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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B60R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B60R
審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B60R
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  B60R
審判 全部申し立て 2項進歩性  B60R
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  B60R
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  B60R
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B60R
管理番号 1366050
異議申立番号 異議2019-700856  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-29 
確定日 2020-07-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6509100号発明「ウェビング巻取装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6509100号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6509100号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6509100号の請求項1?8に係る特許についての出願は,平成27年12月4日の特許出願であって,平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ,令和1年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許の請求項1?8について,同年10月29日付けで特許異議申立人 佐藤 義光により特許異議の申立てがされ,令和2年1月22日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である同年3月30日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ,同年4月21日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項),同年5月25日付けで特許異議申立人により意見書の提出があったものである。

第2.訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年3月30日付けの訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1?4のとおりである(下線部は,訂正箇所を示し,当審で付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における
「前記筒状部材の内側に配置され,中心軸直交方向の前記回転部材側の部分よりも前記回転部材とは反対側の部分が中心軸方向先端側へ延びた係合部が中心軸方向先端部に設けられ,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動されることによって前記係合部が前記回転部材に係合され,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる移動部材と,」
の記載を,
「前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材と,
前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部と,」
に訂正する。また,請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2から請求項8の各請求項についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6における
「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記回転部材側を中心とする当該中心周りの前記係合面の設定範囲は,前記所定角度よりも大きい」
の記載を,
「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記係合面の設定範囲の回転部材の回転中心周りの角度は,前記所定角度よりも大きい」
に訂正する。また,請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7,請求項8についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0006】における
「前記筒状部材の内側に配置され,中心軸直交方向の前記回転部材側の部分よりも前記回転部材とは反対側の部分が中心軸方向先端側へ延びた係合部が中心軸方向先端部に設けられ,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動されることによって前記係合部が前記回転部材に係合され,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる移動部材と,を備えている。」
の記載を
「前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動されることによって前記回転部材に係合され,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる移動部材と,前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を前記巻取方向へ回転させる係合部と,を備えている。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0016】における
「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記回転部材側を中心とする当該中心周りの前記係合面の設定範囲は,前記所定角度よりも大きい」
の記載を,
「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記係合面の設定範囲の回転部材の回転中心周りの角度は,前記所定角度よりも大きい」
に訂正する。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項2から請求項8の各請求項は,請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであるから,訂正前の請求項1から請求項8の各請求項に対応する訂正後の請求項1から請求項8の各請求項は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって,本件訂正請求は,一群の請求項[1?8]に対して請求されたものである。また,明細書に係る訂正は,一群の請求項[1?8]について請求されたものである。

2.訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的について
訂正前の請求項1の記載における「中心軸直交方向」,「中心軸方向先端側」,「中心軸方向先端部」の「中心軸」が「移動部材」の中心軸なのか,「筒状部材」の中心軸なのか,それとも,それ以外か不明確であった。
また,「中心軸」が仮に「移動部材」の中心軸であるとしても,訂正前の請求項1の記載における「中心軸直交方向の前記回転部材側の部分」の「前記回転部材側の部分」が回転部材のどこを示しているのか不明瞭であった。同様に,「前記回転部材とは反対側の部分」の記載についても不明瞭であった。
これに対し,訂正後の請求項1は,
「前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動されることによって前記回転部材に係合され,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる移動部材と,
前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を前記巻取方向へ回転させる係合部と,」
という記載により,上記の不明確,不明瞭な記載を明確,明瞭にするものである。
すなわち,訂正後の請求項1に係る訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また,訂正前の請求項1では,移動部材の係合部と回転部材との関係において移動部材の係合部が回転部材へ係合されるタイミングについて明示されていなかった。これに対して,訂正後の請求項1は,
「前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を前記巻取方向へ回転させる係合部と,」
という記載により,係合部が回転部材へ係合されるタイミングについて限定するものであるから,訂正後の請求項1に係る訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでもある。
イ.願書に添付した明細書(以下,単に「明細書」ということもある。),特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)明細書の段落【0044】には,以下の記載がある。
「先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の中心軸方向先端部は,係合部90とされており,係合部90は係合面92を備えている。」
このように,「中心軸方向」が「移動部材の中心軸方向」であることは,明細書の記載から明らかである。
(イ)また,明細書には,以下の記載がある。
「先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の中心軸方向は,直線的とされ,車両上下方向に沿っており,」(段落【0044】)
「スプール18の中心軸線方向は,脚板14と脚板16との対向方向(すなわち,略車両前後方向)に沿っており,」(段落【0026】)
「また,回転部材62は,スプール18の中心軸線周りのロック機構24のロックベース26に対する相対回転が阻止された状態で,ロックペース26に取付けられている。回転部材62は,複数の係合歯64を備えている。これらの係合歯64は,回転部材62の回転中心周りに一定角度θ1毎に放射状に形成されている。」(段落【0040】)
このことから,「前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向」が,明細書の【発明の実施の形態】に記載された態様では,車幅方向外側(図2等の矢印OUT方向側)であることが理解できる。
したがって,「前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向」,「前記中心軸直交方向とは反対側」は,明細書の記載から明らかである。
(ウ)また,明細書には以下の記載がある。
「このため,初期状態では,回転部材62が回転されても,回転部材62の係合歯64が先端側移動部材70に係合されず,先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88が車両下側(図2の矢印C方向)へ移動されると,先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡内に入り,先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64へ係合される。」(段落【0047】)
「これによって,先端側移動部材70の係合部90の係合面92が,回転部材62の係合歯64を車両下側へ押圧すると,回転部材62が巻取方向(図2等の矢印A方向)へ回転される。」(段落【0055】)
さらに,図面の図3では,係合部90の係合面92が先端側移動部材70において最初に回転部材62の係合歯64へ係合されて回転部材62の係合歯64を押圧し,回転部材62を巻取方向へ回転させた状態が示されている。
このように,「係合部が移動部材の中心軸方向先端側への移動により移動部材において回転部材へ最初に係合されて回転部材を押圧し,回転部材を巻取方向へ回転させる」ことは,明細書の記載及び図面からみて明らかである。
(エ)したがって,訂正事項1による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記ア.で説明したように,訂正事項1は,訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「中心軸方向」を訂正後の特許請求の範囲の請求項1で「移動部材の中心軸方向」と明確にするとともに,係合部が回転部材へ係合されるタイミングについて限定するものものであって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,訂正事項1による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア.訂正の目的について
訂正前の請求項6の記載における「前記回転部材側を中心とする当該中心」の「当該中心」は,請求項5の「前記回転部材側を曲率中心として凹状に湾曲されている」とされた「回転部材側」の「曲率中心」のことか,「回転部材の回転中心」のことか,それともそれ以外のものか明確でなかった。
また,訂正前の請求項6の記載では,「前記係合面の設定範囲」と「前記所定角度」とを比較しており,どの様に比較するのか明確でなかった。
これに対し,訂正後の請求項6は,
「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は,前記所定角度よりも大きい」
と訂正することにより,上記の不明確な記載を明確にするものである。
すなわち,訂正後の請求項6に係る訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書には,以下の記載がある。
「また,先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率半径は,回転部材62の回転中心から回転部材62の係合歯64の先端までの径寸法よりも大きく,また,先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心は,先端側移動部材70がシリンダ40の所定位置に配置された状態で回転部材62の回転中心に略一致する。」(段落【0046】)。
「また,先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心を中心とする係合面92の形成範囲θ2は,回転部材62の回転中心周りの係合歯64の間隔である角度θ1よりも大きくされている。このため,回転部材62が,その回転中心周りの如何なる位置にあっても,回転部材62の複数の係合歯64のうち,少なくとも1つの係合歯64の先端が,先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向される。」(段落【0048】)
そうすると,「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は,前記所定角度よりも大きい」ことは,明細書の記載からみて明らかである。
したがって,訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲乂は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記ア.で説明したように,訂正事項2は,訂正前の特許請求の範囲の請求項6における
「前記係合面の設定範囲」と「前記所定角度」との関係を「前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は,」と明確にするものである。
以上の訂正は,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア.訂正の目的について
訂正後の明細書の段落【0006】の記載に係る訂正事項3は,特許請求の範囲の請求項1の訂正である訂正事項1に対応して,明細書の内容を請求項1の記載に整合させるためにした訂正であり,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は,特許請求の範囲の請求項1の訂正である訂正事項1に対応して,明細書の内容を請求項1の記載に整合させる訂正であり,上記(1)イ.の理由と同様の理由により,訂正事項3による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は,特許請求の範囲の請求項1の訂正である訂正事項1に対応して,明細書の内容を請求項1の記載に整合させる訂正であり,上記(1)ウ.の理由と同様の理由により,訂正事項3による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア.訂正の目的について
訂正後の明細書の段落【0016】の記載に係る訂正事項4は,特許請求の範囲の請求項6の訂正である訂正事項2に対応して,明細書の内容を請求項6の記載に整合させるためにした訂正であり,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は,特許請求の範囲の請求項6の訂正である訂正事項2に対応して,明細書の内容を請求項6の記載に整合させる訂正であり,上記(2)イ.の理由と同様の理由により,訂正事項4による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は,特許請求の範囲の請求項6の訂正である訂正事項2に対応して,明細書の内容を請求項6の記載に整合させる訂正であり,上記(2)ウ.の理由と同様の理由により,訂正事項4による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって,明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1?8]について訂正することを認める。

第3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?8に係る発明(以下,「本件発明1」?「本件発明8」といい,それらを総称して「本件発明」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと,
車両緊急時に中心軸線方向基端部から内側へ流体が供給される筒状部材と,
前記筒状部材の中心軸線方向先端側で回転可能に設けられ,回転方向一側へ回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と,
前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材と,
前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部と,
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記係合部は,前記回転部材における前記係合部との係合部分の回転軌跡の外側に配置される請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記回転部材における前記係合部との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,少なくとも1つの前記係合部分は,前記回転部材の回転位置に関わらず前記移動部材の中心軸方向に前記係合部と対向される請求項1又は請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記係合部は,前記流体の圧力による前記移動部材の移動方向に対して前記回転部材側へ傾いた方向へ向いた係合面を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項5】
前記係合面は,前記回転部材側を曲率中心として凹状に湾曲されている請求項4に記載のウェビング巻取装置。
【請求項6】
前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は,前記所定角度よりも大きい請求項4又は請求項5に記載のウェビング巻取装置。
【請求項7】
前記移動部材は,前記鉤状部材の中心軸線周りの回動が制限されている請求項1から請求項6の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項8】
前記筒状部材は,筒状部材曲部において中心軸線方向が曲げられ,前記移動部材は,前記筒状部材の前記筒状部材曲部を挟んで前記筒状部材の中心軸線方向基端側から前記筒状部材の中心軸線方向先端側へ連続して配置されると共に,荷重が付与されない無負荷状態で前記筒状部材内での配置位置に倣って曲がった請求項7に記載のウェビング巻取装置。」

第4.取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1?8に係る特許に対して,当審が令和2年1月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
(1)本件特許に係る特許出願は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)本件特許の請求項1?4,7,8に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。

<<引用文献>>
引用例1:中国特許出願公開第103832398号明細書(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例2:特開2015-54651号公報(本件特許明細書の段落【0004】に記載された先行技術文献)

2.当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
[第2.2」のとおり,明確化する訂正がなされた。
ア.本件発明1
本件発明1は,「前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び」る「係合部」を含むものである。
(ア)「中心軸直交方向」,「中心軸方向先端側」の「中心軸」が「移動部材」の中心軸であることは明確である。
(イ)「中心軸直交方向の側の部分」が「前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分」であることは明確である。
(ウ)「前記中心軸直交方向とは反対側の部分」が「前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分」であることは明確である。
(エ)「前記中心軸直交方向とは反対側の部分が」「前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも」「前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び」るという限りにおいて技術思想は明確である。
イ.本件発明6
本件発明6は,「前記回転部材における前記係合面との係合部分は,前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され,前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は,前記所定角度よりも大きい請求項4又は請求項5に記載のウェビング巻取装置。」である。
(ア)「前記回転部材の回転中心」であること明確である。
(イ)「前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度」と「前記所定角度」を比較していることは明確である。
(ウ)請求項4,請求項5のそれぞれの「係合面」においても,「前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度」という記載は,整合しており明確である。
ウ.小括
本件発明は,明確であり,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。

(2)特許法第29条第2項について
ア.引用文献の記載
(ア)引用例1(甲第1号証)
引用例1には,図面とともに以下の記載がある(異議申立人の提出した翻訳文を示す。下線部は,当審で付与した)。
・「技術分野
【0001】
本出願はプリテンショナ式安全装置に関するものであり,具体的には,プリテンショナ式安全装置における駆動チェーンに関するものである。本出願はまたプリテンショナ式安全装置における駆動チェーンのユニットアセンブリ,及びプリテンショナに関するものである。
背景技術
【0002】
プリテンショナ式シートベルトは現在よく用いられているシートベルト装置であり,衝突時の急の加速度により引き起こされるシートベルト装着者の移動を拘束することによって,乗客の安全を高めるものである。このようなシートベルトは通常シートペルドリトラクターを一つ有する。
【0003】
プリテンショナ式シートペルドリトラクターはプリテンショナパイプと呼ばれる部材を有し,シートベルト装置が拘束動作を行う必要がある場合,力の作用により,シートベルトを巻き取り,シートベルトを引き締めることによって,乗員に対する拘束力を高める。」
・「【0049】
図7を参照すると,図7は駆動ユニットの内凹構造とリングギアの歯が互いに噛合する構造模式図である。本実施例において,前記リングギア6はスプールの軸方向に垂直な面に沿って第一の部分と第二の部分の二つの部分に分けられ,両部分は軸方向において所定の距離で分けられている。これと対応して,駆動ユニットは両側にいずれも前記内凹構造が設けられており,かつ前記駆動ユニットの内凹構造11は前記駆動ユニット14本体の二つの相対する側壁の中心に対して対称となるように設けられ,二つの内凹構造の間の部分の厚さは上記両部分が軸方向で分けられる所定の距離より大きくなく,駆動ユニットがプリテンショナパイプから射出されてリングギアと噛合した後,駆動ユニットの二つの内凹構造11の間の部分が前記リングギアの第一の部分と第二の部分との隙間に挿入されると同時に,リングギアの一つの歯が前記内凹構造11中に嵌入し,前記内凹構造11の後側壁とリングギアの歯の一辺とが互いに密着され,駆動ユニットの運動エネルギーの駆動下において,リングギア及びスプールを押動させて回転させることによって,ウェビングをリングギアに巻き込ませ,これにより締め付け過程を実現する。」
・「【0051】
図5を参照すると,図5は本出願の実施例の前方ユニット5の構造模式図であり,前記前方ユニット5において,凹溝部5-3と相対する一端には作動部5-1が設けられている。本実施例において,該作動部5-1はくさび形または単辺くさび形を呈しており,このような形状を採用することで,前方ユニット5がリングギア歯4と衝突する際,リングギア歯4がくさび形面形状に従って摺動できるようにし,ギアの外歯位置が不確定な場合に,歯と歯の間の隙間に有効に切り込むのを保証し,ギアと噛合することを保証する。当然ながら,作動部は他の通常の形状であってもよい。」
・「【0055】
図4を参照すると,図4は本実施例の駆動チェーンの後方ユニット9の構造模式図であり,前記後方ユニット9にはその突出部9-2の一端に対してプリテンショナパイプ2と互いに密封される密封構造9-1が設けられている。本実施例において,前記該密封構造9-1は前記後方ユニット9の前記両端の中心接続線方向に垂直な凹空洞であり,前記凹空洞の開口は前記後方ユニットから離間する端面に向いており,前記凹空洞は傾斜した内壁を有し,かつ開口サイズは内部のサイズより大きい。当然ながら,前記密封構造は他の形状であってもよい。本実施例の該後方ユニット9はプラスチック材料で作製されてもよく,他の可変特性を有する材料で作製されてもよい。前記後方ユニットは前述の中間ユニット及び前方ユニットとともに駆動チェーンを構成するものであり,図3に示すようなプリテンショナパイプ2内に設置されており,ガス発生器3が爆発してガスを発生させた際,前記後方ユニットを押動させ,さらに駆動チェーン全体を押動させてプリテンショナパイプ内でパイプ口に向かって移動させる。前記後方ユニットの密封構造は爆発によって発生したガスを全て後方ユニット上に作用させて,ガスが後方ユニットとプリテンショナパイプの内壁の間から漏れないように保証するためのものである。前記密封構造は傾斜した側壁を有する凹空洞形状となるように設けられ,爆発ガスが後方ユニットを押動させる際,凹空洞内部に入って,前記凹空洞の側壁を外側に拡張することで,凹空洞の外壁とプリテンショナパイプを互いに密着させることができ,密封効果を高めることができる。
【0056】
同時に図1及び図3を参照すると,図1はプリテンショナ式安全装置の部分構成図であり,図2はプリテンショナパイプがプリテンショナ式安全装置のフレームに固定されている構成図である。本実施例において,プリテンショナ式安全装置は,周方向にかつ少なくとも一端にリングギア6が設けられたスプール,プリテンショナパイプ2,係合固定装置1及びガス発生器3を含む。
【0057】
前記駆動チェーン10はプリテンショナパイプ2内において係合固定装置1に係止されている;係合固定装置1はプリテンショナパイプ2の排出口付近に位置する穴を通って,前方ユニット5の係合溝5-4内に係止することによって,駆動チェーン10を外力による押動がない状態で係合固定装置1によって係止させ,プリテンショナパイプ2の排出口2-1から排出させないようにする。ガス発生器3はプリテンショナパイプ2の排出口2-1から遠い側の一端に接続固定されており,ガス発生器が爆発してガスを発生させると,ガスが前記駆動チェーン10の後方ユニット9に作用する。駆動チェーン10を押動させてプリテンショナパイプ排出口2-1に向かって移動させ,駆動チェーン10の前方ユニット5がまずプリテンショナパイプ2内から排出され,前方ユニット5の内凹構造11が排出時にリングギア歯4とちょうど噛合する際,すなわちリングギア歯4が前方ユニット5の内凹構造11に入る際,かつ凹壁12の嵌合面がリングギア歯4の歯面とちょうど互いに嵌合する際,前方ユニット5はリングギア6を押動させて静止から回転を開始させ,リングギアが一定角度回転した後に,リングギア歯から脱離し,前方ユニットと互いに当接する後続の中間ユニット及び後続の中間ユニットが同様にして前記ジングギア歯と噛合し,リングギアを押動させて回転を維持し,締め付け過程が終了するまで続けられる。
本出願の実施例においては,リングギアのそれぞれの歯の間の距離の位置関係は各々のユニットの内凹構造11間の距離に対応するべきであり,よって,それぞれの駆動ユニットもガスによる押動に従ってリングギア歯4と互いに噛合する。リングギア歯4が駆動ユニット14の内凹構造11に入る際,凹壁12の嵌合面がリングギア歯4の歯面とちょうど互いに嵌合するとともに,一定時間の間,リングギア6に持続する推力を与えることができ,噛合関係が終了するまで続けられる。」

図1,図2,図5,図7には,以下の内容が示されている。




・段落【0049】の「駆動ユニットがプリテンショナパイプから射出されてリングギアと噛合した後,・・・,駆動ユニットの運動エネルギーの駆動下において,リングギア及びスプールを押動させて回転させることによって,ウェビングをリングギアに巻き込ませ,・・・」なる記載,段落【0056】の「周方向にかつ少なくとも一端にリングギア6が設けられたスプール」なる記載と,図1,図2,図7の図示内容を踏まえると,
「プリテンショナパイプ2の中心軸方向先端側で回転可能に設けられ,回転方向一側に回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させるリングギア6」が理解できる。
・段落【0057】の「駆動チェーンの10の前方ユニット」の「凹壁12」に関する記載と図5の図示内容を踏まえると,
「駆動チェーン10の前方チェーン5に設けられ,駆駆動チェーン10の前方ユニット5の中心軸直交方向のリングギア6側の凹壁12よりも前記リングギア6とは反対側の凹壁12の少なくとも一部分が駆動チェ-ン10の中心軸方向先端側へ延び」ることが理解できる。
そうすると,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「リングギア及びスプールを回転させることによってシーベルト装置のウェビングを巻き取らせるリングギア6が設けられたスプールと(段落【0003】,【0049】,【0056】参照),
衝突時にシートベルト装置が拘束動作を行う必要がある場合,ガスが後方ユニットとプリテンショナパイプ2の内壁の間から漏れないように保証するプリテンショナパイプ2と(段落【0002】,【0003】,【0055】参照),
前記プリテンショナパイプ2の中心軸方向先端側で回転可能に設けられ,回転方向一側に回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させるリングギア6と(段落【0049】,【0056】,図1,図2,図7を参照),
前記プリテンショナパイプ2内に設置され,ガス発生器3が爆発してガスを発生させた際,前記後方ユニットを押動させ,さらに駆動チェーン10全体を押動させてプリテンショナパイプ2内でパイプ口に向かって移動させる駆動チェーン10と(段落【0055】参照),
駆動チェーン10の前方ユニット5に設けられ,駆動チェーン10の前方ユニット5の中心軸直交方向のリングギア6側の凹壁12よりも前記リングギア6とは反対側の凹壁12の少なくとも一部分が駆動チェ-ン10の中心軸方向先端側へ延び(段落【0057】,図5を参照),前記前方ユニット5において,凹溝部5-3と相対する一端には作動部5-1が設けられ,該作動部5-1はくさび形または単辺くさび形を呈しており,前方ユニット5がリングギア歯4と衝突する際,リングギア歯4がくさび形面形状に従って摺動できるようにし,ギアの外歯位置が不確定な場合に,歯と歯の間の隙間に有効に切り込むのを保証し,ギアと噛合するのを保証し(段落【0051】参照),リングギア歯4が前方ユニット5の内凹構造11に入る際,かつ凹壁12の嵌合面がリングギア歯4の歯面とちょうど互いに嵌合する際,前方ユニット5はリングギア6を押動させて静止から回転を開始させる,凹壁12の嵌合面と(段落【0057】参照),
を備えるシートベルト装置のウェビングを巻き取る装置(段落【0003】,【0049】,【0056】参照)。」
(イ)引用例2
引用例2には,以下の記載がある(下線部は,当審で付与した。)。
・「【0008】
発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり,ロック機構及びプリテンショナを備えつつ小型化可能なシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。」
・「【0026】
マイクロガスジェネレータ52cは,例えば,ビークルセンサ7や車体に搭載された加速度センサからの検出信号に反応してプリテンショナパイプ52bにガスを噴出するように構成されている。ピストン52dは,ロッド52aとプリテンショナパイプ52bの周面との隙間をシールするとともに受圧面を形成する部品である。
【0027】
図2(A)に示したように,通常時は,ロッド52aの剛性により,プリテンショナパイプ52b内にロッド52aが収容された状態が維持される。そして,マイクロガスジェネレータ52cからガスが発生されると,ピストン52dに圧力が加えられ,ピストン52dはロッド52aを押し出しながらプリテンショナパイプ52b内を移動する。
【0028】
図3(A)に示したように,ロッド52aは,ピストン52dの押出力により塑性変形しながらプリテンショナパイプ52b内を移動し,先端から放出される。このとき,ロッド52aは,回転体51の係合歯51aと塑性変形しながら係合し,係合歯51aを図中の矢印方向に回転させる。」

・図1?図3には,以下の内容が示されている。
図1


図2


図3

図1からみて,マイクロガスジェネレータ52cによりプリテンショナパイプ52bの中心軸線方向基端部からプリテンショナパイプ52bの内側へガスが供給されることは明らかである。
図3(A)からみて,ロッド52aの移動方向の側面が回転体51の係合歯51aと塑性変形しながら係合していることが明らかである。

そうすると,引用例2には,以下の事項(以下,「引用例2に記載された事項」という。)が記載されているといえる。
「ビークルセンサ7や車体に搭載された加速度センサからの検出信号に反応してマイクロガスジェネレータ52cによりプリテンショナパイプ52bの中心軸線方向基端部からプリテンショナパイプ52bの内側へガスが供給される,プリテンショナを備えたシートベルトリトラクタであって,
マイクロガスジェネレータ52cからガスが発生されると,ピストン52dに圧力が加えられ,ピストン52dはロッド52aを押し出しながらプリテンショナパイプ52b内を移動し,ロッド52aは,ピストン52dの押出力により塑性変形しながらプリテンショナパイプ52b内を移動し,先端から放出され,ロッド52aは,ロッド52aの移動方向の側面が回転体51の係合歯51aと塑性変形しながら係合し,係合歯51aを回転させる,プリテンショナを備えたシートベルトリトラクタ。」

イ.本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると,後者の「スプール」は前者の「スプール」に相当し,以下同様に,「衝突時にシートベルト装置が拘束動作を行う必要がある場合」は「車両緊急時」に,「ガス」は「流体」に,「プリテンショナパイプ2」は「筒状部材」に,「リングギア6」は「回転部材」に,「プリテンショナパイプ2内」は「筒状部材の内側」に,「凹壁12」及び「凹壁12の嵌合面」は「係合部」に,「嵌合」は「係合」に,「駆動チェーン10」は「移動部材」に,「シートベルト装置のウェビングを巻き取る装置」は「ウェビング巻取装置」に,それぞれ相当する。
後者の「リングギア及びスプールを回転させることによってシーベルト装置のウェビングを巻き取らせるリングギア6が設けられたスプール」はウェビングを巻き取らせるためには,スプールが巻取方向へ回転されることは明らかであるから,前者の「巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプール」に相当する。
後者の「衝突時にシートベルト装置が拘束動作を行う必要がある場合,ガスが後方ユニットとプリテンショナパイプ2の内壁の間から漏れないようにするプリテンショナパイプ2」と前者の「車両緊急時に中心軸線方向基端部から内側へ流体が供給される筒状部材」とは,「車両緊急時に内側へ流体が供給される筒状部材」において共通する。
後者の「前記プリテンショナパイプ2の中心軸方向先端側で回転可能に設けられ,回転方向一側に回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させるリングギア6」は前者の「前記筒状部材の中心軸線方向先端側で回転可能に設けられ,回転方向一側へ回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材」に相当する。
後者の「プリテンショナパイプ2」は「ガスが後方ユニットとプリテンショナパイプ2の内壁の間から漏れないようにする」ものであるから,後者の「前記プリテンショナパイプ2内に配置され,ガス発生器3が爆発してガスを発生させた際,前記後方ユニットを押動させ,さらに駆動チェーン10全体を押動させてプリテンショナパイプ2内でパイプ口に向かって移動させる駆動チェーン10」は前者の「前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材」に相当する。
駆動チェーン10の中心軸方向先端側への移動により,「前方ユニット5がリングギア歯4と衝突する」ことは明らかであるから,後者の「駆動チェーン10の前方ユニット5に設けられ,駆動チェーン10の前方ユニット5の中心軸直交方向のリングギア6側の凹壁12よりも前記リングギア6とは反対側の凹壁12の少なくとも一部分が駆動チェ-ン10の中心軸方向先端側へ延び,前記前方ユニット5において,凹溝部5-3と相対する一端には作動部5-1が設けられ,該作動部5-1はくさび形または単辺くさび形を呈しており,前方ユニット5がリングギア歯4と衝突する際,リングギア歯4がくさび形面形状に従って摺動できるようにし,ギアの外歯位置が不確定な場合に,歯と歯の間の隙間に有効に切り込むのを保証し,ギアと噛合するのを保証し,リングギア歯4が前方ユニット5の内凹構造11に入る際,かつ凹壁12の嵌合面がリングギア歯4の歯面とちょうど互いに嵌合する際,前方ユニット5はリングギア6を押動させて静止から回転を開始させる,凹壁12の嵌合面」と,前者の「前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部」とは,「前記移動部材に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部」において共通する。
そうすると,両者は,
「巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと,
車両緊急時に内側へ流体が供給される筒状部材と,
前記筒状部材の中心軸線方向先端側で回転可能に設けられ,回転方向一側へ回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と,
前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材と,
前記移動部材に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部と,
を備えるウェビング巻取装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。
<相違点1>
車両緊急時に内側へ流体が供給される筒状部材に関して,本件発明1では,「中心軸線方向基端部から」内側へ流体が供給されるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点2>
前記移動部材に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部に関して,本件発明1では,係合部が,前記移動部材「の中心軸先端部」に形成され,前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ「最初に」係合されているのに対して,引用発明では,「凹壁12の嵌合面」は駆動チェーン10(移動部材)の前方ユニット5に設けられているものの,それ以上の特定はなされていない点。
<相違点についての判断>
事案に鑑み,相違点2について先に検討する。
引用発明は,「前記前方ユニット5において,凹溝部5-3と相対する一端には作動部5-1が設けられ,該作動部5-1はくさび形または単辺くさび形を呈しており,前方ユニット5がリングギア歯4と衝突する際,リングギア歯4がくさび形面形状に従って摺動できるようにし,ギアの外歯位置が不確定な場合に,歯と歯の間の隙間に有効に切り込むのを保証し,ギアと噛合するのを保証し」ており,前方ユニット5がリングギア歯4に衝突する際に作動部5-1のくさび形面形状に従って摺動できるようにしているから,図5の図示内容を踏まえると,駆動チェーン10(移動部材)の前方ユニットの中心軸先端部に形成された作動部5-1がリングギア6(回転部剤)のリングギア歯4に最初に摺動するものの,摺動の動作は,リングギア6(回転部材)を押圧し,回転させるものではなく,また,「凹壁12の嵌合面」は駆動チェーン10(移動部材)の前方ユニット5に設けられているものの,中心軸方向先端部に設けられてはおらず,リングギア6(回転部材)に嵌合(係合)するものの,最初に係合するものではない。
本件発明1と引用例2に記載された事項とを対比すると,後者の「ビークルセンサ7や車体に搭載された加速度センサからの検出信号に反応」する時期は,前者の「車両緊急時」に相当し,以下同様に,「プリテンショナパイプ52b」は「筒状部材」に,「ガス」は「流体」に,「シートベルトリトラクタ」は「ウェビング巻取装置」に,「回転体51」は「回転部材」に,「ロッド52a」は「移動部材」に,「移動方向の側面」の部材は「係合部」に,それぞれ相当する。
これらの相当関係を踏まえ,本件発明1の用語に倣うと,引用例2には,以下の事項が開示されている。
「車両緊急時に中心軸線方向基端部から内側へ流体が供給される筒状部材を備えた,プリテンショナを備えたウェビング巻き取り装置において,
マイクロガスジェネレータ52cから流体が発生されると,ピストン52dに圧力が加えられ,ピストン52dは移動部材を押し出しながら筒状部材内を移動し,移動部材は,ピストン52dの押出力により塑性変形しながら筒状部材内を移動し,先端から放出され,移動部材は,移動部材の移動方向の側面が回転部材の係合歯51aと塑性変形しながら係合し,回転部材を回転させる,プリテンショナを備えたウェビング巻取装置。」
そして,引用例2に開示された事項は,相違点2に係る本件発明1の発明特定事項の前提となる「前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され,前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び」る「係合部」ではない上に,「先端から放出され,移動部材は,移動部材の移動方向の側面が回転部材の係合歯51aと塑性変形しながら係合し,回転部材を回転させる」「係合部」は,「塑性変形しながら係合」するから「最初に係合する」とは直ちには言えないが,仮に「前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部」であるとしても,「移動部材の移動方向の側面」の「回転部材」との「係合部」は,移動部材「の中心軸方向先端部」に形成された「係合部」ではないから,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用しても,上記相違点2に係る本件発明1の「係合部」を特定する発明特定事項に至るものではない。
そして,本件発明1は,願書に添付された明細書の段落【0022】の「本発明に係るウェビング巻取装置では,移動部材の係合部からの回転部材における移動部材の係合部との係合部分までの距離が大きくなることを抑制できる。」という格別の作用効果を奏するものである。
そうすると,引用発明及び引用例2に開示された事項に基いて,上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって,相違点1について検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明及び引用例2に開示された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件発明2?8について
本件発明2?8は,本件発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに限定して発明を特定するものであるから,本件発明1と同じ理由により,引用発明及び引用例2に開示された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)特許異議申立人の意見について
ア.令和2年5月25日付け意見書において,特許異議申立人は,「訂正請求項1の『前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分』の記載で特定される構成」及び「訂正請求項1の『中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び』の記載で特定される構成が明確でない。」旨主張(2ページ3?5行,2ページ13?15行)し,「すなわち,『反対側部分』が『中心軸直交方向の側の部分』に対して,どの位置においても『中心軸直交方向の側の部分』よりも中心軸方向先端側へ延びているのか,それとも,『反対側の部分』の少なくとも一部が『中心軸直交方向の側の部分』よりも中心軸直交方向先端側に延びているのか,外延が明確でない」旨主張する(2ページ24?28行)。
しかしながら,上記2.(1)ア.(エ)において上述したように,「前記中心軸直交方向とは反対側の部分が」「前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも」「前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び」るという限りにおいて技術思想は明確である。
したがって,特許異議申立人の上記主張は,採用することができない。
イ.同意見書において特許異議申立人は,引用例1の「前方ユニット5は全体として,回転部材に最初に係合されて回転部分を押圧し,回転部分を回転させるもの,すなわち『係合部』と認められる。」(4ページ9?11行),「引用例1には,『係合面』である『作動部5-1のくさび係面形状及び凹壁12の嵌合面のすべてを含む面』が回転部材に最初に係合される構成が開示されていることとなる。」(4ページ下から4行?下から2行)旨主張する。
しかしながら,上記2.(2)イ<相違点についての判断>で上述したように,「図5の図示内容を踏まえると,駆動チェーン10(移動部材)の前方ユニットの中心軸先端部に形成された作動部5-1がリングギア6(回転部材)のリングギア歯4に最初に摺動するものの,リングギア6(回転部材)を押圧し,回転させるものではなく,また,「凹壁12の嵌合面」は駆動チェーン10(移動部材)の前方ユニット5に設けられているものの,中心軸方向先端部に設けられてはおらず,リングギア6(回転部材)に嵌合(係合)するものの,最初に係合するものではない」から,特許異議申立人の主張する「作動部5-1のくさび係面形状及び凹壁12の嵌合面」を合わせて一つの係合部として移動部材の中心軸先端部に設けられているとすることは採用できない。
ウ.同意見書において特許異議申立人は,構成要件1E「前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し,前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部」の記載は,「流体の圧力」以外の手段により移動手段が移動する場合を含むものだから,実質的に訂正前の特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,訂正要件違反である旨主張する(6ページ2?19行)

しかしながら,本件発明1は前提として「前記筒状部材の内側に配置され,前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材」と特定していることから,流体の圧力以外で移動することは想定されないから,特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は,請求項1乃至4,7,8に係る発明についての理由1(特許法第29条第1項第3号)と,請求項5,6に係る発明について理由2(特許法第29条第2項)である。
ここで,理由1,理由2においても,引用例としては,基本的に甲第1号証のみであり,すでに検討済みであって,訂正後の本件発明1については,上述したように甲第1号証とは,相違点1,2で実質的に相違するから,本件発明1乃至4,7,8について新規性がある。
本件発明5,6についても,上述したように,引用発明及び引用例2に開示された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに,特許異議申立人の提出した甲第2号証乃至甲第6号証を検討しても,上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は,記載されていない。
そうすると,本件発明1?8は,引用発明及び甲第2号証乃至甲第6号証の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,特許異議申立人は,訂正前の請求項1に関して,仮に,甲第1号証との相違点があるとしても,甲第2号証乃至甲第6号証に示されるように「移動部材の先端を様々な形状に設計することは周知技術である。特に甲2の図2には,移動部材24の先端が,移動部材24の中心軸直交方向の回転部材側22の側の部分よりも回転部材22とは最も反対側の端部が中心軸方向先端側に延びた係合部を規定していることが看取できる。したがって,甲1においてこれらの周知技術を適用することにより当業者であれば本件発明1に容易に想到できたものである。」旨主張する(特許異議申立書23ページ19行?下から4行参照。)。
しかしながら,上述のとおり,本件発明1?8は,引用発明及び甲第2号証乃至甲第6号証の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,特許異議申立人のかかる主張は,採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件発明1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ウェビング巻取装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部材内の移動部材が流体の圧力によって移動されることによりスプールが巻取方向へ回転されるウェビング巻取装置に関する
【背景技術】
【0002】
車両緊急時に筒状部材の内側へ供給されたガス等の流体の圧力によって移動された移動部材の移動方向側端部が回転部材に係合され、これによって、回転部材が回転されると、スプールが回転されてウェビングがスプールに巻取られるウェビング巻取装置がある(一例として、下記特許文献1を参照)。
【0003】
この種のウェビング巻取装置では、移動部材の移動方向側端部から回転部材における移動部材の移動方向側端部との係合部分までの距離が、回転部材の回転位置によって異なる。このため、移動部材の移動方向側端部から回転部材における移動部材の移動方向側端部との係合部分までの距離が、回転部材の回転位置によっては大きくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2015-54651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、移動部材の係合部から回転部材における移動部材の係合部との係合部分までの距離が大きくなることを抑制できるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のウェビング巻取装置は、巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、車両緊急時に中心軸線方向基端部から内側へ流体が供給される筒状部材と、前記筒状部材の中心軸線方向先端側で回転可能に設けられ、回転方向一側へ回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と、前記筒状部材の内側に配置され、前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材と、前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され、前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び、前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し、前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のウェビング巻取装置によれば、移動部材の係合部は、移動部材の中心軸直交方向の回転部材側の部分よりも回転部材とは反対側の部分が中心軸方向先端側に延びている。このため、移動部材の係合部における回転部材の回転半径外側の部分を、移動部材の中心軸方向において回転部材に近づけられる。これによって、移動部材の係合部から回転部材における移動部材の係合部との係合部分までの距離が大きくなることを抑制できる。
【0008】
請求項2に記載のウェビング巻取装置は、請求項1に記載のウェビング巻取装置において、前記係合部は、前記回転部材における前記係合部との係合部分の回転軌跡の外側に配置される。
【0009】
請求項2に記載のウェビング巻取装置によれば、移動部材の係合部は、回転部材が回転された際の回転部材における係合部との係合部分の回転軌跡の外側に配置される。このため、回転部材が回転されても回転部材が移動部材の係合部に係合されることを防止又は抑制できる。
【0010】
請求項3に記載のウェビング巻取装置は、請求項1又は請求項2に記載のウェビング巻取装置において、前記回転部材における前記係合部との係合部分は、前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され、少なくとも1つの前記係合部分は、前記回転部材の回転位置に関わらず前記移動部材の中心軸方向に前記係合部と対向される。
【0011】
請求項3に記載のウェビング巻取装置によれば、回転部材における移動部材の係合部との係合部分は、回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され、少なくとも1つの係合部分は、回転部材の回転位置に関わらず移動部材の中心軸方向に移動部材の係合部と対向される。このため、回転部材が回転され、回転部材の回転位置が如何なる位置にあっても、筒状部材内に供給された流体の圧力によって移動部材が移動されることによって、移動部材の係合部は、回転部材に係合できる。
【0012】
請求項4に記載のウェビング巻取装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のウェビング巻取装置において、前記係合部は、前記流体の圧力による前記移動部材の移動方向に対して前記回転部材側へ傾いた方向へ向いた係合面を備えている。
【0013】
請求項4に記載のウェビング巻取装置によれば、移動部材の係合部の係合面は、流体の圧力による移動部材の移動方向に対して回転部材側へ傾いた方向へ向いている。このため、移動部材の係合部において回転部材の回転半径外側の部分を、移動部材の中心軸方向に回転部材に近づけた状態で配置できる。
【0014】
請求項5に記載のウェビング巻取装置は、請求項4に記載のウェビング巻取装置において、前記係合面は、前記回転部材側を曲率中心として凹状に湾曲されている。
【0015】
請求項5に記載のウェビング巻取装置によれば、移動部材の係合部の係合面は、回転部材側を曲率中心として凹状に湾曲されている。このため、移動部材の係合面が移動部材の中心軸方向に回転部材に近づいた状態で移動部材の係合部を配置できる。
【0016】
請求項6に記載のウェビング巻取装置は、請求項4又は請求項5に記載のウェビング巻取装置において、前記回転部材における前記係合面との係合部分は、前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され、前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は、前記所定角度よりも大きい。
【0017】
請求項6に記載のウェビング巻取装置によれば、回転部材における係合面との係合部分は、回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成される。また、回転部材側を中心とする当該中心周りの移動部材の係合面の設定範囲は、回転部材における係合面との複数の係合部分のうち、回転部材の回転中心周りに互いに隣合う係合部分がなす所定角度毎よりも大きい。このため、少なくとも1つの係合部分は、回転部材の回転位置に関わらず移動部材の中心軸方向に移動部材の係合面と対向される。このため、回転部材が回転され、回転部材の回転位置が如何なる位置にあっても、筒状部材内に供給された流体の圧力によって移動部材が移動されることによって、移動部材の係合面は、回転部材に係合できる。
【0018】
請求項7に記載のウェビング巻取装置は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のウェビング巻取装置において、前記移動部材は、前記筒状部材の中心軸線周りの回動が制限されている。
【0019】
請求項7に記載のウェビング巻取装置によれば、移動部材は、筒状部材の中心軸線周りの回動が制限される。このため、筒状部材の中心軸線周りの移動部材の姿勢を安定できる。これによって、筒状部材内に供給された流体の圧力によって移動部材が移動されることによって移動部材の係合部を回転部材に係合させることができる。
【0020】
請求項8に記載のウェビング巻取装置は、請求項7に記載のウェビング巻取装置において、前記筒状部材は、筒状部材曲部において中心軸線方向が曲げられ、前記移動部材は、前記筒状部材の前記筒状部材曲部を挟んで前記筒状部材の中心軸線方向基端側から前記筒状部材の中心軸線方向先端側へ連続して配置されると共に、荷重が付与されない無負荷状態で前記筒状部材内での配置位置に倣って曲がっている。
【0021】
請求項8に記載のウェビング巻取装置によれば、移動部材は、筒状部材の筒状部材曲部を挟んで筒状部材の中心軸線方向基端側から筒状部材の中心軸線方向先端側へ連続して配置される。しかも、移動部材は、無負荷状態で筒状部材内での配置位置に倣って曲がっている。このため、移動部材における筒状部材の筒状部材曲部よりも筒状部材の中心軸線方向先端側部分の筒状部材の中心軸線周りの回動を、移動部材における筒状部材の筒状部材曲部よりも筒状部材の中心軸線方向基端側部分によって制限できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るウェビング巻取装置では、移動部材の係合部から回転部材における移動部材の係合部との係合部分までの距離が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るウェビング巻取装置のプリテンショナの構成を示すウェビング巻取装置の側面図である。
【図3】移動部材が移動された状態を示す図2に対応する側面図である。
【図4】複数の係合歯が先端側移動部材の係合部の係合面と対向された状態を示す図4に対応する側面図である。
【図5】図4の5-5線に沿ったシリンダ、移動部材、回転部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図1から図5の各図に基づいて本発明の一実施の形態について説明する。なお、各図において矢印FRは、本ウェビング巻取装置10が適用された車両の前側を示し、矢印OUTは、車幅方向外側を示し、矢印UPは、車両上側を示す。
【0025】
<本実施の形態の構成>
図1及び図2に示されるように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、車両の車体としてのセンターピラー(図示省略)の車両下側部分に固定されている。また、フレーム12は、脚板14、16を備えており、脚板14と脚板16とは略車両前後方向に対向されている。
【0026】
また、フレーム12には、スプール18が設けられている。スプール18は、略円筒形状に形成されている。スプール18の中心軸線方向は、脚板14と脚板16との対向方向(すなわち、略車両前後方向)に沿っており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。スプール18には、長尺帯状のウェビング20(図2参照)の長手方向基端部が係止されており、スプール18が巻取方向(図2等の矢印A方向)へ回転されると、ウェビング20が長手方向基端側からスプール18に巻取られる。また、ウェビング20の長手方向先端側は、スプール18から車両上側へ延びており、ウェビング20の長手方向先端側は、フレーム12の車両上側でセンターピラーに支持されたスルーアンカ(図示省略)に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。
【0027】
さらに、ウェビング20の長手方向先端部は、アンカプレート(図示省略)に係止されている。アンカプレートは、鉄等の金属板材によって形成されており、車両の床部(図示省略)又は本ウェビング巻取装置10に対応するシート(図示省略)の骨格部材等に固定されている。
【0028】
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置(図示省略)を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置10が適用されるシートの車幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタング(図示省略)がバックル装置に係合されることによって、乗員の身体にウェビング20が装着される。
【0029】
一方、図1に示されるように、フレーム12の脚板14の車両前側には、スプリングハウジング22が設けられている。スプリングハウジング22の内側には、ぜんまいばね等のスプール付勢手段(図示省略)が設けられており、スプール18は、スプール付勢手段の付勢力によってウェビング20が巻取方向へ付勢されている。
【0030】
これに対して、フレーム12の脚板16の車両後側には、ロック機構24が設けられている。ロック機構24は、ロックベース26を備えている。ロックベース26は、スプール18の車両後側で、スプール18の中心軸線周りに回転自在に設けられている。また、ロック機構24は、センサ機構(図示省略)を備えている。センサ機構は、車両衝突時等の車両緊急時に作動される。センサ機構が作動されると、ロックベース26に設けられたロックパウル28が、ロックベース26の回転半径方向外側へ移動される。
【0031】
また、フレーム12の脚板16には、カバープレート30が固定されている。カバープレート30は、プレート部32を備えている。カバープレート30のプレート部32は、厚さ方向が車両前後方向に沿った板状とされ、フレーム12の脚板16よりも車両後側で脚板16に対して車両前後方向に対向するように配置されている。
【0032】
カバープレート30のプレート部32には、ラチェット孔34が形成されており、ロック機構24のロックベース26は、カバープレート30のラチェット孔34を貫通している。ロック機構24のセンサ機構が作動され、ロックベース26のロックパウル28が、ロックベース26の回転半径方向外側へ移動されると、ロックパウル28が、カバープレート30のラチェット孔34のラチェット歯に噛合う。これによって、ロックベース26の巻取方向とは反対の引出方向(図2等の矢印B方向)への回転が制限される。
【0033】
また、本ウェビング巻取装置10は、フォースリミッタを構成するトーションバー36(図2参照)を備えている。トーションバー36は、略車両前後方向に長い棒状に形成されている。トーションバー36の車両前側部分は、スプール18の内側に配置され、スプール18に対する相対回転が阻止された状態でスプール18に繋がっている。これに対して、トーションバー36の車両後側部分は、ロックベース26の内側に配置され、ロックベース26に対する相対回転が阻止された状態でロックベース26に繋がっている。すなわち、ロックベース26は、トーションバー36によってスプール18に相対回転が阻止された状態でスプール18に繋がっている。
【0034】
さらに、本ウェビング巻取装置10は、プリテンショナ38を備えている。プリテンショナ38は、筒状部材としてのシリンダ40を備えている。シリンダ40は、全体的に略円筒形状に形成されている。シリンダ40の軸方向基端部は、マイクロガスジェネレータ装着部42とされている。シリンダ40のマイクロガスジェネレータ装着部42は、フレーム12の脚板14の車両上側に配置されており、マイクロガスジェネレータ装着部42には、流体供給手段の一態様であるガス発生手段としてのマイクロガスジェネレータ44が設けられている。
【0035】
マイクロガスジェネレータ44は、制御手段としてのECUを介して車両に設けられた衝突検知センサ(何れも図示省略)に電気的に接続されている。車両衝突時の衝撃が衝突検知センサによって検知されると、ECUによってマイクロガスジェネレータ44が作動され、マイクロガスジェネレータ44において発生された流体の一態様であるガスが、シリンダ40の内側へ供給される。
【0036】
シリンダ40のマイクロガスジェネレータ装着部42の車幅方向外側には、シリンダ第1直線部46が配置されている。シリンダ第1直線部46におけるシリンダ40の軸方向は、車幅方向に沿っており、シリンダ第1直線部46の軸方向基端部(車幅方向内側端部)は、シリンダ40のマイクロガスジェネレータ装着部42に繋がっている。シリンダ第1直線部46におけるシリンダ40の軸方向先端側(車幅方向外側)には、シリンダ第1曲部48が配置されている。シリンダ第1曲部48は、フレーム12の脚板14の車幅方向外側端部の車両上側に配置されており、シリンダ40の軸方向は、シリンダ第1曲部48によって曲げられ、シリンダ第1曲部48におけるシリンダ40の軸方向先端部ではシリンダ40の軸方向が車両後側へ向いている。
【0037】
さらに、シリンダ第1曲部48におけるシリンダ40の軸方向先端側(車両後側)には、シリンダ第2直線部50が配置されている。シリンダ第2直線部50におけるシリンダ40の軸方向は、車両前後方向に沿っており、シリンダ第2直線部50の軸方向基端部(車両前側端部)は、シリンダ40のシリンダ第1曲部48に繋がっている。シリンダ第2直線部50におけるシリンダ40の軸方向先端側(車両後側)には、シリンダ第2曲部52が配置されている。シリンダ第2曲部52は、フレーム12の脚板16の車幅方向外側端部の車両上側に配置されており、シリンダ40の軸方向は、シリンダ第2曲部52によって曲げられ、シリンダ第2曲部52におけるシリンダ40の軸方向先端部ではシリンダ40の軸方向が車幅方向内側へ向いている。
【0038】
また、シリンダ第2曲部52におけるシリンダ40の軸方向先端側(車幅方向内側)には、シリンダ第3直線部54が配置されている。シリンダ第3直線部54におけるシリンダ40の軸方向は、車幅方向に沿っており、シリンダ第3直線部54の軸方向基端部(車幅方向外側端部)は、シリンダ40のシリンダ第2曲部52に繋がっている。シリンダ第3直線部54におけるシリンダ40の軸方向先端側(車幅方向内側)には、筒状部材曲部としてのシリンダ第3曲部56が配置されている。シリンダ第3曲部56は、フレーム12の脚板16の車幅方向内側部分の車両上側に配置されており、シリンダ40の軸方向は、シリンダ第3曲部56によって曲げられている。シリンダ40のシリンダ第3曲部56の軸方向先端側部分は、フレーム12の脚板16の車両後側に配置され、シリンダ40のシリンダ第3曲部56よりも軸方向先端側では、シリンダ40の軸方向が車両下側へ向いている。
【0039】
また、シリンダ第3曲部56におけるシリンダ40の軸方向先端側(車両下側)には、シリンダ第4直線部58が配置されている。シリンダ第4直線部58におけるシリンダ40の軸方向は、車両上下方向に沿っており、シリンダ第4直線部58の軸方向基端部(車両上側端部)は、シリンダ40のシリンダ第3曲部56に繋がっている。シリンダ40のシリンダ第4直線部58は、スプール18の中心軸線よりも車幅方向内側でフレーム12の脚板16とカバープレート30のプレート部32との間に配置されている。また、図2に示されるように、シリンダ40のシリンダ第4直線部58には、開口部60が形成されており、開口部60が形成されていることによって、シリンダ40のシリンダ第4直線部58は、軸方向先端のみならず車幅方向外側へも開口されている。
【0040】
一方、図2に示されるように、プリテンショナ38は、回転部材62を備えている。回転部材62は、フレーム12の脚板16とカバープレート30のプレート部32との間に配置されている。また、回転部材62は、スプール18の中心軸線周りのロック機構24のロックベース26に対する相対回転が阻止された状態で、ロックベース26に取付けられている。回転部材62は、複数の係合歯64を備えている。これらの係合歯64は、回転部材62の回転中心周りに一定角度θ1毎に放射状に形成されている。これらの係合歯64における回転部材62の回転周方向に沿った寸法は、回転部材62の径方向外側へ向けて短く形成されており、回転部材62が回転した際の係合歯64の先端の回転軌跡は、シリンダ40の軸方向先端部における開口部60の側方を通過している。
【0041】
一方、図1に示されるように、プリテンショナ38は、基端側移動部材66、中間移動部材68及び移動部材としての先端側移動部材70を備えている。これらの基端側移動部材66、中間移動部材68、先端側移動部材70の各々は、回転部材62よりも軟質の合成樹脂材によって、中心軸方向がシリンダ40の軸方向に沿った略円柱形状に形成されており、シリンダ40の内側でシリンダ40の軸方向基端側から基端側移動部材66、中間移動部材68、先端側移動部材70の順番に並んで配置されている。
【0042】
基端側移動部材66は、シリンダ40内におけるシリンダ第1直線部46とシリンダ第2直線部50の中心軸線方向中間部と間に配置されており、中間移動部材68は、シリンダ40内におけるシリンダ第2直線部50の中心軸線方向中間部とシリンダ第3直線部54の中心軸線方向中間部との間に配置されている。
【0043】
一方、移動部材としての先端側移動部材70は、先端側移動部材曲部84を備えている。先端側移動部材曲部84は、シリンダ40のシリンダ第3曲部56に対応して曲がっており、先端側移動部材70の先端側移動部材曲部84は、シリンダ40のシリンダ第3曲部56の内側に配置されている。先端側移動部材70における先端側移動部材曲部84よりも中心軸方向基端側は、先端側移動部材第1直線部86とされている。先端側移動部材70の先端側移動部材第1直線部86の中心軸方向は、直線的とされ、車幅方向に沿っており、先端側移動部材70の先端側移動部材第1直線部86は、シリンダ40のシリンダ第3直線部54の内側に配置されている。
【0044】
これに対して、先端側移動部材70における先端側移動部材曲部84よりも中心軸方向先端側は、先端側移動部材第2直線部88とされている。先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の中心軸方向は、直線的とされ、車両上下方向に沿っており、先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88は、シリンダ40のシリンダ第4直線部58の開口部60よりも車両上側でシリンダ第4直線部58の内側に配置されている。先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の中心軸方向先端部は、係合部90とされており、係合部90は係合面92を備えている。
【0045】
先端側移動部材70がシリンダ40の内側に配置された状態で、先端側移動部材70の係合部90の係合面92は、先端側移動部材70の中心軸方向先端部よりも車幅方向外側で且つ車両下側を曲率中心とする円弧状に湾曲されている。このため、先端側移動部材70の係合部90における車幅方向内側部分は、先端側移動部材70の係合部90における車幅方向外側部分よりも車両下側へ延びている。これによって、先端側移動部材70の係合部90における車幅方向外側部分のみならず、先端側移動部材70の係合部90における車幅方向内側部分が、回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡に接近されている。
【0046】
また、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率半径は、回転部材62の回転中心から回転部材62の係合歯64の先端までの径寸法よりも大きく、また、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心は、先端側移動部材70がシリンダ40の所定位置に配置された状態で回転部材62の回転中心に略一致する。したがって、先端側移動部材70がシリンダ40の内側に配置された初期状態(マイクロガスジェネレータ44が作動される前の状態)では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92は、回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡に対して同心円周上で、回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡の外側に配置される。
【0047】
このため、初期状態では、回転部材62が回転されても、回転部材62の係合歯64が先端側移動部材70に係合されず、先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88が車両下側(図2の矢印C方向)へ移動されると、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡内に入り、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64へ係合される。
【0048】
また、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心を中心とする係合面92の形成範囲θ2は、回転部材62の回転中心周りの係合歯64の間隔である角度θ1よりも大きくされている。このため、回転部材62が、その回転中心周りの如何なる位置にあっても、回転部材62の複数の係合歯64のうち、少なくとも1つの係合歯64の先端が、先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向される。
【0049】
これらの基端側移動部材66、中間移動部材68、先端側移動部材70の各々は、ナイロン(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はエラストマ等の合成樹脂材によって形成されており、中心軸方向を曲げるような撓曲が可能とされていると共に、回転部材62の係合歯64を、基端側移動部材66、中間移動部材68、先端側移動部材70に突刺すことができる。
【0050】
シリンダ40のマイクロガスジェネレータ装着部42に設けられたマイクロガスジェネレータ44が作動され、マイクロガスジェネレータ44において発生されたガスがシリンダ40の内側へ供給されると、このガスの圧力によって基端側移動部材66がシリンダ40の軸方向先端側へ移動される。これによって、中間移動部材68が基端側移動部材66に押圧されて中間移動部材68がシリンダ40の軸方向先端側へ移動されると、先端側移動部材70が中間移動部材68によって押圧されて移動される。
【0051】
ここで、先端側移動部材70を成形するための金型の固定型に対する移動型の移動方向は、先端側移動部材70の先端側移動部材曲部84の曲率中心軸方向とされ、金型の固定型及び移動型のキャビティ部(成形用の凹部)には、先端側移動部材70の先端側移動部材曲部84を成形するための曲部分が形成されている。このため、先端側移動部材70の外周面における先端側移動部材曲部84の曲率中心側部分及び曲率中心側とは反対側部分には、パーティングライン(型割線)が形成されると共に、先端側移動部材70には、既に曲がった先端側移動部材曲部84が形成される。したがって、先端側移動部材70は、先端側移動部材70の中心軸方向に対して交差する方向からの荷重が作用されない無負荷状態で、先端側移動部材曲部84において曲がった形状となっている。
【0052】
また、先端側移動部材70がシリンダ40の内側に配置される際には、先端側移動部材70がシリンダ40の軸方向基端又は軸方向先端からシリンダ40の内側へ挿入される。このように、先端側移動部材70がシリンダ40の内側へ挿入される際には、先端側移動部材70の姿勢(先端側移動部材70における先端側移動部材第1直線部86の中心軸周りの回転位置及び先端側移動部材第2直線部88の中心軸周りの回転位置)が、シリンダ40のシリンダ第3直線部54からシリンダ第4直線部58の姿勢と同じ姿勢の状態で先端側移動部材70がシリンダ40の内側へ挿入される。
【0053】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0054】
本ウェビング巻取装置10では、車両緊急時の一態様である車両衝突時に、ECUによってプリテンショナ38のマイクロガスジェネレータ44が作動されると、マイクロガスジェネレータ44からシリンダ40の内側へ高圧のガスが瞬時に供給される。このガスの圧力によって基端側移動部材66がシリンダ40の軸方向先端側へ移動されると、中間移動部材68が基端側移動部材66に押圧されて中間移動部材68がシリンダ40の軸方向先端側へ移動される。さらに、中間移動部材68がシリンダ40の軸方向先端側へ移動されると先端側移動部材70が中間移動部材68によって押圧されて移動される。
【0055】
これによって、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が、回転部材62の係合歯64を車両下側へ押圧すると、回転部材62が巻取方向(図2等の矢印A方向)へ回転される。さらに、回転部材62の複数の係合歯64のうち、先端側移動部材70の軸方向先端に押圧された係合歯64よりも引出方向側の係合歯64は、図3に示されるように、回転部材62の巻取方向への回転によって先端側移動部材70の外周面から先端側移動部材70の径方向中央側へ食込み又は突刺さる。
【0056】
このように、係合歯64が食込み又は突刺さった先端側移動部材70が車両後側へ移動されることによって回転部材62が更に巻取方向へ回転される。回転部材62は、ロック機構24のロックベース26に対する相対回転が阻止されているため、回転部材62が巻取方向へ回転されることによってロック機構24のロックベース26が巻取方向へ回転される。ロック機構24のロックベース26は、フォースリミッタ機構のトーションバー36を介してスプール18に繋がっており、スプール18に対する相対回転が阻止されているため、ロック機構24のロックベース26が巻取方向へ回転されることによって、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られて、ウェビング20による乗員の拘束力が増加される。
【0057】
ここで、本実施の形態では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92は、先端側移動部材70の中心軸方向先端部よりも車幅方向外側で且つ車両下側を曲率中心とする円弧状に湾曲されている。このため、先端側移動部材70の係合部90における車幅方向内側部分は、先端側移動部材70の係合部90における車幅方向外側部分よりも車両下側へ延びている。しかも、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率半径は、回転部材62の回転中心から回転部材62の係合歯64の先端までの径寸法よりも大きく、また、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心は、マイクロガスジェネレータ44が作動される前の初期状態で、回転部材62の回転中心に略一致する(すなわち、この状態では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92は、回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡に対して同心円周上に配置される)。
【0058】
このため、初期状態では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の車幅方向全域で、回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡に近づけられている。これによって、回転部材62の回転位置が如何なる位置にあっても、回転部材62の係合歯64のうち、先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されている係合歯64の先端と、先端側移動部材70の係合部90の係合面92との車両上下方向の間隔d(図2参照)を小さくできる。
【0059】
このため、マイクロガスジェネレータ44が作動されることによって先端側移動部材70の移動が開始されてから、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64へ当接されるまでの先端側移動部材70の移動ストロークや移動時間を短くできる。これによって、マイクロガスジェネレータ44によって発生されたガスの圧力を効率よく回転部材62の巻取方向への回転に寄与させることができる。しかも、このように、初期状態で、先端側移動部材70の係合部90の係合面92を回転部材62の係合歯64へ近接配置できるため、シリンダ40の軸方向寸法を短くできる。これによって、ウェビング巻取装置10のコストを低減できると共にウェビング巻取装置10を軽量化できる。
【0060】
また、本実施の形態では、回転部材62は、ロックベース26に対する相対回転が阻止されており、ロックベース26は、トーションバー36によってスプール18に対する相対回転が阻止されている。このため、通常時におけるスプール18からのウェビング20の引出しや、スプール18へのウェビング20の巻取りによって、回転部材62は、スプール18と共に回転される。したがって、乗員の身体へのウェビング20の装着状態での回転部材62の回転位置は、乗員の体格等によって異なる。
【0061】
ここで、本実施の形態では、回転部材62が、その回転中心周りの如何なる位置にあっても、回転部材62の複数の係合歯64のうち、少なくとも1つの係合歯64の先端が、先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向される。このため、マイクロガスジェネレータ44が作動され、先端側移動部材70が移動されることによって、先端側移動部材70の係合部90の係合面92を回転部材62の係合歯64へ確実に当接させて、回転部材62を巻取方向へ回転させることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、乗員の身体へのウェビング20の装着状態での回転部材62の回転位置は、乗員の体格等によって異なるため、例えば、図4に示されるように、回転部材62の複数の係合歯64が先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されることもある。
【0063】
このような状態で、先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されている回転部材62の複数の係合歯64のうち、引出方向側の係合歯64Aは、その歯先(係合歯64の先端部)近傍の範囲S1でのみ先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されることがある。しかも、先端側移動部材70の中心軸直交方向の断面形状は円形であるため、引出方向側の係合歯64Aは、その歯先の幅方向(車両前後方向)中央側部分の範囲S2でのみ先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向される。すなわち、このような状態では、引出方向側の係合歯64Aと先端側移動部材70の係合部90の係合面92との対向範囲が小さい。
【0064】
このため、マイクロガスジェネレータ44が作動され、先端側移動部材70が移動されると、先端側移動部材70の係合部90の係合面92のうち、回転部材62側(車幅方向外側)の一部の狭い範囲が回転部材62の係合歯64Aの歯先の幅方向中央部分に当接される。
【0065】
これに対して、先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されている回転部材62の複数の係合歯64のうち、巻取方向側の係合歯64Bは、その歯元側(係合歯64の基端側)までの範囲S3まで先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向される。しかも、巻取方向側の係合歯64Bは、先端側移動部材70の径方向中央側で先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されるため、巻取方向側の係合歯64Bの歯先の幅方向(車両前後方向)両側部分間の範囲S4まで先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向される。すなわち、巻取方向側の係合歯64Bと先端側移動部材70の係合部90の係合面92との対向範囲は、引出方向側の係合歯64Aと先端側移動部材70の係合部90の係合面92との対向範囲の比べて大きい。
【0066】
このため、マイクロガスジェネレータ44が作動され、先端側移動部材70が移動されると、先端側移動部材70の係合部90の係合面92のうち、広い範囲が回転部材62の係合歯64Bの歯先に当接される。
【0067】
このため、本実施の形態では、マイクロガスジェネレータ44が作動され、先端側移動部材70が移動された際に、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64Aに充分に当接できず、その結果、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64Aを充分に押圧できなくても、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64Bに当接されることによって、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64Bを充分に押圧して回転部材62を巻取方向へ回転させることができる。
【0068】
しかも、上述したように、本実施の形態では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の車幅方向内側部分であっても、回転部材62の係合歯64のうち、先端側移動部材70の係合部90の係合面92と対向されている係合歯64の先端と、先端側移動部材70の係合部90の係合面92との車両上下方向の間隔d(図2参照)を小さくできる。このため、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64Aに充分に当接して回転部材62の係合歯64Aを押圧できなかった場合でも、先端側移動部材70の係合部90の係合面92を回転部材62の係合歯64Bに早く当接させて回転部材62の係合歯64Bを押圧することができ、回転部材62を早く巻取方向へ回転させることができる。
【0069】
一方、本実施の形態では、先端側移動部材70は、初期状態でシリンダ40のシリンダ第3曲部56内に配置される先端側移動部材曲部84を備えており、先端側移動部材70における先端側移動部材曲部84よりも中心軸方向基端側の先端側移動部材第1直線部86は、シリンダ40のシリンダ第3直線部54内に配置される。
【0070】
このため、シリンダ40の内側に配置された先端側移動部材70が、シリンダ40のシリンダ第4直線部58内の先端側移動部材第2直線部88の中心軸周り方向(図1の一点鎖線Lを中心とした矢印D方向及び矢印E方向)へ回転しようとすると、これによる先端側移動部材70の先端側移動部材第1直線部86の回転が、シリンダ40のシリンダ第3直線部54の内側面によって阻止される。これによって、先端側移動部材70における先端側移動部材第2直線部88の中心軸周りの回動が阻止される。これによって、先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の姿勢をシリンダ40内への挿入時と同じ姿勢で保つことができ、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62側へ向いた状態で先端側移動部材70を保持できる。
【0071】
また、初期状態で、シリンダ40の内側に配置された先端側移動部材70が車両下側へ変位しようとすると、先端側移動部材70の先端側移動部材曲部84がシリンダ40のシリンダ第3曲部56に案内されて、先端側移動部材曲部84が先端側移動部材曲部84及びシリンダ第3曲部56の曲率中心周りに回動しようとする。これによって、先端側移動部材70の先端側移動部材第1直線部86が先端側移動部材曲部84と共に回動しようとすると、先端側移動部材70の先端側移動部材第1直線部86の回動がシリンダ40のシリンダ第3直線部54の内側面によって制限される。
【0072】
これによって、先端側移動部材70の先端側移動部材曲部84の回動が制限されるため、マイクロガスジェネレータ44が作動される前の初期状態での先端側移動部材70における車両下側への変位が阻止される。このため、車両走行時の振動等で、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が車両下側へ変位することを防止又は効果的に抑制でき、初期状態で先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64へ係合されることを防止できる。このように、初期状態で先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64へ係合されることを防止できるため、通常の状態で回転部材62をスプール18と共に回転する構成にでき、車両緊急時に回転部材62とスプール18とを機械的に繋ぐためのクラッチ等の連結部材が不要になる。
【0073】
このため、先端側移動部材70を初期状態での配置位置で保持するためのシェアピン等の特別な保持手段が不要になり、ウェビング巻取装置10のコストを低減でき、また、ウェビング巻取装置10を軽量化できる。また、このように、初期状態で、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が車両下側へ変位することを防止又は効果的に抑制できるため、シリンダ40内に先端側移動部材70が配置された状態での先端側移動部材70の係合部90の係合面92の位置を、回転部材62の係合歯64の先端の回転軌跡に近づけることができ、マイクロガスジェネレータ44が作動され、これによって、先端側移動部材70が移動されてから先端側移動部材70の係合部90の係合面92が回転部材62の係合歯64に当接されるまでの時間を短くできる。
【0074】
さらに、初期状態でシリンダ40のシリンダ第3曲部56内に配置される先端側移動部材70における先端側移動部材曲部84は、曲がった状態で成形されており、先端側移動部材曲部84は、先端側移動部材70の中心軸方向に対して交差する方向からの荷重が作用されない無負荷状態でシリンダ40のシリンダ第3曲部56に沿うように曲がっている。このため、初期状態で先端側移動部材70がシリンダ40の内側に配置されても、先端側移動部材70がシリンダ40のシリンダ第3曲部56から受ける先端側移動部材70の中心軸を曲げるような曲げ荷重を小さく又はなくすことができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、先端側移動部材70は、シリンダ40内での配置位置に倣った形状に予め成形された構成であった。しかしながら、先端側移動部材70を直線的な棒形状に成形して、先端側移動部材70がシリンダ40内に挿入されることによって先端側移動部材70がシリンダ40内での配置位置に倣って曲がる構成であってもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、移動部材としての先端側移動部材70の中心軸方向基端側に、先端側移動部材70とは別に基端側移動部材66、中間移動部材68を設けた構成であったが、基端側移動部材66、中間移動部材68を設けずに、先端側移動部材70だけをシリンダ40内に設ける構成であってもよい。
【0077】
さらに、本実施の形態では、先端側移動部材70の成形の際に係合面92が形成される構成であった。しかしながら、例えば、係合面92を有しない棒状に先端側移動部材70を成形し、先端側移動部材70がシリンダ40内に挿入された後に、先端側移動部材70の先端部に係合面92を形成する構成としてもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心が、初期状態で回転部材62の回転中心に略一致する構成であったが、先端側移動部材70の係合部90の係合面92の曲率中心が、初期状態で回転部材62の回転中心に対して車両上下方向や車幅方向にずれる構成であってもよい。
【0079】
さらに、本実施の形態では、先端側移動部材70の係合部90の係合面92が円弧状に湾曲された構成であった。しかしながら、先端側移動部材70の係合部90の係合面92は、例えば、マイクロガスジェネレータ44が作動された際の先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の移動方向(車両下側)に対して回転部材62の回転中心側(車幅方向外側)へ傾斜した方向へ向いた平面であってもよい。また、先端側移動部材70の係合部90が車幅方向中間部を境に先端側移動部材70の係合部90の車幅方向内側部分が先端側移動部材70の係合部90の車幅方向外側部分よりも車両下側へ階段状に延びる構成であってもよい。このように、先端側移動部材70の係合部90は、回転部材62側の部分に対して回転部材62とは反対側の部分が車両下側に延びた構成であれば、形状等の具体的な構成に限定されるものではない。
【0080】
また、上記の各実施の形態では、例えば、先端側移動部材70の先端側移動部材曲部84は、シリンダ40のシリンダ第3直線部54に沿うように曲がった構成であり、したがって、このような構成では、先端側移動部材70の無負荷状態で、先端側移動部材70における先端側移動部材第1直線部86の中心軸方向に対して先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の中心軸方向が成す角度と、シリンダ40のシリンダ第3直線部54の中心軸線方向に対してシリンダ40のシリンダ第4直線部58の中心軸線方向が成す角度とが略一致する。
【0081】
しかしながら、先端側移動部材70の無負荷状態で、先端側移動部材70における先端側移動部材第1直線部86の中心軸方向に対して先端側移動部材70の先端側移動部材第2直線部88の中心軸方向が成す角度は、シリンダ40のシリンダ第3直線部54の中心軸線方向に対してシリンダ40のシリンダ第4直線部58の中心軸線方向が成す角度より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 ウェビング巻取装置
18 スプール
20 ウェビング
40 シリンダ(筒状部材)
56 シリンダ第3曲部(筒状部材曲部)
62 回転部材
64、64A、64B 係合歯(回転部材における移動部材の係合部との係合部分)
70 先端側移動部材(移動部材)
90 係合部
92 係合面
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取方向へ回転されることによってシートベルト装置のウェビングが巻取られるスプールと、
車両緊急時に中心軸線方向基端部から内側へ流体が供給される筒状部材と、
前記筒状部材の中心軸線方向先端側で回転可能に設けられ、回転方向一側へ回転されて前記スプールを巻取方向へ回転させる回転部材と、
前記筒状部材の内側に配置され、前記筒状部材に供給される前記流体の圧力で移動される移動部材と、
前記移動部材の中心軸方向先端部に形成され、前記移動部材の中心軸からみて前記回転部材の回転中心へ向けて直交する方向である中心軸直交方向の側の部分よりも前記中心軸直交方向とは反対側の部分が前記移動部材の中心軸方向先端側へ延び、前記移動部材の中心軸方向先端側への移動により前記移動部材において前記回転部材へ最初に係合されて前記回転部材を押圧し、前記回転部材を回転方向一側へ回転させる係合部と、
を備えるウェビング巻取装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記回転部材における前記係合部との係合部分の回転軌跡の外側に配置される請求項1に記載のウェビング巻取装置。
【請求項3】
前記回転部材における前記係合部との係合部分は、前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され、少なくとも1つの前記係合部分は、前記回転部材の回転位置に関わらず前記移動部材の中心軸方向に前記係合部と対向される請求項1又は請求項2に記載のウェビング巻取装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記流体の圧力による前記移動部材の移動方向に対して前記回転部材側へ傾いた方向へ向いた係合面を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項5】
前記係合面は、前記回転部材側を曲率中心として凹状に湾曲されている請求項4に記載のウェビング巻取装置。
【請求項6】
前記回転部材における前記係合面との係合部分は、前記回転部材の回転中心周りに所定角度毎に複数形成され、前記係合面の設定範囲の前記回転部材の回転中心周りの角度は、前記所定角度よりも大きい請求項4又は請求項5に記載のウェビング巻取装置。
【請求項7】
前記移動部材は、前記筒状部材の中心軸線周りの回動が制限されている請求項1から請求項6の何れか1項に記載のウェビング巻取装置。
【請求項8】
前記筒状部材は、筒状部材曲部において中心軸線方向が曲げられ、前記移動部材は、前記筒状部材の前記筒状部材曲部を挟んで前記筒状部材の中心軸線方向基端側から前記筒状部材の中心軸線方向先端側へ連続して配置されると共に、荷重が付与されない無負荷状態で前記筒状部材内での配置位置に倣って曲がった請求項7に記載のウェビング巻取装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-07 
出願番号 特願2015-237944(P2015-237944)
審決分類 P 1 651・ 854- YAA (B60R)
P 1 651・ 851- YAA (B60R)
P 1 651・ 853- YAA (B60R)
P 1 651・ 537- YAA (B60R)
P 1 651・ 113- YAA (B60R)
P 1 651・ 121- YAA (B60R)
P 1 651・ 841- YAA (B60R)
P 1 651・ 832- YAA (B60R)
P 1 651・ 855- YAA (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野口 絢子  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 藤井 昇
出口 昌哉
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6509100号(P6509100)
権利者 株式会社東海理化電機製作所
発明の名称 ウェビング巻取装置  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
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