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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03B
管理番号 1365984
審判番号 不服2020-3719  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-18 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2018-127323「発振回路、発振器、電子機器および移動体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月1日出願公開、特開2018-170788、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年10月16日に出願した特願2013-215622号の一部を平成30年7月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月 2日 :手続補正書の提出
令和 元年 5月17日付け:拒絶理由通知
令和 元年 7月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年12月18日付け:拒絶査定
令和 2年 3月18日 :拒絶査定不服審判の請求


第2 原査定の概要

原査定(令和元年12月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1(特許法第29条第2項)

(1)本願請求項1に係る発明は、下記引用文献1、2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本願請求項2-8に係る発明は、下記引用文献1-3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2001-186020号公報
引用文献2:特開2009-290381号公報
引用文献3:特開2013-162358号公報


第3 本願発明

本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、令和元年7月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
発振素子を発振させて発振信号を生成する発振回路であって、
前記発振信号が出力される第3の端子と、
少なくとも周波数を含む前記発振信号の特性を制御する特性制御データが入力されるとともに、前記第3の端子からの前記発振信号の出力を制御する第1の出力制御信号が入力される第1の端子と、
前記第3の端子からの前記発振信号の出力を制御する第2の出力制御信号が入力される第2の端子と、を備え、
前記第1の出力制御信号及び前記第2の出力制御信号がともに前記発振信号の出力の停止を指示する場合に、前記第3の端子からの前記発振信号の出力を停止する、発振回路。
【請求項2】
前記特性制御データおよび前記第1の出力制御信号が記憶される記憶部を含む、請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された前記特性制御データおよび前記第1の出力制御信号に基づいて、前記発振信号の特性および前記発振信号の出力が制御される、請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記発振信号を生成する発振部と、
前記発振部から前記発振信号が入力される出力バッファーと、を含み、
前記第1の出力制御信号及び前記第2の出力制御信号がともに前記発振信号の出力の停止を指示する場合、前記出力バッファーからの出力を停止させて、前記発振信号の出力を停止する、請求項1から3のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項5】
前記発振信号を出力する複数の出力端子を備え、
前記第1の出力制御信号は、複数ビットの値のデータであり、
前記複数ビットの値のそれぞれの値により、前記複数の出力端子からの前記発振信号の出力を独立に制御する、請求項1から4のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発振回路と、
前記発振素子と、
を含む発振器。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発振回路、または請求項6に記載の発振器を含む電子機器。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発振回路、または請求項6に記載の発振器を含む移動体。」


第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理装置や通信装置のクロック供給源の発振回路などとして用いられる所望の周波数の基準となる信号を供給可能な発振装置に関するものである。」

(2)「【0021】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図2に、本発明のPLL回路を用いた発振装置の例を示してある。本例の発振装置5も、水晶振動子1を発振してPLL回路で逓倍することによって所定の周波数foの出力信号φ4を出力する発振装置であり、図18に基づき説明した発振装置と共通する部分については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。本例の発振装置5は、水晶振動子1を発振する発振信号出力部10が、発振回路11に加え、水晶振動子1の共振周波数fcを微小調整して発振信号φ1の周波数fgを変えられる調整回路12を備えている。そして、周波数が微調整された発振信号φ1がプログラマブルデバイダであるリファレンスデバイダ(RD)15によってM分周されて周波数frの基準信号φ2となり、PLL回路20に供給される。PLL回路20は基準信号φ2を入力信号として動作し、フィードバック回路(帰還回路)に設けられたプログラマブルデバイダであるフィードバックデバイダ(FD)24の分周数Nで基準信号φ2が逓倍された周波数fpの逓倍信号φ3が出力される。この逓倍信号φ3は、さらに、第3のプログラマブルデバイダであるアウトプットデバイダ(OD)30でX分周されて周波数foの出力信号φ4となり、セレクタ32およびバッファ35を通って出力端子61から出力される。セレクタ32は、発振信号出力部10から出力される発振信号φ1を直に出力端子61から出力するためのバイパス回路36と出力信号φ4とを切り換えるためのものであり、後述する設定部40によって制御される。さらに、バッファ35は出力信号φ4を緩衝増幅して出力すると共に、発振装置の動作モードによっては出力端子をハイインピーダンス状態にするなどの機能を果たす。
【0022】これらデバイダRD15、FD24およびOD30、さらに、調整回路12などには、設定部40から分周数M、N、Xおよび調整量などが供給される。本例の設定部40は、2段のROM41および42と、これらのROM41および42の各々にデータを書き込むために入力されたシリアルデータをパラレルデータに変換可能なシフトレジスタ43を備えており、このシフトレジスタ43は、調整回路12の調整量を仮設定したり、あるいは分周数M、NおよびXなどを仮設定するためにも用いられる。設定部40は、さらに、ROM41および42を介してバッファ35やセレクタ32の制御を行うと共にROM41および42に対するデータの書き込み制御を行う制御回路44を備えている。そして、この制御回路44の制御モードの選択はコントロール端子62を介して行われる。例えば、シフトレジスタ43を介してROM41あるいはROM42にデータを書き込む場合は、出力端子61がデータ入力端子として用いられる。このため、データ書き込み時は、バッファ35はクローズし出力端子61から入力されたデータが制御回路44を介してシフトレジスタ43に送られ、パラレル変換されて各ROM41あるいは42に書き込まれる。従って、本例の発振装置5においては、デコーダは設けられておらず、ROM41あるいは42に分周数M、NおよびX、および調整量として、それぞれ独立した自由な値を設定することが可能であり、それぞれの値を自由に変えることができる。もちろん、所定の組み合わせとなった分周数M、NおよびXをデータとして外部からROM41あるいは42にロードすることも可能であるが、本例の発振装置5は、そのような組み合わせにかぎらず、分周数M、NおよびX、さらに調整量を必要に応じて独立した自由な値に可変設定することができる。
【0023】また、ROM41および42は、制御回路44によって各々を切り換えて使用可能であり、各々のROM41あるいは42に記憶された設定値でPLL回路やデバイダが動作するようになっている。本例のそれぞれのROM41あるいは42は本例の発振装置5を制御するために必要な全てのデータ、例えば、分周数M、NおよびX、さらに調整量などを記憶できる容量を備えており、水晶振動子1の共振周波数fcが経時変化などで万一変化したとき、あるいは最初に設定された周波数と異なった周波数の信号の発振源として本例の発振装置5を用いるときなどに分周数M、N、Xおよび調整量などを再度セットすることができる。
【0024】もちろん、ROM41および42の用途はこれに限定されるものではなく、たとえば、検査用としてメーカーサイドでROM41にデータを書き込み、発振装置の諸特性に関し専門性が必要とされる検査をメーカーで一括行ってしまうためにも利用できる。このような検査としては、PLLのロックアップ特性、電源電圧と発振の立ち上がり時間との関係などあり、このような検査はユーザには装置的にも技術的にも難しいため、メーカー側で専門の技術者や高性能な計測能力を備えた検査機器を用いて行うことが望ましい。本例の発振装置5においては、このような検査を行うためにROM41を使用しても、他方のROM42はユーザー側で自由に利用することが可能である。したがって、メーカーからは検査に合格した良品だけを出荷し、営業拠点やユーザがそれぞれの要求に応じたデータをROM42に書き込む。すでに、メーカーで検査した項目は再検査する必要はないので、営業拠点やユーザでは簡単な検査で済ませることができる。
【0025】さらに、本例の発振装置5においては、ROM41および42を設定値の記憶媒体として採用しているので、発振装置5の動作状態を制御できる機能のうち、コントロール端子62で制御できる機能OE、STあるいはSTZのいずれかをROMに設定しておくことができる。OE(アウトプットイネーブル)機能は、水晶振動子1の発振回路とPLL回路は動作させたまま出力信号φ4をハイインピーダンス状態にする機能であり、コンピュータなどの動作テスト時に用いられる。また、ST(スタンバイ)機能は、発振回路とPLL回路を停止状態にして出力信号φ4を高レベルあるいは低レベルに固定する機能であり、コンピュータなどの省エネルギー化に効果がある。また、STZ機能は、両者の機能を複合させたものであり、発振回路とPLL回路を停止するとともに出力信号φ4をハイインピーダンスにする機能である。従って、コンピュータの製造時の動作テスト時にも、また、省電力化する際にも利用できる機能である。さらに、出力端子61から出力される信号のデューティを任意に設定するためのデータがROM41および42に記憶されている。
【0026】本例の発振装置5においては、発振信号出力部10、デバイダRD15、PLL回路部20、デバイダOD30、セレクタ32、バッファ35および設定部40が1チップのIC60に纏められており、このIC60と水晶振動子1がモールドでパッケージングされている。図3に本例の発振装置5がモールド樹脂68によってパッケージングされた外観を示し、図4にその内部の構成をモールド樹脂68を一部欠いて示してある。本例の発振装置5は、リードフレーム67の一方の面にIC60が搭載され、他方の面にシリンダー内に封入された水晶振動子1が搭載されている。そして、これらがモールド樹脂68によって一体にパッケージングされ、パッケージの外側には出力端子61と発振装置本来の端子と兼用している制御端子62が現れている。データを書き込むための端子は発振装置本来の端子と兼用しても良いし、専用に設けても良い。パッケージされてしまうので、ROM41あるいは42にEPROMを採用してもモールド68で覆われてしまい紫外線を照射することができない。EEPROMなどを採用することも可能であるが、制御回路44がさらに複雑化し、また、ROMも高価になってしまう。これに対し、本例の発振装置5のように十分な記憶容量のROM41および42の2列のROMを用意しておくことによって、これらのROM41および42を切り替えて使用することが可能であり、分周数などを含めた設定値の書換えや変更を安価に、そして、確実に行うことができる。」

(3)図2


(4)上記(1)から(3)の記載事項から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「情報処理装置や通信装置のクロック供給源の発振回路などとして用いられる所望の周波数の基準となる信号を供給可能な発振装置5であって、
前記発振装置5は水晶振動子1を発振してPLL回路20で逓倍することによって所定の周波数foの出力信号φ4を出力するものであり、
前記水晶振動子1を発振する発振信号出力部10からの周波数fgの発振信号φ1がプログラマブルデバイダであるリファレンスデバイダ(RD)15によってM分周されて周波数frの基準信号φ2となり、PLL回路20に供給され、
前記PLL回路20は基準信号φ2を入力信号として動作し、フィードバック回路(帰還回路)に設けられたプログラマブルデバイダであるフィードバックデバイダ(FD)24の分周数Nで基準信号φ2が逓倍された周波数fpの逓倍信号φ3を出力し、
前記逓倍信号φ3は、さらに、第3のプログラマブルデバイダであるアウトプットデバイダ(OD)30でX分周されて周波数foの出力信号φ4となり、バッファ35を通って出力端子61から出力され、
前記バッファ35は発振装置の動作モードによっては出力端子をハイインピーダンス状態にするなどの機能を果たし、
前記デバイダRD15、FD24およびOD30には、設定部40から分周数M、N、Xが供給され、
前記設定部40は、2段のROM41および42と、これらのROM41および42の各々にデータを書き込むために入力されたシリアルデータをパラレルデータに変換可能なシフトレジスタ43を備えており、
前記シフトレジスタ43を介してROM41あるいはROM42にデータを書き込む場合は、出力端子61がデータ入力端子として用いられ、
前記ROM41および42は、制御回路44によって各々を切り換えて使用可能であり、各々のROM41あるいは42に記憶された設定値でPLL回路やデバイダが動作するようになっており、
前記発振装置5の動作状態を制御できる機能のうち、コントロール端子62で制御できる機能OE、STあるいはSTZのいずれかをROMに設定しておくことができ、ここで、OE(アウトプットイネーブル)機能は、水晶振動子1の発振回路とPLL回路は動作させたまま出力信号φ4をハイインピーダンス状態にする機能である、
発振装置5」


2 引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)

(1)「【0025】
図1に、本発明の実施の形態による発振器100の構成を示す。この発振器100は、例えば携帯電話機などの電子機器に搭載され、当該携帯電話機において要求される発振周波数を有する出力信号Foutを生成し出力する。かかる携帯電話機は、発振器100から出力される出力信号Foutを基準信号として使用することにより、内蔵する各種回路の動作を制御する。」

(2)「【0030】
インバータINV100の出力端子には、第2のインバータに対応する、バッファとしてのインバータINV200の入力端子が接続され、当該インバータINV200の出力端子から、所望の発振周波数を有する出力信号Foutが出力される。」

(3)「【0040】
ところで、かかる発振器100の場合、当該発振器100が動作する動作モードとして、複数の動作モードが予め用意され、発振器100は、これら複数の動作モードの中から選択された動作モードで動作する。
【0041】
具体的には、動作モードとしては、通常モードと、節電モードと、高速動作節電モードとがある。通常モードは、第1の動作モードに対応し、発振器100に電源電圧Vddが供給されている限り常に動作するモードである。節電モードは、第2の動作モードに対応し、発振器100が搭載される携帯電話機の間欠動作に対応して動作することにより、消費電流を低減するモードである。
【0042】
高速動作節電モードは、第3の動作モードに対応し、携帯電話機の間欠動作に対応して動作することにより、消費電流を低減しつつも、携帯電話機が基地局と通信を開始しようとするタイミングで、発振周波数が安定状態に維持されている出力信号Foutを直ちに出力することにより、高速に動作するモードである。
【0043】
かかる動作モードに対応するデータは、データ入出力端子DIO及びクロック端子CLKを介して記憶部としてのメモリ600に書き込まれ、記憶される。例えば図2に示すように、動作モードに対応するデータは、メモリ600のアドレス“001”に記憶され、発振器100は、メモリ600に第1のデータ“00”が記憶されている場合には、通常モードで動作し、第2のデータ“01”が記憶されている場合には、節電モードで動作し、第3のデータ“10”が記憶されている場合には、高速動作節電モードで動作する。
【0044】
ここで、メモリ600に第1のデータ“00”が記憶され、発振器100が通常モードで動作する場合について説明する。この場合、判定部に対応するスイッチ制御回路700は、メモリ600にアクセスすることにより、メモリ600に記憶されている第1のデータ“00”を読み出すと、動作モードとして通常モードが選択されていると判定し、当該発振器100を通常モードで動作させるように制御回路400を制御する。
【0045】
すなわち、スイッチ制御回路700は、電流源VIを定電流源として動作させると共に、スイッチSW10?SW30をオン状態に固定した上でスイッチング機能を無効にする状態(以下、これを無効状態と呼ぶ)にする。
【0046】
この場合、参照電圧生成回路500によって生成された参照電圧は、電流源VI、インバータINV200の電源端子及び温度補償回路300に印加される。電流源VIは、参照電圧が印加されることに応じて、所定の電流すなわちインバータINV100を動作させる動作電流を生成し、これをインバータINV100の電源端子に供給する。
【0047】
これにより、インバータINV100及びINV200並びに温度補償回路300は、いずれも動作状態になることにより、インバータINV200は、所望の発振周波数を有する出力信号Foutを出力する。
【0048】
続いて、メモリ600に第2のデータ“01”が記憶され、発振器100が節電モードで動作する場合について説明する。この場合、スイッチ制御回路700は、メモリ600にアクセスすることにより、メモリ600に記憶されている第2のデータ“01”を読み出すと、動作モードとして節電モードが選択されていると判定し、当該発振器100を節電モードで動作させるように制御回路400を制御する。
【0049】
すなわち、スイッチ制御回路700は、電流源VIを定電流源として動作させると共に、スイッチSW10?SW30のスイッチング機能を有効にする状態(以下、これを有効状態と呼ぶ)にする。これにより、スイッチSW10?SW30は、外部(携帯電話機に搭載される他の信号処理回路)から供給される制御信号S10に基づいて、その接続状態を切り換える。
【0050】
ところで、一般に、携帯電話機は、一定の時間間隔毎に基地局と通信するようになされており、間欠的に動作する。これにより、携帯電話機が基地局と通信していない場合には、制御信号S10として、所望の発振周波数を有する出力信号を出力することを停止する出力停止信号が与えられ、スイッチSW10?SW30は、いずれもオフ状態にされる。
【0051】
この場合、参照電圧生成回路500によって生成された参照電圧は、電流源VI、インバータINV200の電源端子及び温度補償回路300に印加されない。従ってインバータINV100の電源端子にも、インバータINV100を動作させる動作電流が供給されない。
【0052】
これにより、インバータINV100及びINV200並びに温度補償回路300は、非動作状態になり、発振器100は、携帯電話機によって必要とされる所望の発振周波数を有する出力信号Foutを出力することを停止する。
【0053】
これに対して、携帯電話機が基地局と通信している場合には、制御信号S10として、所望の発振周波数を有する出力信号を出力することを要求する出力要求信号が与えられ、スイッチSW10?SW30は、いずれもオン状態にされる。
【0054】
この場合、参照電圧生成回路500によって生成された参照電圧は、電流源VI、インバータINV200の電源端子及び温度補償回路300に印加される。よって、電流源VIは、参照電圧が印加されることにより、所定の電流すなわちインバータINV100を動作させる動作電流を生成し、これをインバータINV100の電源端子に供給する。
【0055】
これにより、インバータINV100及びINV200並びに温度補償回路300は、いずれも動作状態になり、発振器100は、所望の発振周波数を有する出力信号Foutを出力する。

(4)「【0065】
また図4に、電源電圧入力端子Vddと、グランド端子GNDと、出力端子OUTと、制御電圧入力端子又は制御信号入力端子として機能する外部接続端子Vc/Scとが形成された面に対する側面に、データ入出力端子DIO及びクロック端子CLKが形成された発振器100の一例を示す。」

(5)図1


(6)上記(1)から(5)の記載事項から引用文献2には以下の技術事項が記載されているといえる。

「バッファとしてのインバータINV200の出力端子から所望の発振周波数を有する出力信号Foutを出力する発振器100に外部から供給される制御信号S10(出力停止信号/出力要求信号)を入力する外部接続端子Scを設け、発振器100が節電モードで動作する場合、スイッチ制御回路700がスイッチSW10のスイッチング機能を有効にする有効状態とされ、前記制御信号S10によってスイッチSW10のオン・オフ状態を変化させることで、選択された動作モードに応じてインバータINV200の動作状態(出力信号Foutの出力を停止する非動作状態/出力信号Foutを出力する動作状態)を制御する」との技術事項。


3 引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)

(1)「【0048】
図2に第2実施形態の発振器回路の回路図を示す。第2実施形態に発振器回路10Aの基本構成は第1実施形態と共通するが、発振回路14に対して、出力バッファー回路20(20A,20B)が、複数(本実施形態では2つ)接続されている。出力バッファー回路20のうち、出力バッファー回路20Aは、増幅された発振信号を出力端子22A(O/P2)から出力し、出力バッファー回路20Bは、増幅された発振信号を出力端子22B(O/P2)から出力する。
【0049】
本実施形態では、出力バッファー回路20Aに対応して、発熱回路30A、スイッチ回路26A(SW1)、スイッチ回路28A(SW2)、スイッチ回路32A(SW3)、OE回路24A(OE1)が設けられている。これらの構成要素の接続形態は、第1実施形態の出力バッファー回路20、発熱回路30、スイッチ回路26(SW1)、スイッチ回路28(SW2)、スイッチ回路32(SW3)、OE回路24(OE1)と同様である。同様に、出力バッファー回路20Bに対応して、発熱回路30B、スイッチ回路26B(SW4)、スイッチ回路28B(SW5)、スイッチ回路32B(SW6)、OE回路24B(OE2)が設けられている。
【0050】
OE回路24B(OE2)は、OE回路24A(OE1)同様に出力切替信号が入力され、出力切替信号(ON)が入力されるとON信号を出力し、出力切替信号(OFF)が入力されるとOFF信号を出力する。そして、このON信号、OFF信号は、スイッチ回路26B(SW4)、スイッチ回路28B(SW5)、スイッチ回路32B(SW6)に出力される。」

(2)「【0054】
第2実施形態において、OE回路24A(OE1)、OE回路24B(OE2)には、互いに別系統の出力切替信号が入力され、出力バッファー回路20A、20Bは互いに独立にオン・オフ制御される。しかし、図2の下部に記載した表に示すように、OE回路24B(OE2)から出力されるオン信号及びオフ信号に対するスイッチ回路26B(SW4)、スイッチ回路28B(SW5)、スイッチ回路32B(SW6)の動作は、OE回路24A(OE1)から出力されるオン信号及びオフ信号に対するスイッチ回路26A(SW1)、スイッチ回路28A(SW2)、スイッチ回路32A(SW3)の動作と同様である。」

(3)図2


(4)上記(1)から(3)の記載事項から引用文献3には以下の構成の発振器回路10Aが記載されているといえる。

「発振回路14に対して、出力バッファー回路20A、20Bが接続されており、
前記出力バッファー回路20Aは、増幅された発振信号を出力端子22Aから出力し、
前記出力バッファー回路20Bは、増幅された発振信号を出力端子22Bから出力し、
前記出力バッファー回路20A、20Bは互いに独立にオン・オフ制御される、発振器回路10A。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は「情報処理装置や通信装置のクロック供給源の発振回路などとして用いられる所望の周波数の基準となる信号を供給可能な発振装置5」であって、「水晶振動子1を発振してPLL回路20で逓倍することによって所定の周波数foの出力信号φ4を出力するものであり」、「出力信号φ4」は「バッファ35を通って出力端子61から出力され」るものである。
ここで、引用発明の「水晶振動子1」が本願発明1の『発振素子』に含まれ、引用発明の「出力端子61」が本願発明1の『前記発信信号が出力される第3の端子』に相当し、引用発明の「出力端子61から出力され」る「出力信号φ4」が本願発明1の『発振信号』に相当することは明らかであるから、引用発明である「発振装置5」は、『発振素子を発振させて発振信号を生成する発振回路』に含まれる。

イ 引用発明を構成する「リファレンスデバイダ(RD)15」、「フィードバックデバイダ(FD)24」及び、「アウトプットデバイダ(OD)30」は「プログラマブルデバイダ」であり、それぞれ「設定部40」から供給される「分周数M、N、X」に基づいて「発振信号出力部10」から入力された「周波数fgの発信信号φ1」を逓倍する、すなわち周波数を制御することで、全体として「周波数fgの発振信号φ1」から「周波数foの出力信号φ4」を得るものであるから、引用発明における「分周数M、N、X」は、本願発明1の『少なくとも周波数を含む前記発振信号の特性を制御する特性制御データ』に相当し、本願発明1と引用発明とは『少なくとも周波数を含む前記発振信号の特性を制御する特性制御データ』が入力される点で共通する。
ここで、引用発明の「分周数M、N、X」は、「ROM41、42」を含む「設定部40」から供給され、「シフトレジスタ43を介してROM41あるいはROM42にデータを書き込む場合は、出力端子61がデータ入力端子として用いられ」るから、引用発明において、『少なくとも周波数を含む前記発信信号の特定を制御する特性制御データ』は、「出力端子61」から入力される。

ウ 引用発明は「コントロール端子62で制御できる機能OE」によって「水晶振動子1の発振回路とPLL回路は動作させたまま出力信号φ4(バッファ35)をハイインピーダンス状態にする」、すなわち「出力信号φ4」の出力を停止することができるものである。
ここで、「コントロール端子62」は「出力信号φ4」を制御するために用いられるものであるから、「コントロール端子62」に何らかの“制御信号”が入力されることは明らかであるといえ、この「出力信号φ4」を制御する“制御信号”を『出力制御信号』と称するのは任意である。
してみると、引用発明の「コントロール端子62」は、『少なくとも周波数を含む前記発振信号の特性を制御する特性制御データが入力される』との点を除き、本願発明1でいう『第3の端子からの前記発振信号の出力を制御する第1の出力制御信号が入力される第1の端子』に相当する。


(2)一致点及び相違点

上記(1)の対比を踏まえれば、本願発明1と引用発明とは、

「発振素子を発振させて発振信号を生成する発振回路であって、
前記発振信号が出力される第3の端子と、
前記第3の端子からの前記発振信号の出力を制御する第1の出力制御信号が入力される第1の端子と、を備え、
少なくとも周波数を含む前記発振信号の特性を制御する特性制御データが入力される、
発振回路。」

で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1の『特性制御データ』の入力には『第1の端子』が用いられるのに対し、引用発明の「分周数M、N、X」の入力には、「コントロール端子62」ではなく、「出力端子61」が用いられる点。

[相違点2]
本願発明1は『第3の端子からの前記発振信号の出力を制御する第1の出力制御信号が入力される第1の端子』に加え、さらに『第3の端子からの前記発振信号の出力を制御する第2の出力制御信号が入力される第2の端子』を備え、『前記第1の出力制御信号及び前記第2の出力制御信号がともに前記発振信号の出力の停止を指示する場合に、前記第3の端子からの前記発振信号の出力を停止する』のに対し、引用発明は「コントロール端子62で制御できる機能OE」によって「水晶振動子1の発振回路とPLL回路は動作させたまま出力信号φ4(バッファ35)をハイインピーダンス状態にする」点。


(3)判断

事案に鑑み、相違点2について検討する。

引用文献2には「バッファとしてのインバータINV200の出力端子から所望の発振周波数を有する出力信号Foutを出力する発振器100に外部から供給される制御信号S10を入力する外部接続端子Scを設け、発振器100が節電モードで動作する場合、スイッチ制御回路700がスイッチSW10のスイッチング機能を有効にする有効状態とされ、前記制御信号S10によってスイッチSW10のオン・オフ状態を変化させることで、選択された動作モードに応じてインバータINV200の動作状態(出力信号Foutの出力を停止する非動作状態/出力信号Foutを出力する動作状態)を制御する」との技術事項が記載されているが、引用発明は「コントロール端子62」を介してOE機能を制御することで出力信号φ4の出力を制御できるので、「出力信号φ4」の出力を制御するための別の端子を新たに設ける必要性がないから、引用発明に引用文献2に記載された上記技術事項を組み合わせる動機付けが存在しない。
仮に、引用発明のバッファ35に引用文献2に記載された制御を組み合わせたとしても、引用文献2に記載された制御は、スイッチ制御回路700が「有効状態」であり、“外部接続端子Sc”から制御信号S10として出力要求信号が入力された場合にのみ出力信号Foutの出力を行うものであって、本願発明1のような『前記第1の出力制御信号及び前記第2の出力制御信号がともに前記発振信号の出力の停止を指示する場合に、前記第3の端子からの前記発振信号の出力を停止する』との動作を行うものとはなり得ない。
また、引用文献3にも相違点2に関する事項は記載されていない。さらに、発振回路の技術分野において相違点2に関する事項が周知技術であるともいえない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


2 本願発明2-8について

本願発明2-8も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、上記1で説示した理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について

上記第5の1(3)及び第5の2で説示したとおり、本願発明1-8は拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-09-03 
出願番号 特願2018-127323(P2018-127323)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 徳浩  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 岡本 正紀
丸山 高政
発明の名称 発振回路、発振器、電子機器および移動体  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 松本 充史  
代理人 川▲崎▼ 通  
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