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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H02K
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02K
管理番号 1366098
異議申立番号 異議2020-700478  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-14 
確定日 2020-09-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6629136号発明「巻線方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6629136号の請求項[1-3]に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第6629136号の請求項1-4に係る特許についての出願は、平成28年5月18日の出願であって、令和元年12月13日にその特許権の設定登録がなされ、令和2年1月15日に特許掲載公報が発行された。
これに対して、特許異議申立人増淵貞夫より、令和2年7月14日に、本件請求項1、2、3に係る発明の特許について特許異議の申立てがなされたものである。


2.本件発明
特許第6629136号の請求項1-4の特許に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
コイルが繰出されるノズルと、前記ノズルを回動可能に支持するフライヤ本体と、を備えたフライヤを用い、ステータの複数のティースに前記コイルを巻回するための巻線方法において、
前記フライヤ本体の延在方向に対して前記ノズルの軸心を交差させ、前記ステータに対して直交する2方向に前記フライヤ本体を移動させることにより、前記ティースに前記コイルを巻回する巻回工程と、
前記フライヤ本体の延在方向に対して前記ノズルの軸心を沿わせ、所定の2つの前記ティース間に前記コイルを渡らせる引き回し工程と、
を有し、
前記巻回工程から前記引き回し工程に移行する間、および前記引き回し工程から再び前記巻回工程に移行する間、前記ステータと前記ノズルの先端との間の距離を、一定の距離に保持し続けることを特徴とする巻線方法。
【請求項2】
前記ステータは円筒状のステータコアを有し、該ステータコアの内周面から径方向内側に向かって前記複数のティースが突設されていることを特徴とする請求項1に記載の巻線方法。
【請求項3】
前記フライヤは、サーボモータを備え、
前記サーボモータにより、前記フライヤ本体に対して前記ノズルを回動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線方法。
【請求項4】
前記ステータを支持する基台と、
前記基台を上下動させる基台駆動装置と、
前記フライヤ本体を移動させるフライヤ駆動装置と、
を備え、
前記基台駆動装置により前記基台を移動させると共に、前記フライヤ駆動装置により前記フライヤ本体を移動させ、前記巻回工程と前記引き回し工程とを行うことを特徴とする請求項1?請求項3の何れか1項に記載の巻線方法。」



3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人増淵貞夫は、本件請求項1-3に係る特許を取り消すべきものとする旨の特許異議を申立て、証拠として、特開2003-169455号公報(以下、「甲第1号証」という。)、特開平10-271774号公報(以下、「甲第2号証」という。)、特許第5196895号公報(以下、「甲第3号証」という。)、特許第5630890号公報(以下、「甲第4号証」という。)を提出し、本件発明1、2は、甲第1号証に記載された発明に甲第1?3号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明に甲第1?4号証記載の事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を取り消すべきものと主張している(以下、「理由I」という。)。
更に、特許異議申立人は、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないから、本件発明1に係る特許は、取り消されるべきものであり、請求項1を引用する請求項2及び3に係る本件発明2、3も同様であると主張している(以下、「理由II」という。)。


4.理由I
(1)甲第1?4号証
甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多極電機子(主としてモータコア)用の巻線機においてノズルを保持するノズル保持具、そのノズル保持具を用いてノズルの姿勢変換を行うノズル回動ユニット、及びそのノズル回動ユニットを用いた巻線機、並びに多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付けるための巻線方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、多極電機子(モータコア)の極にコイル形成用の線材を巻きつけるために巻線機が広く使用されている。モータ等、電機子の限られた大きさで性能をより良くするためには、多極電機子(ワーク)の限られた巻線スペースにいかに多くの巻線ができるかということが巻線機に要求される。それには、極に対し隣り合う線材同士を隙間なく整列して巻く、いわゆる整列巻が有効である。
【0003】このような場合、例えば線材が繰り出されるノズルを駆動するモータと、ワークの割り出し回転をするモータとが個々に駆動し、ノズルとワークが相対的に移動することで極への巻線が短時間でかつ隙間なく、巻き付けることが可能となる。すなわち、ノズルは上下移動し、ワークはその中心を軸として回動運動することで線材が極に巻き付けられる。本明細書では、このような巻線方法(巻線機)をノズル・ワーク駆動式と呼ぶこととする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような巻線工程の前後には、線端部(線材の始端部又は終端部)をワーク保持治具に設けられた線端クランプ部に挟み込むクランプ工程、線材をワークに立設された絡げピンに絡げる絡げ工程、巻線部分以外の線材の中途部を渡り線として形成する渡り線形成工程等の線処理工程のうちの1又は複数工程が随伴して実施される場合が多い。そして、例えば実公平5-40694号公報や特開平10?271774号公報に記載されているように、ノズルを巻線工程とは異なる形態に姿勢変換させて、これらの線処理工程を実施することがある。これは、図16に示すように、線材Wが繰り出されるノズル503をワーク506の端面と平行状に配置される回動軸571周りにエアシリンダ572等により回動させ、巻線工程でのワーク半径方向に沿う形態(図16(c))から、厚み方向(軸線方向)に沿う形態(図16(b))へと約90°姿勢変換させるものである。
【0005】このような姿勢変換の際、ノズル503の先端は図16(b)に示すa(巻線工程)の位置からb(線処理工程)の位置に変位するため、先端の下降変位量Y及び右変位量Xを生じ、これらの下降変位量Y・右変位量Xはノズル503から繰り出される線材Wのたるみを発生させる。このようなたるみが発生すると、例えば絡げピン506aに対する絡げ高さが一定せず、絡げ高さのバラツキや絡げミスが発生しやすくなり、製品(多極電機子)の歩留まりを低下させる。近年、多極電機子(モータコア)の小型化に伴って絡げピン506a等が短くなる傾向にあり、線材Wのたるみによる不具合がますます発生しやすくなっている。
【0006】そこで、下降変位量Y・右変位量Xを減少ないしなくすために、ノズル503を回動軸571周りに回動させるのと同期して、下降変位量Yに相当する分だけノズル503を上昇させ、かつ右変位量Xに相当する分だけノズル503を左移動させる方法が考えられる。こうすることによりノズル503の姿勢変換に伴う線材Wのたるみを相殺して、絡げ高さのバラツキ・絡げミス等の発生を防止することが可能となる。しかし、ノズル回動機構とは別のノズル昇降装置・ノズル移動装置等を同期駆動させて下降変位量Y・右変位量Xを減少させるための複雑な機構や制御を要することになり、ノズル回動ユニットひいては巻線機の大型化・複雑化を招来するおそれがある。
【0007】特に、ワーク506が外周を形成するヨーク部から半径方向内側に突出する複数の極を有するインナーコアタイプの場合、ワーク506が小型化(小径化)するにつれ、ノズル503を細くするとともに、回動軸571をワークの上方に位置させねばならなくなる。その結果ノズル503の回動(旋回)半径が大きくなり、上記した変位量Y・Xが増大するおそれがある。
【0008】さらに、ノズル・ワーク駆動式の巻線機の場合、これまでのものは、ワーク供給・取出方向(巻線前のワークを供給し、巻線後のワークを取り出す方向)がノズル送り方向(線材をワークの極に1周巻き付ける毎にノズルを例えば線材の太さ分ずつ送る方向)と平行になるように配置されている。ワークの供給・取出作業を行う作業者から見て左右方向の機体幅が狭くできるので、左右方向に複数のワーク(ノズル)を連設するいわゆる多連式の巻線機を構成するのに有利とされてきた。しかし、巻線工程を監視するために、ワーク供給・取出方向側から画像撮影したり、供給・取出作業を行う作業者が目視したりするとき、ノズル部分が視認しにくく、巻線トラブルの発見が遅れたり、巻線不良が発見できなかったりするおそれがある。また、巻線工程に随伴して線処理工程が実施される場合には、絡げ工程等の視認も困難となり、製品歩留まりを低下させる原因となる。
【0009】本発明の課題は、形状・配置等の工夫により、大型化・複雑化を招くことなく、製品歩留まりを向上させることができるノズル保持具、ノズル回動ユニット、巻線機及び巻線方法を提供することにある。」
b「【0035】
【発明の実施の形態】(実施例1)以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明の実施例1としての巻線機100の全体側面図、図2は全体正面図、図3は全体平面図である。図1に示すように、巻線機100は、ベース1、ベース2、ノズル3、駆動装置であり回転駆動機構であるワーク(多極電機子)6の割出回転用モータ4及びノズル駆動用モータ5で主に構成される。ベース1及びベース2は図示しないメインベースに固定される。ベース1は割出回転用モータ4を回動不能に固定する。
【0036】ノズル3は、ノズルブラケット60(ノズル保持具)に取り付けられ、ノズルブラケット60を含むノズル回動ユニット70がタイミングベルト11に固定されている。タイミングベルト11はノズル駆動用モータ5と接続される。このノズル駆動用モータ5付近は図2にて後に説明する。ノズル駆動用モータ5は支持部材12に固定され、支持部材12はリニアガイド13が取り付けられた前後移動枠14にビス等で固定される。リニアガイド13はリニアレール15が取り付けられた移動部材16(送り部材)上をワーク6に対して進退する方向(前後方向)に移動可能となっている。移動部材16には、前後移動枠14を移動させるための前後移動用モータ17が取り付けられる。前後移動用モータ17はカップリング18を介して、ボールねじ装置18a(図2,図3参照)により回転運動を直線運動に変換し、前後移動枠14をワーク6に対して進退する方向(前後方向)に移動することを可能にする。
【0037】移動部材16には、リニアガイド19が取り付けられる。リニアガイド19はリニアレール20が取り付けられたベース2上を前後移動枠14に対して直交する方向(左右方向)に移動可能となっている。ベース2には、移動部材16を移動させるための横移動用モータ21(ノズル送りモータ)が取り付けられる。横移動用モータ21はカップリング22(図2参照)を介して、ボールねじ装置22a(図3参照)により回転運動を直線運動に変換し、移動部材16を前後移動枠14に対して直交する方向(左右方向)に移動することを可能にする。
【0038】図2はノズル駆動用モータ5付近の正面図である。この巻線機100はノズル3を2箇所に設けたいわゆる2連タイプのもので、これに伴って割出回転用モータ4、ワーク6(図3参照)、ノズルブラケット60等も2個ずつ設けられている。既述の如くノズル3はノズルブラケット60に固定され、ノズルブラケット60を含むノズル回動ユニット70はリニアガイド24及びタイミングベルト11にビス等で固定される。リニアガイド24は、リニアレール23が取り付けられた支持部材12上を、ワーク6(図1参照)が取り付けられるスピンドル軸33(図1参照)と平行な方向(上下方向)に移動可能となっている。支持部材12にはノズル回動ユニット70を上下移動させるための回転駆動機構であるノズル駆動用モータ5が取り付けられている。ノズル駆動用モータ5は回転する軸である出力軸25から支持部材12に取り付けられたプーリ27を回転させる。プーリ27にはタイミングベルト11が掛けられ、一方のプーリ28と共にタイミングベルト11を移動させる。プーリ27とプーリ28はその回転を支持する軸が平行に設けられているため、その軸間においてタイミングベルト11に取り付けられたノズル回動ユニット70は上下方向に直線移動することが可能となる。」
c「【0042】次に、図4によりノズル回動ユニット70について説明する。ノズル回動ユニット70は、ユニット本体700に、2個(2連)のノズルブラケット60(ノズル保持具)が、各々のノズルブラケット60の第二軸孔62に取り付けられた2個の回動軸71と、これらの回動軸71を個別に回動駆動する2個のエアシリンダ72(駆動アクチュエータ)とにより、同時に同方向に回動可能に取り付けられる。このノズル回動ユニット70のユニット本体700は、タイミングベルト11(図2参照)に固定されている。2個のノズルブラケット60の各々の第一軸孔61には、ノズル3が取り付けられている。73はエアシリンダ72のジョイント72aと回動軸71とを連結ピン72bを介して連結する連結アーム、74は連結ピン72bが当接することによってノズル3を後述する巻線状態(巻線工程)と絡げ状態(絡げ工程)との2位置に位置決め保持するためのストッパである。
【0043】各回動軸71は、これらに対応するワーク6の配列方向とほぼ直交して配置されている。また、ノズル3の送り方向が、これらのノズル3に対応するワーク6の配列方向に沿って配置されている。ただし、ワーク6の配列方向とは、ここでは図4(a)の平面視(ワーク6の軸線方向視)でワーク6の中心点を結んだ方向をいう。
【0044】ノズル3は、その先端が第二中心線O2(図5参照)の延長線上に位置する。つまり、ノズル3の先端と回動軸71の中心とが一致することにより、回動軸71周りでのノズル3の回動に伴うノズル3先端の昇降変位量はほぼ0になる。
【0045】ここで、ノズル回動ユニット70は、次の2状態に切り換え使用される。
(1)ワーク6が周方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極Cから離間して相対移動する周方向成分と、ノズル3がワーク6の厚み方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極C及びそれに隣接する極Cの間に形成される隙間(スロット)を通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有することにより、ワーク6の各極Cに線材Wを巻き付ける巻線状態。
(2)ノズル3をエアシリンダ72によってワーク6の端面と平行状に配置される回動軸71周りに回動させ約90°姿勢変換した形態にて、線材Wをワーク6の端面に立設された絡げピン6aに絡げる状態と、巻線部分以外の線材Wの中途部をワーク6の端面に立設された渡り線用ピン6bに対して渡り線として掛け渡す状態。」
d「【0050】次に、この巻線機100の作動について、主として図6?図11により説明する。」
e「【0052】<絡げ工程>……図6(b)
ノズル3を姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持しつつ、線端クランプ部80(図3参照)に挟まれた線材Wをワーク6の端面に立設されたスタート用絡げピン6a1に絡げる。その後、ノズル3をもとの姿勢(図8のa位置)に戻す。
【0053】<線端カット・捨て線工程>……図6(c)
図示しない左右(ワークの配列方向)移動用シリンダを作動させて、線端クランプ部80(図3参照)をワーク6から離れる方向に移動させ、線材Wの始端部を引き千切り、次に旋回用エアシリンダ81(図3参照)を作動させ、線端クランプ部80を旋回させて、線材Wの始端部を余り線LWとして機外に捨てる。
【0054】<巻線工程>……図6(d)及び図9?11
ワーク6が周方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極Cから離間して相対移動する周方向成分と、ノズル3がワーク6の厚み方向に駆動されることにより、ノズル3が巻線すべき極C及びそれに隣接する極Cの間に形成される隙間(スロット)を通り抜けるようにして相対移動する厚み方向成分とを組み合わせた形態の軌跡を有することにより、ワーク6の各極Cに線材Wを巻き付ける。
【0055】この巻線工程を、巻線時のノズル3及びワーク6’の作動説明を示す図9によりさらに具体的に説明する。なお、図9はアウターコアタイプのワーク6’に関するものであるが、原理的には図6(d)と同様である。図9(a)に示すように、ノズル3内から線材Wが繰り出される。その後、図9(b)に示すようにノズル3がノズル駆動用モータ5(図1参照)により極C間の隙間(スロット)N1を下降する。
【0056】図10は図9に続く巻線時のノズル3及びワーク6’の作動説明図である。図10(a)に示すようにノズル3が極C間の隙間N1を下降した後、割出回転用モータ4(図1参照)はワーク6’を右回転させる。次に、図10(b)に示すように割出回転用モータ4(図1参照)はワーク6’を右回転させて、ノズル3を極C間の隙間N1と隣接する隙間N2に位置するところで停止する。
【0057】図11は図10に続く巻線時のノズル3及びワーク6’の作動説明図である。図11(a)に示すようにノズル3が上昇する。そして割出回転用モータ4(図1参照)はワーク6’を左回転させる。そして線材Wは極Cの側面S2に当接する。図11(b)に示すようにノズル3は最初の隙間N1を下降する。
【0058】図11(b)に示すようにノズル3が線材Wを極Cに1周巻き付ける毎に横移動用モータ21(図1,図2参照)を作動させて、線材Wの太さ分を基準とする所定のピッチでノズル3を送る。
【0059】<渡り線形成工程>……図7(e)
ノズル3による1つの極Cへの巻線が終了したら、再びノズル3を姿勢変換した形態(図8のb位置)に保持し、線材Wの中途部をワーク6の端面に立設された渡り線用ピン6bに対して渡り線RWとして掛け渡す。渡り線RWの形成により、線材Wがワーク6の内径側に入り込むのが阻止される。その後巻線工程と渡り線形成工程とを繰り返す。3相モータコアの場合、2つ跳びの極Cに巻線される。」

上記記載及び図1を参照すると、ノズル3は、ノズルブラケット60により支持され、ノズルはワーク(多極電機子)6に対して駆動されている。
上記記載及び図8、図13、図20を参照すると、巻線機による巻線の対象として円筒形のワーク(多極電機子)6を用いている。
上記記載及び図6-図8、図20を参照すると、ワーク(多極電機子)6の内周面から径方向内側に向かって複数の極Cが突設されている。
上記記載及び図9-図11を参照すると、巻線時に、ワーク(多極電機子)6が周方向に駆動され、またノズル3がワーク(多極電機子)6の厚み方向に駆動されるから、ワーク(多極電機子)6を周方向に駆動し、ワーク(多極電機子)6の厚み方向にノズルブラケット60を移動させることにより、ワーク(多極電機子)6の極に線材を巻き付けるための巻線工程を有している。
上記記載及び図8、図20を参照すると、ノズルブラケット60の延在方向に対してノズル3の軸心を交差させている。
上記記載及び図8、図13、図20を参照すると、ワーク(多極電機子)6の極Cに巻線を巻き付ける巻線工程の次に渡り線用ピン6bに対して渡り線RWとして掛け渡す渡り線形成工程を行い、次に巻線工程を行うから、渡り線形成工程はワーク(多極電機子)の極間に線材を引き回す引き回し工程である。
上記記載及び図8、図13、図20を参照すると、回動軸71周りでのノズル3の回動に伴うノズル3先端の昇降変位量はほぼ0になるから、巻線工程、引き回し工程のいずれも、ワーク(多極電機子)6とノズルの先端との間の距離を、一定の距離に保持し続けている。

上記記載事項からみて、甲第1号証には、
「線材が繰り出されるノズルと、前記ノズルを多極電機子に対して駆動させるノズルブラケットと、を備えた巻線機を用い、前記多極電機子の極に前記線材を巻き付けるための巻線方法において、
前記ノズルブラケットの延在方向に対して前記ノズルの軸心を交差させ、前記多極電機子を周方向に駆動し、前記多極電機子の厚み方向にノズルブラケットを移動させることにより、前記多極電機子の極に前記線材を巻回する巻線工程と、
前記ノズルを前記多極電機子の端面と平行状に配置された回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記多極電機子の極間に前記線材を引き回す引き回し工程と、
を有し、
前記巻線工程から前記引き回し工程に移行する間、および前記引き回し工程から再び前記巻線工程に移行する間、前記多極電機子と前記ノズルの先端との間の距離を、一定の距離に保持し続ける巻線方法。」
との発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
f「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る巻線機の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。図1ないし図2において、符号Wはワーク(ステータ)、Pは巻線部(磁極)、Tは線状材固定部(端子)、Lは線状材(導線)、Kは機台、1は巻線機、2はノズル、3は駆動手段、4は方向切り替え手段、5は巻線部位置設定手段、6は線状材切断手段(ワイヤカッタ)、7は捨て絡げピンである。
【0013】ワークWは、例えばインナーロータ型モータのステータとされ、図1に示すように、内側に突出する複数の磁極Pを具備するものとされ、かつ、導線Lを接続するための複数の端子Tが上面に配される。磁極Pの断面形状は、図3に示すように例えば矩形とされる。
【0014】巻線機1は、線状材Lを引き出しながら移動可能なノズル2と、該ノズル2を駆動するための駆動手段3と、ノズル2の方向を切り換え可能とする方向切り替え手段4と、線状材Lを巻回する巻線部Pを位置設定するための巻線部位置設定手段5とが機台Kに配されて、ノズル2が、線状材Lを巻線部Pに巻回し、かつ、巻線終了時に線状材Lを線状材固定部Tに固定するよう移動するものとされる。
【0015】駆動手段3は、3軸方向の駆動部31,32,33を組み合わせてなり、前後方向駆動部31と、左右方向駆動部32と、上下方向駆動部33とを具備するものとされる。」
g「【0025】方向切り替え手段4が、図1ないし図2に示すように、上下方向接続部33Dに配され、かつ、ノズル2を上下方向例えば下方向Uと該下方向Uに垂直な方向例えば後方向Fとに切り替え可能に配される。
【0026】方向切り替え手段4は、図1ないし図2に示すように、上下方向接続部33Dの先端側から下方に延びるノズル支持部41と、該ノズル支持部41に回転可能に配されるノズル回転部42と、該ノズル回転部42の方向を設定する方向設定部43とを具備するものとされる。」
h「【0033】以下、このような巻線機1における巻線について説明する。まず、図1に示すように、線状材Lをガイドローラ41Aおよびノズル2を経てノズル2の先端から引き出し、その端部を捨て絡げピン7に絡げて固定しておく。このとき、ノズル2は、図2に実線で示すように、方向切り替え手段4によってクランク44を下側位置とすることにより、下方向Uに位置される。
【0034】次いで、後述のように駆動手段3を駆動して、下方向Uに位置したノズル2を、巻線部位置設定手段5に固定されたステータWの端子Tに絡げる。その後、捨て絡げピン7と端子Tとの間の導線Lをワイヤカッタ6により切断する。
【0035】ワイヤカッタ6は、図1に示すように、移動部65が、駆動源により図1に示す矢印C方向に移動レール62に沿って駆動されて、カッタ61が導線Lを切断可能な状態に位置されるとともに、カッタ61が切断動作部63によって切断動作を行うことにより導線Lが切断される。切断終了後には、カッタ61は、移動部65が、駆動源により図1に示す矢印Cと逆方向に移動レール62に沿って駆動されて、ノズル2の巻線が可能な状態に位置される。
【0036】この後、ノズル2は、図2に破線で示すように、後述するように、方向切り替え手段4によってクランク44を上側位置とすることにより、後方向Fに切り換えられる。
【0037】次いで、駆動手段3を駆動して、後方向Fに位置したノズル2を磁極Pの周囲に移動させて巻線を行う。このとき、ノズル2は、前後方向駆動部31と左右方向駆動部32と上下方向駆動部33とにより3軸駆動として同時に駆動される。
【0038】上下方向駆動部33においては、図1に示すように、上下方向回転軸33Bが、上下方向駆動源33Eによってユニバーサルジョイント33Fを介して回転駆動され、該上下方向回転軸33Bの回転に伴って、上下方向回転軸33Bに螺合された上下方向移動部33Cが上下方向ガイド33Aに沿って駆動方向Zに移動し、上下方向移動部33Cに一体として接続された上下方向接続部33Dが駆動方向Zに移動する。上下方向移動部33Cは、上下方向回転軸33Bに配された雄ねじBの範囲により設定される範囲で移動される。
【0039】同様にして、前後方向駆動部31と左右方向駆動部32とにおいては、図1に示すように、前後方向接続部31Dが、駆動方向Xに移動され、左右方向接続部32Dが、駆動方向Yに移動される。
【0040】したがって、前後方向駆動部31においては、図1に示すように、機台Kの巻線部位置設定手段5に固定されたステータWに対して、左右方向駆動部32が前後方向Xに移動され、該左右方向駆動部32に対して上下方向駆動部33が左右方向Yに移動され、該上下方向駆動部33に対してノズル2が上下方向Zに移動され、ステータWの磁極Pの周囲に沿ってノズル2が移動される。
【0041】ここで、ノズル2は、図3に示すように、巻線部(磁極)Pの断面形状に沿って巻線部Pの周囲を移動し、かつ、線状材Lの一巻きごとに線状材Lの直径R分だけ巻線部Pの長さ方向に移動するよう駆動されて、線状材Lが、磁極Pに整列巻きされる。磁極Pの断面形状は、図3に示すように例えば矩形とされ、ノズル2の巻線時の軌跡が、図3に矢印Gで示すように磁極Pのなるべく近くを通るような矩形に設定される。」

甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
i「【0013】
(第1の実施の形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る巻線装置100の構成について説明する。図1は巻線装置100を示す斜視図であり、図2は巻線装置100の要部拡大斜視図である。
【0014】
なお、以下では、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が略鉛直方向として説明する。
【0015】
巻線装置100は、ステータ1に対して線材2を巻線する装置である。
【0016】
ステータ1は、環状のヨーク3と、ヨーク3の内周に配置されステータ1の中心に向かって放射状に延在するティース4(磁極)とを備えるインナーステータである。各ティース4の周囲には巻線装置100によって線材2が巻線され、隣接するティース4の間に形成されたスロット5に巻線が収容される。」
j「【0098】
本第2の実施の形態における上記第1の実施の形態との相違点は、ノズル9を移動させるノズル移動機構の構成が異なる点である。以下に、巻線装置200におけるノズル移動機構60(線材繰出し部材移動機構)について説明する。
【0099】
第1の実施の形態に係る巻線装置100におけるノズル移動機構11は、ノズル9を直交三軸方向に移動させることによって、巻線対象ティース4に対して線材2を巻線するものであった。これに対して、ノズル移動機構60は、ノズル9を巻線対象ティース4の巻軸を中心に回転させるノズル回転機構61と、ノズル9を巻線対象ティース4の巻軸方向に移動させる軸方向移動機構62とを備え、この二つの機構によって巻線対象ティース4に対して線材2を巻線する。
【0100】
ノズル回転機構61は、巻線対象ティース4の巻軸と同軸上に配置された円筒状のスピンドル63と、スピンドル63の端部に結合されたフライヤ64と、スピンドル63を軸中心に回転させるスピンドルモータ65とを備え、ノズル9は、フライヤ64の内周面にノズル支持部材66を介して支持される。
【0101】
スピンドルモータ65の出力軸は、プーリ67及びベルト68を介してスピンドル63に連結される。したがって、スピンドルモータ65を駆動することによって、ノズル9は、巻線対象ティース4の巻軸を中心に回転する。」

甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
k「【0017】
図5に本発明の方法に使用する巻線機10を示す。この巻線機10は、設置場所に設置される機台14と、その機台14に設けられ線材11を繰出すノズル12を駆動するための駆動手段13を備える。駆動手段13は、3軸方向の駆動部16,17,18を組み合わせてなり、前後方向駆動部16と、左右方向駆動部17と、上下方向駆動部18とを具備するものとされる。これらの駆動部16,17,18は、駆動方向X,Y,Zに沿って略同一の駆動機構とされる。
【0018】
先ず、上下方向駆動部18について説明すると、この上下方向駆動部18は、駆動方向Zに沿って配された上下方向ガイド18aと、該上下方向ガイド18aに平行に配され表面に雄ねじが配される上下方向回転軸18bと、その上下方向回転軸18bにボールねじにより螺合され上下方向ガイド18aに沿って移動可能な上下方向移動部18cと、その上下方向移動部18cに接続される上下方向接続部18dと、上下方向回転軸18bを回転駆動する上下方向駆動源18eとが配される。上下方向回転軸18bは、ユニバーサルジョイント18fにより上下方向駆動源(駆動源)18eに接続される。上下方向移動部18cは、上下方向回転軸18bに配された雄ねじの範囲によって、駆動方向Zの移動範囲が設定される。
【0019】
前後方向駆動部16と左右方向駆動部17とは、上下方向駆動部18と同様の構造として図5に示す駆動方向X,Yに沿って配される。前後方向駆動部16は、機台14に固定されて前後方向駆動源(駆動源)16eを具備するものとされ、かつ、左右方向駆動部17が、前後方向接続部16dを介して前後方向駆動部16に対して前後方向移動可能に配される。左右方向駆動部17は、左右方向駆動源(駆動源)17eを具備するものとされ、かつ、上下方向駆動部18が、左右方向接続部17dを介して左右方向駆動部17に対して左右方向移動可能に配される。そして、それぞれの駆動源16e,17e,18eとしては、例えば、高精度制御可能なサーボモータが用いられる。そして、上下方向駆動部18には、ノズル12の方向を切替え可能とする方向切替え手段20を介して、ノズル12が設けられる。
【0020】
図4に示すように、方向切替え手段20は、上下方向駆動部18における上下方向接続部18dの先端側に下方に延びて設けられたノズル支持部21と、そのノズル支持部21に回転可能に配されるノズル回転部22とを備える。ノズル支持部21の基端側における上下方向接続部18dには、線材11をノズル12に導く第1ガイドローラ23aが配される。ノズル回転部22は、軸21aによりノズル支持部21の下端に回転可能に取付けられ、ノズル12が配される。ノズル支持部21の中間部及びその軸21aには、第1ガイドローラ23aを通過した線材11をノズル12に導く第2及び第3ガイドローラ23b,23cが配される。
【0021】
ノズル回転部22にはクランク24の下端が接続され、クランク24がその長さ方向に移動することでノズル回転部22を回転駆動するように構成される。そしてクランク24は上下方向接続部18dを貫通し、その上下方向接続部18dにはクランク24を上下方向に駆動するためのクランク駆動部26が設けられる。クランク駆動部26は、上下方向に延びて上下方向接続部18dに設置されたガイド部材26aと、そのガイド部材26aに平行に配され表面に雄ねじが配される回転軸26bと、その回転軸26bに螺合されガイド部材26aに沿って上下方向に移動可能な移動板26cと、ガイド部材26aの上部に設けられ回転軸26bを回転駆動するサーボモータからなる駆動源26dとを備える。そして、移動板26cにクランク24の上端が枢支される。このクランク駆動部26は、駆動源26dにより回転軸26bを回転させると移動板26cが上下動し、これにより、クランク24をその長さ方向に移動することができるように構成される。
【0022】
そして、このようなクランク駆動部26では、移動板26cを下方に移動させてクランク24を下げると、図4の実線で示すようにノズル12は下方を向き、移動板26cを上方に移動させて一点鎖線で示すようにクランク24を上昇させると、ノズル12は上下方向に垂直な水平方向に向くように構成される。更にこのクランク駆動部26は駆動源26dとしてサーボモータを用いるので、ノズル12が水平方向に達した後も回転軸26bを回転させると移動板26cは更に上方に移動する。このため、二点鎖線で示すようにクランク24を更に上昇させると、ノズル支持部21に対して先端が斜め上方に向くようにノズル12を傾斜させることができる。よって、この巻線機10は、ノズル12の先端が下を向く鉛直位置から、先端が水平方向を向く水平位置を通過して、先端が斜め上方に向く傾斜位置にまで切替え可能に構成される。」
l「【0024】
次に、本発明の線材の巻線方法について説明する。
【0025】
先ず、図4に示すように、線材11を第1?第3ガイドローラ23a,23b,23cに通過させ、更にノズル12を貫通させてノズル12の先端から繰出す。このとき、ノズル12は、方向切替え手段20によって図4の実線で示す鉛直位置とされる。そして、巻線を始めるに当たり、駆動手段13はノズル12を移動させ、線材11の端部を図示しない捨て絡げピンに絡げて固定する。その後、ノズル12は、方向切替え手段20によってクランク24を上側位置とすることにより、図3に示す水平位置に切替えられる。次いで、駆動手段13(図5)を駆動して、水平位置にあるノズル12をワーク36における1の磁極36bの周囲に移動させて巻線を行う。なお、図3に示すワーク36は、ステータコア38を絶縁のためのインシュレータ37により覆うことにより作られたものを示す。このワーク36では、ステータコア38のヨーク部38aをインシュレータ37の環状被覆部37aが被覆することによりワーク36における環状部36aが形成され、ステータコア38のティース38bをインシュレータ37のティース被覆部37bが被覆することによりワーク36における磁極36bが形成される。
【0026】
この巻線時に、ノズル12は、図5に示す駆動手段13の前後方向駆動部16と左右方向駆動部17と上下方向駆動部18とにより3軸駆動として同時に駆動され、ワーク36の磁極36bの周囲に沿ってノズル12が移動される。ここで、ノズル12は、磁極36bの断面形状に沿って磁極36bの周囲を移動し、かつ、図3に示すように、線材11の一巻きごとに線材11の直径分だけ磁極36bの長さ方向に移動するよう駆動されて、線材11が磁極36bに整列巻きされる。図3に示す磁極36bの断面形状は矩形であるので、ノズル12の巻線時の軌跡は、磁極36bのなるべく近くを通るような矩形に設定され、磁極36bに整列巻きされた線材11から成るコイル部41を得ることができる。
【0027】
1の磁極36bに線材11を巻回させた後には、環状部36aに軸方向に沿って設けられた延設部36cに線材11を掛け回し、次に巻線を行う別の磁極36bにまでそのノズル12を移動させる。この実施の形態における延設部36cは、コア38を被覆するインシュレータ37の環状被覆部37aに軸方向に沿って延設されたものを示す。この延設部36cはワーク36の環状部36aに沿って円弧状に形成された壁材であって、磁極36bに巻線された線材11を環状部36aの内側から延設部36cの外側に引き出すためのスリット36dが複数形成される。この延設部36cはワーク36の軸方向の両側にそれぞれ形成される。このため、線材11の掛け回しは、ワーク36の軸方向のいずれか一方又は双方の端面に設けられた延設部36cに対して行われる。」


(2)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「線材」、「多極電機子」、「極」、「巻線工程」、「前記線材を引き回す」は、本件発明1の「コイル」、「ステータ」、「ティース」、「巻回工程」、「前記コイルを渡らせる」に相当する。

甲1発明の「前記ノズルを多極電機子に対して駆動させるノズルブラケット」と、本件発明1の「前記ノズルを回動可能に支持するフライヤ本体」は、「前記ノズルを移動可能に支持するノズル支持部」の点で一致する。甲1発明の「巻線機」と、本件発明1の「フライヤ」は、「巻線機」で一致する。
甲1発明の「前記多極電機子の極に前記線材を巻き付けるための巻線方法」は、本件発明1の「ステータの複数のティースに前記コイルを巻回するための巻線方法」に相当する。
甲1発明の「前記ノズルブラケットの延在方向に対して前記ノズルの軸心を交差させ」と、本件発明1の「前記フライヤ本体の延在方向に対して前記ノズルの軸心を交差させ」は、「前記ノズル支持部の延在方向に対して前記ノズルの軸心を交差させ」の点で一致する。
甲1発明の「前記多極電機子を周方向に駆動し、前記多極電機子の厚み方向にノズルブラケットを移動させることにより、前記多極電機子の極に前記線材を巻回する巻線工程」と、本件発明1の「前記ステータに対して直交する2方向に前記フライヤ本体を移動させることにより、前記ティースに前記コイルを巻回する巻回工程」は、「前記ステータに対して前記ノズル支持部を移動させることにより、前記ティースに前記コイルを巻回する巻回工程」の点で一致する。
甲1発明の「前記ノズルを前記多極電機子の端面と平行状に配置された回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態にて、前記多極電機子の極間に前記線材を引き回す引き回し工程」は、本件発明1の「前記フライヤ本体の延在方向に対して前記ノズルの軸心を沿わせ、所定の2つの前記ティース間に前記コイルを渡らせる引き回し工程」と、「所定の2つの前記ティース間に前記コイルを渡らせる引き回し工程」の点で一致する。

したがって、両者は、
「コイルが繰出されるノズルと、前記ノズルを移動可能に支持するノズル支持部と、を備えた巻線機を用い、ステータの複数のティースに前記コイルを巻回するための巻線方法において、
前記ノズル支持部の延在方向に対して前記ノズルの軸心を交差させ、前記ステータに対して前記ノズル支持部を移動させることにより、前記ティースに前記コイルを巻回する巻回工程と、
所定の2つの前記ティース間に前記コイルを渡らせる引き回し工程と、
を有し、
前記巻回工程から前記引き回し工程に移行する間、および前記引き回し工程から再び前記巻回工程に移行する間、前記ステータと前記ノズルの先端との間の距離を、一定の距離に保持し続ける巻線方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
ノズルを移動可能に支持するノズル支持部に関し、本件発明1は、ノズルを回動可能に支持するフライヤ本体であるのに対し、甲1発明は、ノズルを多極電機子に対して駆動させるノズルブラケットである点。
〔相違点2〕
巻回工程に関し、本件発明1は、フライヤ本体の延在方向に対してノズルの軸心を交差させ、ステータに対して直交する2方向に前記フライヤ本体を移動させるのに対し、甲1発明は、ノズルブラケットの延在方向に対してノズルの軸心を交差させ、多極電機子を周方向に駆動し、多極電機子の厚み方向にノズルブラケットを移動させる点。
〔相違点3〕
引き回し工程に関し、本件発明1は、フライヤ本体の延在方向に対してノズルの軸心を沿わせるのに対し、甲1発明は、ノズルを多極電機子の端面と平行状に配置された回動軸周りに回動させ姿勢変換した形態である点。


(3)判断
相違点1、2について
甲1発明は、巻線のために、ステータ(多極電機子)を周方向に駆動し、ステータ(多極電機子)の厚み方向にノズルブラケットを移動させ、コイルを巻回し、更に甲第1号証には「ノズル3が線材Wを極Cに1周巻き付ける毎に横移動用モータ21(図1、図2参照)を作動させて、線材Wの太さ分を基準とする所定のピッチでノズル3を送る」(【0058】)とあり、極にコイルを隙間を設けずに正確に巻回するものである。
これに対し、本件発明1は、コイルをフライヤで巻回しており、フライヤは甲第3号証にも示されるように、ステータコイルの巻回に用いる機械として周知のものである。フライヤは、スピンドルを軸中心に回転させることにより、ノズルをティースの巻軸を中心に回転させてコイルを巻回するものであるから、コイルの正確な巻回より巻回スピードを重視するものである。
そうであれば、甲1発明において、コイルの正確な巻回のため採用した巻線機の構成に代えて、正確さよりスピードを重視した巻線機であるフライヤを採用することに阻害要因がある。
したがって、甲第2号証記載の事項を検討するまでもなく、ノズル支持部に関し、甲1発明のノズルブラケットをフライヤ本体に代え、更に、巻回工程に関し、甲1発明のように多極電機子を周方向に駆動し、多極電機子の厚み方向にノズルブラケットを移動させていたものを、ステータに対して直交する2方向にフライヤ本体を移動させることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点3について
甲1発明は、引き回し工程で、ノズルを多極電機子の端面と平行状に配置された回動軸周りに回動させ姿勢変換して行っており、この手段によりステータとノズルの先端との間の距離を一定の距離に保持し続けることによって既に課題を解決しているから、これをフライヤ本体の延在方向に対してノズルの軸心を沿わせるようにすることに動機付けはない。
そうであれば、甲1発明において、引き回し工程の際、フライヤ本体の延在方向に対してノズルの軸心を沿わせるようにすることは、当業者が容易に考えられたとすることはできない。

したがって、本件発明1は、甲1発明に甲第2?3号証記載の事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。本件請求項2、3は本件請求項1の従属項であるから、本件発明1が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできないので、本件発明2、3も同様に当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。なお、本件請求項4に係る発明の特許については特許異議の申立てがなされていない。


5.理由II
(1)申立人の主張
申立人は、請求項1の「前記ステータに対して直交する2方向に前記フライヤ本体を移動させることにより」は、意味が不明確であると以下のように主張している。
明細書及び図4を参照しても、フライヤの移動方向としては「上下方向」が示されるのみであり、「直交する2方向」への移動が、どのような方向への移動であるのか、示されておらず、本件特許発明1において、フライヤ本体の「直交する2方向」への移動がどのような方向への移動であるのか不明であるので、当該「直交する2方向」は、「任意の互いに直交する2方向」への移動であると解さざるを得ないが、そうすると、当該2方向のうち1方向が、ティース4の中心へ向かう方向であるような、明らかにコイルの巻回しが行えないような移動態様も含んでしまうことになり、不合理である。 従って、「前記ステータに対して直交する2方向に前記フライヤ本体を移動させることにより」は、発明特定事項が不足していることが明らかであるため、意味が不明確である。
本件発明1は、以上のような不明確な要件を含むため、明確でない。本件発明2及び本件発明3についても、同様に不明確である。


(2)判断
フライヤは甲第3号証に示されるように、ステータコイルの巻回に用いる機械として周知のものであり、スピンドルを軸中心に回転させることにより、ノズルをティースの巻軸を中心に回転させてコイルを巻回するものであるから、巻回工程の直交する2方向のうち1方向が、ティースの中心へ向かう方向となることはなく、直交する2方向とはティースの厚み方向と端面に沿う方向が該当する。フライヤはノズルをティースの巻軸を中心に回転させてコイルを巻回するから、ティースの周囲をノズルが回転する際のノズルの軌跡は円であり、当該円はステータに対して直交する2方向の合成されたものであるから、「前記ステータに対して直交する2方向に前記フライヤ本体を移動させることにより」は、意味が明確である。
そうであれば、本件特許請求の範囲の記載は明確であり、他に不明な記載も認められないから、本件発明1乃至3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

したがって、本件請求項1-3の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。なお、本件請求項4に係る発明の特許については特許異議の申立てがなされていない。


6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1-3の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-3の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-08-31 
出願番号 特願2016-99338(P2016-99338)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (H02K)
P 1 652・ 121- Y (H02K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三澤 哲也  
特許庁審判長 窪田 治彦
特許庁審判官 山本 健晴
堀川 一郎
登録日 2019-12-13 
登録番号 特許第6629136号(P6629136)
権利者 株式会社ミツバ
発明の名称 巻線方法  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 鎌田 康一郎  
代理人 鈴木 三義  
代理人 西澤 和純  
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