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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C03C
管理番号 1366092
異議申立番号 異議2020-700339  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-13 
確定日 2020-09-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6606568号発明「光学ガラスおよび光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6606568号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6606568号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成30年3月22日(優先権主張 平成29年3月31日、平成29年12月26日)の出願であって、令和1年10月25日にその特許権の設定登録がされ、令和1年11月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る特許に対して、令和2年5月13日付けで特許異議申立人石田祥子により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、請求項1?6に係る発明を、順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて、「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
必須成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Nb^(5+)、アルカリ金属成分、O^(2-)およびF^(-)を含み、
P^(5+)の含有量に対するAl^(3+)の含有量のモル比(Al^(3+)/P^(5+))が0.30以上、
Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上、
アルカリ金属成分の含有量が1カチオン%以上、かつLi^(+)の含有量が20カチオン%以下、
O^(2-)の含有量が10?85アニオン%、
F^(-)の含有量が15?90アニオン%、
P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上、
原子%で表示されるガラス組成において、Al^(3+)の含有量に対するO^(2-)の含有量の比(O^(2-)/Al^(3+))が10未満、
である光学ガラス。
【請求項2】
Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)からなる群から選ばれるアルカリ土類金属成分を少なくとも一種含み、
Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)の合計含有量が20カチオン%以上である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
P^(5+)の含有量が5?40カチオン%、
Al^(3+)の含有量が5?30カチオン%、
である、請求項1または2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
モル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が4.0以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)からなる群から選ばれる希土類成分を少なくとも一種含み、
Al^(3+)の含有量に対するLa^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))のモル比((La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))/Al^(3+))が0.3以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、概略、以下の申立理由を主張している。

申立理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
1-1 本願発明1では、「必須成分として、P^(5+)、Al^(3+)」「を含み」(すなわち、それぞれの含有量が0カチオン%超)、「P^(5+)の含有量に対するAl^(3+)の含有量のモル比(Al^(3+)/P^(5+))が0.30以上」、「Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上」、「アルカリ金属成分の含有量が1カチオン%以上」、「O^(2-)の含有量が10?85アニオン%」、「F^(-)の含有量が15?90アニオン%」、「P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上」、「原子%で表示されるガラス組成において、Al^(3+)の含有量に対するO^(2-)の含有量の比(O^(2-)/Al^(3+))が10未満」と広範囲に規定されているのに対して、発明の詳細な説明の実施例1のNo.1?32におけるP^(5+)の含有量は18.25?37.29カチオン%、Al^(3+)の含有量は11.37?27.85カチオン%、モル比(Al^(3+)/P^(5+))が0.3616?1.4860、Nb^(5+)の含有量は1.94?8.98カチオン%、アルカリ金属成分の含有量は3.93?19.92カチオン%、O^(2-)の含有量は32.02?70.93アニオン%、F^(-)の含有量は28.86?67.80アニオン%、モル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))は3.01?3.60、比(O^(2-)/Al^(3+))は2.56?9.87という限定的な範囲となっている。
同様に、本件発明2では、「Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)の合計含有量が20カチオン%以上」と広範囲に規定され、本件発明3では、「P^(5+)の含有量が5?40カチオン%」及び「Al^(3+)の含有量が5?30カチオン%」と広範囲に規定され、本件発明4では、「モル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が4.0以下」と広範囲に規定され、本件発明5では、「Al^(3+)の含有量に対するLa^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))のモル比((La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))/Al^(3+))が0.3以下」と広範囲に規定されているのに対して、実施例1のNo.1?32におけるそれぞれの数値範囲は限定的な範囲である。
以上より、本件発明1?6の全体まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
1-2 本件発明は、「フツリン酸ガラスの揮発性を低減しつつ、部分分散比が大きく色収差補正に好適な光学ガラスを提供すること」を課題としているところ、本件発明1には、部分分散比の要件が特定されていないことから、関係式「Pg,F >-0.0004νd+0.5718」を満たさないものまで権利範囲に含まれることとなる。したがって、本件発明1の組成のガラスが、本件特許の課題を解決できるものと当業者が認識できるものではない。また、本件発明1を引用する本件発明2?6についても同様である。

申立理由2(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件発明1?6について、請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているとはいえない。

申立理由3(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許明細書の記載は、本件発明1?6をどのように実施できるかを見出すために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要があることから、実施可能な程度に明確に記載されたものとはいえない。

第4 申立理由の検討
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)発明の詳細な説明に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

ア 「【0006】
本発明の一態様は、高温プロセスにおけるフツリン酸ガラスの揮発性を低減しつつ、部分分散比が大きく色収差補正に好適な光学ガラスを提供すること、および上記光学ガラスからなる光学素子を提供することを目的とする。」

イ 「【0009】
上記光学ガラスは、好ましくは、正の異常分散性を有する。
正の異常分散性の指標としては、部分分散比Pg,Fが使用されている。部分分散比Pg,Fは、F線(波長486.13nm)における屈折率nF、C線(波長656.27nm)におけるnCならびにg線(波長435.84nm)における屈折率ngを用い、次式のように表される。
Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC) ・・・(1)
ガラス中に含まれるNbは、紫外域の固有吸収波長が可視域に近く、更に吸収強度も大きいことが知られている。これにより屈折率の波長分散は高分散化する傾向を示す。すなわち、F線とC線の屈折率差nF-nCが大きくなり、アッベ数νdは小さくなる傾向を示す。一方で、g線とF線の屈折率差ng-nFも大きくなる。
ここで、ng-nFを大きくする効果がnF-nCを大きくする効果を上回れば、(1)式より明らかなように、Pg,Fは大きくなる。
本発明者らは、この点に着目し、ガラス成分としてNbを導入して、低分散性(νdが大きい)を従来のフツリン酸ガラスと同程度の範囲に維持しつつ、部分分散比Pg,Fを大幅に増加できることを見出した。
しかしながら、Nbを含有するフツリン酸ガラスは、その熔融過程で、ガラス融液からNbが揮発しやすい。熔融過程でNbとFが結合するとフッ化ニオブが生成される。フッ化ニオブは蒸気圧が高く、ガラス融液から揮発しやすい。
部分分散比を高めるために導入したNbが、揮発を助長しないようにするため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
P^(5+)は、ガラス中で-O-P-O-の構造で存在し、ガラスのネットワーク形成に寄与していると考えられる。P^(5+)と価数が等しいNb^(5+)も、-O-P-O-構造においてPの位置を占めることによりガラスのネットワーク形成に寄与すると考えられる。
Nb^(5+)がネットワーク構造に取り込まれると、蒸気圧が高いフッ化ニオブが生成されにくくなり、その結果、ガラスの揮発性が低下すると考えられる。
ただし、Nb^(5+)がネットワーク構造に取り込まれるには、十分な数のO^(2-)が必要になる。Nb^(5+)が存在する場合について考えると、ネットワークを構成する陽イオン(P^(5+)およびNb^(5+))の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上であれば、Nb^(5+)がネットワークに取り込まれやすくなることにより、揮発性の増大を抑制することができる。
本発明者らは、以上の知見に基づいて、上記の本発明の一態様にかかる光学ガラスを完成させた。」

ウ 「【0013】
本発明および本明細書において、カチオン成分の含有量および合計含有量は特記しない限りカチオン%で表示するものとし、アニオン成分の含有量および合計含有量は特記しないアニオン%で表示するものとする。
ここで、「カチオン%」とは、「(注目するカチオンの個数/ガラス成分のカチオンの総数)×100」で算出される値であって、注目するカチオン量のカチオン成分の総量に対するモル百分率を意味する。
また、「アニオン%」とは、「(注目するアニオンの個数/ガラス成分のアニオンの総数)×100」で算出される値であって、注目するアニオン量のアニオン成分の総量に対するモル百分率を意味する。
カチオン成分同士の含有量のモル比は、注目するカチオン成分のカチオン%表示による含有量の比に等しく、アニオン成分同士の含有量のモル比は、注目するアニオン成分のアニオン%表示による含有量の比に等しい。
カチオン成分の含有量とアニオン成分の含有量のモル比は、すべてのカチオン成分とすべてのアニオン成分の総量を100モル%としたときの注目する成分同士の含有量(モル%表示)の比率である。
なお、各成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、イオンクロマトグラフィ法等により定量することができる。」

エ 「【0015】
[光学ガラス1]
<ガラス成分>
以下、本発明の一態様にかかる光学ガラス1について説明する。
P^(5+)は、ネットワーク形成成分としての働きがある。Al^(3+)は、ガラスの熱的安定性を維持し、化学的耐久性や加工性を改善する働きをする成分である。ガラスの熱的安定性を良好に維持する上から、P^(5+)の含有量に対するAl^(3+)の含有量のモル比(Al^(3+)/P^(5+))は0.30以上である。アッベ数を維持した状態で、屈折率を高める上で、モル比(Al^(3+)/P^(5+))を0.30以上とすることが効果的である。
モル比(Al^(3+)/P^(5+))の好ましい下限は0.5である。一方、ガラスの熱的安定性を良好に維持する上から、モル比(Al^(3+)/P^(5+))の好ましい上限は2、より好ましい上限は1である。」

オ 「【0016】
Nb^(5+)は、P^(5+)ともにネットワーク形成成分としてガラスの熱的安定性を維持するとともに、部分分散比を増加させる働きがある。こうした効果を得るために、Nb^(5+)の含有量は1.0%以上である。Nb^(5+)の含有量の好ましい下限は1.5%、より好ましい下限は2%、更に好ましい下限は2.5%、一層好ましい下限は3%である。一方、Nb^(5+)の含有量が過剰になるとガラス熔融時の揮発性が著しくなり、ガラスの均質性が低下する傾向が生じる。そのため、Nb^(5+)の含有量の好ましい上限は15%、より好ましい上限は13%、更に好ましい上限は10%である。なお、Nb^(5+)とガラスの化学的耐久性の関係については後記する。」

カ 「【0018】
O^(2-)は、ガラスの熱的安定性を維持する働きをする。このような働きを得るため、O^(2-)の含有量は10アニオン%以上である。O^(2-)の含有量が85アニオン%よりも多くなると、F^(-)の含有量が不足して低分散性を得ることが困難になる。したがって、O^(2-)の含有量は10?85アニオン%である。O^(2-)の含有量の好ましい下限は20%、より好ましい下限は30%であり、好ましい上限は80%、より好ましい上限は75%、更に好ましい上限は70.93%、一層好ましい上限は70%である。」

キ 「【0019】
F^(-)は、ガラスを低分散化するとともに異常分散性を付与する働きや、ガラス転移温度を低下させたり、化学的耐久性を改善する働きがある。F^(-)の含有量が15アニオン%より少ないと、上記効果が得られにくくなる。一方、F^(-)の含有量が90アニオン%を超えるとガラスの熱的安定性の維持が困難になる。また、F^(-)の含有量が過剰であると、後記するD_(NaOH)、D_(STPP)、D_(0)の各値が増加する傾向を示す。
以上の観点から、F^(-)の含有量は15?90アニオン%である。F^(-)の含有量の好ましい下限は20%、より好ましい下限は25%であり、更に好ましい下限は28.86%であり、一層好ましい下限は30%であり、好ましい上限は80%、より好ましい上限は70%である。」

ク 「【0020】
上述のように、Nb^(5+)を導入したことによるガラス融液からの揮発増大を低減する上から、P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))は3.0以上である。モル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))の好ましい下限は3.2である。ガラスの熱的安定性を維持する上から、モル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))の好ましい上限は4.0、より好ましい上限は3.8である。」

ケ 「【0021】
アルカリ土類金属成分、すなわち、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)は、ガラスの粘性や屈折率を調整し、熱的安定性を向上させる働きをする成分である。上記効果を得るために、アルカリ土類金属成分の合計含有量R^(2+)(Mg^(2+)+Ca^(2+)+Sr^(2+)+Ba^(2+))が20カチオン%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることが更に好ましい。一方、アルカリ土類金属成分の合計含有量R^(2+)が過剰になると熱的安定性が低下する傾向を示すため、アルカリ土類金属成分の合計含有量R^(2+)が50%以下であることが好ましい。R^(2+)のより好ましい上限は45%、更に好ましい上限は40%である。」

コ 「【0022】
上記光学ガラスは、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)からなる群から選ばれる希土類成分を一種以上含んでもよい。
ガラスの比重の増大を抑えるとともに、一定の屈折率に対して分散を低減する上で、Al^(3+)の含有量に対するLa^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))のモル比((La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))/Al^(3+))が0.3以下であることが好ましい。モル比((La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))/Al^(3+))のより好ましい上限は0.2、更に好ましい上限は0.1である。モル比((La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))/Al^(3+))が0であってもよい。」

サ 「【0024】
P^(5+)は、ガラスのネットワークを形成する必須成分である。熱的安定性を良好に維持する上から、P^(5+)の含有量の好ましい下限は5%、より好ましい下限は10%、更に好ましい下限は20%である。化学耐久性を良好に維持し、低分散性、異常部分分散性を維持する上から、P^(5+)の含有量の好ましい上限は40%、より好ましい上限は38%、更に好ましい上限は35%である。」

シ 「【0025】
Al^(3+)は、熱的安定性、化学的耐久性、加工性を向上させる働きをする必須成分であり、屈折率を高める働きもする。上記の観点から、Al^(3+)の含有量の好ましい下限は5%、より好ましい下限は7%、更に好ましい下限は9%、一層好ましい下限は11%である。上記の観点から、Al^(3+)の含有量の好ましい上限は40%、より好ましい上限は38%、更に好ましい上限は36%、一層好ましい上限は34%である。」

ス 「【0026】
原子%で表示されるガラス組成において、Al^(3+)の含有量に対するO^(2-)の含有量の比O^(2-)/Al^(3+)は、12未満であることが好ましく、10未満であることがより好ましく、8未満であることが更に好ましい。O^(2-)の含有量が多くなるとF^(-)の含有量が相対的に減少し、ガラス転移温度が上昇傾向を示す。一方、Al^(3+)は、上記の通り、熱的安定性、化学的耐久性、加工性を向上させ、所望の光学特性を有する上で有用な成分である。Al^(3+)の効果を十分に得つつ、ガラス転移温度の上昇を抑えるためには、原子%で表示されるガラス組成におけるAl^(3+)の含有量に対するO^(2-)の含有量の比O^(2-)/Al^(3+)が上記範囲であることが好ましい。上記の比O^(2-)/Al^(3+)の下限については、Al^(3+)の含有量が相対的に増加することによる耐失透性の低下を抑制する観点からは、例えば2以上または3以上を目安とすることができる。
なお、原子%で表示されるガラス組成における各成分の含有量は、全カチオン成分と全アニオン成分の合計含有量を100モル%としたときの各成分の含有量をモル百分率で表した値として算出される。」

セ 「【0031】
アルカリ金属成分は、ガラスの粘性を調整したり、熱的安定性を向上させたりする働きを有するカチオン成分である。アルカリ金属成分の合計含有量R^(+)が過剰になると熱的安定性が低下する。そのため、アルカリ金属成分の合計含有量R^(+)の好ましい範囲は0?30%である。上記の観点から、R^(+)のより好ましい範囲は0?20%、更に好ましい範囲は0?15%である。R^(+)の上限は、一層好ましくは10%、より一層好ましくは8%、更に一層好ましくは7%である。また、アルカリ金属成分の合計含有量R^(+)が過剰であると、後記するD_(STPP)およびD_(0)の各値が増加傾向を示す。したがって、ガラスに優れた化学的耐久性を付与する上からも、R^(+)を上記の範囲にすることが好ましい。
一方、ガラス転移温度を低くする観点から、R^(+)の好ましい下限は1%、より好ましい下限は2%、更に好ましい下限は3%である。
アルカリ金属成分R^(+)として、Li^(+)、Na^(+)、K^(+)、Rb^(+)、Cs^(+)を示すことができる。Rb^(+)、Cs^(+)は他のアルカリ金属成分と比較し、ガラスの比重増大を招きやすい。
したがって、Rb^(+)の含有量は0?3%であることが好ましく、0?2%であることがより好ましく、0?1%であることが更に好ましく、0%であってもよい。
Cs^(+)の含有量は0?3%であることが好ましく、0?2%であることがより好ましく、0?1%であることが更に好ましく、0%であってもよい。
ガラスの熱的安定性を維持する上から、Li^(+)の含有量の好ましい範囲は0?30%、より好ましい範囲は2?20%、更に好ましい範囲は4?10%である。
ガラスの熱的安定性を維持する上から、Na^(+)の含有量の好ましい範囲は0?10%、より好ましい範囲は0?8%、更に好ましい範囲は0?6%である。
ガラスの熱的安定性を維持する上から、K^(+)の含有量の好ましい範囲は0?10%、より好ましい範囲は0?8%、更に好ましい範囲は0?6%である。」

ソ 「【0040】
図1に、(2)式および(3)式において、それぞれ等号が成り立つ場合の式を図示する。
上記光学ガラス1は、好ましくは正の異常分散性を示す。異常分散性はΔPg,Fによって定量的に表される。g線、F線、C線における各屈折率ng、nF、nCを用いて、部分分散比Pg,Fは、先に示した(1)式(Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC))により算出される。
アッベ数νdが45以上の市販されている低分散ガラスとしては、HOYA製FCD100や、FCD515等が知られている。
横軸をアッベ数νd、縦軸を部分分散比Pg,Fとするグラフにおいて、座標(95.1 0.5334)にFCD100をプロットし、座標(68.63 0.5441)にFCD515をプロットして、上記2点を結ぶ直線Lを考える。この直線Lは凡そ、「Pg,F=-0.0004νd+0.5718」と表される。
図2に直線Lを図示する。
図2に示すように、アッベ数νdが45以上の市販されている低分散ガラス(既存のガラス)は、アッベ数νd-部分分散比Pg,Fのグラフにおいて直線Lの線上または直線Lよりも部分分散比Pg,Fが小さい側に位置する。
上記光学ガラス1は、好ましい態様では、アッベ数νdと部分分散比Pg,Fが下記(4)式を満たす。
Pg,F > -0.0004νd+0.5718 ・・・(4)
アッベ数νdが45以上であり、かつ上記(4)式を満たす光学ガラスは、特定のアッベ数νdに対して部分分散比Pg,Fが大きく、高次の色収差補正用の光学ガラスとして好適である。」

タ 「【0060】
(実施例1)
表1に示すガラス組成になるように、各成分を導入するための原料としてそれぞれ相当するリン酸塩、フッ化物、酸化物等を用い、原料を秤量し、十分に混合して調合原料とした。
この調合原料を白金製の坩堝に入れ、加熱、熔融した。熔融後、熔融ガラスを鋳型に流し込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニール処理した後、炉内で室温まで放冷することにより、表1に示す各光学ガラスを得た。
得られた光学ガラスを光学顕微鏡により拡大観察したところ、結晶の析出、白金粒子等の異物、泡は認められず、脈理も見られなかった。
このようにして得られた光学ガラスの諸特性を表1に示す。
光学ガラスの諸特性は、以下に示す方法により測定した。」

チ 「【0061】
(1)屈折率nd、ng、nF、nCおよびアッベ数νd
降温速度-30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nC、アッベ数νdを測定した。
また、図1に、上記各光学ガラスのアッベ数νdと屈折率ndをプロットする。」

ツ 「【0062】
(2)部分分散比Pg,FおよびPg,Fのノーマルラインからの偏差ΔPg,F
屈折率ng、nF、nCから部分分散比Pg,Fを算出するとともに、アッベ数νdから算出されるノーマルライン上の部分分散比Pg,F(0)からの偏差ΔPg,Fを算出した。
表1には、屈折率nd、アッベ数νdならびにng、nF、nCより算出したPg,FとΔPg,Fを示す。
また、図2に、上記各光学ガラスのアッベ数νdと部分分散比Pg,Fをプロットする。」

テ 「【0066】
(6)熔解中の揮発減少量の評価
ガラスバッチ(収量で150?200g)を白金坩堝へ充填させ白金の蓋をして質量Xを測定した後、1050℃で1.5時間熔解した。その後、熔融ガラスを鋳型にキャストする直前に再度、中に熔融ガラスが入っており白金の蓋がしてある白金坩堝の質量Yを測定し、質量変化率(X-Y)/Xを求めた。収量が150gになるようにガラスバッチを用意すると、Xは150gとなり、収量が200gになるようにガラスバッチを用意すると、Xは200gとなる。
ガラスバッチが炭酸塩を含む場合は、熔解中に炭酸塩中のCO_(2)が排出される。ガラスバッチが硫酸塩、硝酸塩、水酸化物を含む場合は、SO_(3)、NO_(2)、H_(2)Oが熔解中に排出される。
ガラスバッチに含まれるCO_(2)、SO_(3)、NO_(2)、H_(2)Oといったガス成分の質量を予め算出しておき、ガラスバッチの質量からガス成分の質量を差し引いた値が質量Xになるようにガラスバッチを調製すればよい。
表1において、質量変化率が2%以下のものをA、質量変化率が2%より大きく4%以下のものをB、質量変化率が4%より大きいものをCとした。
なお、表1に示す実施例の各ガラスについて、日本光学硝子工業会規格の内部透過率測定(JOGIS-17)に従い、厚さ10mmでの内部透過率を測定したところ、すべての試料において96.50%以上の透過率を有していた。」

ト 「【0074】



ナ 「【0075】



ニ 「【0076】



ヌ 「【0077】



ネ 「【0078】



ノ 「【0079】



ハ 「【0080】



ヒ 「【図2】



(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。この点について、以下に検討する。

(3)本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、「高温プロセスにおけるフツリン酸ガラスの揮発性を低減しつつ、部分分散比が大きく色収差補正に好適な光学ガラスを提供すること、および上記光学ガラスからなる光学素子を提供すること」であると解される(上記(1)ア)。

(4)当審の判断
ア 申立理由1-1について
発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題を解決するための手段について、「ガラス成分としてNbを導入して、低分散性(νdが大きい)を従来のフツリン酸ガラスと同程度の範囲に維持しつつ、部分分散比Pg,Fを大幅に増加できることを見出した。」、「部分分散比を高めるために導入したNbが、揮発を助長しないようにするため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の知見を得た。」、「ネットワークを構成する陽イオン(P^(5+)およびNb^(5+))の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上であれば、Nb^(5+)がネットワークに取り込まれやすくなることにより、揮発性の増大を抑制することができる。」と記載されている(上記(1)イ)。
さらに、発明の詳細な説明には、「Nb^(5+)は、P^(5+)ともにネットワーク形成成分としてガラスの熱的安定性を維持するとともに、部分分散比を増加させる働きがある。こうした効果を得るために、Nb^(5+)の含有量は1.0%以上である。」と記載され(上記(1)オ))、「上述のように、Nb^(5+)を導入したことによるガラス融液からの揮発増大を低減する上から、P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))は3.0以上である。」と記載されている(上記(1)ク)。
また、発明の詳細な説明には、含有量の単位について、「本発明および本明細書において、カチオン成分の含有量および合計含有量は特記しない限りカチオン%で表示するものとし、アニオン成分の含有量および合計含有量は特記しないアニオン%で表示するものとする。」と記載されている(上記(1)ウ)。
さらに、発明の詳細な説明には、部分分散比Pg,Fが大きく、高次の色収差補正用の光学ガラスとして好適である光学ガラスは、「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすものであることが記載されている(上記(1)ソ、ヒ)。
また、発明の詳細な説明には、「ガラス中に含まれるNbは、紫外域の固有吸収波長が可視域に近く、更に吸収強度も大きいことが知られている。これにより屈折率の波長分散は高分散化する傾向を示す。すなわち、F線とC線の屈折率差nF-nCが大きくなり、アッベ数νdは小さくなる傾向を示す。」と記載されている(上記(1)イ)。
さらに、発明の詳細な説明には、実施例1?32、及び比較例1、2が記載され(上記(1)タ?ハ)、実施例1?32はNb^(5+)を1.94?8.98カチオン%の範囲で含有し、いずれも「Pg,F-(-0.0004νd+0.5718)」が正の値であり、「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすことが示されている。一方で、Nb^(5+)の含有量が0である比較例2は、「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たさないことが示されている。また、実施例1?32は(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.01?3.60の範囲で、いずれも揮発性の評価が「B」以上であったことが示されている。一方で、比較例1は(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が2.90で「揮発性」の評価が「C」であったことが示されている。
よって、発明の詳細な説明には、Nb^(5+)に部分分散比を増加させる働きがあること、Nb^(5+)の導入により部分分散比Pg,Fを増加させ「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすものとすることにより部分分散比が大きく色収差補正に好適な光学ガラスが得られること、Nb^(5+)の含有量は1.0カチオン%以上であること、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))を3.0以上とすることにより揮発性を低減できること、Nb^(5+)によりアッベ数νdが減少する傾向があること、及び上記実施例及び比較例が記載されているといえる。

ここで、申立人の主張について検討すると、申立人が申立書において述べるように、実施例1?32のNb^(5+)の含有量は1.94?8.98カチオン%の範囲であるが、Nb^(5+)に部分分散比を増加させる働きがあることは、実施例1?32においてその傾向が示されており、実施例1?32における部分分散比Pg,Fは0.5460?0.5696の範囲であり、Nb^(5+)の含有量、及び部分分散比Pg,Fの各最大値、最小値から、部分分散比Pg,Fの増加傾向は、Nb^(5+)1カチオン%あたり0.003程度であること、Nb^(5+)によりアッベ数νdが減少する傾向があることも、実施例1?32においてその傾向が示されており、実施例1?32におけるアッベ数νdは50.25?75.40の範囲であり、Nb^(5+)の含有量、及びアッベ数νdのの各最大値、最小値から、アッベ数νdの減少傾向はNb^(5+)1カチオン%あたり3.6程度であること、から、Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%の場合であっても「Pg,F-(-0.0004νd+0.5718)」が正の値であり、「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすことは、Nb^(5+)の含有量が2.0カチオン%である実施例8、又はNb^(5+)の含有量が0である比較例2等における部分分散比Pg,F及びアッベ数νdの値から、Nb^(5+)の導入による上記部分分散比Pg,Fの増加傾向、及び上記アッベ数νdの減少傾向を鑑みることにより、当業者は認識できるといえる。
さらに、実施例1?32において、Nb^(5+)の導入に伴い「Pg,F-(-0.0004νd+0.5718)」の値が増加傾向を示していることが読み取れることから、Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%超の場合にも「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすことは、当業者は認識できるといえる。
また、申立人が申立書において述べるように、実施例1?32の(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))は3.01?3.60であるが、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.01である実施例6は揮発性の評価が「B」であり、「揮発性」の評価が「C」の比較例1の(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))は2.90であることから、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0の場合であっても実施例6と同等の効果が得られることは、当業者は認識できるといえる。
さらに、「(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))の好ましい上限」は「ガラスの熱的安定性を維持する上から」規定されるものであることが記載されており(上記(1)ク)、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))の上限は、揮発性の低減という本件発明が解決しようとする課題に直接影響するものではない。
また、Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上であって1.94?8.98カチオン%の範囲外である場合に、本件発明が解決しようとする課題を解決できないと解すべき本件優先権主張日時点の技術常識は見当たらない。同様に、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上であって3.01?3.60の範囲外である場合に、上記課題を解決できないと解すべき本件優先権主張日時点の技術常識は見当たらない。
よって、発明の詳細な説明より、Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上であれば、部分分散比Pg,Fが増加し、「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすものとなり、部分分散比が大きく色収差補正に好適な光学ガラスが得られること、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))を3.0以上とすることにより揮発性を低減できること、を当業者は認識できるといえる。

また、本件発明1における「Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上」及び「P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上」以外の構成要件については、「必須成分として、P^(5+)、Al^(3+)」「を含み」、及び「P^(5+)の含有量に対するAl^(3+)の含有量のモル比(Al^(3+)/P^(5+))が0.30以上」については上記(1)エ、サ、及びシ、「アルカリ金属成分の含有量が1カチオン%以上」については上記(1)セ、「Li^(+)の含有量が20カチオン%以下」については上記(1)セ、「O^(2-)の含有量が10?85アニオン%」については上記(1)カ、「F^(-)の含有量が15?90アニオン%」については上記(1)キ、「原子%で表示されるガラス組成において、Al^(3+)の含有量に対するO^(2-)の含有量の比(O^(2-)/Al^(3+))が10未満」については上記(1)ス、に、それぞれ、組成範囲を限定する技術的理由が記載されており、本件発明が解決しようとする課題に直接影響するものではない。よって、本件発明1における「Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上」及び「P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上」以外の構成要件については、実施例の数値範囲から外れていても、Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上であり、(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上であれば、本件発明1が本件発明が解決しようとする課題を解決できると当業者は認識できるといえる。

以上より、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された発明であり、当業者は、「Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上」及び「P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上」という構成要件を有する本件発明1であれば、本件発明が解決しようとする課題を解決できることを理解できると解される。

また、本件発明2における「Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)からなる群から選ばれるアルカリ土類金属成分を少なくとも一種含み、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)の合計含有量が20カチオン%以上である」については上記(1)ケ、本件発明3における「P^(5+)の含有量が5?40カチオン%」、「Al^(3+)の含有量が5?30カチオン%」については、それぞれ、上記(1)サ、シ、本件発明4における「モル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が4.0以下」については上記(1)ク、本件発明5における「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)からなる群から選ばれる希土類成分を少なくとも一種含み、Al^(3+)の含有量に対するLa^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Lu^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))のモル比((La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Lu^(3+)+Yb^(3+))/Al^(3+))が0.3以下である」については上記(1)コに、それぞれ、組成範囲を限定する技術的理由が記載されており、本件発明が解決しようとする課題の解決に直接影響するものではない。
そして、本件発明2?6は、本件発明1を引用する発明であり、「Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上」及び「P^(5+)およびNb^(5+)の合計含有量に対するO^(2-)の含有量のモル比(O^(2-)/(P^(5+)+Nb^(5+)))が3.0以上」という構成要件を有するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明が解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できるものである。
よって、本件発明2?6は発明の詳細な説明に記載された発明であり、当業者は、同様に、本件発明2?6であれば、本件発明が解決しようとする課題を解決できることを理解できると解される。

なお、申立人は、本件発明1?6において、本件特許明細書に開示された実施例のガラス組成範囲外の組成範囲である場合に、本件発明が解決しようとする課題を解決することが本件明細書に明らかにされていない旨の主張に関して、その技術的根拠を何ら具体的に提示していない。

イ 申立理由1-2について
上記申立理由1-1について記載したとおり、発明の詳細な説明より、Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上であれば、部分分散比Pg,Fが増加し、「Pg,F > -0.0004νd+0.5718」の式を満たすものとなることを当業者は認識できるといえる。
以上より、当業者は、「Nb^(5+)の含有量が1.0カチオン%以上」という構成要件を有する本件発明1、及び本件発明1を引用する本件発明2?6であれば、関係式「Pg,F >-0.0004νd+0.5718」を満たすことを理解できると解される。

ウ 小括
したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1?6が、本件発明が解決しようとする課題を解決することができることを当業者が認識できるように記載されており、申立理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由2(明確性要件)について
上記申立理由1について記載したとおり、本件発明は本件発明が解決しようとする課題を解決できない発明を含んでおらず、本件発明の範囲に入る発明は明確である。
したがって、申立理由2(明確性要件)によって、本件特許の請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由3(実施可能要件)について
上記申立理由1について記載したとおり、本件発明は、当業者が本件発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明の記載(上記(1)タ?ハ)に基づき、本件発明の光学ガラスを製造するための具体的な条件を導くことは、適切な原料を選択することにより、当業者が通常行う試行錯誤の範囲で実施できるものであるといえる。
したがって、申立理由3(実施可能要件)によって、本件特許の請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおり、申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
他に、本件特許の請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-08-18 
出願番号 特願2018-53909(P2018-53909)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C03C)
P 1 651・ 537- Y (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和瀬田 芳正  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 馳平 憲一
菊地 則義
登録日 2019-10-25 
登録番号 特許第6606568号(P6606568)
権利者 HOYA株式会社
発明の名称 光学ガラスおよび光学素子  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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