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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1366393
審判番号 不服2020-1936  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-12 
確定日 2020-09-17 
事件の表示 特願2015-211129「超音波診断装置およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 80040〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成27年10月27日を出願日とする出願であって、令和元年7月9日付けで拒絶理由が通知され、同年9月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定されたところ、令和2年2月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同時に手続補正がなされ、同年5月25日に上申書が提出されたものである。

2 令和2年2月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和2年2月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、【請求項1】を
「【請求項1】
超音波プローブからの出力に基づいて、ラジオ波を発生させる穿刺針を含む超音波画像を生成する画像生成部と、
外部装置又は前記超音波プローブからの出力の時間方向における特異な変化を検出する検出部と、
前記検出部による前記特異な変化の検出に応じて、表示部に表示されている前記超音波画像と実質的に同じ位置の医用画像を含む参照画像を前記表示部に表示する制御部と、
前記参照画像の種別、または、前記超音波画像および前記参照画像を前記表示部に表示する際のレイアウト、を設定するための設定手段と
を具備する超音波診断装置。」(下線は補正箇所を示す。)
と補正するものを含むものである。

(2)本件補正の目的
本件補正のうち、請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「画像生成部」を「超音波プローブからの出力に基づいて超音波画像を生成する画像生成部」から「超音波プローブからの出力に基づいて、ラジオ波を発生させる穿刺針を含む超音波画像を生成する画像生成部」に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件について
本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明1は、前記「2(1)」に記載したとおりのものである。

イ 引用例
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成21年6月25日に頒布された刊行物である「特開2009-136552号公報」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
a「【0001】
本発明は、超音波診断装置、ラジオ波焼灼治療装置、ラジオ波を用いた焼灼治療が可能な超音波診断治療システム及び超音波診断治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジオ波を用いた焼灼治療が可能な超音波診断治療システムでは、超音波画像を確認しながら穿刺針を被検体に刺入し、穿刺針からラジオ波を放射して腫瘍などの焼灼治療を行っている(例えば、特許文献1参照)。このような超音波診断治療システムでは、リアルタイムでの超音波画像を見ながら穿刺針を刺入するため、超音波画像を生成するための超音波探触子からの超音波送受信と、前記穿刺針からのラジオ波の放射とが同時に行われるようになっている。」

b「【0004】
本発明の目的は、表示部に表示される超音波画像について、ラジオ波に起因する画質の劣化を防止することができる超音波診断装置、ラジオ波焼灼治療装置、超音波診断治療システム及び超音波診断治療装置を提供することにある。」

c「【0037】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0038】
図1に示す超音波診断装置1は、超音波診断装置本体2と、この超音波診断装置本体2に接続された超音波探触子3とを備えて構成されている。この超音波探触子3は、図示しない複数の超音波トランスデューサのアレイを有する。個々の超音波トランスデューサは、例えばPZT(チタン(Ti)酸ジルコン(Zr)酸鉛)セラミックス等の圧電材料によって構成される。
【0039】
ちなみに、前記超音波探触子3には、ラジオ波を放射する穿刺針(図示省略)が、穿刺アダプタ(図示省略)を介して取り付けられている。
【0040】
前記超音波診断装置本体2は、送受信部4と、Bモード処理部5と、ドップラ処理部6と、画像処理部7と、表示部8と、制御部9と、操作部10とを有する 。前記超音波探触子3は前記送受信部4と接続されている。」

d「【0047】
前記送受信部4は、前記Bモード処理部5及び前記ドップラ処理部6と接続されている。前記送受信部4から出力される音線毎のエコー信号は、前記Bモード処理部5及び前記ドップラ処理部6へ入力される。
【0048】
前記Bモード処理部5は、エコー信号に基づいて音線毎のBモード画像データを生成する。図3は、前記Bモード処理部5の概略構成を示すブロック図である。図3に示すBモード処理部5は、対数増幅部51と包絡線検波部52とを有する。」

e「【0054】
前記Bモード処理部5及び前記ドップラ処理部6は、前記画像処理部7と接続されている。この画像処理部7は、前記Bモード処理部5及び前記ドップラ処理部6からそれぞれ入力されるデータに基づいて、Bモード画像及びドップラ画像を生成する。前記Bモード処理部5、前記ドップラ処理部6及び前記画像処理部7は、本発明の画像生成手段の実施の形態の一例である。
【0055】
前記画像処理部7について図5に基づいて説明する。図5は、前記画像処理部7の構成の一例を示すブロック図である。この図5に示すように、前記画像処理部7は、セントラルプロセッシングユニット(CPU:Central Processing Unit)71を有する。このCPU71には、バス72によって、メインメモリ73、外部メモリ74、制御部インタフェース75、入力データメモリ76、ディジタルスキャンコンバータ(DSC:Digital Scan Converter)77、画像メモリ78及びディスプレーメモリ79が接続されている。」

f「【0059】
前記CPU71は、前記穿刺針を有するラジオ波焼灼治療装置(図示省略)からのラジオ波放射時に前記超音波探触子3で受信したエコー信号に基づいて生成された超音波画像、すなわちラジオ波放射時超音波画像に代えて、前記ラジオ波焼灼治療装置からラジオ波を放射していないときに前記超音波探触子で受信したエコー信号に基づいて生成された超音波画像、すなわちラジオ波非放射時超音波画像を前記表示部8へ表示させるようになっており、本発明における表示制御部の実施の形態の一例である。
【0060】
具体的に説明すると、前記CPU71は、前記画像メモリ78に記憶されたデータ、すなわち前記画像生成手段で生成された超音波画像について、1フレーム毎にラジオ波放射時超音波画像であるかラジオ波非放射時超音波画像であるかを判定する。そして、ラジオ波非放射時超音波画像であると判定した場合は当該画像を前記表示部8に表示させ、ラジオ波放射時超音波画像であると判定した場合は、前記画像メモリ78に記憶された当該画像より以前のフレームのラジオ波非放射時超音波画像を前記表示部8に表示させる。ラジオ波放射時超音波画像であるかラジオ波非放射時超音波画像であるかについての具体的な
判定方法については、後述する。」

g「【0061】
前記画像処理部7には、前記表示部8が接続されている。この表示部8は、前記画像処理部7から画像信号が与えられ、それに基づいて超音波画像を表示するようになっている。前記表示部8は、カラー画像が表示可能なCRTや液晶ディスプレイ等で構成される。
【0062】
以上の前記送受信部4、前記Bモード処理部5、前記ドップラ処理部6、前記画像処理部7、前記表示部8には、前記制御部9が接続されており、この制御部9から各種の信号が入力される。そして、前記制御部9の制御の下で、Bモード動作及びドップラモード動作が実行される。
【0063】
前記制御部9には、前記操作部10が接続されている。この操作部10は操作者によって操作され、前記制御部9に適宜の指令や情報を入力するようになっている。前記操作部10は、例えばキーボードやポインティングデバイス及びその他の操作具を備えている。」

h「【0064】
さて、前記超音波診断装置1の動作について図6に基づいて説明する。前記超音波診断装置1にあっては、超音波画像を見ながら患部に穿刺針を刺入して焼灼治療を行うために、先ずステップS1では、撮影動作を行って前記超音波探触子3によってエコー信号を受信し、次いでステップS2では、得られたエコー信号に基づいて超音波画像を生成する。そして、ステップS3では、得られた超音波画像について、ラジオ波放射時超音波画像であるか否かを前記CPU71が判定する。ステップS3で、得られた超音波画像がラジオ波放射時超音波画像であると判定された場合は、ステップS4へ進み、このステップS4では、前記CPU71は前記画像メモリ78に記憶された前記ラジオ波非放射時超音波画像を前記表示部8に表示させる。一方、ステップS3で、得られた超音波画像がラジオ波放射時超音波画像ではない、すなわちラジオ波非放射時超音波画像であると判定された場合は、前記CPU71は当該画像を前記表示部8に表示させる。」

i「【0072】
Bモード画像データについて、ラジオ波放射時超音波画像のデータであるか否かを判定する方法としては、例えば、先ず操作者が前記操作部10を操作してBモード画像について関心領域を設定し、この関心領域内のBモード画像データの平均輝度が、所定値以上であるか否かにより判定する方法が挙げられる。ここで、所定値は、ラジオ波によるノイズが画像に現れた場合の輝度である。ラジオ波によるノイズが画像に現れた場合、ノイズがない場合と比べて平均輝度が大きくなることから、前記CPU71は、Bモード画像データの関心領域内の平均輝度が所定値以上であればラジオ波放射時超音波画像のデータであると判定し、所定値未満であればラジオ波非放射時超音波画像のデータであると判定する。」

上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「リアルタイムでの超音波画像を見ながら穿刺針を被検体に刺入し、穿刺針からラジオ波を放射して腫瘍などの焼灼治療を行うラジオ波を用いた焼灼治療が可能な超音波診断治療装置において、
超音波診断治療装置1は、超音波診断装置本体2と、この超音波診断装置本体2に接続された超音波探触子3とを備えて構成されており、前記超音波探触子3には、ラジオ波を放射する穿刺針が、穿刺アダプタを介して取り付けられており、
前記超音波診断装置本体2は、送受信部4と、Bモード処理部5と、画像処理部7と、表示部8と、制御部9と、操作部10とを有し、
前記超音波探触子3は前記送受信部4と接続されており、
前記送受信部4、前記Bモード処理部5、前記画像処理部7、前記表示部8には、前記制御部9が接続されており、この制御部9から各種の信号が入力され、前記制御部9の制御の下で、Bモード動作が実行され、
前記制御部9には、前記操作部10が接続されており、前記操作部10は例えばキーボードやポインティングデバイス及びその他の操作具を備えており、操作者によって操作され、前記制御部9に適宜の指令や情報を入力するようになっており、
前記表示部8は、カラー画像が表示可能なCRTや液晶ディスプレイ等で構成されており、
前記送受信部4は、前記Bモード処理部5と接続されており、前記送受信部4から出力される音線毎のエコー信号は、前記Bモード処理部5へ入力され、
前記Bモード処理部5は、エコー信号に基づいて音線毎のBモード画像データを生成し、
前記画像処理部7は、前記Bモード処理部5から入力されるデータに基づいて、Bモード画像を生成し、
前記画像処理部7は、セントラルプロセッシングユニット(CPU:Central Processing Unit)71を有し、
前記CPU71は、前記画像生成手段で生成された超音波画像について、1フレーム毎にラジオ波放射時超音波画像であるかラジオ波非放射時超音波画像であるかを判定し、ラジオ波非放射時超音波画像であると判定した場合は当該画像を前記表示部8に表示させ、ラジオ波放射時超音波画像であると判定した場合は、当該画像より以前のフレームのラジオ波非放射時超音波画像を前記表示部8に表示させるものであり、ラジオ波放射時超音波画像のデータであるか否かを判定する方法としては、例えば、先ず操作者が前記操作部10を操作してBモード画像について関心領域を設定し、この関心領域内のBモード画像データの平均輝度が、所定値以上であるか否かにより判定するものであり、Bモード画像データの関心領域内の平均輝度が所定値以上であればラジオ波放射時超音波画像のデータであると判定し、所定値未満であればラジオ波非放射時超音波画像のデータであると判定するものである、
超音波診断治療装置。」

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成25年12月19日に頒布された刊行物である「特開2013-252345号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
a「【0001】
本発明は、超音波画像診断装置に関する。」

b「【0025】
超音波画像診断装置本体20aは、例えば、操作入力部201と、送信部202と、受信部203と、画像生成部204と、画像処理部205と、DSC(Digital Scan Converter)206と、表示部207と、制御部208と、記憶部209と、I/F(InterFace)210と、通信部211とを備えて構成されている。
【0026】
操作入力部201は、例えば、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報等のデータ、及び、超音波画像を表示部207に表示するための各種パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部208に出力する。」

c「【0042】
まず、制御部208は、RIS10から撮影オーダ情報が入力され、操作入力部201によって患者の個人情報が入力されると(ステップS101)、表示レイアウトの設定を行う(ステップS102)。すなわち、制御部208は、シングル表示モードとデュアル表示モードのそれぞれにおける超音波画像表示領域と被検体情報表示領域とを設定する。
【0043】
より具体的には、制御部208は、まず、シングル表示モードにおける表示レイアウトの設定を行う。このとき、制御部208は、例えば、図4(A)?(C)に示される表示レイアウトパターンから、操作入力部201による操作に従って選択する。」

d「【0054】
本実施の形態では、表示レイアウトパターンを予め設定することができるので、例えば、図7(A)に示すように、一の超音波画像Uが超音波画像表示領域D上に表示された表示画像を、図7(B)に示すように、超音波画像表示領域DL及び超音波画像表示領域DRが左右に並べられるとともに、その右側にサムネイル表示領域Tが配置された表示レイアウトパターンで超音波画像UL及び超音波画像URを表示した場合には、超音波画像表示領域DL及び超音波画像表示領域DRの幅がサムネイル表示領域Tの幅の分だけ小さくされる必要があるため、超音波画像の左右部分が表示領域外となって欠けてしまう等十分な幅の超音波画像を表示させることができない場合があるが、図7(C)に示すように、サムネイル表示領域Tを左右方向に延出する形態として超音波画像表示領域DL及び超音波画像表示領域DRの下方でキー機能表示領域Fと上下方向に並べて配置した表示レイアウトパターンとすると、超音波画像表示領域DL及び超音波画像表示領域DRの幅を大きくすることができるので、表示領域外となる超音波画像を低減させることができ、十分な幅の超音波画像を表示させることが可能になる。なお、図7(A)?(C)中、最上部に配置される領域は、基本情報表示領域Iである。」

e「【図7】



f 前記「d」ないし「e」より、「2枚の超音波画像を表示部に同時表示するレイアウトパターンを設定できる」ことが見て取れる。[961]

上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「超音波画像診断装置において、
超音波画像診断装置本体20aは、操作入力部201と、送信部202と、受信部203と、画像生成部204と、画像処理部205と、DSC(Digital Scan Converter)206と、表示部207と、制御部208と、記憶部209と、I/F(InterFace)210と、通信部211とを備えて構成されており、
操作入力部201は、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報等のデータ、及び、超音波画像を表示部207に表示するための各種パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部208に出力するものであり、
制御部208は、表示レイアウトパターンから、操作入力部201による操作に従って選択することにより、2枚の超音波画像を表示部に同時表示する表示レイアウトパターンを予め設定することができる、
超音波画像診断装置。」

(ウ)当審で新たに発見した、本願の出願日前である平成20年8月7日に頒布された刊行物である「特開2008-178589号公報」(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
a「【0001】
本発明は、被検体の治療対象部位に穿刺針を刺入しつつ診断を行うための超音波診断装置、超音波診断に用いる穿刺針および針情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された圧電振動子から被検体内に超音波パルスを照射し、被検体内で生じた反射波を圧電振動子で受信して各種処理を行なうことにより被検体内の断層画像や血流情報等の生体情報を得る装置である。
【0003】
この超音波診断装置を用いた治療法の1つに超音波穿刺術式と呼ばれるものがある。超音波穿刺術式による治療では、臓器における癌等の腫瘍部分である被検体の治療対象部位に超音波ガイド下で穿刺針(PEIT(percutaneous ethanol injection treatment)針、ラジオ波穿刺針、マイクロ波穿刺針などの治療針を含む。以下、同じ)が刺入される。」

b「【0007】
超音波ガイド下で行われる穿刺針の刺入においては、穿刺針が細く、また刺入方向が超音波診断装置の超音波ビームに対して浅い角度でほぼ平行となる。このため、超音波の送受により超音波画像を撮像する際、穿刺針による十分な強度の反射波信号が得られず、超音波画像上に穿刺針の位置を安定かつ鮮明に表示できない場合がある。」

c「【0012】
また、焼灼治療では、焼灼による組織の変質や発生する気泡のため、治療部位の直上における超音波プローブの位置からは焼灼部位の後方の観察ができないという問題もある。・・・」

d「【0102】
・・・
【図7】図1に示す超音波診断装置により穿刺針をBモード画像として映像化した例を示す図。
・・・」

e「【図7】



上記引用例3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「被検体の治療対象部位にラジオ波穿刺針を刺入しつつ診断を行うための超音波診断装置において、穿刺針をBモード画像として映像化することができる、装置。」

ウ 対比
本願補正発明1を、引用発明1と比較する。
(ア)引用発明1の「超音波診断治療装置」は、本願補正発明1における「超音波診断装置」に相当する。
(イ)引用発明1における「超音波探触子3」は、本願補正発明1における「超音波プローブ」に相当する。
(ウ)引用発明1における「穿刺針」は、「穿刺針からラジオ波を放射」するものであるから、本願補正発明1における「ラジオ波を発生させる穿刺針」に相当する。
(エ)引用発明1では「超音波探触子3」と接続されている「送受信部4」から「出力される音線毎のエコー信号は、」「Bモード処理部5へ入力され」、「Bモード処理部5は、エコー信号に基づいて音線毎のBモード画像データを生成し、」「画像処理部7は、」「Bモード処理部5から入力されるデータに基づいて、Bモード画像を生成」するものであるから、引用発明1における「画像処理部7」は、本願補正発明1における「超音波プローブからの出力に基づいて、」「超音波画像を生成する画像生成部」に相当する。
(オ)引用発明1における「画像生成手段で生成された超音波画像について、1フレーム毎に」「Bモード画像データの関心領域内の平均輝度」を判定することは、超音波探触子3からの出力の時間方向における特異な変化を検出することであるから、本願補正発明1における「超音波プローブからの出力の時間方向における特異な変化を検出する」ことに相当する。
(カ)引用発明1では、「画像処理部7」の「CPU71」において「画像生成手段で生成された超音波画像について、1フレーム毎に」「Bモード画像データの関心領域内の平均輝度が所定値以上であればラジオ波放射時超音波画像のデータであると判定し、所定値未満であればラジオ波非放射時超音波画像のデータであると判定する」ものであるから、引用発明1における「画像処理部7」の「CPU71」は、本願補正発明1における「超音波プローブからの出力の時間方向における特異な変化を検出する検出部」に相当する。
(キ)引用発明1における「カラー画像が表示可能なCRTや液晶ディスプレイ等で構成されて」いる「表示部8」は、本願補正発明1における「表示部」に相当する。
(ク)引用発明1における「当該画像より以前のフレームのラジオ波非放射時超音波画像」は、本願補正発明1における「超音波画像と実質的に同じ位置の医用画像を含む参照画像」に相当する。
(ケ)引用発明1では「画像処理部7」の「CPU71」において「前記画像生成手段で生成された超音波画像について、1フレーム毎にラジオ波放射時超音波画像であるかラジオ波非放射時超音波画像であるかを判定し、ラジオ波非放射時超音波画像であると判定した場合は当該画像を前記表示部8に表示させ、ラジオ波放射時超音波画像であると判定した場合は、当該画像より以前のフレームのラジオ波非放射時超音波画像を前記表示部8に表示させる」処理を行っていることから、引用発明1における「画像処理部7」の「CPU71」は、本願補正発明1における「検出部による」「特異な変化の検出に応じて、表示部に表示されている」「超音波画像と実質的に同じ位置の医用画像を含む参照画像を」「表示部に表示する制御部」に相当する。
(コ)引用発明1における「キーボードやポインティングデバイス及びその他の操作具を備えており、操作者によって操作され、前記制御部9に適宜の指令や情報を入力するようになって」いる「操作部10」は、本願補正発明1における「設定手段」に相当する。

すると、本願補正発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「超音波プローブからの出力に基づいて、超音波画像を生成する画像生成部と、
前記超音波プローブからの出力の時間方向における特異な変化を検出する検出部と、
前記検出部による前記特異な変化の検出に応じて、表示部に表示されている前記超音波画像と実質的に同じ位置の医用画像を含む参照画像を前記表示部に表示する制御部と、
設定手段と
を具備する超音波診断装置。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
画像生成部で生成する超音波画像が、本願補正発明1では「ラジオ波を発生させる穿刺針を含む超音波画像」であるのに対し、引用発明1では「Bモード画像」である「超音波画像」がラジオ波を発生させる穿刺針を含む超音波画像であるか明示がない点。

<相違点2>
設定手段が、本願補正発明1は「前記参照画像の種別、または、前記超音波画像および前記参照画像を前記表示部に表示する際のレイアウト、を設定する」ものであるのに対し、引用発明1では「設定手段」に相当する「操作部10」が、参照画像の種別、または、超音波画像および参照画像を表示部に表示する際のレイアウト、を設定するためものであるか不明な点。

エ 判断
(ア)相違点1について
a 引用発明1は「リアルタイムでの超音波画像を見ながら穿刺針を被検体に刺入し、穿刺針からラジオ波を放射して腫瘍などの焼灼治療を行うラジオ波を用いた焼灼治療が可能な超音波診断治療装置」であり、「前記超音波探触子3には、ラジオ波を放射する穿刺針が、穿刺アダプタを介して取り付けられて」いることから、リアルタイムで観測する超音波画像であるBモード画像には、被検体に刺入されたラジオ波を放射する穿刺針が映っていることは、明示がなくても当業者にとって常識的事項である。

b また、本願出願前に公知である引用発明3においても「被検体の治療対象部位にラジオ波穿刺針を刺入しつつ診断を行うための超音波診断装置において、穿刺針をBモード画像として映像化することができる」ことが開示されており、上記常識的事項を裏付けている。

c 以上のことから、引用発明1においても、ラジオ波を発生させる穿刺針を含むBモード画像を生成することは、明示がなくても当業者にとって明らかであるから、前記「ウ」で記載した相違点1は、実質的な相違点でない。また、たとえ相違点であったとしても、引用発明1においてラジオ波を発生させる穿刺針を含むBモード画像を生成することは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
a 引用発明2では「操作入力部201は、診断開始を指示するコマンド、被検体の個人情報等のデータ、及び、超音波画像を表示部207に表示するための各種パラメーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部208に出力するものであり、制御部208は、例えば、表示レイアウトパターンから、操作入力部201による操作に従って選択することにより、2枚の超音波画像を表示部に同時表示する表示レイアウトパターンを予め設定することができる」ことから、引用発明2における「操作入力部201」は、本願補正発明1における「超音波画像および」「参照画像を」「表示部に表示する際のレイアウト、を設定するための設定手段」に相当する。

b ここで、引用発明1と引用発明2は「超音波画像診断」を行う「装置」という共通の技術分野に属するものであるから、引用発明1の操作部10に、前記「a」で述べた引用発明2の技術を採用することにより、引用発明1の「操作部10」を、「ラジオ波放射時超音波画像」及び「当該画像より以前のフレームのラジオ波非放射時超音波画像」を「表示部8」に表示させる際の表示レイアウトパターンを設定するために用い、前記相違点2に係る構成とすることは、当業者ならば容易になし得たことである。

(ウ)本願補正発明1の効果について
本願補正発明1の効果は、引用発明1ないし2から当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

オ 小括
したがって、本願補正発明1は、引用発明1ないし2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

3 本願発明について
(1)本願発明1
令和2年2月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、令和元年9月17日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
超音波プローブからの出力に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、
外部装置又は前記超音波プローブからの出力の時間方向における特異な変化を検出する検出部と、
前記検出部による前記特異な変化の検出に応じて、表示部に表示されている前記超音波画像と実質的に同じ位置の医用画像を含む参照画像を前記表示部に表示する制御部と、
前記参照画像の種別、または、前記超音波画像および前記参照画像を前記表示部に表示する際のレイアウト、を設定するための設定手段と
を具備する超音波診断装置。」

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし21に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2009-136552号公報
引用文献2:特開2008-279272号公報
引用文献3:特開2013-5876号公報
引用文献4:特開2002-177272号公報
引用文献5:特開2013-252345号公報
引用文献6:特開2014-8256号公報

(3)引用された刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物に記載された発明並びにその記載事項は、引用文献1は前記「2(3)イ(ア)」に記載した「引用例1」であり、引用文献5は、前記「2(3)イ(イ)」に記載した「引用例2」であるから、引用文献1及び引用文献5に記載された発明並びにその記載事項については、前記「2(3)イ」に記載したとおりである。

(4)対比・判断
本願発明1は、前記「2(3)」で検討した本願補正発明1から、「画像生成部」を「超音波プローブからの出力に基づいて、ラジオ波を発生させる穿刺針を含む超音波画像を生成する画像生成部」から「超音波プローブからの出力に基づいて超音波画像を生成する画像生成部」に拡張した構成としたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2(3)」に記載したとおり、引用発明1ないし2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明1ないし2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 令和2年5月25日付け上申書に記載された補正案について
請求人は、令和2年5月25日付け上申書において、さらなる補正を行う用意があることを述べている。
その用意されたさらなる補正について、請求項12ないし20のいずれか、あるいはこれらのうち複数の請求項に係わる限定を請求項1にさらに付加する補正をする用意があることを例として挙げ、特に請求項19に係る発明の構成は当業者にとって容易に想到できるものでもない旨主張している。
よって、本件補正後の請求項12ないし20に係る発明(以下「本願補正発明12ないし20」という。)が特許を受けることができるかについて検討する。

(1)本願補正発明12について
ラジオ波放射信号の入力をもとに超音波画像の表示切り替えの制御を行う技術は、拒絶査定で引用された引用文献1に開示されている(段落[0081]-[0090]参照。)ように周知である。

(2)本願補正発明13について
既存の異常データとパターンマッチングを行い、類似度が高い場合に異常を発見する技術は、本願出願前に公知である特開2014-87640号公報に開示されている(段落[0075]参照。)ように周知である。

(3)本願補正発明14について
超音波診断装置において、電気メス等に起因する電磁ノイズ成分を抽出し、所定の閾値との比較による閾値処理でノイズの発生を検知する技術は、本願出願前に公知である特開2009-261441号公報に開示されている(段落[0024]-[0028]参照。)ように周知である。

(4)本願補正発明15について
超音波断層画像と、他のモダリティによって取得されたボリュームデータとの位置合わせを行い同一断面を表示する技術は、拒絶査定で引用された引用文献6(特開2014-8256号公報)に開示されている(段落[0003]参照。)ように周知である。

(5)本願補正発明16について
参照画像として、シネメモリに格納された過去の超音波断層像を複数読み出して動画として再生する技術は、拒絶査定で引用された引用文献2(特開2008-279272号公報)に開示されている(段落[0029]参照。)ように周知である。

(6)本願補正発明17について
参照画像として表示する動画像の長さをどのようなものと設定するかは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。

(7)本願補正発明18について
超音波画像の一部領域の輝度変化でラジオ波によるノイズの発生を検知する技術は、引用例1に開示されている(前記「2(3)イ(ア)i」参照。)ように周知である。

(8)本願補正発明19について
超音波診断装置において、電気メス等に起因する電磁ノイズの発生を測定された心電信号を所定の閾値と比較することによる閾値処理で検知する技術は、本願出願前に公知である特開2009-261441号公報に開示されている(段落[0024]-[0028]参照。)ように周知である。

(9)本願補正発明20について
心電図波形を高速フーリエ変換してスペクトル解析を行う技術は、本願出願前に公知である特開平8-86819号公報に開示されている(段落[0017]-[0018]参照。)ように周知である。

(10)小括
前記「(1)」ないし「(9)」より、本願補正発明12ないし20において付加された発明特定事項については、本願出願前に周知技術であることが示された。
したがって、本願補正発明12ないし20に係る発明は、拒絶査定時の引用文献1ないし6に記載された発明及び周知技術と、特開2014-87640号公報と特開2009-261441号公報と特開平8-86819号公報とに記載された周知技術から、当業者ならば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
以上のことから、本願補正発明12ないし20は、特許を受けることができる発明とは認められない。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1ないし2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-07-20 
結審通知日 2020-07-21 
審決日 2020-08-03 
出願番号 特願2015-211129(P2015-211129)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
伊藤 幸仙
発明の名称 超音波診断装置およびプログラム  
代理人 野河 信久  
代理人 井上 正  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  

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