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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
管理番号 1366066
異議申立番号 異議2019-700733  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-13 
確定日 2020-07-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6484698号発明「計測装置及び計測システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6484698号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7-9〕、3、4、5、6について訂正することを認める。 特許第6484698号の請求項7及び9に係る特許を維持する。 特許第6484698号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6484698号の請求項1?8に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)2月22日(優先権主張 平成27年2月24日 日本)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月22日にその特許権の設定登録がされ、同年3月13日に特許掲載公報が発行されたところ、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和元年9月13日に特許異議申立人森哲明(以下「申立人」という。)により請求項1、2、7に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、同年11月21日付けで取消理由が通知され、令和2年1月28日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、同年5月12日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年6月19日付けで意見書及び手続補正書の提出がされた。
なお、令和2年1月28日にされた訂正請求について、申立人に意見を提出する機会を与えたが、申立人からは、意見書の提出はされていない。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年1月28日付け訂正請求書及び訂正特許請求の範囲は、それぞれれ同年6月19日付け手続補正書により補正された(以下、補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)。
そして、本件訂正は、特許第6484698号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付され、令和2年6月19日付け手続補正により補正された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項1ないし訂正事項9からなる(なお、下線は、請求人が付したものである。)。
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の計測装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1又は2に記載の計測装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部と、
前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1又は2に記載の計測装置と、」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して、前記位置情報取得部によって取得された位置情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1又は2に記載の計測装置と、」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記撮影部が撮影した識別情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?4のいずれか一項に記載の計測装置と、」あるうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定し、
前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する
計測システム。」に訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?4のいずれか一項に記載の計測装置と、」あるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、
「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定し、
前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する
計測システム。」に訂正する。

コ 別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項3、4、5、6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

2 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1,2,7について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1,2,7について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 独立特許要件について
訂正事項3は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下4で詳述する。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 独立特許要件について
訂正事項4は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下4で詳述する。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 独立特許要件について
訂正事項5は第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、請求項5に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下4で詳述する。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

ウ 独立特許要件について
訂正事項6は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、請求項6に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下4で詳述する。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項7が請求項3又は4の記載を引用する記載であるところ、請求項4を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

さらに前記目的に加え、訂正事項7の訂正後の請求項7は、「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置」との記載により、訂正後の請求項7に係る発明における計測装置はセンサ端末と携帯端末とを備え、センサ端末が計測部と取得部と書換部と計測値を送信する通信部とを有することと、携帯端末がセンサ端末の通信部と通信する通信部と携帯電話通信部とを有することとを特定し、明確にするものである。すなわち、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、明細書記載の第2実施形態に基づいて導き出される構成である。この第2実施形態に係る説明として、段落【0036】には、「計測装置100は、センサ111を有するセンサ端末110と、携帯端末130とを備えている。」との記載がなされ、段落【0037】には、「センサ端末110は、センサ111と、センサ111を制御するMCU(Micro Control Unit)112と、Bluetooth通信部113とを備えている。」との記載がなされ、段落【0039】には、「携帯端末130は、携帯端末130を制御する制御部131と、タッチパネル(タッチスクリーンともいう)133と、携帯電話通信部134と、Bluetooth通信部135とを備えている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、「計測装置」を「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1,2,7について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、請求項8を削除するというものであるから、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、請求項8を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、請求項8を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ 独立特許要件について
訂正事項8は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、請求項8に係る訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになるところ、訂正事項8は、請求項8を削除する訂正であるから、独立特許要件を検討する対象が存在しない。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項7が請求項3又は4の記載を引用する記載であるところ、請求項3を引用しないものとした上で、請求項4を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、及び同ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
さらに前記目的に加え、訂正事項9の訂正後の請求項9は、「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置」との記載により、訂正後の請求項9に係る発明における計測装置はセンサ端末と携帯端末とを備え、センサ端末が計測部と取得部と書換部と計測値を送信する通信部とを有することと、携帯端末がセンサ端末の通信部と通信する通信部と携帯電話通信部とを有することとを特定し、明確にするものである。すなわち、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、明細書記載の第2実施形態に基づいて導き出される構成である。この第2実施形態に係る説明として、段落【0036】には、「計測装置100は、センサ111を有するセンサ端末110と、携帯端末130とを備えている。」との記載がなされ、段落【0037】には、「センサ端末110は、センサ111と、センサ111を制御するMCU(Micro Control Unit)112と、Bluetooth通信部113とを備えている。」との記載がなされ、段落【0039】には、「携帯端末130は、携帯端末130を制御する制御部131と、タッチパネル(タッチスクリーンともいう)133と、携帯電話通信部134と、Bluetooth通信部135とを備えている。」との記載がなされていることから、当該訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、「計測装置」を「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1,2,7について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項9に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1?8について、請求項2?8はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1?9によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?8に対応する訂正後の請求項1?9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 独立特許要件について
訂正事項3、4、5、6は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、特許異議の申立てがされていない請求項3、4、5、6に係る訂正事項3、4、5、6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。

(1)本件訂正発明
訂正後の請求項3、4、5、6に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明3」、「本件訂正発明4」、「本件訂正発明5」及び「本件訂正発明6」という。)は、本件訂正後の請求項3、4、5、6に記載された、次のとおりのものである。
ア 本件訂正発明3
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。

イ 本件訂正発明4
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部と、
前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備
え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。

ウ 本件訂正発明5
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して、前記位置情報取得部によって取得された位置情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。

エ 本件訂正発明6
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記撮影部が撮影した識別情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。

(2)申立人が異議申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2010-185877号公報 (以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2008-26245号公報 (以下「甲2」という。)
甲第3号証:特表2006-501472号公報(以下「甲3」という。)
申立人は、本件特許の請求項1に係る発明について、甲1を主引例とする新規性及び進歩性の取消理由を、甲3を主引例とする進歩性の取消理由を主張している。
そして、本件訂正発明3、4、5、6は、訂正前の請求項1に記載された構成を全て含み、さらに限定した発明であることから、以下、新規性及び進歩性に係る独立特許要件を検討する。
なお、サポート要件及び明確性要件についての取消理由が通知されているが、訂正前の請求項7に記載された発明に対するものであり、本件訂正発明3、4、5、6とは関係するものではない。

(3)甲1
ア 甲1には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様。)。
(甲1-1)
「【請求項1】
料理用の油の品質を監視するシステムであって、
前記システムは、
料理用の油の総極性物質の比率を検出する、少なくとも1つのセンサと、
前記検出された比率を転送する、少なくとも1つの送信器と、
前記センサから離れて配置された、データ取得システムと
を備え、
前記データ取得システムは、前記転送された検出比率を受信するように構成された受信器を備えることを特徴とするシステム。
・・・
【請求項10】
所定のしきい値を超える前記検出比率で起動される、アラームをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
・・・
【請求項15】
前記センサは、ローカルメモリを備え、かつ、
前記検出比率を検出するのに使用可能なパラメータが前記ローカルメモリに格納可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記パラメータは、前記受信器及び前記送信器を介して、前記データ取得システムによって調整されることを特徴とする請求項15に記載のシステム。」

(甲1-2)
「【0001】
料理用の油の品質を測定するための従来技術において、デバイスが既知である。例えば、米国特許第6,822,461号明細書を参照すれば、料理用の油の極性成分(polar component)の量の指標である絶縁定数の変化を評価するために、料理用の油の容量性測定(capacitive measurement)を行うためのセンサが知られている。料理用の油は、使用を通じて、極性成分の合成蓄積で酸化する。過度の量の極性成分は、食品の風味を劣化させ、かつ、健康リスクの可能性さえ生じさせる。その結果、極性成分のレベル(総極性物質(total polar materials, TPM)の比率と呼ばれる)は、料理用の油の品質の指標である。」

(甲1-3)
「【0006】
【図1】本発明に従って構成されたシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
システム10は、料理用の油12の品質を監視するために設けられる。料理用の油12は使用中に監視され、料理用の油12は、酸化反応を生じる上昇した温度の影響下にある。酸化の結果として、総極性物質(TPM)のレベルが上昇する。過度に高レベルの総極性物質(料理用の油の合計量に対する総極性物質の比率として判定することができる)は、劣化した品質及び健康リスクの可能性を導く。システム10を使用して、料理用の油12の品質を監視し、料理用の油12を変えなければならない場合についての指標を提供してもよい。料理用の油12の時期の早い取替えは非効率及び無駄な消費を生じ、一方では、過度に使用された1バッチの料理用の油12は、上記したように、劣化した品質及び健康リスクを生じる。
【0008】
当業者には理解されるように、料理用の油12は、どんなタイプのナタネ油、落花生油、ココナツ油、及びそれらの組み合わせを含んでいるが、これに限定されない。
【0009】
システム10は、料理用の油12の総極性物質の比率を検出するための1又は複数のセンサ14を備えている。センサ14はどんな既知のタイプのものでもよい。好ましくは、センサ14は、米国特許第6,822,461号明細書(その全体の内容は本明細書に引用により組み込まれる)に開示された容量性タイプである。特に、米国特許第6,822,461号明細書は、総極性物質のレベルを検出するための容量性センサを開示している。センサは、テスト中に、料理用の油の温度を測定するためのゲージを備えている。料理用の油の温度を使用して、より正確な読み取りが達成されるように、測定されたキャパシタンスを調整する。次いで、この調整された読み取りを使用して、テストサンプルの総極性物質含有量を決定する。ここで、センサ14は、料理用の油12の温度を測定するように構成してもよい。
【0010】
1又は複数の送信器16がセンサ14のために設けられている。送信器16は、センサ14によって測定された総極性物質の検出レベルに関するデータを転送するように構成される。送信器16は、センサ14に配線されてもよく(例えば、有線電気接続18を介して)、又は、センサ14とワイヤレス接続してもよい(信号19を介して)(無線(radio)又はセルラーなどのどんな1方向又は2方向のワイヤレス信号であってもよい)。送信器16は、センサ14からは離れて設けてもよく、かつ/又は、そこに接続してもよい(例えば、センサ14内に収容される)。このような方法で、測定されたデータを、送信器16によって即座に転送してもよい。電力停止又は他の阻害の場合には、ローカルメモリ20(例えば、フラッシュドライブ又はEEPROM)が、センサ14のために設けられて、限定された数のテスト結果を格納してもよい。ローカルメモリ20はセンサ14上に直接配置してもよい。加えて、又は、代わりに、クレードル又は他のドッキングデバイス22を設けてもよい(使用後に、センサ14がマウントされる)。クレードル22は送信器16を含んでもよい。ジャック又は他の接続構成がセンサ14上に設けられ、かつ、クレードル22に、センサ14と送信器16との間の直接接続を可能にさせる。この構成は、センサ14がクレードル22にドッキングされるまで、測定されたデータをセンサ14上に保持しなければならないので、ローカルメモリ20の使用を要求し、その結果、送信器16との接続を可能にする。さらに代わりに、送信器16をセンサ14上に直接構成してもよい。センサ14にはディスプレイが設けられて、テスト結果をリアルタイムに表示させることができる。
【0011】
図1に示されたように、システム10は、監視される料理用の油12のバッチ数によって、センサ14及び送信器16をいくつでも備えてもよい。料理用の油12は、相当に離れた距離を含む、さまざまなロケーションにあってもよい(例えば、異なった都市の異なったレストランロケーション)。また、複数のロケーションの料理用の油12は、1つの施設で離れて広がるが共通のロケーションにあってもよい(例えば、大規模な産業ベーキング施設)。送信器16によって、料理用の油12の各ロケーションで取得されたデータが、評価のために、中心ロケーションに転送されることを可能にする。
【0012】
少なくとも1つの受信器24が設けられて、1又は複数の送信器16によって転送されるデータを受信するように構成される(特に、転送された総極性物質の比率)。送信器16及び受信器24は、既知の構成を使用することで共にリンクしてもよい(イーサネット(登録商標)、ラージエリアネットワーク(LAN)、又は、ワイドエリアネットワーク(WAN)などのネットワーク構成23、又は、無線(radio)又はセルラー技術を使用するなどのワイヤレス通信によって転送される信号25を介することを含む)。受信器24は追加的な機構を含むように構成してもよい。また、送信器16と受信器24との間で複数のワイヤレス接続が使用される場合、受信器24は、さらなる処理に先立って、複数の送信器16からのワイヤレス信号25を、インターセプト及びキュー処理するように構成された、ルータ26を備えてもよい。さらに、ルータ26は、さらなる処理のために、規則的な順で受信した信号25を転送するように構成してもよい。加えて、受信器24は、ネットワーク23(例えば、イーサネット(登録商標))上で転送するのに適した信号への変換で、ワイヤレス信号25(例えば、無線信号(radio signal))をインターセプトするのに利用される、コンバータ28を備えてもよい。受信器24は、ルータ26、及び/又は、コンバータ28機構(複数可)の両方で構成してもよい。
【0013】
データ取得システム30が設けられ、すべての送信器16からの信号を受信するために、マスタ受信器32を備えてもよい。信号は、受信器24を介して転送され、かつ、ルータ26及び/又はコンバータ28によって処理してもよい。加えて、マスタ受信器32は、一部又はすべての送信器16から信号を直接受信してもよい。マスタ受信器32には、ルータ26及び/又はコンバータ機構(複数可)を設けてもよい。
【0014】
CPU又は他の計算デバイス34が設けられ、マスタ受信器32に接続36(例えば、USBケーブル)を通じてリンクしてもよい。マスタ受信器32によって受信されたデータは、監視及び/又は分析のために、CPU34に伝えられる。CPUは収集されたデータを格納してもよい。ディスプレイ38が設けられ、異なったロケーションでセンサ14によって測定された総極性物質のさまざまなレベルを表示することができる(例えば、図又は表の表示)。加えて、蓄積されたデータを操作し、かつ、選択的に、システム10のさまざまなコンポーネントを制御するために、ユーザインターフェース40(例えば、キーボード、マウス、タッチパッド、タッチスクリーンなど)をCPU34に関連して使用してもよい。システム10の制御を可能にするために、送信器16、受信器24、及びマスタ受信器32は、2方向デバイスであるように構成してもよく、メッセージの転送及び受信の両方を行うように構成してもよい。ユーザインターフェース40の使用を通じて、センサ14のパラメータを調整してもよい(例えば、温度補正パラメータ)(例えば、測定されたキャパシタンスを補正するのに使用される)。さらに、ユーザインターフェース40を使用して、異なるタイプの料理用の油12に対して調整するためにパラメータを変更してもよい(例えば、ピーナツ油からココナツ油への変更のために調整する)。ユーザインターフェース40は、パラメータ、又は、センサ14のローカルメモリ20に配置された他の機構を直接変更するように構成してもよい。
【0015】
好ましくは、送信器16、受信器24、及びマスタ受信器32は、2方向信号転送及び受信を使用して、クロストークエラー、転送エラー、及びセキュリティ懸念を最小化する。2方向信号転送によって、データ転送に先立って(及び/又は、定期的にその間に)信号の「ハンドシェーク」を定義することができる。
【0016】
アラーム42をシステム10の1又は複数のロケーションに配置して、総極性物質の所定のしきい値の量が超過されたことを示してもよい。アラーム42は、センサ14、送信器16、受信器24、マスタ受信器32、及び/又は、CPU34のうちの1又は複数に配置してもよい。アラーム42は、可聴アラーム、可視アラーム、及び/又は、電子通知(例えば、電子メール又はSMSテキストメッセージ)のどんな組合せであってもよい。アラーム42は、識別されたバッチの料理用の油12を取り替えなければならないことを示す。
【0017】
当業者に理解されるように、センサ14は、ハンドヘルド、ポータブルデバイスであってもよく、又は、料理用の油12の中に入れられたデバイス44であるように構成してもよい。センサ12は、定期的なメンテナンス及びキャリブレーションを必要としてもよい。」

(甲1-4)【図1】
【図1】には、データ取得システム30を示す枠内にマスタ受信器32、CPU34、ディスプレイ38、ユーザインターフェース40が含まれていることが記載されている。

イ 甲1に記載された発明
上記(甲1-1)ないし(甲1-4)の記載から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、参考のため、それぞれの構成の後の括弧内に、引用根拠箇所を示す。)。

「料理用の油の品質を監視するシステムであって、
前記システムは、
料理用の油の総極性物質の比率を検出する、少なくとも1つのセンサと、
前記検出された比率を転送する、少なくとも1つの送信器と、
前記センサから離れて配置された、データ取得システムと
を備え、
前記データ取得システムは、前記転送された検出比率を受信するように構成された受信器を備え、(請求項1)
所定のしきい値を超える前記検出比率で起動される、アラームをセンサなどに備え、(請求項10、【0016】)
前記センサは、ローカルメモリを備え、かつ、
前記検出比率を検出するのに使用可能なパラメータが前記ローカルメモリに格納可能であり、(請求項15)
前記パラメータは、前記受信器及び前記送信器を介して、前記データ取得システムによって調整され(請求項16)
前記送信器及び前記受信器は、ネットワーク構成又はワイヤレス通信を使用することで共にリンクし、(【0012】)
前記センサは、ハンドヘルド、ポータブルデバイスであって(【0017】)、ディスプレイが設けられており、(【0010】)
データ取得システムに、マスタ受信器、CPU、ディスプレイ、ユーザインターフェースが含まれ、(【図1】)
前記マスタ受信器は、すべての送信器からの信号を受信し、(【0013】)
送信器16、受信器24、及びマスタ受信器32は、2方向デバイスであるように構成され、(【0014】)、
前記マスタ受信器によって受信されたデータは、監視及び/又は分析のために、前記CPUに伝えられ、前記CPUは収集されたデータを格納し、
前記ディスプレイは、測定された総極性物質のさまざまなレベルを表示し、
前記ユーザインターフェースは、蓄積されたデータを操作し、かつ、選択的に、システムのさまざまなコンポーネントを制御するためのものである(【0014】)
システム。」

(4)甲2
ア 甲2には、以下の記載がある。
(甲2-1)
「【0015】
このマイコンメータ1は、ガス供給先9毎に設けられ、その各個のマイコンメータ1は、集中監視センタ7に電話回線等で接続されており、制御部2で異常発生等の判定結果がなされると、その情報が集中監視センタ7に伝達され、集中監視センタ7ではその情報に基づいてガス供給先9に対して適切な対応を行う。
【0016】
上記の制御部2はマイクロコンピュータを中心に構成され、流量センサ4で検知したガス流量、また圧力センサ3で検知したガス圧力等に基づいて、ガス供給先9でのガス使用状態を推定し、ガス供給先9において適正にガスが使用されているか否かの判定を行う。
【0017】
この制御部2は、記憶手段21を備え、記憶手段21に記憶している各種のプログラムやパラメータに従って動作し、上記のガス使用状態の管理を行う。
【0018】
記憶手段21は、ガス使用状態を管理するための、各種の基本項目管理用プログラムや、基本項目以外の各種の高機能保安用プログラム、またこれらのプログラムで使用するパラメータ情報を記憶する。
【0019】
この記憶手段21は、外部からのアクセスに応じて、新たな書き込みや書き換え、削除が行えるようになっている。すなわち、集中監視センタ7から記憶手段21へ所定の通信網8、例えばインターネット経由でアクセスがあると、制御部2のインターフェース22を介して、記憶手段21への新たなプログラムやパラメータ情報の書き込みや、既に記憶手段21に書き込まれているプログラムやパラメータ情報の書き換え、削除が可能となる。
【0020】
流量センサ4を、ガス流路に一対の超音波振動子が配された超音波計測部として構成し、その超音波計測部からの信号に基づいて、ガス流路を流れるガスの流量およびガスの音速を算出し、そのガス流量およびガス音速からガスの種類を特定する手法が公知となっている(特許第3638252号公報参照)。本発明では、流量センサ4に超音波振動子を用いることで、マイコンメータ1にガス種別判別機能を持たせ、その判別したガス種別(例えば、都市ガスかLPガスか)を集中監視センタ7に通信網を経由して伝達し、集中監視センタ7では当該マイコンメータ1にアクセスしてそのガス種別に応じて予め用意されている各種プログラムやパラメータをそのマイコンメータ1の記憶手段21に書き込むようにすることもできる。」

(甲2-2)
「【0035】
このように、この発明のマイコンメータ1では、記憶手段21に、各種プログ
ラムやパラメータ情報を記憶し、外部からのアクセスに応じて、記憶手段21へのプログラムやパラメータ情報の新たな書き込み、並びに既に書き込まれているプログラムやパラメータ情報の書き換えおよび削除を可能とした。したがって、例えばマイコンメータ1に、CO2防止プログラム21gのような高機能を持たせたい世帯では、設置後にマイコンメータ1を交換することなくその要望に容易に応じることができる。また、設置場所が寒冷地であるか、温暖地であるか、また世界の各地の状況に応じて、必要なプログラムやパラメータを書き込むことができ、汎用性に富んだものとすることができる。また、設置後に家族構成が変わってもそれに適切に対応することができる。また、高齢化した世帯では、複雑で高機能のマイコンメータは不要であり、基本機能だけで満足するものであり、そのような状況にも適切に対応することができる。」

イ 以上のことから、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている(なお、参考のため、それぞれの構成の後の括弧内に、引用根拠箇所を示す。)。

「マイコンメータ1であって、
マイコンメータ1は、ガス供給先9毎に設けられ、
その各個のマイコンメータ1は、集中監視センタ7に電話回線等で接続されており、制御部2で異常発生等の判定結果がなされると、その情報が集中監視センタ7に伝達され、(【0015】)
集中監視センタ7から記憶手段21へ所定の通信網8、例えばインターネット経由でアクセスし、制御部2のインターフェース22を介して、既に記憶手段21に書き込まれている、(【0019】)
ガス種別に応じて予め用意されている各種プログラムやパラメータや、(【0020】)
設置場所や状況に応じて必要なプログラムやパラメータなどの情報を(【0035】)書き換える(【0019】)
マイコンメータ1。」

(5)甲3
ア 甲3には、以下の記載がある。
(甲3-1)
「【請求項13】
前記部材が結合される流体は、潤滑油、トランスミッション油、油圧作動油、変圧器油、金属工作油、料理油、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサー装置。」

(甲3-2)
「【0002】
油や燃料などの流体は、しばしば、運転機器を潤滑及び冷却する要素として使用されると共に、可動面に発生した粒状物を取り除くためにも使用される。正常に運転している機器の内部を循環する流体は、熱ストレス及び酸化ストレスを受けると共に、広範囲の汚染を受けて、流体の状態はゆっくりと劣化し、つまり、流体の有効寿命は短くなる。劣悪状態の流体によって機器が損傷することを確実に防ぐために、運転時間や、走行距離、その他の運転パラメータに基づいて、定期的なスケジュールに従って、流体は交換される。同一のタイプの機器ならば、すべての機器において同じ速度で作動流体の状態が劣化するというわけではないので、有効寿命の終わりを越えた循環流体の使用を確実に防ぐため、特定の機器の運転状態に無関係に、スケジュールは控えめになっている。時には、摩耗又は破損した部品によって、また、外力や汚染物によって、機器の運転が異常状態になって、循環する流体の酸化及び/又は汚染を加速させることがある。こうして生じた流体状態の劣化が検出されなければ、流体の有効寿命が尽きた後に、さらに部品が破損したり機器が故障したりするだろう。従って、有効寿命が尽きる前に確実に流体を交換するために、また、異常運転している機器を検出して、さらに部品が破損したり機器が故障したりすることを防ぐために、定期的に流体を完全に分析して、流体の状態を監視すべきである。
【0003】
しかしながら、機器が遠隔地にあるとか、機器のデザインのためとか、保守作業員が不足しているとか、及び/又は、油分析プログラムを実行するコストなどといった原因のために、ほとんどの運転機器において、頻繁な流体のサンプリングを行うことは非現実的である。さらに、内部部品が発火したとか、シールが破損したなど、ある種の異常運転状態においては、これらを直ちに検出して、機器の故障を防ぐ必要があるが、こうした状態は、定期的なサンプリングをいくら頻繁に行っても監視できるものではない。
・・・
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明による方法及び装置では、流体について、多数のパラメータを測定することで、流体の状態を監視する。本発明においては、複数のセンサーを使用して、異なる温度において、及び、異なる流体処理の後において、流体について、蒸気特性と液体特性とを測定する。これらの測定値から、流体の状態を判断できる。
本発明のひとつの実施形態によれば、流体の状態を監視するためのセンサー装置であって、このセンサー装置が、部材と、流体の液体パラメータを測定するための部材に結合された複数の液体センサーと、液体の蒸気パラメータを測定するための部材に結合された複数の蒸気センサーと、を備え、複数の液体センサーと複数の蒸気センサーとは互いに離間させて配置されていて、複数の蒸気センサーが液体に接触しないようになっているようなセンサー装置が提供される。」

(甲3-3)
【0014】
図2及び図3を参照すると、センサー装置10における第1の部材端12aには、電子装置40が結合されている。電子装置40は、センサー20及び30に電気的に接続されていて、流体の総合的な状態及び流体のレベルを示し、または、変形例としては、ユーザが関心をもつ特定の劣化/汚染のメカニズムを示すも
のになっている。電子装置40は、センサのための電子回路41と、読み出し表示器42と、リセットボタン44とを含んでいる。電子回路41は、中央演算処理装置(CPU)62と、これに電源を供給する電源60と、データポート66と、表示装置72とを含んでいる。表示装置72は、表示器ドライバー68と、表示器42とを含んでいる。電子回路41は、監視される劣化/汚染のメカニズムに基づいたアルゴリズムと、蒸気センサー30及び液体センサー20の出力から得られる測定値とを用いて、流体の状態や流体のレベルを計算する。CPU62は、メモリ64に格納されているアルゴリズムと、センサー20及び/又は30によってデータポート66から供給される情報とを用いて、監視中の状態について、測定値を計算する。データポート66は、センサー20及び/又は30からのアナログデータを、CPU62が扱うのに適するように、フィルタリングして、デジタル情報に変換するための、必要な電子回路を含んでいることを理解されたい。CPU62は、計算された測定値を表示器ドライバー68に伝える。表示器ドライバー68は、かかる測定値を、ユーザが視認できる態様に変換する。CPU62によって実行される計算には、有効寿命の終了による又は異常な運転状態による、加速的な酸化劣化についての判断や、クーラント/水による汚染度、すすの蓄積度、粘性変化、加速的な摩耗、発火やホットスポットによる添加物の熱的絶縁破壊、及び流体のレベルが含まれる。
【0015】
電子回路41の電源は、外部の電源や、専用のバッテリーによっても供給することができることを理解されたい。さらに、必要があるならば、外部のコンピュータ70からデータポート66を介して、コンピュータのアルゴリズムその他の初期化データをメモリ64に読み込むこともできる。さらに、必要があるならば、データポート66を介して、CPU62、センサー20及び/又は30、及び/又はメモリ64から、外部のコンピュータ70へ直接、センサーのデータや計算された測定値を与えることもできる。例えば、コンピュータ70は、ケーブル結合や、ネットワーク結合、又は無線ワイヤレスなどのワイヤレス技術などを介して、電子回路41に通信可能に接続することができる。
リセットボタン44は、表示装置の任意の箇所に設けられ、流体の交換時にはこれを押して、記録中の時間をリセットすると共に、読取値の突然の変化は流体の交換に起因するものであることを装置に知らせる。電子装置40を部材12に取り付けたセンサー装置10によれば、ユーザは迅速かつ容易に流体の状態を確認することができる。図示した電子装置40は、部材12における第1の部材端12aに結合されているけれども、表示装置40は、部材12において、ユーザに都合が良い任意の場所に取り付けることができることを理解されたい。」

(甲3-4)
「【0019】
異なる流体温度についてのセンサーの測定値を得ることで、センサー装置10の状態監視能力をさらに高めることができる。例えば、新鮮な油をエンジンに加えた後には、新鮮な油の温度に対して、センサーの出力は直線的に一貫して大きくなって、流体が酸化していないことを示す。油が酸化されると、液体センサー20の出力は温度に対して指数関数的に増加する。従って、新鮮な油においては温度上昇に対して正常な直線的な増加を示すが、酸化した油においては、酸化度に比例して、かかる直線的な増加からの逸脱が大きくなる。流体を交換した後には、センサーの出力の増加は、新鮮な油における設定温度の値になる。得られた出力を、前回の新鮮な油の読取値と比較して、交換に使用された油が適切なものであることを確認する。出力の測定値を計算するためのアルゴリズムはデータから作成される。」

イ 甲3に記載された発明
上記(甲3-1)ないし(甲3-3)の記載から、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、参考のため、それぞれの構成の後の括弧内に、引用根拠箇所を示す。)。

「油や燃料などの流体の状態を監視する装置であって、(【0002】、【0005】)
センサー装置10には、電子装置40が結合され、
電子装置40は、センサーに電気的に接続されていて、
電子装置40は、センサのための電子回路41と、読み出し表示器42を含んでおり、
電子回路41は、中央演算処理装置(CPU)62と、これに電源を供給する電源60と、データポート66と、表示装置72とを含んでおり、
電子回路41は、監視される劣化/汚染のメカニズムに基づいたアルゴリズムと、蒸気センサー30及び液体センサー20の出力から得られる測定値とを用いて、流体の状態や流体のレベルを計算し、
CPU62は、メモリ64に格納されているアルゴリズムと、センサー20及び/又は30によってデータポート66から供給される情報とを用いて、監視中の状態について、測定値を計算し、
CPU62によって実行される計算には、有効寿命の終了による又は異常な運転状態による、加速的な酸化劣化についての判断などが含まれ、(【0014】)
ケーブル結合や、ネットワーク結合、又は無線ワイヤレスなどのワイヤレス技術などを介して、電子回路41に通信可能に接続し、(【0015】)
外部のコンピュータ70からデータポート66を介して、コンピュータのアルゴリズムその他の初期化データをメモリ64に読み込み、
データポート66を介して、CPU62、センサー20及び/又は30、及び/又はメモリ64から、外部のコンピュータ70へ直接、センサーのデータや計算された測定値を与える(【0015】)
装置。」

(6)引用文献1ないし3
ア 特開2008-176403号公報(以下「引用文献1」という。)
引用文献1には、「遠隔監視・診断システム」(発明の名称)において、
「【0022】
最も簡単な診断は、予め監視対象の状態を表す監視データ(例えばセンサ計測値、操作指令値)に対するしきい値が設定され、1種類もしくは複数種類の監視データがしきい値を超えたとき、警報もしくは異常通報を表す診断結果を出力するアルゴリズムが一例である。複数種類の監視データを利用する場合、各しきい値を用いて、監視データ判定用の式を作成することも考えられる。例えば複数種類の監視データが1つのしきい値を超えたときに軽レベル異常、2つのしきい値を超えたとき中レベル異常、3つ以上のしきい値を超えたとき重レベル異常等と診断するごときである。」
「【0024】
前記監視中央センタ2は、移動プログラム作成部12、移動プログラム送信部13及び診断結果等受信部14を備えている。
【0025】
移動プログラム作成部12は、分析・診断アルゴリズム作成部11で作成された診断アルゴリズムのもとに、監視対象の監視診断部4-1,…にて動作する診断用移動プログラムを作成する。診断用移動プログラムは、純粋にアルゴリズムを実行するためのプログラムに、入力データ(移動プログラム等)を参照するためのサブルーチン、診断結果等を出力するためのサブルーチン、OSなどの他のプログラムとやり取りするためのサブルーチン等を追加することにより作成する。診断用移動プログラムの出力形式としては、監視対象の監視診断部4で実行可能なものであれば、どのような形式でも良い。例えばそのまま実行可能なプログラムファイル、Webページを作成する記述言語やSoap(Simple object access protocol)に基づいて作成されたファイルであってもよい。
【0026】
移動プログラム送信部13は、移動プログラム作成部12で作成された診断用移動プログラムを対応する監視対象の監視診断部例えば4-1に送信する。移動プログラムの送信は、通信ネットワーク3を介して送信される。
【0027】
通信ネットワーク3は、イントラネットやインターネットが使用される。通信ネットワーク3を利用して送信する場合、最も簡単な例として、TCP/IPプロトコルやSNMPを使用し送信する。」
「【0034】
また、各監視対象の処理形態や処理能力に応じた診断用移動プログラムを作成でき、遠隔監視・診断システムの融通性、信頼性を向上でき、監視対象の交換や変更に十分に対応させることができる。」が記載されている。

以上の記載事項から、引用文献1には、
「遠隔監視・診断システムにおいて、
センサ計測値がしきい値を超えたとき、警報もしくは異常通報を表す診断結果を出力するアルゴリズムを実行するためのプログラムを、
通信ネットワークを介して監視対象の監視診断部に送信し、
監視対象の交換や変更に十分に対応させること。」が記載されていると認められる。

イ 特開2009-181502号公報(以下「引用文献2」という。)
引用文献2には、「遠隔監視・診断システム」(発明の名称)において、
「【0014】
(システムの構成)
遠隔監視・診断システムは大別して、図1に示すように、中央システム(中央監視システム)10と、この中央システム10とネットワーク9を介して接続されるローカル端末11とから構成される。ローカル端末11は、中央システム10から遠隔地に設置されている監視・診断対象機器100に対する監視・診断処理を実行する。通常では、1台の中央システム10に対して、複数のローカル端末11がネットワーク9を介して接続されている(図2を参照)。」
「【0016】
中央システム10は、エリア分割構成作成部1と、代表監視・診断対象側ローカル端末候補決定部(以下、代表ローカル端末候補決定部と略す)2と、ローカル端末用プログラム作成部3と、ローカル端末用プログラム検証・評価部4と、プログラム送信部5と、監視・診断結果データ処理部(以下、データ処理部と略す)6と、監視診断結果受信部(以下、受信部と略す)7と、監視・診断結果表示部(以下、表示部と略す)8とを備えた構成である。
【0017】
ローカル端末11は、ローカル端末用プログラム受信部12と、監視・診断プログラム実行部13と、監視・診断結果送信部14と、自動災害検知部15と、災害時処理開始指令受信部16と、災害時処理プログラム実行部18とを有する。」
「【0023】
ローカル端末用プログラム作成部3は、ローカル端末11にて使用されるローカル端末用プログラムを作成する。本実施形態では、ローカル端末用プログラムには、監視・診断用プログラムと災害時処理プログラムが含まれる。ローカル端末用プログラム作成部3は、監視・診断アルゴリズムを実行する監視・診断用プログラムを、移動可能なマルチエージェントなどを使用する移動プログラムとして作成する。なお、災害時処理プログラムに含まれる災害時保守情報収集用移動プログラム等については、後述する。
【0024】
ここで、通常のプログラムソースコードをコンパイルして実行可能形式にしたものやスクリプト的なコードの場合は、ローカル端末11で実行可能な形態で、監視・診断処理を行うプログラムを作成すればよい。最も簡単な監視・診断プログラムとしては、例えば“異常を判断する閾値を設定し、これの閾値を超えた場合を異常状態と判断し、異常発報する”などのアルゴリズムが考えられる。」
「【0032】
なお、プログラム送信部5からはプログラムを送信する場合を説明したが、プログラム自体の変更がなく、パラメータのみの変更でよい場合には、プログラム送信部5からはパラメータのみを送信する動作でもよい。即ち、監視・診断プログラムの構成がパラメータのみの変更の反映が可能な場合(パラメータを別ファイルとしてある等)は、パラメータのみを送付して、パラメータのみの変更を反映することで監視・診断する形態も構成可能である。」が記載されている。

以上の記載事項から、引用文献2には、
「中央システム(中央監視システム)10と、この中央システム10とネットワーク9を介して接続されるローカル端末11とから構成される遠隔監視・診断システムにおいて、
中央システム10は、ローカル端末用プログラム作成部3と、プログラム送信部5と、監視診断結果受信部などを備えた構成であり、
ローカル端末11は、ローカル端末用プログラム受信部12と、監視・診断プログラム実行部13と、監視・診断結果送信部14などを有し、
ローカル端末用プログラムには、監視・診断用プログラムが含まれ、
監視・診断プログラムとしては、“異常を判断する閾値を設定し、これの閾値を超えた場合を異常状態と判断し、異常発報する”アルゴリズムである
遠隔監視・診断システム。」の発明において、
「プログラム自体の変更がなく、パラメータのみの変更でよい場合には、プログラム送信部5からはパラメータのみを送信する動作でもよい。」ことが記載されていると認められる。

ウ 特開2011-9497号公報(以下「引用文献3」という。)
引用文献3には、「油入電気機器の異常監視システム」(発明の名称)において、
「【0001】
本発明は、内部に絶縁油を密閉的に収容する油入電気機器、例えば油入変圧器等の異常を遠隔地より監視する異常監視システムに関する。」
「【0022】
サーバ403は、また、HDD415に油温上限値定義データ431(図8参照)、外気温度係数定義データ441(図9参照)、及び管理テーブル451(図3参照)を記憶保存している。更に、サーバ403は、管理システム401が受信した個々の油入変圧器11における物理量のセンシング値ログを記憶保存するためのセンシング値ログファイル461(図4参照)、そして、個々の油入変圧器11における警告ログを記憶保存するための警告ログファイル471(図5参照)も、HDD415に記憶保存している。もっとも、これらの各種のデータ431、441、451、461、471の全部又は一部は、構内ネットワーク406を介してアクセス可能な別途の記憶装置(図示せず)に記憶保存されていても良いことは言うまでもない。」
「【0030】
また、絶縁油に水分が混入したり酸化が進んだりした場合には、絶縁破壊が進み、油入変圧器11の内圧が高まる。油入変圧器11の内圧が高まると、油温が上昇傾向となる。」
「【0040】
その後、サーバ403は、管理システム401で受信判定したデータ中継機201からのセンシング値に含まれている絶縁油の油温の値が規定バンド幅内に収まっているかどうかを判定する。この場合、規定バンド幅の上限値は、管理テーブル451(図3参照)の規定バンド幅の上限値に設定されている値を基準として参照する。また、サーバ403は、この際、管理システム401で受信判定したデータ中継機201からのセンシング値に含まれている外気温度の値を参照して外気温度係数定義データ441から係数値を検索し、この係数値を管理テーブル451(図3参照)の規定バンド幅の上限値に設定されている値に掛け合わせる。
【0041】
サーバ403は、警告フラグが1でないかを確認し(ステップS406のN)、処理終了まで(ステップS407のY)、ステップS401以降の処理を繰り返す。
【0042】
これに対して、サーバ403は、絶縁油の油温の値が規定バンド幅内に収まっていないと判定した場合(ステップS405のN)、警告フラグを1に設定し(ステップS408)、警告報知を実行し(ステップS409)、管理テーブル451及び警告ログファイル471に警告情報をロギングする(ステップS410)。警告報知は、サーバ403に接続されている表示デバイス416に警告表示を行なったり、構内ネットワーク406に接続されているクライアントPC405に警告情報を送信してクライアントPC405に警告報知を実行させるようにしたり、更には、大型の表示装置404に警告表示を表示させたりすることで行なわれる。一例として、表示装置404には個々の油入変圧器11が設置されている場所を含む地図を表示させておき、警告報知としては、この地図上で警告対象となる油入変圧器11の位置を赤などの注意喚起機能を有する色で点滅表示させることが考えられる。」が記載されている。

以上の記載事項から、引用文献3には、
「内部に絶縁油を密閉的に収容する油入電気機器の異常を遠隔地より監視する異常監視システムにおいて、
管理システム401が受信した個々の油入変圧器11における物理量のセンシング値ログを記憶保存するためのセンシング値ログファイル461は、構内ネットワーク406を介してアクセス可能な(サーバ403とは)別途の記憶装置に記憶保存され、
サーバ403は、センシング値に含まれている絶縁油の油温の値が規定バンド幅内に収まっているかどうかを判定するものであり、
サーバ403は、絶縁油の油温の値が規定バンド幅内に収まっていないと判定した場合、警告報知を実行し、構内ネットワーク406に接続されているクライアントPC405に警告情報を送信してクライアントPC405に警告報知を実行させる」ことが記載されていると認められる。

(7)本件訂正発明3について
ア 本件訂正発明3と甲1発明とを対比、検討する。
(ア)対比
甲1の【0001】に、「料理用の油は、使用を通じて、極性成分の合成蓄積で酸化する。過度の量の極性成分は、食品の風味を劣化させ、かつ、健康リスクの可能性さえ生じさせる。その結果、極性成分のレベル(総極性物質(total polar materials, TPM)の比率と呼ばれる)は、料理用の油の品質の指標である。」との記載があるように、料理用の油の総極性物質(total polar materials, TPM)の比率は、料理用の油の品質の指標である。
よって、甲1発明の「料理用の油の総極性物質の比率を検出する」「センサ」は、本件訂正発明3の「油脂の劣化の程度を計測する計測部」に相当する。
また、甲1発明の「センサ」は、「所定のしきい値を超える前記検出比率で起動される、アラーム」を備えているから、本件訂正発明3の「油脂の劣化の程度を判定する」ものであるといえる。
ここで、甲1発明の「センサ」は、「所定のしきい値を超える前記検出比率で起動される、アラーム」を動作制御するための構成を有するものであるから、甲1発明の「センサ」は、本件訂正発明3の「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し」ていることは明らかである。

送信器及び受信器をリンクする、甲1発明の「ネットワーク構成又はワイヤレス通信」は、本件訂正発明3の「外部ネットワーク」に相当する。
そして、甲1発明において、「前記センサは、ローカルメモリを備え、かつ、前記検出比率を検出するのに使用可能なパラメータが前記ローカルメモリに格納可能であり、前記パラメータは、前記受信器及び前記送信器を介して、前記データ取得システムによって調整され」るものであり、「送信器16、受信器24、及びマスタ受信器32は、2方向デバイスであるように構成され」るものである

してみると、データ取得システムによって調整されるパラメータは、2方向デバイスであるように構成されている送信機で受信され、センサのローカルメモリに格納されているパラメータは書き換えられるといえる。
よって、甲1発明の「送信機」は、本件訂正発明3の「パラメータの少なくとも一部の」「情報を取得する取得部」に相当し、また、甲1発明のローカルメモリを備えるセンサは、本件訂正発明3の「パラメータを書き換える書換部とを備え」ているといえる。
したがって、甲1発明は、本件訂正発明3の「外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部とを備え」るとの構成のうち、パラメータに関する構成である「外部ネットワークを介して」「パラメータの少なくとも一部」「を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報で」「パラメータを書き換える書換部とを備え」ているといえる。
そして、甲1発明の「料理用の油の品質を監視するシステム」の「センサ」及び「送信機」は、本件訂正発明3の「計測装置」に相当する。

以上のことから、本件訂正発明3と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点1)
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、
油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部とを備え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。

(相違点1)
書換部が書き換える情報が、本件訂正発明3は、「現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、」「前記特定部が特定した油脂に合わせた情報」であるのに対し、甲1発明は、そのような情報の特定がない点。

なお、本件訂正発明3は、外部ネットワークを介して「パラメータ」を取得し書き換える構成の他に、外部ネットワークを介して「プログラム」を取得し書き換える構成を含む発明である。よって、外部ネットワークを介して「プログラム」を取得し書き換える構成を含む本件訂正発明3は、甲1発明と対比して以下の相違点を有する。

(相違点2)
書換部が書き換える対象が、本件訂正発明3は、プログラム又はパラメータであるのに対し、甲1発明は、パラメータであり、プログラムについての特定はない点。

(イ)判断
a 相違点1について
上記相違点1について検討する。
計測対象に合わせて計測装置を調整又は変更することは、一般に行われていることであるが、本件訂正発明3のように、位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定し、特定した油脂に合わせた情報を用いてプログラム又はパラメータを書き換えることは、甲1ないし甲3、引用文献1ないし3には、記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえない。

b 小活
したがって、相違点1は、実質的に相違点であるから、本件訂正発明3は、甲1発明ではない。また、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ 本件訂正発明3と甲3発明とを対比、検討する。
(ア)対比
甲3発明の「油や燃料などの流体の状態を監視する」ことにおいて、監視される状態に「劣化」が含まれており、「監視される劣化/汚染のメカニズムに基づいたアルゴリズムと」、センサーから供給される情報とを用いて、監視中の状態について、測定値を計算しているから、甲3発明の、計算をしているCPU62を含む「センサ装置10」は、本件訂正発明3の「油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部」に相当するといえる。

甲3発明は、「ケーブル結合や、ネットワーク結合、又は無線ワイヤレスなどのワイヤレス技術などを介して、電子回路41に通信可能に接続し、外部のコンピュータ70からデータポート66を介して、コンピュータのアルゴリズムその他の初期化データをメモリ64に読み込み」をしているから、甲3発明は、本件訂正発明3「外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部」を有しているといえる。

甲3発明において、「CPU62によって実行される計算には、有効寿命の終了による又は異常な運転状態による、加速的な酸化劣化についての判断などが含まれ」る。よって、甲3発明のセンサー装置10に含まれるCPU62によって実行される計算は、本件訂正発明3の計測部が行っている「油脂の劣化の程度を判定」に相当する。

以上のことから、本件訂正発明3と甲3発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点2)
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。

(相違点3)
本件訂正発明3は「前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部とを備え」るのに対し、甲3発明は、「外部のコンピュータ70からデータポート66を介して、コンピュータのアルゴリズムその他の初期化データをメモリ64に読み込み」されるものの、既存のアルゴリズムを書き換えているか不明であり、また、書換部が書き換える情報が、本件訂正発明3は、「現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、」「前記特定部が特定した油脂に合わせた情報」であるのに対し、甲3発明は、そのような情報の特定がない点。

(イ)判断
a 相違点3について
上記相違点3について検討する。
計測対象に合わせて計測装置を調整又は変更することは、一般に行われていることであるが、本件訂正発明3のように、位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定し、特定した油脂に合わせた情報を用いてプログラム又はパラメータを書き換えることは、甲1ないし甲3、引用文献1ないし3には、記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえない。

(イ)小活
したがって、本件訂正発明3は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(8)本件訂正発明4について
ア 本件訂正発明4と甲1発明とを対比、検討する。
(ア)対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明3の「現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部」を「撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部」に代えた発明である。
してみると、本件訂正発明4と甲1発明とを対比において、上記一致点1と同じ一致点を有し、相違点については、上記相違点2と下記の相違点を有する。

(相違点4)
書換部が書き換える情報が、本件訂正発明4は、「撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、」「前記特定部が特定した油脂に合わせた情報」であるのに対し、甲1発明は、そのような情報の特定がない点。

(イ)判断
a 相違点4について
上記相違点4について検討する。
計測対象に合わせて計測装置を調整又は変更することは、一般に行われていることであるが、本件訂正発明4のように、撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定し、特定した油脂に合わせた情報を用いてプログラム又はパラメータを書き換えることは、甲1ないし甲3、引用文献1ないし3には、記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえない。

b 小活
したがって、相違点4は、実質的に相違点であるから、本件訂正発明4は、甲1発明ではない。また、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ 本件訂正発明4と甲3発明とを対比、検討する。
(ア)対比
本件訂正発明4は、本件訂正発明3の「現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部」を「撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部」に代えた発明である。
してみると、本件訂正発明4と甲3発明とを対比において、上記一致点2と同じ一致点を有し、下記の相違点を有する。

(相違点5)
本件訂正発明4は「前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部とを備え」るのに対し、甲3発明は、「外部のコンピュータ70からデータポート66を介して、コンピュータのアルゴリズムその他の初期化データをメモリ64に読み込」まれるものの、既存のアルゴリズムを書き換えているか不明であり、また、書換部が書き換える情報が、本件訂正発明4は、「前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する」「前記特定部が特定した油脂に合わせた情報」であるのに対し、甲3発明は、そのような情報の特定がない点。

(イ)判断
a 相違点5について
上記相違点5について検討する。
計測対象に合わせて計測装置を調整又は変更することは、一般に行われていることであるが、本件訂正発明4のように、撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定し、特定した油脂に合わせた情報を用いてプログラム又はパラメータを書き換えることは、甲1ないし甲3、引用文献1ないし3には、記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえない。

b 小活
したがって、本件訂正発明4は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(9)本件訂正発明5について
ア 本件訂正発明5と甲1発明との対比、判断
本件訂正発明5は、本件訂正発明3の「現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」を「現在位置情報を取得する位置情報取得部とを備える計測装置と、前記外部ネットワークを介して、前記位置情報取得部によって取得された位置情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」に代えた「計測システム」の発明である。
つまり、本件訂正発明5は、本件訂正発明3の「特定部」が、サーバが有することを特定した計測システムに係る発明であるから、本件訂正発明5は、少なくとも甲1発明との対比において、上記相違点1を有するものである。
そして、上記相違点1についての判断は、上記(7)ア(イ)のとおりであるから、本件訂正発明5は、甲1発明ではない。また、本件訂正発明5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ア 本件訂正発明5と甲3発明との対比、判断
本件訂正発明5は、本件訂正発明3の「現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」を「現在位置情報を取得する位置情報取得部とを備える計測装置と、前記外部ネットワークを介して、前記位置情報取得部によって取得された位置情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」に代えた「計測システム」の発明である。
つまり、本件訂正発明5は、本件訂正発明3の「特定部」が、サーバが有することを特定した計測システムに係る発明であるから、本件訂正発明5は、少なくとも甲3発明との対比において、上記相違点3を有するものである。
そして、上記相違点3についての判断は、上記(7)イ(イ)のとおりであるから、本件訂正発明5は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(10)本件訂正発明6について
ア 本件訂正発明6と甲1発明との対比、判断
本件訂正発明6は、本件訂正発明4の「撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」を「撮影部とを備える計測装置と、前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記撮影部が撮影した識別情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」に代えた「計測システム」の発明である。
つまり、本件訂正発明6は、本件訂正発明4の「特定部」が、サーバが有することを特定した計測システムに係る発明であるから、本件訂正発明6は、少なくとも甲1発明との対比において、上記相違点4を有するものである。
そして、上記相違点4ついての判断は、上記(8)ア(イ)のとおりであるから、本件訂正発明6は、甲1発明ではない。また、本件訂正発明6は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ア 本件訂正発明6と甲3発明との対比、判断
本件訂正発明6は、本件訂正発明4の「撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」を「撮影部とを備える計測装置と、前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記撮影部が撮影した識別情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え」に代えた「計測システム」の発明である。
つまり、本件訂正発明6は、本件訂正発明4の「特定部」が、サーバが有することを特定した計測システムに係る発明であるから、本件訂正発明6は、少なくとも甲3発明との対比において、上記相違点5を有するものである。
そして、上記相違点5についての判断は、上記(8)イ(イ)のとおりであるから、本件訂正発明6は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(11)独立特許要件についてのまとめ
上記のとおりであるから、本件訂正発明3、4、5、6は、甲1発明ではない。また、本件訂正発明3、4、5、6は、甲1発明又は甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、他に本件訂正発明3、4、5、6について独立特許要件を満たさないとすべき理由を発見しない。
よって、特許異議の申立てがされていない請求項3、4、5、6に係る訂正事項3、4、5、6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

5 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項の規定、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1、2、7-9〕、3、4、5、6について訂正を認める。

第3 特許異議申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正の訂正事項1ないし9による訂正を認めるから、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、その本件特許発明1ないし9は以下に記載したとおりのものである。なお、下線部は、訂正箇所を示す。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。
【請求項4】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部と、
前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。
【請求項5】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して、前記位置情報取得部によって取得された位置情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。
【請求項6】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記撮影部が撮影した識別情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。
【請求項7】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定し、
前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する
計測システム。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定し、
前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する
計測システム。」

2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。

理由1(サポート要件)
本件請求項7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2(明確性要件)
本件請求項7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由3(新規性)
本件請求項1、2、7に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由4(進歩性)
本件請求項1、2、7に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


1 理由1、2(サポート要件、明確性要件)
(1)サポート要件について
請求項7には、「油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部を備える請求項1?4のいずれか一項に記載の計測装置と、
外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記通信部は、前記データベースに蓄積された計測値を取得して、ユーザが所持する端末に送信する
計測システム。」と記載されている。
一方、発明の詳細な説明には、【0018】に請求項7と同様の記載があるが、具体的な実施形態としての記載はない。

なお、類似の記載が【0039】【0040】【0060】にあるので、以下検討する。
「【0039】
携帯端末130は、携帯端末130を制御する制御部131と、タッチパネル(タッチスクリーンともいう)133と、携帯電話通信部134と、Bluetooth通信部135とを備えている。制御部131、携帯電話通信部134、及びBluetooth通信部135には、電池136が接続され、電池136から電源が供給されている。タッチパネル133は、ユーザインターフェースの一例であり、情報を表示するとともに、ユーザの操作を検出する。携帯電話通信部134は、携帯電話通信網に接続して、外部ネットワークNWを介して情報の送信及び受信が可能であり、無線通信回路の一例である。Bluetooth通信部135は、Bluetooth通信規格に従って、例えばピアツーピアで、センサ端末110と通信を行う。
【0040】
計測システムは、上記計測装置100と、データベースサーバ150とを備えている。データベースサーバ150は、データベース151を備えている。携帯端末130は、公衆通信網等の外部ネットワークNWを介してデータベースサーバ150と接続することができる。データベース151には、計測装置100によって計測された計測値及び判定結果が記憶される。そして、データベースサーバ150は、蓄積された計測値をユーザの携帯端末130に送信する。よって、携帯端末130は、計測値の変化等をユーザに提供することができる。」
「【0060】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(3)計測装置100が計測した計測値が外部ネットワークNWを介して接続されたデータベースサーバ150に蓄積される。そして、外部ネットワークNWを介して計測装置100が計測値を取得して、データベースサーバ150に蓄積された計測値がユーザの携帯端末130に送信される。このため、ユーザは携帯端末130を確認することで計測値の変化等を把握することができるようになる。」

また、【0060】の記載に関連する図2には、以下の記載がある。
・・・図省略・・・
ここで、【0039】には、携帯端末130の携帯電話通信部134は、携帯電話通信網に接続して、外部ネットワークNWを介して情報の送信及び受信が可能であること、及び、Bluetooth通信規格に従って、センサ端末110と通信を行うことが記載され、【0040】には、携帯端末130は、公衆通信網等の外部ネットワークNWを介してデータベースサーバ150と接続すること、及び、データベースサーバ150は、蓄積された計測値をユーザの携帯端末130に送信することが記載されている。
これらの記載は、請求項7に記載された計測装置の通信部が、携帯端末130の携帯電話通信部134だとすれば、請求項7の「前記通信部は、前記データベースに蓄積された計測値を取得」することと対応しているといえるが、請求項7の「前記通信部は、・・・ユーザが所持する端末に送信する」ことには、対応していない。

また、【0060】の記載について図2を考慮すると、計測装置に外部ネットワークNWと接続する携帯端末が含まれているから、「外部ネットワークNWを介して計測装置100が計測値を取得」することは、「データベースサーバ150に蓄積された計測値がユーザの携帯端末130に送信される」ことであると理解できる。
しかしながら、請求項7の記載では、「前記(計測装置が備える)通信部は、前記データベースに蓄積された計測値を取得して、ユーザが所持する端末に送信する」となっており、「前記データベースに蓄積された計測値を取得」することと、「ユーザが所持する端末に送信する」ことは、「通信部」が行う動作としては別々のことであるから、請求項7の記載の構成と第2実施形態とは、異なるものである。

したがって、請求項7に係る発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載されていない。

(2)明確性要件について
ア 「通信部」について
請求項7の記載における「通信部」は、「外部ネットワーク」との関係が不明であり(発明の詳細な説明に記載されたBluetooth通信部を含むのか否か)、「ユーザが所持する端末」が有する通信部との関係が不明である(なお、第2実施形態における外部ネットワークと接続する「通信部」は、計測装置の一部である携帯端末の「携帯端末通信部」である。)。

イ 「ユーザが所持する端末」について
請求項7の記載における「ユーザが所持する端末」とは、「センサ端末」、「携帯端末」、「計測装置」またはそれら以外のもののうち、何を指すのか不明である。

2 理由3、4(新規性進歩性)
(1)刊行物等
甲1:特開2010-185877号公報
甲2:特開2008-26245号公報
甲3:特表2006-501472号公報

(2)取消理由の判断
ア 理由1(サポート要件)
訂正前の請求項7の記載では、「前記(計測装置が備える)通信部は、前記データベースに蓄積された計測値を取得して、ユーザが所持する端末に送信する」となっており、「前記データベースに蓄積された計測値を取得」することと、「ユーザが所持する端末に送信する」ことは、「通信部」が行う動作としては別々のことであるから、請求項7の記載の構成と第2実施形態とは、異なるものであるとの取消理由に対し、本件訂正により、本件特許発明7及び9は、「前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する」と特定され、発明の詳細な説明に記載されている「第2実施形態」と整合するものとなった。

イ 理由2(明確性要件)
(ア)「通信部」について
訂正前の請求項7の記載における「通信部」は、「外部ネットワーク」との関係が不明であり、「ユーザが所持する端末」が有する通信部との関係が不明であるとの取消理由に対し、本件訂正により、本件特許発明7及び9は、「油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末」と、「ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、・・とを有する携帯端末」であることが特定され、「センサ端末が有する通信部と、携帯端末が有する通信部及び携帯電話通信部と、外部ネットワークとの関係が明確になった。

(イ)「ユーザが所持する端末」について
訂正前の請求項7の記載における「ユーザが所持する端末」とは、「センサ端末」、「携帯端末」、「計測装置」またはそれら以外のもののうち、何を指すのか不明であるとの取消理由に対し、本件訂正により、本件特許発明7及び9は、「ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、・・・とを有する携帯端末」であることが特定され、「ユーザが所持する端末」が「携帯端末」であることが明確になった。

ウ 理由3、4(新規性進歩性)
(ア)本件特許発明1,2について
訂正前の請求項1、2は、本件訂正により削除された。

(イ)本件特許発明7について
本件特許発明7は、訂正前の請求項7において「請求項1?4のいずれか一項に記載の計測装置と、」あるうち、 請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、さらに、計測装置はセンサ端末と携帯端末とを備え、センサ端末が計測部と取得部と書換部と計測値を送信する通信部とを有することと、携帯端末がセンサ端末の通信部と通信する通信部と携帯電話通信部とを有することとを特定する訂正がなされたものである。
してみると、本件特許発明3の構成を全て含む本件特許発明7は、上記本件訂正発明3における検討と同様に、本件特許発明7は、甲1発明ではない。また、本件特許発明7は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。さらに、本件特許発明7は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)本件特許発明9について
本件特許発明9は、訂正前の請求項7において「請求項1?4のいずれか一項に記載の計測装置と、」あるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、さらに、計測装置はセンサ端末と携帯端末とを備え、センサ端末が計測部と取得部と書換部と計測値を送信する通信部とを有することと、携帯端末がセンサ端末の通信部と通信する通信部と携帯電話通信部とを有することとを特定する訂正がなされたものである。
してみると、本件特許発明4の構成を全て含む本件特許発明9は、上記本件訂正発明4における検討と同様に、本件特許発明9は、甲1発明ではない。また、本件特許発明9は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。さらに、本件特許発明9は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえない。

第4 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許発明7及び9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明7及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。
【請求項4】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部と、
前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測装置。
【請求項5】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
現在位置情報を取得する位置情報取得部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して、前記位置情報取得部によって取得された位置情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。
【請求項6】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、
外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、
撮影部とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記撮影部が撮影した識別情報に基づいて油脂を特定するサーバ側特定部を有するサーバとを備え、
前記書換部は、前記サーバ側特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定する
計測システム。
【請求項7】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、現在位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部によって取得された前記現在位置情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定し、
前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する
計測システム。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
油脂の劣化の程度を計測するプログラム及びパラメータを含む情報を有し、油脂の劣化の程度を計測する計測部と、外部ネットワークを介してプログラムの少なくとも一部及びパラメータの少なくとも一部の少なくとも一方を含む情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報でプログラム又はパラメータを書き換える書換部と、油脂の劣化の程度を示す計測値を送信する通信部とを有するセンサ端末と、ユーザが所持し、前記センサ端末の通信部と通信する通信部と外部ネットワークを介して通信する携帯電話通信部と、撮影部と、前記撮影部が撮影した油脂の識別情報に基づいて油脂を特定する特定部とを有する携帯端末とを備える計測装置と、
前記外部ネットワークを介して前記計測装置と接続され、前記計測装置が計測した計測値を蓄積するデータベースとを備え、
前記書換部は、前記特定部が特定した油脂に合わせた情報に書き換え、
前記計測部は、油脂の劣化の程度を判定し、
前記携帯端末は、前記携帯電話通信部を介して前記データベースに蓄積された計測値を取得する
計測システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-07-06 
出願番号 特願2017-502352(P2017-502352)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 渡戸 正義
森 竜介
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6484698号(P6484698)
権利者 ナブテスコ株式会社
発明の名称 計測装置及び計測システム  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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