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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1366358
審判番号 不服2018-13986  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-22 
確定日 2020-09-17 
事件の表示 特願2016-534262「移動通信のためのシステム、ノード、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 4日国際公開、WO2015/079606、平成29年 2月 2日国内公表、特表2017-504236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月4日(優先権主張 平成25年11月29日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 5月31日 手続補正書の提出
平成29年 7月24日 手続補正書、上申書の提出
平成30年 4月20日付け 拒絶理由通知書
平成30年 6月28日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 7月13日付け 拒絶査定
平成30年10月22日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出
令和 元年10月 4日付け 拒絶理由通知書
令和 元年12月 3日 意見書、手続補正書の提出
令和 2年 1月27日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 2年 3月23日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1?8に係る発明は、令和2年3月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 移動通信のためのシステムであって、
UE(User Equipment)と、
MME(Mobility Management Entity)又はSGSN(Serving GPRS Support Node)と、
1以上のMTC(Machine-Type-Communication)アプリケーションをホストする複数のSCS(Service Capability server)と、
前記複数のSCSに接続するノードとを備え、
前記複数のSCSは、前記UEのID、及びデータを含む複数のデータトランスミッションメッセージを前記ノードに送信し、
前記ノードは、前記MME又は前記SGSNを介して前記データを前記UEにそれぞれ送信し、
前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれた前記データの送信をどれだけ遅延できるかを示す許容時間を判断し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示す場合、前記データの送信を即時に実行し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示さない場合、前記許容時間に従って前記UEへの前記データの送信をそれぞれ待機する、
システム。」

第3 拒絶の理由
令和2年1月27日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して引用例1、周知例4が引用されている。

引用例1:3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects;Architecture enhancements to facilitate communications with packet data networks and applications (Release 11),3GPP TS 23.682 V11.5.0 (2013-09),2013年 9月12日アップロード,URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/23_series/23.682/23682-b50.zip
周知例4:特開2005-142965号公報

第4 引用発明及び周知事項について
1.引用例1
当審拒絶理由で引用された3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Architecture enhancements to facilitate communications with packet data networks and applications (Release 11),3GPP TS 23.682 V11.5.0 (2013-09),2013年 9月12日アップロード,URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/23_series/23.682/23682-b50.zip
(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「4 Architecture Model and Concepts
4.1 General Concept
The end-to-end communications, between the MTC Application in the UE and the MTC Application in the external network, uses services provided by the 3GPP system, and optionally services provided by a Services Capability Server (SCS).
The MTC Application in the external network is typically hosted by an Application Server (AS) and may make use of an SCS for additional value added services.」(7ページ)
(当審訳:
4 アーキテクチャモデルと概念
4.1 一般的コンセプト
UEのMTCアプリケーションと外部ネットワークのMTCアプリケーション間のエンドツーエンド通信は、3GPPシステムが提供するサービス、及びオプションでサービスケーパビリティサーバ(SCS)が提供するサービスを使用する。
外部ネットワークのMTCアプリケーションは、通常、アプリケーションサーバ(AS)によってホストされ、付加価値サービスのためにSCSを利用する場合がある。)

(2)「4.2 Architectural Reference Model
Figure 4.2-1 shows the architecture for a UE used for MTC connecting to the 3GPP network (UTRAN, E-UTRAN, GERAN, etc.)via the Um/Uu/LTE-Uu interfaces.The architecture covers the various architectural models described in clause 4.1.



」(8?9ページ)
(当審訳:
4.2 アーキテクチャ参照モデル
図4.2-1は、Um/Uu/LTE-Uuインターフェイスを介して3GPPネットワーク(UTRAN、E-UTRAN、GERANなど)に接続するMTCに使用されるUEのためのアーキテクチャを示している。アーキテクチャは、4.1節で説明されているさまざまなアーキテクチャモデルをカバーしている。
(図の訳は省略)
図4.2-1 マシン?タイプコミュニケーションのための3GPPアーキテクチャ)

(3)「4.3.3 Reference Point Requirements
4.3.3.1 Tsp Reference Point Requirements
The Tsp reference point shall fulfil the following requirements:
- connects a MTC-IWF to one or more SCSs;
」(10ページ)
(当審訳:
4.3.3 基準点の要件
4.3.3.1 Tsp基準点の要件
Tsp基準点は、次の要件を満たす必要がある。
- MTC-IWFを1つ以上のSCSに接続する。)

(4)「5.2 Device triggering procedures
5.2.1 Device triggering procedure over Tsp

(中略)
2.The SCS sends the Device Trigger Request (External Identifier or MSISDN, SCS Identifier, trigger reference number, validity period, priority, Application Port ID and trigger payload) message to the MTC-IWF. The SCS includes a trigger payload that contains the information destined for the MTC application, along with the information to route it to the MTC application. The Application Port ID is set to address a triggering function within the UE.
(中略)
5.The HSS/HLR sends the Subscriber Information Response (IMSI and/or MSISDN and related "Routing information" including the serving node(s) identities, cause) message.HSS/HLR policy (possibly dependent on the VPLMN ID) may influence which serving node identities are returned. If the cause value indicates the SCS is not allowed to send a trigger message to this UE, or there is no valid subscription information, or "Absent subscriber" is received from HSS and the validity period of this trigger message is set to zero, the MTC-IWF sends a Device Trigger Confirm message with a cause value indicating the reason for the failure condition and the flow stops at this step. Otherwise this flow continues with step 6a.
6a. The MTC-IWF selects trigger delivery procedure based on the information received from HSS/HLR and local policy. If T5 delivery procedure is selected, MTC-IWF attempts T5 trigger delivery procedure.
(中略)
8.In response to the received device trigger, the UE takes specific actions that take into consideration the content of the trigger payload. This response typically involves initiation of immediate or later communication with the SCS or an AS.」(18?19ページ)
(当審訳:
5.2 デバイストリガ手順
5.2.1 Tspを介したデバイストリガ手順
図5.2.1-1 略
(中略)
2.SCSは、デバイストリガリクエスト(外部識別子又はMSISDN、SCS識別子、トリガ参照番号、有効期間、優先度、アプリケーションポートID、トリガペイロード)メッセージをMTC-IWFに送信する。SCSは、MTCアプリケーションをルーティングするための情報とともに、MTCアプリケーション宛ての情報を含むトリガペイロードが含める。アプリケーションポートIDは、UE内のトリガ機能に対応するように設定される。
(中略)
5.HSS/HLRは、加入者情報応答(IMSI及び/又はMSISDN、及びサービングノードのアイデンティティ、原因を含む関連する「ルーティング情報」)メッセージを送信する。HSS/HLRポリシー(VPLMN IDに依存する可能性がある)が、どのサービングノードIDが返されるかに影響する場合がある。原因値が、SCSがこのUEにトリガーメッセージを送信することを許可されていないか、有効なサブスクリプション情報がないか、HSSから「加入者不在」を受信し、このトリガメッセージの有効期間がゼロに設定されていることを示す場合、MTC-IWFは、失敗条件の理由を示す原因値を含むデバイストリガ確認メッセージを送信し、フローはこのステップで停止する。それ以外の場合、このフローはステップ6aから続行する。
6a.MTC-IWFは、HSS/HLR及びローカルポリシーから受信した情報に基づいてトリガ配信手順を選択する。T5配信手順が選択されている場合、MTC-IWFはT5トリガ配信手順を試行する。

8.受信したデバイストリガに応答して、UEはトリガペイロードの内容を考慮した特定のアクションを実行する。通常、この応答には、SCS又はASとの即時又は後の通信の開始が含まれる。)

(5)「5.3 Information Storage
This clause describes the context information that is stored in the different nodes for MTC device trigger procedure.
5.3.1 Trigger Information in SMS-SC(Triggering with T4)
This table includes information that needs to be stored in SMS-SC for triggering with T4.



」(21ページ)
(当審訳:
5.3 情報ストレージ
この節では、MTCデバイストリガ手順のさまざまなノードに格納されているコンテキスト情報について説明する。
5.3.1 SMS-SCでのトリガ情報(T4によるトリガ)
このテーブルには、T4でトリガするためにSMS-SCに保存する必要がある情報が含まれる。
表5.2.1-1:SMS-SCトリガ情報




)

(6)「Annex B (Informative):
Trigger Delivery using T5
NOTE: T5 triggering is work in progress and not part of this Release.




1.The MTC-IWF uses the UE capabilities,serving CN node(s) capabilities retrieved from the HSS to select a suitable serving CN node capable of T5 triggering. The MTC-IWF sends a Submit Request(IMSI, message priority, MTC-IWF ID, reference number, single delivery attempt flag (optional), validity time (optional), Request type (trigger application),application PDU) to the serving CN node. If there is more than one serving CN node, the MTC-IWF should send the message to the serving CN node where the UE is currently camping with highest probability e.g. based on information received from HSS or cached information from earlier trigger attempts.
2.The serving CN node indicates the Request type (trigger application), application PDU, MTC-IWF ID, Reference number within the NAS message and delivers it to the UE. Serving CN node generates the necessary CDR information for charging. UE provides the trigger content and trigger type to the corresponding application.」(25ページ)
(当審訳:
付録B(参考):
T5を使用したトリガ配信
注:T5トリガは進行中の作業であり、このリリースの一部ではありません。
図B-1 略
1.MTC-IWFは、T5トリガが可能な適切なサービングCNノードを選択するためにHSSから取得したCNノード機能を提供し、UE機能を使用する。MTC-IWFは、参加要求(IMSI、メッセージ優先度、MTC-IWF ID、参照番号、単一配信試行フラグ(オプション)、有効期間(オプション)、要求タイプ(トリガアプリケーション)、アプリケーションPDU)をサービングCNノードに送信する。複数のサービングCNノードがある場合、MTC-IWFは、HSSから受信した情報又は以前のトリガ試行からのキャッシュ情報に基づいて、UEが現在最も高い確率でキャンプしているサービングCNノードにメッセージを送信する必要がある。
2.サービングCNノードは、NASメッセージ内の要求タイプ(トリガアプリケーション)、アプリケーションPDU、MTC-IWF ID、参照番号を示し、それをUEに配信する。サービングCNノードは課金に必要なCDR情報が生成される。UEは、トリガコンテンツとトリガタイプを対応するアプリケーションに提供する。)

上記記載及び当業者における技術常識からみて、
a.上記(2)の図4.2-1は、「マシン?タイプコミュニケーションのための3GPPアーキテクチャ」を示すものであるから、「移動通信のためのシステム」であるといえる。
b.上記(2)の図4.2-1によれば、移動通信のためのシステムは、UEと、MME又はSGSNと、SCSと、アプリケーションサーバと、SCSに接続するMTC-IWFとを備えていることが読み取れる。
また、上記(3)に「MTC-IWFを1つ以上のSCSに接続する」と記載されていることから、移動通信のためのシステムは、複数のSCSと複数のSCSに接続するMTC-IWFを備えているといえる。
そして、上記(1)に「外部ネットワークのMTCアプリケーションは、通常、アプリケーションサーバ(AS)によってホストされ、」と記載されていることから、MTCアプリケーションを通常ホストするアプリケーションサーバといえる。
よって、移動通信のためのシステムは、「UEと、MME又はSGSNと、複数のSCSと、MTCアプリケーションを通常ホストするアプリケーションサーバと、複数のSCSに接続するMTC-IWFとを備えている」といえる。

c.上記(4)の「2」に「SCSは、デバイストリガリクエスト(外部識別子又はMSISDN、・・・有効期間、・・・トリガペイロード)メッセージをMTC-IWFに送信する。」と記載され、複数のSCSはそれぞれデバイストリガリクエストメッセージを送信していることは明らかである。そしてMSISDNがUEの識別子であることは明らかであるから、「複数のSCSは、UEの識別子であるMSISDN、及びトリガペイロードを含む複数のメッセージをMTC-IWFに送信している」といえる。

d.上記(4)の「6a」に「MTC-IWFはT5トリガ配信手順を試行する。」と記載され、上記(6)に「MTC-IWFは、」「要求を」「サービングCNノードに送信」し、「サービングCNノードは、」「UEに配信する。」と記載され、上記(6)の図B-1によれば、CNノードとはMME又はSGSNであることは明らかである。よって、上記(4)の「6a」では、MTC-IWFは、MME又はSGSNを介してトリガをUEにそれぞれ送信しているといえる。
また、上記(4)の「8」に「受信したデバイストリガに応答して、UEはトリガペイロードの内容を考慮した特定のアクションを実行する。」と記載されていることから、UEにトリガペイロードがMTC-IWFから送信されていることは明らかである。
以上のことから、「MTC-IWFは、MME又はSGSNを介してトリガペイロードをUEにそれぞれ送信している」といえる。

e.上記(4)の「2」に「SCSは、デバイストリガリクエスト(外部識別子又はMSISDN、・・・有効期間、・・・トリガペイロード)メッセージをMTC-IWFに送信する。」と記載されていることから、メッセージに有効期間が含まれている。また、上記(5)に有効期間がトリガ要求が有効な期間を示すことが記載されている。よって、「メッセージにトリガ要求が有効な期間を示す有効期間が含まれている」。
また、上記(4)の「5」に「トリガメッセージの有効期間がゼロに設定されていることを示す場合、MTC-IWFは、・・・フローはこのステップで停止する。」と記載されていることから、「MTC-IWFは有効期間を判断し」しているといえる。そして、上記(6)に「MTC-IWFは、」「要求を」「サービングCNノードに送信」し、「サービングCNノードは、」「UEに配信する。」と記載されていることから、「MTC-IWFは有効期間を判断しUEへトリガペイロードをそれぞれ送信する」といえる。

以上を総合すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 移動通信のためのシステムであって、
UEと、
MME又はSGSNと、
複数のSCSと、
MTCアプリケーションを通常ホストするアプリケーションサーバと、
前記複数のSCSに接続するMTC-IWFとを備え、
前記複数のSCSは、前記UEの識別子であるMSISDN、及びトリガペイロードを含む複数のメッセージを前記MTC-IWFに送信し、
前記MTC-IWFは、前記MME又は前記SGSNを介して前記トリガペイロードを前記UEにそれぞれ送信し、
前記メッセージにトリガ要求が有効な期間を示す有効期間が含まれ、前記MTC-IWFは前記有効期間を判断し前記UEへ前記トリガペイロードをそれぞれ送信する、
システム。」

2.周知事項
(1)当審拒絶理由で周知技術を示す文献として引用された特開2005-142965号公報(以下、「周知例4」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

a.「【請求項7】
複数のパケットを送信する通信装置であって、
送信すべきパケットの送信順番を設定するスケジューリング手段を備え、
上記スケジューリング手段が、送信すべき複数のパケットを、各パケットに設定されている残り有効期限の長さに応じて複数のグループに分けるとともに、
残り有効期限がより短いグループに含まれるパケットを優先して送信するように送信順番を設定することを特徴とする通信装置。
【請求項8】
上記スケジューリング手段が、残り有効期限がより短いグループに含まれるパケットをより先に送信するように送信順番を設定することを特徴とする請求項7記載の通信装置。」

(2)特開2004-320084号公報(以下、「周知例」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「【0165 】
また、上記した第1 の実施の形態では、ストリームデータの優先度は予め固定されている。しかし、優先度についてはこれ以外の設定の方法もある。例えば、寿命が短い方のストリームデータの優先度を高く設定する方法がある。寿命が尽きる時刻に近づいているデータパケットほど、早く送信しないと送信機にて破棄される可能性が高くなるからである。」

(1)によれば、パケットに設定されている残り有効期限の長さに応じて複数のグループに分け、残り有効期限がより短いグループに含まれるパケットを優先して先に送信することが記載されていることから、残り有効期限に従って、送信の優先度を決定して、残り有効期限がより短いデータを先に送信することが記載されている。
また、(2)によれば、寿命に従って、寿命が短いデータの優先度を高くして、寿命が短いデータを早く送信することが記載されているといえる。
そして、有効期限と寿命はどちらも送信する際にデータの送信をどれだけ遅延できるかを示す時間であるといえることから、周知例4及び周知例によれば、「データの送信について、データの送信をどれだけ遅延できるかを示す時間に従って、送信の優先度を決定して、短い遅延しか許されないデータを先に送信する。」ことは優先制御による通信として周知事項である。

第5 対比及び判断
本願発明と引用発明とを対比する。
1.引用発明の「UE」、「MME又はSGSN」、「SCS」はそれぞれ、本願発明の「UE(User Equipment)」、「MME(Mobility Management Entity)又はSGSN(Serving GPRS Support Node)、「SCS(Service Capability server)」に相当する。
また、引用発明の「MTC-IWF」は本願発明の「ノード」に含まれる。

2.引用発明の「MSISDN」は、UEの識別子であるから、本願発明の「UEのID」に含まれる。
また、引用発明の「トリガペイロード」は、データといえるので、本願発明の「データ」に含まれる。
そして、引用発明の「メッセージ」を本願発明と同様に「データトランスミッションメッセージ」と称することは任意である。
よって、引用発明の「前記複数のSCSは、前記UEの識別子であるMSISDN、及びトリガペイロードを含む複数のメッセージを前記MTC-IWFに送信し」は本願発明の「前記複数のSCSは、前記UEのID、及びデータを含む複数のデータトランスミッションメッセージを前記ノードに送信し」に含まれる。

3.引用発明の「前記MTC-IWFは、前記MME又は前記SGSNを介して前記トリガペイロードを前記UEにそれぞれ送信し」は本願発明の「前記ノードは、前記MME又は前記SGSNを介して前記データを前記UEにそれぞれ送信し」に含まれる。

4.引用発明のトリガ要求が有効な期間とは、トリガ要求に含まれるトリガペイロードの有効な期間でもあることは明らかである。よって、本願発明の「データの送信をどれだけ遅延できるかを示す許容時間」と引用発明の「トリガ要求が有効な期間を示す有効期間」は、データの時間的有効性に関する時間情報である点で共通する。
また、引用発明では「前記メッセージにトリガ要求が有効な期間を示す有効期間が含まれ」ていることから、メッセージに含まれたトリガ要求が有効な期間を示す有効期間といえることから、本願発明の「前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれた前記データの送信をどれだけ遅延できるかを示す許容時間を判断し、」と引用発明の「前記メッセージにトリガ要求が有効な期間を示す有効期間が含まれ、MTC-IWFは前記有効期間を判断し」は、「前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれたデータの時間的有効性に関する時間情報を判断し、」の点で共通する。
また、本願発明の「データの送信をそれぞれ待機する」とは待機後にデータを送信することを意図していることは明らかであるから、本願発明の「前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示す場合、前記データの送信を即時に実行し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示さない場合、前記許容時間に従って前記UEへの前記データの送信をそれぞれ待機する」ことと、引用発明の「前記有効期間を判断し前記UEへ前記トリガペイロードをそれぞれ送信する」こととは、データの時間的有効性に関する時間情報を判断し、UEへのデータをそれぞれ送信する点で共通する。
よって、本願発明の「前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれた前記データの送信をどれだけ遅延できるかを示す許容時間を判断し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示す場合、前記データの送信を即時に実行し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示さない場合、前記許容時間に従って前記UEへの前記データの送信をそれぞれ待機する」と引用発明の「前記メッセージにトリガ要求が有効な期間を示す有効期間が含まれ、MTC-IWFは前記有効期間を判断し前記UEへトリガペイロードをそれぞれ送信する」とは、「前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれたデータの時間的有効性に関する時間情報を判断し、前記UEへの前記データをそれぞれ送信する」の点で共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 移動通信のためのシステムであって、
UE(User Equipment)と、
MME(Mobility Management Entity)又はSGSN(Serving GPRS Support Node)と、
1以上のMTC(Machine-Type-Communication)アプリケーションをホストする複数のSCS(Service Capability server)と、
前記複数のSCSに接続するノードとを備え、
前記複数のSCSは、前記UEのID、及びデータを含む複数のデータトランスミッションメッセージを前記ノードに送信し、
前記ノードは、前記MME又は前記SGSNを介して前記データを前記UEにそれぞれ送信し、
前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれたデータの時間的有効性に関する時間情報を判断し、前記UEへの前記データをそれぞれ送信する、
システム。」

(相違点)
1.本願発明では1以上のMTCアプリケーションをホストする装置がSCSであるのに対し、引用発明ではMTCアプリケーションを通常ホストするのはアプリケーションサーバである点。
2.「前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれたデータの時間的有効性に関する時間情報を判断し、前記UEへの前記データをそれぞれ送信する」ことに関し、本願発明では、「前記ノードは、前記データトランスミッションメッセージに含まれた前記データの送信をどれだけ遅延できるかを示す許容時間を判断し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示す場合、前記データの送信を即時に実行し、前記許容時間が、即時に前記データが送信されることを示さない場合、前記許容時間に従って前記UEへの前記データの送信をそれぞれ待機する」のに対し、引用発明ではMTC-IWFはトリガ要求が有効な期間を示す有効期間を判断し、UEへトリガペイロードをそれぞれ送信するが、本願発明の上記特定事項に対応する事項は特定されていない点。

以下、各相違点について検討する。

(相違点1について)
引用例1の(1)の「外部ネットワークのMTCアプリケーションは、通常、アプリケーションサーバ(AS)によってホストされ」に「通常」とあることから、アプリケーションサーバ以外でホストすることが阻害されておらず、また、MTCアプリケーションをSCSとアプリケーションサーバ(AS)のどちらがホストするかは当業者にとって、適宜定めるべき事項に過ぎない。よって、SCSでMTCアプリケーションをホストするようにすることは当業者にとって適宜定めるべき設計的事項に過ぎない。

(相違点2について)
まず、引用発明の有効期間はトリガ要求が有効な期間を示すが、送信装置内で遅延し、有効な期間が過ぎ去ってしまっては送信する意味が無くなってしまうことは明らかであるから、送信装置にとってはトリガ要求が有効な期間とはトリガ要求の送信を送信装置内でどれだけ遅延できるかを示す時間といえることは自明であるし、当業者にとって、トリガ要求が有効な期間をトリガ要求の送信をどれだけ遅延できるかを示す時間と解釈することに格別の困難性はない。
そして、データ送信において、優先制御を行うべきであることは、一般的な課題であるところ上記「第4 引用発明及び周知事項について」の「2.周知事項」で認定したように、「データの送信について、データの送信をどれだけ遅延できるかを示す時間に従って、送信の優先度を決定して、短い遅延しか許されないデータを先に送信する。」ことは優先制御による通信として周知事項である。つまり、データの送信をどれだけ遅延できるかを示す時間が短い遅延しか許されない場合には優先度は最高優先度となり即時に送信を実行し、遅延が許される場合には即時に送信が必要なデータより優先度は低くなり即時に送信が必要なデータの送信が終わるまで待機することとなることは明らかである。
よって、引用発明のトリガ要求の有効な期間をトリガ要求の送信をどれだけ遅延できるかを示す時間とし、従来周知の優先制御による通信としての周知事項を採用し、本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しうる。

したがって、本願発明は引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-08 
結審通知日 2020-07-14 
審決日 2020-07-29 
出願番号 特願2016-534262(P2016-534262)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 寛  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 望月 章俊
中木 努
発明の名称 移動通信のためのシステム、ノード、及び方法  
代理人 家入 健  

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