磁誘導が生じないようにする観点からも有用なものである。
【0059】
図12は、上記実施例3におけるパソコン制御部248の動作を説明する基本フローチャートである。図6と同様にして、充電/データ転送ステーション204に載置される機器に関する充電と通信に関する部分だけを抽出したものである。図12のフローも、パソコン電源部52の電源が投入されることによりスタートし、ステップS42で立上処理を行ってステップS44に移行する。
【0060】
ステップS44では、固定式NFCアンテナ/IC228の通信圏内に他の機器があるか否かチェックする。該当機器があればステップS46に進み、該当機器とのNFC通信が確立したか否かチェックする。そして通信が確立すればステップS48に進み、所定のNFC通信ができたか否かおよびNFC通信による認証によって短距離通信に進むべき対象機種である旨の認証ができたか否かをチェックし、所定のNFC通信および上記の認証ができればステップS50に進む。ステップS50では、認証した該当機器との間の短距離通信が確立したか否かチェックし、確立していればステップSS52に進んで所定の短距離通信を開始する処理を行ってステップS54に移行する。
【0061】
一方、ステップS46において該当機器とのNFC通信の確立ができないとき、またはステップS48において所定のNFC通信およびNFC通信による該当機器の認証ができないとき、またはステップS50において認証した該当機器との間の短距離通信の確立が確認できないときは、いずれも、直ちにステップS54に移行する。なお、ステップS50から直接ステップS54に移行した場合は、所定のNFC通信またはNFC通信機器としての認証は行われている。
【0062】
ステップS54では、アダプタ取付/挿入検知部238の検知信号に基づきアダプタが充電/データ転送ステーション204に取り付けられているか否かチェックする。アダプタが取り付けられていればステップS56に進み、機器がアダプタの貫通孔に挿入されているか否かチェックする。そしてアダプタ取付/挿入検知部238の検知信号に基づき機器の挿入が検知されるとステップS58に進み、充電制御部34から固定式NFCアンテナ/IC228に電磁誘導のための給電電流を供給開始する処理を行ってステップS60に移行する。
(中略)
【0068】
なお、図13の実施例4では、挿入方向の底面の幅が広い場合、切り欠き孔354aの幅も広くなるので、ICカードが誤って挿入される可能性が生じる。そして実施例4においてICカードが誤挿入された場合、ICカードNFCアンテナのアンテナコイルと充電/データ転送ステーションの固定式NFCアンテナ/ICのアンテナコイルが平行な状態で近接する可能性も生じる。
【0069】
図14は、このようなICカード幅よりも広い切り欠き孔354aを有するアダプタに関する側断面図であり、誤挿入の際にICカードNFCアンテナのアンテナコイルと充電/データ転送ステーションの固定式NFCアンテナ/ICのアンテナコイルが平行な状態で近接するのを防止する構造を示す。図13と同じ部分には同じ番号を付して説明を省略する。図14から明らかなように、ICカード10がご挿入される可能性のあるアダプタ354の場合、切り欠き孔354aの底面が傾斜させられる。
【0070】
図14(A)は正規のデジタルカメラ302が挿入された場合であり、デジタルカメラNFCアンテナ324が固定式NFCアンテナ/IC328に対応する位置に近接して誘導される。正規のデジタルカメラ302が挿入された場合、その厚みは切り欠き孔354aに一致しているので、切り欠き孔354aの底面が傾斜していても、所定位置より下方に入り込むことはない。これに対し、図14(B)は、ICカード10がご挿入された場合を示す。ICカード10は薄いので、切り欠き孔354aの底面の傾斜に沿って下方に滑り、ICカードNFCアンテナ46が充電/データ転送ステーションの固定式NFCアンテナ/IC328から離間させられるとともに、アンテナコイルの平行性も崩れている。これにより強い電磁誘導が生じるのが防止される。
(中略)
【0074】
なお、図15の実施例5では、デジタルカメラNFCアンテナ424がデジタルカメラの挿入方向側面に設けられているため、万一図15(C)のようなICカードがデジタルカメラ402と同じ方向で挿入されたとしても、ICカード10のカードNFCアンテナのアンテナコイルの向きが、充電/データ転送ステーション404の固定式NFCアンテナ/IC428のアンテナコイルと平行とはならず、強い電磁誘導が生じない。
(中略)
【符号の説明】
【0078】
24、60、260、224、324、424 第1NFCアンテナ
20 充電池
2、58、202、258、302、402 モバイル機器
28、228、328、428 第2NFCアンテナ
4、104、204、304、404 充電器
38、48、148、254、255、354、454 防護手段

ここで、明細書の段落【0014】、【0020】、【0023】-【0024】、【0036】-【0042】、【0078】には、防護手段(近接センサ38、パソコン制御部48)により、近接した機器がモバイル機器(充電可能機器)か否か判断し、モバイル機器であれば電磁誘導のための給電電流を供給し、ICカードであれば電磁誘導のための給電電流供給を停止することについて記載されている。
また、明細書の段落【0049】-【0050】、【0056】-【0062】、【0068】-【0070】、【0074】、【0078】には、防護手段(アダプタ254,255,354,454)により、モバイル機器の第1NFCアンテナが充電器の第2NFCアンテナに平行な状態で近接するのを許容すると共に、ICカードの第3NFCアンテナが充電器の第2NFCアンテナに平行な状態で近接するのを防止することについて記載されている。
すなわち、当初明細書等には、防護手段(近接センサ38、パソコン制御部48)により、「充電器の第2NFCアンテナに給電電流を供給することでモバイル機器の第1NFCアンテナに電流を誘起させること」、「ICカードの第3NFCアンテナに電磁誘導が生じ前記ICカードが誤って破壊されるのを防止すること」のそれぞれについては開示されているものの、当初明細書等の何れの箇所を参酌しても、第2NFCアンテナが第1NFCアンテナに電磁誘導を誘起する場合にICカードが破壊されないようにする防護手段については記載も示唆もされていない。
要するに、「前記モバイル機器の前記第1NFCアンテナに前記電流を誘起させるために前記充電器の前記第2NFCアンテナに前記給電電流が供給されること」と「前記ICカードの前記第3NFCアンテナに電磁誘導が生じ前記ICカードが誤って破壊されないようにする」ことは各々別個の事項であるから、本件補正発明に記載されているように、互いの文言を「・・・供給されることで前記ICカードの・・・」とつなげると、当初明細書等に記載された事項と異なるものとなる。

したがって、本件補正により追加された「前記モバイル機器の前記第1NFCアンテナに前記電流を誘起させるために前記充電器の前記第2NFCアンテナに前記給電電流が供給されることで前記ICカードの前記第3NFCアンテナに電磁誘導が生じ前記ICカードが誤って破壊されないようにする防護手段」は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正発明は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年9月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年3月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項11】
モバイル機器のNFCアンテナに電磁誘導を誘起させる給電兼用NFCアンテナと、前記給電兼用NFCアンテナに電磁誘導のための給電電流を供給する供給部を有する充電器と、前記給電兼用NFCアンテナからICカードのNFCアンテナに誤った電磁誘導が生じない防護手段とを有することを特徴とする充電器。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項11に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、また、この出願の請求項11に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特開2014-225989号公報

3 引用文献
引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線部は当審で付与した。

ア.「【0004】
無線電力伝送方式の業界団体WPC(Wireless Power Consortium)が提唱するQi(商標)においては、受電装置が給電装置へ制御信号を送信する機構が規定されている。一般に、この制御信号は、受電装置が専用のコンデンサや抵抗の値を変更することにより、給電装置が放射した信号の波形を変形させる負荷変調によって、受電装置から給電装置へと送信される。したがって、NFCと電力伝送を一体化した機器において、電力伝送のための制御信号を、負荷変調ではなくNFCによって通信することにより、コンデンサや抵抗を除去することでコストダウンを図ることができる。」
イ.「【0013】
(受電装置及び給電装置の構成)
まず、本実施形態に係る受電装置100及び給電装置200の構成について説明する。図1及び図2に、それぞれ、本実施形態に係る受電装置100及び給電装置200の構成例を示す。
【0014】
受電装置100及び給電装置200は、共に、共通する機能部(共通部113)を有する。受電装置100は、共通部113に加えて、電力受信部109及び電源部111を有する。また、給電装置200は、共通部113に加えて、電力送信部201及び電源部202を有する。共通部113は、例えば、制御部101、記憶部102、データ処理部103、操作部104、出力部105、無線LAN機能部106、Bluetooth機能部107、NFC部108、及び共用アンテナ110を有する。なお、各機能部は、制御情報及び電気信号などを送受信するためのバス112により接続される。」
ウ.「【0018】
受電装置100において、電力受信部109は、給電装置200から供給された電力を受信する受電機能を有する。受電装置100においては、NFC部108及び電力受信部109は、共通のアンテナ(共用アンテナ110)を用いて、給電装置200との間で、近距離通信と無線電力伝送における受電とをそれぞれ実行する。なお、共用アンテナ110は、無線LAN機能部106及びBluetooth機能部107が有するアンテナとは異なるアンテナである。また、NFC部108は、例えば、制御部101の制御により、共用アンテナ110からの電気信号が遮断されることにより、その機能を無効化されうる。また、電力受信部109において受信した電力は、例えば、充電池として機能する電源部111に蓄積される。
【0019】
また、給電装置200において、電力送信部201は、商用電源(電源部202)から供給された電力を、無線により受電装置100へ供給する給電機能部である。給電装置200においても、NFC部108及び電力送信部201は、共通のアンテナ(共用アンテナ110)を用いて、受電装置100との間で、近距離通信と無線電力伝送における給電とをそれぞれ実行する。なお、共用アンテナ110は、受電装置100と同様に、無線LAN機能部106及びBluetooth機能部107が有するアンテナとは異なるアンテナである。」
エ.「【0024】
受電装置100は、まず、給電装置200との間でNFC通信が確立しているかを判定する(S401)。受電装置100は、例えば、受電装置100と給電装置200とが近接状態になると、給電装置200の無線電波によって発生した磁界が受電装置100に電気信号を発生させる現象を利用して、給電装置200に近接したかを判定する。そして、受電装置100は、近接状態となったことに応じて、NFC通信が利用可能であり、NFC通信が確立したものと判定する。
【0025】
受電装置100は、NFC通信が確立している場合(S401でYES)、NFC通信を用いて、受電を行うための通信を開始する。受電装置100は、まず、NFC通信を用いて、必要な充電サービス(電力伝送サービス)を受けられるかの確認をおこなう(S402)。この確認において、相手装置(給電装置200)が給電機能を有しているか、及び、給電電圧などの情報が交換される。なお、NFC通信の確立後の電力伝送の開始処理(S402)は、受電装置100の制御部101において自動で実行されてもよいし、ユーザによる操作部104の操作に応じて実行されてもよい。このとき、制御部101は、処理を自動的に開始するかユーザの操作を待つかを、記憶部102に保持されている設定情報によって決定してもよい。設定情報は、ユーザによる操作部104の操作により設定されてもよい。受電装置100の制御部101は、設定情報が自動的に電力伝送を開始する設定である場合、例えば、NFC通信の確立時に、電源部111の電圧を確認し、その電圧が一定値以下であるときにS402の処理を実行する。」
オ.「【0028】
HOが可能でないと判定した場合(S403でNO)、受電装置100は、NFCを用いて、以降の受電のための通信を行うこととなる。この場合は、受電装置100は、電源部111の状態を確認し、充電要求情報(容量と時間の少なくともいずれか)を算出し(S410)、NFCを用いて、その情報を給電装置200へ通知する(S411)。その後は、充電要求情報に従って無線電力伝送が実行されることとなるため、NFC通信は不要である。このため、受電装置100の制御部101は、共用アンテナ110からのNFC部108への電力の供給を遮断し、NFC部108を無効化する(S412)。その後、無線電力伝送が充電要求情報に従って実行され(不図示)、処理が終了する。」
カ.「【0030】
無線LANとBTとでは、一般に無線LANの方が高速大容量な通信が可能である。したがって、例えば、送信または受信されるデータ量が所定量よりも多い場合は、受電装置100は、無線LANを切り替え先として選択してもよい。例えば、受電装置100がデジタルカメラであると共に、給電装置200がデータ蓄積装置である場合に、充電中に通信による画像データのバックアップを行う場合は、受電装置100は、無線LANを切り替え先の通信方式として選択してもよい。また、無線電力伝送の制御信号のみである場合など、送信または受信されるデータ量が少ない場合は、受電装置100は、消費電力が少ないBTを切り替え先の通信方式として選択してもよい。」
キ.「【0035】
HO先への接続処理(S405)が終了すると、無線電力伝送のための通信は、HO先の通信方式で行われるようになる。したがって、受電装置100の制御部101は、共用アンテナ110からNFC部108への電力の供給を遮断し、NFC部108を無効化する(S406)。NFC部108が無効化された(S406)後、受電装置100は、HO先の通信方式を用いて、給電開始を給電装置200へ要求する(S407)。具体的には、受電装置100は、BT又は無線LANのペイロードに給電開始要求通知を含めて、給電装置200へ送信する。そして、受電装置100は、充電が完了したかを監視し(S408)、充電が完了すると(S408でYES)、HO先の通信方式を用いて、給電停止を給電装置200へ要求する(S409)。具体的には、受電装置100は、BT又は無線LANのペイロードに給電停止要求通知を含めて、給電装置200へ送信する。」
ク.「【0044】
続いて、受電装置100は、無線LAN通信によって、給電装置200に対して給電開始要求を送信する(F506)。給電装置200は、給電開始要求を受信したことに応答して、受電装置100への電力の供給(無線電力伝送)を開始する(F507、F508)。給電装置200は、電力伝送が正常に動作している場合、受電装置100から給電停止要求を受信するまでは、給電を継続する。なお、受電装置100は、受電中に正常に受電が行われているかを判定し、その判定結果を一定時間ごとに給電装置200へフィードバックしてもよい。この場合、給電装置200は、異常状態となったことの通知を受けると、電力の供給を停止してもよい。一定の期間、給電装置200による電力の供給(無線電力伝送)が継続した後に、受電装置100が充電完了を検出する(F509)と、受電装置100は、無線LAN通信を用いて、給電装置200に対して給電停止要求を送信する(F510)。そして、給電装置200は、この給電停止要求を受信したことを以って、受電装置100への電力の供給を停止する。」

上記ウ及びカによれば、無線電力を受電する受電装置100の一例としてデジタルカメラが記載されている。

上記ウによれば、給電装置200は、共用アンテナ110を用いて、受電装置100との間で近距離通信と無線電力伝送における給電とをそれぞれ実行することが記載されている。

上記ウ及び図2によれば、電源部202と共用アンテナ110とが配線を介して接続されており、電源部202から共用アンテナ110に対し無線電力伝送のための電力(給電電圧及び給電電流)が供給されることが記載されている。

上記エ、オ、キ及びクによれば、受電装置100からの要求に基づいて給電装置200からの給電開始/給電停止を制御することが記載されている。

上記アないしクの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「デジタルカメラである受電装置100に対し、共用アンテナ110を用いて、近距離通信と無線電力伝送における給電とをそれぞれ実行し、電源部202から共用アンテナ110に対し無線電力伝送のための給電電流を供給し、受電装置からの要求に基づいて給電開始/給電停止を制御する、給電装置200。」

4 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「共用アンテナ110」は、該共用アンテナ110を用いてNFC通信と共に電力伝送を行っていることから、本願発明の「給電兼用NFCアンテナ」に相当する。ここで、上記「3 ア.」によれば、Qi規格での無線電力伝送を想定していることから、引用発明の「無線電力伝送」は、本願発明の「電磁誘導」(による無線電力伝送)に相当する。

(2)引用発明の「無線電力伝送のための給電電流を供給」する「電源部202」は、本願発明の「供給部」に相当する。

(3)上記「3 ウ.」によれば、給電装置から無線電力伝送された電力は受電装置の電源部111(充電池として機能)に蓄積されることから、引用発明の「給電装置」は、本願発明の「充電器」に相当する。

(4)引用発明の「受電装置からの要求に基づいて給電開始/給電停止を制御する」ことは、受電を必要としない若しくは受電機能を有しない受電装置に対しては給電装置から給電を行わないことであり、仮にNFCアンテナを備え受電機能を有しないICカードが近接しても、ICカードからは要求信号が送信されないため電磁誘導が生じることはなく、本願発明の「誤った電磁誘導が生じない防護手段」を備えていることに相当する。
この点について、審判請求人は平成31年3月6日付け意見書において、引用文献1に記載の発明において、給電装置200は受電装置100からの要求に基づいて電力伝送を実行しているに過ぎず、本願発明とは異なることを主張している。しかしながら、上記判断のように、引用文献1に記載された発明は、受電装置からの要求に基づいて給電開始/停止を制御する結果、要求を行わない受電装置に対しては給電が行われず「誤った電磁誘導が生じない」こととなることから、この点において引用発明との差異は認められない。よって、審判請求人の主張を採用することはできない。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-09 
結審通知日 2020-06-16 
審決日 2020-06-30 
出願番号 特願2015-112847(P2015-112847)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02J)
P 1 8・ 561- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 卓馬大手 昌也  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 五十嵐 努
赤穂 嘉紀
発明の名称 NFCによる充電システム、モバイル機器、充電器  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  
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