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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1365552
審判番号 不服2018-10384  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-31 
確定日 2020-08-17 
事件の表示 特願2017- 4808「創傷縫合、組織近置、組織支持、組織懸下、および/または組織固定用の縫合糸」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-104572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)7月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年(平成18年)8月7日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2009-523757号の一部を平成26年3月14日に新たな特許出願とした特願2014-51121号の一部を平成27年3月5日に新たな特許出願とした特願2015-43699号の一部を平成29年1月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は概ね次のとおりである。
平成29年 2月14日 :手続補正書の提出
平成29年10月10日付け:拒絶理由通知
平成30年 2月 8日 :意見書の提出
平成30年 3月28日付け:拒絶査定
平成30年 7月31日 :審判請求書の提出
令和 1年 9月18日付け:拒絶理由通知書
令和 1年12月16日 :意見書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年2月14日の手続補正により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という)。
「第1の端および第2の端を有する吸収性材料から作られている細長い柔軟体(210)と、
吸収性材料から作られている複数の組織係合要素(211?220,231?240)であって、それぞれが貫通孔を画定し、前記細長い柔軟体上に移動可能に受け入れられる複数の組織係合要素(211?220,231?240)と、
前記細長い柔軟体に作られた複数の位置決め要素(221?230,241?250)であって、それぞれが前記孔よりも大きく、前記組織係合要素を前記細長い柔軟体上に直列配置で保持しており、前記位置決め要素は、前記細長い柔軟体に作られた結び目である、複数の位置決め要素(221?230,241?250)と、
を備えている縫合糸(200)であって、
前記縫合糸は、一対の細長い直線ニードル(201,204)を備えており、
前記組織係合要素は、略切頭円錐状であり、各々が狭端(75)および広端(77)を有しており、
前記組織係合要素は、少なくとも2つの互いに離間した群(211?220および231?240)を形成し、前記2つの群のうちの第1の群(211?220)の前記組織係合要素の前記狭端は、前記第1の群に対して最も近位にある第1の細長い直線ニードル(201)の方向を向き、前記2つの群のうちの第2の群(231?240)の前記組織係合要素の前記狭端は、前記第2の群に対して最も近位にある第2のニードル(204)の方向を向いていることを特徴とする縫合糸。」


第3 拒絶の理由
令和1年9月18日付けの当審が通知した拒絶理由は、理由1として、次の理由を含むものである。
本願発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許出願公開2003/0149447号明細書
引用文献2:米国特許出願公開2006/0079935号明細書


第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1には、次の事項が記載されている(日本語訳及び下線は、当審が付与したものである。以下同じ。)。
「[0038]・・・As shown in the enlarged fragmentary view in FIG. 1D, each barb is approximately triangular or wedge-shaped.・・・」(図1Dに拡大された部分図に示されたように、それぞれのバーブは略三角形状又はくさび形をしている。)
「[0048]The barbed surgical suture 20, 30,40, 50, 60, 67, 70, 80, 90, 100 may also be configured as a double-ended suture100 with the barbs 102 on a first end portion 104 aligned to allow the suture100 to move through tissue in a one direction and the barbs 106 on a second end portion 108 aligned to allow the suture 100 to move through tissue in the opposite direction. FIG. 4 shows a double-ended barbed surgical suture 100 constructed according to the present invention. The barbs 102, 106 on the double-ended barbed surgical suture 100 may be made in many different configurations, including those shown in FIGS. 1D, 1E, 1F, 1G, 7B and 8B. The double-ended barbed surgical suture 100 may be manufactured with curved or straight suture needles 110, 111 attached at one or both ends of the suture 100. The suture needles 110, 111 may be permanently attached or removably attached to the barbed surgical suture 100 or, alternatively, the suture needles 110, 111 may be integrally formed with the barbed surgical suture 100. Optionally, the double-ended barbed surgical suture 100 may be manufactured with a non-barbed lead at each end of the suture and/or with a non-barbed connecting member 112 between the two barbed portions 104, 108. Optionally, the double-ended barbed surgical suture 100 may be made with a mark 114 or other feature to indicate the center of the suture 100 between the two barbed portions 104, 108 and/or with depth markings on the suture needle 110, 111 and/or on the suture body 116. The suture body 116 may also be scored or weakened at a point between the two opposing barbed portions 104, 108. The weakened point would provide a joint where the suture body 116 could be broken or cut to make facilitate removal of the barbed surgical suture 100. 」(訳:バーブを有する手術用縫合糸20, 30, 40, 50, 60, 67, 70, 80, 90, 100は、第一端部104において当該縫合糸がある一方向に向けて組織内を動くことができるよう向きが揃えられたバーブ102を有し、第二端部108において当該縫合糸がある一方向とは反対方向に組織内を動くことができるよう向きが揃えられたバーブ106を有する、両頭の縫合糸100として構成されてもよい。図4には、本発明に関する、バーブを有する両頭の手術用縫合糸100が示されている。バーブを有する両頭の手術用縫合糸100のバーブ102、106は、図1D、1E、1F、1G、7B及び8Bに示されるような形状を含む、たくさんの異なる形状で作製されてよい。バーブを有する両頭の手術用縫合糸100は、湾曲した又は直線状の縫合針110、111を当該縫合糸の一方又は両方の端部に取り付けて作製されてよい。縫合針110、111は取り外せないように又は取り外せるように、バーブを有する手術用縫合糸100に取り付けられてよい、或いは、代替として、縫合針110、111は手術用縫合糸100と一体的に形成されてよい。任意に、バーブを有する両頭の手術用縫合糸100は、バーブを有しないリードを縫合糸のそれぞれの端部及び/又はバーブを有しない接続手段112を二つのバーブを有する部分104、108の間に有してもよい。任意に、バーブを有する両頭の手術用縫合糸100は、二つのバーブを有する部分104、108の間の縫合糸100の中心を示すためにマーク114又は他の特徴を形成されてよい。縫合糸本体106は、二つの反対側にあるバーブを有する部分104、108の間のある箇所で切れ目を入れられているか又は脆弱化されていてよい。脆弱化された箇所は、バーブを有する手術用縫合糸100を円滑に除去するために、縫合糸本体116が破壊又は切断され得る接合点を提供するであろう。)
「[0049]FIG. 5 shows the double-ended barbed surgical suture 100 of FIG. 4 being used to close a surgical incision 200. The incised edge of the tissue 202 on a first side of the incision 200 is pierced with a first surgical needle 110 on the first end of the double-ended barbed surgical suture 100 and the first barbed portion 104 is drawn through the tissue 202 until the center of the suture 100 is approximately at the incised edge of the tissue 202. The barbs 102 on the first barbed portion 104 flex inward as they pass through the tissue 202, allowing the first barbed portion 104 of the barbed surgical suture 100 to move easily through the tissue 202 in a forward direction. Then, the incised edge of the tissue 303 on the second side of the incision 200 is pierced with the second surgical needle 111 on the second end of the double-ended barbed surgical suture 100 and the second barbed portion 108 is drawn through the tissue 202 while placing a small amount of pressure with a gloved finger or instrument on the tissue 202 surface on the second side of the incision 200 where the suture 100 exits. The barbs 106 on the second barbed portion 108 flex inward as they pass through the tissue 202, allowing the second barbed portion 108 of the barbed surgical suture 100 to move easily through the tissue 202 in a forward direction, while the barbs 102 on the first barbed portion 104 expand or flex inward or outward, depending on the barb configuration, to grip the tissue 202 and to resist movement in the reverse direction. Once good apposition is achieved, both ends of the double-ended barbed surgical suture 100 can be cut off at the tissue 202 surface. FIG. 6 shows the completed closure of the surgical incision 200 using the double-ended barbed surgical suture 100 of FIG. 4. Additional barbed surgical sutures 100 can be placed in this way along the incision 200 until a good closure is achieved. If desired, the barbed surgical sutures 100 can be placed at different depths to achieve proper apposition of multiple layers of tissue 202.」(訳:図5は、図4のバーブを有する両頭の手術用縫合糸100が、外科切開200を閉じるために利用されるところを示したものである。切開200の第一側にある組織202の切開端部は、バーブを有する両頭の手術用縫合糸の第一の端部にある第一の手術針110を挿通され、そして、縫合糸100の中心がおおよそ組織202の切開端部に至るまで第一のバーブを有する部分104が組織202内に挿引される。バーブを有する第一の部分104のバーブ102は、組織202内を通過するとき内側に曲がるので、バーブを有する縫合糸のバーブを有する第一の部分104は、組織202の中を通って容易に前方向に進むことができる。それから、切開200の第二側にある組織303(当審注:202の誤記と思われる。)の切開端部は、バーブを有する両頭の手術用縫合糸の第二の端部にある第二の手術針111を挿通され、縫合糸100の出口となる切開200の第二側の組織202の表面を、手袋をはめた指又は器具で少しばかり圧力で押さえながら、第二のバーブを有する部分108が組織202内に挿引される。バーブを有する第二の部分108のバーブ106は、組織202内を通過するとき内側に曲がるので、組織202の中を通って容易に前方に進むことができるが、一方、バーブを有する第一の部分104のバーブ102は、バーブの形にもよるが、組織202を把捉して逆方向への移動に提供すべく、拡張し、内側に曲がり又は外側に曲がる。適切に並置されると、バーブを有する両頭の手術用縫合糸100の両端部は組織202の表面で切り落とされる。図6は、図4のバーブを有する両頭の手術用縫合糸100を使用した、外科切開200の完成した閉塞を示している。良好な閉塞を達成するまで、このように切開200に沿ってバーブを有する縫合糸100を追加的に配置することができる。)
「[0055]Materials suitable for manufacturing the barbed surgical suture 20, 30, 40, 50, 60, 67, 70, 80, 90, 100 include, but are not limited to: polyethylene, polypropylene, polyimide, polyamide (e.g. Nylon 6 and Nylon 66), polyester and polycarbonate. Alternatively, bioabsorbable materials, such as polylactic acid, polyglycolic acid, polyglactin, polyepsilon-caprolactone, polydioxanone, polyorthoester,polyethylene oxide, and/or their copolymers can be used for injection molding the barbed surgical suture. This manufacturing method can also be used for producing barbed surgical sutures from thin metal sheets.」(訳:バーブを有する手術用縫合糸20, 30, 40, 50, 60, 67, 70, 80, 90, 100の製造に適切な材料には、これらに限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド(例えば、ナイロン6及びナイロン66)、ポリエステル及びポリカーボネートが含まれる。代替的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリグラクチン、ポリ-ε-カプロタクトン、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリエチレン・オキサイド、及び/又はそのコポリマーのような生体吸収性材料が、バーブを有する手術用縫合糸を射出成形するために利用され得る。この製造方法として、金属薄シートからバーブを有する手術用縫合糸を製造する方法も利用することができる。)

(2)引用文献1には、次のとおり図1、4?6の記載がある。
「図1



「図4


(参考図:図4の縫合糸本体と三角形状のバーブの構造を理解するために、当審で作成したものである。)
















「図5



「図6



ア 上記(1)の[0038]及び[0048]の記載とともに、図1d及び図4を参照すると、バーブの形状は三角形状であり、縫合糸本体の方向に沿って頂部と底辺部を有している点が図示されている。

イ また、同[0048]の記載とともに、図4を参照すると、両頭の縫合糸100は長尺状の縫合糸本体で形成され、縫合糸本体に第1の縫合針110及び第2の縫合針111が取り付けられるとともに、バーブ102、106が位置づけられた点が図示されている。

ウ さらに、同[0048]の記載とともに、図4を参照すると、バーブは少なくとも2つの互いに離間した群を形成しており、2つの群のうちの第1の群のバーブの狭い端は、第1の群に対して最も近位にある縫合針110の方を向き、2つの群のうちの第2の群のバーブの先縁側部分は、第2の群に対して最も近位にある第二の縫合針111の方を向いている点が示されている。

(3)同[0048]の記載のとおり、両頭の手術用縫合糸100は、直線状の縫合針(第1の縫合針110、第2の縫合針111)を当該縫合糸の両方の端部、つまり、第一の端部及び第二の端部にそれぞれ取り付けたものであることを踏まえると、これと上記(2)イの図示事項を併せてみれば、第1の群のバーブの頂部は、第1の群に対して最も近位にある第1の直線状の縫合針の方を向き、第2の群のバーブの頂部は、第2の群に対して最も近位にある第2の直線状の縫合針の方を向いているということができる。

(4)してみると、上記(1)の記載事項、同(2)の図示事項及び同(3)の認定事項から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「第一の端部及び第二の端部を有する生体吸収性材料から作られている長尺状の縫合糸本体と、
生体吸収性材料から作られている複数のバーブであって、前記長尺状の縫合糸本体に位置づけられる複数のバーブと、
を備えた両頭の縫合糸であって、
前記両頭の縫合糸は、一対の直線状の縫合針が取付けられており、
前記バーブは、略三角形状であり、頂部及び底辺部を有しており、
前記バーブは、少なくとも2つの互いに離間した群を形成し、前記2つの群のうちの第1の群の前記バーブの前記頂部は、前記第1の群に対して最も近位にある第1の直線状の縫合針の方向を向き、前記2つの群のうちの第2の群の前記バーブの前記頂部は、前記第2の群に対して最も近位にある第2の直線状の縫合針の方向を向いている両頭の縫合糸。」

2 引用文献2
(1)引用文献2には、次の事項が記載されている。
「[0026]FIG. 1 sets forth a side view of a suture assembly constructed in accordance with the present invention and generally referenced by numeral 10. By way of overview, suture assembly 10 comprises four basic elements which are a generally straight body 11, a flexible elongated body 20, a plurality of tissue-engaging elements 30 through 47 and a curved body 14. More specifically, suture assembly 10 includes an elongated straight body 11 formed of a plastic material such as polypropylene or the like and includes a generally pointed end 12 and a connector end 13. Suture assembly 10 further includes a flexible elongated filament body 20 having an end 22 secured to connector 13 in the manner described below. Flexible body 20 further supports a plurality of tissue-engaging elements 30 through 47 set forth below in greater detail in FIGS. 4 and 5. Suffice it to note here that tissue-engaging elements 30 through 47 are substantially identical in structure and are received upon flexible body 20. In addition, tissue-engaging elements 30 through 47 comprise generally conical structures which impart a directional character to the suture assembly in its engagement of tissue. As is better seen in FIG. 3, flexible body 20 further defines a plurality of tied knots 50 through 67 which are tied within flexible body 20 to provide limitation of the movement of tissue-engaging elements 30 through 47 upon flexible body 20. Flexible body 20 further defines an end 21 which is received within a connector 16 of curved body 14. Curved body 14 further defines a sharp pointed end 15. Connectors 13 and 16 secure ends 22 and 21 of flexible body 20 by use of a conventional crimping attachment.」(訳:図1は、本発明に関連して構成され、及び、全般的に番号10で参照される縫合糸アセンブリの側面図を表す。外観によれば、縫合糸アセンブリ10は、概して直線状の本体11、柔軟な長尺状の本体20、複数の組織係合要素30から47、及び、湾曲した本体14である四つの基本要素からなる。さらに具体的には、縫合糸アセンブリ10は、ポリプロピレン又はこれに類するプラスチック材料で形成された長尺状で直線状の本体11を含むとともに、概して尖った端部12と接続端部13を含む。縫合糸アセンブリ10はさらに、以下に記載したとおり、コネクタ13に固定された端部22を有する柔軟で長尺状のフィラメント本体20を含む。柔軟な本体20は、さらに、図4及び5により詳細に表された複数の組織係合要素30から47を支持する。ここでは、組織係合要素30から47は、実質的に縫合糸において同一性を有しており、柔軟な本体20の上に受け入れられていると記しておくだけで十分である。さらに、組織係合要素30から47は、概して円錐状の構造からなり、組織に係合するに当たって縫合糸アセンブリに方向性の特徴を付与する。図3によりよく示されているように、柔軟な本体20は、さらに、複数の結び目50から67を定めており、それらは柔軟な本体20内で結ばれたものであり、柔軟な本体20上での組織係合要素30から47の移動を制限している。柔軟な本体20は、さらに、湾曲した本体14のコネクタ16内に受け入れられる端部21を定める。湾曲した本体14は、さらに、鋭く尖った先端15を定める。コネクタ13及び16は、従来の圧着取付けを利用することで、柔軟な本体20の端部22及び21に固定される。)
「[0029]FIG. 2 sets forth a side view of the suture portion of suture assembly 10. As described above, the present invention suture includes an elongated flexible preferably monofilament body 20 formed of a material such as polypropylene or the like. Flexible body 20 defines an end 21 and an end 22. A plurality of tissue-engaging elements 30 through 47 are threaded upon flexible body 20. As is better seen below in FIG. 3, flexible body 10 is tied to define a plurality of knots (knots 50 through 67 shown in FIG. 1). Knots 50 through 67 are positioned upon flexible body 20 at generally evenly spaced intervals and are utilized in limiting the movement of tissue-engaging elements 30 through 47 upon flexible body 20. Thus, it will be apparent that tissue engaging elements 30 through 67 are serially placed upon flexible body 20 and that a corresponding plurality of knots 50 through 67 are tied in front of each tissue-engaging element as it is threaded upon end 22 of flexible body 20. For example, assembly of tissue-engaging elements 30 through 47 upon flexible body 20 is initiated by threaded tissue-engaging element 47 passed end 22 to the desired position on body 20. Thereafter, knot 67 is tied in flexible body 20. Next, tissue engaging element 67 is threaded upon end 22 of flexible body 20 and positioned in proximity to tissue engaging element 47. Thereafter, flexible body 22 is tied to form knot 66. This procedure continues as each tissue-engaging element is threaded upon end 22 of flexible body 20 and thereafter moved into proximity of the preceding tissue-engaging element after which the corresponding positioning knot is tied in flexible body 20. Once all of the desired tissue-engaging elements have been assembled to flexible body 20 and the corresponding travel limiting knots have been tied within flexible body 20, flexible body 20 is ready for assembly to straight body portion 11 and curved body portion 14 (seen in FIG. 1) to complete the suture.」(訳:図2は、縫合糸アセンブリ10の縫合糸部分の側面図を表す。上述したとおり、本発明の縫合糸は、長尺状で柔軟な、好ましくはポリプロピレンやこれに類する材料で形成されたモノフィラメントの本体20を含む。柔軟な本体20は、端部21及び端部22を定める。複数の組織係合要素30から47は、柔軟な本体20の上に糸通しされている。図3で以下によりよく見られるように、柔軟な本体10は、複数の結び目(図1に示された結び目50から67)を定めるよう結ばれている。結び目50から67は、柔軟な本体20の上に概して等間隔となるように位置づけられており、柔軟な本体20の上での組織係合要素30から47の動きを制限するために用いられている。このように、組織係合要素30から67は柔軟な本体20の上に連続的に配置されとともに、この組織係合要素が柔軟な本体20の端部22に糸通しされるたびに、これに対応する複数の結び目50から67がそれぞれの組織係合要素の前で結ばれることは、明らかであろう。例えば、柔軟な本体20上にある組織係合要素30から47の組立ては、組織係合要素47が端部22を通って本体20上の所望の位置に糸通しされることによって開始される。その後、結び目67が柔軟な本体20に結ばれる。次に、組織係合要素67が柔軟な本体20の端部22を通って糸通しされ、組織係合要素47に近接して位置付けられる。その後、柔軟な本体22は、結び目66を形成するよう結ばれる。この工程は、それぞれの組織係合要素が柔軟な本体20に糸通しされて、それから、先行する組織係合要素に近接した位置に移動させられ、その後、それに対応する位置づけ用の結び目が柔軟な本体20に結ばれるという具合に、継続する。一旦、全ての所望の組織係合要素が柔軟な本体20に組み付けられ、対応する移動制限用の結び目が柔軟な本体20に結ばれたら、縫合糸を完成させるために、柔軟な本体20は直線状の本体部分11及び湾曲部14(図1に見られる)に組み付けられる準備ができたことになる。)
「[0030]FIG. 3 sets forth an enlarged view of a portion of flexible body 20 having section views of tissue-engaging elements 44 and 45 secured thereon in the manner described above. Thus, in the example of FIG. 3, flexible body 20 is shown supporting tissue engaging elements 44 and 45. Correspondingly, flexible body 20 has been tied to form a pair of knots 65 and 64 each of which limit the positions of corresponding of tissue-engaging elements 44 and 45. In this manner, tissue-engaging elements 44 and 45 are able to transfer drawing force from flexible body 20 to surrounding tissue which is engaged by elements 44 and 45. Once again, it will be noted that this engagement is directional in that elements 44 and 45 provide substantial greater engagement of tissue in the direction indicated by arrow 48.」(訳:図3は、上述したように、柔軟な本体20に固定された組織係合要素44及び45の断面図とともに、柔軟な本体20の一部の拡大図を表す。このように、図3の例においては、柔軟な本体20は組織係合要素44及び45を支持している。これに相応するように、柔軟な本体20は、一対の結び目65及び64を形成するよう結ばれ、この結び目のそれぞれは組織係合要素44及び45に応じた位置を制限する。このように、組織係合要素44及び45は、柔軟な本体20から要素44及び45によって係合される周囲の組織に対して引張力を伝達することができる。もう一度、この係合が、要素44及び45が矢印48で示される方向に実質的に組織のより大きな係合を提供する点で方向性を有することは、特筆すべきことである。)
「[0031]FIG. 4 sets forth a section view of tissue-engaging element 30. It will be apparent to those skilled in the art that tissue-engaging elements 30 through 47 (seen in FIG. 1) are substantially identical in construction. Thus, FIG. 4 and the descriptions which are provided in conjunction there with will be understood to apply equally well to tissue-engaging elements 31 through 47. More specifically, tissue-engaging element 30 is generally frusto-conical in shape and thus defines a narrow end 75 and a flared end 77. End 75 defines a bore 76 which is sized to fit snugly upon flexible body 20 (seen in FIG. 2). Flared end 77 provides increased volume for interior portion 78 thereof. The conical shape of tissue-engaging element 30 together with the open character of flared end 77 and interior 78 cooperate to provide a substantial tissue-engaging property for element 30. As mentioned above, the tissue-engaging elements of the present invention may be fabricated using injection molding or cold-heading techniques as desired. While a number of suitable materials may be utilized in fabricating the tissue engaging elements of the present invention suture assembly, materials such as polypropylene or the like have been found to be suitable and advantageous. Alternatively, absorbable materials may also be used.」(訳:図4は、組織係合要素30の断面図を表す。技術に熟練した者にとっては、組織係合要素30から47(図1に見られる)は製造上実質的に同じであることは明らかである。このように、図4及びそれと連動して提供される明細書の記載によって、組織係合要素31から47について同じように適用されると理解されるであろう。さらに具体的には、組織係合要素30は、概して円錐台状の形をしており、狭い端部75と朝顔型に広がった端部77を定める。端部75は、柔軟な本体20(図2に見られる)の上にぴったりと当てはまる大きさである空孔76を定める。朝顔型に広がった端部77は、内側部分78に増加する体積を提供する。朝顔型に広がった端部77及び内部78の開いた特徴を伴う組織係合要素30の円錐形状は、要素30が実質的に組織に係合する性質を提供するよう協働する。上述したとおり、本発明に係る組織係合要素は、必要に応じて、射出成形又は冷間圧造を利用して作製されてもよい。本発明の縫合糸アセンブリに係る組織係合要素の作製において、いくつもの適切な材料が利用されてよい一方で、ポリプロピレンやこれに類する材料が適切であり、有利であることが分かっている。代替的には、吸収性材料も用いられてよい。)

(2)引用文献2には、次のとおり、図1?4の記載がある。
「図1


「図2


「図3


「図4



ア 上記(1)の[0031]の「組織係合要素30は、概して円錐台状の形をしており、狭い端部と朝顔型に広がった端部77を定める。端部75は、柔軟な本体20(図2に見られる)の上にぴったりと当てはまる大きさである空孔76を定める。朝顔型に広がった端部77は、内側部分78に増加する体積を提供する。朝顔型に広がった端部77及び内部78の開いた特徴を伴う組織係合要素30の円錐形状は、要素30が実質的に組織に係合する性質を提供するよう協働する。」という記載とともに、図4を参照すると、組織係合要素30は、略切頭円錐条である点、及び、狭い端部75及び広い端部77を形成している点が、それぞれ看取できる。

イ 上記(1)の[0029]の「柔軟な本体10は、複数の結び目(図1に示された結び目50から67)を定めるよう結ばれている。結び目50から67は、柔軟な本体20の上に概して等間隔となるように位置づけられており、柔軟な本体20の上での組織係合要素30から47の動きを制限するために用いられている。」という記載、同[0031]の「端部75は、柔軟な本体20(図2に見られる)の上にぴったりと当てはまる大きさである空孔76を定める。」という記載とともに、図2、3及び4を参照すると、柔軟な本体20に結ばれた結び目は空孔76よりも大きい点、及び、結び目50から67は柔軟な本体20に直列配置で位置づけられている点が、それぞれ看取される。

(3)上記(1)の[0029]の「複数の組織係合要素30から47は、柔軟な本体20の上に糸通しされている。」及び「結び目50から67は、柔軟な本体20の上に概して等間隔となるように位置づけられており、柔軟な本体20の上での組織係合要素30から47の動きを制限するために用いられている。」という記載から、複数の組織係合要素30から47は、柔軟な本体20に移動可能に受け入れられるものであることは明らかである。

(4)上記(1)の記載事項、同(2)の図示事項及び同(3)の認定事項からみて、引用文献2には次のような技術が記載(以下「引用文献2に記載の技術」という。)されているといえる。
「柔軟で長尺状のフィラメント本体と、
吸収性材料で作製された複数の組織係合要素であって、それぞれが空孔を有し、前記柔軟で長尺状のフィラメント本体に移動可能に受け入れられる複数の組織係合要素と、
前記柔軟で長尺状のフィラメント本体に結ばれた複数の結び目であって、それぞれが前記空孔よりも大きく、前記組織係合要素を前記柔軟で長尺状のフィラメント本体状に直列配置で位置づけられており、前記結び目は、前記柔軟で長尺状のフィラメント本体に作られた結び目である、複数の結び目と、
を備え、組織係合要素は略切頭円錐状である縫合糸。」


第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比するに、引用発明の「第一の端部」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「第1の端」に相当し、以下同様に、「第二の端部」は「第2の端」に、「生体吸収性材料」は「吸収性材料」に、「長尺状の縫合糸本体」は「細長い柔軟体」に、「両頭の縫合糸」は「縫合糸」に、「直線状の縫合針」は「細長い直線ニードル」に、「頂部」は「狭端」に、「底辺部」は「広端」に、それぞれ相当する。
また、本願発明の「組織係合要素」及び「結び目」と引用発明の「バーブ」とは、いずれも縫合糸を組織に係合するためのものであることから、組織係合部材である限りにおいて共通する。

してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
(1)一致点
「第1の端および第2の端を有する吸収性材料から作られている細長い柔軟体と、
組織係合部材と、
を備えている縫合糸であって、
前記縫合糸は、一対の細長い直線ニードルを備えており、
前記組織係合部材は、略切頭円錐状であり、各々が狭端および広端を有しており、
前記組織係合部材は、少なくとも2つの互いに離間した群を形成し、前記2つの群のうちの第1の群の前記組織係合部材の前記狭端は、前記第1の群に対して最も近位にある第1の細長い直線ニードルの方向を向き、前記2つの群のうちの第2の群の前記組織係合部材の前記狭端は、前記第2の群に対して最も近位にある第2のニードルの方向を向いている縫合糸。」

(2)相違点
組織係合部材について、本願発明では、複数の組織係合要素(211?220,231?240)であって、それぞれが貫通孔を画定し、前記細長い柔軟体上に移動可能に受け入れられる複数の組織係合要素(211?220,231?240)と、 前記細長い柔軟体に作られた複数の位置決め要素(221?230,241?250)であって、それぞれが前記孔よりも大きく、前記組織係合要素を前記細長い柔軟体上に直列配置で保持しており、前記位置決め要素は、前記細長い柔軟体に作られた結び目である、複数の位置決め要素(221?230,241?250)とからなり、組織係合要素は、略切頭円錐状であるのに対して、引用発明では、複数のバーブであって、前記長尺状の縫合糸本体に位置づけられる複数のバーブからなり、三角形状である点。

2 判断
相違点について検討する。
引用文献2に記載の技術は、上記第4の2(4)のとおり、次のとおりのものである。
「柔軟で長尺状のフィラメント本体と、
吸収性材料で作製された複数の組織係合要素であって、それぞれが空孔を有し、前記柔軟で長尺状のフィラメント本体に移動可能に受け入れられる複数の組織係合要素と、
前記柔軟で長尺状のフィラメント本体に結ばれた複数の結び目であって、それぞれが前記空孔よりも大きく、前記組織係合要素を前記柔軟で長尺状のフィラメント本体状に直列配置で位置づけられており、前記結び目は、前記柔軟で長尺状のフィラメント本体に作られた結び目である、複数の結び目と、
を備え、組織係合要素は略切頭円錐状である縫合糸。」
ここで、引用発明のバーブと引用文献2に記載の技術は、いずれも縫合糸を生体組織に係合するための部材(組織係合部材)に関するものであって、縫合糸を使用する際に、組織係合部材は、縫合糸をある方向には進みやすくし、その反対方向には当該組織を保持するよう機能するものである点で共通する。
してみると、引用発明のバーブの替わりに、引用文献2に記載の技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、同一技術分野に属する技術における同等の機能を有するものを単に置換したに過ぎないので、当業者にとって何ら困難性はない。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記の周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものであるということはできない。

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
(1)請求人は、令和1年12月16日に提出した意見書において、次のとおり主張する。
「第2引用例の構成は、結び目を使用しておりますが、第1引用例では結び目を使用しない方がよいと明確に教示しています(例えば、第1引用例の[0002]、[0008]をご参照下さい)。
第1引用例の[0002]発明の分野
「本発明は、一般に外科用縫合糸に関する。より具体的には、組織を把持し、縫合糸に結び目を作る必要性を無くし、バーブを備えた外科用縫合糸に関する。」
第1引用例の[0008] 発明の概要
「前述の議論を踏まえると、本発明は、挿入される組織を把持するように構成されたバーブを備えた外科用縫合糸の形態をとる。 縫合糸は、細長い縫合糸本体の横方向の縁に沿って配置された多数のバーブを備えた概ね平坦で細長い縫合糸本体を有する。 バーブは、縫合糸に結び目を作る必要がなく、組織を固定し、切開または傷の閉鎖を達成するのに十分なサイズと適切な幾何学形状を有している。 この特徴により、バーブのある外科用縫合糸は、標準的な結び目のある縫合糸よりも優れた閉鎖を達成することができる。 必要に応じて、バーブのある外科用縫合糸を使用して、優れた美容結果を達成することもできる。」
すなわち、第1引用例が結び目を使用しないよう教示していますから、第1引用例の構成によって第2引用例の構成を利用することは阻害され、当業者であれば、第2引用例の構成を組み合わせることは選択しないだろうと思料致します。」

(2)しかしながら、引用文献1(請求人は「第1引用例」と表記。)に記載された従来技術としての「結び目」と、本願発明の「結び目」及び引用文献2に記載の技術における「結び目」とは、その技術的意義が異なるものである。
引用文献1には、従来技術(発明の技術的背景)を示す文献として、3つの文献、つまり、[0005]には、米国特許第3123077号明細書及び米国特許第2988028号明細書、[0006]には、米国特許第5131855号明細書(以下「先行技術文献3」という。)が提示されている。
一番目と二番目の文献には「結び目」に関する記載はなく、三番目の先行技術文献3には「結び目」に関し、6欄35?37行に、次のとおりの記載がある。
「In FIG. 6 the suture ends 10b are tied in a knot, as thewound 22 is held closed, and the tying and drawing of the knot tightly canactually help draw the wound closed.」(訳:図6において、縫合糸の端部10bは、傷22が閉塞されるように結び目で結ばれ、そして、結び目の結びと引張りをしっかりと行うことによって実際に傷を閉塞する助けとなり得る。)
また、先行技術文献3の図6には、以下の記載がある。
「図6


上記の記載から明らかなように、引用文献1に記載された「結び目」とは、傷を閉塞するために縫合糸の端部同士を結んだ結び目のことを指すものであり、組織係合部材を縫合糸に取り付けるために結んだ結び目のことを指すものではない。
してみると、引用文献1には、組織係合部材を縫合糸に取り付けるために結び目を使用しないよう教示している記載はなく、引用発明に引用文献2に記載の技術を組み合わせることを阻害する事情があるとはいえない。
よって、請求人の主張は採用することができない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-03-24 
結審通知日 2020-03-27 
審決日 2020-04-07 
出願番号 特願2017-4808(P2017-4808)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 沼田 規好  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 寺川 ゆりか
芦原 康裕
発明の名称 創傷縫合、組織近置、組織支持、組織懸下、および/または組織固定用の縫合糸  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 森本 聡二  
代理人 中村 綾子  

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