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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C01B
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:857  C01B
管理番号 1366056
異議申立番号 異議2019-700538  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-09 
確定日 2020-07-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6450352号発明「多孔質炭素材料、及びその製造方法、並びに合成反応用触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6450352号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、9、10〕、〔3、11?13〕、〔5?8〕について訂正することを認める。 特許第6450352号の請求項1?4、9?13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6450352号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成28年9月26日に特許出願され、平成30年12月14日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月9日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1?4、9、10に係る特許に対して、令和1年7月9日に特許異議申立人神保良男(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年9月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月18日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)がされ、令和2年1月8日に申立人により意見書(以下、「申立人意見書1」という。)の提出がされ、同年1月20日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年3月9日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年5月1日に申立人により意見書(以下、「申立人意見書2」という。)の提出がされた。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(なお、訂正箇所に下線を付した。)。
なお、先の訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「1.20以上である」と記載されているのを、「1.20以上1.53以下である」に訂正する。
当該請求項1を引用する請求項2、4、9、10についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「籾殻由来である、請求項1から2のいずれかに記載の多孔質炭素材料。」と記載されているのを、
「籾殻由来であり、
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、
BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である、
ことを特徴とする多孔質炭素材料。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のいずれか」と記載されているのを、「請求項1から2のいずれか」に訂正する。
当該請求項4を引用する請求項9、10についても同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれかに記載の多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、」と記載されているのを、
「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、」に訂正する。
当該請求項5を引用する請求項7、8についても同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から4のいずれかに記載の多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、」と記載されているのを、
「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、」に訂正する。
当該請求項6を引用する請求項7、8についても同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から4のいずれか」と記載されているのを、「請求項1から2、及び4のいずれか」に訂正する。
当該請求項9を引用する請求項10についても同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11として、
「触媒用の担体である請求項3に記載の多孔質炭素材料。」を新たに追加する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12として、
「請求項3に記載の多孔質炭素材料と、前記多孔質炭素材料に担持された金属又は金属化合物とを有することを特徴とする合成反応用触媒。」を新たに追加する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13として、
「前記金属又は金属化合物が、パラジウムである請求項12に記載の合成反応用触媒。」を新たに追加する。

ここで、訂正前の請求項2?10は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1?10は一群の請求項を構成するから、上記訂正事項1?9に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1?10(訂正後の請求項1?13)を請求の単位として請求されたものである。
また、訂正後の請求項5?8に係る訂正、及び、同請求項3、11?13に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに、それぞれ、同請求項1、2、4、9、10に係る訂正と別の訂正単位として扱われることを求めている。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)」を「1.20以上」から「1.20以上1.53以下」に減縮するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0018】には、「前記多孔質炭素材料において、前記メソ孔容積(cm^(3)/g)と、前記マイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)は、1.20以上であり、1.30以上がより好ましい。前記比率の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記比率は、5.00以下が好ましく、2.00以下がより好ましい。」と記載され、また、段落【0075】の表2の実施例3には、「メソ孔容積/マイクロ孔容積比率」が「1.53」であることが記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3において、同請求項1を引用する部分のみを独立した形に書き下して引用関係を解消するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4における選択的引用請求項1から3の内の請求項3を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5において、同請求項1を引用する部分のみを独立した形に書き下して引用関係を解消するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項6において、同請求項1を引用する部分のみを独立した形に書き下して引用関係を解消するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項9における選択的引用請求項1から4の内の請求項3を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項4における選択的引用請求項1から3の内の請求項1、2を削除し、訂正事項2によって引用関係を解消して独立形式に改めた請求項3を引用するものを新たな請求項11にするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項9における選択的引用請求項1から4の内の請求項1、2、4を削除し、訂正事項2によって引用関係を解消して独立形式に改めた請求項3を引用するものを新たな請求項12にするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項9を引用する同請求項10において、訂正前の請求項9を訂正事項8による訂正により新たにした請求項12を引用するものを新たな請求項13とするものであるから、訂正事項8と同じく「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)独立特許要件について
訂正事項1?9は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正を含むところ、訂正前の請求項5?8に対しては、特許異議の申立てがされていないから、当該請求項5?8に関係する訂正事項4及び5については、さらに独立特許要件について検討する必要がある。
しかしながら、訂正前の請求項5?8に係る発明は、拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、また、当審においてもこれらの発明に対する拒絶理由を発見しない。他方、訂正事項4及び5に係る訂正後の請求項5?8に係る発明は、上記(4)及び(5)で指摘したとおり、訂正前の請求項5及び6の引用請求項の一部の書き下しにより派生したものであって、訂正前の請求項5?8に係る発明の一部にほかならないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、4、9、10〕、〔3、11?13〕、〔5?8〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?13に係る発明(以下、「本件発明1?13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、
BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である、
ことを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項2】
植物由来である、請求項1に記載の多孔質炭素材料。
【請求項3】
籾殻由来であり、
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、
BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である、
ことを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項4】
触媒用の担体である請求項1から2のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項5】
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、
ケイ素成分を含む植物由来の原材料から、前記ケイ素成分を酸処理又はアルカリ処理により取り除いた後、炭化処理を行い、
前記炭化処理の後に、賦活処理を行い、
前記賦活処理の後に熱処理を行うことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項6】
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、
ケイ素成分を含む植物由来の原材料の炭化処理を行った後に、得られた炭化物から前記ケイ素成分を酸処理又はアルカリ処理により取り除き、次に賦活処理を行い、
前記賦活処理の後に熱処理を行うことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理の温度が1,200℃以上である請求項5から6のいずれかに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項8】
前記炭化処理の温度が600℃以上である請求項5から7のいずれかに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1から2、及び4のいずれかに記載の多孔質炭素材料と、前記多孔質炭素材料に担持された金属又は金属化合物とを有することを特徴とする合成反応用触媒。
【請求項10】
前記金属又は金属化合物が、パラジウムである請求項9に記載の合成反応用触媒。
【請求項11】
触媒用の担体である請求項3に記載の多孔質炭素材料。
【請求項12】
請求項3に記載の多孔質炭素材料と、前記多孔質炭素材料に担持された金属又は金属化合物とを有することを特徴とする合成反応用触媒。
【請求項13】
前記金属又は金属化合物が、パラジウムである請求項12に記載の合成反応用触媒。」

2 取消理由の概要について
令和1年9月27日付けの取消理由、及び、令和2年1月20日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1
設定登録時の請求項1及び4に係る発明、並びに、先の訂正請求における請求項1及び4に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるし、また、設定登録時の請求項4、9及び10に係る発明、並びに、先の訂正請求における請求項4,9及び10に係る発明は、同引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)取消理由2
設定登録時の請求項1に係る発明は、下記の引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(3)取消理由3
設定登録時の請求項1及び2に係る発明、並びに、先の訂正請求における請求項1及び2に係る発明は、下記の引用文献3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(引用文献一覧)
引用文献1:石川真二他,炭化物より創成されるナノサイズ細孔を有する炭素材料,SEIテクニカルレビュー,2016年1月,第188号,第139?144頁(甲第1号証)
引用文献2:特開2016-28014号公報(甲第2号証)
引用文献3:Tsutomu Suzuki et al., Production of Functional Carbon by Iron-Catalyzed Carbonization of Biomass - Effect of Washing with Acid Followed by Atmospheric Oxidation on the Electroconductivity of Crystallized Mesoporous Wood Carbon -, Transactions of the Materials Research Society of Japan, 2011年, vol.36, No.3, p.417-420(甲第3号証)
引用文献4:特開平11-90223号公報
引用文献5:特開平10-355号公報
引用文献6:JIS Z8831-3:2010
引用文献7:JIS Z8831-2:2010

3 引用文献の記載事項及び引用発明について
(1)引用文献1について
ア 引用文献1の記載事項(下線は当審が付した。以下、同様である。)
(ア)「このプロセスは文献(4)、(5)などに示されており、比表面積の非常に大きな炭素が生成することが確認され、炭化物由来炭素(Carbide Derived Carbon、CDC)と呼ばれている。・・・
本報告では、無機結晶体を原料とした多孔質炭素材料である、炭化物由来炭素について、炭化物原料として炭化珪素(SiC)、炭化チタン(TiC)、炭化アルミニウム(Al_(4)C_(3))の3種を用い、塩素雰囲気処理温度の細孔構造への影響を評価した結果を示す。
2. 実験方法
2-1 原料および処理方法
市販高純度試薬のSiC、TiC、Al_(4)C_(3)を原料炭化物に用いた(以下、SiC-CDC、TiC-CDC、AlC-CDCと称する)。反応速度の評価には、密度99%以上の多結晶SiC板を使用した。
粉末をグラファイト容器に入れて電気抵抗加熱により塩素ガス雰囲気熱処理を行い、多孔質炭素を作製した。塩素ガスと窒素ガスの混合比は1:10とした。加熱温度は、1000?1500℃の範囲で行った。」(第140頁左欄第1?20行)
(イ)「2-2 分析方法
サンプルの結晶構造解析は、Cu-kα線による粉末X線回折(XRD)により行った。得られた回折波形より、グラファイト002面の回折波形の半値幅から結晶子サイズ、小角散乱を除去した波形から得たピーク角度により面間隔の評価を行った。
細孔特性の評価には、液体窒素温度におけるN_(2)ガスの吸着等温線^(※1)より、比表面積をBET法^(※2)によって算出し、2nm以下のミクロ細孔容積をt法^(※3)で、細孔径2?50nmのメソ細孔容積をBJH法^(※4)により導出した。」(第140頁左欄第21?30行)
(ウ)「3-1 結晶構造
図2?4にSiC-CDC、TiC-CDC、AlC-CDCのXRD波形を原料の波形と合わせて示す。すべてのサンプルにおいて、初期の炭化物結晶構造は消失し、非晶質炭素の特徴である2θ≒20?30°の領域のグラファイト(002)面の回折、42?43°における(01)面回折ピークが確認される^((10))。」(当審注:「(01)面回折ピーク」は「(101)面回折ピーク」の誤記である。)(第140頁左欄第36?41行)
(エ)「

」(第140頁)
(オ)「3-2 細孔構造
・・・
TiC-CDCの77KにおけるN_(2)の吸着等温線を図8に示す。・・・
AlC-CDCにおいては、1000℃の処理で、すでにI型とII、IV型の複合吸着等温線となっている。・・・
処理温度と比表面積、細孔構造の関係を図10?12に示す。」(第141頁左欄下から17行?第142頁左欄第5行)
(カ)「

」(第141頁)
(キ)「

」(第142頁)

イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記ア(ア)によれば、1000?1500℃の塩素雰囲気処理を行った炭化アルミニウム由来炭素(AlC-CDC)である多孔質炭素材料が記載されている。
また、引用文献1には、上記ア(イ)?(エ)によれば、AlC-CDCの粉末X線回折(XRD)波形が記載されており、AlC-CDCのXRD波形が42?43°における(101)面回折ピークを有することも記載されている。そして、1300℃の塩素雰囲気処理を行ったAlC-CDCの(101)面回折ピークの半値幅は、3.3°程度であることが窺える。
さらに、引用文献1には、上記ア(イ)、(オ)?(キ)によれば、細孔構造に関して、図9に示された液体窒素温度でのN_(2)ガスの吸着等温線を有することや、BJH法により導出した細孔径2?50nmのメソ細孔容積が記載されており、上記ア(キ)の図12から、1300℃の塩素雰囲気処理を行ったAlC-CDCのメソ細孔容積は、0.56cc/g程度であることが窺える。
したがって、これら記載を1300℃の塩素雰囲気処理を行った炭化アルミニウム由来炭素に注目して整理すると、引用文献1には、
「X線回折による(101)面回折ピークの半値幅が3.3°程度であり、BJH法により導出した細孔径2?50nmのメソ細孔容積が0.56cc/g程度であり、図9に示された液体窒素温度でのN_(2)ガスの吸着等温線を示す、炭化アルミニウム由来の多孔質炭素材料。」
の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)引用文献2について
ア 引用文献2の記載事項
(ア)「【0011】
尚、炭素質壁の全ての部分が黒鉛化している必要はなく、一部に黒鉛化していない非晶質部分が存在していても良い。
ここで、本明細書においては、細孔径が2nm未満のものをミクロ孔、細孔径が2?50nmのものをメソ孔と称することとする。」
(イ)「【0028】
(実施例1)
先ず、図1(a)に示すように、炭素前駆体としてのポリアミック酸樹脂(イミド系樹脂)1と、鋳型粒子としての酸化マグネシウム(MgO、平均結晶子径は100nm)2とを、90:10の重量比で混合した。次に、図1(b)に示すように、この混合物を窒素雰囲気中1000℃で1時間熱処理して、ポリアミック酸樹脂を熱分解させることにより炭素質壁3を備えた焼成物を得た。次いで、図1(c)に示すように、得られた焼成物を1mol/lの割合で添加された硫酸溶液で洗浄して、MgOを完全に溶出させることにより多数のメソ孔4を有する非晶質の多孔質炭素5を得た。最後に、この非晶質の多孔質炭素を、窒素雰囲気中2500℃で1時間熱処理して、多孔質炭素を得た。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A1と称する。」
(ウ)「【0036】
(実験1)
本発明炭素A1と比較炭素Z1とのX線回折(線源はCuKα)を行ったので、その結果を図5に示す。・・・」
(エ)「【0039】
(実験3)
上記本発明炭素A1、A2、比較炭素Z1及び参考炭素Y1におけるBET比表面積と、メソ孔容量と、ミクロ孔容量とについて調べたので、その結果を表1に示す。尚、BET比表面積は、吸着等温線の結果からBET法を用いて算出した。また、メソ孔容量はBJH(Berret-Joyner-Halenda)法で調べた。更に、ミクロ孔容量はHK(Horbath-Kawazoe)法で調べた。
【0040】
【表1】


(オ)「【図5】



イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、上記ア(イ)によれば、ポリアミック酸樹脂を炭素前駆体とした多孔質炭素(本発明炭素A1)が記載されている。
また、引用文献2には、上記ア(ウ)及び(オ)によれば、前記多孔質炭素(本発明炭素A1)の粉末X線回折図が記載されており、45°付近に回折ピークを有することも記載されている。そして、この45°付近の回折ピークの半値幅は、3.0°程度であることが窺える。
さらに、引用文献2には、上記ア(ア)及び(エ)によれば、前記多孔質炭素(本発明炭素A1)のBJH法で調べた細孔径が2?50nmのメソ孔容量が0.55ml/gであり、HK法で調べた細孔径が2nm未満のミクロ孔容量が0.12ml/gであることも記載されている。
したがって、これら記載を多孔質炭素(本発明炭素A1)に注目して整理すると、引用文献2には、
「X線回折による45°付近の回折ピークの半値幅が3.0°程度であり、
BJH法で調べた細孔径が2?50nmのメソ孔容積が0.55ml/gであり、HK法で調べた細孔径が2nm未満のミクロ孔容量が0.12ml/gである、ポリアミック酸樹脂を炭素前駆体とした多孔質炭素。」
の発明(以下、「引用2発明」という。)が記載されているといえる。

(3)引用文献3について
ア 引用文献3の記載事項
(ア)「・・・crystallized mesoporous carbon (abbreviated as CMC)・・・」(第417頁左欄下から10?9行)
(当審仮訳:・・・結晶化メソ多孔質炭素(CMCと略記する)・・・)
(イ)「3. EXPERIMENTAL
3.1 Wood carbon
Powdered Japanese larch with diameter of 0.50-1.40 mm was loaded with Fe(NO_(3))_(3)・9H_(2)O by wet impregnation. The amount of iron was adjusted to 3 wt % as metal. After drying, the iron-loaded wood was carbonized in a downdraft tube reactor at 500℃ for 1 h in a flow of nitrogen, and subsequently the 500℃-char was subjected to 850℃-carbonization for 1 h to prepare the starting material, Fe-CMC.・・・
3.2 Washing with acid and atmospheric oxidation
Fe-CMC was soaked in 1 M HNO_(3) with stirring for 12 h at room temperature for removal of iron. After washing with distilled water and drying at 105℃, the acid-treated sample was recovered as AFe-CMC. ・・・ Atmospherically oxidized carbon, OAFe-CMC, was prepared from AFe-CMC by heating it in a muffle furnace at 420℃.」(第418頁右欄第3?26行)
(当審仮訳:3.実験
3.1 ウッドカーボン
直径0.50?1.40mmのカラマツの粉末を、Fe(NO_(3))_(3)・9H_(2)Oと共に湿式含浸によって充填した。鉄の量は金属として3重量%に調整した。乾燥後、鉄が充填された木材を、窒素フローの下、下向流管型反応器内において500℃で1時間炭化し、そして、その後、出発材料であるFe-CMCの準備のために、500℃炭化物を1時間の850℃炭化に供した。・・・
3.2 酸による洗浄と大気酸化
鉄の除去のために、撹拌しながら室温で12時間、Fe-CMCを1MのHNO_(3)に浸漬した。蒸留水で洗浄後、105℃で乾燥し、酸処理サンプルは、AFe-CMCとして回収した。・・・AFe?CMCをマッフル炉中420℃で加熱することにより、大気酸化炭素であるOAFe-CMCを準備した。)
(ウ)「3.3 Properties of carbon
For all wood carbon samples, both X-ray diffraction with Cu-Kα radiation (XRD, Rigaku RINT 1200) and Laser Raman spectroscopic analysis with Ar beam of 514.5 nm (LRS, JUSCO NR-1800) were conducted to check the crystallinity of carbon. In XRD, intensity of the peak at about 26° assigned to the crystallized form called T component was used for this purpose.・・・ Pore structure was examined from adsorption and desorption isotherms of nitrogen taken at - 196℃ (ThermoQuest Sorptomatic 1990). These three measurements were likewise made with two commercial CB for comparison: Denka black (DB, a sort of acetylene black) and Ketjen black EC (KB) with medium and excellent conductivities, respectively.」(第418頁右欄第32?48行)
(当審仮訳:3.3 カーボンの性質
カーボンの結晶化度の確認のために、すべてのウッドカーボンサンプルに対して、Cu-Kα線を用いたX線回折(XRD、リガク RINT 1200)と514.5nmのArビームを用いたレーザラマン分光分析(LRS、JUSCO NR-1800)とを行った。XRDでは、T成分と呼ばれる結晶形に帰属される約26°のピークの強度をこの目的のために使用した。・・・細孔構造は、-196℃(ThermoQuest Sorptomatic 1990)で測定した窒素の吸脱着等温線から調べた。これらの3つの測定は、比較のために2つの市販のCB、すなわち、中程度及び優れた導電率を有するデンカブラック(DB、一種のアセチレンブラック)及びケッチェンブラック(KB)を用いて同様になされた。)
(エ)「4. RESULTS ANDDISCUSSION
4.1 Crystallinity of carbon and porestructure
Figure 3 illustrates XRD profiles of all carbon samples. ・・・ In Fig. 4, curves of adsorption (lower) and desorption (upper) are depicted for each carbon.」(第419頁左欄第21?40行)
(当審仮訳:4.結果及び議論
4.1 カーボンの結晶性と細孔構造
Fig.3は、全てのカーボンサンプルのXRDプロファイルを示す。・・・Fig.4では、各カーボンについての吸着(下)及び脱着(上)の曲線が描かれている。)
(オ)「

」(第419頁)
(カ)「

」(第419頁)

イ 引用文献3に記載された発明
引用文献3には、上記ア(ア)及び(イ)によれば、カラマツ粉末に鉄を充填し炭化処理した結晶化メソ多孔質炭素(Fe-CMC)が記載されている。
また、引用文献3には、上記ア(ウ)?(オ)によれば、Fe-CMCのX線回折プロファイルが記載されており、このFe-CMCのX線回折プロファイルが45°付近に回折ピークを有することも記載されている。そして、この45°付近の回折ピークの半値幅は、0.5°程度であることが窺える。
さらに、引用文献3には、上記(4)ウ、エ及びカによれば、細孔構造に関して、Fig.4の液体窒素温度(-196℃)で測定した窒素ガスの吸着(下)及び脱着(上)の等温曲線が記載されている。
したがって、これら記載を結晶化メソ多孔質炭素(Fe-CMC)に注目して整理すると、引用文献3には、
「X線回折による45°付近の回折ピークの半値幅が0.5°程度であり、Fig.4の液体窒素温度で測定した窒素ガスの吸着(下)及び脱着(上)の等温曲線を示す、カラマツ粉末に鉄を充填し炭化処理した結晶化メソ多孔質炭素。」
の発明(以下、「引用3発明」という。)が記載されているといえる。

(4)引用文献4の記載事項
「【請求項1】 50重量%未満のパラジウムが深さ50ミクロンまでの表層中に含まれ、残りが深さ50から400ミクロンの表層中に位置する、活性炭に担持されたパラジウム金属からなる水素化触媒。」

(5)引用文献5の記載事項
「【請求項1】多孔質炭素担体上にパラジウムが担持された水素添加用パラジウム/炭素触媒において、(1)パラジウム粒子が炭素担体の内部及び表面に担持されており、(2)炭素担体の表面から0.2mm以上の内部に比べて、表面から0.2mm以下の表層部の方に多くのパラジウムが担持されており、(3)炭素担体の上記表層部のパラジウム粒子の直径が、内部のパラジウム粒子の直径よりも大きい、ことを特徴とする水素添加用パラジウム/炭素触媒。」

(6)引用文献6の記載事項
「附属書A」の「表 A.3」には、「HK法に基づく炭素のスリット型細孔における窒素のミクロ細孔フィリングが77.35Kで起こるときの相対圧力と細孔径との関係」について、細孔径「dp」が「2.0nm」であるときの相対圧力「p/p_(0)」が「1.6×10^(-1)」であることが記載されている。

(7)引用文献7の記載事項
「附属書A」には、「Barrett,Joyner及びHalendaによるメソ細孔径分布の決定法(BJH法)」に関して、細孔径分布の計算例が示されており、相対圧力「p/p_(0)」が「0.9633」であるときの細孔直径「d_(p)」が「54.596nm」であり、「p/p_(0)」が「0.9586」であるときの「d_(p)」が「48.554nm」であることが記載されており、これら記載から、d_(p)が50nmに対応するp/p_(0)が0.96程度であることが窺える。また、同「附属書A」には、「p/p_(0)」が「0.1752」であるときの「d_(p)」が「2.100nm」であり、「p/p_(0)」が「0.1504」であるときの「d_(p)」が「1.985nm」であることが記載されており、これら記載から、d_(p)が2nmに対応するp/p_(0)が0.16程度であることが窺える。

4 取消理由の検討
(1)取消理由1について
ア 本件発明1について
(ア)引用1発明との対比
引用1発明の「X線回折による(101)面回折ピークの半値幅が3.3°程度であ」ることは、本件発明1の「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であ」ることに相当する。また、引用1発明の「BJH法により導出した細孔径2?50nmのメソ細孔容積」は、本件発明1の「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)」に相当する。
したがって、本件発明1と引用1発明とは、
「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下である多孔質炭素材料。」
の点で一致し、以下の相違点1で相違している。
(相違点1)
本件発明1では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」のに対して、引用1発明では、BJH法により測定されるメソ孔容積は0.56cc/g程度であるものの、HK法により測定されるマイクロ孔容積の値が明らかでなく、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値も明らかでない点。

(イ)相違点1の検討
引用1発明のHK法により測定されるマイクロ孔容積の値について検討すると、引用文献6の上記3(6)の記載によれば、HK法により測定される2μm以下のマイクロ孔容積は、液体窒素温度でのN_(2)ガスの吸着等温線における相対圧力p/p_(0)が0.16のときの窒素吸着量であるといえるから、引用1発明の「図9に示された液体窒素温度でのN_(2)ガスの吸着等温線」から、HK法により測定される2μm以下のマイクロ孔容積を算出してみる。
まず、図9に示された液体窒素温度でのN_(2)ガスの吸着等温線のうち、1300℃の塩素雰囲気処理を行ったAlC-CDCの吸着等温線における相対圧力p/p_(0)が0.16のときの窒素吸着量(細孔容積)は、下図のとおり、216cc/g程度であることが窺える。

そして、細孔内では吸着ガスの毛管凝縮現象が生じているため、前記窒素吸着量(216cc/g)を、標準状態における1モル当たり窒素ガス体積(22400cc/mol)、窒素の分子量(28.0g/mol)及び、液体窒素の密度(0.809g/cc)を用いて液体量に換算すると、0.33cc/gとなるから、引用1発明のHK法により測定されるマイクロ孔容積は0.33cc/g程度であるといえる。
そうしてみると、引用1発明のメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値は、1.70(=0.56/0.33)となり、本件発明1の「1.20以上1.53以下である」ことを満たさないから、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明(引用1発明)であるといえない。

(ウ)引用文献1に記載されたその他の炭化物由来炭素について
引用文献1には、上記3(1)ア(ア)?(キ)によれば、引用1発明以外にも、塩素ガス雰囲気熱処理された炭化物由来炭素として、1000℃、1100℃、1200℃及び1400℃の塩素雰囲気処理を行った炭化アルミニウム由来炭素、及び、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃及び1400℃の塩素雰囲気処理を行った炭化チタン由来炭素が記載されているところ、これらのメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値を上記(イ)と同様に算出しても、その値は、本件発明1の「1.20以上1.53以下である」ことを満足しない。
したがって、引用文献1に記載された上記炭化物由来炭素を、引用文献1に記載された発明とした場合にも、本件発明1は、引用文献1に記載された発明といえない。

(エ)申立人の主張についての検討
申立人は、引用文献1の記載事項からすれば、図8、図9、図11及び図12においてプロットされたもの以外にも、所定のミクロ孔容積及びメソ孔容積を有するTiC-CDC及びAlC-CDCが連続的に存在すると解すべきであり、引用文献1には、本件発明1の孔容積比率が1.20以上1.53以下であることを充足する蓋然性の高いものがいくつも存在するのであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明である旨を主張している(申立人意見書1の第3頁下から3行?第4頁第21行、申立人意見書2の第2頁第19行?第5頁第4行)。
しかしながら、引用文献1には、炭化アルミニウム及び炭化チタンを1000℃、1100℃、1200℃、1300℃及び1400℃の温度で塩素ガス雰囲気熱処理をすることしか記載されておらず、その他の温度で熱処理することを示唆する記載もないから、図8等においてプロットされた温度(1000℃、1100℃、1200℃、1300℃及び1400℃)以外の温度で塩素ガス雰囲気熱処理された炭化物由来炭素が記載されているとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

イ 本件発明4、9及び10について
本件発明4、9及び10は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記アに示した理由と同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるといえないし、多孔質炭素材料にパラジウムを担持させた合成反応用触媒に関する周知技術(上記3(4)及び(5)参照)を参酌しても、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。

(2)取消理由2について
本件発明1と引用2発明を対比すると、引用2発明の「X線回折による45°付近の回折ピークの半値幅が3.0°程度であ」ることは、本件特許発明1の「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であ」ることに相当する。
したがって、本件発明1と引用2発明とは、
「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下である多孔質炭素材料。」
の点で一致し、以下の相違点2で相違している。
(相違点2)
本件発明1では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」のに対して、引用2発明では、「BJH法で調べた細孔径が2?50nmのメソ孔容積が0.55ml/gであり、HK法で調べた細孔径が2nm未満のミクロ孔容量が0.12ml/gであ」り、これら値から算出した比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が4.58(=0.55/0.12)になる点。
そして、上記相違点2は、実質的なものであるから、本件発明1は、引用文献2に記載された発明(引用2発明)であるといえない。
また、引用文献2に記載されたその他の多孔質炭素を、引用文献2に記載された発明とした場合にも、それらのメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値は、本件発明1の「1.20以上1.53以下である」ことを満たさないから、本件発明1は、引用文献2に記載された発明といえない。
したがって、取消理由2に理由はない。

(3)取消理由3について
ア 本件発明1について
(ア)引用3発明との対比
引用3発明の「X線回折による45°付近の回折ピークの半値幅が0.5°程度であ」ることは、本件発明1の「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であ」ることに相当する。また、引用3発明の「結晶化メソ多孔質炭素」は、本件発明1の「多孔質炭素材料」に相当する。
したがって、本件発明1と引用3発明とは、
「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下である多孔質炭素材料。」
の点で一致し、以下の相違点3で相違している。
(相違点3)
本件発明1では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」のに対して、引用3発明では、BJH法により測定されるメソ孔容積の値も、HK法により測定されるマイクロ孔容積の値も明らかでなく、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値も明らかでない点。

(イ)相違点3の検討
引用3発明のHK法により測定されるマイクロ孔容積の値、及び、BJH法により測定されるメソ孔容積の値について検討すると、引用文献6の上記3(6)の記載によれば、HK法により測定される2μm以下のマイクロ孔容積は、液体窒素温度での窒素ガスの吸着等温線における相対圧力p/p_(0)が0.16のときの窒素吸着量であるといえるし、また、引用文献7の上記3(7)の記載によれば、BJH法により測定される2?50μmのメソ孔容積は、液体窒素温度での窒素ガスの吸着等温線における相対圧力p/p_(0)が0.16程度及び0.96程度のときのそれぞれの窒素吸着量の差であるといえるから、引用3発明の「Fig.4の液体窒素温度で測定した窒素ガスの吸着(下)及び脱着(上)の等温曲線」の吸着等温曲線から、2μm以下のマイクロ孔容積、及び、2?50μmのメソ孔容積を算出してみる。
まず、Fig.4に示された液体窒素温度で測定した窒素ガスの吸着(下)及び脱着(上)の等温曲線のうち、Fe-CMCの吸着等温曲線における相対圧力p/p_(0)が0.16及び0.96のときの窒素吸着容積は、下図のとおり、それぞれ、55cm^(3)/g程度、148cm^(3)/g程度であることが窺える。

そして、細孔内では吸着ガスの毛管凝縮現象が生じているため、引用3発明の液体窒素温度での窒素ガスの吸着等温線における相対圧力p/p_(0)が0.16のときの窒素吸着量(55cm^(3)/g)を、上記(1)ア(イ)での検討と同様に液体量に換算すると、0.085cm^(3)/gとなるから、引用3発明のHK法により測定されるマイクロ孔容積は0.085cm^(3)/g程度であるといえる。
また、引用3発明の液体窒素温度での窒素ガスの吸着等温線における相対圧力p/p_(0)が0.16及び0.96のときのそれぞれの窒素吸着量の差は、93cm^(3)/g(=148cm^(3)/g-55cm^(3)/g)となり、液体量に換算すると、0.144cm^(3)/gとなるから、引用3発明のBJH法により測定されるメソ孔容積は0.144cm^(3)/g程度であるといえる。
そうしてみると、引用3発明のメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値は、1.69(=0.144/0.085)となり、本件発明1の「1.20以上1.53以下である」ことを満たさないから、上記相違点3は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用文献3に記載された発明(引用3発明)であるといえない。

(ウ)引用文献1に記載されたその他の結晶化メソ多孔質炭素について
引用文献3には、上記3(3)ア(ア)?(カ)によれは、引用3発明の結晶化メソ多孔質炭素(Fe-CMC)を酸処理して鉄を除去した後に大気酸化した結晶化メソ多孔質炭素(OAFe-CMC)等の結晶化メソ多孔質炭素も記載されているところ、これらのメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値を、上記(イ)と同様に算出しても、その値は、本件発明1の「1.20以上1.53以下である」ことを満足しない。
したがって、引用文献3に記載された上記結晶化メソ多孔質炭素を、引用文献3に記載された発明とした場合にも、本件発明1は、引用文献3に記載された発明といえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記アに示した理由と同様の理由により、引用文献3に記載された発明であるといえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、取消理由3に理由はない。

5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項に係る申立理由について
ア 申立理由の概要
申立人は、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものあり、訂正前の請求項3に係る発明は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものあり、さらに、訂正前の請求項4、9及び10に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された各発明(あるいは、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明の組み合わせ)及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?4、9及び10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第5頁第19行?第31頁第7行、第31頁末行?第32頁第16行)。
(証拠方法)
甲第1号証:石川真二他,炭化物より創成されるナノサイズ細孔を有する炭素材料,SEIテクニカルレビュー,2016年1月,第188号,第139?144頁(引用文献1)
甲第2号証:特開2016-28014号公報(引用文献2)
甲第3号証:Tsutomu Suzuki et al., Production of Functional Carbon by Iron-Catalyzed Carbonization of Biomass - Effect of Washing with Acid Followed by Atmospheric Oxidation on the Electroconductivity of Crystallized Mesoporous Wood Carbon -, Transactions of the Materials Research Society of Japan, 2011年, vol.36, No.3, p.417-420(引用文献3証)
甲第4号証:特開2008-273816号公報
甲第5号証:特開2004-33892号公報

イ 本件発明1について
(ア)甲第1号証に記載された発明との対比、検討
甲第1号証(引用文献1)には、上記3(1)イで認定したとおり、引用1発明が記載されているといえる。
そして、本件発明1と引用1発明を対比すると、上記4(1)ア(ア)で検討したとおり、本件発明1では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」のに対して、引用1発明では、BJH法により測定されるメソ孔容積は0.56cc/g程度であるものの、HK法により測定されるマイクロ孔容積の値が明らかでなく、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値も明らかでない点(相違点1)で相違している。
そこで、上記相違点1の容易想到性について検討すると、甲第1号証には、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率を調整するとの技術思想は記載も示唆もされていない。
また、甲第4号証には、「多孔質炭素材料及びその製造方法、並びに、吸着剤、マスク、吸着シート及び担持体」(発明の名称)に関する技術的事項が記載され、甲第5号証には、「金属触媒担持用カーボン担体」(発明の名称)に関する技術的事項が記載されているが、多孔質炭素材料のメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)を1.20以上1.53以下とすることは、記載も示唆もされていない。
よって、引用1発明において、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)を1.20以上1.53以下とすることは、甲第4号証及び甲第5号証の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

(イ)甲第2号証に記載された発明との対比、検討
甲第2号証(引用文献2)には、上記3(2)イで認定したとおり、引用2発明が記載されているといえる。
そして、本件発明1と引用2発明を対比すると、上記4(2)で検討したとおり、本件発明1では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」のに対して、引用2発明では、「BJH法で調べた細孔径が2?50nmのメソ孔容積が0.55ml/gであり、HK法で調べた細孔径が2nm未満のミクロ孔容量が0.12ml/gであ」り、これら値から算出した比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が4.58(=0.55/0.12)になる点(相違点2)で相違している。
そこで、上記相違点2の容易想到性について検討すると、甲第2号証には、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率を調整するとの技術思想は記載も示唆もされていない。
よって、引用2発明において、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)を1.20以上1.53以下とすることは、甲第4号証及び甲第5号証の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

(ウ)甲第3号証に記載された発明との対比、検討
甲第3号証(引用文献3)には、上記3(3)イで認定したとおり、引用3発明が記載されているといえる。
そして、本件発明1と引用3発明を対比すると、上記4(3)ア(ア)で検討したとおり、本件発明1では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」のに対して、引用3発明では、BJH法により測定されるメソ孔容積の値も、HK法により測定されるマイクロ孔容積の値も明らかでなく、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値も明らかでない点(相違点3)で相違している。
そこで、上記相違点3の容易想到性について検討すると、甲第3号証には、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率を調整するとの技術思想は記載も示唆もされていない。
よって、引用3発明において、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)を1.20以上1.53以下とすることは、甲第4号証及び甲第5号証の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

(エ)申立人意見書2における申立人の主張について
申立人は、本件発明1の「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である」との特定事項における上限値に臨界的意義及び技術的意義が無いことを根拠にして、本件発明1は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明から容易に想到できる旨を主張している(申立人意見書2第5頁第5行?第7頁第6行)。
しかしながら、上記(ア)及び(ウ)で検討したとおり、いずれの甲号証にも、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率を調整するとの技術思想は記載も示唆もされていないから、申立人の上記主張は採用できない。

ウ 本件発明2、4、9及び10について
本件発明2、4、9及び10は、本件発明1の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記イに示した理由と同様の理由により、甲第1号証?甲第3号証に記載された各発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

エ 本件発明3について
甲第3号証(引用文献3)には、上記3(3)イで認定したとおり、引用3発明が記載されているといえる。
そして、本件発明3と引用3発明とを対比すると、引用3発明1の「X線回折による45°付近の回折ピークの半値幅が0.5°程度であ」ることは、本件発明3の「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であ」ることに相当する。また、引用3発明の「結晶化メソ多孔質炭素」は、本件発明3の「多孔質炭素材料」に相当する。
したがって、本件発明3と引用3発明とは、
「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下である多孔質炭素材料。」
の点で一致し、以下の相違点4及び5で相違している。
(相違点4)
本件発明3の多孔質炭素材料は、「籾殻由来」のものであるのに対して、引用3発明の結晶化メソ多孔質炭素は、「カラマツ粉末」を原料としている点。
(相違点5)
本件発明3では、「BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上」のに対して、引用3発明では、BJH法により測定されるメソ孔容積の値も、HK法により測定されるマイクロ孔容積の値も明らかでなく、メソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)の値も明らかでない点。
まず、相違点5について検討すると、上記4(3)ア(イ)で検討したとおり、引用3発明の「Fig.4の液体窒素温度で測定した窒素ガスの吸着(下)及び脱着(上)の等温曲線」の吸着等温曲線からマイクロ孔容積及びメソ孔容積を算出すると、引用3発明のHK法により測定されるマイクロ孔容積は0.085cm^(3)/g程度であり、BJH法により測定されるメソ孔容積は0.144cm^(3)/g程度であるといえ、これら値からメソ孔容積とマイクロ孔容積との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)を算出すると、1.69となるから、上記相違点5は、実質的な相違点といえない。
次に、相違点4について検討すると、甲第4号証に「ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m^(2)/グラム以上、ケイ素の含有率が1重量%以下、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm^(3)/グラム以上である多孔質炭素材料。」(請求項1)、「植物由来の材料は、籾殻である請求項1に記載の多孔質炭素材料。」(請求項5)、及び「植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、あるいは又・・・、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。・・・。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。」(段落【0018】)と記載されていることからして、多孔質炭素材料を製造するに際して、籾殻を使用することは、公知技術であるといえる。
しかしながら、多孔質炭素材料の物性は、使用する原料によって大きく異なるものであるから、引用3発明のX線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅、吸着等温曲線、及び、該吸着等温曲線から算出されるメソ孔容積やマイクロ孔容積等の物性を変更することなく、カラマツ粉末を籾殻に変更することは、当業者であっても容易になし得ることとはいえない。
また、甲第5号証の記載を参酌しても、引用3発明の物性を変更することなく、カラマツ粉末を籾殻に変更することは、当業者であっても容易になし得ることとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

オ 本件発明11?13について
本件発明11?13は、本件発明3の特定事項をさらに減縮したものであるから、上記エに示した理由と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

カ 小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する特許法第29条第2項に係る申立理由に理由はない。

(2)特許法第36条第6項第1号及び第2号に係る申立理由
申立人は、訂正前の請求項1に係る発明は、「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅」と「比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)」のみを規定した「多孔質炭素材料」であるところ、本件特許明細書には、原材料として「宮城産のもみ殻」を用いた例だけしか記載されておらず、他の材料の実施例が見当たらないため、原材料の特定がなされていない訂正前の請求項1に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているか明らかでなく、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるから、サポート要件を満たさないし、特許を受けるべき発明が明確に把握できないとし、訂正前の請求項1に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨を主張している(特許異議申立書第31頁第8?22行、第32頁第17?20行)。
この点について検討するに、本件発明1の課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】及び【0011】の記載からして、化学反応を効率的に行うことが可能な触媒の担体として有用な多孔質炭素材料を提供することといえる。そして、同段落【0012】には、「化学反応の効率や反応収率には、金属元素等を多孔質炭素材料に担持した触媒の電気伝導度と細孔分布とが大きく影響する・・・前記半値幅(2θ)が、4.2°以下であると、電気伝導性が高くなり、触媒担体中の電子の流れが速くなるので、担持した金属や金属化合物が再利用される速度が速くなり、反応性が向上すると考えられる。・・・即ち、多孔質炭素材料に担持される金属や金属化合物等の触媒粒子は、一般的に5nm以下と小さいため、マイクロ孔内に入り込み、その金属触媒粒子は、活性に寄与しないものとなる。そのため、相対的にメソ孔容積を大きくし、相対的にマイクロ孔容積を小さくした担体は、触媒用途として有効であると考えられる。」と記載されていることから、上記課題を解決するためには、「X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅」及び「比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)」の最適化が有効であることが理解でき、このことは、同【実施例】の記載からも確認できるから、これらについて最適化した本件発明1は、発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであって、サポート要件を満足するし、特許を受けるべき発明の範囲も明確である。
よって、申立人が主張する特許法第36条第6項第1号及び第2号に係る申立理由に理由はない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4、9?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4、9?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、
BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上1.53以下である、
ことを特徴とする多孔
質炭素材料。
【請求項2】
植物由来である、請求項1に記載の多孔質炭素材料。
【請求項3】
籾殻由来であり、
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、
BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である、
ことを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項4】
触媒用の担体である請求項1から2のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項5】
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、
ケイ素成分を含む植物由来の原材料から、前記ケイ素成分を酸処理又はアルカリ処理により取り除いた後、炭化処理を行い、
前記炭化処理の後に、賦活処理を行い、
前記賦活処理の後に熱処理を行うことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項6】
X線回折による回折ピーク(10X)(38°?49°)の半値幅(2θ)が、4.2°以下であり、BJH法により測定されるメソ孔容積(cm^(3)/g)と、HK法により測定されるマイクロ孔容積(cm^(3)/g)との比率(メソ孔容積/マイクロ孔容積)が、1.20以上である多孔質炭素材料を製造する多孔質炭素材料の製造方法であって、
ケイ素成分を含む植物由来の原材料の炭化処理を行った後に、得られた炭化物から前記ケイ素成分を酸処理又はアルカリ処理により取り除き、次に賦活処理を行い、
前記賦活処理の後に熱処理を行うことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理の温度が1,200℃以上である請求項5から6のいずれかに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項8】
前記炭化処理の温度が600℃以上である請求項5から7のいずれかに記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1から2、及び4のいずれかに記載の多孔質炭素材料と、前記多孔質炭素材料に担持された金属又は金属化合物とを有することを特徴とする合成反応用触媒。
【請求項10】
前記金属又は金属化合物が、パラジウムである請求項9に記載の合成反応用触媒。
【請求項11】
触媒用の担体である請求項3に記載の多孔質炭素材料。
【請求項12】
請求項3に記載の多孔質炭素材料と、前記多孔質炭素材料に担持された金属又は金属化合物とを有することを特徴とする合成反応用触媒。
【請求項13】
前記金属又は金属化合物が、パラジウムである請求項12に記載の合成反応用触媒。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-07 
出願番号 特願2016-187106(P2016-187106)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (C01B)
P 1 652・ 537- YAA (C01B)
P 1 652・ 121- YAA (C01B)
P 1 652・ 857- YAA (C01B)
P 1 652・ 851- YAA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神▲崎▼ 賢一  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 後藤 政博
宮澤 尚之
登録日 2018-12-14 
登録番号 特許第6450352号(P6450352)
権利者 デクセリアルズ株式会社
発明の名称 多孔質炭素材料、及びその製造方法、並びに合成反応用触媒  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 廣田 浩一  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 流 良広  
代理人 廣田 浩一  
代理人 流 良広  
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