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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1365707
審判番号 不服2019-12394  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-18 
確定日 2020-08-31 
事件の表示 特願2017-218241号「薬剤フィーダ及び薬剤払出し装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月8日出願公開、特開2018-35001号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年9月18日(優先権主張 2012年9月19日 日本国)を国際出願日とする特願2014-536888号の一部を平成29年11月13日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月17日付けで拒絶理由を通知され、平成31年2月20日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年6月20日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和元年9月18日にされた手続補正の補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年9月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、平成31年2月20日に補正された特許請求の範囲の請求項1の
「薬剤容器と、本体装置によって構成される薬剤フィーダであって、
前記薬剤容器は、本体装置に対して着脱自在であり、前記薬剤容器には薬剤を排出する薬剤排出部があり、
本体装置は、振動台と、振動台を振動させる加振手段と、振動台に薬剤容器を一時的に固定する容器保持手段と、薬剤容器の重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段とを有し、
薬剤容器を振動台に載置し、容器保持手段で薬剤容器を振動台に固定し、振動台を振動させて前記薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出し、重量測定手段によって薬剤の排出量を検知することが可能であり、
振動台を振動させて薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出する際に前記重量測定手段によって薬剤容器の重量を監視し、薬剤容器の現在の重量たる現重量が、薬剤を排出する以前の薬剤容器の重量たる原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に振動台の振動を停止させる計量機能を備えたことを特徴とする薬剤フィーダ。」を
「薬剤容器と、本体装置によって構成される薬剤フィーダであって、
前記本体装置は固定されており、
前記薬剤容器は、本体装置に対して着脱自在であり、前記薬剤容器には薬剤を排出する薬剤排出部があり、
本体装置は、振動台と、振動台を振動させる加振手段と、振動台に薬剤容器を一時的に固定する容器保持手段と、薬剤容器の重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段とを有し、
薬剤容器を振動台に載置し、容器保持手段で薬剤容器を振動台に固定し、振動台を振動させて前記薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出し、重量測定手段によって薬剤の排出量を検知することが可能であり、
振動台を振動させて薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出する際に前記重量測定手段によって薬剤容器の重量を監視し、薬剤容器の現在の重量たる現重量が、薬剤を排出する以前の薬剤容器の重量たる原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に振動台の振動を停止させる計量機能を備えたことを特徴とする薬剤フィーダ。」とする補正を含むものである(下線は当審で付与した補正箇所である。)。

2 特許法第17条の2第5項の要件に適合するかについて
上記補正は、補正前の「本件装置」について、「固定されて」いることを限定するものであって、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。

よって、本件補正における請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。

3 独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例1
平成30年10月17日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-8842号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は所定の粉粒体を自動的に排出する装置であって、粉粒体を収納する容器でありかつ直進型振動フィーダのホッパ部を構成する粉粒体容器と、この粉粒体容器の複数個を収納するロータリ型の粉粒体容器ストッカと、前記粉粒体容器の着脱が可能に構成された直進型振動フィーダ装置とから構成された自動粉粒体排出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば薬剤の調合や顔料の調合等においては多種類の粉粒体をそれぞれ所定量計量する作業が前提となる。この場合、直進型振動フィーダ(以下単に「振動フィーダ」と称する)と重量測定装置、例えば電子天秤を組み合わせることにより重量測定装置の測定信号によって振動フィーダを制御し、特定の粉粒体を所定量排出するシステムが実働しており、ある程度の自動化が行われている。しかし、振動フィーダに対する粉粒体の充填作業は人手にたよっている。この場合粉粒体の種類によっては他の粉粒体と混合すると化学反応を起こす等の問題があるため、一つの粉粒体の排出が終了したならば残っている粉粒体を全てホッパから排出しかつこのホッパを清掃した後次の粉粒体を充填する。このように一回の粉粒体排出作業には多数の人手を要し、粉粒体の種類が多くなるとこの作業に費やす人手は膨大なものとなる。」

(イ)「【0008】
【実施例】以下本発明の実施例を図面を参考に具体的に説明する。
【0009】先ず図1および図2は粉粒体容器の構成を示す。矢印1は粉粒体容器を示し、符号1aはこの粉粒体容器1の本体部であって、例えば合成樹脂により形成された筒体となっている。2はこの容器本体1aに螺合する蓋部材であり、この蓋部材2の周縁に対しては取付部材3が固設されている。この取付部材3は図示の如く側面略L字型に構成され、L字部分の上端が前記蓋部材2に接続し、他方下端面の一端に対しては後述する固定部材が係止する溝3aが形成され、かつ他端には同様に後述する位置決め部材係止用の溝3bが形成されている。またこの溝3b形成側の端部3cでは取付部材はくさび状に斜めに切断された形状に成形されている。
【0010】4は前記蓋部材2に対して挿通配置された粉粒体排出用パイプ(以下「排出パイプ」と称する)であり、一端は蓋部材2の前方に長く伸び、他端は容器本体内に位置している。図2は排出パイプ4の形状の一例を示すが、図に示す如く排出パイプ4のうち容器本体1a内に位置する部分の大半は、その軸心方向に対して半割りされた樋状部4aとなっている。
【0011】次に主として図3を用いて振動フィーダ装置の構成について説明する。
【0012】図3に示す振動フィーダ装置は前述の粉粒体容器を装着するように構成されている。符号10は振動フィーダ装置を示し、符号5はこの装置の基台であってガイドウエイ20に沿って図示しない駆動装置により前進・後退するようになっている。6は基台5上に載置固定されている振動発生部であって、例えば交流電圧を印加することによりこの交流周波数に対応して振動するように構成されている。7は振動発生部に載置固定されている振動部材であって振動発生部6の作動によって振動するように構成されている。またこの振動部材7は粉粒体容器1の着脱が行えるよう、次のような構造を有している。
【0013】先ず振動部材7の先端部(図の左側)には容器固定部材8が振動部材7に対して回動可能に取り付けられている。即ちこの容器固定部材8は中央部分の回動軸8aと、振動部材7を挿通して振動部材7の両側に鉤型に突出位置している一対の鉤部8b、8bと、回動軸8aの中央において鉤部8bとほぼ同じ方向に突出位置している係止部材8cとが一体的に形成されることにより構成されている。また19は回動軸8aに装着された捩じりコイルバネであり、この捩じりコイルばね19により容器固定部材8は常時はX1方向に付勢されている。9は振動部材7に形成された係合溝であってその先端部は開放され、この開放部分に容器固定部材8の係止部材8aが位置するようになっている。一方係合溝9の後端部には突体11が位置し、この突体11の一部を含めて、粉粒体容器1の取付部材3の後端部のくさび状部分と密着係合するようオーバーハングした斜行面9aとなっている。またこの斜行面9aの中央には位置決め板9bが固定されている。12は装置床部側に固定された摺動板であって、振動フィーダ装置が前進・後退することにより前記容器固定部材8の鉤部8aが接触摺動し、またはこの接触摺動が解除されることにより容器固定部材8をX1方向またはY1方向に回動させるためのものである。」

(ウ)「【0021】最初に、振動フィーダ装置10は符号10Aで示す如くガイドウエイ20の最後退位置に位置している。この状態で振動部材7に設けられた容器固定部材8の鉤部8bは摺動板12の下面に接触位置することにより容器固定部材8全体がY1方向に倒れた状態となっている。一方ロータリーストッカ13のドラム14は、排出したい粉粒体を収納した粉粒体容器1が最低部に位置するようモータ21により回転されている。この状態で振動フィーダ装置10はX2方向に向かってて前進を開始する。振動フィーダ装置10の前進によりドラム14から突出位置している粉粒体容器1の取付部材3が振動フィーダ装置10の振動板7に形成された係合溝9内に進入位置し、かつ符号10Bで示す位置に振動フィーダ装置10が至ることにより取付部材3の後端部3cのくさび状部分が係合溝後端の斜行面9aと密着係合する。また係合溝9側の位置決め板9bは取付部材3の位置決め部材用溝3bと係合する。
【0022】一方、取付部材3が係合溝9内に位置した状態で摺動板12と容器固定部材8の鉤部8bとの接触係合が解除され、この結果ねじりコイルばね19の弾発力により容器固定部材8全体がX1方向に回動する。これにより中央の係止部材8cは取付部材3の溝3a内に位置し、取付部材3全体を係合溝9の後端に押圧し、かつ前記位置決め板12と共に取付部材3を振動部材7に対して正確に固定する。この間振動フィーダ装置10は停止することなく更に前進し、この結果振動部材7に固定された粉粒体容器1はドラム14の収納筒16から引き出され、図5の粉粒体排出位置10Cまで前進する。粉粒体排出位置についた振動フィーダ10は振動を開始し容器本体1a内に収納されている粉粒体が排出パイプ4を経て排出される。この場合、排出パイプ4のうち容器本体内に位置する部分を図2に示す如く樋状部4aとしておけば、この樋状部4aが容器内部の粉粒体を攪拌しさらに樋状部4a全体から粉粒体が排出パイプ4に流入するため粉粒体の排出を良好に行うことができる。
【0023】所定量の粉粒体の排出が終了したなば、振動フィーダ装置10はY2方向に向かって後退を開始し、先に粉粒体容器を引き出した収納筒16に対して粉粒体容器1を収納する。粉粒体容器1の収納が完了する時点で振動部材7の容器固定部材8は摺動板12に接触してY1方向に倒れ、係合溝9に対する取付部材3の係合状態が解除される。この状態を保持したまま振動フィーダ装置10は更に後退することにより、粉粒体容器1をドラム14側に戻し、かつ自身は待機位置10Aに至る。次に別の粉粒体を排出する必要があればドラム14を回転させて排出したい粉粒体を収納した粉粒体容器が最低部に位置するようにし、前述の動作を行うことにより粉粒体の排出および粉粒体容器の再収納を行う。この動作を繰り返すことにより所定の粉粒体を順次完全自動で排出する。」

(エ)「図1



(オ)「図3



(カ)「図5



(2)引用例1に記載された発明
上記(1)の摘記事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「容器本体1aと、蓋部材2に対して挿通配置され、一端が蓋部材2の前方に長く伸び、他端は容器本体内に位置している排出パイプ4を有する粉粒体容器1と、
振動フィーダ装置10は粉粒体容器1を装着するように構成され、
振動フィーダ装置10は、ガイドウエイ20に沿って駆動装置により前進・後退する基台5と、基台5上に載置固定されている振動発生部6と、振動発生部6に載置固定され、振動発生部6の作動によって振動し、粉粒体容器1の着脱が行える振動部材7とを備え、
粉粒体排出位置についた振動フィーダ10は振動を開始し容器本体1a内に収納されている粉粒体が排出パイプ4を経て排出され、
所定量の粉粒体の排出が終了したならば、振動フィーダ装置10はY2方向に向かって後退を開始し、先に粉粒体容器を引き出した収納筒16に対して粉粒体容器1を収納する自動粉粒体排出装置。」

(3)引用例2
平成30年10月17日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平1-284372号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「第4図は別の構成を示す。
この構成では振動ユニットの取り付け板13に対して比較的大型の載置台17をを配置する。この載置台17に対しては薬品等の粉粒体を収納する容器18が載置してある。この構成では、振動ユニット1を作動させることにより容器18は矢印の方向に移動し、その端部に配置したベルトコンベヤ19により例えば薬品を落下供給するフィーダの下に運ぶ。またこの載置台上の被移動物は図示の容器の外、ビス、ワッシャ、クリップ等の各種接続部材や小部品等、要するに各種の部材を移動させるようにし、所謂パーツフィーダとして利用することができる。
第5図は更に別の構成を示す。
振動ユニット1及とその上に取り付けたホッパ19は荷重測定装置であるロードセル27上に載置固定されている。このホッパ19の粉粒体排出端下部には第4図に示す容器移動用のパーツフィーダが配置してある。20、21は粉粒体を排出するフィーダ及びパーツフィーダを各々制御する制御装置である。
以上の構成において、先ず制御装置20によりパーツフィーダを作動させる。パーツフィーダの載置台17に載置された所定の容器18の中心位置が、ホッパ19からの粉粒体の落下位置に至ったならば、位置センサ22はその位置を検出して制御装置20に入力する。制御装置20はこの信号により交流電源23のスイッチ24を開として振動ユニット1Aの作動を停止し、前記容器18の移動を停止し、所定の位置に配置する。この移動停止信号は制御装置21に入力され、制御装置21はこの信号により交流電源23の別のスイッチ25を閉とする。これにより粉粒体排出用フィーダの振動ユニット1Bが作動し、ホッパ19に充填した粉粒体26を順次排出する。排出された粉粒体はその真下に位置する容器18内に落下充填される。この粉粒体26の排出量はロードセル27により測定され、その減量分は常時制御装置21に入力される。制御装置21はその減量した量が予め入力してある量に達したならばスイッチ25を開として振動ユニット1Bの作動を停止し、粉粒体の排出を停止する。振動フィーダの作動停止信号は今度は逆に制御装置20に入力され、パーツフィーダを作動させ、次の容器18を所定の位置に移動させる。以上の作業を交互に行うことにより各容器に所定量の粉粒体をそれぞれ充填する。」(3頁左下欄6行?4頁左欄12行)
(イ)「第4図


(ウ)「第5図



(4)本願補正発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「粉粒体容器1」は、引用例1の【0002】を参照すると、薬剤の調合に用いられるものであって、その機能及び構造から、本願補正発明の「薬剤容器」に相当し、同様に、「振動フィーダ装置10」と「ガイドウエイ20」からなる装置は「本体装置」に、「振動部材7」は「振動台」に、「振動発生部6」は「加振手段」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「ガイドウエイ20」は、「自動粉粒体排出装置」に固定されていることは明らかであるから、本願補正発明の「前記本体装置は固定されて」いることに相当する。

(ウ)引用発明の「自動粉粒体排出装置」は、「粉粒体容器1」、「振動フィーダ装置10」及び「ガイドウエイ20」よって構成されているから、本願補正発明の「薬剤容器と、本体装置によって構成される薬剤フィーダ」に相当する。

(エ)引用発明の「粉粒体容器1」が「振動フィーダ装置10」に「装着するように構成され」、「粉粒体容器1」が「一端が蓋部材2の前方に長く伸び、他端は容器本体内に位置している排出パイプ4を有する」ことは、排出パイプ4より薬剤を排出することは明らかであるから、本願補正発明の「前記薬剤容器は、本体装置に対して着脱自在であり、前記薬剤容器には薬剤を排出する薬剤排出部があ」ることに相当する。

(オ)引用発明の「振動フィーダ装置10は、ガイドウエイ20に沿って駆動装置により前進・後退する基台5と、基台5上に載置固定されている振動発生部6と、振動発生部6に載置固定され、振動発生部6の作動によって振動し、粉粒体容器1の着脱が行える振動部材7とを備え」ることは、振動フィーダ装置10が振動部材7と、振動部材7を振動させる振動発生部6を有することであって、粉粒体容器1が振動部材7に着脱が行えることは振動部材7に一時的に粉粒体容器1を装着する手段を有することであるから、本願補正発明の「本体装置は、振動台と、振動台を振動させる加振手段と、振動台に薬剤容器を一時的に固定する容器保持手段と」「を有」することに相当する。

(カ)引用発明の「粉粒体排出位置についた振動フィーダ10は振動を開始し容器本体1a内に収納されている粉粒体が排出パイプ4を経て排出され」ることは、粉粒体排出位置に着くことが、粉粒体容器1が振動部材7上に位置し、振動部材7に粉粒体容器1を装着する手段で固定することであって、薬剤が振動により、排出パイプ4から排出されるから、少量ずつ排出するといえる。
したがって、引用発明の当該記載は、本願補正発明の「薬剤容器を振動台に載置し、容器保持手段で薬剤容器を振動台に固定し、振動台を振動させて前記薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出」することに相当する。

(キ)引用発明の「所定量の粉粒体の排出が終了したならば、振動フィーダ装置10はY2方向に向かって後退を開始し、先に粉粒体容器を引き出した収納筒16に対して粉粒体容器1を収納する」ことは、薬剤を所定量排出後に振動部材7の振動を停止するであるから、引用発明の「粉粒体排出位置についた振動フィーダ10は振動を開始し容器本体1a内に収納されている粉粒体が排出パイプ4を経て排出され、所定量の粉粒体の排出が終了したならば、振動フィーダ装置10はY2方向に向かって後退を開始し、先に粉粒体容器を引き出した収納筒16に対して粉粒体容器1を収納する」ことと、本願補正発明の「振動台を振動させて薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出する際に前記重量測定手段によって薬剤容器の重量を監視し、薬剤容器の現在の重量たる現重量が、薬剤を排出する以前の薬剤容器の重量たる原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に振動台の振動を停止させる計量機能を備えたこと」とは、振動台を振動させて薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出し、薬剤を所定量排出した際に振動台の振動を停止させることの限りで一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「薬剤容器と、本体装置によって構成される薬剤フィーダであって、
前記本体装置は固定されており、
前記薬剤容器は、本体装置に対して着脱自在であり、前記薬剤容器には薬剤を排出する薬剤排出部があり、
本体装置は、振動台と、振動台を振動させる加振手段と、振動台に薬剤容器を一時的に固定する容器保持手段とを有し、
薬剤容器を振動台に載置し、容器保持手段で薬剤容器を振動台に固定し、振動台を振動させて前記薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出し、
振動台を振動させて薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出し、薬剤を所定量排出した際に振動台の振動を停止させる薬剤フィーダ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明では、「薬剤容器の重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段とを有し」、「重量測定手段によって薬剤の排出量を検知することが可能であり」、「振動台を振動させて薬剤排出部から薬剤を少量ずつ排出する際に前記重量測定手段によって薬剤容器の重量を監視し、薬剤容器の現在の重量たる現重量が、薬剤を排出する以前の薬剤容器の重量たる原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に振動台の振動を停止させる計量機能を備え」ているのに対して、引用発明では、振動部材7を振動させて排出パイプ4から薬剤を少量ずつ排出し、薬剤を所定量排出後に振動部材7の振動を停止するものの、重量測定手段を備えているかどうか不明である点。

イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例1の【0002】には、「例えば薬剤の調合や顔料の調合等においては多種類の粉粒体をそれぞれ所定量計量する作業が前提となる。この場合、直進型振動フィーダ(以下単に「振動フィーダ」と称する)と重量測定装置、例えば電子天秤を組み合わせることにより重量測定装置の測定信号によって振動フィーダを制御し、特定の粉粒体を所定量排出するシステムが実働しており、ある程度の自動化が行われている。」と記載されており、重量測定装置、例えば電子天秤を組み合わせることにより重量測定装置の測定信号によって振動フィーダを制御することが示唆されている。
また、引用例2には、振動フィーダにおいて、振動ユニットとその上に取り付けられたホッパを荷重測定装置であるロードセル27上に載置固定し、薬品等の粉粒体の排出量をロードセル27により測定し、減量した量が予め入力してある量に達したならば、振動ユニットを停止すること(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されている。
そして、上記引用例2記載事項と本願補正発明とを対比すると、引用例2記載事項の「振動ユニット」は本願補正発明の「加振手段」と「振動台」からなるユニットに相当し、同様に、「荷重測定装置であるロードセル27」は「重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段」に、「薬品等の粉粒体の排出量をロードセル27により測定」することは「重量測定手段によって薬剤の排出量を検知することが可能であ」ることにそれぞれ相当する。また、引用例2記載事項の「薬品等の粉粒体の排出量をロードセル27により測定し、減量した量が予め入力してある量に達したならば、振動ユニットを停止する」ことと、本願補正発明の「前記重量測定手段によって薬剤容器の重量を監視し、薬剤容器の現在の重量たる現重量が、薬剤を排出する以前の薬剤容器の重量たる原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に振動台の振動を停止させる計量機能を備え」ることとは、重量測定手段によって薬剤の重量を監視し、薬剤の現在の重量たる現重量が、薬剤を排出する以前の薬剤容器の重量たる原重量から目標排出量を引いた値に一致した際あるいは略一致した際に振動台の振動を停止させる計量機能を備えることの限りで一致する。

そうすると、引用発明において、上記引用例1の示唆に従い重量測定装置の測定信号によって振動フィーダを制御することを具体化するために、設計上、引用例2記載事項を適宜用いて、上記相違点に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願補正発明の効果について>
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明並びに引用例1及び引用例2記載事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 請求の主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、「本願発明の特徴的構成たる、「薬剤容器を振動台に載置し、容器保持手段で薬剤容器を振動台に固定」がいずれの引用文献にも開示されていない」旨主張する。
しかし、本願補正発明の記載からは、本願補正発明の「本体装置」は、「振動台」、「加振手段」、「容器保持手段」及び「重量測定手段」とを有するものであるが、これらのみであるとは理解できないし、本願明細書の記載、特に【0065】?【0071】の記載を参照しても、そのように理解できない。そうすると、上記ア(ア)のとおり、引用発明の「振動フィーダ装置10」と「ガイドウエイ20」とからなる装置は、本願補正発明の「本体装置」に相当し、「ガイドウエイ20」は、「振動フィーダ装置10」に固定されていることが明らかである。
また、仮に、引用発明の「振動フィーダ装置10」が本願補正発明の「本体装置」に相当するとしても、本願明細書の【0068】の基礎部材26が防振部材41を介して取り付けられていることを参照すると、本願補正発明1の「前記本体装置は固定されて」いることは、本体装置を薬剤フィーダに直接固定しているものを意味しているとはいえず、本体装置に連結されているものも含む広義の「固定」を意味すると理解される。
そうすると、引用発明の「振動フィーダ装置10」は、「ガイドウエイ20」を介して「自動粉粒体排出装置」に固定されていることが明らかであるから、請求の主張は失当である。
(イ)また、請求人は、「引用文献1では、粉粒体容器と直進型振動フィーダ装置との結合は、機械的な固定であるだけでなく、直進型振動フィーダ装置が接触しているのは蓋部材であり、容器本体は接触していないため、そもそも振動が正しく伝わらない可能性が高いことが容易に考えられる。これに対し、本願発明では、薬剤容器を「載置して固定」しているので、載置という動作によって薬剤容器の底を振動台に対して安定的に接触載置されるものであり、振動台との接触領域が広く、振動台の振動が正確に薬剤容器に伝導される。」と主張する。
しかし、引用例1の【0021】には、「振動フィーダ装置10の前進によりドラム14から突出位置している粉粒体容器1の取付部材3が振動フィーダ装置10の振動板7に形成された係合溝9内に進入位置し、かつ符号10Bで示す位置に振動フィーダ装置10が至ることにより取付部材3の後端部3cのくさび状部分が係合溝後端の斜行面9aと密着係合する。また係合溝9側の位置決め板9bは取付部材3の位置決め部材用溝3bと係合する。」と記載されており、図1及び図3も参照すると、取付部材3の下面の平面が、係合溝9の平面と接触して、粉粒体容器1を固定するものであるから、引用例1に記載されたものも、粉粒体容器1を載置固定しているといえる。

エ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明並びに引用例1及び2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)小括
ゆえに、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年9月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年10月17日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び引用発明については、上記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「3 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例1」?「(3)引用例2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、「本件装置」について、本願補正発明の「固定されて」いるという限定を削除するものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「3 独立特許要件違反についての検討」の「(4)本願補正発明と引用発明の対比・判断」に記載したとおりの引用発明並びに引用例1及び2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明並びに引用例1及び2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。
ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-06-26 
結審通知日 2020-07-02 
審決日 2020-07-14 
出願番号 特願2017-218241(P2017-218241)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 基樹  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 石井 孝明
佐々木 正章
発明の名称 薬剤フィーダ及び薬剤払出し装置  
代理人 藤田 隆  

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