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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61F
管理番号 1365961
審判番号 不服2019-17734  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-27 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2015-129136「肩関節装具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開、特開2017- 12241、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月26日の出願であって、平成30年5月23日付けで手続補正書が提出され、平成31年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日付けで意見書が提出され、令和1年9月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1 この出願の請求項1?4、10?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 この出願の請求項5?9、13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:登録実用新案第3139333号公報
引用文献2:登録実用新案第3107406号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明(以下「本願発明1?8」という。)は、令和1年12月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
腋窩に配置され形状を可変できる腋窩パッドと、
前腕部と身体側部との間に配置され、肩関節の外転角度を調整する角度調整パッドと、
を備え、
前記腋窩パッドは、エアーパックであり、
前記角度調整パッドが、装着者の身体側部に接する身体固定パッドを備え、
前記身体固定パッドは、装着時に前記身体側部と接する部分に支持面を有し、当該支持面は湾曲した面及び/又は前記身体側部に接する少なくとも二つの面を有する複合面である、肩関節装具。
【請求項2】
前記身体固定パッドは、前記腋窩パッドよりも硬質に形成される、請求項1に記載の肩関節装具。
【請求項3】
前記角度調整パッドは、前記身体固定パッドに接し、前腕部に接する外転調整パッドを備える、請求項1又は2に記載の肩関節装具。
【請求項4】
前記外転調整パッドは形状を可変できる、請求項3に記載の肩関節装具。
【請求項5】
前記身体固定パッドは、前記外転調整パッドよりも硬質に形成される、請求項3又は4に記載の肩関節装具。
【請求項6】
前記外転調整パッドはエアーパックである、請求項3?5のいずれか一項に記載の肩関節装具。
【請求項7】
腋窩に配置され形状を可変できる腋窩パッドと、
前腕部と身体側部との間に配置され、装着者の身体側部に接する身体固定パッドと、
を備え、
前記腋窩パッドはエアーパックであり、
前記身体固定パッドは、装着時に前記身体側部と接する部分に支持面を有し、当該支持面は湾曲した面及び/又は前記身体側部に接する少なくとも二つの面を有する複合面である、肩関節装具。
【請求項8】
前記身体固定パッドは、前記腋窩パッドよりも硬質に形成される、請求項7に記載の肩関節装具。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献の記載事項及び引用発明等
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
本考案は、肩関節腱板断裂施術者のための肩痛緩和装具に関する。」

(1b)「【0019】
本考案にかかる肩痛緩和装具は、上腕10を所定の外転角で保持して腱板を弛緩させるように上腕と身体側部との間に位置される本体部材1、前記本体部材1を身体に取り付ける取り付け手段2、上腕10に巻回保持され、係止手段3を備えた上腕用保持部材4、及び前記係止手段3に係脱自在に係止され、施術者の仰臥時に腱板の緊張を緩和する状態に肩甲骨を支持する腱板緊張緩和部材5からなる。
【0020】
ここで、本体部材1について説明する。
この本体部材1は、図1乃至図8に示すように、開閉蓋1Dを備えたバッグ状(合成繊維織布の縫製)に構成され、内部に体積を可変できる充填部材11を備えている。このように構成することで、本体部材1の体積を可変でき、各患者の身体の大きさ及び異なる腱板の状態(施術による収縮度)に合わせた上腕の適正な外転角を容易に調節することができる。
【0021】
そして、この実施例では、前記充填部材11は、キャップ11Aを備えたエアバッグで構成され、エアの充填量によって体積を可変できるように構成されている。この充填部材11の体積が変わると、腕の外転角が変わることになる。
【0022】
更に、図13に示すように、この本体部材1には、その外側部に、補助収容部1Eが備えられ、内部に別の充填材12が、所要の嵩になるように折り畳まれ、所要の体積を形成し収納されている。この充填材12としては、保形成のあるシート、ここではエアキャップ(クッション効果を目的として小気泡が所定の間隔で配置された合成樹脂製のシート)が用いられ、これが所定の嵩になるように折畳まれて収容される。
これらの充填部材11及び充填材12は、前記開閉蓋1Dが被せられることで本体部材1の内に被覆され、この開閉蓋1Dを開けることで、取出しが可能となる。これらの充填部材11及び充填材12の嵩を調節することで、腕の外転角を適正角度に調整できる。」

(1c)「【0024】
更に、この本体部材1には、前腕保持部材13が備えられる。
この前腕保持部材13は、本体部材1の一部、ここでは開閉蓋1Dに備えた第6の面ファスナーに対して、この前腕保持部材13に備えた第7の面ファスナー16を係脱させることで、所望の位置に装着できる。この前腕保持部材13に手首部を固定することで、腱板が弛緩する状態に、腕を所定の外旋角で固定子する。
これにより、前腕14が肘間接から自由に動くのを阻止し、仰臥時の前腕14の下垂を本体部材1で保持し、本体部材1が身体に固定されていることで、結果として前腕14の位置が固定され、以って、前腕14がフリーな状態で、肘間接から自在に動いてしまうことによる肩関節の垂下による腱板の緊張を防止できることになる。」

(1d)「【0029】
更に、前記本体部材1には、施術者の上腕の腋下の開度姿勢を安定させる腋下部材6を係脱自在に設けてある。この腋下部材6は、上述の通り、その帯状体が前記上腕用保持部材4に一体逢着されている。
そして、前記腋下部材6に第3の面ファスナー6Aが備えられ、前記本体部材1に第4の面ファスナー1Cが備えられ、両者が係脱自在とされている。
この腋下部材6も、外形は、三角柱を成し、その角部が腋窩に接当されるように位置される。」

(1e)「【0034】
・・・
【符号の説明】
【0035】
1:本体部材
2:取り付け手段
3:係止手段
4:上腕用保持部材
5:腱板緊張緩和部材
6:腋下部材
6B:上腕保持部
11:充填部材
13:前腕保持部材」

(1f)引用文献1には、以下の図が示されている。
【図1】


【図2】


【図13】


【図15】


(2)認定事項
ア 段落【0019】に「上腕と身体側部との間に位置される本体部材1」と記載され、さらに段落【0024】に「この本体部材1には、前腕保持部材13が備えられる。・・・これにより、前腕14が肘間接から自由に動くのを阻止し」と記載されているから、図15も併せ見ると、「本体部材1」は、前腕14と身体側部との間に位置されるといえる。

イ 【図13】及び【図15】から、「充填部材11」は、本体部材1を介して肩関節腱板断裂施術者の身体側部に間接的に接するものであることが看取できる。


ウ 【図13】及び【図15】から、「充填部材11」は、装着時に身体側部と間接的に接する部分に支持面を有するといえる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「外形は、三角柱を成し、その角部が腋窩に接当されるように位置される腋下部材6と、
前腕14と身体側部との間に位置され、上腕の適正な外転角を容易に調節することができる本体部材1と、を備え、
前記本体部材1は、充填部材11を備え、充填部材11は、本体部材1を介して肩関節腱板断裂施術者の身体側部に間接的に接するものであり、
前記充填部材11は、装着時に身体側部と間接的に接する部分に支持面を有する、肩痛緩和装具。」

2 引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の記載がある。
(2a)「【0001】
本考案は、肩関節を固定するための装具に関し、特に肩関節回旋筋腱板断裂・修復手術後の早期使用に好適な肩関節固定装具に関する。」

(2b)「【0010】
図1は、本考案の肩関節固定装具の一実施例の部品図で、1は胸部パッドA、2は胸部パッドB、3はスリングストラップ、4は上腕ベルト、5は前腕ベルトである。胸部パッド1及び2は、互いに重ねた状態で示している。
【0011】
図2は、上記胸部パッドの斜視図で、(1)は胸部パッド1(胸部パッドA)と胸部パッド2(胸部パッドB)を重ねた状態の斜視図であり、その左図は前側から見た斜視図、右 図は反対側(体幹部側)から見た斜視図である。同図(2)及び(3)は、胸部パッド1、胸部パッド2各単体の同様な斜視図である。図示のように、胸部パッド1は体幹部に適合する湾曲形状部を有し、一方、胸部パッド2は上腕部に適合するテーパー部を有するように作られている。」

(2c)引用文献2には、以下の図が示されている。
【図1】


【図2】


【図3】


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「腋下部材6」は、本願発明1の「腋窩パッド」に相当する。また、引用発明の「腋下部材6」は、「外形は、三角柱を成し、その角部が腋窩に接当されるように位置される」から、「腋窩に配置され」ているといえる。
よって、引用発明の「外形は、三角柱を成し、その角部が腋窩に接当されるように位置される腋下部材6」と、本願発明1の「腋窩に配置され形状を可変できる腋窩パッド」とは、「腋窩に配置される腋窩パッド」という点で共通する。

イ 引用発明の「本体部材1」は、「上腕の適正な外転角を容易に調節することができる」ものであるから、本願発明1の「角度調整パッド」に相当する。また、引用発明の「上腕の適正な外転角」は、上腕は肩関節により回動することは明らかであるから、本願発明1の「肩関節の外転角度」に相当する。
よって、引用発明の「前腕14と身体側部との間に配置され、上腕の適正な外転角を容易に調節することができる本体部材1」は、本願発明1の「前腕部と身体側部との間に配置され、肩関節の外転角度を調整する角度調整パッド」に相当する。

ウ 引用発明の「肩関節腱板断裂施術者」は、本願発明1の「装着者」に相当する。
また、引用発明の「充填部材11」は、「身体側部に間接的に接する」ものであるから、「身体固定パッド」に相当する。
そして、本願明細書の段落【0032】に「<外包体10> 本実施形態に係る肩関節装具1では、前記腋窩パッド2及び角度調整パッド3が外包体10に収容されている。」と記載されているから、本願発明1の「角度調整パッドが、装着者の身体側部に接する身体固定パッドを備え」ることは、身体固定パッドが、間接的に(外包体10を介して)装着者の身体側部に接するものといえる。
よって、引用発明の「前記本体部材1は、充填部材11を備え、充填部材11は、本体部材1を介して肩関節腱板断裂施術者の身体側部に間接的に接するものであ」ることは、上記イも踏まえると、本願発明1の「前記角度調整パッドが、装着者の身体側部に接する身体固定パッドを備え」ることに相当する。

エ 上記ウを踏まえると、引用発明の「前記充填部材11は、装着時に身体側部と間接的に接する部分に支持面を有する」ことと、本願発明1の「前記身体固定パッドは、装着時に前記身体側部と接する部分に支持面を有し、当該支持面は湾曲した面及び/又は前記身体側部に接する少なくとも二つの面を有する複合面である」こととは、「前記身体固定パッドは、装着時に前記身体側部と接する部分に支持面を有し」ている点で共通する。

オ 引用発明の「肩痛緩和装具」は、本願発明1の「肩関節装具」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「腋窩に配置される腋窩パッドと、
前腕部と身体側部との間に配置され、肩関節の外転角度を調整する角度調整パッドと、を備え、
前記角度調整パッドが、装着者の身体側部に接する身体固定パッドを備え、
前記身体固定パッドは、装着時に前記身体側部と接する部分に支持面を有する、肩関節装具。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
<相違点1>
腋窩パッドについて、本願発明1は「形状を可変できる」「エアーパック」であるのに対し、引用発明はそのような事項を有しない点。
<相違点2>
身体固定パッドの支持面について、本願発明1は「湾曲した面及び/又は前記身体側部に接する少なくとも二つの面を有する複合面である」のに対し、引用発明はそのような事項を有しない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
(ア)相違点1に係る本願発明1の構成、すなわち、腋窩パッドが「形状を可変できる」「エアーパック」であることの技術的意義は、本願明細書の段落【0007】記載のとおり「肩関節周囲筋の伸長又は緊張を低減するよう、装着者の上腕を十分な安定状態にすること」であり、より具体的には、段落【0009】記載のとおり「装着者の腋窩に配置される腋窩パッドが形状を可変できる構成であるため、装着者の肩関節周囲筋を十分に脱力して、修復腱板が緊張していない脱力状態とすることができ、もって修復腱板の再断裂の発生を低減することができる。」ことと理解できる。

(イ)これに対して、引用発明の「腋下部材6」(腋窩パッド)は「外形は、三角柱を成し」と特定されているものの、「形状を可変できる」「エアーパック」であることは特定されておらず、装着者の肩関節周囲筋を十分に脱力して、修復腱板が緊張していない脱力状態とするものとはいえない。

(ウ)ここで、引用文献1の段落【0021】には、「そして、この実施例では、前記充填部材11は、キャップ11Aを備えたエアバッグで構成され、エアの充填量によって体積を可変できるように構成されている。」と記載されており、「充填剤11」については、エアバッグで構成されることが記載され、エアバックである以上、形状を可変にできることも明らかといえる。
しかしながら、引用文献1記載の「充填剤11」は、上記(1)対比ウで述べたとおり、本願発明1の「身体固定パッド」に相当するものであって、「腋窩パッド」に相当するものではない。
また、引用文献1記載の「充填剤11」(身体固定パッド)は、段落【0015】記載のとおり、バッグ状に構成された本体部材1の内部に備えられるものであるから、形状が変化してもバッグ状の本体部材1によって支持されることが明らかであるのに対し、腋下部材6(腋窩パッド)は、段落【0029】に「腋下部材6に第3の面ファスナー6Aが備えられ、前記本体部材1に第4の面ファスナー1Cが備えられ、両者が係脱自在とされている。」と記載されているとおり、バッグ状に構成された本体部材1の外部に着脱自在に設けられるものであって、腋下部材6自身で装着者の上腕を支持し得る剛性を有する必要があることは明らかであるから、これを上記「充填剤11」(身体固定パッド)と同様に、「形状を可変できる」「エアーパック」として構成する合理的な理由はないといえる。
よって、引用発明において、「腋窩部材6」(腋窩パッド)の構成として、引用文献1記載の「充填剤11」(身体固定パッド)の構成を採用する動機付けがあるとはいえない。

(エ)そして、引用文献2(適示(2b)の下線部分参照)には、「胸部パッド1は体幹部に適合する湾曲形状部を有」すること(段落【0011】)は記載されているが、「形状を可変できる」「エアーパック」である「腋窩パッド」を設けることは、記載も示唆もされていない。

(オ)したがって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1?2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものということはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献1?2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献1?2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明7?8について
本願発明7?8も、本願発明1と同様に、「腋窩パッド」が「形状を可変できる」「エアーパック」であるという構成を備えるものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献1?2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の手続補正により、本願発明1?4は、「腋窩パッド」が「形状を可変できる」「エアーパック」であるという構成を備えるものとなっており、上記第5で述べたのと同様に、拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献1?2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-08 
出願番号 特願2015-129136(P2015-129136)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 藤井 昇
佐々木 一浩
発明の名称 肩関節装具  
代理人 渡邊 薫  

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