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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1365605
審判番号 不服2020-5231  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-17 
確定日 2020-09-23 
事件の表示 特願2017-505216「血管内超音波撮像装置、インターフェースアーキテクチャ、及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 4日国際公開、WO2016/016810、平成29年 9月 7日国内公表、特表2017-525449、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2015年(平成27年)7月29日(パリ条約による優先権主張 2014年8月1日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月26日に審査請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成31年4月23日付けで拒絶理由が通知され、令和元年7月24日に意見書が提出され、同年8月16日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで意見書が提出され、同年12月16日付けで拒絶査定されたところ、令和2年4月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の概要
原査定(令和元年12月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、6-15に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項2-5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2-3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2011-505205号公報
2.国際公開第2005/032374号
3.特表平2-502078号公報

3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成30年7月26日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1と本願発明11は以下のとおりである。(下線は補正箇所を表す。)
「【請求項1】
可撓性の細長い部材と、
前記可撓性の細長い部材の遠位部分に配設された超音波スキャナアセンブリとを備える超音波撮像デバイスであって、前記超音波スキャナアセンブリは、
半導体基板上に形成された、制御回路の複数のトランジスタと、
前記半導体基板上に形成され、前記制御回路に電気的に結合された複数の超音波トランスデューサと
を有する当該半導体基板を含み、
前記超音波スキャナアセンブリが丸められた形態であるときに、前記半導体基板が、実質的に円筒形状を有するように湾曲され、
前記超音波スキャナアセンブリが前記丸められた形態であるときに、前記複数のトランジスタ及び前記複数の超音波トランスデューサが円筒形構成で構成される、
超音波撮像デバイス。」

「【請求項11】
超音波撮像デバイスを製造する方法であって、
半導体基板を受け取るステップと、
トランジスタを前記半導体基板上に形成するステップと、
超音波トランスデューサを前記半導体基板上に形成するステップと、
前記トランジスタを有する前記半導体基板と、前記半導体基板上に形成された前記超音波トランスデューサとを、実質的に円筒形状を有するように丸めるステップとを含む、
方法。」

なお、本願発明2-10、本願発明12-15の概要は以下のとおりである。
本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明12-15は、本願発明11を減縮した発明である。

4 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
ア 「【0001】
本発明は、容量性マイクロマシン加工超音波変換器(CMUT)スキャナに関連し、より具体的には、CMUTによる超音波スキャナを備えるカテーテルに関する。」

イ 「【0020】
図1は、一部の実施形態のカテーテルの断面図を示す。カテーテル100は、CMUT変換器111、様々な電極112、可撓性の細長い本体120、ケーブル130、接続ワイヤ131、内腔140、可撓性遠位端150、および外被160を含むCMUT超音波スキャナ110を備える。カテーテル100は、通常、細長い本体120の近位端にハンドルも含む。当該ハンドルにより、外科関係者は、誘導補助を用いて、または用いずに、遠位端150を患者の体内の血管(例えば、心血管)に通すことができる。当該遠位端150は、細長い本体120の遠位端に連結することができ、また血管壁に影響することなく細長い本体120の遠位端を血管に通すために十分可撓性であり得る。」

ウ 「【0027】
次に図2Aを参照して、一部の実施形態の側方視型超音波スキャナ209の断面図を説明する。超音波スキャナ209は、IC220、可撓性部材230、内腔240またはシャフト241(以下、内腔240)、一対のワイヤ250、および外層260を含む。CMUTアレイ210、IC220、および可撓性部材230(以下、可撓性サブアセンブリ208)は、内腔240に取り付けられ得る。CMUTアレイ210およびIC220は、半導体技術を使用して個別に(または一緒に)製造することができ、また可撓性部材230によって互いに機械的に連結することができる。可撓性部材230は、IC220の反対にあるCMUTアレイ210の端に連結することもでき、またその逆も可能である。可撓性部材230は、ワイヤ250、IC220、CMUTアレイ210、および超音波スキャナ209の他の構成要素の間に電気的接続性を提供しながら、組み立て中に、これらの構成要素が互いに関連して移動できるようにする。
【0028】
図2Aの詳細部分は、可撓性サブアセンブリ208の内腔240への取り付けを示す。図2Aの詳細部分は、CMUTアレイ210の特定のCMUT要素の様々な構成要素も示す。CMUT要素のこれらの構成要素は、膜211、絶縁層214、基板215、先端電極216、(可撓性部材230の)導電層231、(可撓性部材230の)絶縁層232、および(可撓性部材230の)ビア233を含む。様々な半導体およびMEMS材料(以下、「半導体」材料)を使用して、CMUTを製造することができる。例えば、膜211、絶縁層214、基板215、および先端電極216は、シリコン、ドープトシリコン、金属、酸化物、窒化物等から形成することができる。」

エ 「【0030】
可撓性部材230に関して、可撓性部材230は、1つまたは複数の絶縁層232および少なくとも1つの導電層231を含み得る。これらの絶縁層232および導電層231は、半導体技術を使用して製造することができ、わずか1マイクロメートルの薄さに製造することができる。したがって、可撓性部材230内の相互接続部間の分離は、わずか1マイクロメートルであり得、これまでに利用可能な超音波スキャナ(およびより具体的には、これまでに利用可能なPZTによる超音波スキャナ)と比較して、相互接続部の密度が増加する。さらに、可撓性部材230内の相互接続部の密度を高めることが所望される場合、追加の絶縁層232および導電層231を可撓性部材230内に形成することができる。可撓性部材230の層231および232は、半導体技術と適合する材料で製造され得る。例えば、導電層231は、アルミニウム、金等で形成することができ、金属または他の導電材料を適切な基板上に電気めっき、スパッタリング、蒸散等によって形成され得る。絶縁層232は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、窒化物、ポリイミド、またはカプトン等で形成され得る。」

オ「【0032】
図2Bは、図2Aの超音波スキャナ209の線2B-2Bに沿って取られた断面図を示す。当業者であれば、CMUTアレイ210のCMUT要素が、音響整合層またはバッキング層がなくても満足に作動し得ることを理解するであろう。さらに、CMUTアレイ210は、内腔240とCMUTアレイ210との間に充填材がなくても満足に作動し得る。したがって、可撓性CMUTアレイ210は、内腔240上で直接巻くことができる。一部の実施形態において、可撓性CMUTアレイ210を円筒形状に巻くことができ、それによって内腔240として機能し得る。したがって、個別の内腔240を超音波スキャナ209に含める必要はない。丸められたCMUTアレイ210が内腔として機能するそれらの実施形態において、CMUTアレイ210は、カテーテル100の細長い本体120(図1を参照)に含まれる内腔の直径に一致するような寸法にすることができる。したがって、細長い本体における内腔および丸められたCMUTアレイ210を連結して、カテーテル100の長さ全体に連続する内腔を形成することができる。」

カ 「【0035】
ここで図14を参照して、CMUTによる超音波スキャナを製造する方法について、方法300よりも詳細に説明する。より具体的には、図14は、可撓性サブアセンブリ1408を形成する方法を説明する。図14は、素子層1401を有するウエハ1400、ハンドリングウエハ1402、絶縁層1403、いくつかのトレンチ1405、CMUTアレイ1410、いくつかのIC1420、可撓性絶縁層1429、可撓性部材1430、導電層1431、および絶縁層1432を説明する。ウエハ1400は、CMUTアレイ1410、IC1420、またはそれらの様々な組み合わせの製造に使用されるシリコン-オン-オキサイド(SOI)ウエハであり得る。ウエハ1400を使用して、可撓性部材1430を製造し、CMUTアレイ1410およびIC1420を可撓性部材1430と集積化することもできる。
【0036】
ここで図14.1を参照して、ウエハ1400は、素子層1401、ハンドリングウエハ1402、および絶縁層1403を含み得る。素子層1401は、CMUTアレイ1410およびIC1420の厚みを決定することができる。ウエハ1400にSOIウエハを使用する代替として、シリコンウエハを所望の厚みに研磨し、ウエハ1400の代わりに使用することができる。一部の実施形態において、IC1420をホストするウエハ1400の領域は、図14に示される方法の所定のステップ中に、適切なマスキング材料の層によって保護され得る。図14.1は、様々な半導体製造技術を使用して、CMUTアレイ1410をウエハ1400上で製造できることを示す。
【0037】
図14.2に示されるように、様々なトレンチまたは開口パターン1405をウエハ1400において形成することができる。トレンチおよびパターン1405は、エッチングしてウエハ1400の絶縁層1403に到達するようにする必要がある。トレンチまたはパターン1405を使用して、様々なCMUTアレイ1410、CMUTアレイの要素、IC1420、および他の構成要素を互いから、または素子層1401の残りから分離することができる。図14によって示される他のステップと同様に、適切な半導体技術を使用して、トレンチ1405を形成することができる。さらに、図14.3は、IC1420をウエハ1400上に製造できることを示す。IC1420をホストする領域が保護材料で被覆されている場合、IC1420を製造する前に保護材料を除去してもよい。
【0038】
一部の実施形態において、CMUTアレイ1410は、通常、IC1420の製造中に遭遇する可能性の高い温度よりも高い温度に耐え得る材料で形成される。したがって、CMUTアレイ1410の後にウエハ1400上でIC1420を製造することにより、満足できるサブアセンブリ1408をもたらすことができる。一部の実施形態により、図15を参照して説明されるように、IC1420の製造後に、CMUTアレイ1410をウエハ1400上に製造することができる。
【0039】
引き続き図14を参照して、図14.4から図14.6に示されるステップは、可撓性部材1430を形成するために使用できる典型的なプロセスステップである。これらのステップを採用する実施形態において、可撓性部材1430は、少なくとも1つの絶縁層および少なくとも1つの導電層を有する。図14.4は、可撓性絶縁材料(例えば、パリレン、ポリジメチルシルオキサン、またはPDMS、ポリイミド、ニトリド等)の層が、可撓性部材1430の第1の絶縁層としてウエハ1400上でパターン化および形成され得ることを示す。可撓性絶縁層1432は、任意の適切な方法でウエハ1400上に形成することができる。例えば、可撓性絶縁層1432は、ウエハ1400上にスピンコート、蒸散、スパッタ、蒸着等され得る。さらに、可撓性絶縁層1432のパターンは、可撓性絶縁層1432がCMUT1410およびIC1420に関連する電極、リード、コンタクト等へのアクセスを可能にするように選択することができる。
【0040】
図14.5において、ウエハ1400上の可撓性部材1430の導電層1431の形成が示される。導電層1431は、任意の適切な技術によってウエハ1400上にパターン化および蒸着され得、CMUTアレイ1410、IC1420、およびウエハ1400上の他の構成要素の間の相互接続部の製造を可能にする方法で製造することができる。導電層1431は、アルミニウム、金、銅、チタン等、または他の適切な金属から、(例えば)蒸着、蒸散、スパッタリング等によって製造することができる。複数の絶縁および導電層で可撓性部材1430を形成することが所望され得る場合は、追加の導電層1431および絶縁層1432をウエハ1400上でパターン化および形成して、相互接続部、ビア、およびウエハ1400によりホストされる構成要素の関連絶縁体を提供することができる。1つ以上の導電層1431および絶縁層1432がウエハ1400上に形成される場合、キャパシタ、インダクタ等の様々な装置がそこに形成され得る。
【0041】
所望される場合、外層1429がウエハ1400上に形成され得る。外層を保護層として使用し、可撓性部材1430の絶縁層として処理され得る。通常、必須ではないが、外層は生体適合性である。外層1429は、図14.6により示され、様々な技術によって、パリレン、PMDS、ポリイミド、ニトリド等の可撓性絶縁材料から形成することができる。外層1429の厚み、パターン、および材料を選択して、機械的酷使からのサブアセンブリ1408の保護を提供し、その環境から超音波変換器を電気的且つ熱的に絶縁し、サブアセンブリ1408に対して平滑且つ比較的摩擦のない表面を提供して、それが挿入され得る様々な血管の壁に呈することができる。このステップの後、一部の実施形態において、可撓性部材1430がウエハ1400上に形成されており、IC1420およびCMUT1410を電気的且つ機械的に接続する。
【0042】
図14.7は、ハンドリングウエハ1402、絶縁層1403、および素子層1402の残りを除去することによって、可撓性サブアセンブリ1408を取得できることを示す。そのため、図14に示される製造方法は、互いに、また可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含む、サブアセンブリ1408をもたらす。したがって、CMUTアレイ1410およびIC1420は、同様の技術を使用してウエハ1400上で製造され、それと集積化され得る。」

キ「【図1】



ク「【図2A】



ケ「【図7】


コ 図1より、CMUT超音波スキャナ110は、可撓性の細長い本体120の可撓性遠位端150近傍に配置されている点が見てとれる。

上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「容量性マイクロマシン加工超音波変換器(CMUT)による超音波スキャナを備えるカテーテルにおいて、
カテーテル100は、CMUT変換器111、様々な電極112、可撓性の細長い本体120、ケーブル130、接続ワイヤ131、内腔140、可撓性遠位端150、および外被160を含むCMUT超音波スキャナ110を備え、
CMUT超音波スキャナ110は、可撓性の細長い本体120の可撓性遠位端150近傍に配置されており、
CMUTアレイ210およびIC220は、半導体技術を使用して個別に(または一緒に)製造することができ、また可撓性部材230によって互いに機械的に連結することができ、
CMUT要素のこれらの構成要素は、膜211、絶縁層214、基板215、先端電極216、(可撓性部材230の)導電層231、(可撓性部材230の)絶縁層232、および(可撓性部材230の)ビア233を含み、
可撓性部材230の層231および232は、半導体技術と適合する材料で製造され得、例えば、導電層231は、アルミニウム、金等で形成することができ、金属または他の導電材料を適切な基板上に電気めっき、スパッタリング、蒸散等によって形成され得、絶縁層232は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、窒化物、ポリイミド、またはカプトン等で形成され得、
可撓性CMUTアレイ210は、内腔240上で直接巻くことができ、
CMUTによる超音波スキャナを製造する方法について、ウエハ1400は、CMUTアレイ1410、IC1420、またはそれらの様々な組み合わせの製造に使用されるシリコン-オン-オキサイド(SOI)ウエハであり、ウエハ1400を使用して、可撓性部材1430を製造し、CMUTアレイ1410およびIC1420を可撓性部材1430と集積化することもでき、ウエハ1400は、素子層1401、ハンドリングウエハ1402、および絶縁層1403を含み得、ハンドリングウエハ1402、絶縁層1403、および素子層1402の残りを除去することによって、可撓性サブアセンブリ1408を取得でき、可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含む、サブアセンブリ1408をもたらす、
カテーテル及び製造方法。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「[0032] 図4は、図3の振動要素34-1の縦断面図である。図4に示すように、振動要素34-1は、基板40と、基板40の被検体側の面に形成された枠体42と、枠体42の開口を 塞いで設けられた膜体44などから形成されている。基板40、枠体42、膜体44は、半導体化合物 (例えば、シリコン化合物)を含んで形成されている。枠体42と膜体44により内部空間48が区画されている。内部空間48は、所定の真空度を有する状態、または所定のガスが充填された状態にされている。また、基板40の背面側の面に配設された電極35-1と、膜体44の被検体側の面に配設された電極35-2を有している。電極35-1は、送信手段12の駆動信号電源50に接続端子49-1を介して接続されている。電極 35-2は、バイアス手段14の直流バイアス電源51に接続端子49-2を介して接続されている。
[0033]振動要素34-1は、半導体プロセスによる微細加工によって製造される。例えば、基板 40となるシリコンウェハを用意する。シリコンウェハ上に酸化膜がウエット雰囲気中で形成される。酸化膜が形成された基板に対しパターン形成、レジスド塗布などを施した後、エッチング処理を行うことにより枠体42が形成される。形成された枠体42の内部に所定のガスが充填される。枠体42上に LPCVD (Low Pressure ChemicalVaporDeposition)プロセスによりニッケル(Ni)を蒸着することにより膜体44が形成される。そして、金属電極を蒸着することによって電極35-1、35-2が形成される。このような処理工程によってシリコンウェハに複数の振動要素が形成される。形成された振動要素のそれぞれは、直径が数マイクロメートル (例えば、10μm)の大きさを有する。振動要素が形成されたシリコンウェハは、MEMS (Micro Electro Mechanical System)により振動子26a-26mとして複数にカッティングされる。カッティングされた振動子26a-26mは、バッキング材28に配列された後、超音波探触子10の探触子ヘッド基板に接着される。探触子ヘッド基板に駆動信号電源50、直流バイアス電源51が接続端子49-1、49-2を介して接続される。なお、マッチング層30、音響レンズ32なども振動子26a-26mに取り付けられる。
[0034]このような振動要素34-1?34-30としては、例えば、cMut(Capative
MicromachinedUltrasonic Transducer: IEEE Trans. Ultras on.Ferroelect. Freq. Contr. Vol45 pp.678-690 May 1998)を適用することができる。」

イ「[0037] このように振動要素34-1に印加するバイアス電圧の大きさを制御することにより、膜体44の緊張度を変化させることができる。そして、膜体44の緊張度に起因して電気機械結合係数が変化する。したがって、バイアス電圧の大きさを制御することにより電気機械結合係数を変化させると、振動要素34-1により送受される超音波の強度(例えば、振幅の大きさ)を調整することができる。その結果、複数の振動要素34-1?34-30により送受される各超音波の強度を調整することにより、超音波ビームの音圧分布を任意に可変することが可能になる。」

ウ「[0047] また、図3及び図7に示すように、振動要素34-1?34-30を複数の区分P1-P3に分け、同じ区分(例えば、区分P1)に属する各振動要素(例えば、振動要素34-1?34-10)の電極(例えば、電極35)を共通に接続している。これによれば、単一の振動要素 (例えば、振動要素34-1)から射出される超音波強度が微弱であるときでも、各区分に属する振動要素の数を増やすことにより、超音波像を撮像するのに必要な超音波強度を確保できる。」

上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「振動要素が形成されたシリコンウェハは、MEMS (Micro Electro Mechanical System)により振動子26a-26mとして複数にカッティングされ、カッティングされた振動子26a-26mは、バッキング材28に配列された後、超音波探触子10の探触子ヘッド基板に接着され、振動要素34-1?34-30としては、例えば、cMutを適用することができ、振動要素34-1に印加するバイアス電圧の大きさを制御することにより、膜体44の緊張度を変化させることができ、振動要素34-1?34-30を複数の区分P1-P3に分け、同じ区分(例えば、区分P1)に属する各振動要素(例えば、振動要素34-1?34-10)の電極(例えば、電極35)を共通に接続している、超音波探触子。」

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「圧電気ポリマーの全てがリング44として用いるのに適当ということではない。受け入れ可能な材料は次のような特性を有するものでなければならない。いうまでもなく、この材料は反射された超音波を検知するための良好な感度特性を有するものでなければならない。しかしながら、リング44の小さい寸法およびシリンダ状の形状のために、この圧電気材料もまた、極めて小さい直径の適当な形状に形成できるものでなければならない(例えば、直径が約1.5mmのシリンダ)。例えば、該材料は可撓性のシートとして出発するか、可撓性のものではないときには、沈積その他の周知の成型処理により、所望の形状のものに直接的に成型することができる。また、該材料は連続的なものであることから、良好な音響的態様によって特徴付けられるものでなければならない。換言すれば、リング44によって形成される配列における1個の要素の励起は、該配列における他の要素との相互作用からのシャー・ウェーブ(shear waves)またはリンギング(ringing)を生じるものであってはならない。より詳細に後述されるように、この発明に含まれている電子回路装置は、シャー・ウェーブまたはリンギングの排除の助けになるものである。更に、この圧電気材料は、プローブ・アセンブリ24を直接的に包囲する人体組織と良好に合致するものでなければならない。先のような基準に対して、本出願人は、目下のところ、約9ミクロンの厚みを有するコポリマーP(VDF-TrFE)を使用している。これ以外の代替的な材料は、PVDF、コポリマーP(VDF-TFE)、ポリマーとセラミクスとの複合体(例えば、PZT)、または、ZnOのような沈積性の材料がある。」(第10頁左上欄第20行?右上欄第24行)

上記引用文献3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「圧電気材料として、約9ミクロンの厚みを有するコポリマーP(VDF-TrFE)を使用した、圧電気材料。」

5 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
(ア)引用発明1の「可撓性の細長い本体120」は、本願発明1における「可撓性の細長い部材」に相当する。
(イ)引用発明1における「可撓性遠位端150」は、「可撓性の細長い本体120」の端部にあることから、本願発明1における「可撓性の細長い部材」の「遠位部分」に相当する。
(ウ)引用発明1の「CMUT超音波スキャナ110」は、「可撓性の細長い本体120の可撓性遠位端150近傍に配置されて」いることから、本願発明1における「可撓性の細長い部材の遠位部分に配設された超音波スキャナアセンブリ」に相当する。
(エ)引用発明1の「容量性マイクロマシン加工超音波変換器(CMUT)による超音波スキャナを備えるカテーテル」は、本願発明1における「超音波撮像デバイス」に相当する。
(オ)引用発明1の「IC1420」は、超音波スキャナのICであるから、本願発明1における「制御回路の複数のトランジスタ」に相当する。
(カ)引用発明1の「CMUTアレイ1410」は、「超音波スキャナ110」の「容量性マイクロマシン加工超音波変換器(CMUT)」であるから、本願発明1における「制御回路に電気的に結合された複数の超音波トランスデューサ」に相当する。
(キ)引用発明1の「可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含む、サブアセンブリ1408」は、「CMUTによる超音波スキャナ」であり、「可撓性CMUTアレイ210は、内腔240上で直接巻くことができ」ることから、サブアセンブリ1408は円筒形状になるものである。よって、引用発明1の「可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含む、サブアセンブリ1408」である「CMUTによる超音波スキャナ」が「内腔240上で直接巻くことができ」ることは、本願発明1における「超音波スキャナアセンブリが」「丸められた形態であるときに、」「複数のトランジスタ及び」「複数の超音波トランスデューサが円筒形構成で構成される」ことに相当する。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「可撓性の細長い部材と、
前記可撓性の細長い部材の遠位部分に配設された超音波スキャナアセンブリとを備える超音波撮像デバイスであって、前記超音波スキャナアセンブリは、
制御回路の複数のトランジスタと、
前記制御回路に電気的に結合された複数の超音波トランスデューサと
を含み、
前記超音波スキャナアセンブリが前記丸められた形態であるときに、前記複数のトランジスタ及び前記複数の超音波トランスデューサが円筒形構成で構成される、
超音波撮像デバイス。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
超音波スキャナアセンブリが、本願発明1では、「半導体基板」を備え、「制御回路の複数のトランジスタと、」「前記制御回路に電気的に結合された複数の超音波トランスデューサと」が「半導体基板上に形成され」、「前記超音波スキャナアセンブリが丸められた形態であるときに、前記半導体基板が、実質的に円筒形状を有するように湾曲され」るのに対し、引用発明1では、「可撓性部材」に「CMUTアレイ」および「IC1420」が形成され、「可撓性部材」「と集積化されるCMUTアレイ」「およびIC」「を含む、サブアセンブリ1408」が円筒形構成に丸められる点。

イ 判断
前記「ア」で記載した相違点1について判断する。
(ア)引用発明1における「可撓性部材」は、「層231および232」を備え、「導電層231は、アルミニウム、金等で形成することができ、金属または他の導電材料を適切な基板上に電気めっき、スパッタリング、蒸散等によって形成され得、絶縁層232は、パリレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、窒化物、ポリイミド、またはカプトン等で形成され得」るものであるから、半導体基板ではない。
(イ)また、引用発明1における超音波スキャナを製造する方法においては、「半導体技術」で製作されているが、それに用いる半導体基板であるウエハ1400は、可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含むサブアセンブリ1408の完成前にハンドリングウエハ1402、絶縁層1403、および素子層1402の残りを除去することが行われていることから、サブアセンブリ1408から除去されていることが分かる。
(ウ)以上のことから、引用発明1における超音波スキャナであるサブアセンブリ1408には半導体基板は存在せず、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1から当業者であっても導き出すことはできない。
(エ)さらに、引用発明2及び引用発明3にも上記相違点1に係る発明特定事項に関連する技術は開示されていないので、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1-3から当業者であっても導き出すことはできない。

ウ 小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1または引用発明1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2-10について
本願発明2-10も、本願発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1または引用発明1-3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明11について
ア 対比
本願発明11と引用発明1を比較する。
(ア)引用発明1における「CMUTによる超音波スキャナを製造する方法」は、本願発明11における「超音波撮像デバイスを製造する方法」に相当する。
(イ)引用発明1における「IC1420」は、本願発明11における「トランジスタ」に相当する。
(ウ)引用発明1における「CMUTアレイ1410」は、本願発明11における「超音波トランスデューサ」に相当する。
(エ)引用発明1の「可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含む、サブアセンブリ1408」は、「CMUTによる超音波スキャナ」であり、「可撓性CMUTアレイ210は、内腔240上で直接巻くことができ」ることから、サブアセンブリ1408は円筒形状になるものである。よって、引用発明1の「可撓性部材1430と集積化されるCMUTアレイ1410およびIC1420を含む、サブアセンブリ1408」である「CMUTによる超音波スキャナ」が「内腔240上で直接巻くこと」は、本願発明11における「トランジスタ」と「超音波トランスデューサとを、実質的に円筒形状を有するように丸めるステップ」に相当する。

すると、本願発明11と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「超音波撮像デバイスを製造する方法であって、
トランジスタを形成するステップと、
超音波トランスデューサを形成するステップと、
前記トランジスタと前記超音波トランスデューサとを、実質的に円筒形状を有するように丸めるステップとを含む、
方法。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点2>
本願発明11では、「半導体基板を受け取るステップ」を備え、「トランジスタと、」「超音波トランスデューサと」を「半導体基板上に形成するステップ」を備え、「トランジスタを有する」「半導体基板と、」「半導体基板上に形成された」「超音波トランスデューサとを実質的に円筒形状を有するように丸めるステップ」を備えるのに対し、引用発明1では、「可撓性部材1430」に「CMUTアレイ1410」および「IC1420」が形成され、「可撓性部材」「と集積化されるCMUTアレイ」「およびIC」「を含む、サブアセンブリ1408」が円筒形構成に丸めるステップを備える点。

イ 判断
前記「ア」で記載した相違点2について判断する。
前記「(1)イ」で検討したとおり、引用発明1における超音波スキャナであるサブアセンブリ1408には半導体基板は存在しないので、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1から当業者であっても導き出すことはできない。
さらに、引用発明2及び引用発明3にも上記相違点2に係る発明特定事項に関連する技術は開示されていないので、上記相違点2に係る発明特定事項を引用発明1-3から当業者であっても導き出すことはできない。

ウ 小括
したがって、本願発明11は、当業者であっても、引用発明1または引用発明1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(4)本願発明12-15について
本願発明12-15も、本願発明11の上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1または引用発明1-3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明1-15は、当業者であっても引用発明1または引用発明1-3に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-08-31 
出願番号 特願2017-505216(P2017-505216)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 浩司  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 伊藤 幸仙
信田 昌男
発明の名称 血管内超音波撮像装置、インターフェースアーキテクチャ、及び製造方法  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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