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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1365706
審判番号 不服2019-11977  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-10 
確定日 2020-08-31 
事件の表示 特願2015- 46294「配管内スケール監視システム、および配管内スケール監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日出願公開、特開2016-166781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月9日に出願された特願2015-46294号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 10月11日:拒絶理由通知
平成30年 12月10日:意見書
令和 元年 6月6日 :拒絶査定
令和 元年 9月10日:審判請求
令和 2年 3月23日:拒絶理由通知
令和 2年 5月20日:意見書
令和 2年 5月20日:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本願請求項1?6に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「熱流体が流れる配管の内壁に付着するスケールを監視する配管内スケール監視システムであって、
前記熱流体が流れる配管の外側の表面温度を表面温度の変化でなく表面温度そのものとして測定し、前記配管の周方向の温度分布である実測温度分布を生成する表面温度測定部と、
前記配管の周方向の表面温度分布と、前記スケールの外周方向の付着パターンを示すスケール付着パターンとを対応付けて記憶する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースの中から、前記実測温度分布にマッチングする表面温度分布を検索し、前記検索された表面温度分布に対応付けられたスケール付着パターンを前記スケールの形状として推定するスケール形状推定部と、
を備えることを特徴とする配管内スケール監視システム。」

第3 拒絶の理由
令和2年3月23日の当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願の請求項1,3,5,6に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2,3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本願の請求項2,4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2ないし4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開昭64-54240号公報
2.特開2011-209033号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平9-166496号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2011-252677号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
ア 当審で通知した拒絶理由通知で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開昭64-54240号公報(平成元年3月1日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。

(引1?a)
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、配管内面の錆こぶやスケールなど、被検査物の内面に接触して存在する異物の位置、形状および概略の厚さを、被検査物の外面側から検出する方法に関するものである。」(第1頁右下欄第2-6行)

(引1?b)
「第1図に示すように、先ず被検査物たる配管1の外面に1方向から赤外線映像装置2の赤外線カメラヘッド3を向ける。次いで、この実施態様の方法では、配管1内に温水または温風等の加熱流体4を急激に通して、加熱流体4によって配管1を内面から急激に加熱する。次いで、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面をカメラヘッド3により撮影する。なお、配管1の内面全面の状況を検査するためには、以上のようにして、第2図に示すように、例えば、イ、ロ、ハの3方向又はイ′、ロ′、ハ′、ニ′の4方向から、配管1の外面を撮影することが好ましい。
今、温度tpの雰囲気中に放置されていた配管1内に、これより高い温度tiの加熱流体4を通して、配管1を内面から急加熱したとする。すると、第3図(A)に示すように、内面に錆こぶ等の異物5がない管壁部分1aよりも、第3図(B)に示すように、内面に錆こぶ等の異物5がある管壁部分1bの方が、加熱流体4により加えられた熱の管外面への伝わり方が異物5の存在により小さくなる。このため、急加熱直後のある時刻に異物5がある管壁部分1bでは、異物5の熱伝達率および厚さによって定まる温度変化Δtを異物4内で示し、管外面が管壁部分1aの管外面の温度tNよりも低い、前記温度変化Δtによって決まる温度tAを示す。即ち、配管1の内面の異物5の存在が、急加熱直後のある時刻に管外面の温度差ΔT=tN-tAとなって表われる。従って、急加熱直後の赤外線カメラヘッド3による配管1外面の撮影により、配管1内面の異物5を赤外線画像として、赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6等に検出することができる。また、以上の原理から、配管l内に通す加熱流体4の温度tiを段階的に高めて行けば、その高めた温度の加熱流体4を通して内面から急加熱する毎に、管外面の温度差ΔTを連続的に発現させることができ、従って連続的に検出することが可能である。」(第3頁左上欄第1行-右上欄第17行)

(引1?c)
「この実施態様の方法によって、錆こぶからなる異物5を検出した赤外線画像の1例を第4図に示す。第4図において、7はモニタテレビ6の画面に対応する赤lA線全体画像、8は全体画像7中に表示された配管1の画像、9は配管1の画像8中に表示された錆こぶの画像で、これら錆こぶの画像9等は温度に応じて定めた色によって表示されている。即ち、錆こぶの画像9は、温度の高い配管1の画像8と別な色で表示され、錆こぶの画像9内では、温度が相対的に低い内側部分はそれよりも温度が相対的・に高い外側部分と別な色で区別して表示される。従って、赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶの画像9から、配管1中における錆こぶの位置、形状および概略の厚さ(低温度に対応した色で表示された部分ほど錆こぶの厚さが厚い)を知ることができる。」(第3頁右上欄第18行-左下欄第13行)

(引1-d)第1図



(引1?e)第2図


イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)上記ア(引1?b)の
「配管1内に温水または温風等の加熱流体4を急激に通して、加熱流体4によって配管1を内面から急激に加熱する。次いで、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面をカメラヘッド3により撮影する。なお、配管1の内面全面の状況を検査するためには、以上のようにして、第2図に示すように、例えば、イ、ロ、ハの3方向又はイ′、ロ′、ハ′、ニ′の4方向から、配管1の外面を撮影することが好ましい。」
及び、ア(引1?d)、ア(引1?e)の第1,2図から、引用文献1には、「加熱流体4を急激に通して、加熱流体4によって配管1を内面から急激に加熱し、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面を4方向から撮影するカメラヘッド3」が記載されているものと認められる。
また、上記ア(引1?b)の
「急加熱直後の赤外線カメラヘッド3による配管1外面の撮影により、配管1内面の異物5を赤外線画像として、赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6等に検出することができる。」から、「カメラヘッド3」は、「配管1外面の撮影により、配管1内面の異物5を赤外線画像として、赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6等に検出する」ことが読み取れる。

(イ)上記ア(引1?c)の
「この実施態様の方法によって、錆こぶからなる異物5を検出した赤外線画像の1例を第4図に示す。」、
の記載を踏まえると、
上記ア(引1?c)の
「赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶの画像9から、配管1中における錆こぶの位置、形状および概略の厚さ(低温度に対応した色で表示された部分ほど錆こぶの厚さが厚い)を知ることができる。」
の記載は、配管内面の異物として錆こぶを検出した場合の例示であり、上記ア(引1?a)の
「この発明は、配管内面の錆こぶやスケールなど、被検査物の内面に接触して存在する異物の位置、形状および概略の厚さを、被検査物の外面側から検出する方法に関するものである。」
を踏まえると、異物としては錆こぶ以外にスケールなどが想定されていることが読み取れるから、上記下線部の記載の例は、配管内面の異物として錆こぶに替えてスケールを検出する場合もあることが読み取れる。
そうすると、引用文献1には、「赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶやスケールの画像9から、配管1中における錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを知ることができる」ことが記載されているものと認められる。

(ウ)上記ア(引1?a)の
「この発明は、配管内面の錆こぶやスケールなど、被検査物の内面に接触して存在する異物の位置、形状および概略の厚さを、被検査物の外面側から検出する方法に関するものである。」から、「配管内面の錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを、被検査物の外面側から検出する方法」が読み取れ、上記(ア)を踏まえると、引用文献1には、「カメラヘッド3」、及び、「赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6」の構成を備え、上記方法を実施するシステムが記載されているものと認められる。

ウ 以上を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「配管内面の錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを、被検査物の外面側から検出するシステムであって、
加熱流体4を急激に通して、加熱流体4によって配管1を内面から急激に加熱し、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面を4方向から撮影し、配管1外面の撮影により、配管1内面の異物5を赤外線画像として、赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6等に検出するカメラヘッド3を備え、
赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶやスケールの画像9から、配管1中における錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを知ることができる、
システム。」


(2)引用文献2
ア 当審で通知した拒絶理由通知で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-209033号公報(平成23年10月20日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。

(引2?a)
「【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を重ねたところ、検査のために特別に配管に対して加熱や冷却といった温度変化を与えることなく、銅電解液が通液された状態の配管の表面温度を赤外線サーモグラフィで計測し、これによって得られる配管の外表面の温度分布図からスケールの付着状況を確認できることを見出した。
【0015】
上記の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、配管周囲の雰囲気とは温度差のある流体用の配管内のスケール状態の検査方法であって、当該流体が流れているときに、検査のために配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測し、配管表面の温度分布により流体配管内のスケール状態を推定することを含む流体配管内のスケール状態の検査方法である。」

(引2?b)
「【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、操業を継続したまま、配管に対して検査のために特別に温度変化を与えることなく、配管内のスケール付着状態を簡便に判定することができるようになる。
【0023】
例えば、銅の電解精錬工程で循環使用される銅電解液が流れる配管のスケール付着状態を簡便に判定することができるようになる。銅電解工場においては、給液を止めて配管を更新できる時期は年間1日程度と限られており、事前にスケール調査と工事準備をしなければならないが、本発明によれば、手間やコストをかけず配管更新時期を容易に判定できるようになり、電気銅製品の品質管理向上につながる。」

(引2?c)
「【0037】
以上説明してきた実施形態によって、配管内のスケール付着状況は推定可能であるが、より正確にスケールの付着状態を計測したい場合には、配管交換直後のようなスケールの付着がない状態における配管表面温度を記録しておき、また、スケール付着量と配管表面温度低下の関係を経験的に把握しておくと、スケールの付着状況を赤外線サーモグラフィを用いて定量的に把握することができるようになる。
【0038】
従って、本発明に係る検査方法は一実施形態において、
・配管内にスケールが付着しておらず、且つ、当該流体が流れているときに、検査のために特別に配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測するステップ1と、
・ステップ1とは別時において、且つ、当該流体が流れているときに、検査のために特別に配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測ステップ2と、
・ステップ1で得られた配管表面の温度分布とステップ2で得られた配管表面の温度分布を比較することにより流体配管内のスケール状態を推定するステップ3と、を含む流体配管内のスケール状態の検査方法である。
【0039】
ステップ1の実施時期とステップ2実施時期の間隔は特に制限されるものではないが、過去の操業データから配管の平均的なスケール付着速度を割り出せば、必要な間隔は適宜設定可能であろう。例えば、銅の電解精錬工程で使用する銅電解液が流れる配管を検査対象とした場合、通常は数年周期で配管交換が必要となることから、1年に1回程度ステップ2を実施することが操業安定上好ましい。」

(引2?d)第1図



イ 上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「検査のために配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測し、配管表面の温度分布により流体配管内のスケール状態を推定することを含む流体配管内のスケール状態の検査方法であって、
配管交換直後のようなスケールの付着がない状態における配管表面温度を記録しておき、また、スケール付着量と配管表面温度低下の関係を経験的に把握し、例えば、銅の電解精錬工程で使用する銅電解液が流れる配管を検査対象とした場合、1年に1回程度、検査のために特別に配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測して、スケールの付着状況を定量的に把握することができる、方法。」


(3)引用文献3
ア 当審で通知した拒絶理由通知で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平9-166496号公報(平成9年6月24日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。

(引3?a)
「【0027】
これらの図に示すように外表面の温度分布は、スケール等が厚く付着しているところほど温度が高く、薄い部分ほど温度が低いという違いが見られる。この現象は、スケール等の熱伝導率と比熱とが配管16を構成する炭素鋼の値と異なることで発生するのである。すなわちスケール等とは金属酸化物の多孔質体であり、多孔内に水が滞留していることから、見かけの熱伝導率は水に近くなっている。そのため熱伝達率は配管材としての炭素鋼よりも著しく小さな値となり(水および炭素鋼の熱伝導率は、それぞれ0.5kcal/mhr℃、37kcal/mhr℃)、さらに比熱も炭素鋼より大きくなっている(水および炭素鋼の比熱は、それぞれ1.0kcal/kg℃、0.12kcal/kg℃)。そのためスケール等の付着状況によって温度分布に偏りが発生するのである。そして上述したようなスケール等の厚みと測定物の外表面温度との関係をあらかじめ、データとして採取しておけば、測定対象となる配管16の温度変化を計測することで配管16内部に付着したスケール等の付着状況を把握することが可能となる。」


第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「配管1」は、加熱流体4を急激に通して加熱されるものであるから、引用発明の「配管」は、本願発明の「熱流体が流れる配管」に相当する。
してみると、引用発明の「配管内面の錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを、被検査物の外面側から検出するシステム」と、本願発明の「熱流体が流れる配管の内壁に付着するスケールを監視する配管内スケール監視システム」とは、「スケール監視」はスケールを検出して行われることから、「熱流体が流れる配管の内壁に付着するスケールを検出するシステム」である点で共通する。

(2)「赤外線画像」は、撮影対象の実測の温度分布を画像化したものであるから、引用発明の「配管1の外面を4方向から撮影し、配管1外面の撮影により」生成された「赤外線画像」は、本願発明の「前記配管の周方向の温度分布である実測温度分布」に相当する。
そして、上記(1)を踏まえると、引用発明の「加熱流体4によって配管1を内面から急激に加熱し、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面を4方向から撮影し、配管1外面の撮影により、配管1内面の異物5を赤外線画像として、赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6等に検出することができるカメラヘッド3」と、本願発明の「前記熱流体が流れる配管の外側の表面温度を表面温度の変化でなく表面温度そのものとして測定し、前記配管の周方向の温度分布である実測温度分布を生成する表面温度測定部」とは、「熱流体が流れる配管の外側の表面温度を測定し、配管の周方向の温度分布である実測温度分布を生成する表面温度測定部」である点で共通する。

(3)引用発明の「赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶやスケールの画像9から、配管1中における錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを知ることができる」ことは、本願発明の「スケール形状推定部」が「表面温度分布に対応づけられたスケール付着パターンをスケールの形状として推定する」ことと、「スケール形状推定」を行う点で共通する。

2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「熱流体が流れる配管の内壁に付着するスケールを検出するシステムであって、
前記熱流体が流れる配管の外側の表面温度を測定し、前記配管の周方向の温度分布である実測温度分布を生成する表面温度測定部、
を備え、スケール形状推定を行う、システム。」

【相違点1】
表面温度測定部について、本願発明が、配管の外側の表面温度を「表面温度の変化でなく表面温度そのものとして」測定しているのに対して、引用発明は、「配管1を内面から急激に加熱し、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面」を撮影することで赤外線画像を検出しており、「表面温度の変化でなく表面温度そのものとして」測定していない点。

【相違点2】
本願発明は、熱流体が流れる配管の内壁に付着するスケールを「監視する」システムであるのに対して、引用発明は、スケールを検出しているが、「監視」しているとまではいえない点。

【相違点3】
本願発明が、「前記配管の周方向の表面温度分布と、前記スケールの外周方向の付着パターンを示すスケール付着パターンとを対応付けて記憶する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースの中から、前記実測温度分布にマッチングする表面温度分布を検索し、前記検索された表面温度分布に対応付けられたスケール付着パターンを前記スケールの形状として推定するスケール形状推定部」を備えるのに対して、引用発明は、「赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶやスケールの画像9から、配管1中における錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを知ることができる」ものである点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。

1 相違点1について
引用文献2には、「検査のために配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測し、配管表面の温度分布により流体配管内のスケール状態を推定することを含む流体配管内のスケール状態の検査方法であって、
配管交換直後のようなスケールの付着がない状態における配管表面温度を記録しておき、また、スケール付着量と配管表面温度低下の関係を経験的に把握し、例えば、銅の電解精錬工程で使用する銅電解液が流れる配管を検査対象とした場合、1年に1回程度、検査のために特別に配管を加熱又は冷却することなく、配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測して、スケールの付着状況を定量的に把握することができる、方法。」という引用文献2技術事項が記載されている。
また、引用文献2には、上記「第4 1(2)(引2?a)、(引2?b)」に示したように、「本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を重ねたところ、検査のために特別に配管に対して加熱や冷却といった温度変化を与えることなく、銅電解液が通液された状態の配管の表面温度を赤外線サーモグラフィで計測し、これによって得られる配管の外表面の温度分布図からスケールの付着状況を確認できることを見出した。」(段落【0014】参照)、「例えば、銅の電解精錬工程で循環使用される銅電解液が流れる配管のスケール付着状態を簡便に判定することができるようになる。銅電解工場においては、給液を止めて配管を更新できる時期は年間1日程度と限られており、事前にスケール調査と工事準備をしなければならないが、本発明によれば、手間やコストをかけず配管更新時期を容易に判定できるようになり、電気銅製品の品質管理向上につながる。」(段落【0023】参照)、と記載されており、上記引用文献2記載の方法は、従来必要であった「検査のために特別に配管に対して加熱や冷却といった温度変化」を与えることなく、「配管の外表面の温度分布図からスケールの付着状況を確認できる」ものである。
そして、「加熱流体4によって配管1を内面から急激に加熱し、急加熱を停止または急加熱をしながら、急加熱直後に配管1の外面を、4方向から撮影する」ものである引用発明において、より簡便なスケール検出を行うために「検査のために特別に配管に対して加熱や冷却といった温度変化」を与えることなく、配管内面のスケール検出を可能とする上記引用文献2技術事項を採用することは、当業者が容易に想到しうることである。
したがって、引用発明において、引用文献2技術事項を採用し、相違点1に係る構成をなすことは、当業者が容易に想到しうることである。

2 相違点2について
上記引用文献2技術事項は、「例えば、・・・1年に1回程度、・・・配管表面の温度分布を赤外線サーモグラフィで計測して、スケールの付着状況を定量的に把握することができる、方法。」であり、定期的にスケールの付着状況を定量的に把握することができる方法であるから、「スケールの付着状況」を定期的に把握、すなわち、「監視」するものであるといえる。
そして、引用発明において、上記引用文献2技術事項を採用することで、引用発明の「配管内面の錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さ」の「検出」を定期的に行うシステム、すなわち、「配管内面の錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さ」を「監視」するシステムとすることは、当業者が容易に想到しうることである。
したがって、引用発明において、引用文献2技術事項を採用し、相違点2に係る構成をなすことは、当業者が容易に想到しうることである。

3 相違点3について
赤外線検出装置により、配管の外表面の温度分布を測定することにより、配管内のスケールを推定するシステムにおいて、配管内部のスケールの厚みと、配管の外表面の温度との関係を予めデータとして採取しておき、測定された配管の温度分布を予め採取された配管内部のスケールの厚みと、配管の外表面の温度との関係を予めデータと照合することにより、配管内のスケールを推定することは周知技術である(必要であれば、「第4 1(2)」の引用文献2技術事項、及び、「第4 1(3)」の(引3?a)参照)。
そして、「赤外全体画像7中の画像8および錆こぶやスケールの画像9から、配管1中における錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを知る」ものである引用発明においては、赤外線画像の観察を通じて、錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを定性的に把握するものと認められるところ、定量的なスケール形状推定を迅速かつ簡便に実施するために、引用発明に上記周知技術を採用し、相違点2に係る構成をなすことは、当業者が容易に想到しうることである。

4 そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2技術事項、及び、周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。


5 請求人の主張について
請求人は、令和2年5月20日付意見書の「【意見の内容】三(2)」において、
「今回の拒絶理由通知において指摘されている引用文献2の段落[0037]には、「配管交換直後のようなスケールの付着がない状態における配管表面温度を記録しておき、また、スケール付着量と配管表面温度低下の関係を経験的に把握しておくと、スケールの付着状況を赤外線サーモグラフィを用いて定量的に把握することができるようになる」と記載されています。この記載から明らかなように引用文献2には、スケール付着量と配管表面温度低下の関係を予め把握することが述べられています。
上記記載は、スケール付着量と、配管の表面温度の低下(表面温度の変化量)との関係を把握することに言及したものに過ぎず、補正後の請求項1に係る発明のように、配管の周方向の表面温度(そのもの)の分布と、スケールの外周方向の付着パターンを示すスケール付着パターンとを対応付けて記憶するデータベース(本願の図2参照)を開示したものでないと思料いたします。また、引用文献2の段落[0035]において「流体配管内のスケール状態の推定は、配管表面の上下方向の温度差に基づいて行う」と記載されていることから、本願発明のように配管の周方向の表面温度分布に基づくスケール推定が想定されていないことは明らかです。
したがって、引用文献2に記載された事項を引用文献1に記載の発明に適用したとしても、補正後の請求項1に係る発明に想到することは当業者にとって容易でないものと思料いたします。」
と主張する。
しかしながら、引用文献2の段落【0037】に記載された「スケール付着量と配管表面温度低下の関係」における「配管表面温度の低下の関係」は、スケールの付着がない状態における配管表面温度と、スケールが付着した状態における配管表面温度とをそれぞれ、「表面温度の変化でなく表面温度そのものとして」実測することで得られるものであることは明らかであり、「前記配管の周方向の表面温度分布と、前記スケールの外周方向の付着パターンを示すスケール付着パターンとを対応付けて記憶する」ものである本願発明の構成と相違しない。
そして、「配管1の外面を4方向から撮影し、配管1外面の撮影により、配管1内面の異物5を赤外線画像として、赤外線映像装置2の本体設置のモニタテレビ6等に検出」し、「赤外線全体画像7中の配管1の画像8および錆こぶやスケールの画像9から、配管1中における錆こぶやスケールの位置、形状および概略の厚さを知ることができる」ものである引用発明において、引用文献2技術事項、及び、周知技術を採用し、「前記配管の周方向の表面温度分布と、前記スケールの外周方向の付着パターンを示すスケール付着パターンとを対応付けて記憶する第1のデータベースと、
前記第1のデータベースの中から、前記実測温度分布にマッチングする表面温度分布を検索し、前記検索された表面温度分布に対応付けられたスケール付着パターンを前記スケールの形状として推定するスケール形状推定部」の構成をなすことは、当業者が容易に想到しうることであるとした上記判断に変わりはない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2技術事項、及び、周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2020-06-24 
結審通知日 2020-06-26 
審決日 2020-07-13 
出願番号 特願2015-46294(P2015-46294)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 華代  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 森 竜介
松谷 洋平
発明の名称 配管内スケール監視システム、および配管内スケール監視方法  
代理人 中村 行孝  
代理人 吉田 昌司  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  

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