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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1365574
審判番号 不服2019-16989  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-17 
確定日 2020-09-08 
事件の表示 特願2015-179453号「車両用駐車区画認識装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 52471号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月11日の出願であって、平成30年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年3月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成31年4月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和1年9月17日付けで平成31年4月26日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和1年12月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 令和1年9月17日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.令和1年9月17日付けの補正の却下の決定の概要は次のとおりである。
平成31年4月26日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、
本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1、5に基いて、
本願請求項3-4に係る発明は、以下の引用文献1、2、5に基いて、
本願請求項5-6に係る発明は、以下の引用文献1-3、5に基いて、
本願請求項7に係る発明は、以下の引用文献1-5に基いて、
その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成31年4月26日付けの補正は却下すべきものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2015-74254号公報
2.特開2015-64797号公報
3.特開2010-183234号公報
4.特開2008-285083号公報
5.岩佐 和真 Kazumasa Iwasa,駐車車両検出のためのテンプレート画像の自動作成 Automatic Generation of Template Images for Detecting
Vehicles in Parking Lots,電気学会論文誌C Vol.127,No.3 IEEJ,日本,(社)電気学会 The Institute of Electrical Engineers of Japan,2007年3月1日,第127巻,第338-344ページ

2.原査定(令和1年9月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-2に係る発明は、上記引用文献1、5に基いて、
本願請求項3-4に係る発明は、上記引用文献1-2、5に基いて、
本願請求項5-6に係る発明は、上記引用文献1-3、5に基いて、
本願請求項7に係る発明は、上記引用文献1-5に基いて、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和1年12月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
車両に備えられて、前記車両の周囲の画像を撮像する少なくとも1つの撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像の中から、駐車区画を検出する駐車区画検出部と、
前記駐車区画の検出結果に基づいて、前記車両を駐車させる目標駐車区画を設定する目標駐車区画設定部と、
前記駐車区画の検出結果に基づいて、検出された複数の端点位置である駐車区画線位置によって定まる基準直線を設定し、当該基準直線に基づいて、前記画像の中における前記目標駐車区画の位置を補正する駐車区画補正部と、を有することを特徴とする車両用駐車区画認識装置。
【請求項2】
前記駐車区画補正部は、前記画像の中において、前記目標駐車区画の端点位置と前記目標駐車区画の方位とを補正することを特徴とする請求項1に記載の車両用駐車区画認識装置。
【請求項3】
前記駐車区画補正部は、前記目標駐車区画に隣接する駐車区画のうち、前記車両に近接した側の駐車区画の検出結果に基づいて、前記目標駐車区画の位置を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用駐車区画認識装置。
【請求項4】
前記駐車区画補正部は、設定された前記目標駐車区画に隣接する駐車区画を含む複数の駐車区画をそれぞれ構成する各駐車区画線の検出結果に基づいて、前記目標駐車区画の位置を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用駐車区画認識装置。
【請求項5】
前記車両に備えられて、前記車両の周囲において路面から高さのある物体を検出する物体検出部を有し、前記物体によって前記目標駐車区画が隠蔽されているときには、前記駐車区画補正部において前記目標駐車区画の位置の補正を行わないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用駐車区画認識装置。
【請求項6】
車両の挙動を検出する車両挙動検出部と、
前記撮像部で異なる時刻に撮像された各画像からそれぞれ検出された駐車区画の中から、前記車両挙動検出部が検出した前記車両の挙動に基づいて同一駐車区画を特定して、異なる複数の時刻に検出された各駐車区画の空間配置を1枚の空間マップに統合する空間マップ生成部と、を有して、前記空間マップ生成部によって生成された空間マップの中に目標駐車区画を設定して、設定された目標駐車区画の位置を必要に応じて補正することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用駐車区画認識装置。
【請求項7】
設定された前記目標駐車区画に対して、前記車両の現在位置から前記目標駐車区画の近傍に至る初期経路を生成する初期経路生成部を有し、前記目標駐車区画が位置の補正がなされた目標駐車区画であるときには、前記車両が前記初期経路に沿って移動した後で、移動後の位置において再度撮像された前記車両周囲の画像の中から前記駐車区画検出部が前記目標駐車区画を再検出して、再検出された前記目標駐車区画の位置と方位に基づいて前記目標駐車区画に駐車させる際の駐車経路を算出することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用駐車区画認識装置。」

第4 引用文献の記載事項、引用発明等
1.引用文献1について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様である。)。
(1a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駐車する目標駐車位置を規定する駐車枠を自動的に設定する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車庫入れ駐車を行う運転者の駐車操作を支援する駐車支援装置が利用されてきた。この種の技術として下記に出展を示す特許文献1に記載のものがある。」

(1b)「【0015】
図1には、本実施形態に係る駐車支援装置100の構成を模式的に示したブロック図が示される。図1に示されるように駐車支援装置100は、撮像画像取得部11、地物検出部12、端部特定部13、目標駐車区画設定部14、表示画像生成部15、表示部16の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材として、車両1を駐車する目標駐車区画PPを規定する駐車枠Wを自動的に設定する種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。本実施形態では、駐車支援装置100は車両1に備えられる。
【0016】
撮像画像取得部11は、車両1の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得する。車両1の周囲とは、車両1の前方、後方、左側方、及び右側方である。撮像画像は、車両1に備えられるカメラ2A-2Dにより取得される。このため、車両1の前方の撮像画像を取得するフロントカメラ2Aは、図2に示されるように、例えば車両1の前端部の幅方向中央部に設けられ、車両1の後方の撮像画像を取得するカメラ2Bは、例えば車両1の後端部の幅方向中央部に設けられる。また、車両1の左側方の撮像画像を取得するカメラ2C及び右側方の撮像画像を取得するカメラ2Dは、夫々例えば車両1の左右のドアミラー3A、3Bに設けられる。なお、以下では特に夫々のカメラ2A-2Dを区別をする必要がない場合には、カメラ2として説明する。撮像画像取得部11は、このようなカメラ2で撮影された車両1の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得する。撮像画像取得部11により取得された撮像画像は、後述する地物検出部12及び表示画像生成部15に伝達される。
【0017】
地物検出部12は、車両1の周囲の少なくとも一部に予め設定された所定の検出領域KR内において車庫入れ駐車を行う駐車区画Rを規定する地物Cの検出を行う。本実施形態では、車両1の周囲の少なくとも一部とは、車両1の側方である車両の1の左側及び右側である。本実施形態では、説明を容易にするために車両1の側方が、車両1の進行方向に向かって左側であるとして説明する。検出領域KRは、図2に示されるようなカメラ2Cの撮影範囲4に含まれる。本実施形態では、検出領域KRは車両1の左側方に車両1の車長方向に沿って設定される。車庫入れ駐車を行う駐車区画Rとは、車両1が車庫入れ駐車が可能なスペースを有する区画である。地物Cはこのような駐車区画Rを規定する白線、縁石、生垣等が相当する。このため、駐車区画Rを規定する地物Cとは、図3に示されるような車両1の幅1Aよりも少なくとも広い間隔を有する一対の地物Cが相当する。地物検出部12は、撮像画像取得部11から伝達された撮像画像に対して画像認識を行うことより、駐車区画Rを規定するこのような地物Cの検出を行う。車両1の走行に応じて検出領域KRも移動するので、地物Cの検出は車両1の走行に応じて順次行われる。地物検出部12の検出結果は、後述する端部特定部13に伝達される。」

(1c)「【0019】
目標駐車区画設定部14は、端部特定部13により特定された入口側の端部C1に基づいて、車両1を駐車する目標駐車区画PPを規定する長方形の駐車枠Wが有する角部W1を設定し、角部W1から駐車区画Rの奥行方向に向けて駐車枠Wを設定する。端部特定部13により特定された入口側の端部C1は、端部特定部13から検出結果として伝達される。車両1を駐車する目標駐車区画PPとは、地物Cにより規定される駐車区画Rのうちの1つであり、車両1を駐車することになる駐車区画Rである。このような目標駐車区画PPが設定されると車両1に備えられるモニタとしての表示部16に運転者が当該目標駐車区画PPが設定されたこと及びその位置を認識し易いように駐車枠Wを付して明示される。」

(1d)「【0027】
このように車両1の走行に合わせて設定され直される駐車枠Wの例について、図5を用いて説明する。まず図5(a)に示されるように、車両1の側方に設定された検出領域KRにおいて一対の地物Cの夫々の端部C1が車幅方向1Mにおいて車両1から同距離であればいずれか一方の端部C1を基準に駐車枠Wが設定される。
【0028】
一方、車両1が図5(b)に示される位置に移動すると、検出領域KRも車両1と共に移動する。その検出領域KR内において、車幅方向1Mにおける車両1からの距離が夫々異なる端部C1を有する2つの地物Cが検出されると、目標駐車区画設定部14は当該2つの地物Cのうち、車幅方向1Mにおける車両1の側にある端部C1を有する地物C(図5(b)の例にあっては、検出領域KRに存在する端部C1を有する2つの地物Cのうち、車両1の進行方向後ろ側にある地物C)の端部C1を基準に駐車枠Wが設定される。
【0029】
更に、車両1が図5(c)に示される位置に移動すると、検出領域KRも車両1と共に移動する。その検出領域KR内において、車幅方向1Mにおける車両1からの距離が夫々異なる端部C1を有する2つの地物Cが検出されると、目標駐車区画設定部14は当該2つの地物Cのうち、車幅方向1Mにおける車両1の側にある端部C1を有する地物C(図5(c)の例にあっては、検出領域KRに存在する端部C1を有する2つの地物Cのうち、車両1の進行方向前側にある地物C)の端部C1を基準に駐車枠Wが設定される。このようにして駐車支援装置100は、目標駐車区画PPに係る駐車枠Wを設定する。」

(1e)
図5は、以下のとおりである。


(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「駐車支援装置100は車両1に備えられ、駐車支援装置100は、撮像画像取得部11、地物検出部12、端部特定部13、目標駐車区画設定部14、表示画像生成部15、表示部16の各機能部を備えて構成され、撮像画像取得部11は、車両1の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得するものであり、
撮像画像取得部11により取得された撮像画像は、地物検出部12及び表示画像生成部15に伝達され、地物検出部12の検出結果は、端部特定部13に伝達され、
目標駐車区画設定部14は、端部特定部13により特定された入口側の端部C1に基づいて、車両1を駐車する目標駐車区画PPを規定する長方形の駐車枠Wが有する角部W1を設定し、角部W1から駐車区画Rの奥行方向に向けて駐車枠Wを設定する、駐車支援装置100。」

2.引用文献5について
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(5a)第338ページ左欄第1行-右欄第1行
「 1. はじめに
全国の四輪車保有台数は,2005 年 9 月末時点で約 7571万台に達しており^((2)),年々増加している。しかし,駐車場の増加はそれに追いついていないので,慢性的に駐車困難な状況となっている。この結果,休日の繁華街やレジャー施設などでは,空いている駐車場所を探して移動する車が交通量を増やしたり,駐車待ちの車列が道路にあふれて交通渋滞を引き起こしたりしている。この問題を解決するには,駐車場の状況を検知して車を空き区画に効率的に誘導することが必要で,ITS^((1))の一分野として研究が行われている。駐車車両を認識する手法の 1 つに,固定カメラで撮影した画像を処理して区画ごとに駐車の有無を調べる方法がある。1台のカメラで多くの区画をカバーできるため,駐車区画ごとにセンサーを設置する方式に比べてコストを下げることができる。また,すでに設置してある監視カメラの画像を利用することもできる。このため,郊外の大規模な露天駐車場に適している。」

(5b)第339ページ左欄第10-14行
「 先行研究^((8))では,ペイントツールなどを使って,手作業でテンプレート画像を作成していたため,作成に 1 枚当たり 1?2 時間かかっていた。そこで本研究では,この手間を軽減するため,車両認識に使うカメラで撮影した画像からテンプレート画像を自動作成するシステムを作成する。」

(5c)第339ページ左欄第19-26行
「 2. 白線の遮蔽を利用した駐車判定^((8))
あらかじめ,カメラごとに,駐車領域と白線領域を記録 したテンプレート画像を作成しておく。図 1(a)は固定監視カメラの画像で,図 1(b)はそのテンプレート画像(ただし,小型車の駐車区画のみ定義)である。このテンプレート画像は先行研究で用いたもので,手作業で作成されている。図 1(c)はその一部を拡大したもので,四角形が駐車領域,細い線が白線領域である。」

(5d)第339ページ右欄第15-第340ページ左欄第3行
「 3. 空車画像の作成
駐車場に車両が 1 台も停まっていない状態の画像を空車画像と名づける。テンプレート画像はこの空車画像を 2 値化した画像から作成する。
休業時間のある駐車場では空車画像を撮影することができるが,高速道路のパーキングエリアのように 24 時間運用している場所では,空車画像が撮影できるとは限らない。そこで,時間をおいて撮影した複数枚の画像(ただし,駐車車両は少ない)を統計処理して,2 値化された空車画像を合成する。以下にその手順を述べる。
〈3・1〉 濃度値の伸張化 判別分析法は画像の 2 値化でよく使われる手法であるが,これだけでは白線を正しく検出できない。図 2 に昼間と夜間の画像を判別分析法で 2値化した例を示す。図 2(d)に示す夜間の 2 値化画像では,上部の白線が途切れたり消えたりしている。
サービスエリアなどの屋外駐車場では,多くの場合,監視カメラは照明塔に併設されている。このため,夜間はカメラから遠くなるほど照明が暗くなってしまう。そこで,ヒストグラムを伸張して白線を強調する。」

(5e)第342ページ左欄第1-20行
「 5. 白線の補完
白線の中には,ハフ変換で直線が検出できなかったために失われたものや,空車画像のかすれなどによって長さが足りないものがある。これらを次の方法で補完する。
〈5・1〉 白線の伸張 多くの駐車場では白線は駐車区画の三辺にしか描かれていない。しかし,開いた部分では,白線の端点(図 7(b)では平行で短い線分の端点)を結ぶ線が駐車区画の境界となっている。これを予測境界線と呼ぶ。以下の手順で,平行線グループの端点から予測境界線を求め,欠けた線分を補完する。
(1) 平行線グループに含まれる線分の全ての組み合わせに対して,以下の処理を行う
(ア) 2 本の線分の端点を結ぶ直線の方程式を求める。
(イ) 求めた直線と他の線分の端点の距離を求め,それが閾値以上の線分の本数を求める。
(2) 求めた線分数が最小の直線を予測境界線とする。
(3) 予測境界線と各線分の交点を求め,線分長を補正する。
図 8(a)に線分長を補完した画像を示す。図 7(b)と図 8(b)を比べると,点線の四角で囲まれた部分で白線が正しい長さまで伸張されている。」

(5f)第342ページ左欄第35-40行
「 6. テンプレート画像の作成
〈6・1〉 駐車領域の決定 1 つの駐車区画は長い白線,予測境界線,2 本の隣り合う短い白線で囲まれた領域になる。そこで,短い線分の端点と,短い線分と長い線分の交点の 4 つを頂点とする四辺形の内部を 1 つの駐車領域とする。」

(5g)図7及び図8は、以下のとおりである。
図7


図8


(2)引用文献5に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献5には、次の技術的事項(以下「引用文献5技術」という。)が記載されていると認められる。
「固定監視カメラにより、駐車場に車両が 1 台も停まっていない状態の空車画像を撮影し、当該空車画像を2 値化した画像からテンプレート画像を作成する駐車領域の決定装置であって、平行線グループの端点から、白線の端点を結ぶ駐車区画の境界となっている予測境界線を求め、欠けた線分を補完することで、白線が正しい長さまで伸張される、駐車領域の決定装置。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「撮像画像取得部11」は、「駐車支援装置100」に備えられるものであり、「駐車支援装置100は車両1に備えられ」るから、引用発明の「撮像画像取得部11」は「車両1に備えられ」ているといえる。

イ 引用発明の「車両1」は本願発明1の「車両」に相当する。

ウ 上記ア、イを踏まえると、引用発明の「撮像画像取得部11」は車両に備えられており、さらに、「車両1の周囲の情景を撮影した撮像画像を取得するものであ」るから、本願発明1の「車両に備えられて、前記車両の周囲の画像を撮像する少なくとも1つの撮像部」に相当する。

エ 引用発明の「目標駐車区画PP」は本願発明1の「駐車区画」に相当する。

オ 引用発明の「目標駐車区画設定部14」は、「車両1を駐車する目標駐車区画PPを規定する長方形の駐車枠W」「を設定する」ものであり、上記エのとおり「目標駐車区画PP」は「駐車区画」といえるから、引用発明の「目標駐車区画設定部14」は、「駐車区画を検出する駐車区画検出部」といえる。

カ 引用発明の「目標駐車区画設定部14」に係る「端部特定部13により特定された入口側の端部C1に基づいて」は、「端部特定部13」には「地物検出部12の検出結果」が伝達され、「地物検出部12」には「撮像画像取得部11により取得された撮像画像」が伝達されるから、「撮像画像取得部11により取得された撮像画像に基づいて」ということができる。これは上記ウも踏まえると、本願発明1の「撮像部で撮像された画像の中から」に相当するといえる。

キ 上記エ、オ、カを踏まえると、引用発明の「目標駐車区画設定部14」は、本願発明1の「撮像部で撮像された画像の中から、駐車区画を検出する駐車区画検出部」に相当するといえる。

ク 引用発明の「目標駐車区画PP」は、本願発明1の「目標駐車区画」に相当する。

ケ 引用発明の「目標駐車区画設定部14」は、「車両1を駐車する目標駐車区画PPを規定する長方形の駐車枠W」「を設定する」から、上記イ、クを踏まえると、本願発明1の「車両を駐車させる目標駐車区画を設定する目標駐車区画設定部」にも相当する。また、上記キのとおり、引用発明の「目標駐車区画設定部14」は、本願発明1の「撮像部で撮像された画像の中から、駐車区画を検出する駐駐車区画検出部」にも相当するから、「駐車区画の検出結果に基づいて」「目標駐車区画を設定する」ものといえる。

コ 引用発明の「駐車支援装置100」は、「目標駐車区画設定部14」を備え、車両の駐車区画を認識するものといえるから、本願発明1の「車両用駐車区画認識装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認める。

〔一致点〕
「車両に備えられて、前記車両の周囲の画像を撮像する少なくとも1つの撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像の中から、駐車区画を検出する駐車区画検出部と、
前記駐車区画の検出結果に基づいて、前記車両を駐車させる目標駐車区画を設定する目標駐車区画設定部と、
を有する車両用駐車区画認識装置。」

〔相違点〕
本願発明1は、「駐車区画の検出結果に基づいて、検出された複数の端点位置である駐車区画線位置によって定まる基準直線を設定し、当該基準直線に基いて、前記画像の中における前記目標駐車区画の位置を補正する駐車区画補正部」を有しているのに対し、引用発明は、そのような特定事項を有していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記第4の2.(2)に引用文献5技術として示したとおり、引用文献5には「固定監視カメラにより、駐車場に車両が 1 台も停まっていない状態の空車画像を撮影し、当該空車画像を2 値化した画像からテンプレート画像を作成する駐車領域の決定装置であって、平行線グループの端点から、白線の端点を結ぶ駐車区画の境界となっている予測境界線を求め、欠けた線分を補完することで、白線が正しい長さまで伸張される、駐車領域の決定装置。」が記載されている。
ここで、引用文献5技術の「平行線グループの端点から」は、第4の2.(1)(5g)図7記載のごとく、検出された平行線は複数であるから、相違点に係る本願発明1の「検出された複数の端点位置である」に相当し、以下同様に、「白線の端点を結ぶ駐車区画の境界となっている」は、「駐車区画線位置によって定まる」に相当し、「予測境界線を求め」ることは、「基準直線を設定」することに、それぞれ相当する。
また、引用文献5技術の「予測境界線を求め、欠けた線分を補完することで、白線が正しい長さまで伸張される」ことは、第4 2.(1)(5f)の記載のとおり「1 つの駐車区画は長い白線,予測境界線,2 本の隣り合う短い白線で囲まれた領域」であるから、予測境界線(基準直線)に基いて、駐車区画の位置を補正することといえる。
さらに、引用文献5技術の「駐車領域の決定装置」は、上記のとおり、駐車区画の位置を補正するものであるから、「駐車区画補正部」ということができる。
以上を総合すると、引用文献5技術と相違点に係る本願発明1の「駐車区画の検出結果に基づいて、検出された複数の端点位置である駐車区画線位置によって定まる基準直線を設定し、当該基準直線に基いて、前記画像の中における前記目標駐車区画の位置を補正する駐車区画補正部」とは、「検出された複数の端点位置である駐車区画線位置によって定まる基準直線を設定し、当該基準直線に基いて、駐車区画の位置を補正する駐車区画補正部」という点で共通するといえる。
しかしながら、引用発明は、上記第4 1.(1)(1a)の段落【0001】記載のとおり、「車両を駐車する目標駐車位置を規定する駐車枠を自動的に設定する駐車支援装置」に係る発明であるのに対し、引用文献5技術は、上記第4 2.(1)(5a)記載のとおり、「車両が駐車区画を横切る白線を隠すことを検出して、駐車を判定する手法に使用される、車両認識に使うカメラで撮影した画像からテンプレート画像を自動作成するシステム」に係る技術であって、技術分野を異にするものである。
また、両者の前提となる具体的な構成についても、引用発明は「車両1に備えられ」た「撮像画像取得部11」を用いて地物の検出を行うものであり、上記第4 1.(1)(1e)の図5に示されるとおり、2つの地物を検出するための「検出領域KR」も、車両1台分程度の領域にすぎないものである。
他方、引用文献5技術は、上記第4 2.(1)(5d)に「サービスエリアなどの屋外駐車場では,多くの場合,監視カメラは照明塔に併設されている。」と記載されているように、駐車場に備え付けられた「固定監視カメラ」により検出を行うものであって、その検出領域は「駐車場に車両が 1 台も停まっていない状態の空車画像を撮影」するものであるから、駐車場全体に及ぶものといえる。
そうすると、引用発明と引用文献5技術とは、技術分野及び前提となる具体的な構成を異にするものであるから、引用発明において、引用文献5技術を採用する動機付けはないといえる。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献5技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2-7にについて
本願発明2-7は、本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献5技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
上記第5で検討したとおり、引用発明と引用文献5技術とは、技術分野及び前提となる具体的な構成を異にするものであり、引用発明において、引用文献5技術を採用する動機付けはないから、本願発明1-7は、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-08-20 
出願番号 特願2015-179453(P2015-179453)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯島 尚郎野口 絢子  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 藤井 昇
佐々木 一浩
発明の名称 車両用駐車区画認識装置  
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所  

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