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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1365886 |
審判番号 | 不服2019-6914 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-28 |
確定日 | 2020-09-28 |
事件の表示 | 特願2015-246144「ネットワーク装置の自動化された構成」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-119669、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年12月17日(パリ条約による優先権主張 2014年12月18日 (US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成30年10月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年12月26日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成31年3月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和元年5月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和元年7月2日に前置報告がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年3月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし19に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2014-175841号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、以下のとおり、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 1.特許法17条の2第3項について 審判請求時の補正によって請求項1の「複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、特別リンクに関する構成情報を受信し、」を「複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、人間が読み取り不可能なフォーマットによる特別リンクに関する構成情報を受信して特別リンクを確立し、」に変更する補正(以下、「補正1」という。)、「複数のスイッチと関連するバックアップデータを管理する」を「複数のスイッチと関連するバックアップイメージを管理する」に変更する補正(以下、「補正2」という。)、「前記置換装置は、前記バックアップ装置から前記特別リンクを介して前記故障したスイッチの前記バックアップイメージを受信して復元し」を追加する補正(以下、「補正3」という。)を行っている。 ここで、補正1に関して、当初明細書の段落【0040】、段落【0041】に「特別リンク構成情報を人間が読み取り不可能なフォーマットで記録する」と記載されており、特別リンクに関する構成情報は人間が読み取り不可能なフォーマットによるものである旨記載されている。また、特別リンクの確立について、当初明細書の段落【0035】に記載されているから、補正1は新規事項を追加するものではない。 また、補正2に関して、バックアップ装置が複数のスイッチのバックアップデータを管理することが当初明細書の段落【0026】に、置換装置が特別リンクを介してバックアップデータを受信すること、バックアップデータがバックアップイメージであってもよいことが当初明細書の段落【0052】に記載されているから、補正2は新規事項を追加するものではない。 さらに、補正3に関して、バックアップデータがバックアップイメージであってもよいことが当初明細書の段落【0052】に、バックアップイメージにより復元動作を実行することが当初明細書の段落【0053】に記載されているから、補正3はいずれも新規事項を追加するものではない。 よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであると認められる。 2.特許法17条の2第4項及び同条第5項について 補正1は、特別リンクに関する構成情報が「人間が読み取り不可能なフォーマットによる」ものであるという事項、及び、「特別リンクを確立する」という事項を追加する補正である。 また、補正3は、補正3により特定される発明特定事項を追加する補正であり、補正2は、「バックアップデータ」を「バックアップイメージ」という下位概念に変更する補正である。 よって、審判請求時の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。 そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の発明特定事項をすべて含み、補正1-3により減縮した発明であるから、発明の単一性の要件を満たしていると認められる。 したがって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第4項及び同条第5項の規定を満たしていると認められる。 3.特許法第17条の2第6項について 「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし4に係る発明は、独立して特許を受けることができるものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和元年5月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「 バックアップ装置と、 バックアップ装置に接続された複数のスイッチとを備えていて、前記複数のスイッチの中の1つのスイッチは、少なくとも特別リンクを用いてバックアップ装置に接続されていて、 前記少なくとも特別リンクは、少なくとも特別リンクを用いてバックアップ装置に接続されたスイッチが故障した時、置換装置によって構成され、前記故障したスイッチは、置換装置と置換され、前記置換装置は、単純リンクを介して、複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、人間が読み取り不可能なフォーマットによる特別リンクに関する構成情報を受信して特別リンクを確立し、 前記バックアップ装置は、複数のスイッチと関連するバックアップイメージを管理するように構成されていて、前記置換装置は、前記バックアップ装置から前記特別リンクを介して前記故障したスイッチの前記バックアップイメージを受信して復元し、 前記バックアップ装置および複数のスイッチは、ループのないブロードキャストドメインであるネットワークの一部である ことを特徴とするシステム。」 本願発明2ないし4は、本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)段落【0018】-段落【0023】 「【0018】 以下、本発明にかかるネットワーク通信システムの一実施形態を、図1乃至図16を参照して説明する。 (全体的な説明) 図1に示すように、本実施形態にかかるネットワーク通信システムは、リンクR,Ra又はRbを介して連結された複数の通信装置11乃至15,21乃至25を有するネットワーク回線100,200と、このネットワーク回線の前記各通信装置の動作を管理するネットワーク管理装置120,220とを備えている。 【0019】 そして、この各通信装置11乃至15,21乃至25は、前記ネットワーク管理装置120,220からのアクセスに対応可能な設定情報を格納した設定情報用データベース37,47と、隣接する通信装置からバックアップ用データが送られてきた場合に予め保持しているバックアップ用データとの差分を検出し前記設定情報用データベース37,47に格納する設定情報管理部36,46とを備えている。 【0020】 即ち、本実施形態におけるネットワーク通信システムにあって、複数の各通信装置11乃至15,21乃至25は、自装置の設定情報を当該通信装置の隣接装置にバックアップする。バックアップデータは、自装置の設定情報と隣接装置の設定情報との差分のみを、当該隣接装置に保存することで、バックアップのデータ容量およびデータ転送量を削減する。 【0021】 また、工場初期化設定や装置故障等で特定の通信装置11乃至15,21乃至25の内の一の通信装置が備えている設定情報が失われても、再び当該一の通信装置をネットワークへ接続することで、バックアップデータを備えた隣接装置から失われた設定情報を取得し、発信元である通信装置の設定情報を迅速に復元することができる。 【0022】 (具体的内容) まず、図1において、本実施形態では、一方と他方の二つの通信エリア100,200を備えている。この内、一方の通信エリア(エリアA)100には、本実施形態では第1乃至第5の5台の通信装置11,……,15の通信装置が設置されている。同様に、他方の通信エリア(エリアB)200には、第1乃至第5の5台の通信装置21,……,25が設置されている。 【0023】 これらの各通信装置11?15,21?25は、本実施形態にあっては、ネットワーク管理装置(NMS)120,220によって監視・制御され、同期設定サーバ(NTPサーバ)130,230によって作動タイミングが時刻同期され、認証サーバ(RADIUSサーバ)140,240によって装置へのログインアカウントの認証が実施されるようになっている。」 (2)段落【0073】-段落【0084】 「【0073】 <通信装置(NE#A5) の工場初期化設定と設定情報の復元> 図15に、通信装置(NE#A5) 15を工場初期化設定した場合の動作を示す。 尚、工場出荷設定ではなく故障した装置の交換などでも、同じ図15のシーケンスで動作する。工場出荷設定を実施した通信装置(NE#A5) 15では、LLDPメッセージの送信を開始する。このとき、設定情報バックアップ用データについては、識別IDに自装置の代表MACアドレスを入れるが、その他の属性は値なしのLLDPメッセージを送信する(図15:ステップS701?S702)。 【0074】 このLLDPメッセージを受信した通信装置(NE#4)14は、設定情報バックアップ用データの識別IDと自装置(NE#4)14の設定情報DBの「Backup」用設定項目から、自装置でバックアップしている装置(NE#5)15で設定情報が失われたことを検出する(図15:ステップS703)。 【0075】 続いて、通信装置(NE#4)14は、設定情報DBの「Backup」対象が「true」に設定された設定項目について、自装置設定値と同値ビット、隣接装置#1の設定値から、通信装置(NE#A5) 15の設定ファイルを生成する。 ここで、通信装置(NE#4)14は、設定情報DBの「Backup」用設定項目を参照し、バックアップ対象装置の識別IDに該当する情報(エリア、バックアップ先、最終更新日時)を通信装置(NE#5)15の設定ファイルに追加する(図15:ステップS704)。 【0076】 通信装置(NE#4)14は、生成した通信装置(NE#5)15の設定ファイルをFTPで送信する。自装置用の設定ファイルを受信した通信装置(NE#5)15は、設定ファイルの内容を自装置に適用する(図15:ステップS705?S706)。 【0077】 そして、通信装置(NE#5)15は、設定の適用後は、LLDPメッセージの設定情報バックアップ用データに復元した自装置のBackup用設定項目の情報を載せて、通信装置(NE#4)14へ送信する。本シーケンスにより、工場初期化設定を実施した通信装置(NE#5)15に対して、追加のオペレーションを実施せずに、通信装置(NE#4)14にバックアップされていた設定情報を復元することができる(図15:ステップS707)。 【0078】 通信装置(NE#5)15はバックアップからの設定情報復元により、前述したNMSからのアクセスが可能となる。このため、Backup対象が「false 」の設定項目についてはNMSから、遠隔で再設定を実施することが可能である。 【0079】 図15のシーケンス後、バックアップから復元された通信装置(NE#5)15の設定情報DBについて、その内容を図16に示す。これによると、通信装置(NE#4)14にバックアップされていた通信装置(NE#5)15の設定情報が復元されていることがわかる(図15:ステップS708)。 【0080】 ここで、上述した各構成の動作および各工程における実行内容については、これをプログラム化し、前記各通信装置が備えているコンピュータに実現させるように構成してもよい。このプログラム化されたプログラムは、非一時的な記録媒体、例えばDVD,CD,フラッシュメモリ、等に記憶され、上記コンピュータに読み出されて実行される。 【0081】 本実施形態にかかるネットワーク通信システム、通信装置は、上述したように、構成され機能するので、これによると、以下の示す効果を奏する。データバックアップ方法、及びそのプログラムについても同様である。 【0082】 以上のように、上記実施形態によると、ネットワーク上の装置の設定情報を隣接装置に送信し、隣接装置で設定情報をバックアップすることが可能である。このとき、隣接装置には自装置と該当装置との設定情報の差分のみを保存しバックアップとする。設定情報の中にはネットワーク上のある特定のエリアでは同一の値となっているものも多いため、差分のみを保存することで設定情報バックアップのデータ量を削減できる。 【0083】 更に、これらの設定情報のデータは装置の設定が変更されたときに該当装置の隣接装置にのみ送付すればよい。これにより、NSMなどで設定情報のバックアップを一括管理する場合に比べて、ネットワーク上で送信されるデータの量を大幅に削減することが可能となる。 【0084】 また隣接装置に設定情報のバックアップを保存しておくことで、装置の工場初期化設定や故障による装置交換などで設定情報が失われた場合でも、該当装置の設置・ケーブル敷設が完了していれば隣接装置から自動的に設定情報を取得し該当装置の設定情報として復元することが可能になる。このため、オペレータの作業削減や誤設定を防止することができる。」 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ネットワーク通信システムは、 リンクR,Ra又はRbを介して連結された複数の通信装置11乃至15,21乃至25を有するネットワーク回線100,200と、このネットワーク回線の前記各通信装置の動作を管理するネットワーク管理装置120,220とを備え、 各通信装置11乃至15,21乃至25は、前記ネットワーク管理装置120,220からのアクセスに対応可能な設定情報を格納した設定情報用データベース37,47と、隣接する通信装置からバックアップ用データが送られてきた場合に予め保持しているバックアップ用データとの差分を検出し前記設定情報用データベース37,47に格納する設定情報管理部36,46とを備え、 各通信装置11?15,21?25は、ネットワーク管理装置(NMS)120,220によって監視・制御され、 通信装置(NE#A5) 15を工場初期化設定した場合、 工場出荷設定ではなく故障した装置の交換などでも、同じシーケンスで動作し、 通信装置(NE#A5) 15では、LLDPメッセージの送信し、 LLDPメッセージを受信した通信装置(NE#4)14は、バックアップしている装置(NE#5)15で設定情報が失われたことを検出し、 通信装置(NE#4)14は、隣接装置#1の設定値から、通信装置(NE#A5) 15の設定ファイルを生成し、 通信装置(NE#4)14は、生成した通信装置(NE#5)15の設定ファイルを送信し、自装置用の設定ファイルを受信した通信装置(NE#5)15は、設定ファイルの内容を自装置に適用し、 通信装置(NE#5)15はバックアップからの設定情報復元により、前述したNMSからのアクセスが可能となり、このため、Backup対象が「false 」の設定項目についてはNMSから、遠隔で再設定を実施することが可能であり、 隣接装置に設定情報のバックアップを保存しておくことで、装置の工場初期化設定や故障による装置交換などで設定情報が失われた場合でも、該当装置の設置・ケーブル敷設が完了していれば隣接装置から自動的に設定情報を取得し該当装置の設定情報として復元する、 ネットワーク通信システム。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「ネットワーク管理装置(NMS)」は、「Backup対象が「false」の設定項目についてはNMSから、遠隔で再設定を実施することが可能」であるから、「バックアップ装置」といえる。 よって、引用発明の「ネットワーク管理装置(NMS)」と、本願発明1の「バックアップ装置」とは「バックアップ装置」である点で共通している。 イ 引用発明においては、「リンクR,Ra又はRbを介して連結された複数の通信装置11乃至15,21乃至25を有するネットワーク回線100,200と、このネットワーク回線の前記各通信装置の動作を管理するネットワーク管理装置120,220とを備え」ており、「通信装置(NE#5)15はバックアップからの設定情報復元により、前述したNMSからのアクセスが可能となる」ことから、複数の通信装置は、リンクを介してネットワーク管理装置(バックアップ装置)に接続されていると認められる。 また、引用発明は、「通信装置(NE#A5) 15では、LLDPメッセージの送信し、LLDPメッセージを受信した通信装置(NE#4)14は、バックアップしている装置(NE#5)15で設定情報が失われたことを検出し」ており、通信装置間でLLDPメッセージの送受信が行われている。そして、LLDPは通常「スイッチ」間で用いられるプロトコルであることが技術常識であるから、引用発明の「通信装置」は、本願発明1の「スイッチ」に相当する。 したがって、引用発明の「ネットワーク管理装置」に接続された複数の「通信装置」とを備えていて、複数の通信装置は、少なくともリンクを用いて「ネットワーク装置」と接続されていることは、本願発明1の「バックアップ装置に接続された複数のスイッチとを備えていて、前記複数のスイッチの中の1つのスイッチは、少なくとも特別リンクを用いてバックアップ装置に接続されていて」と、「バックアップ装置に接続された複数のスイッチとを備えていて、前記複数のスイッチは、少なくともリンクを用いてバックアップ装置に接続されていて」という点で共通している。 ウ 引用発明においては、「通信装置(NE#A5) 15を工場初期化設定した場合、工場出荷設定ではなく故障した装置の交換などでも、同じシーケンスで動作」していることから、「故障した装置の交換」においては、リンクが故障した通信装置を置換した通信装置により構成されることは自明であり、上記イにおいて検討したとおり、バックアップ装置にリンクを用いて通信装置が接続されているから、引用発明は、リンクは、リンクを用いてバックアップ装置に接続された通信装置(スイッチ)が故障した時、置換装置によって構成されていると認められる。 ここで、引用発明の「故障した装置の交換」においては、故障した通信装置(スイッチ)は置換装置と置換されていると認められる。 また、引用発明においては、「通信装置」はリンクを介して連結されており、引用発明においては、「通信装置(NE#4)14は、隣接装置#1の設定値から、通信装置(NE#A5)15の設定ファイルを生成し、通信装置(NE#4)14は、生成した通信装置(NE#5)15の設定ファイルを送信し、自装置用の設定ファイルを受信した通信装置(NE#5)15は、設定ファイルの内容を自装置に適用し、通信装置(NE#5)15はバックアップからの設定情報復元により、前述したNMSからのアクセスが可能」となることから、引用発明の「通信装置」は、リンクを介して、他の通信装置から自装置用の設定ファイルを受信し、通信管理装置(NMS)へのアクセスが可能となる。ここで、引用発明は、複数の通信装置を備えているから、他の通信装置は、複数の通信装置(スイッチ)のもう一つの通信装置(スイッチ)といえる。また、アクセスが可能となっていることは、リンクが確立していることを意味することは自明である。そして、自装置用の設定ファイルを適用することにより、NMSからのアクセスが可能となっていることから、当該設定ファイルは、リンクに関する構成情報であると認められる。 よって、引用発明の「通信装置」は、リンクを介して複数の通信装置(スイッチ)のもう一つの通信装置(スイッチ)から、リンクに関する構成情報を受信してリンクを確立しているものと認められる。 上記のとおりであるから、引用発明の「通信装置(NE#A5) 15を工場初期化設定した場合、工場出荷設定ではなく故障した装置の交換などでも、同じシーケンスで動作し、工場出荷設定を実施した通信装置(NE#A5) 15では、LLDPメッセージの送信し、LLDPメッセージを受信した通信装置(NE#4)14は、バックアップしている装置(NE#5)15で設定情報が失われたことを検出し、通信装置(NE#4)14は、隣接装置#1の設定値から、通信装置(NE#A5) 15の設定ファイルを生成し、通信装置(NE#4)14は、生成した通信装置(NE#5)15の設定ファイルを送信し、自装置用の設定ファイルを受信した通信装置(NE#5)15は、設定ファイルの内容を自装置に適用し、通信装置(NE#5)15はバックアップからの設定情報復元により、前述したNMSからのアクセスが可能」となる構成は、本願発明の「前記少なくとも特別リンクは、少なくとも特別リンクを用いてバックアップ装置に接続されたスイッチが故障した時、置換装置によって構成され、前記故障したスイッチは、置換装置と置換され、前記置換装置は、単純リンクを介して、複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、人間が読み取り不可能なフォーマットによる特別リンクに関する構成情報を受信して特別リンクを確立し」と「前記リンクは、少なくともリンクを用いてバックアップ装置に接続されたスイッチが故障した時、置換装置によって構成され、前記故障したスイッチは、置換装置と置換され、前記置換装置は、リンクを介して、複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、リンクに関する構成情報を受信してリンクを確立し」ている点で共通している。 エ 引用発明の「Backup対象が「false」の設定項目についてはNMSから、遠隔で再設定を実施することが可能」に関して、引用発明の「ネットワーク管理装置(NMS)」(バックアップ装置)は、遠隔で再設定の実施をしていることから、バックアップ対象となる設定項目を管理するように構成されているといえる。 また、引用発明の「設定項目」は、複数の通信装置(スイッチ)と関連するバックアップファイルであることは自明であるから、引用発明の「設定項目」と本願発明の「バックアップイメージ」とはバックアップされた情報である点で一致している。 そして、引用発明の「再設定の実施」とは設定項目を復元することであり、再設定の実施の際には通信装置(スイッチ)が、設定項目をNMS(バックアップ装置)から受信していることは自明である。 さらに、引用発明には「故障した装置の交換」の場合があり、上記ウで検討したとおり、通信装置は置換装置により構成されているから、置換装置(スイッチ)は、NMS(バックアップ装置)から複数の通信装置(スイッチ)と関連する設定項目を受信して、設定情報を復元していると認められる。 よって、引用発明の「工場出荷設定ではなく故障した装置の交換などでも、同じシーケンスで動作し」、「Backup対象が「false 」の設定項目についてはNMSから、遠隔で再設定を実施することが可能」である構成は、本願発明の「前記バックアップ装置は、複数のスイッチと関連するバックアップイメージを管理するように構成されていて、前記置換装置は、前記バックアップ装置から前記特別リンクを介して前記故障したスイッチの前記バックアップイメージを受信して復元し」と、「前記バックアップ装置は、複数のスイッチと関連するバックアップ情報を管理するように構成されていて、前記置換装置は、前記バックアップ装置からリンクを介して前記故障したスイッチの前記バックアップ情報を受信して復元する」点で共通している。 オ 引用発明の「ネットワーク通信システム」と、本願発明の「システム」とは、「システム」である点で共通している。 (2)一致点・相違点 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「 バックアップ装置と、 バックアップ装置に接続された複数のスイッチとを備えていて、前記複数のスイッチは、少なくともリンクを用いてバックアップ装置に接続されていて、 前記リンクは、少なくともリンクを用いてバックアップ装置に接続されたスイッチが故障した時、置換装置によって構成され、前記故障したスイッチは、置換装置と置換され、前記置換装置は、リンクを介して、複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、リンクに関する構成情報を受信してリンクを確立し、 前記バックアップ装置は、複数のスイッチと関連するバックアップ情報を管理するように構成されていて、前記置換装置は、前記バックアップ装置からリンクを介して前記故障したスイッチの前記バックアップ情報を受信して復元する、 システム。」 [相違点] <相違点1> バックアップ装置との接続リンクとして、本願発明1は、「特別リンク」を用いているのに対し、引用発明は、単に「リンク」を用いている点。 <相違点2> バックアップ装置に接続されたスイッチが故障した時、本願発明1は「単純リンクを介して」、「人間が読み取り不可能なフォーマットによる特別リンクに関する構成情報」を受信して「特別リンク」を確立しているに対し、引用発明は、そのような構成を備えない点。 <相違点3> 本願発明1のバックアップ装置は、「バックアップイメージ」を管理するように構成され、バックアップ装置から「前記特別リンクを介して」、「前記バックアップイメージを受信して復元」しているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えない点。 <相違点4> 本願発明1は、「前記バックアップ装置および複数のスイッチは、ループのないブロードキャストドメインであるネットワークの一部である」であるのに対し、引用発明はそのような構成を備えない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。 相違点3は「前記特別リンクを介して、前記バックアップイメージを受信して復元」しており、相違点3の構成においては、特別リンクが確立されていることが前提となっているから、特別リンクの確立に関する相違点2についても併せて検討を行う。 引用発明においては、リンクの構成情報を受信してリンクを確立しているものの、「単純リンクを介して」、「人間が読み取り不可能なフォーマットによる特別リンクに関する構成情報」を受信して「特別リンク」を確立することは記載も示唆もされていない。 さらに、引用発明においては、バックアップ装置が「バックアップイメージ」を管理するように構成され、バックアップ装置から「前記特別リンクを介して」、「前記バックアップイメージを受信して復元」することも記載も示唆もされていない。 仮に、リンクアグリゲーション制御プロトコルやレイヤ2トンネリングプロトコルといった特別なリンクに関するプロトコルを用いること、特別リンクに関する構成情報を人間が読み取り不可能なフォーマットによるものとすること、バックアップイメージによりファイルを復元するという、個々の上位概念化された要素技術が全て周知技術であるとしても、引用発明は、単純リンクと特別リンクという2つの種類のリンクが存在するという前提のないものであるから、これらの周知技術をまとめて引用発明に採用するための起因もなく、また仮に周知技術を組み合わせても上記相違点2,3の構成に至る動機付けが存在しないものと認められる。 したがって、引用発明から当業者が相違点2,3に係る本願発明1の構成を想到することはできない。 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし4について 本願発明2-4も、相違点2及び相違点3に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 原査定は、請求項1-19について上記引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、令和元年5月28日付け手続補正により補正された請求項1-4は、上記相違点2及び相違点3に係る、「複数のスイッチのうちのもう1つのスイッチから、人間が読み取り不可能なフォーマットによる特別リンクに関する構成情報を受信して特別リンクを確立し」、「前記置換装置は、前記バックアップ装置から前記特別リンクを介して前記故障したスイッチの前記バックアップイメージを受信して復元し」、という構成を有するものとなっており、上記のとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-08-24 |
出願番号 | 特願2015-246144(P2015-246144) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野元 久道 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
太田 龍一 林 毅 |
発明の名称 | ネットワーク装置の自動化された構成 |
代理人 | 生田 哲郎 |
代理人 | 吉浦 洋一 |