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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 取り消して特許、登録(定型) A61C |
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管理番号 | 1365976 |
審判番号 | 不服2020-110 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-06 |
確定日 | 2020-09-29 |
事件の表示 | 特願2018-553187号「歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月10日国際公開、WO2017/136530、平成31年2月21日国内公表、特表2019-504724号、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)2月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年2月6日 (US)アメリカ合衆国 2017年1月27日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月19日に手続補正書が提出され、平成31年2月25日付けで拒絶理由が通知され、令和1年6月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月3日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、令和2年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 この出願の請求項17?21に係る発明は、以下の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 請求項17?21に記載された「歯科用アプライアンスを調整する方法」は、睡眠時無呼吸を治療する方法、すなわち、人間を治療する方法であるから、特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用することができる発明に該当しない。 第3 本願発明 本願の請求項1?に21に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明21」という。)は、令和2年1月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 プロセッサと、 前記プロセッサによって実行されるコンピュータ可読命令を記憶するメモリと を備え、 前記コンピュータ可読命令は、 漸増的な一連の調整アプライアンスを決定することであって、前記一連の調整アプライアンスの各々は、歯を漸進的に再配置するために選択された幾何学的形状を有する、該決定することと、 前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定することと を含むように構成され、 前記漸増的な一連の調整アプライアンスを決定することは、スキャンされた歯の結果および患者の歯のモールドによるフィードバックに応じて、異なる増加的な変化と、水平および垂直変位の異なる配置とを決定することを含むことを特徴とする歯科用アプライアンスシステム。 【請求項2】 前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定するための前記手段は、 睡眠中に摩耗されるように構成された漸増的な一連の調整アプライアンスを決定することを含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科用アプライアンスシステム。 【請求項3】 前記漸増的な一連の調整アプライアンスは、3次元プリンティング装置を介して形成されたことを特徴とする請求項2に記載の歯科用アプライアンスシステム。 【請求項4】 前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定することは、 前記一連の調整アプライアンスの各々について、下側トレイが上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、上歯および下歯の上にしっかりと、しかし取り外し可能にフィットするように適合された、前記上側トレイおよび前記下側トレイを決定することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科用アプライアンスシステム。 【請求項5】 前記一連の調整アプライアンスの各々について、前記下側トレイが前記上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、上歯および下歯の上にしっかりと、しかし取り外し可能にフィットするように適合された、前記上側トレイおよび前記下側トレイを決定することは、 前記上側トレイに関する前記下側トレイの前記前方下顎位を可能にするために、それぞれ、前記上側トレイおよび前記下側トレイの向かい合う側の前方部分および後方部分を解放可能に結び付けることをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の歯科用アプライアンスシステム。 【請求項6】 前記一連の調整アプライアンスの各々について、前記下側トレイが前記上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、上歯および下歯の上にしっかりと、しかし取り外し可能にフィットするように適合された、前記上側トレイおよび前記下側トレイを決定することは、 1つまたは複数の取り外し可能に取り付け可能な弾性バンドが前記上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、前記上側トレイおよび前記下側トレイの各々の上の突起部を介して、前記上側トレイと前記下側トレイとを接続するように適合された、該弾性バンドを決定することをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の歯科用アプライアンスシステム。 【請求項7】 前記1つまたは複数の取り外し可能に取り付け可能な弾性バンドが前記上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、前記上側トレイおよび前記下側トレイの各々の上の突起部を介して、前記上側トレイと前記下側トレイとを接続するように適合された、前記弾性バンドは、 各ペアが長さおよび/または弾性が異なる弾性バンドの複数のペアを備えたことを特徴とする請求項6に記載の歯科用アプライアンスシステム。 【請求項8】 プロセッサと、 前記プロセッサに下記の回路を動作させるコンピュータ可読命令を記憶するメモリと を備え、 前記プロセッサによって動作される前記回路は、 漸増的な一連の調整アプライアンスを決定するための回路であって、前記一連の調整アプライアンスの各々は、歯を漸進的に再配置するために選択された幾何学的形状を有する、該回路と、 前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定するための回路とを含むように構成され、 前記漸増的な一連の調整アプライアンスを決定することは、スキャンされた歯の結果および患者の歯のモールドによるフィードバックに応じて、異なる増加的な変化と、水平および垂直変位の異なる配置とを決定することを含むことを特徴とするコンピュータシステ ム。 【請求項9】 前記一連の調整アプライアンスの各々を3次元プリンティング装置を介して形成するための回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項10】 前記一連の調整アプライアンスの各々に適切な前記垂直変位を決定するための回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項11】 前記一連の調整アプライアンスの各々に適切な1つまたは複数の代替的な垂直変位を決定するための回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項12】 前記決定された漸増的な一連の調整アプライアンスと、前記決定された垂直変位とを3次元プリンティング装置に伝達するための回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項13】 睡眠中に摩耗されるように構成された漸増的な一連の調整アプライアンスを決定するための回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項14】 前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定するための前記回路は、 前記一連の調整アプライアンスの各々について、下側トレイが上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、上歯および下歯の上にしっかりと、しかし取り外し可能にフィットするように適合された、前記上側トレイおよび前記下側トレイを決定するための 回路と、 前記上側トレイに関する前記下側トレイの前記前方下顎位を可能にするために、それぞれ、前記上側トレイおよび前記下側トレイの向かい合う側の前方部分および後方部分を解放可能に結び付けるための回路と を備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項15】 前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定するための前記回路は、 1つまたは複数の取り外し可能に取り付け可能な弾性バンドが上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、前記上側トレイおよび下側トレイの各々の上の突起部を介して、前記上側トレイと前記下側トレイとを接続するように適合された、前記弾性バンドについての寸法および弾性を決定するための回路を備えたことを特徴とする請求項8に記載のコンピュータシステム。 【請求項16】 前記1つまたは複数の取り外し可能に取り付け可能な弾性バンドが前記上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、前記上側トレイおよび前記下側トレイの各々の上の突起部を介して、前記上側トレイと前記下側トレイとを接続するように適合された、前記弾性バンドのための前記回路は、 各ペアが長さおよび/または弾性が異なる弾性バンドの複数のペアのための回路を備えたことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータシステム。 【請求項17】 歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するために、コンピュータによって、歯科用アプライアンスを調整する方法であって、前記方法は、 前記コンピュータによって、漸増的な一連の調整アプライアンスを決定するステップであって、前記一連の調整アプライアンスの各々は、歯を漸進的に再配置するために選択された幾何学的形状を有する、該ステップと、 前記コンピュータによって、前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定するステップと を含み、 前記漸増的な一連の調整アプライアンスを決定することは、スキャンされた歯の結果および患者の歯のモールドによるフィードバックに応じて、異なる増加的な変化と、水平および垂直変位の異なる配置とを決定することを含むことを特徴とする方法。 【請求項18】 前記コンピュータによって、前記漸増的な一連の調整アプライアンスを決定するステップであって、前記一連の調整アプライアンスの各々は、歯を漸進的に再配置するために選択された幾何学的形状を有する、前記ステップは、 患者に関するデータを受け取るステップと、 前記患者からの前記データに基づいて、歯を漸進的に再配置するための治療計画を決定するステップと、 3次元プリンティング装置または複数の熱成形モールドのうちの1つまたは複数を介して、前記一連の調整アプライアンスを形成するステップと を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記コンピュータによって、前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定する前記ステップは、 前記一連の調整アプライアンスの各々について、下側トレイが上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、上歯および下歯の上にしっかりと、しかし取り外し可能にフィットするように適合された、前記上側トレイおよび前記下側トレイを決定するための ステップと、 前記上側トレイに関する前記下側トレイの前記前方下顎位を可能にするために、それぞれ、前記上側トレイおよび前記下側トレイの向かい合う側の前方部分および後方部分を解放可能に結び付けるステップと を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。 【請求項20】 前記コンピュータによって、前記一連の調整アプライアンスの各々について、睡眠時無呼吸を治療するための垂直変位および前方下顎位を決定する前記ステップは、 1つまたは複数の取り外し可能に取り付け可能な弾性バンドが上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、前記上側トレイおよび下側トレイの各々の上の突起部を介して、前記上側トレイと前記下側トレイとを接続するように適合された、前記弾性バンドについての寸法および弾性を決定するためのステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。 【請求項21】 前記1つまたは複数の取り外し可能に取り付け可能な弾性バンドが前記上側トレイに関する前記前方下顎位を生成するように、前記上側トレイおよび前記下側トレイの各々の上の突起部を介して、前記上側トレイと前記下側トレイとを接続するように適合された、前記弾性バンドは、 各ペアが長さおよび/または弾性が異なる弾性バンドの複数のペアについての1つまたは複数の命令を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。」 第4 判断 1 本願発明17について 本願発明17が、産業上利用できる発明に該当するか否か(人間を治療する方法に該当するか否か)について、以下検討する。 (1) 本願発明17の「歯科用アプライアンス」は物であり、「歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するために、コンピュータによって、歯科用アプライアンスを調整する方法」は、「歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するために」という記載があるものの、全体的に見ると、物自体を調整する方法といえるから、人間を治療する方法に該当しない。 このことは、本願発明17の「コンピュータによって、歯科用アプライアンスを調整する方法」が、「3次元プリンティング装置または複数の熱成形モールドのうちの1つまたは複数を介して、前記一連の調整アプライアンスを形成するステップ」「を含む」こと(本願発明18)を想定している(3次元プリンティング装置などを使用して調整アプライアンスを形成しながら患者の治療を行うことはできない。)ことからしても、明らかである。 (2) 以下、補足する。 ア 「特許実用新案 審査ハンドブック 特許庁」には、 「第III部 第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)」の「3.産業上の利用可能性の要件についての判断」の「3.2 産業上の利用可能性の要件を満たす発明の類型」における、「3.2.1 『人間を手術、治療又は診断する方法の発明』に該当しない発明」の例として、 「(2) 医療機器の作動方法(注) 医療機器の作動方法は、医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものであり、「人間を手術、治療又は診断する方法の発明」に該当しない。ここでいう「医療機器の作動方法」には、医療機器内部の制御方法に限らず、医療機器自体に備わる機能的又はシステム的な作動(例:操作信号に従った切開手段の移動や開閉作動又は放射線、電磁波、音波等の発信や受信)が含まれる。 (注) 発明特定事項として、以下の(i)又は(ii)のいずれかの工程を含む方法は、ここでいう「医療機器の作動方法」には該当しない。 (i)医師が行う工程(例:医師が症状に応じて処置するために機器を操作する工程) (ii)機器による人体に対する作用工程(例:機器による患者の特定部位の切開若しくは切除又は機器による患者の特定部位への放射線、電磁波、音波等の照射)」 が示されている。 イ 本願発明17の「歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するために、コンピュータによって、歯科用アプライアンスを調整する方法」は、「スキャンされた歯の結果および患者の歯のモールドによるフィードバックに応じて」、「コンピュータ」が「歯科用アプライアンスを調整する方法」であるから、「歯科用アプライアンス」を患者に装着した状態で調整するものではなく、医師が処置(治療)するものではない。 したがって、本願発明17は、上記アの 「(i)医師が行う工程(例:医師が症状に応じて処置するために機器を操作する工程) (ii)機器による人体に対する作用工程(例:機器による患者の特定部位の切開若しくは切除又は機器による患者の特定部位への放射線、電磁波、音波等の照射)」 に該当しない。 ウ そして、本願発明17の「歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するために、コンピュータによって、歯科用アプライアンスを調整する方法」は、各「ステップ」に係る構成なども参照すると、コンピュータと歯科用アプライアンスを構成要素とする機器自体に備わる機能を方法として表現したものであると理解でき、上記アの「例」のような「医療機器の作動方法」といえるから、人間を手術、治療又は診断する方法の発明に該当しない。 (3) したがって、本願発明17は、人間を手術、治療又は診断する方法の発明に該当せず、産業上利用できる発明に該当する。 2 本願発明18?21について 本願発明18?21は、本願発明17の発明特定事項を全て備えており、また、本願発明18?21の各「ステップ」については、上記1(2)ウと同様であり、機器自体に備わる機能を方法として表現したものであると理解できるから、本願発明18?21も、人間を手術、治療又は診断する方法の発明に該当せず、産業上利用できる発明に該当する。 3 まとめ 以上のとおり、本願発明17?21は、産業上利用できる発明に該当するから、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許を受けることができないとはいえない。 第5 原査定について 令和2年1月6日付けの手続補正により、本願発明17?21は、「コンピュータによって、歯科用アプライアンスを調整する方法」となっており、上記第4で述べたとおり、産業上利用できる発明に該当するから、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許を受けることができないとはいえない。 また、原査定においては、なお書きで、「患者のフィードバックデータ」という記載に関して、新規事項と実施可能要件を指摘しているが、当該記載は、上記手続補正により「患者の歯のモールドによるフィードバック」となったから、願書に最初に添付した明細書などの記載を参照すると自明な事項であり、実施もできるものである。 また、本願発明1?16については、原査定の理由は該当しない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-09-03 |
出願番号 | 特願2018-553187(P2018-553187) |
審決分類 |
P
1
8・
14-
WYF
(A61C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小島 哲次 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
島田 信一 出口 昌哉 |
発明の名称 | 歯列矯正中における睡眠時無呼吸を治療するためのシステムおよび方法 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |