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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
管理番号 1366097
異議申立番号 異議2020-700326  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-08 
確定日 2020-09-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6603952号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6603952号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6603952号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願(以下、「本件特許出願」という。)は、平成26年9月9日に出願した特願2014-183363号であって、令和1年10月25日にその特許権の設定登録がされ、同年11月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和2年5月8日に特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。


第2 特許異議の申立について

1 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Kの符号は、当審にて分説して付した。)。

本件発明
「【請求項1】
A 遊技が可能な遊技機であって、
B 表示状態を変化可能な表示領域を有する表示手段と、
C 前記表示手段の前記表示領域における重畳領域に重畳する重畳状態と、該重畳領域から退避した退避状態とで変化可能な複数の可動手段と、
を備え、
D 前記表示手段は、有利状態において、第1の情報と、該第1の情報と異なる第2の情報と、を表示可能であり、
E 前記第1の情報は、前記表示領域における前記重畳領域以外に表示され、
F 前記第2の情報は、前記表示領域における前記重畳領域を含む領域に表示され、
G 前記第1の情報は、有利となる操作態様を示す情報であり、
H 前記有利状態は、第1有利状態と第2有利状態とを含み、
I 前記第1有利状態と前記第2有利状態とで、異なる態様で前記第1の情報は表示され、いずれの態様で表示されるかにかかわらず前記第1の情報は前記重畳領域以外に表示され、
J 前記第2の情報は、演出用スイッチの操作を促す情報であり、
K 前記演出用スイッチが操作されたときに限り、前記複数の可動手段の各々は、互いに異なる方向に移動することで前記退避状態から前記重畳状態に変化する
ことを特徴とする遊技機。」

2 特許異議申立理由の概要
申立人は、本件特許に対し、次の理由を申し立てている。
(1)証拠方法として甲第1?3号証を提出し、本件特許発明は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証?甲第3号証にそれぞれ記載された甲1発明?甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明は、サポート要件を満たしていないから、特許法第36第6項第1号の規定に適合しない発明である。
したがって、本件特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:「打ってmio♯4」,YouTube [online] [video],2013年5月8日,URL,https://www.youtube.com/watch?v=btNvYFisnBUの3分55秒、14分29秒、15分40秒、15分41秒の時点の画像を印刷したもの。
甲第2号証:パチスロ必勝本2013年6月号p28,平成25年6月1日発行
甲第3号証:特開2012-148016号公報

3 甲第1号証?甲第3号証について
(1)甲第1号証
申立人は、甲第1号証として、URL,https://www.youtube.com/watch?v=btNvYFisnBUの3分55秒、14分29秒、15分40秒、15分41秒の時点の画像を印刷したものを提出し、特許異議申立書において、(以下、「申立書」という。)「・・・その出願前に日本国内で頒布された甲第1号証・・・」(申立書第31頁第10-11行)と説明している。しかし、提出された上記画像を印刷したものが、本件特許の出願前に頒布されたものであると認めるに足る根拠を見いだすことはできない。
一方、申立書において、「(イ) 引用発明の説明 (a)甲第1号証 甲第1号証(「打ってmio♯4」,YouTube [online] [video],2013年5月8日,URL,https://www.youtube.com/watch?v=btNvYFisnBU)には、以下のような開示がある。なお、各スライドは上記YouTubeを開始から所定の経過時間で停止させ、静止画としたものである。」(申立書第8頁第3-8行)とも説明されており、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記URLに記録されたYouTubeを甲第1号証としているようにも理解できる。
そこで、当審は、申立ての趣旨を善解し、上記URLに記録されたYouTubeを甲第1号証として扱い、当該URLに記録されたYouTubeを視聴して、甲第1号証に記録された事項の認定を行うこととする。

本件特許出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証には、次の事項が記録されていると認定することができる。
ここで、「〈2分52秒〉」は、甲第1号証の再生開始からの経過時間を示すものであり、以下の同様の「分秒」に係る記載も同じである。また、画像に表示されるものは、ある一定時間表示されるものもあるが、この審決の認定において、必ずしも最初に表示された時点での経過時間に対応させて認定しているものではなく、このスロットマシンの内容を表現するにあたり、当審で適切であると認定したタイミングに対応させて認定したものである。さらに、認定した事項は、瞬間的な画像の表示内容以外にも、画像の表示内容の変化(時系列を伴うもの)も含まれる。

ア 記録事項
(ア)〈2分52秒〉

2分52秒のタイミングで、画像の左上に、「YouTube」と表示され、画像の右上に、「鬼浜爆走紅蓮隊を打ってmio!」と表示され、画像の左下に「2013/05/08」と表示され、
画像の左側に、「MAXBETとレバーオンが一体化しております」という文字が表示され、
画像中央には、女性の横顔の左側に、表示領域に建物が表示された表示装置、及び、表示装置の下方に3列のリールを有するスロットマシンが表示されていることが見て取れる。
これらのことを考慮すると、甲第1号証に記録されているものは、2013年(平成25年)5月8日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、表示装置及びリールを備えた「鬼浜爆走紅蓮隊」というスロットマシンの機種のYouTubeの動画の画像である。

(イ)<3分50秒>

3分50秒のタイミングで、画像のスロットマシンの表示装置の表示領域には、「男ボーナス」という文字が表示され、画像の下方に、「52Gでボーナスゲット!」と表示されていることが見て取れる。

(ウ)<3分54秒>

説明の便宜上、画像に表示されているスロットマシンの表示装置(略長方形の形状)の表示領域を上下方向におおよそ等しく3つに区分した領域を、上から順に、「領域1」、「領域2」、「領域3」と定義する。

3分54秒のタイミングで、画像のスロットマシンの表示装置の表示領域には、「対決で告知だ!」という文字が表示され、領域3に、菱形の形状の図形の上に1桁の数字が表示された図形が横方向に並んで3個表示され、当該3個の図形は、表示装置の下方に並んだ3列のリールの上方の位置に表示され、図形に表示された数字は、左側のリールの上方に位置する数字は3であり、中側のリールの上方に位置する数字は2であり、右側のリールの上方に位置する数字は1であることが見て取れる。

(エ)<13分34秒>

13分34秒のタイミングで、画像には、「その後235GでボーナスからATへ突入!!」と表示されていることが見て取れる。

(オ)<13分44秒>

13分44秒のタイミングで、画像のスロットマシンの表示装置の表示領域には、「狂乱麗舞」と表示されていることが見て取れる。

(カ)<14分30秒>

14分30秒のタイミングで、画像のスロットマシンの表示装置の表示領域の領域3には、1桁の数字が横方向に並んで3個表示され、当該3個の数字は、表示装置の下方に並んだ3列のリールの上方の位置に表示され、それぞれの数字は、左側のリールの上方に位置する数字は2であり、中側のリールの上方に位置する数字は3であり、右側のリールの上方に位置する数字は1であることが見て取れる。

(キ)<15分11秒>

15分11秒のタイミングで、画像の下部には、「358G獲得し、AT終了」と表示されていることが見て取れる。

(ク)<15分15秒>

15分15秒のタイミングで、画像の下部には、「その後、339Gでバリバリ目からボーナスゲット」と表示されていることが見て取れる。

(ケ)<15分40秒>

15分40秒のタイミングで、画像のスロットマシンの表示装置の表示領域には、領域1に、「ボタンプッシュ」という文字が表示され、領域2において、横方向に「押せ」という文字が表示されるとともに、当該文字の「押」と「せ」の間に、ボタンの画像が表示されていること、
また、表示装置の表示領域の領域3に、1桁の数字が横方向に並んで3個表示され、当該3個の数字は、スロットマシンの表示装置の下方に並んだ3列のリールの上方の位置に表示され、それぞれの数字は、左側のリールの上方に位置する数字は2であり、中側のリールの上方に位置する数字は3であり、右側のリールの上方に位置する数字は1であることとともに、
表示装置の表示領域の前方には、可動体が位置していないことが見て取れる。

(コ)<15分41秒>

15分41秒のタイミングで、画像には、スロットマシンの左側のリールの左下側に設けられたボタンに女性の手が触れた後すぐに、「夜露死苦ぅ!!」と表示された1個の可動体が、表示装置の表示領域の領域1の前方を、上方から下方へ下降する表示がされていること、
また、画像の表示装置の表示領域には、領域3に、1桁の数字が横方向に並んで3個表示され、当該3個の数字は、スロットマシンの表示装置の下方に並んだ3列のリールの上方の位置に表示され、それぞれの数字は、左側のリールの上方に位置する数字は3であり、中側のリールの上方に位置する数字は2であり、右側のリールの上方に位置する数字は1であることが見て取れる。

イ 理解される事項
上記アで認定した記録事項から、甲第1号証には、「鬼浜爆走紅蓮隊」というスロットマシンの機種は、以下の内容を有し、以下の動作を行うことが記録されていると認められる。

(ア)「夜露死苦ぅ!!」と表示された可動体について
上記ア(ケ)、(コ)より、
15分40秒のタイミングの画像では、
スロットマシンの表示装置の表示領域の前方には、可動体が位置していない一方で、
15分41秒のタイミングの画像では、
スロットマシンの左側のリールの左下側に設けられたボタンに女性の手が触れた後すぐに、「夜露死苦ぅ!!」と表示された1個の可動体が、スロットマシンの表示装置の表示領域の領域1の前方を、上方から下方へ下降する表示がされていることから、
スロットマシンにおいて、ボタンが操作されるとすぐに、下降する直前には表示領域の前方には位置していなかった「夜露死苦ぅ!!」と表示された1個の可動体が、表示装置の表示領域の領域1の前方を、上方から下方へ下降すると理解することができる。

(イ)ボーナス状態及びAT状態について
上記ア(イ)、(エ)、(オ)、(キ)、(ク)より、
スロットマシンは、3分50秒から13分34秒までの235ゲームの期間は、男ボーナスというボーナス状態に制御され、
ボーナス状態終了後の13分34秒から15分11秒までの358ゲームの期間は、狂乱麗舞というAT状態に制御され、
AT状態終了後の15分11秒から15分15秒の期間に339ゲームを消化してから、ボーナス状態に制御されていると理解することができる。

(ウ)表示装置の表示領域の領域3に表示される3個の数字について(1)
上記(イ)を踏まえると、上記ア(ウ)の画像が示す3分54秒のタイミングのスロットマシンは、男ボーナスというボーナス状態に制御されていると理解することができる。
スロットマシンにおいて、ボーナス中にリールを停止操作する順序を指示する表示を行う期間があることが周知技術であることと併せ、
上記ア(ウ)より、画像の表示装置の表示領域に、「対決で告知だ!」という文字が表示されていること、
さらには、3列のリールの上方の位置に表示され、表示装置の表示領域の領域3に、菱形の形状の図形の上に1桁の数字が表示された図形が横方向に並んで3個表示されている状態において、方向に並んで表示されている3個の数字は、左側のリールの上方に位置する数字は3であり、中側のリールの上方に位置する数字は2であり、右側のリールの上方に位置する数字は1であることを踏まえると、
当該3個の数字は、リールを停止操作する順序を指示する表示を意味し、数字「1」が付された右側のリール、数字「2」が付された中側のリール、数字「3」が付された左側のリールの順序でリールを停止操作することを指示しているということができる。
よって、男ボーナス状態に制御されているスロットマシンにおいて、3列のリールの上方の位置に表示され、表示装置の表示領域の領域3に、それぞれが菱形の形状の図形の上に表示され、横方向に並んで表示されている3個の数字は、リールを停止操作する順序を指示する表示であると理解することができる。

(エ)表示装置の表示領域の領域3に表示される3個の数字について(2)
上記(イ)を踏まえると、上記ア(カ)の画像が示す14分30秒のタイミングのスロットマシンは、狂乱麗舞というAT状態に制御されていると理解することができる。
また、AT状態に制御されているスロットマシンは、リールを停止操作する順序を指示する表示を行うことが技術常識であることを踏まえると、
上記ア(カ)より、AT状態に制御されているスロットマシンにおいて、3列のリールの上方の位置に表示され、表示装置の表示領域の領域3に横方向に並んで表示されている3個の数字は、リールを停止操作する順序を指示する表示であると理解することができる。

(オ)「ボタンプッシュ」及び「押せ」という文字の表示について
上記(イ)で検討したように、AT状態終了後の15分11秒から15分15秒の期間に339ゲームを消化してから、ボーナス状態に制御されているとを踏まえると、上記ア(ケ)の画像が示す15分40秒のタイミングのスロットマシンは、ボーナス状態に制御されていると理解することができ、
上記ア(ケ)の画像が示す15分40秒のタイミングのスロットマシンの表示装置の表示領域の領域1に、「ボタンプッシュ」という文字が表示され、領域2において、横方向に「押せ」という文字が表示されるとともに、当該文字の「押」と「せ」の間に、ボタンの画像が表示されていることから、
ボーナス状態に制御されているスロットマシンの表示装置の表示領域の領域1と領域2において、ボタンを押すことを促す表示が表示されていることであると理解することができる。

ウ 甲第1号証に記録された発明
上記ア、イより、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記録されていると認められる(本件発明の分説A?Kに対応させて、a?kの符号は、当審にて付した。)。

甲1発明
「a 鬼浜爆走紅蓮隊という機種のスロットマシンであって(ア(ア))、
b 少なくとも建物又は「男ボーナス」という文字が表示される表示領域を有している表示装置及びリールを備え(ア(ア)、ア(イ)、イ(ア))、
d?j 表示装置は、
表示装置の表示領域を上下方向におおよそ等しく3つに区分した領域を、上から順に、「領域1」、「領域2」、「領域3」と表したとき(ア(ウ))、
領域3において、男ボーナス状態に制御されているときには、それぞれが菱形の形状の図形の上に表示され、横方向に並んで表示されている3個の数字により、リールを停止操作する順序を指示する表示が行われ(イ(ウ))、
領域3において、AT状態に制御されているときには、横方向に並んで表示されている3個の数字により、リールを停止操作する順序を指示する表示が行われ(イ(エ))、
さらに、領域1と領域2において、ボーナス状態に制御されているときには、ボタンを押すことを促す表示が行われ(イ(オ))、
c、k ボタンが操作されるとすぐに、下降する直前には表示領域の前方には位置していなかった「夜露死苦ぅ!!」と表示された1個の可動体が、表示装置の領域1の前方を、上方から下方へ下降する(イ(ア))、
鬼浜爆走紅蓮隊という機種のスロットマシン(ア(ア))。」

(2)甲第2号証
ア 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、
・第28頁の略中央部に、「鬼浜爆走紅蓮隊 友情挽歌編」と記載され、
・同頁中段部左方の「ボーナス(擬似ボーナス)」というタイトルの囲みにおける、左下方に示された、「ボーナスゲーム」という画面に、横方向に、菱形の形状の図形の上に1桁の数字が表示されたものが3個並び、数字は、左側から「3」、「2」、「1」と記載され、
・同頁中段部中央の「AT狂乱麗舞」というタイトルの囲みにおいて、左上側の画面に、左側から、「3」、「1」、「2」という数字が記載されている。

イ 「鬼浜爆走紅蓮隊 友情挽歌編」が、スロットマシンであることは自明であり、スロットマシンにおいて、ボーナス中にリールを停止操作する順序を指示する表示を行う期間があることが周知技術であることに加え、AT状態に制御されているスロットマシンは、リールを停止操作する順序を指示する表示を行うことが技術常識であることを踏まえると、
甲第2号証には、「鬼浜爆走紅蓮隊 友情挽歌編」という機種のスロットマシンにおいて、ボーナスゲームでは、菱形の形状の図形の上に表示された数字により、リールを停止操作する順序を指示し、AT狂乱麗舞のときには、表示された数字により、リールを停止操作する順序を指示する技術が記載されていると認められる(以下、「甲2技術」という。)。

(3)甲第3号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤の中央に表示装置を有するセンターケースが配置され、該センターケースの周壁の一部に可動翼片を有する可変入賞装置と表示装置の近傍で動作可能な可動部材を有する可動役物装置とが設けられた遊技機に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0006】
この発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、可動翼片が設けられているセンターケース周辺の領域においてもダイナミックな演出を実行可能とし、遊技の興趣を高めることができ、表示装置の表示演出と連動して迫力のある演出を行える可動役物装置を備えた遊技機を提供することを目的とする。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用したパチンコ遊技機の一実施形態の説明図である。
本実施形態の遊技機10は前面枠12を備え、該前面枠12は本体枠(外枠)11にヒンジ13を介して開閉回動可能に組み付けられている。遊技盤30(図2参照)は前面枠12の表側に形成された収納部(図示省略)に収納されている。また、前面枠(内枠)12には、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス(透明部材)14を備えたガラス枠15が取り付けられている。
・・・
【0019】
また、前面枠12の下部には、図示しない打球発射装置に遊技球を供給する上皿21・・・等が設けられている。さらに、上皿21の上縁部には、遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25が設けられている。・・・
【0020】
・・・また、遊技者が演出ボタン25を操作することによって、表示装置41(図2参照)における変動表示ゲーム(飾り特図変動表示ゲーム)において、遊技者の操作を介入させた演出等を行わせることができる。
・・・
【0022】
図2は、遊技盤の一実施形態を示す正面図である。 本実施形態の遊技盤30は、ガイドレール31で囲まれた略円形状の遊技領域32を前面に有しており、遊技領域32のほぼ中央には、図柄変動表示ゲームを実行する表示装置41を備えたセンターケース40が配置されている。表示装置41はセンターケース40にほぼ中央に設けられており、センターケース40は表示装置41の周囲を囲う部分が遊技盤30の表面よりも前方へ突出するように形成されている。
【0023】
また、センターケース40には、表示装置41の上方に位置するように「看板」を模した可動役物装置としてのロゴ役物42が、またその右隣には内蔵ランプの点灯態様で光が回転や点滅をするような表示が可能な「パトライト」を模した回転表示役物43が設けられている。さらに、センターケース40の表示装置41の右側下部には「戦車」を模した可動役物装置44が配設されている。・・・
・・・
【0039】
図2と図5を比較すると明らかなように、ロゴ役物42と回転表示役物43はセンターケース40の上部から前方へ落下するように移動し、可動役物装置44は左方向へ移動する。なお、「戦車」を模した可動役物装置44は、キャタピラー部を有する下車体部44Aと中車体部44Bと砲台を備えた上車体部44Cとから構成され、下車体部44Aが固定で、中車体部44Bと上車体部44Cが左右方向へ移動可能に構成されている。さらに、上車体部44Cは左方向(表示装置41の前方)へ移動しながら時計回りに回動するように構成されている。



(ウ)「【0222】
(第4実施例)
次に、演出制御装置300による表示装置41およびセンターケースの役物42?44を使用した演出制御の第4の実施例について図46?図50を用いて説明する。
この実施例は、通常の遊技状態では滅多に出現しない特別演出を実行する際に可動役物42?44を使用した演出を実行可能とするとともに、ゲームの途中で遊技機前面の演出ボタン25が操作されたか否かによって特別演出を実行するかしないかを決定するようにしたものである。
【0223】
しかし、このように、演出ボタン25の操作の有無を条件にすると遊技者による操作ごとに演出ボタン25の操作タイミングが異なることが予想されるため、変動表示ゲームの実行時間が一定である場合、操作タイミングが異なると複数の特別演出のパターンを用意しておかないと、変動表示ゲームの終了タイミングに合わせて特別演出を終了させることができなくなる。
そこで、本実施例ではそのような不具合を回避するため、特別演出の前に時間調整用の補正演出を挿入するようにした。・・・
【0224】
第4実施例における演出制御では、図47に示すように、表示装置41において通常演出の変動表示ゲームが開始された後(a)、途中(前半変動中)で演出ボタン25を操作することを促す表示(例えばボタンの図柄と「PUSH」のような文字)を行う(b)。そして、予め設定した有効期間内に演出ボタン25が操作されなかった場合には、そのまま通常演出を実行する(c),(d)。
一方、有効期間内に演出ボタン25が操作された場合には、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示される(e),(f)。このとき、可動役物44を作動させてもよい。さらに、補正演出中も演出ボタンの操作を有効とし、演出ボタンの操作で例えば可動役物装置44の砲身を点灯させるとともに、表示装置41にて砲撃で扉を破壊するような演出を行い、演出の最後に、扉が開ききれば特別演出へ移行し、開ききらなかったら通常演出へ戻るようにすれば、遊技者は扉を開けようとボタン操作に気を取られて操作するようになり、ボタン操作に気を取らせることにより、時間調整していることを遊技者に気付かれにくくするようにしてもよい。
【0225】
本実施例では、上記補正演出実行後、所定のタイミングで、図47(g),(h)または(i),(j)に示すような特別演出が実行される。このうち、(g),(h)の特別演出は期待度が大きな演出であり、表示装置41において特別な演出が表示されるとともに回転表示役物(パトライト)43が表示装置41の前方へ向かって移動したり後退したりするような演出が行われる。(i),(j)の特別演出は期待度が中程度の演出であり、表示装置41において特別な演出が行われ、役物43は作動しない。また、(g)または(i)の特別演出が実行されると、リーチが発生する後半変動が実行される。なお、期待度大の特別演出では役物43と44を作動させ、期待度中の特別演出では役物43のみを作動させるような演出を行うようにしてもよい。上記の説明から、演出ボタンを操作することを促す表示は、特別演出の予告演出として機能することが分かる。
・・・
【0229】
また、上記擬似補正演出コマンドは、演出変更予告コマンドと同様に、遊技制御装置100が始動入賞の発生に基づいて抽出した乱数に応じて、変動表示ゲーム中に擬似補正演出を行うか否か決定し、演出制御装置300へ送信する。この擬似補正演出は、例えば第1大入賞口35が開放される第1当りが発生するときに、比較的高い確率で実行される一方、ゲームの結果が外れである場合にも稀にいわゆるガセ演出として実行されるように、演出内容を決定するための乱数の参照テーブルを設定しておくことにより、遊技特に変動表示ゲームの興趣を高めるようにすることができる。
【0233】
図49には、図46の演出変更制御フロー中のステップS312の擬似補正演出制御処理の手順の一例が、また、図50には該擬似補正演出制御処理による具体的な演出の例が示されている。
図50に示すように、擬似補正演出では、(a)のようにゲームの途中(前半変動中)で演出ボタン25を操作することを促す表示を行う。そして、有効期間内に演出ボタン25が操作された場合には、(b),(c)のように、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示される。このとき、可動役物44を作動させるようにしてもよい。
そして、補正演出実行後、所定のタイミングで、ゲームの結果に応じて、図50(d)のように通常演出へ戻る場合と、(e)または(f)のように、役物42と43、または役物42のみ落下して、第1当りの当選演出が実行される。
なお、予め設定した有効期間内に演出ボタン25が操作されなかった場合には、補正演出は実行されずに、所定時間経過後に通常演出(d)または第1当りの当選演出(e)または(f)が実行される。」

(エ)図5

・図5において、役物42について、右下方向に向かう矢印が記載され、役物43について、左下方向に向かう矢印が記載されていることが見て取れる。

(オ)図50

・図50(a)、(e)から、役物42と43が落下していることが見て取れる。

イ 認定事項
(ア)認定事項1
上記ア(イ)における「図2と図5を比較すると明らかなように、ロゴ役物42と回転表示役物43はセンターケース40の上部から前方へ落下するように移動し、可動役物装置44は左方向へ移動する。」(【0039】)という記載、及び、上記ア(エ)を踏まえると、図5において、記載されている矢印は、役物が移動する方向を指していると認められる。
そうすると、甲第3号証には、
ロゴ役物42は右下方向へ移動して、回転表示役物43は左下方向に移動して、センターケース40の上部から表示装置41の前方へ落下するように移動することが記載されていると認められる。

(イ)認定事項2
上記ア(ウ)における「図50に示すように、擬似補正演出では、・・・ゲームの結果に応じて、図50(d)のように通常演出へ戻る場合と、(e)または(f)のように、役物42と43、または役物42のみ落下して、第1当りの当選演出が実行される。」(【0233】)という記載、及び、上記ア(オ)の記載から、
甲第3号証には、第1当りの当選演出では、役物42と43が落下する場合があることが記載されていると認められる。

ウ 甲第3号証に記載の技術
上記ア、イより、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

甲3技術
「パチンコ遊技機において、
前面枠12の下部には、上皿21が設けられ、上皿21の上縁部には、遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25が設けられ、遊技者が演出ボタン25を操作することによって、表示装置41における変動表示ゲームにおいて、遊技者の操作を介入させた演出等を行わせることができ(【0017】、【0019】、【0020】)、
遊技盤30は略円形状の遊技領域32を前面に有しており、遊技領域32のほぼ中央には、図柄変動表示ゲームを実行する表示装置41を備えたセンターケース40が配置され、センターケース40には、表示装置41の上方に位置するように「看板」を模した可動役物装置としてのロゴ役物42が、またその右隣には内蔵ランプの点灯態様で光が回転や点滅をするような表示が可能な「パトライト」を模した回転表示役物43が設けられ、さらに、センターケース40の表示装置41の右側下部には「戦車」を模した可動役物装置44が配設され、ロゴ役物42は右下方向へ移動して、回転表示役物43は左下方向へ移動して、センターケース40の上部から表示装置41の前方へ落下するように移動し、可動役物装置44は左方向へ移動し(【0022】、【0023】、【0039】、図2、図5、認定事項1)、
通常の遊技状態では滅多に出現しない特別演出を実行する際に可動役物42?44を使用した演出を実行可能とするとともに、ゲームの途中で遊技機前面の演出ボタン25が操作されたか否かによって特別演出を実行するかしないかを決定するようにしたものであり、
表示装置41において通常演出の変動表示ゲームが開始された後、途中(前半変動中)で、ボタンの図柄と「PUSH」のような文字からなる演出ボタン25を操作することを促す表示を行い、有効期間内に演出ボタン25が操作された場合には、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示され、補正演出実行後、所定のタイミングで特別演出が実行され、期待度大の特別演出では役物43と44を作動させ(【0222】、【0224】、【0225】、図47)、
また、第1当りが発生するときに、比較的高い確率で実行される擬似補正演出では、ゲームの途中(前半変動中)で演出ボタン25を操作することを促す表示を行い、有効期間内に演出ボタン25が操作された場合には、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示され、補正演出実行後、所定のタイミングで、ゲームの結果に応じて、通常演出または第1当りの当選演出が実行され、予め設定した有効期間内に演出ボタン25が操作されなかった場合には、補正演出は実行されずに、所定時間経過後に通常演出または第1当りの当選演出が実行され、第1当りの当選演出では、役物42と43が落下する場合がある(【0229】、【0233】、図50、認定事項2)技術。」

4 当審の判断
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する(本件発明の構成A?Kに対応させて、見出し(a)?(k)を付した。)。

(a)甲1発明の「鬼浜爆走紅蓮隊という機種のスロットマシン」は、遊技を行うことが可能であることは自明であるから、甲1発明の「鬼浜爆走紅蓮隊という機種のスロットマシン」は、本件発明の構成Aの「遊技が可能な遊技機」に相当する。
よって、甲1発明の構成aは、本件発明の構成Aに相当する。

(b)甲1発明において、「少なくとも建物又は「男ボーナス」という文字が表示される」ことは、本件発明において、「表示状態を変化可能」であることに相当し、
甲1発明の「表示領域」は、本件発明の「表示領域」に、甲1発明の「有している」ことは、本件発明の「有する」に、甲1発明に「表示装置」は、本件発明の「表示手段」に相当する。
よって、甲1発明の構成bは、本件発明の構成Bに相当する。

(c)甲1発明の「「夜露死苦ぅ!!」と表示された1個の可動体」が、「上方から下方へ下降する」ときには、「表示装置の表示領域の領域1の前方」に位置しているから、甲1発明の「領域1」は、本件発明の「表示領域における重畳領域」に相当し、
甲1発明の「可動体」が、「上方から下方へ下降」して、「表示装置の表示領域の領域1の前方」に位置していることは、本件発明の「可動手段」が「重畳状態」であることに相当し、甲1発明の「可動体」が、「下降する直前には表示領域の前方には位置していな」いことは、本件発明の「可動手段」が「退避状態」であることに相当し、
甲1発明の「1個の可動体」は、可動手段であるという点で、本件発明の「複数の可動手段」と共通する。

よって、甲1発明の構成c、kと本件発明の構成Cとは、前記表示手段の前記表示領域における重畳領域に重畳する重畳状態と、該重畳領域から退避した退避状態とで変化可能な可動手段を備えているという点で共通する。

(d)上記(b)より、甲1発明の「表示装置」は、本件発明の「表示手段」に相当し、
甲1発明の「男ボーナス状態に制御されているとき」と「AT状態に制御されているとき」のいずれも、本件発明の「有利状態」に相当し、
甲1発明の「リールを停止操作する順序を指示する表示」は、本件発明の「第1の情報」に相当し、
甲1発明の「ボタンを押すことを促す表示」は、本件発明の「該第1の情報と異なる第2の情報」に相当し、
甲1発明において、「表示が行われ」ることは、本件発明の「表示可能であ」ることに相当する。
したがって、甲1発明の構成d?jの「表示装置」は、「表示領域」の「領域3」において、「男ボーナス状態に制御されているときに」も、「AT状態に制御されているときに」も、「リールを停止操作する順序を指示する表示が行われ」、「ボーナス状態に制御されているときには、ボタンを押すことを促す表示が行われ」ることは、本件発明の構成Dである「前記表示手段は、有利状態において、第1の情報と、該第1の情報と異なる第2の情報と、を表示可能であ」ることに相当する。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Dに相当する構成を備えている。

(e)上記(c)より、甲1発明の「領域1」は、本件発明の「表示領域における重畳領域」に相当すること、及び、上記(d)より、甲1発明の「リールを停止操作する順序を指示する表示」(本件発明の「第1の情報」に相当。)が、「領域3」に表示されることは、すなわち、「領域1」という、本件発明の「表示領域における重畳領域」に相当する領域以外の領域に表示されていることを示している。
そうすると、甲1発明の「領域3」は、本件発明の「前記表示領域における前記重畳領域以外」に相当し、
甲1発明の構成d?jにおいて、「リールを停止操作する順序を指示する表示」が、「領域3」に表示されることは、本件発明の「前記第1の情報は、前記表示領域における前記重畳領域以外に表示され」ることに相当するといえる。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Eに相当する構成を備えている。

(f)上記(c)より、甲1発明の「領域1」は、本件発明の「表示領域における重畳領域」に相当すること、及び、上記(d)より、甲1発明の「ボタンを押すことを促す表示」(本件発明の「第2の情報」に相当。)が、「領域1と領域2において」表示されることは、すなわち、「領域1」という、本件発明の「表示領域における重畳領域」に相当する領域を含む領域に表示されていることを示している。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Fに相当する構成を備えている。

(g)上記(d)より、甲1発明の「リールを停止操作する順序を指示する表示」(本件発明の「第1の情報」に相当。)は、スロットマシンの分野の技術常識を考慮すると、いわゆる押し順ナビという、遊技者に有利となるリールの停止操作の順序を指示する表示であるから、本件発明の「有利となる操作態様を示す情報」に相当することは明らかである。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Gに相当する構成を備えている。

(h)上記(d)より、甲1発明の「男ボーナス状態に制御されているとき」と「AT状態に制御されているとき」のいずれも、本件発明の「有利状態」に相当することから、甲1発明の「男ボーナス状態に制御されているとき」、「AT状態に制御されているとき」はそれぞれ、本件発明の「第1有利状態」、「第2有利状態」に相当する。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Hに相当する構成を備えている。

(i)上記(e)より、甲1発明の「リールを停止操作する順序を指示する表示」(本件発明の「第1の情報」に相当。)が、「領域3」(本件発明の「前記表示領域における前記重畳領域以外」に相当。)に表示され、
上記(h)より、甲1発明の「男ボーナス状態に制御されているとき」、「AT状態に制御されているとき」はそれぞれ、本件発明の「第1有利状態」、「第2有利状態」に相当することを踏まえると、
甲1発明において、「領域3」(本件発明の「前記表示領域における前記重畳領域以外」に相当。)に表示される「リールを停止操作する順序を指示する表示」について、「男ボーナス状態に制御されているとき」(本件発明の「第1有利状態」に相当。)と、「AT状態に制御されているとき」(本件発明の「第2有利状態」に相当。)とで、「それぞれが菱形の形状の図形の上に表示され、横方向に並んで表示されている3個の数字」と、「横方向に並んで表示されている3個の数字」というように、「数字」が、「菱形の形状の図形の上に表示され」ているか否かという点で異なる「表示」であることは、本件発明の「前記第1有利状態と前記第2有利状態とで、異なる態様で前記第1の情報は表示され」ることに相当し、また、「数字」が、「菱形の形状の図形の上に表示され」ているか否かに関わらず、「リールを停止操作する順序を指示する表示」は、「領域3」(本件発明の「前記表示領域における前記重畳領域以外」に相当。)に表示されることは、「いずれの態様で表示されるかにかかわらず前記第1の情報は前記重畳領域以外に表示され」ることに相当する。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Iに相当する構成を備えている。

(j)上記より、本件発明の「第2の情報」に相当する甲1発明の「ボタンを押すことを促す表示」は、本件発明の「演出用スイッチの操作を促す情報」にも相当する。
よって、甲1発明の構成d?jは、本件発明の構成Jに相当する構成を備えている。

(k)上記(a)より、甲1発明の「鬼浜爆走紅蓮隊という機種のスロットマシン」は、本件発明の構成Aの「遊技が可能な遊技機」に相当し、
上記(c)より、甲1発明の「可動体」が、「上方から下方へ下降」して、「表示装置の表示領域の領域1の前方」に位置していることは、本件発明の「可動手段」が「重畳状態」であることに相当し、甲1発明の「可動体」が、「下降する直前には表示領域の前方には位置していな」いことは、本件発明の「可動手段」が「退避状態」であることに相当し、
甲1発明の「1個の可動体」は、可動手段であるという点で、本件発明の「複数の可動手段」と共通することを踏まえ、
甲1発明の構成c、kの「ボタン」は本件発明の「演出用スイッチ」に相当し、甲1発明の構成c、kの「操作されるとすぐに」ということは、本件発明の「操作されたとき」に相当し、甲1発明の構成c、kの「上方から下方へ下降する」ことは、本件発明の「移動すること」に相当することから、
甲1発明の構成c、kと本件発明の構成Kとは、前記演出用スイッチが操作されたときに前記可動手段は、移動することで前記退避状態から前記重畳状態に変化する、遊技機である点で共通する。

したがって、本件発明と甲1発明とは、
[一致点]
「A 遊技が可能な遊技機であって、
B 表示状態を変化可能な表示領域を有する表示手段と、
C’ 前記表示手段の前記表示領域における重畳領域に重畳する重畳状態と、該重畳領域から退避した退避状態とで変化可能な可動手段と、
を備え、
D 前記表示手段は、有利状態において、第1の情報と、該第1の情報と異なる第2の情報と、を表示可能であり、
E 前記第1の情報は、前記表示領域における前記重畳領域以外に表示され、
F 前記第2の情報は、前記表示領域における前記重畳領域を含む領域に表示され、
G 前記第1の情報は、有利となる操作態様を示す情報であり、
H 前記有利状態は、第1有利状態と第2有利状態とを含み、
I 前記第1有利状態と前記第2有利状態とで、異なる態様で前記第1の情報は表示され、いずれの態様で表示されるかにかかわらず前記第1の情報は前記重畳領域以外に表示され、
J 前記第2の情報は、演出用スイッチの操作を促す情報であり、
K’ 前記演出用スイッチが操作されたときに、前記可動手段は、移動することで前記退避状態から前記重畳状態に変化する
遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

・[相違点1](構成C)
可動手段の構造について、本件発明は、「複数の」可動手段からなるの に対し、甲1発明は、「1個の」「夜露死苦ぅ!!」と表示された可動体 である点。

・[相違点2](構成Kの前段)
可動手段の移動の契機について、本件発明は、演出用スイッチが操作さ れたときに「限」るのに対し、甲1発明は、ボタンが操作されたときに限 るかどうか不明である点。

・[相違点3](構成Kの後段)
可動手段の移動の態様が、本件発明は、「複数の」可動手段「の各々は、互いに異なる方向に」移動するのに対し、甲1発明は、「1個の」「夜露 死苦ぅ!!」と表示された可動体が移動するものである点。

(2)判断
上記相違点1?3である可動手段の構造、移動の契機、移動の態様の点は、相互に関連するでまとめて検討する。

ア 上記3(3)ウに示したとおり甲3技術において、演出ボタン25が操作された場合に、複数の役物が作動するのは、「期待度大の特別演出では役物43と44を作動させ」る場合(以下、「場合1」という。)と、「役物42と43が落下する場合がある」「第1当りの当選演出が実行され」る場合(以下、「場合2」という。)である。
ところで、場合1あっても、場合2であっても、「演出ボタン25が操作された場合には、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示され、補正演出実行後、所定のタイミングで」「実行され」る演出において、役物が作動するものである。
そうすると、甲3技術の「遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25」は、本件発明の「演出用スイッチ」に相当し、甲3技術の「操作された場合」は、本件発明の「操作されたとき」に相当する。

イ また、上記アのとおり、作動する役物は、場合1では、「役物43と44」、すなわち、「「パトライト」を模した回転表示役物43」と「「戦車」を模した可動役物装置44」であり、場合2では、「役物42と43」、すなわち、「「看板」を模した可動役物装置としてのロゴ役物42」と「「「パトライト」を模した回転表示役物43」である。
ここで、甲3技術における「ロゴ役物42」、「回転表示役物43」、「可動役物装置44」各々が移動する方向は、「右下方向」、「左下方向」、「左方向」であって、これらの方向は異なる方向である。
そうすると、甲3技術における「「パトライト」を模した回転表示役物43」と「「戦車」を模した可動役物装置44」、又は、「「看板」を模した可動役物装置としてのロゴ役物42」と「「「パトライト」を模した回転表示役物43」のいずれも、本件発明の「複数の可動手段」に相当し、甲3技術において、これら「ロゴ役物42」、「回転表示役物43」、「可動役物装置44」が各々、「右下方向」、「左下方向」、「左方向」へ移動することは、本件発明の「前記複数の可動手段の各々は、互いに異なる方向に移動すること」に相当する。

ウ 上記ア、イより、甲3技術は、「「看板」を模した可動役物装置としてのロゴ役物42」、「「パトライト」を模した回転表示役物43」と「「戦車」を模した可動役物装置44」を備え、「遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25」が「操作された場合」に、「回転表示役物43」と「可動役物装置44」は各々、「右下方向」、「左下方向」という異なる方向へ移動し、又は、「ロゴ役物42」と「回転表示役物43」は各々、「左下方向」、「左方向」という異なる方向へ移動する技術を表しているといえ、これは、本件発明の「複数の可動手段」「を備え、」「演出用スイッチが操作されたときに」、「前記複数の可動手段の各々は、互いに異なる方向に移動する」という構成に相当する。

エ 甲1発明に甲3技術を適用することを検討する。
甲1発明は、「鬼浜爆走紅蓮隊という機種のスロットマシン」であって、「1個の」「「夜露死苦ぅ!!」と表示された」「可動体」が、「ボタンが操作されるとすぐに、」作動するものである。
これに対し、甲3技術は、「パチンコ遊技機」であって、上記ア、イで検討したとおり、場合1では、「「パトライト」を模した回転表示役物43」と「「戦車」を模した可動役物装置44」が、場合2では、「「看板」を模した可動役物装置としてのロゴ役物42」と「「パトライト」を模した回転表示役物43」が、「演出ボタン25が操作された場合には、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示され、補正演出実行後、所定のタイミングで」「実行され」る演出において、役物が作動するものである。

オ 甲1発明である「スロットマシン」と甲3技術である「パチンコ遊技機」とは、遊技機という点で技術分野の関連性がないとはいえない。
しかし、甲1発明は、「ボタンが操作されるとすぐに」可動体が作動するものである一方、甲3技術は、「演出ボタン25が操作された場合には、時間調整用の補正演出が特別演出実行タイミングまで表示され、補正演出実行後、所定のタイミングで」「実行され」る演出において、役物が作動するものであって、これは、「しかし、このように、演出ボタン25の操作の有無を条件にすると遊技者による操作ごとに演出ボタン25の操作タイミングが異なることが予想されるため、変動表示ゲームの実行時間が一定である場合、操作タイミングが異なると複数の特別演出のパターンを用意しておかないと、変動表示ゲームの終了タイミングに合わせて特別演出を終了させることができなくなる。そこで、本実施例ではそのような不具合を回避するため、特別演出の前に時間調整用の補正演出を挿入するようにした。」(甲3号証の【0223】)という、パチンコ遊技機特有の演出制御上の課題から、演出ボタン25の操作から、時間調整用の補正演出を経てから、役物が作動するという時間差を設けているものである。
したがって、「ボタンが操作されるとすぐに」可動体が作動する甲1発明の「スロットマシン」には、甲3技術のような、パチンコ遊技機特有の演出制御上の課題から、演出ボタン25の操作から、役物が作動するという時間差を設ける必要性は存在せず、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けは存在しない。

カ また、甲3技術の役物の作動は、「予め設定した有効期間内に演出ボタン25が操作されなかった場合には、補正演出は実行されずに、所定時間経過後に通常演出または第1当りの当選演出が実行され、第1当りの当選演出では、役物42と43が落下する場合がある」、すなわち、演出ボタン25が操作されなくても、役物42と43が作動することがあるから(場合2)、可動手段の移動の契機について、本件発明のように、演出用スイッチが操作されたときに「限」るものではない。
そうすると、相違点2である可動手段の移動の契機について、本件発明のように、演出用スイッチが操作されたときに「限」るという点を満たさず、この点が設計的事項であるとするに足る根拠も認められない。

キ 甲2技術は、上記3(2)イに示したとおりであるところ、甲第2号証には、上記相違点1?3とした点は、記載も示唆もされていない。

ク ところで、相違点1である可動手段の構造について、本件発明は、「複数の」可動手段からなるのに対し、甲1発明は、「1個の」「夜露死苦ぅ!!」と表示された可動体であるとした点について、1個の可動体を動作させる構成とするか、あるいは、複数の可動体を動作させる構成とするかは、一般的に設計事項というべき事項にすぎず、甲第3号証の提示がなくとも、甲1発明における「可動体」を複数の可動体を動作させる構成とし、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、甲1発明に接した当業者が容易に想到し得ることである。

ケ しかしながら、甲第2号証には、上記相違点2及び3に係る本件発明の構成は、記載も示唆もされていない。
また、甲第3号証についていえば、上記オで検討したとおり、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けはないうえ、上記カで検討したとおり、甲第3号証には、上記相違点2に係る構成は記載も示唆もされていないから、仮に、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けがあるとしても、少なくとも、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、甲1発明、甲3技術に接した当業者が容易に想到し得るとすることはできない。

コ してみると、少なくとも、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、甲1発明、甲2技術及び甲3技術に基いて、当業者が容易に想到し得たということはできない。

サ 申立人の主張
(ア) 申立人は、異議申立書において、特に相違点2について、次の主張をしている。

・相違点2について、「・・・しかし、演出ボタンの操作が行われた場合に可動手段が動作する構成とするか、演出ボタンの操作が行われない場合にも可動手段が動作する構成とするかは、あくまでも効果的な演出を実現するために適宜選択する構成にすぎず、単なる設計事項である。
また、平成31年4月24日提出の意見書において「本願発明では、演出用スイッチが操作されたときに限り可動手段が移動する構成を有することで、遊技者の集中力が散漫することを抑制することができます。」と主張している効果は本件特許出願の当初明細書に一切記載されておらず、そのような主張は認められるものではない。
・・・すなわち、本件特許発明の構成Kによる効果は、演出用スイッチを操作するか否かの選択による遊技の楽しみ方における演出効果に関するものでしかない。よって、甲1発明に可動手段による演出の付加価値を高めるために、甲3発明を適用して、本件特許発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。また、上記したように、甲1発明に甲3発明を適用して予測される効果は、単に演出上のありふれた効果でしかなく、本件特許発明の本質的な課題に何ら貢献するものではない。よって、本件特許発明の構成Kの顕著な効果を参酌して進歩性を肯定すべき理由もない。
また、甲1発明に甲3発明を適用することを阻害する要因は一切見当たらない。・・・」(異議申立書第28頁第7行?第29頁第25行)

(イ) 申立人の上記主張について、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けがないことは、上記(2)オで検討したとおりであり、さらに、相違点2とした、可動手段の移動の契機について、上記(2)カのとおり、本件発明のように、演出用スイッチが操作されたときに「限」るとした点を設計的事項であるとするに足る根拠も認められない。
また、申立人から、演出ボタンの操作が行われた場合に可動手段が動作する構成とすることにより、演出用スイッチを操作するか否かの選択による遊技の楽しみ方における演出効果を高めることが、遊技機分野において公知であることを示す証拠も提出されていない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

(3)まとめ
以上のことから、本件発明は、甲1発明、甲2技術及び甲3技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

5 特許請求の範囲の記載要件について(サポート要件)
ア 本件発明は、「遊技が可能な遊技機であって、」(構成A)という発明特定事項を備え、特許明細書の【0007】に、「(1)遊技が可能な遊技機(スロットマシン1、パチンコ遊技機)であって、」との記載があることから、本件発明における「遊技機」は、実施例として、「スロットマシン」と「パチンコ遊技機」を含むことを想定しているといえる。

イ ここで、本件発明のスロットマシンについての実施例は、特許明細書の【0024】?【0189】に記載されている。
そして、パチンコ遊技機についての実施例は、特許明細書に次のとおり記載され、本件発明の「第1の情報」、「第2の情報」に関し、パチンコ遊技機において、いかなる情報を適用するかについても十分開示されていると認められる(下線は、当審が付した。以下同様。)。
「【0190】
[パチンコ遊技機について]
本実施の形態では、可動手段901?903および液晶表示器51は、スロットマシン1に適用されるものとして説明した。しかしながら、該可動手段901?903および液晶表示器51は、パチンコ遊技機に適用してもよい。該パチンコ遊技機とは、たとえば、可動手段や液晶表示器を備えているものである。このようなパチンコ遊技機においては、第1の情報として、右打ちを示唆する表示や左打ちを示唆する表示など、遊技者に利益を与える有利な情報としてもよい。また、第2の情報として、演出用スイッチの押下を示唆する表示や、大当り中のラウンド数を示す表示や、連チャン数を示す情報など、遊技者に利益を与える有利な情報とは異なる情報としてもよい。」

ウ 申立人は、次の主張をしている。
「イ 理由2について
本件特許発明は「A 遊技が可能な遊技機であって、」という構成を備えているが、遊技機に対応する実施例としてスロットマシンに適用した実施例のみが本件特許出願の当初明細書に記載されている。本件特許出願の当初明細書の段落0190にはパチンコ遊技機に適用してもよい旨の記載があるが、パチンコ遊技機に適用した場合の具体的な実施例が記載されていない。
また、当初明細書等の記載において、本件特許発明が電子ゲーム機のような「遊技機」一般に適用されるものと理解できる手掛かりが全くない以上、当業者にとって「A 遊技が可能な遊技機であって、」が当初明細書等に記載されているのと同然であるとはいえない。
よって、本件特許発明は、サポート要件を満たしていない。」

しかし、ア、イで検討したとおり、本件の特許明細書において、「遊技機」として、「スロットマシン」及び「パチンコ遊技機」についての実施例は記載されており、本件発明における「遊技機」は、「スロットマシン」と「パチンコ遊技機」とを合わせた概念を表しているということができる。
そして、本件の特許明細書における「遊技機」として、「電子ゲームのような「遊技機」一般に適用されるもの」は想定されていないから、申立人の主張は失当である。

エ してみれば、本件発明における「遊技機」について、特許明細書には、「スロットマシン」と「パチンコ遊技機」についての実施例が記載されていると認められ、特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものというべきであるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。


第3 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-09-08 
出願番号 特願2014-183363(P2014-183363)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A63F)
P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
鷲崎 亮
登録日 2019-10-25 
登録番号 特許第6603952号(P6603952)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
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