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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1366385 |
審判番号 | 不服2019-11837 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-09 |
確定日 | 2020-09-17 |
事件の表示 | 特願2017-115043「固体撮像装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-175164〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成22年1月28日に出願した特願2010-17019号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年4月25日に新たな出願とした特願2014-91203号の一部を平成28年1月8日に新たな出願とした特願2016-2298号の一部を平成29年6月12日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 6月12日 上申書の提出 平成30年 3月 9日付け 拒絶理由通知書 平成30年 5月21日 意見書、手続補正書の提出 平成30年10月25日付け 拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 平成31年 1月 9日 意見書、手続補正書の提出 令和 元年 6月 6日付け 平成31年1月9日の手続補正書につい ての補正却下の決定、拒絶査定 令和 元年 9月 9日 審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和元年9月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年9月9日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「複数のフォトダイオードを含む第1光電変換部と、2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第1フローティングディフージョン部と、複数の転送トランジスタと、第1リセットトランジスタと、第1増幅トランジスタと、第1選択トランジスタとを有する第1共有画素と、 複数のフォトダイオードを含む第2光電変換部と、2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第2フローティングディフージョン部と、複数の転送トランジスタと、第2リセットトランジスタと、第2増幅トランジスタと、第2選択トランジスタとを有し、前記第1共有画素と行方向で隣接する第2共有画素とを含み、 前記第1増幅トランジスタ及び前記第1選択トランジスタを含む第1直列回路と、前記第2増幅トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを含む第2直列回路とが行方向に反転した状態で互いに隣接して第1の行に配置され、 前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタが同じ向きに並べて第2の行に配置され、 前記第1直列回路と前記第2直列回路との間には、前記第1直列回路と前記第2直列回路に電気的に接続される共通の拡散領域を有し、 前記第1共有画素は、前記第1リセットトランジスタのソース領域と、前記第1増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第1フローティングディフージョン部がFD配線により電気的に接続され、 前記第2共有画素は、前記第2リセットトランジスタのソース領域と、前記第2増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第2フローティングディフージョン部がFD配線により電気的に接続され、 前記第1共有画素の前記FD配線と前記第2共有画素のFD配線が、行方向に反転した状態で配置され、かつ、配線長が同じである 固体撮像装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成30年5月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「複数のフォトダイオードを含む第1光電変換部と、2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第1フローティングディフージョン部と、複数の転送トランジスタと、第1リセットトランジスタと、第1増幅トランジスタと、第1選択トランジスタとを有する第1共有画素と、 複数のフォトダイオードを含む第2光電変換部と、2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第2フローティングディフージョン部と、複数の転送トランジスタと、第2リセットトランジスタと、第2増幅トランジスタと、第2選択トランジスタとを有し、前記第1共有画素と行方向で隣接する第2共有画素とを含み、 前記第1増幅トランジスタ及び前記第1選択トランジスタを含む第1直列回路と、前記第2増幅トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを含む第2直列回路とが行方向に反転した状態で互いに隣接して第1の行に配置され、 前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタが第2の行に配置され、 前記第1共有画素は、前記第1リセットトランジスタのソース領域と、前記第1増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第1フローティングディフージョン部がFD配線により電気的に接続され、 前記第2共有画素は、前記第2リセットトランジスタのソース領域と、前記第2増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第2フローティングディフージョン部がFD配線により電気的に接続され、 前記第1共有画素の前記FD配線と前記第2共有画素のFD配線の配線長が同じである 固体撮像装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタ」、「第1直列回路」と「第2直列回路」、「前記第1共有画素の前記FD配線と前記第2共有画素のFD配線」について、それぞれ「前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタが同じ向きに並べ」られ、「前記第1直列回路と前記第2直列回路との間には、前記第1直列回路と前記第2直列回路に電気的に接続される共通の拡散領域を有」し、「前記第1共有画素の前記FD配線と前記第2共有画素のFD配線が、行方向に反転した状態で配置され」るとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、特開2006-49611号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えばデジタルカメラ等の固体撮像装置に好適なCMOSイメージセンサに関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、水平方向の高集積化を図ったCMOSイメージセンサを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明に係わる一実施形態のCMOSイメージセンサは、複数の行および列からなる格子状に配列された複数の光電変換素子と、これらの光電変換素子のうち、隣接する2行に配列され、かつ、列方向に隣接する複数対の光電変換素子にそれらの出力信号が転送されるように接続され、前記2行に配列された光電変換素子の行間に配列された複数個のフローティングジャンクションと、これらの複数個のフローティングジャンクションのうち、列方向に隣接する複数のフローティングジャンクションに接続され、これらの前記光電変換素子の出力信号を共通に読み出す出力回路と、この出力回路の出力が供給されるように、前記各列毎に配線された出力線と、を備え、前記出力回路は、前記列方向に隣接する光電変換素子対の間に位置的に配置されていることを特徴とする。 【発明の効果】 【0013】 本発明に係わるCMOSイメージセンサにより、2次元格子状に配列された画素の水平(行)方向の集積度を向上させることを可能とし、特にデジタルカメラ等の固体撮像装置として有効である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下に本発明に係わる実施形態を図を参照して説明するが、本発明では出力回路OUT11?OUT24が複数の画素から構成される画素対の垂直(列)方向の画素対間隙部に形成されていることが特徴である。図1は本発明に係わる一実施形態を示した図であるが、図1において1セルの構成を詳細に説明すると、出力回路OUT11にはフォトダイオード群PD11、PD21、PD31、PD41が対応している。PD11、PD21にてフォトダイオード画素対を形成し、同様にしてPD31、PD41にてフォトダイオード画素対が形成されている。それぞれのフォトダイオードに隣接して読み出しゲートTG11、TG21、TG31、TG41が形成されており、それぞれフローティングジャンクションFJ11、FJ11´に信号電荷を転送する。フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結されている。また、出力回路OUT11にはアドレストランジスタAD11が配置されている。 【0015】 このように垂直方向に配列されているPD11、PD21からなる画素対と、PD31、PD41からなるフォトダイオード画素対間の領域に共通の出力回路を配置したことによって水平方向の高集積化を図ることを可能とした。 【0016】 このような構成の図1に示したCMOSイメージセンサの動作を説明するが、転送に先立ちフローティングジャンクションFJ11?FJ14はRSドレイン電圧にリセットされる。すなわち、RSトランジスタRS11?RS14にリセット配線RS1を介してRSパルスを印加してオンすることにより、フローティングジャンクションFJ11?FJ14はドレイン電圧配線RDに接続され、RSドレイン電圧にリセットされる。次に信号電荷をFJ11?FJ14に転送する前には、RSトランジスタRS11?RS14をオフし、FJ11?FJ14をフローティング状態にしておく必要がある。信号電荷はFJ11の電位を変化させ、それぞれが連結されている駆動トランジスタゲートD11、D12、D13、D14の電位を変調する。出力回路OUT11、OUT12、OUT13、OUT14を働かせるため、アドレス配線ADD1にアドレスパルスを印加しアドレストランジスタAD11、AD12、AD13、AD14をオンする。信号は信号線SIG1、SIG2、SIG3、SIG4から出力される。 【0017】 次に本発明の他の実施形態を図2を参照して説明する。図1と同一構成要素は同一の符号にて示してある。図2において、一出力回路(例えばOUT11)に属する垂直方向に配置されている4画素(PD11、PD21、PD31、PD41)のフォトダイオードPD11、PD21間並びにPD31、PD41間には、それぞれのフォトダイオードに隣接した読み出しゲートTG11、TG21及びTG31、TG41が配置されている。更に、読み出しゲート間にはそれぞれに対応してフローティングジャンクションFJ11、FJ11´が配置されている。この実施形態の特徴は、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11及びアドレストランジスタAD11が、フォトダイオードPD21、PD31間にあり、RSトランジスタRS11がフォトダイオードPD41、PD51間に分かれて配置されていることである。なお、この動作原理は図1と同様でありその説明は省略する。 【0018】 図2に示した回路構成の位置的な配置レイアウト例を図3を参照して説明する。図3において図2と対応する部分は同一符号にて示してある。アドレストランジスタゲート(例えばAD11)及びリセットトランジスタゲート(例えばRS11)は、図2に示すように配線から直接ゲートが出ている構成でよい。この構成により、フォトダイオード画素間隙部は2本の読み出しゲートと一つのフローティングジャンクションで構成される読み出し部分か、もしくはアドレストランジスタと駆動トランジスタで構成されるアンプ部分か、もしくはリセットトランジスタで構成されるリセット部分かのいずれかによって構成される。 【0019】 これらの幅はほぼ同程度にでき、かつその長さはフォトダイオード画素の水平方向サイズと水平方向の素子分離幅より小さくすることができる。また、水平方向のフォトダイオード間の素子分離領域は、イオン注入で形成した不純物領域でよく、垂直方向のフォトダイオード間隙部の出力回路周りの素子分離は、従来広く用いられている厚い酸化膜での素子分離ではなく、イオン注入で形成した不純物領域で形成してもよい。RD電源配線は光遮蔽膜によって兼ねてもよい。 【0020】 なお、上述した説明は4画素1セル構造の実施形態であったが、本発明は2画素1セル、そのほか6画素1セル、8画素1セルでも同様に実施可能である。例として8画素1セル構造の実施形態を図4、図5に示す。これらの構成、動作については図1、図2と同様であって詳細な説明は省略する。 【0021】 図2、図5の構成例で、リセットドレインは各画素列毎に形成しているが、水平方向に隣接するリセットドレイン(例えば図2の出力回路OUT11、OUT12のリセットトランジスタRS11、RS12のドレイン)は共有化してもよい。同様に、例えば図2の出力回路OUT11、OUT12のアドレストランジスタAD11、AD12のドレインも共有化してもよい。その際には、例えば図2の出力回路OUT11、OUT12のアドレストランジスタAD11、AD12、駆動トランジスタD11、D12は互いに共有化したドレインに対し、ミラー反転の位置に配置される(図示せず)。これらの構成、動作については図1、図2と同様であって詳細な説明は省略する。」 【図2】 【図3】 上記段落【0014】及び【0017】並びに【図2】及び【図3】の記載から、引用文献1には、 「フォトダイオード群PD12、PD22、PD32、PD42と、 PD12、PD22にてフォトダイオード画素対を形成し、同様にしてPD32、PD42にてフォトダイオード画素対が形成され、 それぞれのフォトダイオードに隣接して読み出しゲートTG12、TG22、TG32、TG42が形成され、それぞれフローティングジャンクションFJ12、FJ12´に信号電荷を転送し、 フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結され、 出力回路OUT12にはアドレストランジスタAD12が配置され、 出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12及びアドレストランジスタAD12が、フォトダイオードPD22、PD32間にあり、RSトランジスタRS12がフォトダイオードPD42、PD52間に分かれて配置され」 た構成が記載されている。 また、【図2】及び【図3】の記載から、引用文献1には、 「駆動トランジスタゲートD11とアドレストランジスタAD11は直列に接続され、駆動トランジスタゲートD12とアドレストランジスタAD12は直列に接続され、これらの直列に接続された回路は同一の行に配置され、RSトランジスタRS11及びRSトランジスタRS12は、同一の行に配置され」 た構成が記載されている。 加えて、【図3】の記載から、引用文献1には、 「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」 及び 「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」 が記載されている。 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フォトダイオード群PD11、PD21、PD31、PD41と、 PD11、PD21にてフォトダイオード画素対を形成し、同様にしてPD31、PD41にてフォトダイオード画素対が形成され、 それぞれのフォトダイオードに隣接して読み出しゲートTG11、TG21、TG31、TG41が形成され、それぞれフローティングジャンクションFJ11、FJ11´に信号電荷を転送し、 フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結され、 出力回路OUT11にはアドレストランジスタAD11が配置され、 出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11及びアドレストランジスタAD11が、フォトダイオードPD21、PD31間にあり、RSトランジスタRS11がフォトダイオードPD41、PD51間に分かれて配置され、 フォトダイオード群PD12、PD22、PD32、PD42と、 PD12、PD22にてフォトダイオード画素対を形成し、同様にしてPD32、PD42にてフォトダイオード画素対が形成され、 それぞれのフォトダイオードに隣接して読み出しゲートTG12、TG22、TG32、TG42が形成され、それぞれフローティングジャンクションFJ12、FJ12´に信号電荷を転送し、 フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結され、 出力回路OUT12にはアドレストランジスタAD12が配置され、 出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12及びアドレストランジスタAD12が、フォトダイオードPD22、PD32間にあり、RSトランジスタRS12がフォトダイオードPD42、PD52間に分かれて配置され、 駆動トランジスタゲートD11とアドレストランジスタAD11は直列に接続され、駆動トランジスタゲートD12とアドレストランジスタAD12は直列に接続され、これらの直列に接続された回路は同一の行に配置され、 RSトランジスタRS11及びRSトランジスタRS12は、駆動トランジスタゲートD11が配置される行と異なる、同一の行に同じ向きに配置され、 フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線及びフローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線を備える、 CMOSイメージセンサ。」 (ウ)また、上記(ア)の段落【0021】の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる。 「出力回路OUT11、OUT12のアドレストランジスタAD11、AD12のドレインを共有化し、出力回路OUT11、OUT12のアドレストランジスタAD11、AD12、駆動トランジスタD11、D12は互いに共有化したドレインに対し、ミラー反転の位置に配置すること。」 イ 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、特開2007-243093号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ディジタルカメラ等に使用されるMOS型の固体撮像装置および信号処理方法に関するものである。」 「【0096】 (第8の実施形態) 図14は、本発明の第8の実施形態に係る固体撮像装置のセルを示す回路図である。本実施形態では、いわゆる多画素1セル型固体撮像装置の例として1つのセルに2画素(すなわち、2つのフォトダイオード)が含まれた固体撮像装置について説明する。 【0097】 図14に示すように、本実施形態の固体撮像装置においてセルには、受けた光の強度に応じた量の電荷を蓄積する第1のフォトダイオード1002aおよび第2のフォトダイオード1002bと、第1のフォトダイオード1002a、第2のフォトダイオード1002bによって蓄積された電荷がそれぞれ転送される第1のFD1003a、第2のFD1003bと、第1の転送ゲート配線1004a(図15参照)により制御され、第1のフォトダイオード1002aから第1のFD1003aへの電荷の転送を制御する第1の転送トランジスタ1011aと、第2の転送ゲート配線1004b(図15参照)により制御され、第2のフォトダイオード1002bから第2のFD1003bへの電荷の転送を制御する第2の転送トランジスタ1011bと、リセットゲート配線1005(図15参照により制御され、第1のFD1003aおよび第2のFD1003bの電位を初期化するリセットトランジスタ1012と、ゲート電極が第1のFD1003aおよび第2のFD1003b、ドレインが電源線1006に、ソースが垂直信号線1007にそれぞれ接続され、ソースフォロワを構成する増幅トランジスタ1008と、増幅トランジスタ1008のソースと垂直信号線1007との間に設けられ、増幅トランジスタ1008からの出力信号を垂直信号線1007に伝達させる選択トランジスタ1020と、基板上に形成されたp型不純物を含む基板コンタクト領域に接続された基板コンタクト用配線1100(図15参照)が設けられている。基板コンタクト領域はセルにつき少なくとも1つ形成されている。 【0098】 本実施形態の固体撮像装置では、1つのセルにフォトダイオードとこれと対になった転送トランジスタとが2対形成されている。なお、フォトダイオードとこれに接続された転送トランジスタとが3対以上形成される場合もある。また、1つのセル内には第1のFD1003aと第2のFD1003bとが設けられているが、1つのFDをセル内の複数のフォトダイオードで共用してもよい。また、リセットトランジスタ1012、増幅トランジスタ1008、選択トランジスタ1020なども複数のフォトダイオードで共用することができる。なお、本実施形態の画素アレイでは、複数のセルが行列状に配置されるとともに複数のフォトダイオードも行列状に配置されている。 【0099】 図15(a)?(c)は、第8の実施形態に係る固体撮像装置の有効画素領域のレイアウトを示す平面図である。図15(a)は、有効画素領域においてポリシリコン配線層と、半導体基板に形成された拡散層またはポリシリコン配線と第1の配線層とを接続するコンタクト(下層コンタクト)とを示しており、(b)は、第1の配線層までに形成された配線と、拡散層等と第1の配線層とを接続するコンタクトと、第1の配線層と第2の配線層とを接続するコンタクトとを示しており、(c)は、第2の配線層に形成された配線をさらに示している。なお、図15(a)?(c)中の破線はセルの区切りを示している。図15は画素アレイの一部のみを示しているが、実際には行方向、列方向ともに図15に示された構成と同様の構成が繰り返されている。 【0100】 本実施形態の固体撮像装置では、1つのセル内に2つのフォトダイオード(第1のフォトダイオード1002a、第2のフォトダイオード1002b)が設けられているので、撮像領域(画素アレイ)の単位面積のうちフォトダイオードが占める面積の割合を大きくすることができる。このため、フォトダイオードの感度および飽和特性を向上させることができる。 【0101】 本実施形態の固体撮像装置では、画素アレイの上方において、FD配線1120および電源線1006が第1の配線層に配置されている。そして、垂直信号線1007は、第1の配線層の上方に形成された第2の配線層に配置されている。そのため、第1の実施形態の固体撮像装置と同様に画素アレイの中心線からの距離に応じて垂直信号線1007の位置をシフトさせる場合であってもセルに生じる寄生容量のバラツキを抑え、シェーディングの発生を抑えることが可能となる。 【0102】 また、本実施形態の固体撮像装置では、1つのフォトダイオードに注目した場合、第1の配線層または第2の配線層に配置された金属配線のうち当該フォトダイオードの行方向(図15での左右方向)の両側に隣接する部分がフォトダイオードから見て左右対称となっている。図15に示す例では、垂直信号線1007のうち平面的に見てフォトダイオードの両隣に隣接する部分同士は当該フォトダイオードを挟んで線対称になっており、電源線1006、基板コンタクト用配線1100およびFD配線1120についても同様である。この構成により、各フォトダイオードにおいて左側から入射する光と右側から入射する光とが均等になるので、フォトダイオードの面内での感度のバラツキが抑えられ、シェーディングの発生を効果的に抑えることが可能となる。なお、リセットトランジスタ1012のゲート配線は図15(a)に示すようにセルごとに同一の形状であってもよいが、フォトダイオードの行方向に隣接するゲート配線は同士がフォトダイオードから見て行方向に対称に配置されていてもよい。 【0103】 また、第1の配線層に配置された電源線1007は、2本が1組となって梯子状となり、1つの列に配置されたフォトダイオードのそれぞれの上方を囲む。第1の配線層に配置された基板コンタクト用配線1100は電源線1007と同様に2本が1組となって梯子状となり、1つの列に配置されたフォトダイオードのそれぞれの上方を囲む。一方、第2の配線層に配置された垂直信号線1007はそれぞれフォトダイオード(またはセル)の列ごとに設けられ、直線上に延びている。この構成により、マイクロレンズによって集光された光のうち、本来フォトダイオードに到達させるべき光が最上層の配線層(ここでは第2の配線層)に配置された配線に遮られにくくなっているので、最上層の配線層に配置された垂直信号線1007がフォトダイオードの上方を囲む場合に比べ、フォトダイオードの感度および飽和特性を向上させることができる。なお、本実施形態の固体撮像装置では、電源線1007に囲まれたフォトダイオードの列と基板コンタクト用配線1100に囲まれたフォトダイオードの列とは交互に配置されている。 【0104】 また、本実施形態の固体撮像装置では、画素アレイが設けられた基板上にセルごとに基板コンタクト領域が形成されている。このため、画素アレイ内に形成されたトランジスタの動作を安定化させ、信号の読み出し速度を向上させることができる。 【0105】 また、パルス状の電源電圧を供給する電源線1006がリセットトランジスタ1012のドレインに接続されてリセット電源としても機能することにより、配線レイアウトが簡潔になり、フォトダイオードの開口面積の拡大を図ることが可能となる。 【0106】 また、本実施形態の固体撮像装置では、図15(c)に示すように、電源線1006と垂直信号線1007とが互いに層間絶縁膜を挟んでほぼ平行な位置に配置されている。さらに、平面的に見て電源線1006と垂直信号線1007とはできるだけ重複しないように配置されている。この構成により、垂直信号線1007を伝搬する信号が電源線1006からのノイズの影響を受けにくくなっている。 【0107】 また、FDと増幅トランジスタ1008のゲート電極とを接続するFD配線1120は、電源線1006に対してほぼ平行な位置に配置されている。この構成により、FD配線1120に蓄積される電荷が電源線1006からのノイズの影響を受けにくくなっている。」 【図15】 【図15】の記載から、引用文献2には、 「フォトダイオードを挟んで線対称になったFD配線1120の長さは同じである。」 構成が記載されている。 (イ)上記(ア)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「各フォトダイオードの面内での感度のバラツキを抑え、シェーディングの発生を効果的に抑えるために、FDと増幅トランジスタ1008のゲート電極とを接続するFD配線1120は、平面的に見てフォトダイオードの両隣に隣接する部分同士は当該フォトダイオードを挟んで線対称であり、フォトダイオードを挟んで線対称になったFD配線1120の長さは同じであること。」 ウ 周知技術 (ア)引用文献3 原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-10358号公報(平成21年5月14日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、焦点検出用信号を生成する焦点検出用画素を有する固体撮像素子及びこれを用いた電子カメラに関するものである。」 「【0049】 図9、図10を用いて、本固体撮像素子3のAF画素20Bについて詳細に説明する。まず、図9及び図10(a)から理解されるように、p型のシリコン基板40上にn型不純物拡散領域61、62、63、64、65、及び、光電変換部である42が設けられ、さらにポリシリコンによるゲートのための電極層が設けられて各トランジスタが構成されている。 【0050】 すなわち、n型不純物拡散領域61、62をソース又はドレインとし、ポリシリコンによる電極層を選択ゲート電極66とする選択トランジスタ54が設けられる。なお、ここではp型のシリコン基板40上に各n型不純物拡散領域が設けられているが、周知のようにp型のウエルを設け、その中にn型不純物拡散領域が配置されても良い。n型不純物拡散領域61(ソース)は、垂直出力線25とコンタクト部を介して接続されている。選択ゲート電極66は、二層目の金属層で設けられる駆動用配線23のうち、φSELの信号が印加される配線と接続されている。また、n型不純物拡散領域62、63をソース又はドレインとし、ポリシリコンによるゲート電極層を画素アンプゲート電極67とする画素アンプトランジスタ53が設けられる。n型不純物拡散領域63(ドレイン)は、図10(d)に示したように三層目の金属層による駆動用配線75と接続されてVddが印加される。画素アンプゲート電極67は、一層目の金属層による画素の内部配線71を介してn型不純物拡散領域であるFD64と電気的に接続されている。なお、これらの図において、画素の内部配線71はU字状に示されている。これは、図面が煩雑になるために故意に示したものであって、本来は画素アンプゲート電極67とFD64との間を直線状に配置されている。」 (イ)引用文献4 原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-33316号公報(平成21年2月12日出願公開。以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、固体撮像素子及びこれを用いた電子カメラに関するものである。」 「【0045】 選択トランジスタ60は、拡散領域79をソース、拡散領域80をドレインとするMOSトランジスタである。選択トランジスタ60は、オン状態にされることで、画素アンプ58の出力を垂直信号線25に出力する。すなわち、画素アンプ58と選択トランジスタ60によって、ソースフォロワによる読み出しが可能となっている。」 (ウ)周知技術 上記(ア)及び(イ)の記載から、次の技術は当該技術分野における周知技術(以下、単に「周知技術」という。)であると認められる。 「固体撮像素子の選択トランジスタのソース及びドレンを拡散領域で構成すること。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「フォトダイオード群PD11、PD21、PD31、PD41」、「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´」、「読み出しゲートTG11、TG21、TG31、TG41」、「リセットトランジスタRS11」、「駆動トランジスタゲートD11」、「アドレストランジスタAD11」、「フォトダイオード群PD12、PD22、PD32、PD42」、「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´」、「読み出しゲートTG12、TG22、TG32、TG42」、「リセットトランジスタRS12」、「駆動トランジスタゲートD12」及び「アドレストランジスタAD12」、は、それぞれ本件補正発明の「複数のフォトダイオードを含む第1光電変換部」、「2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第1フローティングディフージョン部」、「第1共有画素」の「複数の転送トランジスタ」、「第1リセットトランジスタ」、「第1増幅トランジスタ」、「第1選択トランジスタ」、「複数のフォトダイオードを含む第2光電変換部」、「2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第2フローティングディフージョン部」、「第2共有画素」の「複数の転送トランジスタ」、「第2リセットトランジスタ」、「第2増幅トランジスタ」及び「第2選択トランジスタ」に相当する。 そして、引用発明の「フォトダイオード群PD11、PD21、PD31、PD41と、 PD11、PD21にてフォトダイオード画素対を形成し、同様にしてPD31、PD41にてフォトダイオード画素対が形成され、 それぞれのフォトダイオードに隣接して読み出しゲートTG11、TG21、TG31、TG41が形成され、それぞれフローティングジャンクションFJ11、FJ11´に信号電荷を転送し、 フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結され、 出力回路OUT11にはアドレストランジスタAD11が配置され、 出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11及びアドレストランジスタAD11が、フォトダイオードPD21、PD31間にあり、RSトランジスタRS11がフォトダイオードPD41、PD51間に分かれて配置され」た構成及び 「フォトダイオード群PD12、PD22、PD32、PD42と、 PD12、PD22にてフォトダイオード画素対を形成し、同様にしてPD32、PD42にてフォトダイオード画素対が形成され、 それぞれのフォトダイオードに隣接して読み出しゲートTG12、TG22、TG32、TG42が形成され、それぞれフローティングジャンクションFJ12、FJ12´に信号電荷を転送し、 フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結され、 出力回路OUT12にはアドレストランジスタAD12が配置され、 出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12及びアドレストランジスタAD12が、フォトダイオードPD22、PD32間にあり、RSトランジスタRS12がフォトダイオードPD42、PD52間に分かれて配置され」た構成は、 それぞれ本件補正発明の「第1共有画素」及び「第2共有画素」に相当する。 (イ)引用発明の「出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12及びアドレストランジスタAD12が、フォトダイオードPD22、PD32間にあり、RSトランジスタRS12がフォトダイオードPD42、PD52間に分かれて配置され、 駆動トランジスタゲートD11とアドレストランジスタAD11は直列に接続され、駆動トランジスタゲートD12とアドレストランジスタAD12は直列に接続され、これらの直列に接続された回路は同一の行に配置され」ることと、本件補正発明の「前記第1増幅トランジスタ及び前記第1選択トランジスタを含む第1直列回路と、前記第2増幅トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを含む第2直列回路とが行方向に反転した状態で互いに隣接して第1の行に配置され」ることは、「前記第1増幅トランジスタ及び前記第1選択トランジスタを含む第1直列回路と、前記第2増幅トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを含む第2直列回路とが行方向に互いに隣接して第1の行に配置され」る点で共通する。 (ウ)引用発明の「RSトランジスタRS11及びRSトランジスタRS12は、駆動トランジスタゲートD11が配置される行と異なる、同一の行に同じ向きに配置される」ことは、本件補正発明の「前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタが同じ向きに並べて第2の行に配置され」ることに相当する。 (エ)引用発明の「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」は、本件補正発明の「第1共有画素」の「前記第1リセットトランジスタのソース領域と、前記第1増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第1フローティングディフージョン部が」電気的に接続される「FD配線」に相当する。 (オ)引用発明の「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」は、本件補正発明の「第2共有画素」の「前記第2リセットトランジスタのソース領域と、前記第2増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第2フローティングディフージョン部が」電気的に接続される「FD配線」に相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「複数のフォトダイオードを含む第1光電変換部と、2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第1フローティングディフージョン部と、複数の転送トランジスタと、第1リセットトランジスタと、第1増幅トランジスタと、第1選択トランジスタとを有する第1共有画素と、 複数のフォトダイオードを含む第2光電変換部と、2つの前記フォトダイオードでそれぞれ共有される2つの第2フローティングディフージョン部と、複数の転送トランジスタと、第2リセットトランジスタと、第2増幅トランジスタと、第2選択トランジスタとを有し、前記第1共有画素と行方向で隣接する第2共有画素とを含み、 前記第1増幅トランジスタ及び前記第1選択トランジスタを含む第1直列回路と、前記第2増幅トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを含む第2直列回路とが行方向に互いに隣接して第1の行に配置され、 前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタが同じ向きに並べて第2の行に配置され、 前記第1共有画素は、前記第1リセットトランジスタのソース領域と、前記第1増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第1フローティングディフージョン部がFD配線により電気的に接続され、 前記第2共有画素は、前記第2リセットトランジスタのソース領域と、前記第2増幅トランジスタの増幅ゲート電極と、前記2つの第2フローティングディフージョン部がFD配線により電気的に接続される、 固体撮像装置。」 [相違点1] 本件補正発明は、「第1直列回路」と「第2直列回路」とが行方向に反転した状態で互いに隣接し、「前記第1直列回路と前記第2直列回路との間には、前記第1直列回路と前記第2直列回路に電気的に接続される共通の拡散領域を有し」ているのに対して、引用発明はそのようになっていない点。 [相違点2] 本件補正発明は、「前記第1共有画素の前記FD配線と前記第2共有画素のFD配線が、行方向に反転した状態で配置され、かつ、配線長が同じである」のに対して、引用発明の「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」と、「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」の、配置や長さの関係について明記されていない点。 (4)判断 以下、各相違点について検討する。 ア [相違点1]について 第2の[理由]2(2)ア(ウ)の引用文献1記載事項にあるように、引用文献1には、「出力回路OUT11、OUT12のアドレストランジスタAD11、AD12のドレインを共有化し、出力回路OUT11、OUT12のアドレストランジスタAD11、AD12、駆動トランジスタD11、D12は互いに共有化したドレインに対し、ミラー反転の位置に配置すること。」との、別の態様への設計変更についての動機付けが示唆されているから、引用発明において、直列に接続された「駆動トランジスタゲートD11とアドレストランジスタAD11」及び「駆動トランジスタゲートD12とアドレストランジスタAD12」のドレインを共有化し、共有化したドレインに対し、アドレストランジスタAD11、AD12、駆動トランジスタD11、D12をミラー反転の位置に配置すること、すなわち、本件補正発明の「第1直列回路」と「第2直列回路」とが行方向に反転した状態で互いに隣接するように配置することは当業者が適宜に選択可能な設計的事項である。 そして、共有化された2つのアドレストランジスタに相当する選択トランジスタにおいて、ソース及びドレイン領域を拡散領域で構成することは周知技術であるから、引用発明に上記引用文献1記載事項を採用した際に、適宜、「第1直列回路」と「第2直列回路」とが行方向に反転した状態で互いに隣接し、「前記第1直列回路と前記第2直列回路との間には、前記第1直列回路と前記第2直列回路に電気的に接続される共通の拡散領域を有」するようにすること、すなわち、本件補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することである。 イ [相違点2]について 引用文献1の【図3】の記載からすると、引用発明の「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」と、「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」は同じ長さである。 また、固体撮像素子において、画素毎の感度特性を同じにするために、各画素を構成する配線の容量は同じにする必要があるから、この長さが同じ配線の幅も同じであると認められる。 そうすると、引用発明の「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」と、「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」は、同じ長さであり且つ幅も同じ形の、長方形に構成されていると認められる。 してみると、引用発明の「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」と、「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」は、行方向に隣り合うフローティングジャンクションを結合する、隣接する列の同じ形(長方形)の配線であることから、上記配線が、行方向に反転して配置されているといえる。 そうすると、相違点2は実質的な相違点とは認められない。 また、仮に、引用発明の「フローティングジャンクションFJ11、FJ11´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT11の駆動トランジスタゲートD11とリセットトランジスタRS11のソースに連結される配線」と、「フローティングジャンクションFJ12、FJ12´は互いに電気的に結合され、出力回路OUT12の駆動トランジスタゲートD12とリセットトランジスタRS12のソースに連結される配線」が、相違点2に係る特定がなされていないとしても、引用文献2記載事項にあるように、「各フォトダイオードの面内での感度のバラツキを抑え、シェーディングの発生を効果的に抑えるために、FDと増幅トランジスタ1008のゲート電極とを接続するFD配線1120は、平面的に見てフォトダイオードの両隣に隣接する部分同士は当該フォトダイオードを挟んで線対称であり、フォトダイオードを挟んで線対称になったFD配線1120の配線長は同じであること。」は、当該技術分野における公知の技術であって、引用発明において、感度のバラツキやシェーディングの発生を考慮し、上記公知技術を採用し、本件補正発明の相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到することである。 ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1、2に記載された技術並びに引用文献3、4に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1ないし4に記載された技術並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 令和元年9月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年5月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献1,2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2006-049611号公報 引用文献2:特開2007-243093号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタ」、「第1直列回路」と「第2直列回路」、及び「前記第1共有画素の前記FD配線と前記第2共有画素のFD配線」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1、2に記載された技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1、2に記載された技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-07-09 |
結審通知日 | 2020-07-14 |
審決日 | 2020-07-29 |
出願番号 | 特願2017-115043(P2017-115043) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田邊 顕人 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
▲吉▼澤 雅博 小田 浩 |
発明の名称 | 固体撮像装置及び電子機器 |
代理人 | 特許業務法人信友国際特許事務所 |