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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1365869
審判番号 不服2019-3782  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-20 
確定日 2020-09-09 
事件の表示 特願2014-252475「認証入力方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月22日出願公開,特開2015-115079〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成26年12月12日(パリ条約による優先権主張2013年12月13日 中華人民共和国)の出願であって,
平成29年3月6日付けで審査請求がなされ,平成30年3月1日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成30年6月13日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成30年11月9日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成30年11月20日),これに対して平成31年3月20日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,令和1年7月12日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ 令和1年11月11日付けで当審による拒絶理由が通知され,これに対して令和2年2月12日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,令和2年2月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「認証出力ユニットが,第一言語情報に基づいた語義である第一語義に対応する第一の画像および前記第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義に対応する第二の画像をクライアント端末に送信するステップであって,前記第一の画像に基づくユーザによる前記第一語義の語義理解により前記第一語義が前記第二語義と関連付けられるように,前記第一語義と前記第二語義は関連しているステップと,
認証入力ユニットが,前記クライアント端末が送信した操作情報を受信するステップであって,前記操作情報は,前記クライアント端末が操作指令に基づいて前記第二の画像に操作を実行して獲得した情報であり,前記操作指令は,前記ユーザが前記第一語義および前記第二語義に対する前記語義理解に基づいて作動させたものであるステップと,
認証処理ユニットが,前記第一の画像が対応する認証情報に基づいて,前記操作情報に対して認証を行うステップと,
を含むユーザがコンピュータであるか人間であるかを区別する認証入力方法。」

第3.引用文献に記載の事項
1.本願の第1国出願前に既に公知である,「Arpan Desai, Pragnesh Patadia“Drag and Drop:A Better Approach to CAPTCHA” 2009 Annual IEEE IndiaConference, IEEE, 2010年2月8日, p1-4」(以下,これを「引用文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「IV.DESIGN ANDIMPLEMENTATION
In Fig. 3 there are 7 characters in the image {z,f,e,f,y,m,t} ,so 7 draggables in to characters block and same number of drop boxes are available. Consider specific case for this image; user has to drag draggable ‘y’ and has to place it in the dropbox5, likewise draggable‘t’ , ‘f’ and rest according their appearance in the image.
Order to pick and place the draggable in to dropbox is independent of their appearance in the character block. Even any draggable once placed in to dropbox can be moved back to characters block or to another dropbox.
Submitting the test before placing all draggables appropriately leads to failure result.」(2頁左欄41行?末行)
(図3において,画像{z,f,e,f,y,m,t}内に,7つの文字が存在し,それで,文字ブロックへの7つのドラッグ可能物と,同数のドロップ・ボックスが利用可能である。この画像についての具体的なケースを考えよう;ユーザは,ドラッグ可能物‘y’をドラッグし,それを,ドロップ・ボックス5に,同様に,ドラッグ可能物‘t’,‘f’および残りを,画像におけるそれらの見掛けに従って,配置しなければならない。
ドラッグ可能物を,抜いて,ドロップ・ボックスに配置する命令は,文字ブロックにおいて,それらの見掛けとは無関係である。さらに,一度,ドロップ・ボックス内に配置された,任意のドラッグ可能物は,文字ボックスへ戻る,或いは,他のドロップ・ボックスに移動することが可能である。
全てのドラック可能物を適切に配置する前に,テストを送信すると,失敗の結果を導くことになる。<当審にて訳出。以下,同じ。>)

B.「



C.「In Fig. 4D raggalbes are placed on the dropboxes. User can move already placed draggable back in to Characters block or other non empty dropbox. In the case of ambiguity or difficulty in viewing CAPTCHA image; user has a choice of “Trya Different Image”.
Difficulty level of DnD CAPTCHA can be easily changed with the following Parameters:
i. Less number of characters in the image leads to lower difficulty level and vice versa.
ii. Instead of blur or distorted image, simple labels with alphabets or numbers can reduce the difficulty level
iii. Add more number of draggables than number of dropbox (Fig. 5) can fairly increase difficulty level
These techniques can be useful to vary the difficulty level according to their respective application of the Human Intervention Proof.」(2頁右欄1行?16行)
(図4において,ドラッグ可能物が,ドラッグ・ボックス上に配置される。ユーザは,既に配置されているドラッグ可能物を,戻す,或いは,他のからのドラッグ・ボックスに移動することができる。表示されているCAPTCHA画像が,不明確か,難しい場合;ユーザは,“異なる画像を試す”という選択肢を有する。
DnD CAPTCHAの困難性のレベルは,以下のパラメータを用いることで,簡単に変えることができる。
i.画像内の文字数が少ないことが,より少ない困難性となる要因である。逆もまた同様。
ii.不鮮明,或いは,ねじ曲げられた画像の代りに,アルファベットや,数字による簡単なラベルは,困難性のレベルを減らすことができる
iii.ドロップ・ボックスの数以上の数のドラッグ可能物の付加は(図5),困難性のレベルを相当に増加することができる。
これらの手法は,人介入証明のそれぞれアプリケーションに従って,困難性のレベルを変化させるために有益であり得る。)

D.「



E.「The module used in the test is displayed in the Fig. 6. It is demonstrated that draggable ‘j’ and draggable‘k’ is placed on right place and draggable ‘y’ and draggable ‘c’ is misplaced.After submitting of test user knows that he passed or failed the CAPTCHA challenge.」(3頁右欄4行?8行)
(このテストで用いられるモジュールが,図6に示されている。そこには,ドラッグ可能物‘j’と,ドラッグ可能物‘k’が正しい場所に配置され,ドラッグ可能物‘y’と,ドラッグ可能物‘c’が,間違って配置されていることが示されている。テストの送信後,ユーザは,自分がCAPTCHAチャレンジに通ったか,失敗したかを知る。)

F.「 VIII. FUTURE EXTENSIONS
Currently this approach is designed for the personal computers only. Increasing users of iPhone, androids, Pocket PCs, Touch phones, Kindles, various other mobiles and Wi-Fi enabled devices indicates to extend this approach on mobiles; hence we started to work on Mobile version of this approach both on Touch and Non-Touch versions. [13]
Consider the case of Mobile screen resolutions, so identifying the distorted characters can be tough sometimes. DnD approach can be useful to avoid the overhead of distinguishing between upper and lower cases and the similar characters like ‘I’,’1’ and ‘l’. DnD approach can be extended in different languages. Instead of characters with the help of geometrical shapes Human Intervention Proof can be verified very easily and language independently. [4]
Other enhancements of the approach can be done after addressing larger group of users and on the basis of their feedback.」(4頁左欄37行?末行)
( VIII.将来の拡張
これまでのところ,このアプローチは,パソコンのみのため考案されている。iPhone,アンドロイド,ポケットPC,タッチフォン,キンドル,他の様々なモバイル,及び,デバイスに利用されるWi-Fiのユーザが増加することが,モバイル上でこのアプローチが広がることを示している;それ故,我々は,このアプローチの接触,非接触のモバイル・バージョンの開発に取り組むことを開始した。[13]
携帯画面の解像度の場合を検討し,それで,歪曲した文字を識別することを,時々,難しくすることができる。DnDアプローチは,大文字と,小文字の間の,及び,‘I’,‘1’,及び,‘l’のような,似通った文字を区別するオーバヘットを避けることに有利であるようにできる。DnDアプローチは,他の言語において,拡張され得る。幾何学的形状の助けを借りる文字に換えて,人介入証明は,簡単に,言語非依存に検証され得る。[4]
そのアプローチの他の強化は,より大きなユーザグループに対処することの後に,彼らのフィードバックの基礎に基づいて,行うことができる。)

2.原審における平成30年11月9日付けの拒絶査定において,周知文献として提示された,本願の第1国出願前に既に公知である,「金森一樹,児玉英一郎,王家宏,高田豊夫“日本語文字と熟語及び英数字を用いたCAPTCHAに関する提案”,情報処理学会研究報告 2012(平成24)年度▲1▼[CD-ROM],日本,一般社団法人情報処理学会,2012年6月15日,pp.1-6」(以下,これを「引用文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G.「



3.本願の第1国出願前にすでに公知である,国際公開第2012/029519号(国際公開日;2012年3月8日,以下,これを「周知文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H.「[0005] 本発明は,このような問題に鑑みてなされたものであり,その課題の一例は,人間には視認性を低下させず,コンピュータには認識しにくいCAPTCHAを実現する応答判定装置,応答判定方法,応答判定プログラム,記録媒体,および,応答判定システムを提供することを目的とする。」

I.「[0080] 次に,応答判定サーバ10は,文章より質問および正解を生成する(ステップS11)。具体的に,応答判定サーバ10のシステム制御部14は,質問・正解生成手段の一例として,取得した文章を構文解析して,「今日の天気は」と「快晴です」に分離し,「今日の天気は?」から「きょうの てんきは?」という質問の文章を生成し,「快晴です」から「快晴」という正解を生成する。また,「Today's weather is sunny.」の場合,応答判定サーバ10のシステム制御部14は,主語「Today's weather」と補語「sunny」とに分離し,主語「Today's weather」から,「Today's weather?」という質問の文章を生成し,補語「sunny」から「sunny」という正解を生成する。
[0081] なお,応答判定サーバ10のシステム制御部14は,類義語辞書のデータベース等を参照して,「晴れ」や「clear」等も正解としてもよい。また,人間と機械とを区別できればよいので,実際の天気に関係なく,応答判定サーバ10のシステム制御部14は,「雨」,「rainy」,「曇り」,「cloudy」等を正解にしてもよい。このように,応答判定サーバ10のシステム制御部14は,文章から質問を生成することにより,テキスト情報からなる質問と,質問に対する正解と,を取得する質問・正解取得手段の一例として機能する。また,応答判定サーバ10のシステム制御部14は,文章から正解を生成することにより,テキスト情報からなる質問と,質問に対する正解と,を取得する質問・正解取得手段の一例として機能する。」

4.本願の第1国出願前にすでに公知である,特表2013-532342号公報号(公表日;2013年8月15日,以下,これを「周知文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

J.「【背景技術】
【0002】
CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart)は,サーバによって設定されたテストの応答者が人間であって,他のコンピュータではないことを保証するために,コンピュータにおいて一般に使用されるチャレンジ・レスポンス・テストである。一般に,人間は,そのテストに合格するのに何の困難もないが,他のコンピュータは,そのテストに合格するのが困難である。なぜなら,テストは一般的に,他のコンピュータが持っていない認識能力を必要とするからである。従って,そのテストに合格すれば,そのテストを提示するサーバは,応答者が人間であると推測する。その場合,サーバは,そのテストに関連する保護されたコンピュータ資源への応答者のアクセスを許可することができる。」

第4.引用文献1に記載の発明
1.上記Aの「In Fig. 3 there are 7 characters in the image {z,f,e,f,y,m,t} ,so 7 draggables in to characters block and same number of drop boxes are available.(図3において,画像{z,f,e,f,y,m,t}内に,7つの文字が存在し,それで,文字ブロックへの7つのドラッグ可能物と,同数のドロップ・ボックスが利用可能である。)」という記載と,上記Bに引用のFig.4,Fig.5に開示された事項から,引用文献1には,
“7つの文字を表す画像と,7つのドラッグ可能物と,7つのドロップ・ボックスを表示させる段階”が記載されていることが読み取れる。

2.上記Aの「Submitting the test before placing all draggables appropriately leads to failure result.(全てのドラック可能物を適切に配置する前に,テストを送信すると,失敗の結果を導くことになる。)」という記載から,引用文献1においては,当該「テスト」を“受信する”構成が存在することは明らかであるから,上記Cの「These techniques can be useful to vary the difficulty level according to their respective application of the Human Intervention Proof.(これらの手法は,人介入証明のそれぞれアプリケーションに従って,困難性のレベルを変化させるために有益であり得る。)」という記載と,上記1.においても引用したFig.4,Fig.5に開示された事項から,引用文献1には,
“全てのドラック可能物を適切に配置したテストを受信し,人介入証明をするアプリケーション”が記載されていることが読み取れる。

3.上記Aの「user has to drag draggable ‘y’ and has to place it in the dropbox5, likewise draggable‘t’ , ‘f’ and rest according their appearance in the image.(ユーザは,ドラッグ可能物‘y’をドラッグし,それを,ドロップ・ボックス5に,同様に,ドラッグ可能物‘t’,‘f’および残りを,画像におけるそれらの見掛けに従って,配置しなければならない。)」という記載,上記2.においても引用した,上記Aの「Submitting the test before placing all draggables appropriately leads to failure result.(全てのドラック可能物を適切に配置する前に,テストを送信すると,失敗の結果を導くことになる。)」という記載,上記1.においても引用したFig.4,Fig.5に開示された事項,及び,上記Eの「It is demonstrated that draggable ‘j’ and draggable ‘k’ is placed on right place and draggable ‘y’ and draggable ‘c’ is misplaced. After submitting of test user knows that he passed or failed the CAPTCHA challenge.(そこには,ドラッグ可能物‘j’と,ドラッグ可能物‘k’が正しい場所に配置され,ドラッグ可能物‘y’と,ドラッグ可能物‘c’が,間違って配置されていることが示されている。テストの送信後,ユーザは,自分がCAPTCHAチャレンジに通ったか,失敗したかを知る。)」という記載,「CAPTCHA」についての周知の技術知識から,引用文献1においては,
“ユーザが,表示された画像の見掛けに応じて,ドラッグ可能物をドラッグし,ドロップ・ボックスに配置してテストの結果を送信する段階と,送信された前記テストの結果の可否を判定する段階と,前記判定の結果をユーザに通知する段階”とが存在することが読み取れる。

4.上記1.において検討した事項と,上記3.において検討した事項から,上記3.における「表示された画像」と,上記1.における「7つの文字を表す画像」とは,同じものであり,上記2.,及び,上記3.において検討した事項から,上記3.における「判定」は,上記2.における「人介入証明をするアプリケーション」が行っていることは明らかであるから,この点を踏まえると,引用文献1においては,
“ユーザが,7つの文字を表す画像の見掛けに応じて,ドラッグ可能物をドラッグし,ドロップ・ボックスに配置してテストの結果を送信する段階と,送信された前記テストの結果の可否を,人介入証明をするアプリケーションによって判定する段階と,前記判定の結果をユーザに通知する段階”が存在することが読み取れる。

5.上記4.において検討した事項から,引用文献1に記載の「DnD CAPTCHA」は,“人が操作していることを証明するための手法”であることは明らかであり,上記Fの「this approach is designed for the personal computers only.Increasing users of iPhone, androids, Pocket PCs, Touch phones, Kindles,various other mobiles and Wi-Fi enabled devices indicates to extend this approach on mobiles; hence we started to work on Mobile version of this approach both on Touch and Non-Touch versions. (このアプローチは,パソコンのみのため考案されている。iPhone,アンドロイド,ポケットPC,タッチフォン,キンドル,他の様々なモバイル,及び,デバイスに利用されるWi-Fiのユーザが増加することが,モバイル上でこのアプローチが広がることを示している;それ故,我々は,このアプローチの接触,非接触のモバイル・バージョンの開発に取り組むことを開始した。)」という記載と,上記1.?上記4.において検討した事項から,引用文献1における「DnD CAPTCHA」とは,
“iPhone等のモバイル端末の画面上に,歪ませた7つの文字を表す画像と,7つのドラッグ可能物と,7つのドロップ・ボックスを表示させる”態様を含むものであることが読み取れる。

6.以上,上記1.?上記5.において検討した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「iPhone等のモバイル端末の画面上に,歪ませた7つの文字を表す画像と,7つのドラッグ可能物と,7つのドロップ・ボックスを表示させる段階と,
ユーザが,前記画像の見掛けに応じて,前記ドラッグ可能物をドラッグし,前記ドロップ・ボックスに配置してテストの結果を送信する段階と,
前記送信されたテストの結果の可否を,人介入証明をするアプリケーションによって判定する段階と,
前記判定の結果がユーザに通知する段階とを有する,人の介入を証明する方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
1.引用発明における「iPhone等のモバイル端末」が,
本願発明における「クライアント端末」に相当し,
引用発明において,「iPhone等のモバイル端末の画面上に,歪ませた7つの文字を表す画像と,7つのドラッグ可能物と,7つのドロップ・ボックスを表示させる段階」とは,「モバイル端末」に,「歪ませた7つの文字を表す画像」,「7つのドラッグ可能物」,及び,「7つのドロップ・ボックス」を表示するためのデータを送信する“送信部”が存在することは明らかであり,
引用発明において,前記“送信部”は,「送信されたテストの結果の可否を,人介入証明をするアプリケーションによって判定する段階」の前段に位置し,「モバイル端末」を人が操作しているという「人の介入を証明する」ことに用いられるデータを送信するものであるから,
引用発明における“送信部”が,
本願発明における「認証出力ユニット」に相当する。
そして,引用発明において,「歪ませた7つの文字を表す画像」は,「CAPTCHA」における「ユーザ」への出題,「7つのドラッグ可能物」は,前記出題に答えるための文字列であるから,
引用発明における「歪ませた7つの文字を表す画像」と,本願発明における「第一言語情報に基づいた語義である第一語義に対応する第一の画像」とは,
“出題である第一の画像”である点で共通し,
引用発明における「7つのドラッグ可能物」と,本願発明における「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義に対応する第二の画像」とは,
“解答を作成するための第二の画像”である点で共通するので,
引用発明における「iPhone等のモバイル端末の画面上に,歪ませた7つの文字を表す画像と,7つのドラッグ可能物と,7つのドロップ・ボックスを表示させる段階」と,
本願発明における「認証出力ユニットが,第一言語情報に基づいた語義である第一語義に対応する第一の画像および」「第二言語情報に基づいた語義である第二語義に対応する第二の画像をクライアント端末に送信するステップ」とは,
“認証出力ユニットが,出題である第一の画像および解答を作成するための第二の画像をクライアント端末に送信するステップ”である点で共通する。

2.「語義」とは,“ことば・単語の意味”(久松潜一,林 大,阪倉篤義監修「国語辞典」講談社学術文庫 昭和54年2月10日第1刷発行)である。
引用発明における「歪ませた7つの文字を表す画像」は,“7つの文字を用いて,英語等の単語を表現した画像”という態様を含むものであり,当該「単語」が,「英語」等の言語に対応するする場合,“7つの文字を用い表現した単語”が表す意味が,当該「単語」の「語義」を表すものであるから,
引用発明における,当該「単語」の「意味」と,
本願発明における「第一言語情報に基づいた語義である第一語義」とは,
“第一語義”である点で共通するので,
引用発明における「歪ませた7つの文字を表す画像」は,
本願発明における「第一語義に対応する第一の画像」に相当するといえ,
引用発明における「7つのドラッグ可能物」は,「7つの文字」に対応するものであって,当該「7つのドラッグ可能物」は,「歪ませた7つの文字を表す画像」に対応するものである。
そして,引用発明における,当該「7つのドラッグ可能物」によって表現される単語等の意味と,
本願発明における「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義」とは,
“第二語義”である点で共通するので,
引用発明における「7つのドラッグ可能物」が,
本願発明における「第二語義に対応する第二の画像」に相当し,
引用発明においては,「歪ませた7つの文字を表す画像」,即ち,「第一語義」と,「7つのドラッグ可能物」,即ち,「第二語義」との一致を見て,「人の介入を証明する」ものであるから,「第一語義」と,「第二語義」が関連していることは明らかである。
さらに,本願発明において,「語義理解」とは,“ユーザが,第一の画像が表すものが何を意味しているかを理解する”ことである。
そして,引用発明において,「ユーザが見掛けに応じて,前記ドラッグ可能物をドラッグ」することは,“ユーザが歪ませた7つの文字を表す画像の意味を理解”した結果に基づくものであるから,引用発明において,「歪ませた7つの文字を表す画像」が,「文字」を表すものである以上,“ユーザが,歪ませた7つの文字の画像の語義を理解する”態様を含むものであることも明らかである。
以上に検討した事項から,
引用発明における「iPhone等のモバイル端末の画面上に,歪ませた7つの文字を表す画像と,7つのドラッグ可能物と,7つのドロップ・ボックスを表示させる段階」と,
本願発明における「認証出力ユニットが,第一言語情報に基づいた語義である第一語義に対応する第一の画像および第二言語情報に基づいた語義である第二語義に対応する第二の画像をクライアント端末に送信するステップであって,前記第一の画像に基づくユーザによる前記第一語義の語義理解により前記第一語義が前記第二語義と関連付けられるように,前記第一語義と前記第二語義は関連しているステップ」とは,
“認証出力ユニットが,第一語義に対応する第一の画像および第二語義に対応する第二の画像をクライアント端末に送信するステップであって,前記第一の画像に基づくユーザによる前記第一語義の語義理解により前記第一語義が前記第二語義と関連付けられるように,前記第一語義と前記第二語義は関連しているステップ”である点で共通する。

3.引用発明において,「テストの結果」とは,「ドラッグ可能物」を「ドロップ・ボックス」に並べたものであって,「ユーザ」が「モバイル端末」上で,「ドラッグ可能物」を操作した結果であるから,
引用発明における「テストの結果」が,
本願発明における「操作情報」に相当するので,
引用発明における「ユーザが,前記画像の見掛けに応じて,前記ドラッグ可能物をドラッグし,前記ドロップ・ボックスに配置してテストの結果」と,
本願発明における「操作情報は,前記クライアント端末が操作指令に基づいて前記第二の画像に操作を実行して獲得した情報」とは,
“操作情報は,クライアント端末が第二の画像に操作を実行して獲得した情報”である点で共通し,
引用発明における「送信されたテストの結果の可否を,人介入証明をするアプリケーションによって判定する段階」から,
引用発明において,“ユーザのモバイル端末”から「送信されたテストの結果」を受信する“受信部”が存在することは明らかであり,当該“受信部”は,「人の介入を証明する」ために用いられる情報を受信するものであるから,
引用発明における“受信部”が,
本願発明における「認証入力ユニット」に相当し,
引用発明において,“ユーザのモバイル端末から送信されたテストの結果を受信する受信部”とは,言い換えれば,
引用発明において,“受信部が,ユーザのモバイル端末から送信されたテストの結果を受信する”ことに他ならないので,
本願発明における「認証入力ユニットが,前記クライアント端末が送信した操作情報を受信するステップ」に相当することから,
引用発明における「ユーザが,前記画像の見掛けに応じて,前記ドラッグ可能物をドラッグし,前記ドロップ・ボックスに配置してテストの結果を送信する段階と,
前記送信されたテストの結果」と,
本願発明における「認証入力ユニットが,前記クライアント端末が送信した操作情報を受信するステップであって,前記操作情報は,前記クライアント端末が操作指令に基づいて前記第二の画像に操作を実行して獲得した情報」とは,
“認証入力ユニットが,クライアント端末が送信した操作情報を受信するステップであって,前記操作情報は,クライアント端末が第二の画像に操作を実行して獲得した情報”である点で共通する。

4.引用発明において,「送信されたテストの結果の可否を,人介入証明をするアプリケーションによって判定する段階」には,「人介入証明をするアプリケーション」を実行する“手段”が存在し,
当該“手段”が,該「人介入証明をするアプリケーション」を実行することで,「送信されたテスト結果の可否」を「判定する」,即ち,“ユーザのモバイル端末”に表示された「歪ませた7つの文字を表す画像」を,「ユーザ」が正しく認識したかを「判定」するものであることは明らかであり,
上記1.?上記3.において検討したとおり,引用発明における「歪ませた7つの文字を表す画像」,「送信されたテストの結果」は,それぞれ,本願発明における「第一の画像」,「操作情報」に相当し,
引用発明において,「人介入証明をするアプリケーション」を実行することで,「送信されたテスト結果の可否」を「判定する」ということは,そのための“判断基準”を有していることは,明らかである。
そして,上記検討の引用発明における“判断基準”が,
本願発明における「第一の画像が対応する認証情報」に相当し,
引用発明における上記“手段”が,
本願発明における「認証処理ユニット」に相当することを踏まえると,
引用発明における「送信されたテストの結果の可否を,人介入証明をするアプリケーションによって判定する段階」が,
本願発明における「認証処理ユニットが,前記第一の画像が対応する認証情報に基づいて,前記操作情報に対して認証を行うステップ」に相当する。

5.引用発明において,「判定の結果がユーザに通知する段階とを有する,人の介入を証明する方法」は,上記1.?上記4.において検討したとおり,“ユーザが,ユーザのモバイル端末を操作しているか否かを証明する方法”,即ち,“ユーザが,人であるか,コンピュータ,或いは,ソフトウェアといった以外のものであるか否かを証明する方法”に他ならないので,
引用発明における「判定の結果がユーザに通知する段階とを有する,人の介入を証明する方法」が,
本願発明における「ユーザがコンピュータであるか人間であるかを区別する認証入力方法」に相当する。

6.以上,上記1.?上記5.において検討したことから,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
認証出力ユニットが,第一語義に対応する第一の画像および第二語義に対応する第二の画像をクライアント端末に送信するステップであって,前記第一の画像に基づくユーザによる前記第一語義の語義理解により前記第一語義が前記第二語義と関連付けられるように,前記第一語義と前記第二語義は関連しているステップと,
認証入力ユニットが,前記クライアント端末が送信した操作情報を受信するステップであって,前記操作情報は,前記クライアント端末が前記第二の画像に操作を実行して獲得した情報であるステップと,
認証処理ユニットが,前記第一の画像が対応する認証情報に基づいて,前記操作情報に対して認証を行うステップと,
を含むユーザがコンピュータであるか人間であるかを区別する認証入力方法。

[相違点1]
“第一語義に対応する第一の画像および第二語義に対応する第二の画像”に関して,
本願発明においては,「第一言語情報に基づいた語義である第一語義に対応する第一の画像および前記第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義に対応する第二の画像」であるのに対して,
引用発明においては,「歪ませた7つの文字を表す画像」が,「第一言語情報に基づいた語義」に,及び,「7つのドラッグ可能物」が,「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義」に対応するものであるかについては,特に言及されていない点。

[相違点2]
“操作指令”に関して,
本願発明においては,「操作指令は,前記ユーザが前記第一語義および前記第二語義に対する前記語義理解に基づいて作動させたものである」のに対して,
引用発明においては,そのような言及が明確にはなされていない点。

第6.相違点についての当審の判断
1.[相違点1]について
「CAPTCHA」において,“言語情報に基づいた語義に対応する画像”を,ユーザの端末等に表示することは,例えば,上記Gに引用した引用文献2の「図2」にもあるとおり,本願の第1国出願前に当業者には周知の技術事項である。前記「図2」に開示された「CAPTCHA」は,問題として“日本語”に関連する「歪んだ画像」を示し,その「画像」についての解答を,「全角で入力」するというものであって,解答を「画像」を操作することで作成するものではないものの,引用文献2に記載の技術においては,“ユーザは,問題として提示された日本語に関連する歪んだ画像の意味(本願発明における「第一語義」に相当)を理解して,解答を「全角入力」する”ものである。
そして,“日本語”に関連する「歪んだ画像」に対する解答として,何を要求するかは,「クイズ」と,その「解答」のように,人の取決め事項に過ぎず,「クイズ」の問題が「英語」(本願発明における「第一言語情報」に相当)である場合,その「解答」として,「日本語」(本願発明における「第二言語情報」に相当)を対応付けるようなことは,たとえば,上記Iに引用した周知文献1の記載内容にもあるとおり,本願の第1国出願前に当業者が適宜なし得る程度の事項である。
したがって,引用発明において,通常の「CAPTCHA」のようなキーボート等からの入力に換えて,「画像」を操作することが,開示されている以上,引用文献2,及び,周知文献1に開示の周知技術を考慮して,引用発明において,問題として,「第一言語情報に基づいた語義である第一語義に対応する」“歪ませた文字を表す画像”を提示し,「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義に対応する」「ドラッグ可能物」を用いて,「ユーザ」に解答を作成させるよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,「相違点1」は,格別のものではない。

2.[相違点2]について
引用発明に,「操作指令」について明文の記載はないものの,引用発明において,「ユーザ」が,「7つのドラッグ可能物」に対して,「ドラッグ」&「ドロップ」の操作をすることが,「ユーザ」の「モバイル端末」に対する「操作」の指示に相当することは明らかであって,本願発明における「語義理解」については,上記「4.本願発明と引用発明との対比」の(2)において検討したとおりであるから,
引用発明においても,明文の記載はないものの「操作指令」が行われていると言い得るものであるから,[相違点2]は,文言上の相違があるものの,実質的な相違点には該当しない。
なお,請求人は,令和2年2月12日付けの意見書において,
「本願発明の「第一言語情報に基づいた語義である第一語義」,「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義」および「これらの関連付け」は,人であれば事前の設定が必要なくに実行できる処理であり,設定が不要であるが為に,コンピュータでは対応が不可能な情報あるいは関連付けです。
なお,「クイズ」と「解答」を用いる認証方法は,本願発明とは異なり「コンピュータと人間とを区別判断する」ものではなく,「個人を特定する」あるいは「なりすましを防止する」という類のセキュリティ対策の為の方法と考えられます。この点においても,本願発明の「第一言語情報に基づいた語義である第一語義」,「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義」および「これらの関連付け」は,「クイズ」と「解答」とは,根本的に異なるものであり,また,それを用いたときの処理方法やシステムも異なるものとなるものです。」
旨主張しているが,
「第一言語情報に基づいた語義である第一語義」,「第一言語情報とは異なる第二言語情報に基づいた語義である第二語義」および「これらの関連付け」,
については,上述したとおりであり,また,
「「クイズ」と「解答」を用いる認証方法は,本願発明とは異なり「コンピュータと人間とを区別判断する」ものではなく,「個人を特定する」あるいは「なりすましを防止する」という類のセキュリティ対策の為の方法と考えられます。」
については,引用発明,引用文献2,及び,周知文献1に記載の技術事項は,何れも,「CAPTCHA」に関するものであり,当該「CAPTCHA」とは,上記Jに引用した周知文献2に記載されたとおりのものであって,上記Iに引用した,周知文献1の記載内容において,「質問」(「クイズ」に相当)と,その「解答」を作成することが,「CAPTCHA」において行われることが示されている以上,請求人の上記主張は何れも採用することはできない。

(3)以上,上記(1),及び,上記(2)において検討したとおりであるから,[相違点1]は,格別なものではなく,[相違点2]は実質的な相違点には当たらず,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められないから,本願発明は,引用発明,及び,引用文献2,周知文献1に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-04-01 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-22 
出願番号 特願2014-252475(P2014-252475)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸野 徹  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 石井 茂和
山崎 慎一
発明の名称 認証入力方法および装置  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  

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