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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1365777 |
審判番号 | 不服2019-3417 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-12 |
確定日 | 2020-09-10 |
事件の表示 | 特願2017-224531「光コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 95584〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年11月22日の出願であって、平成30年8月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成30年10月9日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年12月28日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は平成31年1月8日に請求人に送達された。これに対して、平成31年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、令和元年12月27日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して、令和2年2月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は、令和2年2月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 接続方向に沿って接続される際に、光ファイバの先端部を保持しているフェルールの前記接続方向に沿った後退を許容する光コネクタであって、 前記フェルールを前記接続方向に沿って後退可能に保持するコネクタハウジングを備え、 前記コネクタハウジング内における前記光ファイバは、前記接続方向に沿った接線を有する1つ以上のループ要素と、前記1つ以上のループ要素の前記接線上に配置され且つ前記1つ以上のループ要素に接続された接線部分とにより構成され、且つ、前記フェルールの前記接続方向に沿った後退に伴って前記ループ要素の曲率半径が大きくなることを妨げないように前記コネクタハウジングの内壁に接触することなく保持され、 前記ループ要素は、前記フェルールの前記接続方向に沿った後退距離よりも大きい曲率半径を有していることを特徴とする光コネクタ。」 第3 引用文献に記載された事項 当審からの拒絶の理由に引用された、引用文献は、次のとおりである。 引用文献1 特表2013-522692号公報 (1)引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同じ。)。 ア 「【請求項1】 光ファイバインタフェース装置であって、 1又は2本以上の光通路によって互いに連結された前側端部及び後側端部を備えていて、1又は2本以上の光導波路をそれぞれ作動的に支持するよう構成されたフェルールを有し、 前記1又は2本以上の光通路によってそれぞれ支持された1又は2本以上の光導波路を有し、 前側端部、後側端部及びフェルールを並進可能に収納支持する内部を備えたエンクロージャを有し、前記内部は、前記フェルールに隣接して位置していて、前記1又は2本以上の光導波路の1つ又は2つ以上の余剰部分をルーズに収納するよう構成された収納領域を有し、 前記フェルールに対し、前記光ファイバインタフェース装置を取り外したときにフェルールの前方付勢位置を提供し、前記光ファイバインタフェース装置を嵌合させたときにフェルールの後方付勢位置を提供するよう作動的に構成された少なくとも1つの弾性部材を有する、光ファイバインタフェース装置。」 イ 「【0059】 USB互換性光ファイバインタフェース装置の実施例 【0060】 上述したように、汚れ、ダスト及び他のデブリの形態の汚染要因物に定期的に遭遇する多くの環境で作動される場合が多い電子装置、例えば消費者向け電子装置に用いられるのに適した光ファイバインタフェース装置の要望が高まっている。このような汚染要因物は、光ファイバインタフェース装置が電子装置と光学的又は光学的且つ電気的に通信する能力に悪影響を及ぼす場合がある。汚染要因物の悪影響に強くしかも実質的に汚染要因物のない接続部を維持するよう容易にクリーニングできる光ファイバインタフェース装置を提供することが有利である。 【0061】 図13は、レセプタクル60のところで例示のプラグ型光ファイバインタフェース装置70が作動的に連結された例示の手持ち型電子装置200の平面図側の等角図である。図14は、図13に類似しており、電子装置200から切り離されたプラグ型光ファイバインタフェース装置(プラグ)70を示している。電子装置200は、図14の挿入図に最も良く示されているように消費者向け電子装置内に位置した例示のレセプタクル型光ファイバインタフェース装置(光ファイバインタフェース装置)60を有している。 【0062】 図15及び図16は、それぞれ、プラグ70及びレセプタクル60の正面図である。プラグ70は、ハウジング71及びシュラウド72を備えた上述のエンクロージャ71eを有している。プラグフェルール20は、プラグフェルールガイド74によって可動的に支持されている。電気接点73がプラグフェルールガイド74の2本のアーム74Aの各々のそれぞれの外方側部74Sに設けられている。一例では、光通路14内には、勾配屈折率(GRIN)レンズ要素210が設けられ、これらGRINレンズは、フェルール本体前側端部22Fのところで支持されている。 【0063】 レセプタクル型光ファイバインタフェース装置60は、フェルール10を有し、フェルール10のフェルール本体12は、アーム12A、中央本体部分12C及びフェルールガイドアーム74Aを受け入れるよう構成された停止部28′を有している。アーム12A及び中央フェルール本体部分12Cは、スロット13を画定し、アームは各々、電気接点63が設けられた内方側部29Sを有している。レセプタクル型及びプラグ型光ファイバインタフェース装置60,70は、互いに嵌合してプラグ及びレセプタクル光通路14が位置合わせされると共にGRINレンズ要素210を介して光通信関係をなし、しかも、レセプタクル及び電気接点63,73が互いに電気的接触関係をなすよう構成されている。レセプタクル型光ファイバインタフェース装置60は、シュラウド62の形態をしたエンクロージャ61eを有している。一例では、エンクロージャ61eは、レセプタクルフェルール10とプラグフェルール20を位置合わせすると共に相互のぶつかりを回避するよう構成されている。他の嵌合幾何学的形状部、例えば、さねはぎ方式を利用することができ、その結果、レセプタクルフェルール10とプラグフェルール20が前側端部12F,22Fを位置合わせするようになっている。 【0064】 図15及び図16に示されている実施形態では、レセプタクルフェルール前側端部12F及びプラグフェルール前側端部22Fは、本質的に平面状であり、即ち、これらは、光通路14の端部14Eを除き、ピン、穴又はスロットを備えていない。これにより、これらフェルール前側端部から非引っ込み位置のままで汚染要因物を容易に除去することができる。 【0065】 図17は、嵌合中におけるレセプタクル型及びプラグ型光ファイバインタフェース装置60,70の切除側面等角図であり、説明を容易にするためにレセプタクル60のレセプタクルフェルール10だけが示されている。図18は、図17のレセプタクル及びプラグフェルール10,20の拡大図であるが、レセプタクル型光ファイバインタフェース装置60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70は、嵌合状態にある。プラグフェルール20内の光通路14のうちの1本だけが一例として図18に想像線で示されている。図19及び図20は、それぞれ、非引っ込み状態及び引っ込み状態におけるプラグ70のプラグフェルールガイド74及びプラグフェルール20の拡大切除側面等角図である。プラグフェルール20は、前側端部22F、後側端部22R及び前側フェルール端部と後側フェルール端部との間に位置したリップ22Lを有している。 【0066】 図17及び図18を参照すると、プラグ70は、シュラウド72及びハウジング71の頂部が取り外された状態で示されており、後には、前側端部71F及び後側端部71Rを有するハウジング底部71Bだけが残されている。ハウジング底部71Bは、少なくとも1つの保持特徴部27を有している。プラグフェルールガイド74がハウジング底部内に形成された切除部分(ニッチ)71N内でハウジング底部71Bの前側端部71Fのところに設けられている。プラグフェルールガイド74は、プラグフェルール20の中央部分22Cに摺動可能に係合するよう寸法決めされた中央開口部(スロット)76を有している。プラグフェルールガイド74は、中央スロット76の各側に設けられていて、それぞれのプラグ電極73を支持した側部スロット77を有している。 【0067】 少なくとも1つの弾性部材75が少なくとも1つの保持特徴部27とプラグフェルール後側端部22Rとの間に作動的に位置すると共にハウジング底部71Bに載っている。4本の光ファイバ40がハウジング後側端部71Rのところで後側光ファイバガイド80を貫通して光通路14まで延びている状態で示されている。光ファイバ40は、コイル状又は別の形状のたるみ区分40Cを有し、たるみ区分40Cは、ハウジング底部71Bに設けられた収納領域(空間)71S内に且つハウジング後側端部71Rに隣接して位置した余剰光ファイバ部分を有している。一例では、収納領域(空間)71Sは、レセプタクルハウジング底部71Bを従来サイズのUSBレセプタクル型光ファイバインタフェース装置に対して伸長させることにより形成されている。 【0068】 一例では、プラグフェルール20は、フレア状後側端部22Rを有している。この特徴部により、弾性部材75をプラグフェール中心軸線A20の外側に配置することができ、その結果、光通路14をプラグフェルール中心軸線上に又はこの周りに配置することができるようになっている。この特徴部は又、光ファイバ40のための隙間を提供する。 【0069】 図17は、互いに嵌合する直前におけるレセプタクル型光ファイバインタフェース装置60とプラグ型光ファイバインタレース装置70を示しており、弾性部材75は、実質的に弛緩し(例えば、圧縮度が最も僅かな状態にある)、プラグフェルール前側端部22Fは、ガイドアーム74Aの前側端部74Fと実質的に同一平面内に位置すると共にレセプタクルフェルール前側端部22Fに接触している。プラグフェルールリップ22Lは、プラグフェルール前側端部22Fがプラグフェルールガイドアーム74Aの前側端部74Fを越えて延びるのを阻止するためにプラグフェルールガイド後側端部74Rに当接するよう構成されている。図17は、前方付勢位置にあるプラグフェルール20を示している。 【0070】 図18は、嵌合状態にあるレセプタクル型光ファイバインタフェース60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70を示しており、弾性部材75は、プラグフェルール20に押し付けられているレセプタクルフェルール10の力に起因して実質的に圧縮されており、プラグフェルール20は、プラグハウジング後側端部71Rに向かってプラグフェルールガイド中央スロット76内を摺動する。光ファイバ40は、コイル状になっており又は幾分かのたるみを有するよう構成されているので、光ファイバ40は、プラグフェルール20の前後の運動に順応することが必要な場合には単に動く。図18は、プラグフェルール20をその後方付勢位置で示しており、弾性部材75は、圧縮されている。」 ウ 図17は以下のとおりである。 エ 図17から、光ファイバ40のコイル状の部分は、レセプタクル型光ファイバインタフェース60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70の接続方向に沿って光ファイバの中間部分に形成されていることが看て取れる。 (2)引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「光ファイバインタフェース装置であって、 1又は2本以上の光通路によって互いに連結された前側端部及び後側端部を備えていて、1又は2本以上の光導波路をそれぞれ作動的に支持するよう構成されたフェルールを有し、 前記1又は2本以上の光通路によってそれぞれ支持された1又は2本以上の光導波路を有し、 前側端部、後側端部及びフェルールを並進可能に収納支持する内部を備えたエンクロージャを有し、前記内部は、前記フェルールに隣接して位置していて、前記1又は2本以上の光導波路の1つ又は2つ以上の余剰部分をルーズに収納するよう構成された収納領域を有し、 前記フェルールに対し、前記光ファイバインタフェース装置を取り外したときにフェルールの前方付勢位置を提供し、前記光ファイバインタフェース装置を嵌合させたときにフェルールの後方付勢位置を提供するよう作動的に構成された少なくとも1つの弾性部材を有し、 プラグ70及びレセプタクル60の場合において、 プラグ70は、ハウジング71及びシュラウド72を備えたエンクロージャ71eを有しており、プラグフェルール20は、プラグフェルールガイド74によって可動的に支持されており、少なくとも1つの弾性部材75が少なくとも1つの保持特徴部27とプラグフェルール後側端部22Rとの間に作動的に位置すると共にハウジング底部71Bに載っており、4本の光ファイバ40がハウジング後側端部71Rのところで後側光ファイバガイド80を貫通して光通路14まで延びており、光ファイバ40は、コイル状又は別の形状のたるみ区分40Cを有し、たるみ区分40Cは、ハウジング底部71Bに設けられた収納領域(空間)71S内に且つハウジング後側端部71Rに隣接して位置した余剰光ファイバ部分を有しており、 嵌合状態にあるレセプタクル型光ファイバインタフェース60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70において、弾性部材75は、プラグフェルール20に押し付けられているレセプタクルフェルール10の力に起因して実質的に圧縮されており、プラグフェルール20は、プラグハウジング後側端部71Rに向かってプラグフェルールガイド中央スロット76内を摺動し、光ファイバ40は、コイル状になっており又は幾分かのたるみを有するよう構成されているので、光ファイバ40は、プラグフェルール20の前後の運動に順応することが必要な場合には単に動き、弾性部材75は、圧縮されており、 光ファイバ40のコイル状の部分は、レセプタクル型光ファイバインタフェース60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70の接続方向に沿って光ファイバの中間部分に形成されている、 光ファイバインタフェース装置。」 第4 対比、判断 1 本願発明1と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「光ファイバ」、「プラグフェルール20」、「プラグ型光ファイバインタフェース装置70」、「ハウジング」は、それぞれ本願発明1の「光ファイバ」、「フェルール」、「光コネクタ」、「コネクタハウジング」に相当する。 (2)引用発明において、「弾性部材75は、プラグフェルール20に押し付けられているレセプタクルフェルール10の力に起因して実質的に圧縮されており、プラグフェルール20は、プラグハウジング後側端部71Rに向かってプラグフェルールガイド中央スロット76内を摺動し」ているので、引用発明は、本願発明1の「接続方向に沿って接続される際に、光ファイバの先端部を保持しているフェルールの前記接続方向に沿った後退を許容する」、「フェルールを前記接続方向に沿って後退可能に保持するコネクタハウジング」との構成を有している。 (3)引用発明において、「光ファイバ40は、コイル状又は別の形状のたるみ区分40Cを有し」ていることから、引用発明は、本願発明1の「コネクタハウジング内における前記光ファイバは、前記接続方向に沿った接線を有する1つ以上のループ要素と、前記1つ以上のループ要素の前記接線上に配置され且つ前記1つ以上のループ要素に接続された接線部分とにより構成され」との構成と、「コネクタハウジング内における前記光ファイバは、前記接続方向に沿った接線を有する1つ以上のループ要素により構成され」ている点で共通する。 (4)したがって、本願発明1と引用発明を比較すると、以下の一致点で一致し、相違点1で相違する。 <一致点> 「接続方向に沿って接続される際に、光ファイバの先端部を保持しているフェルールの前記接続方向に沿った後退を許容する光コネクタであって、 前記フェルールを前記接続方向に沿って後退可能に保持するコネクタハウジングを備え、 前記コネクタハウジング内における前記光ファイバは、前記接続方向に沿った接線を有する1つ以上のループ要素により構成されている、 光コネクタ。」 <相違点1> コネクタハウジング内における光ファイバについて、本願発明1が「(1つ以上のループ要素のみならず)1つ以上のループ要素の前記接線上に配置され且つ前記1つ以上のループ要素に接続された接線部分」により構成され、「フェルールの前記接続方向に沿った後退に伴って前記ループ要素の曲率半径が大きくなることを妨げないように前記コネクタハウジングの内壁に接触することなく保持され、前記ループ要素は、前記フェルールの前記接続方向に沿った後退距離よりも大きい曲率半径を有している」のに対し、引用発明が「光ファイバ40のコイル状の部分は、レセプタクル型光ファイバインタフェース60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70の接続方向に沿って光ファイバの中間部分に形成されている」点。 2 判断 (1)相違点1について 引用発明は、「前記1又は2本以上の光導波路の1つ又は2つ以上の余剰部分をルーズに収納するよう構成された収納領域を有し」ていることから、「光ファイバ40のコイル状の部分は、レセプタクル型光ファイバインタフェース60とプラグ型光ファイバインタフェース装置70の接続方向に沿って光ファイバの中間部分に形成されている」との構成においては、図17におけるコイル状の部分の形状や位置関係なども参酌すれば、「プラグフェルール20の前後の運動」により、コイル状の部分の曲率半径が大きくなるように変形するものと解される。 したがって、引用発明において、本願発明1の「フェルールの前記接続方向に沿った後退に伴って前記ループ要素の曲率半径が大きくなることを妨げないように」「保持され」るとの構成を実質的に有しているといえる。 ここで、本願発明1の「コネクタハウジングの内壁に接触することなく保持され」るとの限定及び「前記ループ要素は、前記フェルールの前記接続方向に沿った後退距離よりも大きい曲率半径を有している」との限定は、本願発明1の「フェルールの前記接続方向に沿った後退に伴って前記ループ要素の曲率半径が大きくなることを妨げないように」「保持され」る態様として、ループ要素にどの程度の余裕を持たせるかという限定であり、このような限定に格別の意義があるとは認められない。 そして、ループ要素(コイル状の部分)にどの程度の余裕を持たせるかは、当業者が、光コネクタ(光ファイバインタフェース)の利用形態やサイズを勘案して、ループ要素の変形に支障がないように、適宜設定しうる事項である。 したがって、引用発明において、上記したように本願発明1の「フェルールの前記接続方向に沿った後退に伴って前記ループ要素の曲率半径が大きくなることを妨げないように」「保持され」るとの構成を、引用発明が実質的に有している以上、本願発明1における「1つ以上のループ要素の前記接線上に配置され且つ前記1つ以上のループ要素に接続された接線部分」との構成や「コネクタハウジングの内壁に接触することなく保持され」ること、「前記ループ要素は、前記フェルールの前記接続方向に沿った後退距離よりも大きい曲率半径を有している」ようにすることは、引用発明において「光ファイバ40は、コイル状になっており又は幾分かのたるみを有するよう構成されているので、・・・プラグフェルール20の前後の運動に順応することが必要な場合には単に動」くようにするために選択しうる一態様にすぎず、当業者が、光ファイバインタフェース(光コネクタ)の利用形態やサイズを勘案して、適宜設定しうる程度のことにすぎない。 (2)作用効果について 本願発明1の作用効果は、引用発明から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。 (3)請求人の主張について 請求人は、令和2年2月26日付け意見書において、 「c) しかしながら、プラグフェルール20が、光ファイバ40のコイル状のたるみ区分40Cの直径Dにほぼ等しいくらいに大きい移動量ΔY1だけ後退すると、仮に、たるみ区分40Cの曲率半径が大きくなることを妨げないように保持されているとしても、図17に示されるプラグ型光ファイバインタフェース装置70のハウジング底部71Bに設けられた収納領域(空間)71Sは、移動量ΔY1を吸収して曲率半径が大きくなったたるみ区分40Cをほぼ円形の形状を保持したまま収納することはできないと思われます。その結果、たるみ区分40Cの形状が変形して、光ファイバ40の曲率半径が局所的に小さくなり、光ファイバ40の伝送損失の増大を引き起こすおそれが生じます。 d) これに対して、本願発明1では、ループ要素は、フェルールの接続方向に沿った後退距離よりも大きい曲率半径を有しています。このため、ループ要素は、フェルールの後退に伴い、フェルールの接続方向に沿った後退距離に応じて曲率半径が大きくなっても、ループ形状を保持したまま、本願の図8に示されるコネクタハウジング12の光ファイバ収容室18内に収容されることができます。従って、フェルールの後退に起因した光ファイバの伝送損失の増大を防止することが可能になるという本願独特の作用効果が得られます。」((3)c)d)参照) と主張する。 しかしながら、上記(1)で説示したように、本願発明1における「前記ループ要素は、前記フェルールの前記接続方向に沿った後退距離よりも大きい曲率半径を有している」との限定は、ループ要素に余裕を持たせる一態様にすぎず、当業者が適宜設定しうる程度のことであり、格別の作用効果があるものとも認められない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-06-30 |
結審通知日 | 2020-07-07 |
審決日 | 2020-07-22 |
出願番号 | 特願2017-224531(P2017-224531) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井部 紗代子、佐藤 宙子 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 井上 博之 |
発明の名称 | 光コネクタ |
代理人 | 伊東 秀明 |