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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F23G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F23G
管理番号 1366100
異議申立番号 異議2020-700050  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-30 
確定日 2020-09-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6554148号発明「廃棄物の質を推定する装置、システム、プログラム、方法、及びデータ構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6554148号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6554148号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成29年7月31日に出願され、令和元年7月12日にその特許権の設定登録がされ、令和元年7月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
・令和2年1月30日に特許異議申立人である山田 宏基(以下、「申立人」という。)による請求項1?10に係る特許に対する特許異議の申立て
・令和2年4月22日付けで取消理由通知
・令和2年6月23日に特許権者による意見書の提出

第2 本件特許の特許請求の範囲及び本件発明
本件特許の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。そして、本件特許の請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ順に「本件発明1」?「本件発明10」といい、総称して「本件発明」という。)は、当該特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する推定部を備え、
前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記推定部は、さらに
前記廃棄物を撮像した新たな画像を複数のブロックに分割し、ブロック毎に、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を出力し、
出力された廃棄物の質を表す値を、前記ブロックの各々に対応付けた推論マップを生成する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、さらに
前記推論マップに基づいて、クレーンの制御を行うクレーン制御装置に対する指示、あるいは焼却炉の制御を行う燃焼制御装置に対する指示のうち少なくとも一方を生成する指示部を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記クレーン制御装置に対する指示は、クレーンに対し前記ごみピット内の廃棄物を移動させる指示であり、前記燃焼制御装置に対する指示は、焼却炉に投入された廃棄物を燃焼させるのに必要な指示である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記廃棄物の質を表す値は、前記廃棄物の燃えやすさを示す指標である、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた前記教師データを生成する、教師データ生成部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記教師データを用いた学習によって、前記モデルを構築するモデル構築部
をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
廃棄物処理プラントシステムであって、
ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像を複数のブロックに分割することによって得られた、ブロック毎の新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を、各前記ブロックに対応付けた推論マップを生成する推定部と、
前記推論マップに基づいて、クレーンの制御を行うクレーン制御装置に対する指示、あるいは焼却炉の制御を行う燃焼制御装置に対する指示のうち少なくとも一方を生成する指示部と
を備える、システム。
【請求項9】
廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定する方法であって、
ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するステップ
を備え、
前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法を、前記廃棄物処理プラントに備えられたプロセッサに実行させるためのプログラム。」

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第12号証を提出し、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概略次の特許異議申立理由を主張する。
1 申立理由1
本件特許の請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立理由2
本件特許の請求項1?10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2011-27349号公報
甲第2号証:特開2017-109161号公報
甲第3号証:特開昭60-207022号公報
甲第4号証:特開昭64-49815号公報
甲第5号証:特開2000-356336号公報
甲第6号証:藤吉 誠 ほか3名,「ごみ焼却プラント運営事業における画像認識技術の活用」と題する文献,Hitz技報,Vol.75,No.2,2014年12月15日発行,
甲第6号証の2:Hitz技報の紹介ページ,日立造船株式会社のWebサイト,<https://www.hitachizosen.co.jp/technology/hitz-report/>
甲第7号証:特開2017-49801号公報
甲第8号証:特開平7-160661号公報
甲第9号証:”特許・実用新案審査ハンドブックの付属書B”,「第1章 コンピュータソフトウエア関連発明」,特許庁,2019年1月,第32?34頁
甲第9号証の2:”「特許・実用新案審査ハンドブック」の改訂について”と題する特許庁のWebページ,特許庁 調整課 審査基準室,平成30年3月14日,<https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/handbook_shinsa/h3003.html>
甲第10号証:”特許・実用新案審査ハンドブックの付属書A”,「進歩性に関する事例集」,特許庁,2019年1月,第122?127頁
甲第10号証の2:”「特許・実用新案審査ハンドブック」の改訂について”と題する特許庁のWebページ,特許庁 調整課 審査基準室,平成31年1月30日,<https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/handbook_shinsa/kaitei/handbook_shinsa_h3101.html>
甲第11号証:特開2007-126246号公報
甲第12号証:特開2015-224822号公報

なお、甲第1号証?甲第12号証を、以下、それぞれ「甲1」?「甲12」という。

第4 取消理由の概要
当審において、請求項1?10に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件発明1?10は、以下のとおり、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1、2、7、8及び11に記載された発明ないし技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
1 甲1を主引用例とした理由
(1)取消理由1-1
本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)取消理由1-2
本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)取消理由1-3
本件発明3は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)取消理由1-4
本件発明4は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)取消理由1-5
本件発明5は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)取消理由1-6
本件発明6は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)取消理由1-7
本件発明7は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)取消理由1-8
本件発明8は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)取消理由1-9
本件発明9は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲2、甲8に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)取消理由1-10
本件発明10は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲7に例証される周知技術に基いて、又は、甲1に記載された発明、甲2、甲8に例証される周知技術及び甲7に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 甲2を主引例とした理由
(1)取消理由2-1
本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)取消理由2-2
本件発明2は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)取消理由2-3
本件発明3は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)取消理由2-4
本件発明4は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)取消理由2-5
本件発明5は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)取消理由2-6
本件発明6は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)取消理由2-7
本件発明7は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)取消理由2-8
本件発明8は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)取消理由2-9
本件発明9は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)取消理由2-10
本件発明10は、甲2に記載された発明、甲2、甲8に例証される周知技術及び甲7に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 甲11を主引用例とした理由
(1)取消理由3-1
本件発明1は、甲11に例証される周知発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)取消理由3-2
本件発明2は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)取消理由3-3
本件発明3は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)取消理由3-4
本件発明4は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)取消理由3-5
本件発明5は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)取消理由3-6
本件発明6は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)取消理由3-7
本件発明7は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)取消理由3-8
本件発明8は、甲11に例証される周知発明、甲1に記載された事項及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)取消理由3-9
本件発明9は、甲11に例証される周知発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)取消理由3-10
本件発明10は、甲11に例証される周知発明、甲2に記載された事項及び甲7に例証される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 当審の判断
1 各甲号証について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す(以下、同様。)。
「【0001】
本発明は、燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムに関し、特に、ごみ焼却炉に供給される廃棄物等組成変動の激しい燃焼対象物に対し、燃焼炉に供給する前に貯留されるピットにおける攪拌処理等の均一化を図る処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ処理施設などにおいて処理される廃棄物は、種々雑多な物質が混在するために、廃棄物の性質(ごみ質)はさまざまな要因により安定せず、変動が激しい。従って、こうした組成変動の激しい燃焼対象物を、そのまま燃焼炉に供給すると、安定した燃焼制御が困難となり、ダイオキシンや一酸化炭素(CO)あるいは窒素酸化物(NOx)の発生などの原因となる。また、発熱量の大きな組成の燃焼対象物の燃焼における高熱や燃焼により発生する腐食性物質による燃焼炉の損傷も大きくなることがある。
【0003】
こうした燃焼炉の安定した燃焼制御を実現するために、
(i)燃焼炉に供給される燃焼対象物の量と質を把握し、それに対応した燃焼炉の運転条件(燃焼温度や空気供給量などの条件)を制御する方法、あるいは
(ii)予め燃焼炉に供給される燃焼対象物を所定量貯留し、攪拌して均一化することによって、安定した量と質の燃焼対象物を燃焼炉に供給する方法
などが提案され、実用化されている。
【0004】
例えば、前者については、図8に例示するような流動式の焼却装置を挙げることができる。給じん量を正確に予測、測定すると共に、ごみの性状をも判別できる算出機構を有し、それにより給じん量、二次空気量等を制御できるように、給じん機101と、該給じん機のごみの出口部105と流動床式焼却炉103のごみの供給口とを結ぶシュート部102を有し、前記給じん機101のごみの出口部105からごみの落下する様子を観察できる位置に取り付けたテレビカメラ104の画像をリアルタイムで処理し、ごみの落下量113又はこれと発熱量114を算出し、算出した信号により、ごみの給じん量、二次空気量、流動空気量を制御115することができる(例えば特許文献1参照)。ここで、106はボイラ、107はホッパ、108は流動層、109はモーター、110は送風機、111は押込空気、112は2次空気、116はモーター回転数制御、117は二次空気量制御、118は流動空気量制御を示す。
【0005】
また、後者については、ごみピット内に投入されるごみを、そのごみ質を色調にて捉えてクレーンを制御することにより、ごみ質の均一化を図ることができるように、図9に例示するようなクレーンを用いて攪拌するごみ処理工場用自動クレーンの制御装置を挙げることができる。具体的には、2台一対のカメラ202a、202bのステレオ視による視差を利用してごみピットP内に堆積したごみ高さを計測するごみ高さ計測手段と、ごみ高さ計測手段により計測されたごみ高さの情報をごみ高さマップとして記憶するごみ高さ記憶手段と、ごみ高さの情報よりごみの色調を判別して記憶するごみ色調記憶手段とを備え、ごみ色調マップに基づいてごみピットP内の異質ごみGaを特定し、異質ごみGaを攪拌するようにクレーン201が制御される(例えば特許文献2参照)。ここで、Dは2台一対としたカメラの間隔、Gはごみ、Hはホッパ、Rはクレーン操作室、211はクレーンガーダ、212はバケット、213はクラブ、214はクレーンガーダの走行レールを示す。
・・・
【0007】
しかしながら、上記従来技術には、次のような課題があった。すなわち、焼却装置に投入される直前の給じん量を正確に予測、測定すると共に、ごみの性状をも判別し、給じん量、二次空気量等を制御する方法においては、ごみの性状がある程度均一な場合には、高い制御機能を発揮することができるが、ごみの性状が非常に不安定で大きな変動のある場合には、十分な制御ができず、焼却炉内の燃焼状態が不安定になり、安定した燃焼制御は困難であった。
【0008】
また、ごみ焼却炉ピットでのごみ高さおよび色調により、監視し、攪拌操作を行う方法にあっては、特定の時間におけるごみ高さおよび色調の情報、つまり表面情報のみを基に操作が行われるために、十分な均一性を確保することが困難であった。ごみ高さを一定に制御してもごみ質の均一性は担保されず、表面のみの色調から得られるごみ質の情報だけではピット内全体のごみ質を均一に攪拌することができず、上記の課題を十分に解消することはできなかった。
・・・
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、燃焼炉に供給される燃焼対象物が組成変動の激しい場合であっても、安定した燃焼制御が可能な燃焼対象物の供給が可能な処理システム、処理方法およびこれらを用いた燃焼炉の燃焼制御システムを提供することにある。」

「【0012】
本発明は、燃焼炉に供給される燃焼対象物を貯留するピットと、該ピットに燃焼対象物を投入する投入口と、貯留された燃焼対象物を攪拌する攪拌手段と、貯留された燃焼対象物を燃焼炉に移送する移送手段と、蓄積される燃焼対象物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタと、を備えた燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムであって、
(a)ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報および前記画像モニタからの画像情報を入力し、
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、前記攪拌手段を駆動させ、ピット内の燃焼対象物を攪拌し、
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された燃焼対象物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、前記移送手段を駆動させ、該燃焼対象物を燃焼炉に移送する
演算処理部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、予めピットに貯留された後に燃焼炉に供給される燃焼対象物を処理する方法であって、該ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報、およびピットへの投入口からピット内まで撮影された燃焼対象物の画像情報を基に、
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合にピット内の燃焼対象物を攪拌し、
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された燃焼対象物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに燃焼対象物を燃焼炉に移送する
ことを特徴とする。
・・・
【0015】
ここで、画像情報に対する「2値化」とは、各画素を固定のしきい値と比較してその大小により白と黒のみで画像を作成することをいい、例えば廃棄物を燃焼対象物とする場合に、家庭用ごみ袋特有の色彩から、他のごみやピットの壁等との色彩と区別し、他の要素を排除した画像情報を得ることができる。画像情報に対する「マスク処理」とは、画像等の一部領域の変化のみを見たいとき、対象としたい一部領域を該画像等から切り出すことをいい、切り出した画像の2値化処理を行うことにより、対象領域の特定の燃焼対象物のみの画像情報を得ることができる。画像情報に対する「ノイズ除去処理」とは、主として2値画像処理において適用される代表的な演算処理として、「膨張」と「縮退」を行うことをいい、例えば乱れた白黒画像において、切れている成分を接続するためには、廃棄物を示す黒い部分を膨張させてから縮退を行い、細かい帯状部分を切断する場合には、背景となる白い領域を膨張させてから縮退を行い、また光の加減でできる細かい成分を除去するには、「膨張」と「縮退」を繰り返し行うことによって、ノイズを除去することができる。画像情報に対する「ラベリング処理」とは、画像上の画素の集合に番号をつけ、画素を分類する処理のことであり、ラベリングされた領域ごとに区別して処理することができ、ラベリングされた領域の情報(個数、面積、形状)をまとめることで、画像情報を小さくし効率よい作業ができる。「区分された領域」とは、ピット内を平面上に一定間隔に区分された領域をいい、蓄積された燃焼対象物の量および質の不均一性を判断する単位として用いられる。
【0016】
また、本発明は、上記燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムまたは処理方法であって、ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算し、該特定時間における前記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算することを特徴とする。
【0017】
上記のように、本発明に係る燃焼対象物の処理システムまたは処理方法においては、投入物情報および画像情報を基に、いくつかの推算処理を行う。このとき、各情報の中には所定の割合で不確定要素があり、推算結果の誤差要因となる。例えば廃棄物を燃焼対象物とする場合に、投入物情報におけるごみ質として設定した比重が実際に袋内のごみと異なることがあり、推算された落下軌跡にズレが生じたり、既にピット内にあるごみに衝突して蓄積位置が移動し、その分布状態が変化することがある。また、実際に袋内のごみ質との相違は、設定した発熱量の誤差となる。本発明は、ピット内の特定時間における画像情報から、こうした変動や誤差による影響を補正することによって、より実態に近い分布状態を推算できるようにしたものである。
【0018】
本発明は、上記いずれかの燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システムまたは処理方法を用いた燃焼炉の燃焼制御システムであって、ピット内に蓄積された燃焼対象物に対して前記本処理システムまたは処理方法において推算された、量および質の分布状態Aを基に、燃焼炉に供給された燃焼対象物の発熱量を推算し、該燃焼炉の燃焼制御の指標の1つとすることを特徴とする。」

「【0022】
<本発明に係る燃焼対象物の処理システム>
本発明に係る燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム(以下「本処理システム」という)は、ストーカ式ごみ焼却炉(燃焼炉に相当し、以下「焼却炉」という)に供給される廃棄物(燃焼対象物に相当)を貯留する廃棄物ピット(ピットに相当)と、該ピットに燃焼対象物を投入する投入口と、貯留された燃焼対象物を攪拌する攪拌手段と、貯留された廃棄物を燃焼炉に移送する移送手段と、蓄積される廃棄物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタと、ピット内の廃棄物を撹拌する手段と、該廃棄物を燃焼炉に移送する手段と、入力された所定の情報を基に所定の演算・推算を行い撹拌手段および移送手段を駆動させる演算処理部を備える。
【0023】
〔本処理システムの構成〕
図1は、本処理システムの概略全体構成例を示す。各所から収集・搭載された廃棄物Gが、ごみ収集車Cから投入口1を介してピット2内に投入される。このとき、予め投入される廃棄物Gの投入量およびごみ質を含む投入物情報を各ごみ収集車Cごとに得ることができる。投入された廃棄物Gは、ピット上部に設けられた画像モニタ3によって、投入口1からピット2内に移動する状態がリアルタイムに撮影され、廃棄物Gの画像情報を得ることができる。貯留された廃棄物Gは、ごみ質が均一となるように撹拌機4(撹拌手段に相当)によって撹拌された後、クレーン5によって捕集され、ホッパ6(クレーン5と合せ、移送手段に相当)によって燃焼炉(図示せず)に供給される。このとき、撹拌機4、クレーン5およびホッパ6の作動は、演算処理部7に入力された投入物情報および画像情報を基に演算・推算された出力信号によって制御される。
【0024】
ここで、収集された廃棄物Gは、バラバラの分散されたごみについては、例えば破砕ごみや剪定ごみ(落ち葉、剪定枝などの植物ごみ)、汚泥などは、画像情報から投入されるごみの形状や色などを識別し、ごみの種類を判定することができる。また、昨今、家庭用ごみや事務系ごみまたは商業系ごみなどごみ質によって異なる色や表面模様の袋体に大別されていることが多く、本処理システムでは、袋体単位で、ごみ質を特定し比重または発熱量等の投入物情報を設定することができる。従って、投入されたごみの総重量や総容積とともに、投入された廃棄物Gのごみ質や発熱量を推算することができる。さらに、画像情報として、こうした袋体の色や模様を認識することによって、ごみ質の区分および分布状態の推算を行うことができる。従って、これらが混在する廃棄物Gが投入された場合において、袋体単位で廃棄物Gの分布状態を推算することによって、分散状態のごみの分布状態と同等の推算が可能となり適切な攪拌処理を行い、均一な廃棄物Gを燃焼炉に供給することができる。また、ごみ収集車Cの属性情報(収集する対象物が特定される場合や分別収集能力の有無等の情報)、積載重量、収集エリアなどの情報も利用して、ごみ質を推定することができる。
【0025】
このとき、水分を多く含む家庭ごみの場合は低い発熱量であり、紙類を多く含む事務系ごみの場合は安定した略一定の発熱量となり、高い発熱量のプラスチックなどが多く含まれる商業系ごみの場合は高い発熱量となる。従って、予めごみの種類ごとの平均発熱量をデータベース化しておくことによって、投入された廃棄物の発熱量および燃焼炉に供給される廃棄物の発熱量を推算することが可能となり、こうした情報によって、燃焼炉に供給される廃棄物Gの供給量やごみ質を制御し最適条件での燃焼条件を実現することが可能となる。つまり、家庭ごみを多く含む廃棄物Gは比較的低い温度で少ない空気供給量という燃焼炉の運転条件が好ましく、紙類を多く含む事務系ごみの場合は、安定した温度で安定的な空気供給の運転条件の設定が可能となり、高い発熱量のプラスチックなどが多く含まれる商業系ごみの場合は、高い温度で多くの空気供給量を必要とする。燃焼炉の運転条件を、予めこうした供給される廃棄物Gの発熱量の情報を基に設定することによって、実際に燃焼された場合における燃焼条件の修正や調整を非常に狭い範囲にすることができる。
・・・
【0027】
なお、図1においては、攪拌機4を別途設けた構成例を示したが、ごみ質が比較的均一で、攪拌の必要性の少ない場合には、攪拌機4を設けずにクレーン5によって攪拌操作を行うようにしてもよい。
【0028】
また、画像モニタ3は、投入口1からピット2内の状態がカラー情報としてリアルタイムに撮影できるものであれば、位置や数量などに特に制限はないが、図1においては、広角のビデオカメラを1台設けた構成を例示した。特に、投入口1からピット2への廃棄物Gの移動状態を明確に把握できるように、移動経路に傾斜を設け、廃棄物Gの移動状態を正面から撮影できる配置が好ましく、同時にピット2内を上部正面から撮影できる配置が好ましい。
【0029】
〔本処理システムの処理操作について〕
本処理システムは、演算処理部7によって、以下の処理操作が制御される。
(a)ピットに投入される廃棄物全体または個別の量および質を含む投入物情報、および前記画像モニタからの画像情報を入力する。
(b)前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された廃棄物の個別の大きさあるいは投入量およびごみ質を含む瞬時の廃棄物情報を推算する。
(c)投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された廃棄物の位置を検出し、該廃棄物の落下軌跡を推算する。
(d)ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の廃棄物情報および廃棄物の落下軌跡を基に、蓄積された廃棄物の量およびごみ質の分布状態Aを推算する。
(e)該質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、前記攪拌手段を駆動させ、ピット内の廃棄物を攪拌する。
(f)前記量の分布状態Aにおいて、蓄積された廃棄物の全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、前記移送手段を駆動させ、該廃棄物を燃焼炉に移送する。
【0030】
次に、本処理システムの各処理操作について、図2?図6に基づき詳述する。図2は、入力される投入物情報(車両情報)と画像情報を始点として、ピット内の攪拌制御および燃焼炉の燃焼制御に至る本処理システムの処理操作の概要を例示する。画像情報の処理内容は、投入される廃棄物の画像処理、廃棄物の堆積分布の画像処理、ピット内の廃棄物の画像処理からなり、これらに車両情報データとごみ発熱量データベースが用いられる。投入物情報と画像情報に基づき、投入される個々の燃焼対象物の移動・貯留状態を推算し、ピット内の燃焼対象物全体としての分布状態の把握および均一な分布状態を形成する攪拌操作を設定することができる。これにより、燃焼炉に供給される燃焼対象物が組成変動の激しい場合であっても、燃焼炉に対する安定した燃焼制御が可能な燃焼対象物の供給が可能な処理システムを形成することが可能となった。
【0031】
(a)投入物情報および画像情報の入力ピットに投入される廃棄物全体または個別の量および質を含む投入物情報、および前記画像モニタからの画像情報が、演算処理部7に入力される。ここで、投入物情報および画像情報は、少なくとも、以下の情報を有する。
(a-1)投入物情報(車両情報) 具体的には、図2に示すように、車両情報として、特定の収集車Cに係る業者名、ごみ収集エリア、収集ごみの種類として袋体入りか否か、家庭用ごみ・事務系ごみ・商業系ごみの種別および袋体入りの場合の識別方法(各々の色や模様等)、積載したごみの容積、積載したごみの重量の情報が入力される。このとき、上述のように、予め袋体単位のごみ質を特定し比重または発熱量等の投入物情報を設定することができ、投入されたごみの総重量や総容積特定の投入口1から投入された廃棄物の量および質を含む投入物情報を得ることができる。
(a-2)投入ごみの画像情報 具体的には、図3に示すように、特定の投入口1近傍の画像情報(複数の投入口の場合は、各投入口ごとの画像)が入力される。個々のごみ袋体の色や形状、あるいは破砕ごみや剪定ごみまたはその他ごみの種類を識別することができる。また、各ごみの種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、ごみ発熱量データベースを基に投入される個々のごみの重量および発熱量を推算することができる。
(a-3)ピット内ごみの画像情報 具体的には、図3に示すように、投入されたごみが堆積されたピット2内の画像情報が入力される。特定時間における個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別することができる。また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物Gのごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算することができる。
【0032】
(b)投入口近傍の瞬時の画像情報に基づく瞬時の燃焼対象物情報の推算
動画像を切り出した静止画像を画像情報として処理し、収集車Cから投入されるごみ袋体の数や色、形状などを、認識する。つまり、瞬時の画像情報を、以下に示す2値化、マスク処理、ノイズ処理、ラベリング処理するとともに、ごみ袋体の面積、個数、色を把握する。認識したごみ袋体の面積からは、例えば楕円体の形状を仮定してごみ袋体の体積を計算し、車両情報である積載重量を用いてごみ袋体の見かけ密度を推算する。ごみ袋体の色や表面の模様からは、廃棄物の種類、つまり、家庭ごみ、事務系ごみを判断する。さらに、落ち葉、剪定枝などの植物ごみは袋の色傾向(緑色)から判断する。また袋体ごみではない、破砕ごみや剪定ごみ、汚泥などは、投入されるごみの形状や色などを識別し、ごみの種類を判定する。ここで、ごみ種類ごとの平均発熱量をデータベース化しておき、収集されるごみ収集車Cの積載重量、収集エリアなどの情報も利用して、画像処理によりごみ種類と量が分かった段階で、投入ごみの発熱量を算出する。
【0033】
具体的には、図4に示すように、投入口1近傍の瞬時の画像情報に対して、以下のように、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理、およびラベリング処理を行い、識別された廃棄物Gの個別の大きさあるいは投入量を推算し、さらに投入物情報およびごみ発熱量データベースを基に、発熱量等ごみ質を含む瞬時の廃棄物情報を推算する。
・・・
【0034】
(c)投入口からピット内への廃棄物の落下軌跡の推算
図5および図6に示すように、投入口1からピット2内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された廃棄物Gの位置を検出し、廃棄物Gの落下軌跡を求め、堆積位置を推算する。落下軌跡によって、動画から切り出した静止画間でのごみ個体の移動を検出する。ここでは、廃棄物Gをごみ袋体G1?G3とし、複数の時間の画像情報に対して、上述(b)の処理操作を行い、その落下軌跡を推算した場合を図5(A)?(D)に示す。当初の廃棄物Gの処理操作後の3つのごみ袋体G1a?G3a(図5(A))に対し、例えば1secあるいは0.5sec後の移動方向および移動速度を推定し、移動位置G1b?G3b(図5(B))を想定するとともに、実際の同時間後の画像情報に対して同様の処理操作を行った後の移動位置G1c?G3c(図5(C))とのズレを補正し、落下ベクトルG1ad?G3ad(図5(D))を設定する。これを繰り返し行うことによって、図6(A)に示すような各ごみ袋体G1?G3に対する落下軌跡を推算することができ、さらに図6(B)に示すような投入口1からピット2内の区分された領域(ピット2を平面上に一定間隔に区分された領域をいい、例えばs5-t3、s6-t3およびs8-t4などで表わされる領域)への落下軌跡を推算することができる。つまり、廃棄物Gの投入場所(投入口1)とそこからピット2内までの広がりを追跡することが可能となる。
【0035】
また、上記においては、廃棄物Gを点あるいは均等な円として、ごみ袋体G1?G3を捉えたが、実際には種々の形状を有することから、各時間の画像情報からごみ袋体G1?G3の重心位置を求めて、その重心位置の移動を追跡することによって、各ごみ袋体G1?G3に対する投入口1からピット2内への落下軌跡を推算することができる。具体的には、図5(E)に示すように、以下のステップの操作処理を行う。
・・・
【0036】
(d)ピット内に蓄積された廃棄物の量およびごみ質の分布状態Aの推算
ピット内を所定の領域に区分し、(a)投入物情報、(b)瞬時の廃棄物情報および(c)廃棄物の落下軌跡を基に、蓄積された廃棄物の量およびごみ質の分布状態Aを推算する。つまり、投入口1からピット2内までの廃棄物Gの所定の広がりを有する落下軌跡を追跡することによって、ピット2内の廃棄物Gの平面的(2次元的)分布および堆積時間の累積による立体的(3次元的)分布を推算することが可能となる。
(d-1)収集車Cからの廃棄物Gの各ごみ袋体あるいは各種のごみ単体について、瞬時の廃棄物情報およびその落下軌跡からピット2内の平面位置を推算することができる。これによって、瞬時の2次元の廃棄物Gの分布状態を得ることができる。
(d-2)2次元の分布状態を順次経過時間に対応させて蓄積させることによって、堆積した廃棄物Gの3次元の分布状態を得ることができる。つまり、個々の廃棄物Gの堆積位置や堆積高さおよび堆積広がりを求めることができ、蓄積された廃棄物Gの量および質の分布状態Aを推算することができる。投入されたごみの体積、比重、種類などの要素が、分布状態Aを構成する。
【0037】
このとき、特定時間におけるピット2内に堆積された廃棄物Gの画像情報(廃棄物Gの表面上の分布情報)に対して、上記(b)と同様、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算することができる。また、堆積した廃棄物Gの分布については、廃棄物Gの投入前後の静止画の差分画像より求めることができる。このときの分散状態Bを、該特定時間における上記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算することが好ましい。つまり、理想的に両者は一致することが望ましいが、本処理システムにおいては、投入物情報および画像情報を基に、いくつかの推算処理を行うことから、各情報の中には所定の割合で不確定要素があり、推算結果の誤差要因となる。例えば投入物情報におけるごみ質として設定した比重が実際にごみ袋体内のごみと異なることがあり、推算された落下軌跡にズレが生じ分布状態のずれが生じることがある。あるいは、既にピット2内にあるごみに衝突して蓄積位置が移動し、その分布状態が変化することがある。また、実際に袋内のごみ質との相違は、設定した発熱量の誤差となる。本処理システムにおいては、ピット内の特定時間における画像情報から、こうした変動や誤差による影響を補正することによって、より実態に近い分布状態を推算できる。
【0038】
(e)ピット内の廃棄物の攪拌
質の分布状態Aにおいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、攪拌機4を駆動させ、ピット2内の廃棄物Gを攪拌する。つまり、上述のように、投入された廃棄物G自体の質の相違以外に、投入場所の相違や投入された廃棄物Gの広がりによるピット2内の不均一な分布状態が形成される。このとき、ピット2内の質のばらつきは、燃焼炉に供給される廃棄物Gの発熱量のばらつきとなり、安定な燃焼条件を確保することができない。従って、例えばごみ攪拌移動モデルとして、ピット2内の区分された領域単位で、その領域の3次元の平均発熱量を推算し、領域間での平均発熱量の差(ばらつき)が所定の範囲(例えば200kcal)外となった場合を不均一であると設定し、分布状態Aがこうした不均一な状態となった場合、演算操作部7から攪拌機4に対して駆動信号が発せられる。具体的には、ある2つの領域(例えば図6(B)におけるs3-t2とs9-t5)の平均発熱量(単位容積当たりの推算発熱量)の差が200kcalを超えた場合、質の不均一性が高いとして両者の中間位置に攪拌機4を移動させて、2つの領域を含む広域を攪拌し均一化を図る。所定時間の均一操作後あるいは攪拌操作を行いながら、2つの領域を含む広域内の画像モニタ3からの画像情報を演算操作部7に入力し、堆積層表面の色分布や粒度分布から質の均一性を推算することによって、質の均一性を確保することができる。ただし、例えば燃焼炉の燃焼条件から高い発熱量の廃棄物が必要となるなどの特別な場合においては、質の不均一な分布状態を保持し、高い発熱量の廃棄物をクレーンで捕集し燃焼炉に供給することも可能である。本処理システムにおいては、こうしたフレキシビティのある処理操作を行うことも可能である。
【0039】
(f)ピット内の廃棄物の燃焼炉への移送
量の分布状態Aにおいて、蓄積された廃棄物Gの全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、クレーン5およびホッパ6を駆動させ、廃棄物Gを燃焼炉に移送する。「特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるとき」としたのは、投入場所の相違や投入された廃棄物Gの広がりによって、ピット2内の領域間に量的なバラツキが生じて不均一な分布状態が形成されることがある。粘着性の少ない物質からなる堆積物は、堆積量が多くなれば堆積高さの大きな領域から徐々に小さな領域に移動して均一化するが、廃棄物Gのような物質は逆に拡大することがある。このとき、質の均一性が確保されていれば、量の不均一性は順次移送させれば、燃焼炉に対する弊害はないことから、攪拌操作を行わずに、堆積高さの大きな領域から徐々にクレーン5で採取することによって、量の均一性を次第に確保することができ、仕事量も最小とすることができる。つまり、廃棄物Gの量の分布状態と質の分布状態とは、必ずしも一致するものではないが、燃焼炉の安定した燃焼を確保する本処理システムの目的から、質の均一性を主とする攪拌制御を行うことが好ましい。質の均一性を有する一方、量の不均一性がない場合であっても、攪拌操作を行わずに、量および質が所定の範囲内にある領域から優先的に移送することによって量の均一性は実質的に確保することが可能となる。」





イ 上記アの記載から認められること
甲1の段落0037に記載された、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bの推算は、特定時間におけるピット2内に堆積された廃棄物Gの画像情報(廃棄物Gの表面上の分布情報)に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理、およびラベリング処理が行われるところ、甲1における段落0015の「区分された領域」についての記載、及び段落0031の「(a-3)」の記載によれば、投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報が入力され、特定時間におけるピット内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算するものであることが認められる。

ウ 甲1に記載された発明及び技術事項
(ア)甲1発明1
上記アの記載(特に、段落0001、0010、0012、0015、0016及び0022?0037並びに図1?6の記載)によれば、甲1には次の事項からなる発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているものと認める。
「ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報および蓄積される燃焼対象物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタからの画像情報を入力し、
前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算し、
ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算し、該特定時間における前記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算する
演算処理部を備え、
前記蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bの推算は、投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報が入力され、特定時間におけるピット内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算するものである、
燃焼対象物の処理システム。」

(イ)甲1発明2
上記アの記載(特に、段落0001、0010、0013、0015、0016及び0022?0037並びに図1?6の記載)によれば、甲1には次の事項からなる発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているものと認める。
「予めピットに貯留された後に燃焼炉に供給される燃焼対象物を処理する方法であって、該ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報、およびピットへの投入口からピット内まで撮影された燃焼対象物の画像情報を基に、
前記投入口近傍の瞬時の画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、前記投入物情報を基に、投入された燃焼対象物の個別の大きさあるいは量および発熱量等のごみ質を含む瞬時の燃焼対象物情報を推算し、
投入口からピット内への経路の連続する所定時間の画像情報を基に、特定された燃焼対象物の位置を検出し、該燃焼対象物の落下軌跡を推算し、
ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量およびごみ質の分布状態Aを推算し、
ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および発熱量等のごみ質の分布状態Bを推算し、該特定時間における前記分布状態Aと対比して、区分された領域間の量または/および質の差が所定の範囲外となった場合に、前記燃焼対象物の落下軌跡の補正を行い、補正された分布状態Aを推算する方法において、
前記蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bの推算は、投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報が入力され、特定時間におけるピット内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算するものである、
燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理方法。」

(ウ)甲1の技術事項1
上記アの記載(特に、段落0027、0036及び0038並びに図1の記載)によれば、甲1には次の事項(以下、「甲1の技術事項1」という。)が記載されているものと認める。
「ピット内に蓄積された廃棄物のごみ質の分布状態(推論マップ)に基づいて、区分された領域間の差が所定の範囲外となった場合に、クレーン5を駆動させ、ピット2内の廃棄物Gを攪拌すること、及び、蓄積された廃棄物Gの全体または特定の領域の量および質が所定の範囲内にあるときに、クレーン5およびホッパ6を駆動させ、廃棄物Gを燃焼炉に移送すること。」

(エ)甲1の技術事項2
上記アの記載(特に、段落0024及び0032の記載)によれば、甲1には次の事項(以下、「甲1の技術事項2」という。)が記載されているものと認める。
「ごみ質は発熱量に換算でき、発熱量が大きいことは、廃棄物が燃えやすいこと。」

(オ)甲1の技術事項3
上記アの記載(特に、段落0028及び0031の記載)によれば、甲1には次の事項(以下、「甲1の技術事項3」という。)が記載されているものと認める。
「ピット内のごみの廃棄物を画像モニタにより撮像すること。」

(カ)甲1の技術事項4
上記アの記載(特に、段落0001?0005、0008、0010、0015、0022?0025、0027?0029、0031、0034及び0036?0039並びに図1?3及び6の記載)によれば、甲1には次の事項(以下、「甲1の技術事項4」という。)が記載されているものと認める。
「特定時間におけるピット2内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域について、ごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物Gのごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算すること。」

(2)甲2について
ア 甲2の記載
「【請求項1】
廃棄物を搬送する搬送手段と、当該搬送手段で搬送される廃棄物の映像を撮像する撮像装置と、当該撮像装置で撮像した廃棄物の映像を表示する表示手段と、前記搬送手段で搬送される廃棄物の素材情報を教示する判別素材入力部と、前記搬送手段で搬送される廃棄物を取り上げるロボットアームと、当該ロボットアームを駆動して前記廃棄物を素材毎に選別する制御部とを備えた廃棄物の選別システムであって、
前記制御部は、前記撮像装置で撮像された廃棄物の画像データを画像処理する画像処理部と、該画像処理した画像データに前記判別素材入力部で入力された廃棄物の素材情報を紐付けし、これを選別教師データとして教師データ記憶部に記憶する選別教師データ生成部と、前記判別素材入力部で入力された廃棄物の素材情報に基づいて、前記ロボットアームに対して選別指示を出す選別処理部とを備えたことを特徴とする廃棄物の選別システム。」

「【0001】
本発明は、一般廃棄物又は産業廃棄物の選別システム及びその選別方法に関し、特に、解体処理した住宅や施設あるいは災害瓦礫などの廃棄物を選別する廃棄物選別システム及びその選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効活用の観点から、廃棄物をリサイクル可能な資源として再利用することが求められている。そのためには、一般家庭などから出されるゴミの分別化が義務付けられており、テレビや冷蔵庫等の家電製品の場合はリサイクル法により処理が義務づけられている。一方、住宅や施設を解体処理した際に発生する廃棄物や、災害時に発生する瓦礫などの廃棄物には、木材、金属類、ガラス類、プラスチック類などが混在した状態であり、このように廃棄物を再利用するためには、素材毎に分別することが必要であり、これらの多くは人手により分別されていのが現状である。」

「【0008】
非特許文献1に開示された選別ロボットにおいては、導入された選別ロボットの人工知能の能力に応じた選別は可能なものである。また、特許文献1の廃棄物の選別システムは、液晶ディスプレイなど特定の電化製品の選別処理を効率化するための技術であって、選別対象である液晶ディスプレイの構成部品や、分解した部品、変形した部品、破損した部品の形状データを形状データ記憶部に予め登録している。しかし、選別対象として特定の電化製品に限定しない場合、例えば、住宅を解体した際の瓦礫や災害によって発生する瓦礫などの分別は、木材、プラスチック、紙、サイディング、石膏ボードや繊維など選別対象が多く、解体処理した廃棄物の形状や大きさも種々異なり、対比処理部での対比として予め登録する形状データが膨大である。このため、このような技術を住宅を解体した際廃棄物や災害によって発生する瓦礫などの選別に適用した場合において、比較するためにあらゆる廃棄物の形状データ等を予め登録することは極めて困難であるとともに、自動選別の精度も低くなるものである。
【0009】
いずれにしても、人工知能により廃棄物を選別する際の選別精度は、その選別装置或いは選別ロボットに搭載される人工知能の知能程度によって決まるものである。しかしながら、廃棄物、特に、災害瓦礫等の廃棄物は多種多様な素材が混在するものであり、その種類も地域によって差異があり、固定的な選別アルゴリズムでは必ずしも満足のいく選別結果は得られないことがある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、多種多様な素材が混在する瓦礫や建築物を解体処理した廃棄物であっても効率良く選別することができる廃棄物の選別システムおよびその選別方法を提供することを目的とするものであり、選別システムの日々の運用により、各ユーザや地域に応じた的確な廃棄物の素材による選別が可能となる学習効果の高い廃棄物の選別システムおよびその選別方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の廃棄物の選別システムは、廃棄物を搬送する搬送手段と、当該搬送手段で搬送される廃棄物の映像を撮像する撮像装置と、当該撮像装置で撮像した廃棄物の映像を表示する表示手段と、前記搬送手段で搬送される廃棄物の素材情報を教示する判別素材入力部と、前記搬送手段で搬送される廃棄物を取り上げるロボットアームと、当該ロボットアームを駆動して前記廃棄物を素材毎に選別する制御部とを備えた廃棄物の選別システムであって、、
前記制御部は、前記撮像装置で撮像された廃棄物の画像データを画像処理する画像処理部と、該画像処理した画像データに前記判別素材入力部で入力された廃棄物の素材情報を紐付けし、これを選別教師データとして教師データ記憶部に記憶する選別教師データ生成部と、前記判別素材入力部で入力された廃棄物の素材情報に基づいて、前記ロボットアームに対して選別指示を出す選別処理部とを備えたことを特徴とする。」

「【0022】
本発明の廃棄物の選別システムは、搬送手段上を搬送される廃棄物を、撮像装置で撮像された画像データ及び各種センサからの計測データに基づいて、その素材別に選別する際に、作業者が特定の廃棄物の素材情報を指定することによって、作業者が指定した素材情報が撮像装置で撮像された画像データ及び各種センサからの計測データと紐付けされて、選別教師データとして記憶部に記憶される。この選別教師データは、本発明の選別システムが廃棄物を選別する際の教師データとして利用され、学習データとして蓄積され、日々学習して高精度化される。この選別教師データは、瓦礫或いは住宅の解体によって生じる廃棄物をコンベアで搬送して選別する毎に、画像データや各種センサからの計測データに紐づけて記憶される。このように、作業者が素材を指定することにより、形状や大きさ、色調、色彩などが異なる種々の廃棄物に対する選別教師素材データを極めて効率的に収集・構築することができ、廃棄物選別の基礎データとすることができる。
【0023】
また、本発明は、日々の選別操作を実行しながら、機械学習部の学習機能によって選別教師素材データの選別精度の向上を図ることもできるように、撮像装置で撮像された廃棄物の画像データ及び各種センサからの計測データに基づいて廃棄物の素材を判定する素材判定部に機械学習部を備えることにより、コンベアを流れる廃棄物の素材を判定する精度を向上することができるし、究極的には、その判定結果のみに従ってロボットアーム部による廃棄物の自動選別が可能となる。」

「【0029】
実施例1の廃棄物選別システムでは、コンベア20上の廃棄物W1,W2,W3・・・を摘み上げて選別するロボットアーム50と、撮像装置群10(RGBカメラ11、X線カメラ12、近赤外線カメラ13、3Dカメラ14)で撮像した各画像データを画像処理する画像処理部41、選別教師データ生成部42、機械学習部43、選別処理部44、選別教師データ記憶部45などを備えた制御部40(図2)を主要な構成部としている。この選別教師データ記憶部45は、外部サーバやクラウド内に蓄積することも可能である。
【0030】
本実施例1においては、選別対象である廃棄物は、木材、プラスチック、紙、サイディング、石膏ボードや繊維、ガラス、鉄系金属、非鉄金属など多種多様な素材が混在するものであり、加えて、詳細には図示していないが、解体処理された廃棄物W1,W2,W3・・・の大きさや形状はバラバラで中には素材の確認も困難な細かな廃棄物も混在している。このため、本実施例1の選別システム100では、図1に示すように、廃棄物Wを選別する際の前処理として廃棄物W1,W2,W3・・・を搬送するメインのコンベア20の前方にサブコンベア21を配置し、メインコンベア20とサブコンベア21の間に振動篩装置22を配置し、この振動篩装置22によって廃棄物Wを所定の大きさ(50mm)以下のものを篩い落としてからコンベア20に供給している。なお、本実施例1においてコンベア20とサブコンベア21はベルト式コンベアによって構成されているが、ローラコンベアやバケット式のコンベアなど、廃棄物Wを搬送できる構成であればよい。
【0031】
撮像装置群10は、コンベア20上により搬送されてきた廃棄物W1,W2,W3・・・の形状及び色彩画像を撮影するRGBカメラ11、廃棄物のX線透過画像を撮影するX線カメラ12、廃棄物の近赤外線画像を撮影する近赤外線カメラ13、廃棄物の3次元画像を撮影する3Dカメラ14等から成り、コンベア20で搬送される廃棄物W1,W2,W3・・・は、それぞれのカメラ11?14でそれぞれの画像が撮像され、これらの画像データを画像処理部30によって画像処理して表示手段としてのモニタ30に表示している。それらの画像の表示例は図2に示している。」

「【0037】
本実施例1の廃棄物選別システムの作業者は、モニタ30の中央部に表示されるRGBカメラ11で撮像されたメイン画面11Aに表示される画像1A、及び重量センサ15により計測され計算されて表示部22に表示される廃棄物W1,W2,W3・・・の数値データから、コンベア20上の廃棄物W1,W2,W3・・・の素材を判断し、作業者が判断した素材に該当する入力部21を選択することによって、廃棄物W1,W2,W3・・・の素材を指定する。図2に示した実施例においては、モニタ30に表示されたソフトスイッチ21の何れかを選択して接触することにより素材判定の信号が出力されるが、図1に示すように、モニタ30とは別に設けられた判別素材入力部60を設けて、判別素材を入力するように構成してもよい。
【0038】
この判別素材入力部21を選択したことにより出力される素材判別信号は、選別処理部44と教師データ生成部42に入力され、選別処理部44によってロボットアーム50を駆動して廃棄物W1,W2,W3・・・を素材別に選別する。その際、ロボットアーム50はコンベア20上の廃棄物W1,W2,W3・・・を個別に把持し、素材に対応する回収ボックス70にそれぞれの廃棄物W1,W2,W3・・・を排出して廃棄物W1,W2,W3・・・を分別する。なお、本実施例では、前述のように、入力部21への入力操作に関してタッチパネル式のモニタ20を用い、モニタ20に表示される入力部21を押圧操作することによって素材情報を入力しているが、例えば、マウス、タブレットペンでの入力など各種の入力デバイスに適用可能である。さらに、モニタ20と独立したスイッチ式の入力部60等を備え、この入力部をスイッチ操作して素材を指定することも可能である。また、音声による素材指定も可能である。
【0039】
制御部40の選別教師データ生成部41は、前記各カメラ11?14で撮像された画像データ及び重量センサ15で取得した数値的なデータを紐付けするとともに、前記入力部21(判別素材入力部60)からの入力によって作業者が指定した素材情報を紐付けし、これらを教師データD(図1)として教師データ記憶部45に記憶する。なお、教師データDは、機械学習部43により学習を実施するようにプログラミング処理される。この学習方法として、誤差逆伝播法による最適化手法を用いた畳み込みニューラルネットワークにより機械学習を実施するように構成されている。これにより、撮像装置群10(11?14)で撮像される廃棄物1の画像11A?14Aから、その素材を認識するようにデータベース化される。なお、実施例1では、教師データ記憶部45はハードディスク(HDD)、半導体メモリ、フラッシュメモリ、ネットワークサーバ等で構成されている。」

「【0044】
この廃棄物選別システムの作業者は、モニタ30に表示される画像11A,12A,13A,14A及び、廃棄物Wの重量、体積、比重の各データを確認し、選別対象の廃棄物Wの素材を判断し、その素材に該当する入力部21を押して廃棄物Wの素材を指定する(ステップS6)。なお、作業者がモニタ30に表示される画像11A,12A,13A,14Aや各計測データを確認しても素材が分からない場合、入力部23の「その他」を押すと、素材不明な廃棄物Wとして処理され、ロボットアーム50で取り出すことなく、コンベア20から素材が判別できなかった「その他」の廃棄物として排出され(ステップS7)、人力による判別のステップに回される。もしくは音声による指定で操作も出来る。
【0045】
ステップS6において廃棄物Wの素材が指定されると、選別教師データ生成部42は、各カメラ11?14で撮像された画像データ11A?14Aと重量センサ15等で取得した計測データに対して作業者が指定した素材情報を紐付けし(ステップS8)、これを教師データDとして深層学習による機械学習を実施し(ステップS9)、撮像装置群10(11?14)で撮像される画像11A?14A及び計測データと指定された素材とが認識されて記憶部34に記憶される(ステップS10)。」

「【0048】
本実施例1は、このような、従来から行われている廃棄物Wを遠隔操作で選別を指示する選別システムにおいて、廃棄物Wの素材を判別して指定するシステムを組み合わせることによって、各カメラ11?14で撮像された画像データ11A?14Aと重量センサ15等で取得したデータとが素材情報と自動的に紐付けされ、選別教師データDを作成することができる。教師データDはコンベア20に供給される廃棄物W1,W2,W3・・・を、本システムを操作する作業者が素材を指定する毎に学習を実施し、制御部40が撮像装置群10(11?14)で撮像される画像11A?14A及び計測データに紐付けられて廃棄物の素材と関連付けられて認識されて教師データ記憶部45に記憶され、データベース化される。すなわち、作業者は従来の遠隔操作による選別手順と同じ方法で選別作業するだけで、選別システムとしては、それぞれ形状や大きさ、色調、色彩が異なる種々の廃棄物W1,W2,W3・・・の素材が機械学習によってデータベース化されるため、極めて効率的に素材毎の選別データが学習され収集されることになる。なお、この選別システム100のデータ学習と収集は、単独の選別システム100の運営に限らず、複数の選別システム100あるいは異なる選別処理施設に設置した選別システム100同士をネットワークで接続し、各選別システム100からのデータを記憶部45に記憶することにより、より高度な学習効果を達成することも可能である。」

「【0050】
前記実施例1は、遠隔操作による選別システム100において、教師データDを記憶部45に記憶しながらも、モニタ30に表示される画像11A,12A,13A,14A及び、廃棄物Wの重量、体積、比重の各データを確認し、選別対象の廃棄物Wの素材を判断し、その素材に該当する入力部21を押して廃棄物Wの素材を指定する(ステップS6)例を示したが、本実施例2では、操作者による素材判別の情報は入力しながらも、より記憶部45に格納される教師データDに基づいて廃棄物Wを人工知能によって自動選別する例を示している。」

「【0053】
本実施例2の制御部40は、図5のブロック図に示すよう、前記各カメラ11?14で撮像された画像データと記憶部34に格納された選別教師データとを比較して廃棄物1の素材を判定する素材判定部55を備える点において実施例1と異なり、その他の構成は実施例1と実質的に共通する。」

「【0055】
本実施例2における素材判定部46は、機械学習部43の学習結果によって各カメラ11?14で撮像された画像データ11A?14Aから廃棄物W1,W2,W3・・・の素材を判定する(ステップS20)。この素材判定部46での廃棄物W1,W2,W3・・・の素材の判定は、機械学習部43の学習結果が十分であれば精度が高く判別できるが、学習結果が不十分な場合は判別の精度が低くなる。そこで、所定の判別精度(例えば、判別精度85%)以上の場合は判別可とし、それ以下の場合は判別否とすることができる。
【0056】
この判定において、ステップ20で判別可であり、例えば「木材」と判定された場合、選別教師データ生成部31によって画像データに素材情報を紐付けし(ステップS21)、これを教師データDとして深層学習による機械学習を実施して(ステップS22)、撮像装置10で撮像される画像1Aの素材を認識して記憶部34に記憶する(ステップS23)。これにより、ロボットアーム50は、ステップ20で判別可の状態で、素材判別部46から出力された情報により廃棄物W1,W2,W3・・・の選別処理が実行される(ステップS24)。
【0057】
次に、ステップS20において、廃棄物W1,W2,W3・・・の素材の判定が否と判断された場合(ステップ20で「否」)を考える。このような場合には、例えば、モニタ30上で警告表示あるいは警報音によって作業者に報知することも可能である。このように廃棄物W1,W2,W3・・・の素材が判定され得ないと判断された場合、作業者によるモニタ30の廃棄物Wの画像11A?14Aや表示部22の情報を確認して作業者の判断で素材を判定して入力部21を選択押圧して廃棄物Wの素材を指定する(ステップS25)。このように、作業者が廃棄物Wの素材を指定すると、その作業者からの判別指示が優先して、ロボットアーム50による廃棄物W1,W2,W3・・・の選別処理が実行される(ステップS24)。また、ステップS25において、廃棄物W1,W2,W3・・・の素材が指定されると、ステップS21において、制御部40の選別教師データ生成部42によって画像データ11A?14A及び計測情報に素材判別情報が紐付され、この後は、教師データDとして学習を実施して撮像装置群10で撮像される画像11A?14Aの素材認識を学習して教師データ記憶部45に記憶する(ステップS22、S23)。」

「【0060】
以上、本発明の実施例1及び2について詳述したが、本発明は前記実施例に限定さるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施例では、建築物を解体処理した際に発生する廃棄物あるいは瓦礫の選別システムに適用した場合を例として説明したが、これに限らず一般家庭から排出されるゴミあるいは家電製品を選別するシステムに適用してもよい。その際、深層学習の最適化手法やネットワーク構成は、学習対象に依存するため、一般家庭のゴミや家電製品など、選別する廃棄物の種類に最適なものを適用すればよい。また、センサとして重量センサや圧力センサに限るものではなく、素材に判別する上に効果的なセンサや計測器であればよい。」





イ 甲2に記載された発明及び技術事項
(ア)甲2発明1
上記アの記載によれば、甲2には次の事項からなる発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されているものと認める。
「コンベア20上の廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aと素材情報を紐付けした教師データDを用いた機械学習部43による機械学習を実施して学習結果が記憶部に記憶され、撮像された画像データと前記記憶部に格納された学習結果とを比較して、前記廃棄物の素材を判定する素材判定部を備え、前記教師データDは、所定の判別精度以上の場合は、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14Aに素材情報を紐付けし、所定の判別精度以下の場合は、作業者が廃棄物の素材を指定すると、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14A及び重量センサ15等で取得した計測データに対して作業者が指定した素材情報を紐付けされるようにした廃棄物選別システム。」

(イ)甲2発明2
上記アの記載によれば、甲2には次の事項からなる発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されているものと認める。
「廃棄物の素材を判定する方法であって、
コンベア20上の廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aと素材情報を紐付けした教師データDを用いた機械学習部43による機械学習を実施して学習結果が記憶部に記憶され、撮像された画像データと前記記憶部に格納された学習結果とを比較して、前記廃棄物の素材を判定するステップを備え、
前記教師データDは、所定の判別精度以上の場合は、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14Aに素材情報を紐付けし、所定の判別精度以下の場合は、作業者が廃棄物の素材を指定すると、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14A及び重量センサ15等で取得した計測データに対して作業者が指定した素材情報を紐付けされるようにした方法。」

(ウ)甲2の技術事項1
上記アの記載によれば、甲2には次の事項(以下、「甲2の技術事項1」という。)が記載されているものと認める。
「廃棄物選別システムの制御部において、コンベア20上の廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aと素材情報を紐付けした教師データDを用いた機械学習部43による機械学習を実施して学習結果が記憶部に記憶され、撮像された画像データと前記記憶部に格納された学習結果とを比較して、前記廃棄物の素材を判定する素材判定部を備え、前記教師データDは、所定の判別精度以上の場合は、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14Aに素材情報を紐付けし、所定の判別精度以下の場合は、作業者が廃棄物の素材を指定すると、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14A及び重量センサ15等で取得した計測データに対して作業者が指定した素材情報を紐付けされるようにしたこと。」

(エ)甲2の技術事項2
上記アの記載(特に、段落0039、0045、0056及び0057並びに図3及び4の記載)によれば、甲2には次の事項(以下、「甲2の技術事項2」という。)が記載されているものと認める。
「廃棄物選別システムの制御部において、廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aに対応した教師データDを生成する選別教師データ生成部を備えること。」

(3)甲7について
甲7には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、運転支援システム、運転支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所やゴミ焼却所のプラントは制御装置による自動運転を行うことが多い。例えば、特許文献1には、プラントの運転状態を評価する管理値として、正常状態の変動範囲を示す管理値、正常状態から警報状態の境界を示す管理値、警報状態から停止状態の境界を示す管理値を設定し、これらの管理値によってプラントの運転状態を評価し、自動運転を行う装置が開示されている。
【0003】
しかし、現実にはプラントの制御を全て自動化することは難しい。例えば、ゴミ焼却プラントでは、入力となるゴミの中身、ゴミの投入量が一定でないことにより炉内の燃焼状態が刻々と変化する。このような変化に対し、例えば、燃焼状態の指標となる状態量をセンサーで検出し、その検出値に応じた操作を自動で行うといった制御を行う場合、その自動制御が実際の燃焼状態の変化に追い付かない恐れがある。そのため、プラントの運転員が運転状態を総合的に判断し、運転状態の変化を予測して自動制御が働く前に操作介入し安定したプラントの運転を行っている。
・・・
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる運転支援システム、運転支援方法及びプログラムを提供することを目的としている。」

「【0021】
プラント10Aには、プラントの機器を手動で操作するための操作盤11A、プラントの機器を自動で制御する制御装置12A、DCS(distributed control system)13A、プラントの運転状態を検出するためのセンサー14Aが備えられている。履歴情報作成装置15Aは、操作盤11A、制御装置12A、DCS13Aからプラントに備えられた図示しない機器(例えば、タンク、ボイラ、ガスタービンなど)に対して行われた操作の種類と操作量の情報を取得し、操作履歴情報DB16Aに保存する。また、履歴情報作成装置15は、DCS13Aおよび機器や配管などに設けられたセンサー14Aが検出した状態量の情報を取得し、運転履歴情報DB17Aに保存する。また、通信装置18Aは、制御装置12Aが生成した制御信号、DCS13Aやセンサー14Aが検出した各種状態量を所定の時間間隔(例えば10秒ごと)で運転支援装置20に送信する。これら通信装置18Aが所定の時間間隔で運転支援装置20に送信する各種状態量の情報を総称して運転状態情報と呼ぶ。また、通信装置18Aは、操作履歴情報DB16Aに保存された情報(操作履歴情報と呼ぶ)と、運転履歴情報DB17Aに保存された情報(運転履歴情報と呼ぶ)とを例えば1日に1回、運転支援装置20へ送信する。プラント10Bについても同様である。」

「【0023】
運転支援装置20は、1つ又は複数のプラント10(例えば、プラント10A、プラント10B)から運転状態情報、操作履歴情報、運転履歴情報を受信して、それらのプラントの運転を支援する情報を生成する。例えば、ゴミ焼却プラントの場合、ゴミの投入量やゴミの中身などに応じて、同じプラントでも運転方法を調整する場合がある。通常、このような調整は、運転状態情報や経験による総合的な判断に基づいて、熟練した運転員によって行われる場合が多い。本実施形態の運転支援装置20は、プラント10Aなどから受信した操作履歴情報、運転履歴情報を用いて熟練した運転員が身に着けているノウハウを形式知化し、経験の浅い運転員であってもそのノウハウを活用できるよう操作提案情報を生成する。例えば、運転支援装置20は、プラント10A、プラント10Bを制御する図示しない制御システムの一部を構成している。経験の浅い運転員は、運転支援装置20が生成する操作提案情報を参考にしながら、制御システムをプラント10Aなどの状況に応じて柔軟に運用する。」

「【0039】
操作提案ルール生成部205は、「設定1」の条件を記憶部212から読み出して、操作履歴情報DB214から「操作A」が記録されている時刻を抽出する。操作提案ルール生成部205は、抽出した時刻の1時間前から「操作A」が行われた時刻までの運転履歴情報のうち「回転数」、「出力」、「温度」の各項目の値を運転履歴情報DB213から読み出す。操作提案ルール生成部205は、読み出した3つの項目のそれぞれについて1時間にわたってサンプリングした値の平均値を計算する。図5の1行目のデータは、操作提案ルール生成部205がこのようにして生成した過去介入履歴情報である。つまり、「2015/3/410:10:10」に行われた介入操作(種類:「操作A」、操作量「10」)について、その1時間前からの「回転数」の平均値は「aaa」(rpm)である。同様に出力の1時間当たりの平均値は「bb.b」(kw)、温度の平均値は「cc.c」(℃)である。操作提案ルール生成部205は、介入操作の情報と運転履歴情報から算出した比較用情報とを対応付けて図5の1行目に例示する過去介入履歴情報を生成する。」

「【0043】
次に操作提案ルール生成部205は、このようにして生成した過去介入履歴情報に基づいて、プラントの運転状態情報のうちどの監視対象項目がどのような値になったときに、介入操作が行われているかを統計的手法、機械学習などにより算出する。」

「【0045】
例えば、Nox濃度が「g1」(ppm)以上の場合、アンモニア流量を増加させるようバルブ開度を調整し、逆に、Nox濃度が「g1」(ppm)未満の場合、アンモニア流量を減少させるようバルブ開度を調整するよう自動制御されているとする。しかしながら、ゴミの投入量、ゴミの種類、ゴミ焼却炉への空気の流入量、季節、気温などの変動によってNox濃度は増減し、より細やかにアンモニア流量を調整しなければ、例えばプラントに課せられているNox濃度の規制量を満たすことができない。これに対し、従来は熟練した運転員が介入操作を行ってNox濃度を制御していた。操作提案ルール生成部205は、この運転員の介入操作が記録された過去介入履歴情報を介入操作履歴DB215から読み出して、機械学習などにより介入操作を行うルールを割り出す。図6は、介入操作履歴DB215が割り出したルールの一例である。・・・このように図6で例示した決定木によれば、運転状態がどのような条件となったときにどのような介入操作がどの程度行われたかが分かる。」

「【0066】
なお、上述した運転支援システムにおける各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを運転支援システムのコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。」

(4)甲8について
甲8には、次の記載がある。
「【請求項1】 自動学習により最新教師データを追加学習する自己成長型のニューラルネットワークを構築して、複数の入力パラメータから出力予測値を算出する想起を行うニューラルネットワークにおいて、制御結果に基づいて教師データを抽出し、当該教師データを前記各入力パラメータのパターン毎に分類し、それぞれのデータベースを構成することを特徴とするニューラルネットワークの教師データ自動抽出方法。
・・・
【請求項8】 ニューラルネットワークを用いてプラント制御装置の複数のプラント入力パラメータからプラント出力予測値を算出して表示することにより、プラントを管理するオペレータに対してプラント運転支援を行うことが可能なプラント運転支援装置において、前記ニューラルネットワークを、ニューラルネットワークの自動追加学習構築により最新教師データを追加学習する自己成長型のニューラルネットワークとし、かつ、制御結果に基づいて得られる教師データのための多重系の教師データベースを備えていることを特徴とするプラント運転支援装置。
・・・
【請求項11】 前記請求項8のプラント運転支援装置において、前記ニューラルネットワークは、さらに、過去のプラント運転の入力及び出力を記憶する運転履歴データベースを備えていることを特徴とするプラント運転支援装置。」

「【0010】そこで、本発明では、ニューラルネットワーク再構築のための教師データを物理的制御結果に基ずいて行い、有効な教師データを自動抽出することにより自己成長型のネットワークの再構築が可能であり、常に有効で信頼性の高いニューラルネットワークの構築が現実の装置でも実現可能なニューラルネットワークの教師データ自動抽出方法と、それを用いたニューラルネットワークシステムを提供することを目的とする。」

「【0015】
【作用】前記本発明で提案した本発明のニューラルネットワークの教師データ自動抽出方法、及び、それを用いたニューラルネットワークシステムによれば、制御結果に基づいて得られる教師データを、複数の入力パラメータのパターン毎に分類して多重系の教師データベースを備えるようにしたことから、有効な教師データを自動抽出することにより自己成長型のネットワークの再構築が可能であり、かつ、そのための処理量も少なく、有効で信頼性の高いニューラルネットワークの構築が現実の装置でも実現可能となる。また、本発明を適用したプラントの運転支援装置によれば、オペレータなどの入力処理や操作を介することなく、ニューラルネットワークの教師データの自動抽出が可能になることから、ニューラルネットワークの自動学習をメンテナンスフリーで実用レベルで行うことが可能となる。そして、多重系の教師データを有することにより、状況変化に対応したネットワークを効率よく、また、精度のよい好適な予測ガイダンスが提供できる。」

「【0017】
【実施例】本発明の実施例を説明する前に、まず、本発明になる自己成長型ニューラルネットワークの構築について要約して説明すると、ニューラルネットワークの教師データの自動抽出において、上記の諸問題を解決する手段として、物理的な制御結果の善し悪しを判定するロジック(判定値を設定するなど)を用いることにより、制御結果の良好な制御時のデータを教師データとして自動抽出し、自己成長型のネットワークを構築する手段を提案するものである。また、良好な制御結果のみでなく、諸状況データの変化量によって、多重系の教師データ群に分類することによって、外乱状況の傾向によって、教師データを切り換えて使用することによって、より有効で高効率な予測算出を行うことが可能となる。」

「【0022】以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に詳細に説明する実施例は、本発明を、オペレータによる判断を必要とするプロセスの運転管理において、知能的支援の手法としてニューラルネットワークを用いた場合の支援システムに適用した一例である。従って、本発明は、ニューラルネットワークを用いた各種の支援システム、特に、オペレータが介在する各種プロセス、例えば、浄水処理プロセス、下水処理プロセス、化学反応プロセス、バイオプロセス、原子力発電プロセス、株価・為替などの金融プロセスなどにも適用することができる。
【0023】図1は、本発明の一実施例になるプラント運転支援システムを、浄水処理プロセスの運転管理に適用した場合の全体構成を示したブロック図である。まず、浄水処理プロセスの手順を簡単に説明する。図1において、河川や湖沼などの水源からの原水を着水丼100に導く。次に、着水丼100の水を導入する急速混和池110において、凝集剤タンク111の凝集剤を凝集剤注入ポンプ112により注入し、撹拌翼113を撹拌機114により駆動して撹拌する。なお、ここでは、フロック形成を促進するアルカリ剤を注入することもある。さらに、フロック形成池120には撹拌バドル121を配置して緩やかに回転させる。これにより形成されたフロックは、続く沈殿池130で沈殿させ、さらに、その上澄み液をろ過池140でろ過する。
・・・
【0026】次に、プロセスのオペレータに対して運転管理支援を行う知能的運転管理支援システム、すなわち、支援システム200について説明する。まず、この支援システム200は、以下のサブシステムからなる。
(1)ニューラルネット応用支援システム(ニューロシステム)230
(2)画像処理手段170
(3)運転履歴データベース180
(4)教師データベース185
特に、本発明の特徴部分を構成しているニューロシステム230は、さらに、教師データ抽出手段270と、学習手段280と、定量的ガイダンス及び表示手段(ガイダンス表示手段)380と、ニューラルネットベース400とからなる。
【0027】以上に述べた構成において、ニューロシステム230は、まず、過去の履歴データの内、有効と思われるデータを運転履歴データベース180から、制御結果の好適であったデータを教師データとして自動抽出する。この抽出した教師データを学習手段250においてニューラルネットにより学習し、想起を行う。この学習後のニューラルネットの役割は、想起によって運転管理に必要な定量的ガイダンスを求め、結果をニューラルネットベース400に送ることである。また、ここで抽出された知識は、ガイダンス表示手段380を介して、表示手段190に送られる。この表示手段190では、定量的ガイダンスと抽出知識とをそのCRT画面上に表示する。
・・・
【0030】オペレータは、表示手段190のCRT画面上に表示されたガイダンスを参考に、操作量の必要と認められる変更等を、キーボード195を通して、制御手段150に入力する。制御手段150は、キーボード195から入力された入力データに従って、プロセスの各機器を制御する。なお、支援システム200からのガイダンスが、直接、上記制御手段に入力されることもある。」

「【0033】次に、本実施例のニューロシステム230を、オペレータが介在するプロセスの一つである浄水プロセスで運用する場合を例にとり、本発明の特徴をなす学習手段250の動作を、その構成と共に、具体的に説明する。まず、本実施例の浄水プラントでは、流入水質や計測器の特性が経時的に変化するため、これに応じて凝集剤注入方法も変化する。一方、この状況変化に対応して、ニューラルネットワークが臨機応変に追加学習していけば、自己成長性を有する運転支援が行えることとなる。このような自動追加学習方法の概略を、添付の図2に示す。
【0034】運用前の段階では、新規ニューラルネットを構築する(ステップ260)。次に、実機運用後(自動学習)の段階では、教師データの抽出を行い(ステップ270)、学習手段による学習を行なう(ステップ280)。その後、ガイダンス周期か否かを判定し(ステップ370)、判定の結果、ガイダンス周期になっていれば(Yes)、ガイダンス内容を表示し(ステップ380)、再び、教師データの抽出を行うステップ270へ戻る。他方、ガイダンス周期になっていなければ(No)、ガイダンス内容の表示を行わずに教師データの抽出を行うステップ270へ戻ることとなる。
【0035】なお、この浄水プロセスでの運用手順の考え方は、以下の通りである。
1.処理が良好で、しかも、過去の運転履歴と大きく矛盾しないデータのみをネットワークに反映させる。
2.過去の運転履歴を尊重しつつ、新たなデータを最も強く反映させる。
3.メンテナンスフリーで自動学習する。
すなわち、ことような考え方により、プラントデータ群の構造変化に適応して、常に、最適な予測ガイダンスを行うことである。」

「【0062】以上に述べたように、従来のニューラルネットワークシステムでは、教師データの抽出などにオペレータへの煩わしい操作などが存在したことから、実用レベルでのニューラルネットワークの自動学習が困難であったが、上述した手段により、教師データを自動抽出することによって、オペレータの操作量の低減および実用レベルでのニューラルネットワークの自動学習が可能となった。また、好適な教師データを抽出することにより、オペレータの誤操作や予測算出ミスに伴う不適切なネットワークを構築する危険性をも減少させることも可能となる。そして、随時好適な最新教師データを追加学習することにより、新たな物理的制御結果を強く反映した自己成長型のネットワークを構築することをメンテナンスフリーで実現できる。
【0063】さらに、センサ入力状況変化に応じて多重系の教師データベースに分類格納しその変化に応じた教師データベースを選択することによって、高効率なネットワークの再構築が可能となり、ハードウェアへの負担も軽減できる。その結果、ニューラルネットワークの自動追加学習による予測算出の長所を最大限に発揮することができ、プラント運転支援システムとして高い信頼性を有する予測ガイダンスを提供できるプラント運転支援システムを構築することができる。
【0064】
【発明の効果】以上の詳細な説明からも明らかなように、本発明になるニューラルネットワークの教師データ自動抽出方法とそれを用いたニューラルネットワークシステム、並びに、プラント運転支援装置によれば、ニューラルネットワーク再構築のための教師データを、物理的制御結果を反映しながら効率良く自動抽出することを可能にしたことにより、ニューラルネットワークの自動学習を現実の装置でも実現可能とすることにより、効率良くかつ平均想起誤差の少ない予測を実現する自己成長型のニューラルネットワークを、オペレータの手を煩わすことなく構築することを可能とし、さらには、これにより、常に最適な想起予測を行い、定量的で誤差の少ない予測ガイダンスを行うことにより信頼性の高い予測ガイダンスを行うことの可能なニューラルネットワークの手法を用いたプラント運転支援装置を実現することが出来るという優れた効果を発揮する。」

(5)甲11について
ア 甲11の記載
甲11には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、ごみ処理工場用自動クレーンの制御装置に関し、特に、ごみピット内に異質ごみが搬入された場合、この異質ごみを色調により検知して一般ごみと均一に混ぜ込むようクレーンに攪拌指示を出し、ごみ質の均一化を図るようにしたごみ処理工場用自動クレーンの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ごみ焼却処理工場等において、ごみピット内に家庭等から回収してきた都市ごみ(一般ごみ)と、これと異質にするごみ特に限定されるものではないが、例えば、粗大ごみとが投入され、これら一般ごみと異質ごみとを一緒にして焼却炉に投入し焼却処理するようにしている。
また、このごみピットには、ごみを投入するための搬入扉がピットの大きさに応じて複数配設されており、これら一般ごみと異質ごみとはそれぞれ任意の搬入扉から直接投入されるが、粗大ごみは回収された後、破砕機等により焼却しやすい大きさに細かく破砕した後、搬入扉からごみピット内に投入するようにしている。
【0003】
ところで、ごみピット内に投入される異質ごみは、通常はある程度の量が一度にごみピット内へ投入されるため、投入された箇所にかたまった状態で堆積されるので、クレーンにより定量のごみを掴む場合、この異質ごみの堆積部分にバケットが着床すると、この異質ごみのみを焼却炉内に投入されるようになり、これによりごみ焼却炉内における異質ごみの比率が高くなってその燃焼温度が一般ごみ焼却時と比べて大きく変化するとともに、排ガスの性状も変わり、ダイオキシン等の有害ガスや物質が発生するようになり、環境問題等が発生することもある。
そこで、ごみ焼却炉内に投入するごみ質の均一化を図るため、ごみピット内に投入された一般ごみと異質ごみとを周期的或いは定期的にクレーンを用いて攪拌するようにしている。このごみの攪拌操作としては、クレーンの操作者が目視により一般ごみの堆積部分と異質ごみの体勢部分とを予め識別してクレーンのバケットの掴み動作と移動操作によりピット内にてごみの積み上げ、溝堀り、所謂積み替えを行うことでごみの攪拌を行うようにしている。」

イ 甲11に記載された発明
(ア)甲11発明1
上記アの記載によれば、甲11には次の事項からなる発明(以下、「甲11発明1」という。)が記載されているものと認める。
「ごみピット内に貯留されるごみをクレーンの操作者の目視により一般ごみの堆積部分と異質ごみの堆積部分とを予め識別して、クレーンのバケットの掴み動作と移動操作によりピット内にてごみの積み上げ、溝堀り、所謂積み替えを行うことでごみの攪拌を行うようにしたごみ処理工場用クレーンの制御装置。」

(イ)甲11発明2
上記アの記載によれば、甲11には次の事項からなる発明(以下、「甲11発明2」という。)が記載されているものと認める。
「ごみピット内に貯留されるごみをクレーンの操作者の目視により一般ごみの堆積部分と異質ごみの体勢部分とを予め識別するステップと、
クレーンのバケットの掴み動作と移動操作によりピット内にてごみの積み上げ、溝堀り、所謂積み替えを行うことでごみの攪拌を行うステップを備えるごみ処理工場用クレーンの制御方法。」

(6)甲12について
甲12には、次の記載がある。
「【0006】
投入される廃棄物の質(廃棄物の種類、水分率、発熱量)が変動した場合には、この変動により焼却状況の変化が現れ、その結果炉内温度、排ガス酸素濃度が変化する。上述したような制御ロジックでは、炉内温度、排ガス酸素濃度の変化が検知されて初めて廃棄物の質の変動が検知され、この変動に応じた燃焼制御が開始される。」

なお、甲3?甲6の2は、技術動向を示すために引用された文献であり(申立書45?47頁)、本件発明1?10の構成を示すものではないため、記載を省略した。
また、甲9?甲10の2は、甲1に記載された発明と甲2に記載された技術事項の組み合わせについて参考とする情報を示す文献であり、本件発明1?10の構成を示すものではないため、記載を省略した。

2 甲1を主引用例とした取消理由(取消理由1-1?1-10)について
(1)本件発明1について(取消理由1-1について)
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
・後者の「ピット」は、前者の「ごみピット」に、同様に、「演算処理部」は「推定部」に、「燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理システム」は「装置」に、それぞれ相当する。

・後者の「蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bの推算」について、後者の「燃焼対象物であるごみの廃棄物」は、前者の「廃棄物」に相当し、後者の「投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報」は、前者の「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータ」に相当する。
また、後者の「発熱量」は、前者の「質を表す値」に相当する。
そして、後者の「演算処理部」が一部に有する「ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算」する機能について、「投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報が入力され、特定時間におけるピット内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算する」態様は、前者の「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する」態様に、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する機能を有する推定部を備える装置。」

[相違点1A-1]
推定部が、ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するための手法に関し、本件発明1では、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」を用いるものであって、「前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される」のに対して、甲1発明1では、「演算処理部」が一部に有する「ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算」する機能について、「ごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算する」ものであり、「蓄積された燃焼対象物の量および発熱量等のごみ質の分布状態Bを推算」する機能以外に、「ピットに投入される燃焼対象物全体または個別の量および質を含む投入物情報および蓄積される燃焼対象物を投入口からピット内まで撮影する画像モニタからの画像情報を入力」する機能や「ピット内を所定の領域に区分し、前記投入物情報、瞬時の燃焼対象物情報および燃焼対象物の落下軌跡を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算」する機能も含み、また、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」を用いるものではない点。

イ 判断
(ア)検討1
甲1発明1では、ピット内のごみの表面情報のみを基に得られるごみ等の情報には問題があることを課題としており(段落0008)、このような課題を解決するために、演算処理部が、投入物情報および投入口からピット内まで撮影する画像モニタからの画像情報を入力する機能、これらの情報を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算する機能を有することを前提としている。
したがって、甲1発明1において、これらの機能を排除して、上記相違点1A-1に係る本件発明1の構成に変更することは、阻害要因があるといえる。
一方、甲2には、上記1(2)イ(ウ)のとおりの甲2の技術事項1が記載されている。
しかしながら、甲2の技術事項1は、廃棄物の選別のためにコンベア1上で搬送される個別の廃棄物Wを対象としたものであり、甲1発明1のようにピット内に堆積されたごみの廃棄物を対象とするものではないから、甲1発明1に甲2の技術事項1を適用することはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点1A-1に係る構成を備えることで、「本技術によると、新しい画像データが入力されたときに、それに対応する正しい値(廃棄物の質を表す値)を出力するよう構築されたモデルを用いて、新たな画像データに対応する廃棄物の質を推定する。従って、廃棄物の新しい画像データを収集して、これらの画像データを学習モデルに入力することで、新しい画像データに対応する廃棄物の質の推定を行うことができる。さらに、色調が近くても質が異なる廃棄物や、一定の色調を持たなくても質が同じ廃棄物が、ピット3内に混在していても、色調のみから廃棄物の質を推定する場合と比較して、より高い精度で廃棄物の質を推定することができる。また、本技術によると、学習モデルを用いて機械的に廃棄物の質の推定を行うので、熟練の作業者がいなくても、廃棄物の質の推定を行うことができる、あるいはこれまで廃棄物の質を目視で行っていた作業員の判断の確からしさをサポートすることができる。さらに、新しい画像データとそれに対応するプロセスデータを用いて定期的に追加学習、再学習を行うことで、経年による廃棄物の質の変化に対応することもできる。」(本件特許明細書の段落0045)という所期の効果(以下、「本件発明の効果」という。)を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)検討2
検討1と同様に、甲1発明1において、投入物情報および投入口からピット内まで撮影する画像モニタからの画像情報を入力する機能、これらの情報を基に、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Aを推算する機能を排除して、上記相違点1A-1に係る本件発明1の構成に変更することは、阻害要因があるといえる。
一方、甲2(特に、段落0001、0002、0008?0011、0023、0029?0031、0037?0039、0044、0045、0048、0050、0053、0055及び0060並びに図1?6)及び甲8(特に、請求項1、8及び11、段落0010、0015、0017、0033?0035及び0062?0064並びに図2)に記載されているように、「状態データを入力として出力値を求める装置において、状態データに対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、新たな状態データを入力して、前記新たな状態データに対応する出力値を取得する推定部を備えること」は、本件特許の出願前に周知技術(以下、「周知技術1」という。)といえる。
しかしながら、甲2には、コンベア1上で搬送される個別の廃棄物Wの選別に関する技術が記載され、また、甲8には、浄水処理プロセス等のオペレータが介在する各種プロセスにおいて、プロセスのオペレータに対して運転管理支援を行う技術が記載されており、周知技術1は、甲1発明1のようにピット内に堆積されたごみの廃棄物を対象とするものではないから、甲1発明1に、周知技術1を適用することはできない。
そうすると、甲1発明1において、周知技術1を適用し、上記相違点1A-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点1A-1に係る構成を備えることで、本件発明の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について(取消理由1-2について)
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、上記(1)の検討を踏まえると、本件発明2は、甲1発明1及び甲2の技術事項1に基いて、又は、甲1発明1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について(取消理由1-3について)
甲1には、上記1(1)ウ(ウ)で示した甲1の技術事項1が記載されている。
しかしながら、本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)及び(2)の検討を踏まえると、甲1発明1、甲1の技術事項1及び甲2の技術事項1に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4について(取消理由1-4について)
甲1には、上記1(1)ウ(ウ)で示した甲1の技術事項1が記載されている。
しかしながら、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(3)の検討を踏まえると、甲1発明1、甲1の技術事項1及び甲2の技術事項1に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について(取消理由1-5について)
甲1には、上記1(1)ウ(エ)で示した甲1の技術事項2が記載されている。
甲1発明1は、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bの推算において、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態や発熱量の分布状態を推算するところ、甲1の技術事項2によれば、甲1発明1においても、廃棄物の燃えやすさを示す指標を取得し得るものである。
しかしながら、本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(4)の検討を踏まえると、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2及び甲2の技術事項1に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について(取消理由1-6について)
甲2には、上記1(2)イ(エ)で示した甲2の技術事項2が記載されている。
また、上記(1)イ(イ)で示した周知技術1においても、状態データに対応した教師データを生成する教師データ生成部を備えることは明らかである。
しかしながら、本件発明6は、本件発明1ないし5のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(5)の検討を踏まえると、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲2の技術事項1及び甲2の技術事項2に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7について(取消理由1-7について)
上記1(2)イ(ウ)で示した甲2の技術事項1においても、廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aに対応した教師データDを用いた機械学習を実施して学習結果を得る機械学習部43(モデル構築部)を備えている。
また、上記(1)イ(イ)で示した周知技術1においても、教師データを用いた学習によって、モデルを構築するモデル構築部を備えることは明らかである。
しかしながら、本件発明7は、本件発明6の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(6)の検討を踏まえると、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲2の技術事項1及び甲2の技術事項2に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件発明8について(取消理由1-8について)
ア 対比
本件発明8と甲1発明1とを、上記(1)アの検討を踏まえて対比すると、後者の「燃焼対象物の処理システム」は、前者の「廃棄物処理プラントシステム」に相当し、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物処理プラントシステムであって、
ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像を複数のブロックに分割することによって得られた、ブロック毎の新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する機能を有する推定部を備えるシステム。」

[相違点8A-1]
本件発明8では、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像を複数のブロックに分割することによって得られた、ブロック毎の新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を、各前記ブロックに対応付けた推論マップを生成する推定部と、前記推論マップに基づいて、クレーンの制御を行うクレーン制御装置に対する指示、あるいは焼却炉の制御を行う燃焼制御装置に対する指示のうち少なくとも一方を生成する指示部とを備える」のに対して、甲1発明1では、「ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および質の分布状態Bを推算」する機能について、「投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報が入力され、特定時間におけるピット内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算する」機能を有する「演算処理部」を備えるものであり、「蓄積された燃焼対象物の量および発熱量等のごみ質の分布状態Bを推算」する機能以外の機能も含み、また、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」を用いるものではない点。

(イ)判断
上記相違点8A-1に係る本件発明8の構成は、上記相違点1A-1に係る本件発明1の構成の一部である「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」に、本件発明2及び3の構成を組み合わせたものと同様であるから、上記(1)ないし(3)の検討を踏まえると、甲1発明1において、甲1の技術事項1及び甲2の技術事項1を適用、又は甲1の技術事項1及び周知技術1を適用し、上記相違点8A-1に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明8は、上記相違点8A-1に係る構成を備えることで、本件発明の効果を奏するものである。
したがって、本件発明8は、甲1発明1、甲1の技術事項1及び甲2の技術事項1に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件発明9について(取消理由1-9について)
ア 対比
本件発明9と甲1発明2とを、上記(1)アの検討を踏まえて対比する。
後者の「燃焼炉に供給される燃焼対象物の処理方法」における「蓄積された燃焼対象物の量および発熱量等のごみ質の分布状態Bを推算」することは、「堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算するもの」であるから、前者の「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定する」ことに相当する。
そして、後者の「予めピットに貯留された後に燃焼炉に供給される燃焼対象物を処理する方法」は、前者の「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定する方法」に、「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定することを含む方法」という限りにおいて一致する。
そうすると、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定することを含む方法であって、
ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するステップ
を備える方法。」

[相違点9A-1]
本件発明9では、「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定する方法であって」、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するステップを備え、前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される」のに対して、甲1発明-2では、「予めピットに貯留された後に燃焼炉に供給される燃焼対象物を処理する方法であって」、「ピット内の特定時間における画像情報に対して、2値化処理、マスク処理、ノイズ除去処理およびラベリング処理を行い、蓄積された燃焼対象物の量および発熱量等のごみ質の分布状態Bを推算」する処理が、「投入された燃焼対象物であるごみの廃棄物が堆積されたピット内の画像情報が入力され、特定時間におけるピット内を平面上に一定間隔に区分された領域の個々の領域にあるごみ層表面の色やごみ層の粒度の分布を識別し、また、ごみ層の種類あるいは予め設定された袋体のごみ質から、堆積された廃棄物のごみ質の分布状態、さらにはごみの重量およびごみ発熱量データベースを基に発熱量の分布状態を推算するもの」であり、「蓄積された燃焼対象物の量および発熱量等のごみ質の分布状態Bを推算」する処理以外の処理も含み、また、「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」を用いるものではない点。

イ 判断
上記相違点9A-1は、上記(1)アで示した相違点1A-1と、カテゴリーの違いはあるものの、ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する手法に関し、実質的に同じ内容の相違点である。
したがって、上記(1)の検討を踏まえると、本件発明9は、甲1発明2及び甲2の技術事項1に基いて、又は、甲1発明2及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)本件発明10について(取消理由1-10について)
甲7(特に、段落0066)に記載されているように、所定のステップを含む方法をプログラム化し、プロセッサに実行させることは、本件特許の出願前に周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。
しかしながら、本件発明10は、本件発明9の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(9)の検討を踏まえると、甲1発明2、甲2の技術事項1及び周知技術2に基いて、又は、甲1発明2、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 甲2を主引用例とした取消理由(取消理由2-1?2-10)について
(1)本件発明1について(取消理由2-1について)
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
・後者の「廃棄物W」は、前者の「廃棄物」に相当し、同様に、「画像データ11A?14A」は「画像のデータ」に、「教師データD」は「教師データ」に、「機械学習部43による機械学習」は「学習」に、「学習結果」は、「構築されたモデル」に、「素材判定部」は「推定部」に、「作業者が指定した素材情報」は「作業者が廃棄物の質を分類したラベル」に、「廃棄物選別システム」は「装置」に、それぞれ相当する。

・後者の「コンベア20上の廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aと素材情報を紐付けした教師データDを用いた機械学習部43による機械学習を実施して学習結果が記憶部に記憶され、撮像された画像データと前記記憶部に格納された学習結果とを比較して、前記廃棄物の素材を判定する」ことは、前者の「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する」ことに、「廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する」という限りにおいて一致する。

・後者において、「所定の判別精度以上の場合」に、「選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14Aに素材情報を紐付け」るのは、廃棄物選別システムの運転により自動的に選別した際に行われることから、後者の「前記教師データDは、所定の判別精度以上の場合は、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14Aに素材情報を紐付けし、所定の判別精度以下の場合は、作業者が廃棄物の素材を指定すると、選別教師データ生成部によって撮像された画像データ11A?14A及び重量センサ15等で取得した計測データに対して作業者が指定した素材情報を紐付けされるようにした」ことは、前者の「前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される、こと」に、「前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される、こと」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する推定部を備え、
前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される装置。」

[相違点1B-1]
「廃棄物」に関し、本件発明1では、「ごみピット内に貯留される廃棄物」であるのに対して、甲2発明1では、「コンベア20上の廃棄物W」であり、ごみピット内に貯留されるものではない点。

イ 判断
甲2発明1は、コンベア20上の個別の廃棄物Wを撮像して、画像データに基づいて廃棄物の素材を判定するものである。
一方、甲1には、上記1(1)ウ(オ)で示した甲1の技術事項3が記載されている。
甲1の技術事項3における撮像するピット内の廃棄物は、個々の廃棄物ではなく、廃棄物同士が重なり合うものであるから、甲2発明1に適用した場合には、重なって撮像できない廃棄物については、素材を判定することができない。
さらに、甲1の技術事項3は、ピット内の廃棄物は燃焼させるものであるから、素材を判定する必要もない。
そうすると、甲2発明1に、甲1の技術事項3を適用することはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点1B-1に係る構成を備えることで、本件発明の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲2発明1及び甲1の技術事項3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について(取消理由2-2について)
甲1には、上記1(1)ウ(カ)で示した甲1の技術事項4が記載されている。
しかしながら、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)の検討を踏まえると、甲2発明1、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について(取消理由2-3について)
甲1には、上記1(1)ウ(ウ)で示した甲1の技術事項1が記載されている。
しかしながら、本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)及び(2)の検討を踏まえると、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4について(取消理由2-4について)
甲1には、上記1(1)ウ(ウ)で示した甲1の技術事項1が記載されている。
しかしながら、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(3)の検討を踏まえると、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について(取消理由2-5について)
甲1には、上記1(1)ウ(エ)で示した甲1の技術事項2が記載されている。
しかしながら、本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(4)の検討を踏まえると、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について(取消理由2-6について)
甲2発明1においても、廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aに対応した教師データDを生成する選別教師データ生成部を備えているといえる。
しかしながら、本件発明6は、本件発明1ないし5のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(5)の検討を踏まえると、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7について(取消理由2-7について)
甲2発明1においても、廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aに対応した教師データDを用いた機械学習を実施して素材毎の選別データを得る機械学習部43(モデル構築部)を備えているといえる。
しかしながら、本件発明7は、本件発明6の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(6)の検討を踏まえると、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件発明8について(取消理由1-8について)
ア 対比
本件発明8と甲2発明1とを、上記(1)アの検討を踏まえて対比すると、後者の「廃棄物選別システム」は、前者の「廃棄物処理プラントシステム」に相当し、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物処理プラントシステムであって、
廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する推定部を備えるシステム。」

[相違点8B-1]
「廃棄物」に関し、本件発明8では「ごみピット内に貯留される廃棄物」であるのに対して、甲2発明1では、「コンベア20上の廃棄物W」であり、ごみピット内に貯留されるものではない点。

[相違点8B-2]
本件発明8では、「廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」に、「廃棄物を撮像した新たな画像を複数のブロックに分割することによって得られた、ブロック毎の新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を、各前記ブロックに対応付けた推論マップを生成する推定部と、前記推論マップに基づいて、クレーンの制御を行うクレーン制御装置に対する指示、あるいは焼却炉の制御を行う燃焼制御装置に対する指示のうち少なくとも一方を生成する指示部とを備える」のに対して、甲2発明1では、「廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aと素材情報を紐付けした教師データDを用いた機械学習部43による機械学習を実施して学習結果が記憶部に記憶され、撮像された画像データと前記記憶部に格納された学習結果とを比較して、前記廃棄物の素材を判定する素材判定部を備え」るものであって、廃棄物を撮像した新たな画像を複数のブロックに分割することによって得られた、ブロック毎の新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を、各前記ブロックに対応付けた推論マップを生成する推定部と、前記推論マップに基づいて、クレーンの制御を行うクレーン制御装置に対する指示、あるいは焼却炉の制御を行う燃焼制御装置に対する指示のうち少なくとも一方を生成する指示部を備えるものではない点。

イ 判断
[相違点8B-1について]
上記(1)イの検討を踏まえると、甲2発明1において、甲1の技術事項3を適用し、上記相違点8B-1に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
[相違点8B-2について]
上記相違点8B-2に係る本件発明8の構成は、本件発明2及び3の構成を組み合わせたものと同様であるから、上記(2)及び(3)の検討を踏まえると、甲2発明1に甲1の技術事項1、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4を適用し、上記相違点8B-2に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
そして、本件発明8は、上記相違点8B-1及び8B-2に係る構成を備えることで、本件発明の効果を奏するものである。
したがって、本件発明8は、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項3及び甲1の技術事項4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明9について(取消理由2-9について)
ア 対比
本件発明9と甲1発明2とを、上記(1)アの検討を踏まえて対比すると、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物処理プラントの廃棄物の質を推定する方法であって、
廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するステップ
を備え、
前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される方法。」

[相違点9B-1]
「廃棄物」に関し、本件発明9では、「ごみピット内に貯留される廃棄物」であるのに対して、甲2発明2では、「コンベア20上の廃棄物W」であり、ごみピット内に貯留されるものではない点。

イ 判断
上記相違点9B-1は、上記(1)アで示した相違点1B-1と、カテゴリーの違いはあるものの、実質的に同じ内容の相違点である。
したがって、上記(1)イの検討を踏まえると、本件発明9は、甲2発明2及び甲1の技術事項3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)本件発明10について(取消理由2-10について)
上記2(10)の検討で周知技術2として示したように、所定のステップを含む方法をプログラム化し、プロセッサに実行させることは、本願の出願前に周知の技術である。
しかしながら、本件発明10は、本件発明9の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(9)の検討を踏まえると、甲2発明2、甲1の技術事項3及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 甲11を主引用例とした取消理由(取消理由3-1?3-10)について
(1)本件発明1について(取消理由3-1について)
ア 周知発明1
甲11には、上記1(5)イ(ア)で示した甲11発明1が記載されているところ、甲1の段落0002及び0003に記載されているように従来技術であるから、甲11発明1は、本件特許の出願前において、周知の発明(以下、「周知発明1」という。)と認める。

イ 対比
本件発明1と周知発明1とを対比する。
・後者の「ごみピット」は、前者の「ごみピット」に相当し、同様に、「廃棄物」は「廃棄物」に、「ごみ処理工場用クレーンの制御装置」は「装置」に、それぞれ相当する。

・後者の「ごみピット内に貯留される廃棄物をクレーンの操作者の目視により一般ごみの堆積部分と異質ごみの堆積部分とを予め識別して、クレーンのバケットの掴み動作と移動操作によりピット内にてごみの積み上げ、溝堀り、所謂積み替えを行うことでごみの攪拌を行うようにした」ことは、前者の「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する推定部を備え、前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される、こと」に、「ごみピット内に貯留される廃棄物の画像から廃棄物の質を識別可能にされた」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「ごみピット内に貯留される廃棄物の画像から廃棄物の質を識別可能にされた装置。」

[相違点1C-1]
廃棄物の質を識別する手段について、本件発明1では、「撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」に、「撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する推定部を備え」、「前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値」と、「廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される」のに対して、周知発明1では、「クレーンの操作者の目視により」識別するものであって、推定部は備えていない点。

ウ 判断
甲2には、上記1(2)イ(ウ)で示した甲2の技術事項1が記載されている。
しかしながら、甲2の技術事項1は、廃棄物の選別のためにコンベア1上で搬送される個別の廃棄物Wを対象としたものであり、周知発明1のようにごみピット内に貯留されるごみ全体を対象とし、個別のごみを対象とするものではないから、周知発明1に甲2の技術事項1を適用することはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点1C-1に係る構成を備えることで、本件発明の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、周知発明1及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について(取消理由3-2について)
甲1には、上記1(1)ウ(カ)で示した甲1の技術事項4が記載されている。
しかしながら、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)の検討を踏まえると、周知発明1、甲1の技術事項4及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について(取消理由3-3について)
甲1には、上記1(1)ウ(ウ)で示した甲1の技術事項1が記載されている。
しかしながら、本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)及び(2)の検討を踏まえると、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項4及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4について(取消理由3-4について)
甲1には、上記1(1)ウ(ウ)で示した甲1の技術事項1が記載されている。
しかしながら、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(3)の検討を踏まえると、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項4及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5について(取消理由3-5について)
甲1には、上記1(1)ウ(エ)で示した甲1の技術事項2が記載されている。
しかしながら、本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(4)の検討を踏まえると、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項4及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6について(取消理由3-6について)
甲2には、上記1(2)イ(エ)で示した甲2の技術事項2が記載されている。
しかしながら、本件発明6は、本件発明1ないし5のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ないし(5)の検討を踏まえると、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項4、甲2の技術事項1及び甲2の技術事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明7について(取消理由3-7について)
上記1(2)イ(ウ)で示した甲2の技術事項1においても、廃棄物Wを撮像した画像データ11A?14Aと素材情報を紐付けした教師データDを用いた機械学習を実施して学習結果を得る機械学習部43(モデル構築部)を備えている。
しかしながら、本件発明7は、本件発明6の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(6)の検討を踏まえると、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項4、甲2の技術事項1及び甲2の技術事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件発明8について(取消理由3-8について)
ア 対比
本件発明8と周知発明1とを、上記ア(イ)の検討を踏まえて対比すると、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物処理プラントシステムであって、
ごみピット内に貯留される廃棄物の画像から廃棄物の質を識別可能にされたシステム。」

[相違点8C-1]
廃棄物の質を識別する手段について、本件発明8では、「撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」に、「撮像した新たな画像を複数のブロックに分割することによって得られた、ブロック毎の新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を、各前記ブロックに対応付けた推論マップを生成する推定部」を備えているのに対して、周知発明1では、「クレーンの操作者の目視により」識別するものであって、推論マップを生成する推定部を備えておらず、さらに、本件発明8では、「前記推論マップに基づいて、クレーンの制御を行うクレーン制御装置に対する指示、あるいは焼却炉の制御を行う燃焼制御装置に対する指示のうち少なくとも一方を生成する指示部」を備えるのに対して、周知発明1では、推論マップに基づいて指示を生成する指示部は備えていない点。

(イ)判断
上記相違点8C-1に係る本件発明8の構成は、上記相違点1C-1に係る本件発明1の構成の一部である「撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」に、本件特許の請求項2及び3に記載された事項を合わせたものと同様であるから、上記(1)ないし(3)の検討を踏まえると、周知発明1において、甲1の技術事項1、甲1の技術事項4及び甲2の技術事項1を適用し、上記相違点8C-1に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明8は、上記相違点8C-1に係る構成を備えることで、本件発明の効果を奏するものである。
したがって、本件発明8は、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項4及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)本件発明9について(取消理由3-9について)
ア 周知発明2
甲11には、上記1(5)イ(イ)で示した甲11発明2が記載されているところ、甲1の段落0002及び0003に記載されているように従来技術であるから、甲11発明2は、本件特許の出願前において、周知の発明(以下、「周知発明2」という。)と認める。

イ 対比
本件発明9と周知発明2とを対比する。
・後者の「ごみピット」は、前者の「ごみピット」に相当し、同様に、「廃棄物」は「廃棄物」に相当する。

・後者の「ごみピット内に貯留される廃棄物をクレーンの操作者の目視により一般ごみの堆積部分と異質ごみの体勢部分とを予め識別するステップと、クレーンのバケットの掴み動作と移動操作によりピット内にてごみの積み上げ、溝堀り、所謂積み替えを行うことでごみの攪拌を行うステップを備える」ことは、前者の「ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデルに、前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するステップを備え、前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される、こと」に、「ごみピット内に貯留される廃棄物の画像から廃棄物の質を識別するステップを備える」という限りにおいて一致する。

・後者の「ごみ処理工場用クレーンの制御方法」は、「ごみピット内に貯留される廃棄物をクレーンの操作者の目視により一般ごみの堆積部分と異質ごみの体勢部分とを予め識別するステップ」を備えることによって、廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定しているから、前者の「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定する方法」に相当する。

したがって、両者の間で以下の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「廃棄物処理プラントのごみピット内に貯留される廃棄物の質を推定する方法であって、
ごみピット内に貯留される廃棄物の画像から廃棄物の質を識別するステップを備える方法。」

[相違点9C-1]
廃棄物の質を識別する手段について、本件発明9では「撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル」に、「撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得するステップを備え」、「前記教師データは、廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値」と、「廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される」のに対して、周知発明2では、「クレーンの操作者の目視により」識別するものである点。

ウ 判断
上記相違点9C-1は、上記(1)イで示した相違点1C-1と、カテゴリーの違いはあるものの、実質的に同じ内容の相違点である。
したがって、上記(1)ウの検討を踏まえると、本件発明9は、周知発明2及び甲2の技術事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(10)本件発明10について(取消理由3-10について)
上記2(10)の検討で周知技術2として示したように、所定のステップを含む方法をプログラム化し、プロセッサに実行させることは、本願の出願前に周知の技術である。
しかしながら、本件発明10は、本件発明9の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(9)の検討を踏まえると、周知発明2、甲2の技術事項1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1(特許法第29条第2項)について
申立理由1の請求項1ないし4及び6ないし10に係る特許についての理由は、取消理由1-1ないし1-4、1-6ないし1-10、2-1ないし2-4、2-6ないし2-10、3-1ないし3-4及び3-6ないし3-10において採用されたものである。
そこで、申立理由1の請求項5に係る特許についての理由を検討する。
甲12には、上記1(6)の記載によれば、次の事項(以下、「甲12の技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「投入される廃棄物の質(廃棄物の種類、水分率、発熱量)が変動した場合には、この変動により焼却状況の変化が現れ、その結果炉内温度、排ガス酸素濃度が変化すること。」(以下、「甲12の技術事項」という。)が認められる。
しかしながら、上記2(5)の検討を踏まえると、本件発明5は、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲2の技術事項1及び甲12の技術事項に基いて、又は、甲1発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、周知技術1及び甲12の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、上記3(5)の検討を踏まえると、本件発明5は、甲2発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項3、甲1の技術事項4及び甲12の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、上記4(5)の検討を踏まえると、本件発明5は、周知発明1、甲1の技術事項1、甲1の技術事項2、甲1の技術事項4、甲2の技術事項1及び「甲12の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、申立理由1の請求項5に係る特許についての理由によっては、本件発明5が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることができない。

なお、甲3?甲6の2及び甲9?甲10の2の記載を検討したが、上述した取消理由1-1ないし1-10、2-1ないし2-10及び3-1ないし3-10の検討並びにこれら取消理由に採用されなかった申立理由1の検討に変わりはない。

(2)申立理由2(特許法第36条第6項第2号)について
ア 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書62頁5ないし23行において、次の主張をする。
「構成要件1Aには『ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した画像に対応付けられた教師データを用いた学習によって構築されたモデル』と記載されている。一方、構成要件1Bには『前記ごみピット内に貯留される廃棄物を撮像した新たな画像のデータを入力して、前記新たな画像に対応する廃棄物の質を表す値を取得する』と記載されている。
しかしながら、機械学習における教師データとは、モデルに入力するデータに対して、モデルが出力すべき正解データを対応付けたものである。構成要件1Aの『画像に対応付けられた教師データ』との記載では、画像とは別に教師データが存在することになり、意味不明である。
同様の理由により、構成要件1Cおよび1Dにおける『前記教師データは、…収集される』も意味不明である。
したがって、本件発明1は不明確であり、同様の記載を含む本件発明8、9、ならびに本件発明1の構成要素を全て含む本件発明2-7、10も不明確である。
したがって、本件発明1-10は、同法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものであり、その特許は同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。」

イ 当審の判断
「教師データ」とは、本件特許の請求項1に記載されているように、「廃棄物処理プラントの運転履歴に基づいて特定された廃棄物の特性を示す値と、前記ごみピット内の廃棄物の画像データを元に作業者が廃棄物の質を分類したラベルとのうち少なくとも一方から収集される」ものであって、画像データとは別のものであることが明らかであるので、前記申立人の主張は、採用することができない。
したがって、本件特許の請求項1ないし10の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。

6 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、取消理由1-1ないし1-10、2-1ないし2-10及び3-1ないし3-10並びに申立理由1を検討しても、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、取り消すことができない。
また、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、申立理由2を検討しても、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、その特許は同法第113条第4号に該当しないから、取り消すことができない。

第6 むすび
したがって、請求項1ないし10に係る特許は、取り消し理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-09-04 
出願番号 特願2017-148374(P2017-148374)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F23G)
P 1 651・ 537- Y (F23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩▲崎▼ 則昌  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
登録日 2019-07-12 
登録番号 特許第6554148号(P6554148)
権利者 荏原環境プラント株式会社
発明の名称 廃棄物の質を推定する装置、システム、プログラム、方法、及びデータ構造  
代理人 大野 聖二  
代理人 野本 裕史  
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