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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1365990
審判番号 不服2019-10353  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-06 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 特願2015- 23921「車両の見積り提供システム及び車両の見積り提供方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-148889、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年2月10日の出願であって,平成30年12月25日付けで拒絶理由通知がされ,平成31年2月21日付けで手続補正がされ,令和元年5月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和元年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和元年5月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-13に係る発明は,以下の引用文献1-8に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2002-207894号公報
2.永岡 龍彦,インターネット販売が拓く脱メーカーへの道,
日経netbrain 第1巻 第4号,日経BP社,
2000年7月8日,第1巻,p.140-149
3.特開2003-132166号公報
4.特開2011-253296号公報
5.特開2008-97548号公報
6.特開2003-108812号公報
7.特開2004-171288号公報
8.特開2006-18601号公報


第3 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は,平成31年2月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】修理対象車両の車両情報を特定する入力装置と,
前記入力された車両情報に基づき,前記修理対象車両を修理する場合の修理費用の見積りを算出し,
前記修理対象車両から新車両に乗り換える場合の新車両購入費用の見積り及び前記修理対象車両から中古車両に乗り換える場合の中古車両購入費用の見積りを算出するとともに,
前記修理対象車両を修理する場合,修理対象車両から新車両に乗り換える場合及び修理対象車両から中古車両に乗り換える場合における車両の将来の維持費用及び推定車両残存価格を各年ごとに算出し,
前記修理費用の見積り,前記新車両購入費用の見積り及び前記中古車両購入費用の見積りのそれぞれについて,前記算出した車両の将来の維持費用及び推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する制御処理手段と,
を具備していることを特徴とする車両の見積り提供システム。」

なお,本願発明2-13の概要は以下のとおりである。
本願発明2-12は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明13は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。


第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は当審が付与した。)。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,コンピュータネットワーク又はコンピュータシステムを用いた製品の修理および買い替えの判断基準となる情報の供給方法及び供給装置に関するものである。」
「【0002】【従来の技術】現在使用している製品が故障した場合,当該製品の保証期間外においては,通常,修理費用が発生する。その際に,修理するか,または同種の製品に買い替えるかを判断する基準として両者の見積もりを比較検討する。従来,修理費用の見積もりは,販売店に出向いたり,電話により問い合わせたり,インターネットによりとっていた。また,買い替えのための新製品の購入費用を調べるにも,同様の方法をとっていた。」
「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記の方法では,故障した製品の修理費用と同種の製品の購入費用とを別の作業で調べるため,両費用のデータが揃わなければ,比較することができない。・・・そして,前記両費用の比較は,初期投資は安価でも使用期間が長くなるとランニングコストを考慮する必要性がある。」
「【0005】上記の問題点に鑑み,本発明の第1の目的は,故障した製品の修理費用と同種の製品の購入費用との見積もりを同時に出力可能な供給方法または供給装置を提供することである。・・・第3の目的は,前記見積もりに修理後のランニングコストを加えた使用期間毎の費用を含めた供給方法を提供することである。・・・」
「【0016】【発明の実施の形態】<第1の実施形態>図1は,第1の実施形態の構成を示すブロック図である。1は,故障した製品に関する検索条件である型番,故障状態等を入力する一方,検索結果である見積もりを出力するクライアントである。2は,インターネット等のコンピュータネットワークである。3は,修理・製品比較サーバであり,故障条件入力モジュール4と情報抽出処理モジュール5と検索結果出力モジュール6とからなる。7は,コンピュータネットワーク2,又は修理・製品比較サーバ3に直接接続された修理・製品情報データベースである。なお,修理・製品情報データベース7は,修理・製品比較サーバの中に設けることも可能である。」
「【0017】ここでクライアントとは,例えば,パーソナルコンピュータ(パソコン)やモバイル端末であり,ユーザはWWWブラウザ(インターネット経由で文書を閲覧するためのアプリケーションソフト)により修理・製品比較サーバ3にアクセスできるものとする。」
「【0018】・・・次に,ユーザはクライアント1に故障した製品の型番,故障状態等の検索条件を入力,送信する(4b)。そして,入力された検索条件に基づいて情報抽出処理モジュール5は,修理・製品データベース7から前記故障した製品の修理に関する情報と,前記故障した製品と同種の製品の購入に関する情報とを読み出し,両情報の見積もりを算出する(5a)。そして,検索結果である見積もりを検索結果出力処理モジュール6からネットワーク2を介してクライアント1に出力する(6a)。」
「【0032】この修理・製品情報の供給方法によりクライアントには,コンピュータネットワークを介して故障した製品の修理費用と同種の製品の購入費用との見積もりを同時に供給することができる。その結果,ユーザは,製品の修理および買い替えの判断を容易に行うことができる。」
「【0038】そして,費用比較演算部13は,記憶部15から修理費用データと購入費用データ及び廃棄料データと年間消費電気代とを読み出し演算して,販売店データを加えて見積もりを算出する(13b)。そして,費用比較結果出力部14は,この見積もりを出力表示用にフォーマットする(14b)。最後に,フォーマットされた見積もりが,図1の検索結果出力モジュール6を経由してクライアント1に出力される。」
「【0039】図17は,検索結果の見積もりが表示されたクライアント1の画面の一例を示した図である。検索結果として故障後の使用期間に対応して製品を修理する方が得か,同種の製品を購入する方が得かを表示している。また,検索詳細の欄には,修理費用と購入費用との内訳に加えて,ランニングコストを加えた使用期間毎の費用とを表示している。例えば,図17のような検索結果によると,使用期間が3年までは修理した方が得で,4年以上は新製品を販売店Cで購入した方が得であることがわかる。」
「【0051】なお,本実施例では,故障した製品としてビデオ,テレビを挙げたが,他に自動車,衣類,日用雑貨等でもよい。」
また図17には,修理と新製品購入のそれぞれについて,修理費用又は購入費用にランニングコストを加えた金額を1年後から5年後まで各年ごとに表した見積もりが記載されている。

(2) 上記で摘記した事項から,以下の事項がいえる。
ア 「発明が解決しようとする課題」の欄の「上記の方法では,故障した製品の修理費用と同種の製品の購入費用とを別の作業で調べるため,両費用のデータが揃わなければ,比較することができない。」及び「前記両費用の比較は,初期投資は安価でも使用期間が長くなるとランニングコストを考慮する必要性がある。」(【0003】)との記載,及び,「なお,本実施例では,故障した製品としてビデオ,テレビを挙げたが,他に自動車,衣類,日用雑貨等でもよい。」(【0051】)との記載から見て,従来,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用とを別の作業で調べていたため,両費用のデータが揃わなければ比較できず,また当該両費用の比較は,使用期間に応じたランニングコストを考慮していなかったという問題点があったことが記載されている。
また,「本発明の第1の目的は,故障した製品の修理費用と同種の製品の購入費用との見積もりを同時に出力可能な供給方法または供給装置を提供することである。」及び「第3の目的は,前記見積もりに修理後のランニングコストを加えた使用期間毎の費用を含めた供給方法を提供することである。」(【0005】)との記載,及び,「なお,本実施例では,故障した製品としてビデオ,テレビを挙げたが,他に自動車,衣類,日用雑貨等でもよい。」(【0051】)の記載から見て,少なくとも,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用の見積りを同時に出力可能とし,また当該見積りに修理後のランニングコストを加えた使用期間毎の費用を含めることを目的としていることが記載されている。

イ 「ユーザはクライアント1に故障した製品の型番,故障状態等の検索条件を入力,送信」(【0018】)しているところ,製品は「自動車,衣類,日用雑貨等でもよい」(【0051】)ことから,ユーザが故障した自動車の型番,故障状態を入力するクライアントが記載されている。

ウ 「ユーザはクライアント1に故障した製品の型番,故障状態等の検索条件を入力,送信」(【0018】)し,また「入力された検索条件に基づいて情報抽出処理モジュール5は,修理・製品データベース7から前記故障した製品の修理に関する情報と,前記故障した製品と同種の製品の購入に関する情報とを読み出し,両情報の見積もりを算出」(【0018】)し,修理・製品比較サーバ3は「故障条件入力モジュール4と情報抽出処理モジュール5と検索結果出力モジュール6」(【0016】)とからなり,製品は「自動車,衣類,日用雑貨等でもよい」(【0051】)ことから,修理・製品比較サーバは入力された型番,故障状態に基づき,前記故障した自動車の修理費用の見積もりを算出することが記載されている。

エ 「入力された検索条件に基づいて情報抽出処理モジュール5は,修理・製品データベース7から前記故障した製品の修理に関する情報と,前記故障した製品と同種の製品の購入に関する情報とを読み出し,両情報の見積もりを算出」(【0018】)し,「修理と新製品購入のそれぞれについて,修理費用又は購入費用」を表した見積もりを算出(図17)しており,修理・製品比較サーバ3は「故障条件入力モジュール4と情報抽出処理モジュール5と検索結果出力モジュール6」(【0016】)とからなり,また,製品は「自動車,衣類,日用雑貨等でもよい」(【0051】)ことから,修理・製品比較サーバは前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合の購入費用の見積もりを算出することが記載されている。

オ 「入力された検索条件に基づいて情報抽出処理モジュール5は,修理・製品データベース7から前記故障した製品の修理に関する情報と,前記故障した製品と同種の製品の購入に関する情報とを読み出し,両情報の見積もりを算出」(【0018】)し,「修理と新製品購入のそれぞれについて,修理費用又は購入費用にランニングコストを加えた金額を1年後から5年後まで各年ごとに表した見積もり」を算出(図17)しており,修理・製品比較サーバ3は「故障条件入力モジュール4と情報抽出処理モジュール5と検索結果出力モジュール6」(【0016】)とからなり,また,製品は「自動車,衣類,日用雑貨等でもよい」(【0051】)ことから,修理・製品比較サーバは前記故障した自動車を修理する場合及び前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合における自動車のランニングコストを各年ごとに算出することが記載されている。

カ 「入力された検索条件に基づいて情報抽出処理モジュール5は,修理・製品データベース7から前記故障した製品の修理に関する情報と,前記故障した製品と同種の製品の購入に関する情報とを読み出し,両情報の見積もりを算出」(【0018】)し,「修理と新製品購入のそれぞれについて,修理費用又は購入費用にランニングコストを加えた金額を1年後から5年後まで各年ごとに表した見積もり」を算出(図17)しており,修理・製品比較サーバ3は「故障条件入力モジュール4と情報抽出処理モジュール5と検索結果出力モジュール6」(【0016】)とからなり,また,製品は「自動車,衣類,日用雑貨等でもよい」(【0051】)ことから,修理・製品比較サーバは前記修理費用の見積もり,前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合の購入費用の見積もりのそれぞれについて,前記算出した自動車のランニングコストを各年ごとに表した見積もりを作成することが記載されている。

キ 「ユーザはクライアント1に故障した製品の型番,故障状態等の検索条件を入力,送信」(【0018】)し,次に「入力された検索条件に基づいて情報抽出処理モジュール5は,修理・製品データベース7から前記故障した製品の修理に関する情報と,前記故障した製品と同種の製品の購入に関する情報とを読み出し,両情報の見積もりを算出」(【0018】)して,最後に「検索結果である見積もりを検索結果出力処理モジュール6からネットワーク2を介してクライアント1に出力」(【0018】)しており,修理・製品比較サーバ3は「故障条件入力モジュール4と情報抽出処理モジュール5と検索結果出力モジュール6」(【0016】)とからなり,また,製品は「自動車,衣類,日用雑貨等でもよい」(【0051】)ことから,クライアントと修理製品比較サーバとを具備する自動車の見積もり提供システムが記載されている。

(3) したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「従来,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用とを別の作業で調べていたため,両費用のデータが揃わなければ比較できず,また当該両費用の比較は,使用期間に応じたランニングコストを考慮していなかったという問題点があったため,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用の見積りを同時に出力可能とし,また当該見積りに修理後のランニングコストを加えた使用期間毎の費用を含めることを目的とし,
ユーザが故障した自動車の型番,故障状態を入力するクライアントと,
入力された型番,故障状態に基づき,前記故障した自動車の修理費用の見積もりを算出し,
前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合の購入費用の見積もりを算出するとともに,前記故障した自動車を修理する場合及び前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合における自動車のランニングコストを各年ごとに算出し,
前記修理費用の見積もり,前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合の購入費用の見積もりのそれぞれについて,前記算出した自動車のランニングコストを各年ごとに表した見積もりを作成する修理・製品比較サーバと,
を具備する自動車の見積もり提供システム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「カーライフ全般をカバーするGAZOO
GAZOOの「AUTO MALL」には,クルマに関する様々なサービスメニューが用意されている。
新車購入のシステム(NVIS)にはクルマのスペックやオプションなどの詳しい情報が用意されている。・・・概算見積りや商談の予約も可能。・・・。
・・・うっかりクルマをぶつけてしまった場合は,板金・修理情報の「VBS」で概算修理金額を調べよう。・・・
買い換えや時には,下取り情報を提供する「SAGS」で参考価値が分かるし,全国の中古車情報を検索,見積もり依頼もできる。」(143頁 上部囲み内の左欄)
「新車見積もり(NVIS)
トヨタ,ダイハツ,VWなどカタログをオンライン検索,最寄りのディーラーに見積もりを依頼」(143頁 上部囲み内の図中)
「中古車販売(UVIS)
2万5000台以上の中古車をエリアや車種,価格で検索できる。見積もり依頼や商談の予約も可能」(143頁 上部囲み内の図中)
「板金修理(VBS)
損傷箇所と車種,塗色などを選択して修理金額を概算。修理工場のオンライン予約もできる」(143頁 上部囲み内の図中)

したがって,上記引用文献2には,
「「AUTO MALL」には,「新車見積もり(NVIS)」,「中古販売(UVIS)」或いは「板金修理(VBS)」などのサービスメニューが用意されており,「新車見積もり(NVIS)」では新車の購入見積もりを依頼し,「中古販売(UVIS)」では中古車の購入見積もりを依頼し,「板金修理(VBS)」では概算修理金額を調べることができる」
という技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】【背景技術と発明が解決しようとする課題】従来,自動車を購入しようとしている人がメーカに見積を依頼すると,メーカ側では,自動車の販売価格,値引価格,付属品の価格のほか,顧客の要望に応じて,自動車税,自賠責保険,任意保険,顧客が現在所有する自動車の下取価格なども考慮に入れて見積書を作成する。購入予定者は,この見積書を参照して購入するか否かを決定する。しかしながら,このような方法では,購入後に必要になる車庫代,車検・点検の費用,故障が生じた場合に発生しうる部品の交換代などが考慮されていないため,顧客が自動車の購入・維持にかかる全ての費用の概算を得るには,メーカからの見積書に,更にこれらの様々な事項を加えて検討する必要がある。」
「【0003】また,顧客によっては,完全週休2日制などといったことがあり,このようなときは,自動車を購入もしくはリースするよりもレンタルといった利用形態とするほうが,年間にかかる費用としては安くなる場合も多々ある。しかしながら,上述した方法では,購入が前提の見積となっているため,レンタルのほうが費用的には安く済むにもかかわらず,結果として,自動車を購入してしまい,不要な費用負担を強いられるといった不都合がある。逆に,レンタルで自動車を利用している人も,利用の期間や頻度によっては,自動車を購入する場合やリースの場合より多くの経費を費やしている可能性がある。」
「【0004】この発明は,以上の点に着目したもので,車両の利用者ないし利用予定者が,利用条件に最も適した利用形態を選択するのに好適な車両コストシミュレーション方法,装置,プログラム,システム,データ管理装置を提供することである。」
「【0037】営業担当者40の運用端末42では,コストシミュレーションプログラム56が実行されており,顧客条件取得プログラム58Aを実行することによって,図8(A)に示すように,サブ顧客データベース60Bに蓄積されているデータの一覧画面(画面G)を表示し,シミュレーション対象となる車両を選択する(ステップS50)。なお,ここでは,あらかじめサブ顧客データベース60Bに自動車条件に関する情報が登録されている場合について説明するが,新規顧客の場合には,画面Gに示す「新規登録」ボタン108を押して,前記画面E及びFに戻り,ステップS40?S46に従って,サブ顧客データベース60Bに登録を行う。」
「【0038】前記ステップS50において,シミュレーション対象の車両を選択し(複数可),複数の場合には,個別にシミュレーションを行うか,合計してコスト計算を行うか選択して該当するボタンを押す。すると,コスト演算プログラム58Cが実行され,前記ステップにおいて選択された自動車について,一括購入時とリース時の年経費が算出される(ステップS52)。」
「【0039】例えば,一括購入の場合,車種が「***,1500cc」,車種区分が「バン」,用途区分が「貨物用」,使用開始時期が「平成13年6月」,使用期間が「5年間」,月間走行距離が「3000km」の場合には,車種,使用期間,月間走行距離から,毎月点検が必要であることが分かり,これに関する費用と,6ヶ月点検,12ヶ月点検,車検に関する費用などと交換工賃が加算されてメンテナンス費が算出される。また,車種,使用期間,月間走行距離から,5年経過前に売った場合の値段などが算出される。更に,同じ自動車条件でリースにした場合には,車両価格,使用期間,月間走行距離,保険,税金や他の条件から,毎月のリース料が算出される。」
「【0040】次に,前記ステップS52で算出された年経費と,人件費,車庫代金,年間稼動日数などの条件から,一日あたりの稼動単価を算出し(ステップS54),レンタルにした場合の料金を算出する。そして,コスト情報出力プログラム58Dを実行し,利用形態毎のコストの算出結果を比較出力する(ステップS56)。」
「【0041】図8(B)には,このような比較結果を示す画面(画面H)が示されている。図示のように,シミュレーション結果は,自動車を購入した場合,リースした場合,レンタルした場合のそれぞれについて,コストの内訳が分かるようにグラフ表示された経済比較表110A?110Cとして表示される。コストの内訳は,例えば,「金利」,「減価償却費」,「管理人費」,「メンテナンス費」,「登録費用」,「任意保険料」,「自賠責保険料」,「重量税」,「自動車税」,「取得税」,「車両代金」,……となっている。これらの結果は,表示部44に表示して顧客80に提示するのに加え,同図(A)に示すように,FD62などに出力して顧客80に提供するようにしてもよい。」
「【0042】顧客80は,これらの経済比較表110A?110Cを比較することで,利用形態毎に年間のコストと,その内訳を把握することができる。このため,自動車の購入予定者などは,自分の使用目的に合わせて,購入前にレンタルやリースなどの他の利用形態を考慮に入れた上で検討を行うことが可能となる。また,現在自動車を所有している顧客80についても,今後かかる費用や下取り価格が分かるため,リースなどの利用形態に変更するための検討材料とすることもできる。」
また,図8(B)には,購入の場合,リースの場合,レンタルの場合のそれぞれにおいて,各年度ごとのコストとその内訳が記載されている。

したがって,上記引用文献6には,
「自動車を購入した場合のメンテナンス費及び5年経過前に売った場合の値段を算出し,リースした場合の毎月のリース料を算出し,レンタルした場合のレンタルの料金を算出し,それぞれについて年間のコストとその内訳を各年ごとに表した経済比較表を作成することで,現在自動車を所有している顧客が,今後かかる費用や下取り価格が分かり,リースなどの利用形態に変更するための検討材料とする」
という技術的事項が記載されていると認められる。

4 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】オートオークション市場では,過去の取引データがデータベース化してあり,自動車の車種の他,使用期間,走行距離,瑕疵状態などの履歴情報を用いて市場価格が公正に定まるようになっている。そして,この蓄積されたデータを用いることにより,新規に販売する自動車を所定期間後にオートオークション市場で売却した場合,いくらで売却できるか予測することができる。この予測売却価格は,予測残存価格(あるいは単に残価)などと呼ばれている。例えば,新車での販売価格500万円の自動車が3年後にオートオークション市場で200万円で売却できると予測できる場合,この自動車の3年後の予測残存価格は200万円となる。」
「【0009】【発明が解決しようとする課題】ところが,従来の販売システム101では,単にディーラ106が販売した自動車毎に残価保証を行っており,オートオークション市場115での売却価格が予測残存価格を下回る場合のリスクを回避(ヘッジ)する手段は特にとられていなかった。そのため,仲介会社110の事業は,オートオークション市場115での売却価格の変動の影響を受けやすいという問題があった。」
「【0015】ディーラ4は,所定の期間後(例えば,3年)に自動車6を下取り(返却)するとの契約の下,販売価格(本体価格)から所定期間後の自動車6の予測残存価格(以下残価)を据え置いた値で顧客7に自動車6をローン販売する。残価とは,自動車6がオートオークション市場8で持つと考えられる価値であり,その自動車6をオートオークション市場8で売却した場合に予測される予測売却価格で表される。」
「【0016】クレジット会社5は,顧客7に与信を行い,ディーラ4に自動車6の販売価格に相当する代金を支払う。顧客7がクレジット会社5に支払う金額は,自動車6の販売価格から残価を引いた(据え置いた)金額であり,通常は,これを36回払いなどのローンで支払う。このように販売システム1では,顧客7は,販売価格の全額を支払う必要がなく,自動車6購入の負担を軽くすることができる。例えば,販売価格500万円で下取り時の残価が200万円である自動車の場合,顧客7は500-200=300万円を分割して支払えばよい。」
「【0017】クレジット会社5は,顧客7が支払わない残価分の金額は仲介会社2に残価保証してもらい,顧客7が自動車6を下取りする所定期間後に,仲介会社2に残価分を支払ってもらう。このようにして,クレジット会社5は,自動車6の販売価格のうち,(販売価格-残価)分を顧客7に支払ってもらい,残価分を仲介会社2に支払ってもらうことにより,自動車6の販売代金を回収する。」
「【0018】仲介会社2は,クレジット会社5に対して残価保証業務を行うと共に,後述する特別目的会社3と共に顧客7から下取りした自動車6をオートオークション市場8で売却して,自動車6に残存している価値を売却代金の形でオートオークション市場8から回収する。仲介会社2は,クレジット会社5に対して残価保証を行う代わりにクレジット会社5から残価保証料金を受け取る。即ち,仲介会社2は,クレジット会社5から残価保証料金を受け取って,自動車6が有する残価分の金額をオートオークション市場8で回収するリスクを負うことになる。オートオークション市場8での売却価格が残価を上回った場合,その差額は仲介会社2の儲けとなり,下回った場合は損失となる。」
「【0021】特別目的会社3は,顧客7から下取りした複数の自動車6からグループ(以下,自動車グループ)を作り,この自動車グループを管理単位として残価分の金額の回収を行う。即ち,個々の自動車6の残価の合計値を自動車グループの残価(以下,グループ残価)とし,売却価格の合計値を自動車グループの売却価格(以下,グループ売却価格)として会計処理する。このように,複数の自動車6を組み合わせると,このグループに属する自動車6のうち,残価より低い価格でしか売却できないものがある一方,残価より高い価格で売却できるものも含まれていることを期待することができる。このため,オートオークション市場8での売却価格の変動リスクを平均化して分散することができる。これによりグループ残価が,グループ売却価格を下回るリスクを低減することができる。」
「【0038】オートオークション市場システム25は,オートオークション市場8で中古車の売買業務に関する情報処理を行うシステムである。管理サーバ21は,オートオークション市場システム25から市場情報と売却情報を取得することができる。市場情報は,過去にオートオークション市場8で行われた中古車の取引データに関する情報であり,例えば,オートオークション市場8で売却された自動車の車種,使用年数,走行距離,瑕疵状態,売却価格などが含まれている。特別目的会社3は,これらの情報を用いてディーラ4が販売する自動車6の残価や残価保証することによるリスクを予測し,対象車両データベース27を作成することができる。」
「【0041】図4は,対象車両データベース27に格納されている情報の論理的な構成の一例を示した図である。対象車両データベース27は,残価保証の対象となる車種と,これらの車種の残価保証額と個別リスク値の時間的な推移などの情報から構成されている。例えば,車種Aは,販売価格が500万円であり,0.5年後の保証残価額(仲介会社2が保証する残価)は450万円であり,1年後の保証残価額は420万円となっている。また,0.5年後のリスクは1万円であり,1年後の個別リスク値は2万円であると予測されている。」
「【0042】個別リスク値は,対象となる車種を所定期間後にオートオークション市場8で売却した場合に,売却価格が残価を下回ることにより生じる損害の大きさを見積もって数値化し,車種ごとに比較できるようにした予測値である。本実施の形態では個別リスク値の大きさを円単位で表した。個別リスク値の値が大きいほど,売却価格が残価を下回って,損害を受ける金額が大きいと予測される。」
「【0059】図7は,自動車グループ生成部34が自動車グループを生成する手順を説明するためのフローチャートである。まず,自動車グループ生成部34が起動される(ステップ5)。これは,管理サーバ21のオペレータなどがコマンドを管理サーバ21に入力することにより起動してもよいし,所定の条件(所定の日時や新規登録した自動車6の数など)が満たされたときに自動的に起動するように構成してもよい。本実施の形態では,毎月15日を締め日とし,自動車6の新規登録を締めた後,自動的に起動するように構成した。」
「【0060】次に,自動車グループ生成部34は,保証車両データベース28を検索し,当月に新規に登録した自動車6を特定する(ステップ10)。次に,自動車グループ生成部34は,保証車両データベース28で特定した各自動車6の下取り予定日を取得し,下取り予定日に応じた区分に新規登録した自動車6をグループ分けする(ステップ15)。この場合,例えば,毎月15日を締め日として,月ごとの区分を作り,この区分に下取り予定日が含まれる自動車6を集計してグループを作る。」
「【0061】次に,自動車グループ生成部34は,ステップ15で生成した各区分に属する自動車6の台数を数え,自動車グループの生成数を各区分ごとに設定する。このとき,自動車グループ生成部34は,一自動車グループ当たりの台数がおおよそ所定台数(例えば100台)となるようにグループ数を設定する。次に,自動車グループ生成部34は,ステップ15で分割した区分に属する各自動車6の残価と個別リスク値を対象車両データベース27,又は保証車両データベース28を用いて取得する(ステップ25)。次に,自動車グループ生成部34は,各区分において,ステップ25で取得した残価と個別リスク値を用いて各グループでグループリスク値が個別リスク値の合計値より小さくなるように,ステップ20で設定したグループ数に自動車グループを生成する。」

したがって,上記引用文献7には,
「各自動車の将来の保証残価額と個別リスクを半年毎に予測し記憶しておき,前記保証残価額及び前記個別リスクを用いてオートオークション市場での自動車の売却価格が残価を下回るリスクが分散するような自動車の組み合わせを判断して,複数の自動車からなる自動車グループを生成する」
という技術的事項が記載されていると認められる。

5 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献8には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】自動車,建設機械,住宅,OA機器やパーソナルコンピュータ等の耐久消費財は,割賦売買契約,割賦償還契約やリース取引契約を通じて売買または賃貸借されることが少なくない。近時では,情報通信関連技術の普及により,耐久消費財を購入または賃借しようとする顧客がインターネット上のウェブページを閲覧して耐久消費財を選考したり,月々の支払額や賃料等の見積をオンラインで請求したりすることも一般化しつつある。」
「【0003】下記特許文献1には,自動車の賃借を希望する顧客が賃料の見積をオンライン請求できるシステムが開示されている。特許文献1に記載のシステムは,所定のリース期間(3年または5年)経過後における自動車の残価(残存価額,言い換えるならば下取り価格)を予め設定しておき,その分を本体価格から値引いた残りの金額を割賦で支払う,いわゆる残価設定型ローンの契約内容の見積を行うものである。」
「【0062】[フェーズ3]フェーズ3では,顧客が負っている債務を中途償還した場合の収支を推定し,その見積を顧客に提供する。フェーズ1を経て自動車を取得した顧客は,その取得に伴い割賦債務を負う。顧客は契約で定められた償還期間を費やして債務を履行することが原則であるが,本システムでは,償還期間の中途の時点で償還を行うことも許される。よって,償還期間の中途の時点で残債を償還した場合に収支がどのようになるのかについて,顧客が確認できるようにしている。取引支援装置1は,債務の中途償還に関して償還見積情報を提供するとともに,債務の中途償還または自動車の入替の申し出を受け付けるウェブサイトをネットワーク上に公開する。当該ウェブサイトを構成するデータは,予め補助記憶デバイス1cに格納されている。顧客は,コンピュータ2及びウェブブラウザプログラムの機能を用いて,取引支援装置1が公開しているウェブサイトにアクセスする。そして,種々の情報を取引支援装置1に入力したり,取引支援装置1が出力する情報を取得してこれを閲覧したりする。」
「【0064】続いて,顧客による,債務の償還見積要求が行われる。通常,償還見積要求には,中途償還の時点の指定,即ち,顧客が所有または賃借している自動車の残存価値及び顧客が負っている債務の未償還残債の算定の基準となる時点の指定が含まれる。さらに,中途償還要求に,現在の自動車に関する情報である現状情報が含まれることもある。現状情報とは,自動車の残存価値の査定に援用される情報であって,償還見積要求に際して顧客が提供するものである。認証処理を終えた取引支援装置1は,償還見積要求を行うためのウェブページを構成するデータを,顧客のコンピュータ2に向けて送信する(ステップS18)。ここで送信するデータには,少なくとも,顧客に中途償還の時点を指定させるためのウェブフォーム等が含まれる。加えて,現在の自動車に関する現状情報を入力させるためのウェブフォーム等が含まれる。現状情報の属性としては,現在までの走行距離,タイヤ交換の必要性の有無,修復歴または事故歴の有無,自動車の外装の状態や,自動車の外装及び/または内装の撮影画像データ等を挙げることができる。」
「【0065】上記のウェブページのデータを受信した顧客のコンピュータ2は,償還見積要求を行うためのウェブページをディスプレイ2eの画面に出力する。同時に,いわゆるチェックボックス,プルダウンメニューまたは入力テキストボックス等を備えるウェブフォームをディスプレイ2eの画面に出力する。顧客は,ウェブフォーム上のチェックボックス,入力テキストボックス等に対して操作入力を行うことで,自動車の残存価値及び未償還残債の算定の基準となる中途償還の時点を指定する。・・・操作入力を受け付けた顧客のコンピュータ2は,その内容に係る情報を含む償還見積要求を(HTTPに則って)取引支援装置1に送信する。」
「【0067】償還見積要求を受け付けた取引支援装置1は,バックエンドプログラムに従い,償還見積要求に含まれる情報を参照して,自動車の残存価値の額及び未償還残債の額の算定の基準となる中途償還の指定時点を知得する。また,償還見積要求に現状情報が含まれている場合,これをメインメモリ1bまたは補助記憶デバイス1cに格納する。そして,その指定時点における,顧客の自動車の残存価値の机上査定を査定主体に依頼する。」
「【0068】査定主体は,コンピュータ3及び電子メールクライアントプログラムの機能を用いて,上記の机上査定情報を受信する。そして,机上査定情報に含まれる財情報,現状情報を参照して,中途償還の指定時点における自動車の残存価値を机上査定する。・・・机上査定を行った査定主体は,自動車の残存価値の机上査定額を取引支援装置1に向けて返信する。」
「【0069】他方,机上査定情報を出力した取引支援装置1は,査定主体が算定した自動車の残存価値の机上査定額の取得を行う。具体的には,査定主体が返信する机上査定額のデータを,電気通信回線を介して受信する(ステップS21)。」
「【0070】並びに,取引支援装置1は,バックエンドプログラムに従い,中途償還の指定時点における債務の未償還残債の額を算定する(ステップS22)。なお,ここに言う債務の未償還残債は,償還期間経過後の残価を含むものとする(顧客の意思による中途償還では,自動車の残存価値を償還に当てるため)。」
「【0072】なお,ステップS21において,中途償還の指定時点における机上査定額のみならず,指定時点から所定期間前後した時点における机上査定額をも取得することが好ましい。本実施形態では,査定主体が,中途償還の指定時点及びその指定時点より3ヶ月後,6ヶ月後,9ヶ月後,1年後の時点における机上査定額を算定し,取引支援装置1がこれら各時点における机上査定額を取得するものとしている。」
「【0074】机上査定額を取得し,未償還残債の額を算定した取引支援装置1は,バックエンドプログラムに従い,机上査定額及び未償還残債の額を含む償還見積情報を顧客に提供するべく出力する。具体的には,償還見積情報として机上査定額及び未償還残債の額を含むウェブページのデータを生成し,顧客のコンピュータ2に向けて送信する(ステップS24)。ステップS21,S22において,指定された中途償還時点以外の時点における机上査定額及び未償還残債の額をも得ている場合,これら複数の時点における机上査定額及び未償還残債の額を償還見積情報に含めることができる。なおかつ,ステップS23において,机上査定額が未償還残債の額に等しくなるまたはこれを上回る分岐点に関する判断を実施した場合には,分岐点に関する情報をも償還見積情報に含めることができる。また,複数の時点における机上査定額及び未償還残債の額を時系列にプロットしたグラフの画像データを生成して,その画像データを償還見積情報たるウェブページの一部として送信することも好ましい。取引支援装置1が生成する償還見積情報ウェブページの例を,図11に示す。」
「【0079】フェーズ3において,顧客は,任意の時点における自動車の残存価値及び未償還残債の額を調査でき,自身にとって有利な償還の時期を探ることができる。」

したがって,上記引用文献8には,
「自動車を取得したことによる割賦債務を負う顧客にとって有利な償還の時期を探るため,取引支援装置が中途償還の指定時点及びその指定時点より3ヶ月後,6ヶ月後,9ヶ月後,1年後の時点における自動車の机上査定額を算出し,出力する」
という技術的事項が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明における「故障した自動車」は,本願発明1における「修理対象車両」に相当する。

イ 引用発明における「修理・製品比較サーバ3」は,「入力された型番,故障状態に基づき,前記故障した自動車の修理費用の見積もりを算出し」等の制御処理を行う装置であるといえるから,本願発明1における「制御処理手段」に相当する。

ウ 引用発明における「自動車の型番,故障状態を入力するクライアント1」について,「自動車の型番,故障状態」を車両情報といえることは明らかであるとともに,ユーザが型番,故障状態を入力することで,クライアント1が型番や故障状態といった車両情報を特定することを意味するから,引用発明における「ユーザが自動車の型番,故障状態を入力するクライアント1」は本願発明1における「車両情報を特定する入力装置」に相当する。

エ 引用発明における「前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合の購入費用の見積もり」は,新車両に乗り換える場合の購入費用を意味するから,本願発明1における「前記修理対象車両から新車両に乗り換える場合の新車両購入費用の見積り」に相当する。

オ 引用発明における「前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合における自動車のランニングコスト」について,「ランニングコスト」は将来の維持費用を意味するから,引用発明における「前記故障した自動車と同種の新しい自動車に買い替える場合における自動車のランニングコスト」は本願発明1における「前記修理対象車両から新車両に乗り換える場合における車両の将来の維持費用」に相当する。

カ 引用発明における「前記算出した自動車のランニングコストを各年ごとに表した見積もりを作成する」は,本願発明1における「前記算出した車両の将来の維持費用を各年ごとに表した見積り書を作成する」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「修理対象車両の車両情報を特定する入力装置と,
前記入力された車両情報に基づき,前記修理対象車両を修理する場合の修理費用の見積りを算出し,
前記修理対象車両から新車両に乗り換える場合の新車両購入費用の見積りを算出するとともに,
前記修理対象車両を修理する場合,修理対象車両から新車両に乗り換える場合における車両の将来の維持費用を各年ごとに算出し,
前記修理費用の見積り,前記新車両購入費用の見積りのそれぞれについて,前記算出した車両の将来の維持費用を各年ごとに表した見積り書を作成する制御処理手段と,
を具備していることを特徴とする車両の見積り提供システム。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は,修理対象車両から乗り換える際の見積りとして,新車両購入費用の見積り及び中古車両購入費用の見積りを算出し,当該両見積りについて見積り書を作成する構成を備えるのに対し,引用発明は,中古車両の見積りを算出せず,中古車両の見積りについては見積り書にも記載されない点。

(相違点2)本願発明1は,前記修理対象車両を修理する場合,修理対象車両から新車両に乗り換える場合及び修理対象車両から中古車両に乗り換える場合における推定車両残存価格を各年ごとに算出し,当該推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する構成を備えるのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用文献2には,「2 引用文献2について」に記載のとおり,「「AUTO MALL」には,「新車見積もり(NVIS)」,「中古販売(UVIS)」或いは「板金修理(VBS)」などのサービスメニューが用意されており,「新車見積もり(NVIS)」では新車の購入見積もりを依頼し,「中古販売(UVIS)」では中古車の購入見積もりを依頼し,「板金修理(VBS)」では概算修理金額を調べることができる」という技術的事項が記載されている。
しかしながら,該技術事項は,単に,個々のサービスメニューにおいて新車両の購入見積りと中古車両の購入見積りを依頼することができることを示しているにすぎないから,引用発明に引用文献2に記載された上記技術的事項を適用しても,修理対象車両から乗り換える際の見積りとして,新車両購入費用の見積り及び中古車両購入費用の見積りを算出し,当該両見積りについて見積り書を作成する構成に至らない。
また,他の引用文献の記載を見ても,相違点1に対応する構成は開示されておらず,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
さらに,相違点1に対応する構成が周知な構成であったとしても,引用発明における課題及び目的は,「従来,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用とを別の作業で調べていたため,両費用のデータが揃わなければ比較できず,また当該両費用の比較は,使用期間に応じたランニングコストを考慮していなかったという問題点があったため,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用の見積りを同時に出力可能とし,また当該見積りに修理後のランニングコストを加えた使用期間毎の費用を含めること」であるから,新車両購入費用の見積もりとともに中古車両購入費用の見積もりを行う技術的必要性を引用発明が有しているとは認められず,相違点1に係る本願発明1の構成を引用発明に組み合わせる動機付けがない。
このため,当業者といえども,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から,相違点1に係る本願発明1の「修理対象車両から乗り換える際の見積りとして,新車両購入費用の見積り及び中古車両購入費用の見積りを算出し,当該両見積りについて見積り書を作成する」という構成を容易に想到することはできない。

次に,上記相違点2について検討する。
引用文献6-8にはそれぞれ,「3 引用文献6について」,「4 引用文献7について」,「5 引用文献8について」に記載のとおり,「自動車を購入した場合のメンテナンス費及び5年経過前に売った場合の値段を算出し,リースした場合の毎月のリース料を算出し,レンタルした場合のレンタルの料金を算出し,それぞれについて年間のコストとその内訳を各年ごとに表した経済比較表を作成することで,現在自動車を所有している顧客が,今後かかる費用や下取り価格が分かり,リースなどの利用形態に変更するための検討材料とする」,「各自動車の将来の保証残価額と個別リスクを半年毎に予測し記憶しておき,前記保証残価額及び前記個別リスクを用いてオートオークション市場での自動車の売却価格が残価を下回るリスクが分散するような自動車の組み合わせを判断して,複数の自動車からなる自動車グループを生成する」,「自動車を取得したことによる割賦債務を負う顧客にとって有利な償還の時期を探るため,取引支援装置が中途償還の指定時点及びその指定時点より3ヶ月後,6ヶ月後,9ヶ月後,1年後の時点における自動車の机上査定額を算出し,出力する」という技術的事項が記載されている。
しかしながら,該技術事項は,一定期間経過時点における車両推定残存価格,あるいは一定期間ごとにおける車両残存価格を算出することを示しているものの,推定車両残存価格を各年ごとに算出するものではないから,引用発明に引用文献6-8に記載された上記技術的事項を適用しても,修理費用の見積り,新車両購入費用及び中古車両購入費用の見積りのそれぞれについて,推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する構成に至らない。
また,他の引用文献の記載を見ても,相違点2に対応する構成は開示されておらず,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
さらに,相違点2に対応する構成が周知な構成であったとしても,引用発明における課題及び目的は,「従来,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用とを別の作業で調べていたため,両費用のデータが揃わなければ比較できず,また当該両費用の比較は,使用期間に応じたランニングコストを考慮していなかったという問題点があったため,故障した自動車の修理費用と同種の新しい自動車の購入費用の見積りを同時に出力可能とし,また当該見積りに修理後のランニングコストを加えた使用期間毎の費用を含めること」であるから,修理費用の見積り,新車両購入費用の見積り及び中古車両購入費用の見積りのそれぞれについて,推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する技術的必要性を引用発明が有しているとは認められず,相違点2に係る本願発明1の構成を引用発明に組み合わせる動機付けがない。
このため,当業者といえども,引用発明及び引用文献6-8に記載された技術的事項から,相違点2に係る本願発明1の「前記修理対象車両を修理する場合,修理対象車両から新車両に乗り換える場合及び修理対象車両から中古車両に乗り換える場合における推定車両残存価格を各年ごとに算出し,当該推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する」という構成を容易に想到することはできない。

したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-12について
本願発明2-12も,本願発明1の「修理対象車両から乗り換える際の見積りとして,新車両購入費用の見積り及び中古車両購入費用の見積りを算出し,当該両見積りについて見積り書を作成する構成」及び「前記修理対象車両を修理する場合,修理対象車両から新車両に乗り換える場合及び修理対象車両から中古車両に乗り換える場合における推定車両残存価格を各年ごとに算出し,当該推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する構成」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明13について
本願発明13は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「修理対象車両から乗り換える際の見積りとして,新車両購入費用の見積り及び中古車両購入費用の見積りを算出し,当該両見積りについて見積り書を作成する構成」及び「前記修理対象車両を修理する場合,修理対象車両から新車両に乗り換える場合及び修理対象車両から中古車両に乗り換える場合における推定車両残存価格を各年ごとに算出し,当該推定車両残存価格を各年ごとに表した見積り書を作成する構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1-13は,当業者が引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-09-10 
出願番号 特願2015-23921(P2015-23921)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関 博文  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 速水 雄太
佐藤 聡史
発明の名称 車両の見積り提供システム及び車両の見積り提供方法  
代理人 黒瀧 眞輔  

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