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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1365712
審判番号 不服2019-13788  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-16 
確定日 2020-09-03 
事件の表示 特願2017-198589「火災報知設備の支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 32423〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件特許出願は、平成23年10月19日を出願日とする特願2011-229813号の一部を平成28年4月5日に新たな出願とした特願2016-76200号(特許査定の謄本送達日:平成29年9月12日)の一部を平成29年10月12日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年10月12日 :上申書の提出
平成30年10月25日付け :拒絶理由の通知
平成31年 2月25日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 元年 7月11日付け :拒絶査定
令和 元年10月16日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 令和元年10月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和元年10月16日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正は、平成31年2月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を、以下のとおりの特許請求の範囲(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)に補正するものである。(なお、補正後の特許請求の範囲において付された下線は、拒絶査定不服審判請求時に請求人により付されたものである。)

(補正前の特許請求の範囲)
「【請求項1】
火災受信機と、前記火災受信機から移報されたイベント情報を受信するインターネットに接続されたサーバとを備えた支援システムにおいて、
前記サーバは、
前記火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納され、
前記イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能を有し、
火災が発生すると、前記サーバは、インターネット経由で閲覧されるページのデータを作成し、登録された関係者が携帯するモバイル端末に火災情報有りの通報動作を行い、
前記モバイル端末は、外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし、
火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報を取得することができることを特徴とする火災報知設備の支援システム。」

(補正後の特許請求の範囲)
「【請求項1】
火災受信機と、前記火災受信機から移報されたイベント情報を受信するインターネットに接続されたサーバとを備え、前記イベント情報としての火災情報には、カメラ画像が付加して送信される支援システムであって、
前記サーバは、
前記火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納され、
前記イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能を有し、
火災が発生すると、前記サーバは、インターネット経由で閲覧されるページのデータを作成し、登録された関係者が携帯するモバイル端末に火災情報有りの通報動作を行い、
前記モバイル端末は、外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし、
火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報を取得することができることを特徴とする火災報知設備の支援システム。」


2 補正の適否

本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「イベント情報」の内容について、「イベント情報としての火災情報には、カメラ画像が付加して送信される」旨の限定を付加するものであって、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記「1 本件補正の内容 (補正後の特許請求の範囲)」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

ア 引用文献(特開2002-183864号公報)

原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-183864号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付したものである。)

(ア)「【0008】これらのことから、遠方に居る管理者等に対して、防災情報を正確かつ迅速に報知することのできる、これまでにない新規なシステムを確立することが要望されていた。
【0009】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、防災設備の状況を遠方の管理者等に正確かつ迅速に報知することのできる、防災情報報知システム、防災情報処理装置、情報端末装置、防災情報報知方法、および、記録媒体を提供することを目的としている。」

(イ)「【0057】(防災情報報知の全体の概要)以下、本システムにて行われる防災情報報知の全体の概要について説明し、その後、本システムの構成および処理等について詳細に説明する。図1はこの実施形態にかかる防災情報報知システムの全体構成図である。
【0058】この図1に示すように、本システムは、防災設備の防災情報を報知するためのシステムであり、防災設備1における防災情報を出力する複数の防災監視盤100と、この防災情報を受信する防災情報処理装置としてのサーバ装置200と、この防災情報を報知される被報知者の情報端末装置としての携帯電話300とを備えて構成されている。そして、防災監視盤100とサーバ装置200とは、電話回線400を介して相互に接続されており、サーバ装置200と携帯電話300とは、基地局401、パケット網402に配置されたゲートウェイサーバ装置403、および、インターネット404を介して通信可能に接続されている。」

(ウ)「【図1】



(エ)「【0060】ここで、防災設備1とは、上述した火災報知設備、消火設備、防排煙設備、防犯設備等の全ての防災に関連する設備を含む概念であり、その具体的な構成は任意である。本実施の形態における防災設備1は、以下、複数のマンションの各々に設けられた火災報知設備および消火設備であるものとして説明する。このうち、火災報知設備は、例えば、防災設備機器として、複数の火災感知器および地区音響装置を備えて構成されている。この火災感知器は、公知の原理に基づいて所定の監視範囲における火災発生を感知し、火災発生を感知した際には火災感知信号を出力する。また、防災監視盤100は、この火災感知信号を受信することで、火災表示および火災警報を行うと共に、必要な地区音響装置を鳴動させる作動信号を出力する。また、消火設備は、例えば、防災設備機器として、複数のスプリンクラーヘッドを備えたスプリンクラー設備で構成されている。この消火設備は、設備単独で動作する他、火災報知設備の防災監視盤100からの制御信号によって操作され、その作動時には作動内容に応じた作動信号を出力する。
【0061】また、防災情報とは、防災設備1に関連する全ての情報を含む概念であり、その具体的な内容は任意である。本実施の形態における防災情報は、火災発生に関連する情報である火災情報、制御機器の作動に関連する情報である作動情報、および、機能障害に関連する情報である障害情報、の少なくとも一つを含んで構成されている。」

(オ)「【0065】(システム構成?防災監視盤100)このような特徴を有する本システムの構成について説明する。まず、防災監視盤100の構成について説明する。図2は防災監視盤100の要部構成を示すブロック図である。この図2において、防災監視盤100には、ROM101、RAM102、入出力制御IF(IF=インターフェース)103、および、制御部104が設けられている。
【0066】このうち、ROM101は、防災監視盤100の各部を制御するために必要になるプログラムおよびデータを不揮発的に記憶する記憶手段である。また、RAM102は、防災監視盤100の各部を制御するために必要になるプログラムおよびデータを揮発的に記憶する記憶手段である。また、入出力制御IF103は、防災設備機器との間において各種信号を授受する。なお、防災設備機器から防災監視盤100に対する各種信号の出力に関連する構成および処理は任意であり、一般的な防災設備において移報を行なうために用いられる各種の構成および処理を適用することができる。
【0067】また、制御部104は、防災監視盤100の各部を制御する制御手段であり、防災設備機器から各種の信号を受信すると、この信号の解析を行い、この信号の内容に対応した処理を行う。この処理としては、例えば、表示および警報処理を行うと共に、受信した情報、解析した情報、または、加工した情報からなる防災情報を、入出力制御IF103および電話回線400を介してサーバ装置200に送信する。また、制御部104は、サーバ装置200からの制御信号に基づいて、防災設備機器に対して制御信号を出力する。なお、防災監視盤100からサーバ装置200への防災情報の送信は、防災設備機器からの信号を受信したような場合以外にも、定期的(例えば、数時間毎)に送信しても良いし、あるいは、サーバ装置200から要求があった場合に送信しても良い。」

(カ)「【図2】




(キ)「【0068】(システム構成?サーバ装置200)次に、サーバ装置200の構成について説明する。図3はサーバ装置200の要部構成を示すブロック図である。図3においてサーバ装置200は、概略的に、管理DB(DB=データベース)201、アドレスDB202、アドレス決定DB203、地図DB204、関係者DB205、対処方法DB206、設備DB207、操作内容DB208、WebDB209、通信制御IF(IF=インターフェース)210、および、制御部220を備えて構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。さらに、このサーバ装置200は、ルータ等の図示しない通信装置および専用線を介して、インターネットに通信可能に接続されている。

・・・途中省略・・・

【0072】また、地図DB204は、各火災報知設備または各消火設備に関連する地図情報を格納する地図情報格納手段である。この地図DB204に格納される情報は、図8に例示するように、各火災報知設備または各消火設備の各設備ID、各火災報知設備または各消火設備を含んだ平面図の画面データ、を相互に関連付けて構成されている。また、地図情報として、防災設備1を設置している建物の所在地を示す地図の画面データを格納してもよい。
【0073】また、関係者DB205は、各火災報知設備または各消火設備の関係者に関連する情報を格納する関係者情報格納手段である。この関係者DB205に格納される情報は、図9に例示するように、各設備ID、各関係者の組織名称、各関係者の氏名、各関係者の電話番号、各関係者の電子メールアドレス、を相互に関連付けて構成されている。

・・・途中省略・・・

【0078】また、図3において、制御部220は、当該サーバ装置200の各部を制御する。この制御部は機能概念的に、防災情報受信部221、電子メール生成部222、電子メール送信部223、Webページ生成部224、送信結果解析部225、および、設備制御部226、を備えて構成されている。
【0079】このうち、防災情報受信部221は、防災監視盤100から送信された防災情報を受信する受信手段である。また、電子メール生成部222は、防災情報受信部221によって防災情報が受信された際、当該防災情報を報知するためのWebページのURLを含んだ電子メールであって、アドレスDB202によって格納された電子メールアドレスを宛て先とする電子メールを生成する電子メール生成手段である。また、電子メール送信部223は、電子メール生成部222によって生成された電子メールを、インターネット404を介して送信する電子メール送信手段である。
【0080】また、Webページ生成部224は、防災情報受信部221によって受信された防災情報に基づいて、Webページを生成するWebページ生成手段である。また、送信結果解析部225は、電子メール送信部223による電子メールの送信結果を解析する送信結果解析手段である。また、設備制御部226は、管理者等の操作内容に従って、火災報知設備または消火設備を操作するための制御信号を生成する制御信号生成手段である。なお、これら各部によって行なわれる処理の詳細については、後述する。」

(ク)「【0086】(処理の内容-Webデータ生成等)一方、サーバ装置200の防災情報受信部221は、防災監視盤100からの防災情報の送信の有無を監視している。そして、防災情報を受信した場合には、この防災情報をWebページ生成部224に受け渡す。このWebページ生成部224は、防災情報に基づいて、防災情報の詳細情報を報知するためのWebページを生成する。このWebページ生成部224によるWebページの生成に関連する処理のフローチャートを図13、14に示す。
【0087】具体的には、Webページ生成部224は、まず、防災情報に含まれる設備IDに基づいて管理DB201を参照し、当該設備が設置されているマンションの住所を取得する(ステップSA-1)。また、Webページ生成部224は、防災情報の種別を取得し(ステップSA-2)、防災情報に含まれる発生日時を取得する(ステップSA-3)。
【0088】また、Webページ生成部224は、防災情報に含まれる設備IDに基づいて地図DB204を参照し、当該設備を中心とする所定範囲の平面図の画面データを取得する(ステップSA-4)。そして、Webページ生成部224は、この画面データを表示するための地図情報WebページのWebデータを生成する(ステップSA-5)。

・・・途中省略・・・

【0094】さらに、Webページ生成部224は、このように取得したマンションの住所、防災情報の種別、および、発生日時と、上述のように生成した地図情報Webページ、グラフ表示ページ、関係者一覧表示ページ、対処方法表示ページ、設備詳細表示ページ、および、操作ページのそれぞれを表示するためのハイパーリンクを表示するメニューページのWebデータを生成する(ステップSA-17)。これにてWebデータの生成を終了する。

(ケ)「【0105】このように送信され携帯電話300にて受信された電子メールの表示例を図17に示す。この図17に示すように、電子メールには、防災情報の概要情報として、マンションの住所MA-1、発生日時MA-2、防災情報の種別MA-3、および、上記メニューページのURLMA-4が表示されている。したがって、管理者または保守者は、この電子メールを閲覧することによって、防災情報が発信された旨や、その場所および発生日時を把握することができ、必要に応じて初動対応を取ることができる。
【0106】(処理の内容-Webページの閲覧等)その後、管理者または保守者は、防災情報の詳細情報を知りたい場合には、電子メールに表示されているメニューページのURLMA-4を入力装置340を介して選択する。すると、Webブラウザ311は、このURLを通信制御IFを介して所定の通信規約にて送信し、このURLに基づくルーティングによってサーバ装置200に対するメニューページのWebデータの送信要求を行う。
【0107】一方、サーバ装置200は、携帯電話300からの送信の有無を監視しており、送信を受けると、この送信の内容を解析し、その結果に応じて当該制御部内の各部に処理を移す。送信の内容がWebデータの送信要求である場合には、WebDB209から、当該URLに対応するメニューページのWebデータを取得し、このWebデータを通信制御IF210を介して携帯電話300に送信する。ここで、サーバ装置200から携帯電話300へデータ送信を行う際の当該携帯電話300の特定は、携帯電話300から送信要求と共に送信されたIPアドレスを用いて行うことができる。
【0108】この携帯電話300は、サーバ装置200からのWebデータを通信制御IF370を介して受信し、このデータをWebブラウザ311にて解析することにより、モニタにメニューページを表示する。このメニューページを図18に例示する。この図18に示すようにメニューページには、マンションの住所MB-1、発生日時MB-2、防災情報の種別MB-3、地図情報Webページ、グラフ表示ページ、関係者一覧表示ページ、対処方法表示ページ、および、設備詳細表示ページの各ページへのそれぞれのリンクボタンMB-4?MB-8と、対応する設備に対する操作内容を選択するための操作ページへのリンクボタンMB-9とが表示されている。
【0109】そして、管理者や保守者は、リンクボタンMB-4?MB-9のいずれかを入力装置340を介して選択する(例えば、各リンクボタンMB-4?MB-9に対応する番号を入力する)ことにより、各ページを閲覧することができる。具体的には、管理者や保守者が図18のメニューページにおいてリンクボタンMB-4を選択した場合には、この選択に応じたWebデータの送信要求がサーバ装置200に対して行なわれ、このサーバ装置200から出力された地図情報WebページのWebデータが受信され、地図情報Webページがモニタに表示される。この地図情報Webページには、図19に例示するように、防災情報を送信した当該設備名MC-1と、当該設備の機器MC-2と、その周囲の建屋を含んだ平面図MC-3が表示されている。したがって、管理者または保守者は、地図情報Webページを見ることによって、防災設備1の状況や位置関係等を容易かつ迅速に把握することができる。」

(コ)「【図17】



(サ)「【図18】



(シ)「【図19】



(ス)「【0121】また、上記実施の形態においては、防災情報を受けた際に、Webページの全てを動的生成するものとして説明したが、メニューページ以外のWebページに関しては、携帯電話300からのメニュー選択によるWebデータの送信要求があってから生成しても良い。この場合には、サーバ装置200の負荷が一層低減される。また、防災設備に監視カメラ設備や音声取得設備等を設け、監視カメラ設備によって取得された映像データや音声データ、あるいは、音声取得設備によって取得された音声データを組み込んだWebページを生成し、このWebページを情報端末装置で閲覧等することができるようにしてもよい。」

上記(ア)から(ス)の記載事項から、引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という。)

「防災設備の状況を遠方の管理者等に正確かつ迅速に報知することのできる、防災情報報知システムであって、(【0009】)
防災設備1における防災情報を出力する複数の防災監視盤100と、この防災情報を受信する防災情報処理装置としてのサーバ装置200と、この防災情報を報知される被報知者の情報端末装置としての携帯電話300とを備えて構成されており、
防災監視盤100とサーバ装置200とは、電話回線400を介して相互に接続されており、サーバ装置200と携帯電話300とは、基地局401、パケット網402に配置されたゲートウェイサーバ装置403、および、インターネット404を介して通信可能に接続されており、(【0058】)
前記防災監視盤100が備える制御部104は、防災監視盤100の各部を制御する制御手段であり、防災設備機器から各種の信号を受信すると、表示および警報処理を行うと共に、受信した情報、解析した情報、または、加工した情報からなる防災情報を、入出力制御IF103および電話回線400を介してサーバ装置200に送信し、(【0067】)
前記サーバ装置200は、管理DB(DB=データベース)201、アドレスDB202、アドレス決定DB203、地図DB204、関係者DB205、対処方法DB206、設備DB207、操作内容DB208、WebDB209、通信制御IF(IF=インターフェース)210、および、制御部220を備えており、(【0068】)
前記地図DB204は、各火災報知設備または各消火設備に関連する地図情報を格納する地図情報格納手段であって、この地図DB204に格納される情報は、各火災報知設備または各消火設備の各設備ID、各火災報知設備または各消火設備を含んだ平面図の画面データ、を相互に関連付けて構成されており、(【0072】)
前記制御部220は、防災情報受信部221、電子メール生成部222、電子メール送信部223、Webページ生成部224、送信結果解析部225、および、設備制御部226、を備えており、(【0078】)
前記防災情報受信部221は、防災監視盤100から送信された防災情報を受信する受信手段であり、前記電子メール生成部222は、防災情報受信部221によって防災情報が受信された際、当該防災情報を報知するためのWebページのURLを含んだ電子メールであって、アドレスDB202によって格納された電子メールアドレスを宛て先とする電子メールを生成する電子メール生成手段であり、前記電子メール送信部223は、電子メール生成部222によって生成された電子メールを、インターネット404を介して送信する電子メール送信手段であり、(【0079】)
前記Webページ生成部224は、防災情報受信部221によって受信された防災情報に基づいて、Webページを生成するWebページ生成手段であって、防災情報に含まれる設備IDに基づいて地図DB204を参照し、当該設備を中心とする所定範囲の平面図の画面データを取得し、この画面データを表示するための地図情報WebページのWebデータを生成し、取得したマンションの住所、防災情報の種別、および、発生日時と、生成した地図情報Webページ、グラフ表示ページ、関係者一覧表示ページ、対処方法表示ページ、設備詳細表示ページ、および、操作ページのそれぞれを表示するためのハイパーリンクを表示するメニューページのWebデータを生成し、(【0080】、【0088】、【0094】)
管理者や保守者が携帯電話300のモニタに表示されたメニューページにおいてリンクボタンMB-4を選択した場合には、この選択に応じたWebデータの送信要求がサーバ装置200に対して行なわれ、このサーバ装置200から出力された地図情報WebページのWebデータが受信され、地図情報Webページがモニタに表示され、この地図情報Webページには、防災情報を送信した当該設備名MC-1と、当該設備の機器MC-2と、その周囲の建屋を含んだ平面図MC-3が表示されており、管理者または保守者は、地図情報Webページを見ることによって、防災設備1の状況や位置関係等を容易かつ迅速に把握することができ、(【0108】、【0109】)
また、防災設備に監視カメラ設備や音声取得設備等を設け、監視カメラ設備によって取得された映像データや音声データ、あるいは、音声取得設備によって取得された音声データを組み込んだWebページを生成し、このWebページを情報端末装置で閲覧等することができるようにしてもよい、(【0121】)
防災情報報知システム。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比

(3-1)『火災受信機』について

本件補正発明に係る『火災受信機』は、本件特許出願の明細書の【0010】に記載されているように、「火災受信機REは、詳細に説明しない自火報設備(自動火災報知設備)の全体を監視制御するセンタ装置」である。
一方、引用発明の「防災監視盤100」は、「防災監視盤100が備える制御部104は、防災監視盤100の各部を制御する制御手段であり、防災設備機器から各種の信号を受信すると、表示および警報処理を行うと共に、受信した情報、解析した情報、または、加工した情報からなる防災情報を、入出力制御IF103および電話回線400を介してサーバ装置200に送信」するものであり、前記「防災設備機器」は、引用文献の【0060】の記載を参照すれば、本件特許出願の明細書に記載されている「自火報設備(自動火災報知設備)」に対応するものである。
してみると、前記「防災監視盤100」は、防災設備機器の全体を監視制御する機能を担っているものといえるから、本件補正発明の『火災受信機』に相当する。

(3-2)『火災受信機から移報されたイベント情報を受信するインターネットに接続されたサーバ』について

引用発明の「サーバ装置200」は、「防災監視盤100と電話回線400を介して相互に接続されており、サーバ装置200と携帯電話300とは、基地局401、パケット網402に配置されたゲートウェイサーバ装置403、および、インターネット404を介して通信可能に接続される」ものであり、「サーバ装置200」は、「インターネット404」に接続されているものである。
また、「サーバ装置200」の「制御部220」は、防災監視盤100から送信された防災情報を受信する受信手段である「防災情報受信部221」を備えており、前記「防災情報」は、本件補正発明でいう『イベント情報』に対応するものであることは明らかである。
してみると、前記「サーバ装置200」は、本件補正発明でいう『火災受信機から移報されたイベント情報を受信するインターネットに接続されたサーバ』に相当する。

なお、本件補正発明に係る『サーバ』については、本件特許出願の明細書に「なお、この実施の形態の構成として、外部サーバSV1につき、インターネットIT経由で、いわゆるレンタルサーバのような系統で構成したが、情報サーバとして、火災受信機REが設置される防災センタ等にあってもよく、図1のシステム内の通信PCを兼用してもよい。」(【0013】)と記載されていることを踏まえると、引用発明の「サーバ装置200」と本件補正発明に係る『サーバ』とを上述のように対応付けることを阻害する特別な事情はない。

(3-3)『(サーバは、)火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納され、』について

引用発明の「サーバ装置200」は、「地図DB204」を備えており、当該「地図DB204」に格納される情報は、「各火災報知設備または各消火設備の各設備ID、各火災報知設備または各消火設備を含んだ平面図の画面データ、を相互に関連付けて構成され」ており、当該「地図DB204」を参照して生成した「地図情報Webページ」には、「防災情報を送信した当該設備名MC-1と、当該設備の機器MC-2と、その周囲の建屋を含んだ平面図MC-3が表示される」のであるから、前記「地図DB204」には、本件特許発明でいう『火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納されて』いるといえる。
してみると、引用発明の「サーバ装置200」は、本件補正発明でいう『火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納され、』との構成を備えている。

(3-4)『(サーバは、)イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能を有し、』について

引用発明の「サーバ装置200」の「制御部220」は、防災情報受信部221によって受信された防災情報に基づいて、Webページを生成するWebページ生成手段である「Webページ生成部224」を備えており、当該「Webページ」は、本件補正発明でいう『閲覧ページ』に対応するものであることは明らかであるから、前記「Webページ生成部224」は、本件補正発明でいう『イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能』を備えているといえる。
してみると、引用発明の「サーバ装置200」は、本件補正発明でいう『イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能を有し、』との構成を備えている。

(3-5)『火災が発生すると、前記サーバは、インターネット経由で閲覧されるページのデータを作成し、登録された関係者が携帯するモバイル端末に火災情報有りの通報動作を行い、』について

引用発明の「サーバ装置200」の「制御部220」は、防災情報受信部221によって防災情報が受信された際、当該防災情報を報知するためのWebページのURLを含んだ電子メールであって、アドレスDB202によって格納された電子メールアドレスを宛て先とする電子メールを生成する電子メール生成手段である「電子メール生成部222」、及び、当該電子メール生成部222によって生成された電子メールを、インターネット404を介して送信する電子メール送信手段である「電子メール送信部223」を備えており、前記「電子メール」を「送信」することは、本件補正発明でいう『火災情報有りの通報動作を行う』に対応することは明らかである。そして、当該「電子メール」の宛先である「アドレスDB202によって格納された電子メールアドレス」は、本件補正発明でいう『登録された関係者が携帯するモバイル端末』のものであることも明らかである。
してみると、前記(3-4)で言及した事項を併せみると、引用発明の「サーバ装置200」は、本件補正発明でいう『火災が発生すると、前記サーバは、インターネット経由で閲覧されるページのデータを作成し、登録された関係者が携帯するモバイル端末に火災情報有りの通報動作を行い、』との構成を備えている。

(3-6)『モバイル端末は、外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし、火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報を取得することができる』について

引用発明においては、「管理者や保守者が携帯電話300のモニタに表示されたメニューページにおいてリンクボタンMB-4を選択した場合には、この選択に応じたWebデータの送信要求がサーバ装置200に対して行なわれ、このサーバ装置200から出力された地図情報WebページのWebデータが受信され、地図情報Webページがモニタに表示され、この地図情報Webページには、防災情報を送信した当該設備名MC-1と、当該設備の機器MC-2と、その周囲の建屋を含んだ平面図MC-3が表示されており、管理者または保守者は、地図情報Webページを見ることによって、防災設備1の状況や位置関係等を容易かつ迅速に把握することができる」のであり、前記「携帯電話300」は、本件補正発明でいう『モバイル端末』に相当し、そして、前記「管理者や保守者が携帯電話300のモニタに表示されたメニューページにおいてリンクボタンMB-4を選択した場合には、この選択に応じたWebデータの送信要求がサーバ装置200に対して行なわれ、」との事項は、本件補正発明でいう『外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし』に相当する。
さらに、前記「防災情報を送信した当該設備名MC-1と、当該設備の機器MC-2と、その周囲の建屋を含んだ平面図MC-3」は本件補正発明でいう『火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報』に相当する。
してみると、引用発明の「携帯電話300」は、本件補正発明でいう『モバイル端末は、外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし、火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報を取得することができる』との構成を備えている。

(3-7)『火災報知設備の支援システム』について

引用発明の「防災情報報知システム」は、「防災設備の状況を遠方の管理者等に正確かつ迅速に報知すること」を目的とするものであり、前記「防災設備」は、引用文献の【0060】の記載によれば、火災報知の設備を含む概念であるから、本件補正発明でいう『火災報知設備』に対応することは明らかである。そして、「防災設備の状況を遠方の管理者等に正確かつ迅速に報知すること」は、管理者等に対する「支援」といえる行為である。
してみると、引用発明の「防災情報報知システム」は、本件補正発明でいう『火災報知設備の支援システム』といえる。

(4)一致点及び相違点

上記(3)で検討した事項を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、

「火災受信機と、前記火災受信機から移報されたイベント情報を受信するインターネットに接続されたサーバとを備えた支援システムにおいて、
前記サーバは、
前記火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納され、
前記イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能を有し、
火災が発生すると、前記サーバは、インターネット経由で閲覧されるページのデータを作成し、登録された関係者が携帯するモバイル端末に火災情報有りの通報動作を行い、
前記モバイル端末は、外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし、
火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報を取得することができることを特徴とする火災報知設備の支援システム。 」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本件補正発明においては、火災受信機からサーバへ移報するイベント情報について、『前記イベント情報としての火災情報には、カメラ画像が付加して送信される』との事項が特定されているのに対し、引用発明においては、「防災設備に監視カメラ設備や音声取得設備等を設け、監視カメラ設備によって取得された映像データや音声データ、あるいは、音声取得設備によって取得された音声データを組み込んだWebページを生成し、このWebページを情報端末装置で閲覧等することができるようにしてもよい」とされており、情報端末装置で監視カメラ設備によって取得された映像データをWebページとして閲覧できることが特定されているものの、監視カメラ設備によって取得された映像データが防災監視盤100からサーバ装置200へ防災情報に付加して送信されているとの明示的な記載がない点。

(5)判断
引用発明は、「防災設備に監視カメラ設備や音声取得設備等を設け、監視カメラ設備によって取得された映像データや音声データ、あるいは、音声取得設備によって取得された音声データを組み込んだWebページを生成し、このWebページを情報端末装置で閲覧等することができるようにしてもよい」ものである。
ここで、前記「Webページ」を生成する主体は、サーバ装置200の制御部220が備えるWebページ生成部224であり、「監視カメラ設備によって取得された映像データや音声データを組み込んだWebページ」を生成するためには、防災設備に設けられた監視カメラ設備によって取得された映像データを防災監視盤100を介してサーバ装置200が受信する必要があることは当業者にとっては自明である。
してみると、引用発明において、防災設備に設けられた監視カメラ設備によって取得された映像データを防災情報に付加して防災監視盤100を介してサーバ装置200へ送信するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。

したがって、本件補正発明は、引用発明に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

令和元年10月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、平成31年2月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】
火災受信機と、前記火災受信機から移報されたイベント情報を受信するインターネットに接続されたサーバとを備えた支援システムにおいて、
前記サーバは、
前記火災受信機が設置される防火対象物となる建物の設備図面データが格納され、
前記イベント情報に基づいて閲覧ページを自動作成するページ作成機能を有し、
火災が発生すると、前記サーバは、インターネット経由で閲覧されるページのデータを作成し、登録された関係者が携帯するモバイル端末に火災情報有りの通報動作を行い、
前記モバイル端末は、外部から前記インターネットを介してサーバにアクセスし、
火災を検出した火災感知器を特定できるように火災情報を反映した火災発生場所を示す地図情報を取得することができることを特徴とする火災報知設備の支援システム。」


2 原査定の拒絶の理由

拒絶査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

「請求項1に記載された発明は、引用文献1に記載された発明である、又は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者であれば容易になし得た発明であるから、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2002-183864号公報 」


3 引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記「第2の[理由]2(2)」に記載したとおりである。


4 対比・判断

本願発明は、前記「第2の[理由]2」で検討した本件補正発明から、「イベント情報としての火災情報には、カメラ画像が付加して送信される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、前記「第2の[理由]2(2)、(3)、(4)」に記載したとおり、本願発明と引用発明との間には相違する点がない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明(前記「第2の[理由]2(2)で認定した引用発明」)と同一のものと認められる。


第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-06-23 
結審通知日 2020-06-30 
審決日 2020-07-14 
出願番号 特願2017-198589(P2017-198589)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 佐藤 智康
谷岡 佳彦
発明の名称 火災報知設備の支援システム  

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