• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1365790
審判番号 不服2019-9060  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-05 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2016-160846「対話型高精細ガラス電子ホワイトボード」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月 3日出願公開、特開2017-134812、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月18日(パリ条約に基づく優先権主張 平成27年11月20日(中国)、平成28年4月29日(中国))の出願であって、平成29年12月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年3月26日付けで手続補正がされ、平成30年5月11日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年9月27日付けで手続補正がされ、平成31年2月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和元年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成31年2月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし11に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1 特開2012-226103号公報
2 米国特許出願公開第2014/0154661号明細書
3 登録実用新案第3006814号公報
4 特開2014-153427号公報
5 特開2002-307894号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、平成30年9月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び本願発明2は以下のとおりの発明である。

1 本願発明1
「 描写板本体を含む対話型高精細ガラス電子ホワイトボードにおいて、前記描写板本体は基板および薄型強化ガラスを含み、前記基板の正面が薄型強化ガラスに貼り合わされ、前記薄型強化ガラスと基板との貼り合せ面上には不透明な中間層が付着され、前記不透明な中間層と前記基板との間にはタッチセンサモジュールが貼り付けられており、前記薄型強化ガラスの描写面が防眩処理されたマット面であり、前記不透明な中間層は、それぞれ薄型強化ガラスおよび基板に貼り合わされた白色またはクリーム色のフレキシブルなフィルムであり、前記白色またはクリーム色のフレキシブルなフィルムの表面は、防眩処理されて凹凸があるマット面であることを特徴とする対話型高精細ガラス電子ホワイトボード。」

2 本願発明2
「 描写板本体を含む対話型高精細ガラス電子ホワイトボードにおいて、前記描写板本体は基板および薄型強化ガラスを含み、前記基板の正面が薄型強化ガラスに貼り合わされ、前記薄型強化ガラスと基板との貼り合せ面上には不透明な中間層が付着され、前記薄型強化ガラス表面の周囲には赤外線センサモジュールが取り付けられており、前記薄型強化ガラスの描写面が防眩処理されたマット面であり、前記不透明な中間層は、それぞれ薄型強化ガラスおよび基板に貼り合わされた白色またはクリーム色のフレキシブルなフィルムであり、前記白色またはクリーム色のフレキシブルなフィルムの表面は、防眩処理されて凹凸があるマット面であることを特徴とする対話型高精細ガラス電子ホワイトボード。」

なお、「センサモジュール」に関し、本願発明1が「前記不透明な中間層と前記基板との間にはタッチセンサモジュールが貼り付けられており、」との構成を備え、本願発明2が「前記薄型強化ガラス表面の周囲には赤外線センサモジュールが取り付けられており、」との構成を備える点を除くと、本願発明1と本願発明2とは、共通の構成を備えている。

3 本願発明3ないし11
本願発明3ないし11は、本願発明1又は本願発明2を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーン、反射スクリーンを備える映像表示システムに関するものである。」

「【0005】
本発明の課題は、明室環境下であっても明るくコントラストが高い良好な映像を表示できる反射スクリーン及びそのような高品位の反射スクリーン及びこの反射スクリーンを備える映像表示システムを提供する事である。」

「【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の反射スクリーン10を用いた映像表示システム1を示す図である。
映像表示システム1は、反射スクリーン10、映像源LS等を有している。本実施形態では、反射スクリーン10が映像源LSから投影された映像光を反射して、その画面上に映像を表示する一般的な映像表示システムを説明するが、これに限らず、映像表示システム1は、例えば、映像光を映像源LSから投射するフロントプロジェクションテレビシステム等としてもよいし、反射スクリーン10と映像源LSと反射スクリーンの観察画面上の位置を検出する位置検出部やパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムとしてもよい。…(後略)」

「【0021】
…(中略)…
この反射スクリーン10は、反射層12よりも背面側に、平板状の支持板50が、粘材等からなる不図示の接合層を介して設けられており、この支持板50により、その平面性を維持している。本実施形態の支持板50は、光透過性を有していない。
【0022】
図2は、第1実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
…(中略)…
反射スクリーン10は、その映像源LS側(観察面側)から順に、光制御層14、基材層13、レンズ層11、反射層12等を備えている。…(中略)…
【0023】
基材層13は、この反射スクリーン10の基材となる透明又は半透明のシート状の部材である。基材層13の映像源側(観察面側)には、光制御層14が一体に形成され、背面側(裏面側)には、レンズ層11が一体に形成されている。…(中略)…
なお、基材層13は、所定の透過率とするためのグレー等の染料や顔料等により着色が施されていてもよい。
【0024】
レンズ層11は、基材層13の背面側に設けられた光透過性を有する層であり、その背面側(基材層13とは反対側)には、フレネルレンズ形状が形成されている。…(中略)…
【0025】
レンズ層11は、紫外線硬化型樹脂により形成されている。なお、レンズ層11は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。」

「【0029】
反射層12は、光を反射する作用を有し、少なくともレンズ面111a上に形成される層である。
この反射層12は、銀色系の塗料や、銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂や、銀やアルミニウム等の金属蒸着膜、金属箔等により形成される。また、反射層12は、明るい映像を表示するために、その反射率が40%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがさらに好ましい。…(後略)」

「【0031】
…(中略)…
光制御層14は、図3(a)に示すように、その映像源LS側に、スクリーン面に沿って単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向に交互に凸部141と凹部142とが配列された凹凸形状を有している。
光制御層14は、紫外線硬化型樹脂により形成されているが、これに限らず、電子線硬化型樹脂等、他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
…(中略)…
【0033】
凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aは、その表面に微細な凹凸形状が形成されており、光を拡散する光拡散性を有している。…(後略)」

「【0050】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
…(中略)…
【0052】
(3)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30は、例えば、反射スクリーンの剛性を高め、平面性を維持するためのガラス製や樹脂製の基板層や、コントラストを向上させる着色層、紫外線吸収作用を有する紫外線吸収層、タッチパネル層等をさらに備えた形態としてもよい。これらの層を設ける位置に関しては、適宜設定してよい。
【0053】
(4)各実施形態において、光制御層14は、反射スクリーン10,20,30の最も映像源LS側(観察面側)に設けられる例を示したが、これに限らず、例えば、光制御層14の映像源LS側に、ハードコート機能や、紫外線吸収機能、防眩機能、帯電防止機能、防汚機能等を有する表面機能層を設けてもよい。このとき、光制御層14の凸部141及び凹部142からなる凹凸形状が粘着材等により充填される場合には、光制御層14と接合層等の間には屈折率差があることが好ましい。…(中略)…
【0058】
(9)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30と映像源LSとを備える映像表示システム1を示したが、これに限らず、例えば、さらに、パーソナルコンピュータ等の制御部や、使用者が触れた反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出装置を備え、位置検出装置及び映像源をパーソナルコンピュータ等の制御部と通信可能としたインタラクティブボードシステムとしてもよい。このような形態とすれば、例えば、使用者が反射スクリーン10,20,30の観察画面上にタッチペンや指等により描画した文字や図形等の情報を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示したり、それらの情報を含む投影画像等をデータ化して保存したりすることができる。
また、反射スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察画面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりすることができ形態としてもよい。なお、このような形態とする場合には、光制御層14よりも映像源側にハードコート機能や筆記性等を有する層を設けることが、凸部141の破損等を防止することや、インタラクティブボードシステムとしての品質向上等の観点から好ましい。」

【0052】の「タッチパネル層」が、【0020】「反射スクリーンの観察画面上の位置を検出する位置検出部」及び【0058】の「使用者が触れた反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出装置」を含むことは明らかであるから、【0052】の記載からすれば、「位置検出装置」を設ける位置は適宜設定できる、すなわち、「位置検出装置」は任意の位置に設定することができるものと理解することができる。

(2)引用発明
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 明室環境下であっても明るくコントラストが高い良好な映像を表示できる反射スクリーン10と映像源LSと反射スクリーン10の観察画面上の位置を検出する位置検出部やパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムであって、使用者が反射スクリーン上にタッチペンや指等により描画でき、 反射スクリーン10は、その映像源LS側(観察面側)から順に、
樹脂により形成され、スクリーン面に沿って単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向に交互に凸部141と凹部142とが配列された凹凸形状を有し、凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aが、その表面に微細な凹凸形状が形成され、光を拡散する光拡散性を有する光制御層14、
透明又は半透明のシート状の部材であり、グレー等の着色がなされた基材層13、
樹脂により形成され、光透過性を有し、その背面側(基材層13とは反対側)にフレネルレンズ形状が形成されたレンズ層11、
銀色系の塗料や、銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂や、銀やアルミニウム等の金属蒸着膜、金属箔等により形成され、光を反射する作用を有する反射層12等を備え、
反射層12よりも背面側に、平板状の支持板50が、粘材等からなる接合層を介して設けられ、
位置検出部は任意の位置に設定することができ、
反射スクリーン10は、一般的なホワイトボードのように筆記具を用いて文字等の情報を描画したり消去したりできる形態としてもよく、
光制御層14よりも映像源側にハードコート機能、防眩機能等を有する表面機能層を設けてもよい、
インタラクティブボードシステム。」

2 引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、[0020]、[0021]、Fig.1Aの記載からして、次の技術的事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 強化ガラス板200を備えた、筆記消去自在のマーカーボード。」

3 引用文献3記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、【0001】、【0006】、【0009】、【図1】の記載からして、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 基板1の一面側に黒板を形成し、他面側にスクリーンを形成してなる映写スクリーン装置。」

4 引用文献4記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、【0017】ないし【0019】、【図2】の記載からして、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「 支持板30が接合層40を介して一体に接合され、支持板30がアルミニウム等の薄板により形成されたハニカム構造を備える反射スクリーンユニット。」

5 引用文献5記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、【0015】、【0017】、【図3】の記載からして、次の技術的事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 表面板ガラス2と背面板ガラス3の間に白色ないし単色散光性の中間層5を備え、透過型の映写スクリーンとして機能させることができる、投射スクリーン用板ガラス。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明における「反射スクリーン10」と「支持板50」は全体としてみれば「映像を表示できる」ものであるから、後述する相違点を除けば、本願発明1の「描写板本体」に相当する。

イ 引用発明の「インタラクティブボードシステム」は、「インタラクティブ」であるから「対話型」のものであり、「パーソナルコンピュータ等を備えた」ものであるから「電子」的なものであり、また、文字どおり「ボード」に関するシステムである。
また、引用発明は、「一般的なホワイトボード」としても利用できる形態を含むものである。
また、引用発明の「インタラクティブボードシステム」は、「反射スクリーン10」と「支持板50」(描写板本体)を含むものである。

ウ 前記ア及びイより、引用発明における「インタラクティブボードシステム」と本願発明の「(描写板本体を含む)対話型高精細ガラス電子ホワイトボード」とは、「対話型電子ホワイトボード」である点において共通する。

エ 引用発明の「支持板50」は、本願発明1の「基板」に相当する。

オ 引用発明の「光制御層14」は、「凸凹形状」(凸部141、凹部142)及び「微細な凸凹形状」(頂面141a、表面142a)の形状に加工された面(加工面)を備えている。
一方、本願発明1の「薄型強化ガラス」は、その描写面が「防眩処理されたマット面」に加工された面(加工面)を備えているといえる。
そうすると、本願発明1の「薄型強化ガラス」と「光制御層14」は、「加工面を備えた加工層」である点において共通している。
よって、本願発明1と引用発明とは、「前記基板の正面が加工面を備えた加工層に貼り合わされ」との構成を備える点において共通する。

カ 本願発明1の「不透明な中間層」は、「薄型強化ガラス」と「基板」との「貼り合わせ面」上に「付着」される層であり、また、「不透明な中間層」を構成する「白色又はクリーム色のフレキシブルなフィルム」はそれぞれ「薄型強化ガラス」および「基板」に貼り合わされたフィルム(層)である。
一方、引用発明において、「光制御層14」と「支持板50」の間にある層は、「光制御層14」側から、透明又は半透明のシート状の部材であり、グレー等の着色がなされた「基材層13」、光透過性を有し、フレネルレンズ形状が形成された「レンズ層11」、光を反射する作用を有する「反射層12」,及び、粘材等からなる「接合層」であるが、これらの層のうち、「光制御層14」と「支持板50」との貼り合わせ面上に「付着」するもの、ないし、「光制御層14」と「支持板50」との両方に貼り合わされた層は存在しない。
もっとも、上位概念化すれば、本願発明1の「不透明な中間層」又は「白色又はクリーム色のフレキシブルなフィルム」は、「薄型強化ガラス」と「基板」との間に介在する中間的な層又はフィルムといえ、一方、引用発明における「基材層13」、「レンズ層11」、「反射層12」及び「接合層」はまとめると「光制御層14」と「支持板50」との間に介在する中間的な層である。
よって、前記オを参酌すれば、引用発明における「基材層13」、「レンズ層11」、「反射層12」及び「接合層」と、本願発明1の「不透明な中間層」及び「白色又はクリーム色のフレキシブルなフィルム」とは、「加工面を備えた加工層と基板との間に介在する中間層」である点において共通する。

キ 引用発明の「位置検出部」は、これによって「使用者が反射スクリーン上にタッチペンや指等により描画でき」るから、周知の「タッチセンサモジュール」を含む概念である。
よって、本願の優先日における技術水準を考慮すれば、本願発明1と引用発明とは、「タッチセンサモジュール」を備える点において共通するといえる。

(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「描写板本体を含む対話型電子ホワイトボードにおいて、前記描写板本体は基板および加工面を備えた加工層を含み、前記基板の正面が加工面を備えた加工層に貼り合わされ、前記加工面を備えた加工層と基板との間に介在する中間層を備え、タッチセンサモジュールを備える対話型電子ホワイトボード。」

[相違点]
<相違点1>
一致点である「対話型電子ホワイトボード」が、本願発明1は、「対話型高精細ガラス電子ホワイトボード」すなわち、「高精細」であり「ガラス」の構成を備えるのに対し、引用発明の「インタラクティブボードシステム」は、「高精細」であることが特定されておらず、また、「ガラス」を備えない点。

<相違点2>
一致点である「加工面を備えた加工層」が、本願発明1は、「薄型強化ガラス」であり、かつ、その「描写面が防眩処理されたマット面」であるのに対し、引用発明の「光制御層14」は、「樹脂」により形成されるものであって、また、「スクリーン面に沿って単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向に交互に凸部141と凹部142とが配列された凹凸形状を有し、凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aが、その表面に微細な凹凸形状が形成され、光を拡散する光拡散性を有する」との構成を備えるものの、そのことにより、「描写面が防眩処理されたマット面」といえるかどうか不明である点。

<相違点3>
一致点である「前記加工面を備えた加工層と基板との間に介在する中間層」が、本願発明1は、「前記薄型強化ガラスと基板との貼り合せ面上」に「付着」される「不透明な中間層」であり、当該「不透明な中間層」は、「それぞれ薄型強化ガラスおよび基板に貼り合わされた白色またはクリーム色のフレキシブルなフィルム」であり、その表面は、「防眩処理されて凹凸があるマット面」であるのに対し、引用発明における「基材層13」、「レンズ層11」、「反射層12」及び「接合層」は、全体として、また、個々の層としても、本願発明1に係る上記構成を備えない点。

<相違点4>
一致点である「タッチセンサモジュール」が、本願発明1は、「前記不透明な中間層と前記基板との間」に「貼り付けられ」たものであるのに対し、引用発明の「位置検出部」は、「任意の位置に設定することができ」るものではあるが、前記「<相違点3>」において述べたように、引用発明は「不透明な中間層」に相当する構成を備えない以上、引用発明の「位置検出部」が、「前記不透明な中間層と前記基板との間」に「貼り付けられ」たものとはいえない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に、相違点2及び相違点3について検討する。
ア 相違点2について
(ア)引用発明に基づく容易想到性
引用発明は、「光制御層14よりも映像源側にハードコート機能、防眩機能等を有する表面機能層を設けてもよい」との構成を含むことから、「光制御層14」自体は、ハードコート機能又は防眩機能を備えないことを前提としていると理解することができる。
よって、引用発明において、「光制御層14」が備える、「スクリーン面に沿って単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向に交互に凸部141と凹部142とが配列された凹凸形状を有し、凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aが、その表面に微細な凹凸形状が形成され、光を拡散する光拡散性を有する」との構成は、「防眩処理」によるもの、あるいはこれを示唆するものではない。
一方、引用発明は、光制御層14よりも前面に「ハードコート機能」、「防眩機能」を備えた「表面機能層」を設ける形態を含んでいる。しかしながら、この「表面機能層」の素材・構造を、「薄型強化ガラス」であって、かつ、その表面を、「防眩処理」のための「凹凸があるマット面」とすることまでは、引用文献1には記載も示唆もなく、また、本願の優先日における技術常識であるともいえない。
また、上記の形態に基づいて、引用発明の「光制御層14」自体を、ハードコート機能、防眩機能等を有する表面機能層を兼ねるように構成することまでは当業者が容易に想到し得るといえるとしても、さらに、「光制御層14」の、「スクリーン面に沿って単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向に交互に凸部141と凹部142とが配列された凹凸形状を有し、凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aが、その表面に微細な凹凸形状が形成され、」という複雑な形状を維持しつつ、ハードコート機能と防眩機能を備えるように素材・構造を変更する具体的な手段までは、当業者といえども、引用文献1の記載に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、当業者が引用発明に基づいて容易に想到し得たものではない。

(イ)引用文献2記載事項の適用
引用文献2記載事項は、「 強化ガラス板200を備えた、筆記消去自在のマーカーボード。」である。
引用発明と、引用文献2記載事項とは、筆記等が可能な「ホワイトボード」(マーカーボード)である点において共通しているため、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けは存在する。
しかしながら、引用文献2には、「強化ガラス板200」について、その「描写面が防眩処理されたマット面」との構成を備えることは記載も示唆もなく、かつ、当該構成が、ホワイトボードに関する、本願の優先日における技術常識であるともいえない。
よって、引用発明に引用文献2記載事項を適用しても、本願発明1に係る相違点2の構成には到達しない。

(ウ)相違点2についてのまとめ
よって、当業者といえども、引用発明、又は、引用発明と引用文献2記載事項に基づいて、相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することができるとはいえない。

イ 相違点3について
引用文献5記載事項は、「 表面板ガラス2と背面板ガラス3の間に白色ないし単色散光性の中間層5を備え、透過型の映写スクリーンとして機能させることができる、投射スクリーン用板ガラス。」というものである。
引用文献5記載事項は、「(投射)スクリーン」に関する点において引用発明と共通するものの、引用文献5記載事項の「投射スクリーン用板ガラス」は、透過型の映写スクリーンとして機能させることができるものであるから、「不透明」なものではない。また、「単色散光性」を備えるからといって直ちに「防眩処理されて凹凸があるマット面」をその表面に備えるとも限らない。さらに、「中間層」は、「フレキシブルなフィルム」で構成されているかどうかも不明である。
そうすると、引用文献5記載事項は、相違点3に係る本願発明1の構成を備えない以上、引用発明に引用文献5記載事項を適用し得たとしても、相違点3に係る本願発明1の構成の構成には到達しない。
よって、当業者といえども、引用発明と引用文献5記載事項に基づいて、相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することができるとはいえない。

(4)本願発明1についてのまとめ
したがって、上記相違点1及び相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
引用発明における「位置検出部」には、本願の優先日における技術水準である、周知の「赤外線センサモジュール」が明らかに含まれる。よって、本願発明2と引用発明とは、「赤外線センサモジュール」を備える点において共通するといえる。
よって、本願発明2と引用発明とは、以下の点において一致する。

[一致点]
「描写板本体を含む対話型電子ホワイトボードにおいて、前記描写板本体は基板および加工面を備えた加工層を含み、前記基板の正面が加工面を備えた加工層に貼り合わされ、前記加工面を備えた加工層と基板との間に介在する中間層を備え、赤外線センサモジュールを備える対話型電子ホワイトボード。」

また、本願発明2と引用発明とは、本願発明1と引用発明との相違点である、上記[相違点1]ないし[相違点3]に加え、以下の、[相違点5]において相違する。

[相違点5]
一致点である「赤外線センサモジュール」が、本願発明2は、「前記薄型強化ガラス表面の周囲」に「取り付けられ」たものであるのに対し、引用発明の「位置検出部」は、「任意の位置に設定することができ」るものではあるが、前記「<相違点2>」において述べたように、引用発明は「薄型強化ガラス」に相当する構成を備えない以上、引用発明の「位置検出部」が、「前記薄型強化ガラス表面の周囲」に「取り付けられ」たものとはいえない点。

各相違点について検討するに、前記「1 本願発明1について」の「(3)相違点についての判断」の項において述べたように、相違点2及び相違点3に係る本願発明1の構成が引用発明等に基づいて容易想到とはいえないのと同じ理由により、相違点2及び相違点3に係る本願発明2の構成も引用発明等に基づいて容易想到とはいえない。
したがって、上記相違点1及び相違点5について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3ないし11について
本願発明3ないし11も、前記相違点2及び相違点3に係る本願発明1又は本願発明2の構成を備えるものであるから、本願発明1及び本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし11は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-08 
出願番号 特願2016-160846(P2016-160846)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 間野 裕一若林 治男吉田 美彦  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 林 毅
小田 浩
発明の名称 対話型高精細ガラス電子ホワイトボード  
代理人 小川 護晃  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 西山 春之  
代理人 松島 鉄男  
代理人 関谷 充司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ