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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A42B
管理番号 1365715
審判番号 不服2019-15794  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-25 
確定日 2020-09-03 
事件の表示 特願2014-160370「ヘルメット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月22日出願公開、特開2016- 37671〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月6日の出願であって、平成30年6月7日付けで拒絶理由が通知され、平成30年8月7日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月29日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月1日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月1日付けで拒絶査定がされた。これに対して、令和元年11月25日に本件拒絶査定不服審判が請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和元年11月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年11月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
本件補正前の請求項1に
「作業員に装着されるヘルメットであって、
前記作業員の状態を感知する状態センサーと、
前記状態センサーから出力される状態データを、前記作業員に携帯される多機能携帯端末に無線送信する送信部と、を備え、
前記状態データが、前記多機能携帯端末を介して、管理サーバーに送信され、
受信部、及び、音声出力の報知部を備え、
前記状態センサーは、前記作業員の健康状態を感知するセンサーであり、
前記管理サーバーが、前記作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断し、健康異常の発生を示す異常データを前記多機能携帯端末に送信した場合、
前記異常データが前記多機能携帯端末から前記受信部に無線送信され、前記報知部が、健康異常の発生を報知すること、
を特徴とするヘルメット。」
とあるのを、
「建設工事現場の作業員に装着されるヘルメットであって、
前記作業員の状態を感知する状態センサーと、
前記状態センサーから出力される状態データを、前記作業員に携帯される多機能携帯端末に無線送信する送信部と、を備え、
前記状態データが、前記多機能携帯端末を介して、管理サーバーに送信され、
受信部、及び、音声出力の報知部(ただし、拡張現実感ビューを除く。)を備え、
前記状態センサーは、前記作業員の健康状態を感知するセンサーであり、
前記管理サーバーが、前記作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断し、健康異常の発生を示す異常データを前記多機能携帯端末に送信した場合、
前記異常データが前記多機能携帯端末から前記受信部に無線送信され、前記報知部が、健康異常の発生を報知すること、
を特徴とするヘルメット。」
と、補正する。

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「作業員」について「建設工事現場の作業員」であることの限定を付加するもの、及び「報知部」について「拡張現実感ビューを除く」ことの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりの本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載のものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、.国際公開第2013/006642号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(引用文献1に対応する公表特許公報である特表2014-523041号公報を日本語訳として以下に示す。「・・・」は省略を意味する。また、下線は当審で付与した。)。
ア 「【請求項1】
従業員が職務に従事しているときに健康情報のフィードバックを前記従業員に提供するためのシステムであって、
前記従業員が職務に従事しているときに前記従業員上または前記従業員の近くに設けられるように構成された1つ以上の健康センサの組であって、当該1つ以上の健康センサが、前記従業員のバイオメトリック特性を検知するように構成されたバイオメトリックセンサおよび前記従業員のバイオメカニック特性を検知するように構成されたバイオメカニックセンサの少なくとも1つを備え、当該1つ以上の健康センサの組によって検知されたバイオメトリック特性およびバイオメカニック特性の少なくとも一つに対応する健康データを出力するように構成される、1つ以上の健康センサの組と、
周囲の環境の実世界のビューと、前記周囲の環境の前記実世界のビュー上に重ねられた前記従業員についての健康状況情報とを備える拡張現実感ビューを前記従業員に提供するように構成された拡張現実感表示と、
拡張現実感プロセッサであって、
前記1つ以上の健康センサによって出力された前記健康データを受信し、
前記従業員についての前記健康状況情報を識別するために受信された前記健康データを処理し、
前記従業員が職務に従事しているときに前記従業員上または前記従業員の近くに設けられるように構成された前記1つ以上の健康センサの組によって収集された前記健康データの少なくとも一部に基づいて、前記従業員についての前記健康状況情報の重ね合わせを有する前記周囲の環境の前記実世界のビューを備える拡張現実感ビューが前記従業員に提供されるように、前記周囲の環境の前記実世界のビュー上に重ねられるべき前記従業員についての前記健康状況情報を備える拡張現実感コンテンツを、前記拡張現実感表示で表示するために提供するように構成された、拡張現実感プロセッサと、を備える、システム。
・・・
【請求項5】
前記従業員についての前記健康状況情報を識別するために受信された前記健康データを処理することは、
前記従業員によって取られるべき行動を予測するために、前記健康データを処理することと、
前記従業員によって取られる前記予測された行動の少なくとも一部に基づいて、予測された結果を判断することと、を含み、
前記従業員によって取られる前記予測された行動の少なくとも一部に基づいて、前記予測された結果の重ね合わせを備える前記周囲の環境の前記実世界のビューを、前記従業員に提供するように、前記拡張現実感コンテンツは、前記予測された結果を備え、前記予測された結果は、前記従業員が前記予測された行動を実際に取る前に、前記従業員に表示されるように構成される、請求項1?4 のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記健康センサの少なくとも1つは、前記従業員の脳活動を検知するように構成された神経センサを備え、前記従業員によって取られるべき行動を予測するために前記健康データを処理することは、前記従業員の前記脳活動の少なくとも一部に基づいて前記行動を予測することを含む、請求項5に記載のシステム。
・・・
【請求項8】
前記拡張現実感表示は、前記従業員によって装着された安全ヘルメット内に備えられたヘッドアップ表示であって、前記従業員が職務に従事しているときに、前記従業員によって見ることができるように構成されたヘッドアップ表示を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載のシステム。」

イ 「【0002】
本発明は、概して、健康の監視に関し、より具体的には、健康情報を従業員に提供するためのシステム、機械、非一過性コンピュータ媒体の上に格納されたコンピュータプログラム命令を有する非一過性コンピュータ媒体、およびコンピュータにより実行される方法に関する。」

ウ 「【0043】
一定の実施形態では、表示される健康情報は、1つ以上の健康概要(例えば、従業員についての健康特性、症状、危険性および/または同様のことのリスト)および/または1つ以上の健康警告( 例えば、注意が必要とされ得る健康特性、症状、危険性および/または同様のことを従業員に警告するように意図されたメッセージもしくはグラフィック)を含む。いくつかの実施形態では、健康警告は、従業員に従業員の健康を改善する行動を取ることおよび/ または従業員の健康に悪影響を及ぼし得る行動をやめさせることを促進する情報を含む。一定の実施形態では、健康警告は、従業員によって取られた行動および/または従業員によって取られることを予想される予測された行動への潜在的な結果をリスト化し得る。いくつかの実施形態では、健康警告は、従業員の健康を改善するための指導/提案を提供し得る(例えば、代替の行動を提案する)。それ故、いくつかの実施形態は、従業員が、彼らの健康に悪影響を及ぼし得る行動に従事することを阻止するのに役に立ち得る。

エ 「【0052】
いくつかの実施形態では、拡張現実感(AR)表示106は、コンピュータによって生成された知覚入力、例えば音データ、動画データ、グラフィックデータまたは同様のものなどによって、拡張された要素を有する物理的な実世界の環境のビューを提供する。そのような表示は、ユーザが、追加的にコンピュータによって生成された知覚入力を見ることと組み合わせて同時に実世界を見ることを可能にし得る。いくつかの実施形態では、拡張現実感AR表示106は、実世界のユーザのビュー上に情報をオーバーレイすることを提供する。例えば、ユーザに有用であり得るデータは、ユーザが実世界を見る間にデータを同時に見ることができるように、ユーザの視野の上にオーバーレイされ得る。」

オ 「【0080】
いくつかの実施形態では、拡張現実感(AR)表示インターフェース経由の健康データの収集、健康データの処理、および/または健康情報の表示の提供は、従業員健康監視システムとの関連において提供され得る。例えば、健康データは、従業員上または従業員の近くに位置する(例えば、従業員によって装着された、従業員によって所持されたモバイルデバイス内に集積された、および/または従業員のワークステーションに位置する)センサから健康データを収集するように構成されたモバイルデバイスおよび/またはコンピュータワークステーションから収集され得、健康データは、従業員についての健康情報を生成するよう処理するために健康サーバに転送され得、サーバは、従業員が健康情報のヘッドアップ表示を提供されるように、AR表示デバイス(例えば、従業員によって装着された眼鏡、安全ゴーグル/眼鏡、透明安全シールドおよび/または同様のもの)経由で従業員に表示するために(例えば、健康状況概要、健康警告、または同様のものを含む)健康情報コンテンツを供給し得る。」

カ 「【0082】
図6は、本発明の1つ以上の実施形態に従って従業員健康監視システム(「システム」)6 00を例示する。描写されるように、システム600は、1つ以上のモバイル従業員健康監視システム(「モバイル健康監視システム」)602、ワークステーション603(例えば、1つ以上の従業員ワークステーション603aおよび雇用主ワークステーション603 b) 、健康サーバ(「サーバ」)604、(例えば、1人以上の従業員についての健康情報6 09(例えば、個人プロファイル情報、健康プロファイル情報、行動、結果、および/または同様のもの)を格納する)データストア608に結合されるファイルサーバ606、および1つ以上の遠隔ワークステーション612に接続されるウェブサーバ610を含み得る。いくつかの実施形態では、モバイル従業員健康監視システム602は、1つ以上の健康センサ102( 例えば、モバイル健康センサ102a) および1つ以上の従業員モバイルデバイス(「モバイルデバイス」)622を含み得る。いくつかの実施形態では、従業員ワークステーション603aは、1 つ以上の健康センサ102(例えば、ワークステーション健康センサ102b) および1つ以上の従業員コンピュータ(「従業員コンピュータ」)630 を含み得る。いくつかの実施形態では、ワークステーション603a、603bおよび61 2は、ネットワーク化されたコンピュータまたは類似のネットワークアクセス端末を含み得る。いくつかの実施形態では、システム600のエンティティは、ネットワーク618経由で通信可能に結合され得る。」

キ 「【0085】
以下により詳細に記載されるように、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、従業員の健康を監視する際に使用するための従業員健康データを収集するために使われるデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、1つ以上の健康センサ102からの測定値を収集し得る。例えば、モバイルデバイス622は、1つ以上のモバイル健康センサ102aからの測定値を収集し得、および/または従業員コンピュータ630は、1つ以上のワークステーション健康センサ102bからの測定値を収集し得る。モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、従業員の健康を監視する際に使用するために検知された測定値に対応する健康データを健康サーバ604に転送し得る。例えば、サーバ604は、センサ102、モバイルデバイス622および/ または従業員コンピュータ630経由で収集された健康データを用いて従業員110についての健康プロファイル(例えば、従業員についての健康特性、症状、危険性、計画、および/ または同様のもの)を生成し得る。いくつかの実施形態では、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、従業員についての健康プロファイルに関する情報を表示するために使われ得る。例えば、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、従業員が、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630経由で彼らの健康に関するフィードバックを受信し得るように、従業員についての健康プロファイル情報のいくつかまたは全てを含む健康レポートを表示し得る。そのようなシステム600は、従業員の健康を彼らが働いている間または様々な職場環境間を移動する間に監視することを提供し得る。例えば、システム600は、従業員が現地で(例えば、油およびガス生産プラットフォーム、製造プラント、精製所、建設現場、および/または同様のところなどの職場で) 働いている間に、彼らがワークステーション(例えば、従業員のオフィス、小部屋、アセンブリ/製造ライン上の割当ステーション、または同様のところ)に位置しているとき、および/または彼らが移動している(例えば、職場間を移動している、配達用トラックを運転している、および/または同様のことをしているときに、健康データの収集を可能にし得る。それ故、例えば、従業員がワークステーション603aに位置している間に、健康センサ102b経由で収集された健康データは、従業員の健康を監視するために使用され得、従業員がワークステーション603aに位置していない(例えば、遠隔の職場に移動しているか遠隔の職場で働いている)間に、モバイル健康監視システム602の健康センサ102a経由で収集された健康データは、従業員の健康を監視するために使用され得る。いくつかの実施形態は、センサ102、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630経由で収集された健康データに基づく健康プロファイルに関して記載されたが、他の実施形態は、当業者によって理解されるであろうように、任意の様々なソースから収集された健康データに基づく健康プロファイルを含み得る。」

ク 「【0088】
図7Aおよび図7Bは、本発明の1つ以上の実施形態に従ってネットワーク618経由でサーバ604にそれぞれ接続されるモバイル健康監視システム602およびワークステーション603aを例示するブロック図である。いくつかの実施形態では、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、従業員健康データ700を収集するためにセンサ102aおよび/または102bの1つ以上に通信可能に結合される。例えば、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630は、1つ以上の温度センサ(例えば、熱電対、赤外線(「IR」)センサなど)702、1つ以上の血液状態センサ(例えば、パルスオキシメーター)704 、1つ以上の血圧センサ(例えば、血圧測定用カフ)706、1つ以上の力センサ(例えば、力変換器)708、1つ以上の体脂肪センサ(例えば、導電接触子)710、1つ以上の身体の位置センサ(例えば、3次元(「3 D」)画像/ 動画カメラ)712、1つ以上の音声センサ(例えば、マイクロフォン)714、1つ以上の呼吸センサ716、1つ以上の神経センサ718、1つ以上の心拍数センサ720(例えば、心拍数モニタ)および/または同様のものに、対応する健康データ700(例えば、健康測定値)をそこから収集するために、通信可能に結合され得る。いくつかの実施形態では、健康データ700は、対応するセンサ102aおよび/または102bから収集された温度データ700a、血液状態データ700b、血圧データ700c、力データ700d、体脂肪データ700e、身体の位置データ700f、音声データ700g、呼吸データ700h 、神経データ700iおよび/ または心拍数データ700jを含み得る。測定に対応する健康データ700は、従業員の健康を監視する際に使用するためにサーバ604に提供され得る。」

ケ 「【0121】
いくつかの実施形態では、1つ以上の神経センサ718は、従業員の頭/頭皮の辺りに配置される。いくつかの実施形態では、安全ヘルメット1024は、その中に集積された(例えば、従業員がヘルメット1024を装着している間に従業員の頭に接触するようにヘルメット1024の内部に結合された)複数の神経センサ718(例えば、16個の神経センサ718)を含む。ヘルメット1024は、ヘルメット1024が従業員によって装着されている間に従業員の頭の辺りの離散的な神経センサの場所において神経センサ718の位置付けをもたらし得る。他の実施形態は、任意の数の適切な場所に設けられた任意の数の神経センサセンサを含み得る。」

コ 「【0154】
いくつかの実施形態では、健康特性1502は、収集された健康データ700から導出される第1のレベルの健康プロファイルデータを含む。例えば、サーバ604は、従業員の種々のバイオメトリック健康特性1502aおよび/またはバイオメカニック健康特性1502bを識別するために、収集された健康データ700(例えば、バイオメトリック健康データおよび/またはバイオメトリック健康データ)を処理し得る。バイオメトリック健康特性1502aは、例えば、従業員の検知された体温1510、体重1511、体脂肪1512、心拍数1513、血圧1514、血液状態(例えば、血液酸素化、血糖値など)1515、呼吸数1516、神経/脳活動1517、および/または同様のものを含み得る。バイオメカニック健康特性1502bは、例えば、従業員の検知された身体の位置1520(例えば、従業員の頭、胴、腕、手、脚、足、および/もしくは同様のものの従業員の物理的位置決めおよび/もしくは運動)、目の動き(例えば、焦点、瞬目率、目の瞳孔拡張、および/もしくは同様のもの)1521、神経/脳活動1517、身体労作1522、ならびに/または同様のものを含み得る。」

サ 「【0162】
いくつかの実施形態では、脳活動1517は、1つ以上の神経センサ718によって収集される神経データ700iに基づく。いくつかの実施形態では、脳活動1517は、従業員の感情状態、考え(例えば、認知的考え、潜在意識的考え、および意図)、顔面運動(例えば、顔面表情)、運動機能、ならびに/または同様のものを含む、従業員の脳の状況を示す神経信号(例えば、アルファ波、ベータ波、ガンマ波、およびデルタ波を含む)のログを含む。脳活動1517は、神経データ700iを含み得るか、またはそうでなければそれから推定され得る。脳活動1517は、少なくとも、様々なバイオメトリックおよびバイオメカニック健康プロファイルデータ(例えば、様々なバイオメトリックおよびバイオメカニックな状態および危険性)を判断することにおけるその使用に基づく、バイオメトリック特性およびバイオメカニック特性の両方であり得る。」

シ 「【0172】
いくつかの実施形態では、従業員の感情1536、考え1537、顔面運動1545、および/または運動機能1546は、検知された神経信号(例えば、脳活動1517)に基づいて判断され得る。例えば、複数の所定の脳波パターンを、対応する感情、考え、顔面運動、および/または運動機能と関連付けることができる。脳活動1517の処理の間、検知/観測された神経信号を、複数の所定の神経信号パターンと比較して、その間の一致を識別することができる。観測された神経信号と所定の神経信号パターンの1つ以上とが一致すると、従業員は、一致する所定の神経信号パターンに対応する感情(例えば、楽しい、悲しい、興奮している、落ち込んでいるなど)1536、考え(例えば、ある行動をとろうという意図など)1537、顔面運動(例えば、微笑みなどの顔のしぐさ)1545、および/または運動機能(例えば、動きの流れ)1546の状態にあると判断され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したように、アニメーション化されたアバターが、従業員の現在の感情および/または顔面のしぐさを模倣するために使用され得る。例えば、従業員が楽しいおよび/または微笑んでいると判断された場合、表示されるアバターは、笑顔を含むようにアニメーション化され、従業員または従業員の健康を確認する他の人物(例えば、雇用主)に、従業員の現在の感情状態および/または顔面表情の表示を提供し得る。いくつかの実施形態では、従業員の考えを判断する能力を用いて、従業員が業務を遂行することを助けることができる。例えば、システム600は、従業員がモバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630上で文書処理アプリケーションを開くつもりであると判断し得、システム600は、従業員よる物理的対話を全く必要とすることなく、行動しようというその判断された意図に基づいて、モバイルデバイス622および/または従業員コンピュータ630上の文書処理アプリケーションを開始し得る。いくつかの実施形態では、脳活動1517および/または考え1537は、従業員によって取られ得る行動を予測するために使用され得る。例えば、従業員が「重い箱を持ち上げる」という考えを有する場合、従業員が重い箱を持ち上げようとしていることが判断され得る。」

ス 「【0177】
バイオメトリックおよび/またはバイオメカニック健康特性1502および/または健康状態1504を使用して、対応する健康の危険性1506を識別することができる。健康の危険性1506は、健康状態1504、健康特性1502、および/または収集された健康データ700のうちの1つ以上から導出される、第3のレベルの健康プロファイルデータを含み得る。例えば、サーバ604は、健康状態1504、健康特性1502、および/または収集された健康データ700を処理して、従業員の種々のバイオメトリック健康の危険性1506aおよび/またはバイオメカニック健康の危険性1506b(すなわち、関連する健康状態を発症する危険性)を推定することができる。バイオメトリックな健康の危険性1506aは、例えば、肥満1550の危険性、損傷1551の危険性、糖尿病1552の危険性、感染症1553の危険性、炎症1554の危険性、循環問題1555の危険性、心血管疾患1556の危険性、心血管発作(例えば、卒中)1557の危険性、疾病(例えば、インフルエンザ)1558の危険性、喘息1559を発症する危険性、アレルギー1560を発症する危険性、気管支炎1561を発症する危険性、鬱病1562を経験する危険性、および/または同様のものを含み得る。バイオメカニックな健康の危険性1506bは、例えば、背中の損傷1563(例えば、上/下の背中の痛み)の危険性、首の損傷1564の危険性、筋骨格症候群(「MSD」)1565の危険性、手根管症候群(「CTS」)1566の危険性、上顆炎(すなわち、テニス/ゴルフ肘)1567の危険性、回旋けん板損傷1568の危険性、眼疾患1569の危険性、身体疲労の危険性、および/または同様のものを含み得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、健康の危険性は、1つ以上の健康状態1504 、健康特性1302、および/または他のデータ(例えば、従業員の個人プロファイル)に基づいて判定することができる。例えば、肥満1550、損傷1551、糖尿病1552、および心血管疾患の危険性は、BMI1530および/または身体組成1531に基づき得る。感染症1553、炎症1554、および循環問題1555の危険性は、体温1510に基づき得る。心血管疾患1556、心血管発作1557、および肥満1550の危険性は、健康レベル1532、血圧1514、および心拍数1513に基づき得る。疾病1558、喘息1559、アレルギー1560、および気管支炎1551の危険性は、呼吸数1516に基づき得る。鬱病1562の危険性は、従業員の感情1536および考え1537に基づき得る。背中の損傷1563、首の損傷1564、金骨格症候群(MSD)1565、手根管症候群(CTS)1566、上顆炎1567、回旋けん板損傷1568、および/または身体疲労1570の危険性は、従業員の身体の位置1520、身体労作1522、姿勢1540、筋肉緊張1541、損傷1543、運動機能1546、および/または同様のものに基づき得る。」

セ 「【0193】
いくつかの実施形態では、健康情報は、拡張現実感表示によって従業員に提供される。例えば、サーバ604は、拡張現実感プロセッサ104に関して上記したものに類似する機能を提供し得る。いくつかの実施形態では、サーバは、健康センサ102から健康データ700を収集し、(例えば、従業員によって取られる行動を識別するために、従業員によって取られ得る行動を予測するために、行動の健康上の結果を識別するために、および/または同様のことのために、従業員についての健康プロファイル1500を含む)健康情報を生成するために収集された健康データ700を処理し、表示のために健康コンテンツ(例えば、健康情報に基づく健康状況概要、健康警告など)を従業員に拡張現実感表示デバイス106経由で供給する。
【0194】
図17は、本技法の1つ以上の実施形態に従って拡張現実感(AR)表示デバイス経由で健康情報を表示するための方法1700を例示するフローチャートである。方法1700は、ブロック1702に描写されるように、健康データを収集することを含み得る。健康データを収集することは、方法1400のブロック1402(図14を見よ)に関して記載したものと同じであり得るか類似し得る。例えば、健康データを収集することは、サーバ604が、様々なセンサ102によって(例えば、モバイル健康監視システム102のモバイルセンサ102aおよび/またはモバイルデバイス622ならびに/あるいはワークステーション103aのワークステーションセンサ102bおよび/または従業員コンピュータ630によって)、従業員についての健康データ700(例えば、温度データ700a 、血液状態データ700b、血圧データ700c 、力データ700d、体脂肪データ700e、身体の位置データ700f、音声データ700g、呼吸データ700h、神経データ700iおよび/ または心拍数データ700j)を収集することを含み得る。」

ソ 「【図3C】



タ 「【図7A】



チ 「【図10】




ツ 「【図15】



上記【0154】の「健康特性1502は、収集された健康データ700から導出される第1のレベルの健康プロファイルデータを含む。」「バイオメカニック健康特性1502bは、例えば、・・・、神経/ 脳活動1517、身体労作1522、ならびに/または同様のものを含み得る。」、【0162】の「脳活動1517は、1つ以上の神経センサ718によって収集される神経データ700iに基づく」、【0172】の「従業員の感情1536、考え1537、顔面運動1545、および/または運動機能1546は、検知された神経信号(例えば、脳活動1517)に基づいて判断され得る。」、及び【0177】の「バイオメトリックおよび/またはバイオメカニック健康特性1502および/または健康状態1504を使用して、対応する健康の危険性1506を識別することができる。」の記載から、引用文献1には、1つ以上の神経センサ718によって収集される神経データ700iに基づき、従業員の感情1536、考え1537、顔面運動1545、および/または運動機能1546を判断し、健康の危険性を判断する点が記載されている。

そして、上記の点及び【0121】の健康センサの一つである神経センサ718が安全ヘルメット1024に設けられていることに着目して、請求項1を引用する請求項5をさらに引用する請求項6について、さらに引用する請求項8において、安全ヘルメットに関して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「従業員によって装着された安全ヘルメットであって、
1つ以上の神経センサ718によって検知された神経データ700iの少なくとも一つに対応する健康データを出力するように構成される1つ以上の神経センサ718と、
周囲の環境の実世界のビューと、前記周囲の環境の前記実世界のビュー上に重ねられた前記従業員についての健康の危険性に関する情報とを備える拡張現実感ビューを前記従業員に提供するように構成された拡張現実感表示であるヘッドアップ表示を備え、
拡張現実感プロセッサが、
前記神経センサ718によって出力された神経データ700iを受信し、
前記従業員が職務に従事しているときに1つ以上の神経センサ718によって収集される神経データ700iに基づき、従業員の感情1536、考え1537を判断し、前記従業員の感情1536および考え1537、顔面運動1545、および/または運動機能1546を判断し、健康の危険性を判断し、
前記従業員についての前記健康の危険性に関する情報の重ね合わせを有する前記周囲の環境の前記実世界のビューを備える拡張現実感ビューが前記従業員に提供されるように、前記周囲の環境の前記実世界のビュー上に重ねられるべき前記従業員についての前記健康の危険性に関する情報を備える拡張現実感コンテンツを、前記拡張現実感表示で表示するように構成され、
前記ヘッドアップ表示が、前記従業員が職務に従事しているときに、前記従業員によって見ることができるように構成された、安全ヘルメット。」

(3)引用発明との対比
引用発明と本件補正発明とを対比するに、
ア 引用発明の「従業員によって装着された安全ヘルメット」と、本件補正発明の「建設工事現場の作業員に装着されるヘルメット」とは、「作業員に装着されるヘルメット」の限りで一致する。
イ 引用発明の「当該1つ以上の神経センサ718」は、本件補正発明の「前記作業員の状態を感知する状態センサー」に相当する。
ウ 引用発明の「記神経センサ718によって出力された神経データ700i」は、本件補正発明の「前記状態センサーから出力される状態データ」に相当する。
エ 引用発明の「拡張現実感プロセッサが、記神経センサ718によって出力された神経データ700iを受信」することは、神経データ700iが拡張現実感プロセッサに送信されることであるから、引用発明の当該記載と、本件補正発明の「前記状態センサーから出力される状態データを、前記作業員に携帯される多機能携帯端末に無線送信する送信部と、を備え、前記状態データが、前記多機能携帯端末を介して、管理サーバーに送信され」ることとは、「前記状態センサーから出力される状態データを、プロセッサに送信され」ることと一致する。
オ 上記(2)エに摘記したとおり、引用文献1には、「拡張現実感(AR)表示106は、コンピュータによって生成された知覚入力、例えば音データ、・・・」という記載があるから、引用発明の拡張現実感表示に、「音声出力」が含まれることは明らかである。
したがって、引用発明の「拡張現実感表示であるヘッドアップ表示」と、本件補正発明の「音声出力の報知部(ただし、拡張現実感ビューを除く。)」とは、「報知部」の限りで一致する。
カ 引用発明の「拡張現実感プロセッサが、」「前記従業員が職務に従事しているときに1つ以上の神経センサ718によって収集される神経データ700iに基づき、従業員の感情1536、考え1537を判断し、前記従業員の感情1536および考え、顔面運動1545、および/または運動機能1546を判断し、健康の危険性を判断し、前記従業員についての前記健康の危険性に関する情報の重ね合わせを有する前記周囲の環境の前記実世界のビューを備える拡張現実感ビューが前記従業員に提供されるように、前記周囲の環境の前記実世界のビュー上に重ねられるべき前記従業員についての前記健康の危険性に関する情報を備える拡張現実感コンテンツを、前記拡張現実感表示で表示するように構成され」ることと、本件補正発明の「前記管理サーバーが、前記作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断し、健康異常の発生を示す異常データを前記多機能携帯端末に送信」することとは、「前記プロセッサが、前記作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断し、健康異常の発生を示す異常データを送信」することの限りで一致する。
キ 引用発明の「拡張現実感プロセッサ」が「健康の危険性を判断し、前記従業員についての前記健康の危険性に関する情報の重ね合わせを有する前記周囲の環境の前記実世界のビューを備える拡張現実感ビューが前記従業員に提供されるように、前記周囲の環境の前記実世界のビュー上に重ねられるべき前記従業員についての前記健康の危険性に関する情報を備える拡張現実感コンテンツを、前記拡張現実感表示で表示するように構成され、前記ヘッドアップ表示が、前記従業員が職務に従事しているときに、前記従業員によって見ることができるように構成され、前記ヘッドアップ表示が、前記従業員が職務に従事しているときに、前記従業員によって見ることができるように構成された」ことは、拡張現実感プロセッサで健康の危険性を判断し、健康の危険性に関する情報の重ね合わせを有する周囲の環境の実世界のビューを備える拡張現実感ビューとして表示するための拡張現実感コンテンツを送信し、ヘッドアップ表示をすることであるから、引用発明の当該記載と、本件補正発明の「前記異常データが前記多機能携帯端末から前記受信部に無線送信され、前記報知部が、健康異常の発生を報知すること」とは、「前記プロセッサから送信され、前記報知部が、健康異常の発生を報知すること」に相当する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「作業員に装着されるヘルメットであって、
前記作業員の状態を感知する状態センサーと、
前記状態センサーから出力される状態データを、プロセッサに送信され、
報知部を備え、
前記状態センサーは、前記作業員の健康状態を感知するセンサーであり、
前記プロセッサが、前記作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断し、健康異常の発生を示す異常データを送信した場合、
前記プロセッサから送信され、前記報知部が、健康異常の発生を報知するヘルメット。」

<相違点1>
作業員について、本件補正発明は、「建設工事現場の作業員」であるのに対して、引用発明は、従業員である点。

<相違点2>
本件補正発明は、ヘルメットが「前記作業員に携帯される多機能携帯端末に無線送信する送信部」及び「受信部」を備え、「前記状態データが、前記多機能携帯端末を介して、管理サーバーに送信され」、「前記管理サーバーが、前記作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断し、健康異常の発生を示す異常データを前記多機能携帯端末に送信した場合、前記異常データが前記多機能携帯端末から前記受信部に無線送信され」るのに対して、引用発明は、神経センサ718によって出力された神経データ700iを拡張現実感プロセッサに送信し、拡張現実感プロセッサが健康の危険性を判断し、健康の危険性に関する情報を備える拡張現実感コンテンツを、拡張現実感表示で表示するように構成されている点。

<相違点3>
本件補正発明は、「音声出力の報知部(ただし、拡張現実感ビューを除く。)を備え」るのに対して、引用発明は、拡張現実感表示であるヘッドアップ表示である点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の【0085】には、従業員が働く現地として、建設現場が例示されており、建設現場で働く作業員が、ヘルメットを着用する場合が多いことは従来周知であるから、当該記載に基づいて、引用発明の従業員を、具体的に建設工事現場で働く作業員とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

イ 相違点2について
相違点2は、本件補正発明が「多機能携帯端末」と「管理サーバー」を有し、「管理サーバーが作業員の健康状態を示す前記状態データに基づき、前記作業員に健康異常が発生していると判断」するものであって、ヘルメットが「送信部」及び「受信部」を備え、「送信部」が「状態データ」を「前記作業員に携帯される多機能携帯端末に無線送信し、」「前記状態データ」を「前記多機能携帯端末」から「管理サーバーに送信」し、「管理サーバー」が状態データに基づき、作業員に健康異常の発生を判断し、「健康異常の発生を示す異常データを前記多機能携帯端末に送信し」、「前記異常データが前記多機能携帯端末から前記受信部に無線送信され」るのに対して、引用発明は、安全ヘルメットの神経センサ718によって出力された神経データ700iを拡張現実感プロセッサに送信し、拡張現実感プロセッサが健康の危険性を判断し、健康の危険性に関する情報を備える拡張現実感コンテンツを、ヘルメットの拡張現実感表示で表示するように送信する点で相違するものである。
そして、引用文献1(【0080】、【0082】、【0085】、【0088】、【0193】、【0194】、【図7A】)には、健康サーバ604とモバイルデバイス622を有し、健康センサ102aからの測定値をモバイルデバイス622が収集し、当該測定値を健康サーバ604に転送すること、健康サーバ604が収集された健康データを用いて従業員110についての健康プロファイル(例えば、従業員についての健康特性、症状、危険性、計画、および/ または同様のもの)を生成し、従業員が、モバイルデバイス622経由で彼らの健康に関するフィードバックを受信し得るようにすることが記載されている。ここで、「健康サーバ604」、「モバイルデバイス622」は、それぞれ、その機能から本件補正発明の「管理サーバー」、「多機能携帯端末」に相当する。
そうすると、引用発明において、引用文献1の上記記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、その場合、「健康サーバ604」、「モバイルデバイス622」を有するものとなり、引用発明の「拡張現実感プロセッサ」は、その機能から「健康サーバ604」に設けられ、[中村4]安全ヘルメットには神経センサ718(健康センサ102a)からの測定値をモバイルデバイス622を介して健康サーバ604に送信するための送信部が設けられることとなる。また、健康サーバ604に設けられた拡張現実感プロセッサで作成された拡張現実感コンテンツをヘルメットのヘッドアップ表示の拡張現実感表示で表示するために、拡張現実感コンテンツを「モバイルデバイス622」に送信し、「モバイルデバイス622」からの無線送信を受信する受信部を設けることも、設計上適宜なし得たことである。
したがって、引用発明において、上記引用文献1記載の事項を適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
報知部として、拡張現実感ビューを除く音声出力の報知部、いわゆる音声のみからなる報知部は、例を挙げるまでもなく本願出願前周知である。
したがって引用発明において、健康の危険性の内容に応じて、単に音声出力の報知部のみによって報知するものとすることに、格別の困難性は認められない。
ゆえに、引用発明において、周知である音声のみからなる報知部、すなわち拡張現実感ビューを除く音声出力の報知部により報知するすることは、当業者が容易に想到しうることである。

ここで、請求人は、審判請求書において、引用文献1は、「拡張現実感ビュー」を提供することを必須要件とするものであるから、引用発明において「拡張現実感ビューを除く」ものとすることに阻害要件がある旨主張する。
しかし、本件補正発明の「音声出力の報知部(ただし、拡張現実感ビューを除く。)」との記載は、ヘルメットに「拡張現実感ビュー」を有さないことを特定するものでなく、「健康異常の発生を報知する」「報知部が、」「音声出力の報知部(ただし、拡張現実感ビューを除く。)」であることを特定するものであって、音声出力以外の報知部を有さないことを特定するものでもないから、上記のとおりであり、阻害要因があるとまではいえない。

エ 本件補正発明の効果について
そして、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、引用文献1記載の事項及び周知の事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年11月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
平成31年1月29日付けで通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。

(進歩性)この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2013/006642号

3 引用文献記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献記載の事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、作業員が「建設工事現場の作業員」であること、「報知部」が「拡張現実感ビューを除く。」ことに係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-06-23 
結審通知日 2020-06-30 
審決日 2020-07-14 
出願番号 特願2014-160370(P2014-160370)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A42B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 龍平田々井 正吾  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 佐々木 正章
中村 一雄
発明の名称 ヘルメット  
代理人 一色国際特許業務法人  

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