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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1365864
審判番号 不服2019-1810  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-08 
確定日 2020-09-09 
事件の表示 特願2016-517050「排ガスを処理するための触媒化フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日国際公開、WO2014/194229、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530070〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は2014年(平成26年)5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)5月31日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 1月21日 :翻訳文提出
平成30年 1月 9日付け:拒絶理由通知書
平成30年 4月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月28日付け:拒絶査定
平成31年 2月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成31年2月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(以下、「本願補正発明」という。下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
a.平均細孔サイズ、入口側、出口側、及び、入口側と出口側との間の多孔質内装材を有する、ウォールフロー型フィルタ基材;並びに
b.基材の入口側からウォッシュコートされる触媒組成物であって、d_(50)粒子サイズ分布を有する、触媒組成物
を含むディーゼルパティキュレートフィルタであって、
基材の前記平均細孔サイズが約8から40μmであり、前記d_(50)粒子サイズ分布が4.9で割られた平均細孔サイズより小さく、該出口側が触媒コーティングを実質的に含まない、ディーゼルパティキュレートフィルタ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年4月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
a.平均細孔サイズ、入口側、出口側、及び、入口側と出口側との間の多孔質内装材を有する、ウォールフロー型フィルタ基材;並びに
b.基材の入口側からウォッシュコートされる触媒組成物であって、d_(50)粒子サイズ分布を有する、触媒組成物
を含むディーゼルパティキュレートフィルタであって、
前記d_(50)粒子サイズ分布が4.9で割られた平均細孔サイズより小さく、該出口側が触媒コーティングを実質的に含まない、ディーゼルパティキュレートフィルタ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載されたディーゼルパティキュレートフィルタの発明を特定するために必要な事項である「基材」の「平均細孔サイズ」について、上記のとおり「約8から40μmであ」るとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、2には以下の記載が認められる。
ア 引用文献1
(ア)本願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2012/0258032号明細書(以下「引用文献1」という。)には以下の記載がある。なお、摘記事項の翻訳は引用文献1に係る出願と優先基礎出願が共通する特表2015-504353号公報の記載を参考に当審が作成したものであり、「・・・」は省略を表す。

(1a)「1 . A filter article comprising:
a. a wall-flow filter comprising a porous substrate having inlet and outlet faces;
and
b. an SCR catalyst composition coated on at least one of the porous substrate inlet face, outlet face, and between said inlet and outlet faces, wherein the catalyst composition comprises transition metal promoted molecular sieve crystals, and wherein:
i. said crystals have a mean crystalline size of about 0.5 to about 15 μm,
ii. said crystals are present in said composition as individual crystals, agglomerations having a mean particle size of less than about 15 μm, or a combination of said individual crystals and said agglomerations; and
iii. said molecular sieve is an aluminosilicate or a silico-aluminophosphate of a Framework Type having a maximum ring size of eight tetrahedral atoms.」(請求項1)
(1(a)入口面及び出口面を有する多孔質基材を含むウォールフローフィルター;及び
(b)多孔質基材入口面、出口面、及び前記入口面と出口面との間の少なくとも一においてコーティングされたSCR触媒組成物であって、ここで該触媒組成物が、遷移金属で促進されたモレキュラーシーブ結晶を含み、ここで、
(i)前記結晶が、約0.5μm?約15μmの平均結晶サイズを有し;
(ii)前記結晶が、前記組成物中に、個々の結晶として、約15μm未満の平均粒径を有するアグロメレーションとして、又は前記個々の結晶及び前記アグロメレーションの組み合わせとして存在し;及び
(iii)前記モレキュラーシーブが、8個の正四面体原子の最大環サイズを有するフレームワークタイプのアルミノシリケート又はシリコアルミノホスフェートである、組成物を含むフィルター物品。)
(1b)「[0002]1. Field of Invention The present invention relates to articles for treating combustion exhaust gas. More particularly, the present invention relates to particulate filters coated with a selective reduction catalyst for reducing soot and NOx from lean combustionexhaust gas.」
(1.本発明は、燃焼排気ガスを処理するための物品に関する。より詳細には、本発明は、希薄燃焼排気ガスからスート及びNOxを低減するための選択的還元触媒でコーティングされたパティキュレートフィルターに関する。)
(1c)「[0026]Accordingly, in preferred embodiments the catalyst composition comprises molecular sieve crystals having a mean crystal size of greater than about 0.5 μm, preferably between about 0.5 and about 15 μm, such as about 0.5 to about 5 μm, about 0.7 to about 5 μm, about 1 to about 5 μm, about 1.5 to about 5.0 μm, about 1.5 to about 4.0 μm,about 2 to about 5 μm, or about 1 μm to about 10 μm. The crystals in the catalyst composition can be individual crystals, agglomeration of crystals, or a combination of both, provided that agglomeration of crystals have a mean particle size of less than about 15 μm, preferably less than about 10 μm, and more preferably less than about 5 μm. The lower limit on the mean particle size of the agglomeration is the composition's mean individual crystal size.」
(従って、好ましい実施形態において、触媒組成物は、約0.5μmを超える、好ましくは約0.5?約15μm、例えば約0.5?約5μm、約0.7?約5μm、約1?約5μm、約1.5?約5.0μm、約1.5?約4.0μm、約2?約5μm、又は約1μm?約10μmの平均結晶サイズを有するモレキュラーシーブ結晶を含む。触媒組成物中の結晶は、個々の結晶、結晶のアグロメレーション、又は両方の組み合わせであることができるが、ただし結晶のアグロメレーションは、約15μm未満、好ましくは約10μm未満、より好ましくは約5μm未満の平均粒径を有する。アグロメレーションの平均粒径における下限は、組成物の個々の平均結晶サイズである。)
(1d)「[0030]In addition to the mean crystal size, catalyst compositions preferably have a majority of crystal sizes greater than about 0.5 μm, preferably between about 0.5 and about 15 μm, such as about 0.5 to about 5 μm, about 0.7 to about 5 μm, about 1 to about 5 μm,about 1.5 to about 5.0 pm, about 1.5 to about 4.0 μm, about 2 to about 5 μm, or about 1 μm to about 10 μm.」
(平均結晶サイズに加えて、触媒組成物は、好ましくは、約0.5μmを超える、好ましくは約0.5?約15μm、例えば約0.5?約5μm、約0.7?約5μm、約1?約5μm、約1.5?約5.0μm、約1.5?約4.0μm、約2?約5μm、又は約1μm?約10μmである大部分の結晶サイズを有する。)
(1e)「[0038]In an embodiment of the invention, the catalyst composition is coated on a porous substrate, for example as a washcoat. The washcoat can be applied by any conventional means, including dipping, immersion, or injection, or some combination thereof, either alone or in further combination with one or more vacuum and/or pressure cycles to facilitate the loading of the catalyst washcoat on or in the substrate and/or to clear excess washcoat from the substrate after loading. Preferably, a majority of the washcoat permeates either a majority or the entire porous substrate, compared to the amount of washcoat, if any, that remains on the inlet or outlet faces of the porous substrate. In other embodiments, a majority or the washcoat remains on the inlet and/or outlet face of the porous substrate.」
(本発明の実施形態において、触媒組成物は、多孔質基材上に、例えばウォッシュコートとしてコーティングされる。ウォッシュコートは、浸漬、含浸、もしくは注入又はこれらの一部の組み合わせを含むいずれかの従来の手段を、単独で、又は、基材上又は基材中の触媒ウォッシュコートの充填量を促進する、及び/又は充填後に基材から過剰のウォッシュコートを清浄するために、さらに一又は複数の減圧及び/又は加圧サイクルと組み合わせることによって適用できる。好ましくは大部分のウォッシュコートは、たとえあるとしても多孔質基材の入口面又は出口面上に留まるウォッシュコートの量に比べて、多孔質基材の大部分又は全体に浸み込む。他の実施形態において、大部分のウォッシュコートは、多孔質基材の入口面及び/又は出口面上に留まる。)
(1f)「[0045]The mean pore size of the porous substrate is also important for filtration. Mean pore size can be determined by any acceptable means, including by mercury porosimetry. The mean pore size of the porous substrate should be of a high enough value to promote low backpressure, while providing an adequate efficiency by either the substrate per se, by promotion of a soot cake layer on the surface of the substrate, or combination of both. Preferred porous substrates have a mean pore size of about 10 to about 40 μm, for example about 20 to about 30 μm, about 10 to about 25 μm, about 10 to about 20 μm, about 20 to about 25 μm, about 10 to about 15 μm, and about 15 to about 20 μm.」
(多孔質基材の平均孔サイズはまた、濾過に重要である。平均孔サイズは、水銀ポロシメトリーによるものを含むいずれかの受容可能な手段によって決定できる。多孔質基材の平均孔サイズは、基材自体、基材の表面上のスートケーク層の促進、又は両方の組み合わせのいずれかによって適切な効率を提供しながら、低い背圧を促進するのに十分高い値のサイズでなければならない。好ましい多孔質基材は、約10?約40μm、例えば約20?約30μm、約10?約25μm、約10?約20μm、約20?約25μm、約10?約15μm、及び約15?約20μmの平均孔サイズを有する。)
(1g)「[0046]In certain embodiments of the invention, it is desirable for individual crystals to be of a size required to permeate into the porous substrate, but not into the smallest pore spaces of the substrate which would result in a blockage or diversion of the exhaust gas flow. Thus, the mean pore size of the substrate and the mean crystal size and particle size of the SCR catalyst should be correlated to achieve an improved catalytic filter. In certain embodiments, the ratio of mean pore size to mean crystal size is from about 3:1 to about 20:1, for example from about 5:1 to about 10:1, or from about 6:1 to about 9:1.」
(本発明の特定の実施形態において、個々の結晶は、多孔質基材には染み込ませるが、結果として排気ガスフローの妨害又は転換をもたらすことになる基材の最細孔空間には染み込ませないのに必要なサイズを有することが望ましい。故に、基材の平均孔サイズ及びSCR触媒の平均結晶サイズ及び粒径は、改善された触媒フィルターを得るために相関させるべきである。特定の実施形態において、平均孔サイズと平均結晶サイズとの比は、約3:1?約20:1、例えば約5:1?約10:1、又は約6:1?約9:1である。)

(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 a.入口面及び出口面を有する多孔質基材を含むウォールフロー型フィルタ;及び
b.基材の入口面と出口面との間の少なくとも一においてウォッシュコートされる触媒組成物
を含むディーゼルパティキュレートフィルタであって、
基材の平均細孔サイズが好ましくは約10から40μmであり、基材の平均孔サイズと触媒の平均結晶サイズとの比が、例えば約5:1?約10:1である、ディーゼルパティキュレートフィルタ。」

イ 引用文献2
(ア)同じく本願の優先日前に頒布された特開2012-200642号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(2a)「 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部と、少なくとも前記残余のセル内の隔壁母材の表面に配設された多孔質の捕集層とを備え、
前記捕集層は、複数の粒子が互いに結合、又は絡み合って構成されてなるものであるとともに、
前記捕集層は、前記複数の粒子として平板状の板状粒子を含み、前記複数の粒子は、平均粒長径が0.2μm以上10μm未満で、且つ各粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)の平均値が3未満で、且つ各粒子の厚さに対する長径の比(長径/厚さ)の平均値が3以上のものであり、
前記捕集層の表面の開口率が、10%以上であるハニカムフィルタ。」(請求項1)
(2b)「【0070】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、捕集層13の材質としては、セラミックや金属等を挙げることができる。より具体的には、捕集層を構成する粒子が、タルク、カオリン、マイカ、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、マグネシア、コージェライト、及びムライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分とする粒子であることが好ましい。・・・。
・・・。
【0072】
また、コーティングする粒子又はゾルには触媒成分が含まれていてもよい。例えば、セラミックの粒子に触媒成分を含むゾルをコーティングすることにより、板状粒子表面での粒子状物質(PM)の酸化速度を向上させることができる。また、捕集層のみに触媒を塗布できるため触媒の使用量を低減することができる。・・・。
・・・。
【0074】
・・・本実施形態のハニカムフィルタは、流入セル内の隔壁の表面に捕集層が形成されたものであるため、本実施形態のハニカムフィルタによれば、粒子状物質が捕集層で捕集されて、隔壁の細孔内に侵入することを防止することができ、圧力損失の急速な上昇を抑制することができる。
【0075】
また、図1及び図2に示すハニカムフィルタ100においては、捕集層13が、流入セル2a内の隔壁母材1の表面にのみ配設された例を示しているが、捕集層13が、流出セル2b内の隔壁母材1の表面に更に配設されていてもよい。流出セル2b内の隔壁母材1の表面に更に捕集層13を配設することにより、粒子状物質の捕集効率を向上させることができる。一方、流入セル2a内の隔壁母材1の表面にのみ捕集層13を配設することにより、初期圧力損失の過度の上昇を抑制することができる。」
(2c)「【0152】
本発明のハニカムフィルタは、ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。・・・。」

(3)引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)基材の平均細孔サイズの値は、引用発明では「好ましくは約10から40μm」であるのに対して、本願補正発明では「約8から40μm」であり、その数値範囲の大部分において重複し、かつ、引用発明の数値範囲は本願補正発明の数値範囲に含まれるものであるから、基材の平均細孔サイズにおいて両者は相違しない。

イ 本願補正発明と引用発明とは、下記[一致点]において一致し、下記[相違点1]、[相違点2]において、一応相違する。
[一致点]
「a.平均細孔サイズ、入口側、出口側、及び、入口側と出口側との間の多孔質内装材を有する、ウォールフロー型フィルタ基材;並びに
b.基材表面にウォッシュコートされる触媒組成物
を含み、
基材の前記平均細孔サイズが約8から40μmである、ディーゼルパティキュレートフィルタ」である点。

[相違点1]
本願補正発明は、触媒組成物は基材の入口側からウォッシュコートされ、出口側に触媒コーティングを実質的に含まないのに対して、引用発明では、触媒組成物は基材の入口面と出口面との間の少なくとも一においてウォッシュコートされるとの特定をしている点。
[相違点2]
本願補正発明は、触媒組成物のd_(50)粒子サイズ分布が4.9で割られた平均細孔サイズより小さい点が特定されているのに対して、引用発明においては、基材の平均孔サイズと触媒の平均結晶サイズとの比が、例えば約5:1?約10:1である点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。事案に鑑み、相違点2、相違点1の順に検討する。
ア 相違点2について
本願補正発明における「d_(50)粒子サイズ分布」とは、粒子サイズ分布の中央値(累積分布内の50%における粒径値)を表す(段落【0031】)。他方、引用発明における触媒組成物は、摘記(1c)によれば、個々の結晶、結晶のアグロメレーション(凝集体)、又はその組合せから構成されるものであって、上記アグロメレーションの平均粒径は平均結晶サイズを下限とし、5μm未満が好ましいとされているところ、触媒組成物の平均結晶サイズとして好ましい数値範囲である約0.5?約5μmは、上記平均粒径の数値範囲とはほぼ重複するものといえる。さらに、摘記(1d)には、大部分の触媒組成物が平均結晶サイズに含まれるとも説明されている。
してみると、引用発明における触媒組成物(個々の結晶、結晶のアグロメレーション、又はその組合せ)の粒子サイズ分布の中央値、すなわちd_(50)はその平均結晶サイズとほぼ同等の値である蓋然性は高く、引用発明において基材の平均孔サイズと触媒組成物の平均結晶サイズとの間に例えば約5:1?約10:1との相関があるのであれば、平均孔サイズとd_(50)との間にも同様に約5:1?約10:1との相関があると考えられる。
以上のとおり、引用発明における触媒組成物のd_(50)粒子サイズ分布は、基材の平均細孔サイズを4.9で割った値より小さいと考えられることから、上記相違点2は引用発明と本願補正発明との相違点たり得ない。

イ 相違点1について
本願補正発明や引用発明が属するパティキュレートフィルターの技術分野において、フィルタ面へのスートの蓄積によって生じる背圧の上昇(圧力損失)を抑制することは優先日における周知の技術的課題である(摘記(1f)、(2b)を参照。更に要すれば、特開2012-52546号公報(拒絶理由通知において周知技術を示す文献(引用文献3)として引用されたもの。特に【0045】)、国際公開第2008/136232号([0007]?[0010]など)も参照。)。そして、引用文献1及び2には、触媒を含むコーティング層を流入セル内の隔壁の母材の表面のみ、すなわち入口側のみに設ける(当該層が出口側には実質的に設けられない)態様が開示され(摘記(1e)、(2b))また、上記いずれの周知技術を示す文献においても基体の「入口側のみ」にコーティング層を設ける態様について言及されているように、かかる構造自体は当該技術分野において周知の技術的事項といえる。また、引用文献2には、コーティング層を入口側のみに配設した場合は、所期圧力損失の過度の上昇を抑制することができると記載されている。
上記周知の事項及び上記引用文献2の記載に接した当業者であれば、引用発明においてコーティング層を入口側のみに設ける場合に、出口側にも設ける場合等に比して運転時の圧力損失が改善し得るものと理解する。
してみると、引用発明における触媒組成物を含むコーティング層を入口側のみに設ける(この場合、出口側にはコーティング層を実質的に含まないこととなる)との、相違点1に係る構造を採用することは当業者による通常の創作能力の発揮にすぎない。

ウ そして、本願明細書における実施例の記載からは具体的なスートロード背圧の測定方法等が必ずしも明らかではないものの、明細書の記載を総合的に勘案しても、本願補正発明の発明特定事項に係る構造を採用することによって奏するフィルタ全体の背圧が低減し得るとの効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項並びに当該技術分野における周知の技術的事項から当業者が予測し得る範囲のものにすぎないものであって、格別のものとは認められない。

(5)審判請求書における請求人の主張について
ア 請求人は審判請求書において、以下の主張をする。
(ア)当業者であっても、捕集層の形成に関して、湿式法を用いるべきではなく乾式法を選択すべきことを強く示唆する引用文献2から、湿式法を採用するように動機付けられるとは考えられない。(5頁16?18行)
(イ)引用文献2には、補正後の本願発明の特徴である、「基材の前記平均細孔サイズが約8から40μmであり、前記d_(50)粒子サイズ分布が4.9で割られた平均細孔サイズより小さく」との狭く具体的な数値により規定された特徴を採用することについて記載も示唆も存在しない。(5頁下から7?下から3行)
イ しかしながら、以下のとおり、請求人の主張はいずれも採用することができない。
(ア)に関して、原査定の理由は、フィルタ基材に触媒組成物のウォッシュコート層を形成する引用発明において、コーティング層(捕集層)を流入セル内の表面のみに設けることによってフィルタの圧力損失を抑制し得るという引用文献2に記載の技術を適用することは、当業者が容易に想到し得るとするものであるから、かかる主張は原査定の理由を正解したものではない。
また、(イ)に関して、基材の平均細孔サイズの値、触媒のd_(50)粒子サイズ分布と平均細孔サイズとの関係において、本願発明と引用発明とが相違するものと認められないことは上記(4)アで検討したとおりである。

3 小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び優先日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年2月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項に係る発明は、平成30年4月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は、この出願の請求項1?20に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2012/0258032号明細書
引用文献2.特開2012-200642号公報
引用文献3.特開2012-052546号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、ディーゼルパティキュレートフィルタのフィルタ基材の平均細孔サイズに関する、
「基材の前記平均細孔サイズが約8から40μmであり、」
との限定事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された事項及び優先日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、引用文献2に記載された事項及び優先日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-04-02 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-21 
出願番号 特願2016-517050(P2016-517050)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
P 1 8・ 56- Z (B01D)
P 1 8・ 575- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 服部 智
後藤 政博
発明の名称 排ガスを処理するための触媒化フィルタ  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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