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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1366401
審判番号 不服2018-7817  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-06 
確定日 2020-09-15 
事件の表示 特願2016-552258「デバイス間同期のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日国際公開、WO2015/066524、平成29年 1月12日国内公表、特表2017-501648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014(平成26年)年10月31日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年10月31日 米国,2014年10月31日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成28年 6月10日 手続補正書の提出
平成29年 5月26日付け 拒絶理由通知書
平成29年 9月 4日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年 1月31日付け 拒絶査定
平成30年 6月 6日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
令和 元年 9月10日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和 元年12月16日 意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成30年6月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものと認める。

「基地局により,第1のデバイス間同期信号(D2DSS)を送信するために,前記基地局に対して無線リソース制御接続(RRC_CONNECTED)状態にある第1のユーザ機器(UE)のための,時間リソース,周波数リソース,または時間および周波数リソースを含む同期リソースを構成するステップと,
前記基地局により,前記第1のUEに,前記構成に従って前記第1のD2DSSを送信するよう命令するステップと
を有し,
前記構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ,
前記同期リソースは,前記基地局によって選択され,
前記第1のUEを構成する前記ステップおよび前記第1のUEに送信するよう命令する前記ステップは,各々,前記基地局から送信される予め決定されたシグナリングを用いて実行される,方法。」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は,「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものを含むものであり,請求項1に対して下記の引用例1-3が引用されている。

引用例1 Ericsson, Realization of D2Dbroadcast communication, 3GPP TSG-RAN WG2#83bis R2-133300, 2013.09.28掲載
引用例2 ZTE, Discussion on Synchronizationfor Discovery, 3GPP TSG-RAN WG1#78, R1-143143, 2014.08.10掲載
引用例3 LG Electronics, Details of Conditionsfor D2DSS Transmissions, 3GPP TSG RAN WG1 #78bis R1-144016, 2014.09.27掲載

第4 優先権について
本願は,米国特許出願61/898194(2013年10月31日)(以下「優先基礎出願1」という。),及び,米国特許出願14/530269(2014年10月31日)(以下「優先基礎出願2」という。)を基礎としてパリ条約による優先権が主張されている。

ここで,本願発明の「前記構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ」との発明特定事項に関し,優先基礎出願2には,[0084]に下記の記載がある。

「In an embodiment, in block 602, base station configures a UE that is in radio resource control connected(RRC_CONNECTED) state with the base station to be a synchronization source to transmit a device-to-device synchronization signal(D2DSS), by an RRC signaling transmitted by the base station. In block 604, base station configures, by an RRC signaling transmitted by the base station, a synchronization resource for the UE, with the synchronization resource comprising a time resource, a frequency resource or a time and frequency resource on the uplink for transmission of D2DSS by the UE. In an embodiment, the base station configures the UE by RRC dedicated siganaling. For example, 2 states of one bit may be used to indicate to the UE to start transmitting the D2DSS or to stop transmitting D2DSS.」
(当審仮訳:
一つの実施例では,ブロック602において,基地局は装置間同期シグナル (D2DSS) を伝送するための同期ソースとなる基地局と無線リソース制御接続 (RRC_CONNECTED) 状態となるUEを基地局によって RRC シグナリング送信により構成する。ブロック604において,基地局は,基地局によって送信される RRC シグナリングによって,UE による D2DSS の送信のためのアップリンク上の時間リソース,周波数リソース,又は,時間周波数リソースを含む UEのための同期リソースを構成する。一つの実施例では,基地局は RRC 専用シグナリングにより UE を構成する。例えば,1つのビットの2つの状態が,D2DSS 送信の開始,又は,D2DSS 送信の停止をUEに示すために用いられるであろう。)

よって,優先基礎出願2には,基地局が RRC シグナリングにより,UE のための同期リソースを構成すること,及び,RRC 専用シグナリングを用いて,D2DSS 送信の開始を UE に示すこと(命令すること)が記載されているといえる。これより,同期リソースの「構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ」ることが示唆されていると認められる。

一方,優先基礎出願1には,前記発明特定事項における「構成」及び「命令」に関連する記載として下記の記載が認められる。

[0026](同番号の段落が2つあるが,後の方。以下同様。)
「If none is detected, the UE sends a synchronization signal if it is out-of-coverage, or requests to be a clusterhead if it is in-coverage and then sends a synchronization signal as instructed by the eNB.」
(当審仮訳:
何も検出されなかった場合,UE は,カバレッジ外ならば同期信号を送信し,又は,UE がカバレッジ内ならばクラスタヘッドとなることを要求し,その後,eNB の指示に従い同期信号を送信する。),

[0027]
「 Figure 2 illustrates a flow diagram for an eNB to respond to a UE cluster head request, and Figure 3 illustrates a flowdiagram for an eNB to configure a cluster head and synchronization signal. The eNB configuration message may include the transmit power of the synchronization signal, which is set by the eNB to manage interference and the cluster coverage. It also may include the resource for the synchronization signal,including frequency, periodicity, etc.」
(当審仮訳:
図2は eNB が UE のクラスタヘッド要求へ返答するための流れ図を図解し,図3は eNB がクラスタヘッドと同期信号を構成するための流れ図を図解する。eNB の構成メッセージは同期信号の伝送電力を含むであろう,伝送電力は干渉とクラスタカバレッジを調整するために eNB により設定される。構成メッセージは周波数,周期,その外を含む同期信号のリソースを含むであろう。)

しかしながら,前記摘記した記載及び他の記載を参酌しても,優先基礎出願1には前記発明特定事項の「前記構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ」に対応する事項は記載されておらず,示唆もされていない。

よって,当該事項に関して,優先基礎出願1に基づく優先権主張の効果は認められず,新規性及び進歩性の判断の基準日は優先基礎出願2の2014年10月31日と認められる。

第5 引用発明,及び,周知技術
1 引用例1
当審拒絶理由で引用された Ericsson, Realization of D2D broadcast communication(当審仮訳:D2Dブロードキャスト通信の実現), 3GPP TSG-RAN WG2#83bis R2-133300, 2013.09.28掲載, URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_83bis/Docs/R2-133300.zip(以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

「3.2 Out of Coverage
(中略)
To keep the UEs synchronized during the user data transmission, the transmitting UE could transmit the synchronization signals periodically.」(第3/6ページ第12行-第23行)
(当審仮訳:
「3.2 カバレッジ外
(中略)
ユーザデータ送信の間に UE が同期していることを維持するために,送信 UE は周期的に同期信号を送信することができるだろう。」

「3.3.2 Communication from a UE in coverage
In this case UE-B will initiate the D2D broadcast communication occasion. UE-B is in coverage and can therefore not use resources in the D2D resource pool without being granted by the eNB. Thus, in order to make a transmission to UE-A, UE-B must first request which resources to use. Similar to the out of coverage scenario, the eNB would allocate known resources out of the D2D resource pool for UE-B to use for the synchronization step and scheduling assignment step. As the user data transmission may be performed on any resources in the D2D resource pool, the eNB may select any suitable resource for this step. After being granted resources out of the D2D resource pool, UE-B initiates the D2D broadcast communication occasion.

Requesting resources from the eNB may add to the delay. If all resources in the D2D resource pool were contention based in this scenario it could result in a shorter delay. However, this would mean that the eNB would potentially need to reserve the resources in the D2D resource pool for a longer time period, leading to an inefficient resource usage. Furthermore, if the resources were contention based, collisions would occur as the traffic increases, thus impacting capacity. It is likely that the eNB would be able to achieve a higher capacity in a non-contention based scheme. Which solution is the best one depends on several factors, the size ofthe D2D resource pool, the required capacity, and the required delay to name a few. We think the possibility for increased capacity speaks in favour of a non-contention based scheme.

UE-A, being out of coverage, is configured to monitor a known subset of the resources in the D2D resource pool to perform the synchronization step. This is similar to the out of coverage scenario.

Proposal 10 A UE in coverage performs the synchronization step and scheduling assignment step on the resources in the D2D resource pool granted by the eNB. 」(第5/6ページ第1行-第20行)
(当審仮訳:
3.3.2 カバレッジ内の UE からの通信
この場合 UE-B が D2D ブロードキャスト通信の機会を開始するであろう。UE-Bはカバレッジ内であり,それゆえ eNB によってグラントされることなしに D2D リソースプール内のリソースを使うことができない。従って,UE-A に伝送を行うために,UE-B はまず使用するリソースを要求しなければならない。カバレッジ外のシナリオと類似して,eNB は UE-B が同期化ステップとスケジューリング割当ステップのために使用する既知のリソースを D2D リソースプールから割り当てるであろう。ユーザデータ伝送が D2D リソースプール内の任意のリソースにおいて行なわれるかもしれないから,eNB はこのステップのために任意の適切なリソースを選ぶかもしれない。D2D リソースプールからリソースがグラントされた後,UE-B は D2D ブロードキャスト通信の機会を開始する。

eNB からリソースを要求することは遅延を付加することになるかも知れない。もし D2D リソースプールのすべてのリソースがこのシナリオにおいてコンテンション・ベースであるならば,それはより短い遅延をもたらすことができる。しかしながら,これは eNB が潜在的に,D2D リソースプールにおいてより長い期間リソースを確保する必要があるであろうこと,非能率的なリソース使用を誘発すること,を意味するであろう。さらに,もしリソースがコンテンション・ベースであったなら,トラフィックが増加するにつれ衝突が生じ,従って,容量に影響を与えるであろう。eNB が非コンテンション・ベースの案でより高い容量を達成することが可能であるであろうことはありうる。どの解決策が最も良いものであるかは,幾つかの要因,例を挙げれば,D2D リソースプールのサイズ,必要とされる容量,及び,必要とされる遅延のサイズ,に依存する。我々は容量の増加の可能性が非コンテンション・ベースの案が好ましいことを物語ると考える。

カバレッジ外の UE-A は,同期化ステップを行なうために D2D リソースプールで既知のリソースのサブセットを監視するように構成される。これはカバレッジ外のシナリオに類似する。

提案10 カバレッジ内の UE は eNB によってグラントされた D2D リソースプール内のリソース上で同期化ステップとスケジューリング割当ステップを実行する。)

「3.4 In coverage
(中略)
We think that RRC states only apply for UEs in coverage. ProSe-enabled UEs in RRC_IDLE can receive and decode D2D broadcast communication occasions from another UE. This increases the possibility for a UE in coverage to receive the D2D broadcast communication occasion from a UE out of coverage. However, a UE within coverage must be RRC_CONNECTED when it transmits data even for D2D broadcast communication to a UE out of coverage.The reason is that the described procedure in section 3.3.2 requires the UE to first request resources from the eNB. 」(第5/6ページ第21行-第33行)
(当審仮訳:
3.4 カバレッジ内
我々は RRC 状態はカバレッジ内の UE のみに用いると考える。RRC_IDLE の ProSe が利用できる UE は他の UE から D2D ブロードキャスト通信の機会を受信しデコードできる。これはカバレッジ内の UE がカバレッジ外の UE から D2D ブロードキャスト通信の機会を受け取る可能性を増大させる。しかしながら,カバレッジ内の UE がカバレッジ外の UE への D2D ブロードキャスト通信でデータを送信する場合でさえ,カバレッジ内の UE は RRC_CONNECTED であるはずである。これは3.3.2で説明した手続が UE に最初にリソースを eNB から要求することを必要とするからである。)


Figure 1: An example flow chart with D2D broadcast transmitter and receiver procedures. In this case, UE-A is out of coverage, and UE-B is in coverage.
(当審仮訳:
図1: D2D ブロードキャスト送信機受信機の処理のフローチャートの例。この場合 UE-A はカバレッジ外,UE-B はカバレッジ内。)

引用例1の,「カバレッジ外のシナリオと類似して,eNB は UE-B が同期化ステップとスケジューリング割当ステップのために使用する既知のリソースを D2D リソースプールから割り当てるであろう。」との記載から,eNB は UE-B に同期化ステップのためのリソースを割り当てると認められる。
また,「D2D リソースプールからリソースがグラントされた後,UE-Bは D2D ブロードキャスト通信の機会を開始する。」との記載から,「UE-Bは,前記リソースがグラントされた後,UE-Bは D2D ブロードキャスト通信の機会を開始する」ものと認められる。
次に,「しかしながら,それがカバレッジ外の UE への D2D ブロードキャスト通信でデータを送信する場合でさえ,カバレッジ内の UE は RRC_CONNECTED であるはずである。これは3.3.2で説明した手続が最初にリソースを eNB から要求することを必要とするからである。」との記載から明らかなように,カバレッジ内の UE である UE-B は RRC_CONNECTED であると認められる。
また,「ユーザデータ送信の間UEが同期していることを維持するために,送信 UE は周期的に同期信号を送信することができるだろう。」との記載及び図1より,送信 UE である UE-B が eNB より送信リソースが割当られた後に,(周期的な)D2D のための同期信号を送信していること,D2D のための同期信号の送信は,同期化ステップに含まれることが見てとれる。
以上より,引用例1には,「eNB は RRC_CONNECTED である UE-B にD2Dのための同期信号の送信を含む同期化ステップのためのリソースを割り当て」ることが記載されていると認められる。

してみれば,引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「eNB は RRC_CONNECTED である UE-B に D2D のための同期信号の送信を含む同期化ステップのためのリソースを割り当て,
UE-B は,前記リソースがグラントされた後,UE-Bは D2D ブロードキャスト通信の機会を開始する,
方法。」

2 引用例2
当審拒絶理由で引用された ZTE, Discussion on Synchronization for Discovery(当審仮訳:ディスカバリのための同期についての議論), 3GPP TSG-RAN WG1#78, R1-143143, 2014.08.10掲載, URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_78/Docs/R1-143143.zip(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

「4. Type 2B Discovery
For Type 2B discovery UEs that are RRC connected, it is feasible to indicate UEs whether to transmit D2DSS using dedicated RRC signaling. In this way, eNB can instruct discovery UEs to transmit D2DSS in UE-specific manner and low UE power consumption and effective interference coordination can be achieved. 」(第2ページ第15行-第3ページ第3行)
(当審仮訳:
4. タイプ 2B ディスカバリ
RRC connectedであるタイプ 2B ディスカバリ UE のために,専用 RRC シグナリングを用いて D2DSS 送信を行うか否かを指示することは,実現できそうである。この方法では,eNB はディスカバリ UE に UE 特有の方法で D2DSS を送信することを指示することができ,低い UE 電力消費と効果的な干渉調整が達成できる。)

これより,引用例2には「eNB が D2DSS を送信することを UE に対し専用 RRC シグナリングで指示する。」ことが記載されていると認められる。

3 引用例3
当審拒絶理由で引用された LG Electronics, Details of Conditions forD2DSS Transmissions(当審仮訳:D2DSS送信のための条件の詳細), 3GPP TSG RAN WG1 #78bis R1-144016, 2014.09.27掲載,URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_78b/Docs/R1-144016.zip(以下「引用例3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

「2. Conditions for D2DSS Transmissions
2.1. UEs inside network coverage
For UEs inside network coverage, conditions for D2DSS transmissions are basically defined from eNB signaling. In the agreement in RAN1#77, both SIB and dedicated RRC signaling can be used to configure D2DSS sequences to be used for transmissions. In addition, the agreement is saying that eNB can instruct a UE to transmit D2DSS for Type 2B discovery, and it is our understanding that this instruction should use dedicated signaling because of the UE-specific nature of Type 2B discovery. From these agreements, it can be claimed that eNB caninstruct D2DSS transmission (with the D2DSS sequence to use) using both SIB and dedicated signaling. Furthermore, it will be straightforward to extend this signaling to encompass all the D2D operations including D2D communications.

When a UE receives dedicated signaling instructing D2DSS transmissions,it shall transmit D2DSS accordingly regardless of any other D2DSS-related signaling it can receive via SIB. We note that this instruction can be implicit, for example, a UE transmits D2DSS if it receives signaling for D2DSS sequences and D2DSS resources via dedicated signaling.

When a UE receives SIB instructing D2D transmissions, all the SIB-receiving UEs may transmit D2DSS which may be unnecessarily excessive in some cases. So, an additional condition can be considered to avoid such cases. To be specific, RSRP from the serving cell can be used such that only the UEs having RSRP lower than a network-configured threshold transmit D2DSS. The main motivation of this is to stop D2DSS transmissions from UEs close to the eNB whose D2DSS transmission are not much useful for the UEs in the neighboring cells or outside network coverage.

Proposal 1: Both dedicated signaling and SIB can be used for eNB to instruct D2DSS transmissions.

(第2ページ第8行-第28行)
(当審仮訳:
2. D2DSS 送信のための条件
2.1. ネットワークカバレッジ内の UE
ネットワークカバレッジ内の UE のために,DSS送信のための条件は基本的に eNB シグナリングから定義されている。 RAN1 #77 での合意において,SIB と専用の RRC シグナリングの両方が,送信のために使われる D2DSS シーケンスを構成するために使われることができる。さらに,合意は eNB が UE にタイプ 2B ディスカバリのために D2DSS を送信するよう指示することができると言及している,そしてこの指示がタイプ 2B ディスカバリの UE 特有の性質のために専用シグナリングを使うべきであるということが我々の理解である。これらの合意から,eNB が SIB と専用のシグナリングの両方を使って(使うべき D2DSS のシーケンスで) D2DSS 送信を指示することができることが主張されることができる。さらに,D2D コミュニケーションを含めてすべての D2D オペレーションを包含するようにこのシグナリングを拡張することは簡単であろう。

UE が D2DSS 送信を指示する専用シグナリングを受信するとき,SIB を介して受信できる 他のいかなる D2DSS 関連のシグナリングを考慮せず D2DSS を送信するだろう。我々はこの指示が暗黙的であり得ることを指摘する,例えば,もし UE が専用シグナリングを介して D2DSS シーケンスと D2DSS リソースのためのシグナリングを受信する場合,その UE が D2DSS を送信する。

UE が D2D 送信を指示する SIB を受信するとき,すべての SIB を受信する UE は,ある場合において不必要に過度であるかもしれない D2DSS を送信するかもしれない。 それ故,このような場合を避けるために追加的な条件が考慮されることができる。 具体的には,サービングセルからの RSRP は,ネットワークが構成した DSDSS 送信閾値より低い RSRP を有する UE のみが使用することができる。このことの主な動機づけは,近隣セル又はネットワークカバレッジの外の UE にとって著しく益のない,eNB に近接した UE からのD2DSS 伝送を止めることにある。

提案1:専用のシグナリングと SIB の両方が eNB が D2DSS 送信を指示するために使われることができる。)

これより,引用例3には,「UE が D2DSS 伝送を指示する専用シグナリングを受信し,D2DSS を送信すること,及び,当該指示が暗黙的であり得ること,すなわち,D2DSS シーケンスとD2DSS リソースのための専用シグナリングを受信する場合,その UE が D2DSS を送信する。」ことが記載されていると認められる。

したがって,引用例2及び3の記載から,「専用シグナリングを用いて eNB が D2DSS を送信することを指示(命令)する。」ことは,周知技術であると認められる。

第6 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1
引用発明の「eNB」,「UE-B」は,それぞれ,本願発明の「基地局」,「第1のユーザ機器(UE)」に相当する。
引用発明の「D2Dのための同期信号の送信」は本願発明の「第1のデバイス間同期信号(D2DSS)を送信」に相当する。
引用発明の「D2D のための同期信号の送信を含む同期化ステップのためのリソース」は本願発明の「同期リソース」に相当する。
また,引用発明の「eNB は RRC_CONNECTED である UE-B に D2D のための同期信号の送信を含む同期化ステップのためのリソースを割り当て」との発明特定事項に関し,eNB は UE-B にリソースを割り当てるものであるから,eNB は前記リソースを構成するものといえる。
してみれば,本願発明の「基地局により,第1のデバイス間同期信号(D2DSS)を送信するために,前記基地局に対して無線リソース制御接続(RRC_CONNECTED)状態にある第1のユーザ機器(UE)のための,時間リソース,周波数リソース,または時間および周波数リソースを含む同期リソースを構成するステップ」との事項と,引用発明の「eNB は RRC_CONNECTED である UE-B に D2D のための同期信号の送信を含む同期化ステップのためのリソースを割り当て」とでは,「基地局により,第1のデバイス間同期信号(D2DSS)を送信するために,前記基地局に対して無線リソース制御接続(RRC_CONNECTED)状態にある第1のユーザ機器(UE)のための,同期リソースを構成するステップ」を有する点,及び,「前記同期リソースは,前記基地局によって選択され」との点で共通する。

2
引用発明では「UE-B は,前記リソースがグラントされた後,UE-Bは D2D ブロードキャスト通信の機会を開始する」ことから,前記「グラント」は,UE-B にとって,D2DSS を送信するための命令ともいえる。してみれば,引用発明の当該事項は,本願発明の「前記基地局により,前記第1のUEに,前記構成に従って前記第1のD2DSSを送信するよう命令するステップ」に相当する。

3
よって,本願発明と引用発明とでは,
「基地局により,第1のデバイス間同期信号(D2DSS)を送信するために,前記基地局に対して無線リソース制御接続(RRC_CONNECTED)状態にある第1のユーザ機器(UE)のための,同期リソースを構成するステップと,
前記基地局により,前記第1のUEに,前記構成に従って前記第1のD2DSSを送信するよう命令するステップと
を有し,
前記同期リソースは,前記基地局によって選択される,
方法。」
との点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明の「同期リソース」は,「時間リソース,周波数リソース,または時間および周波数リソースを含む」ものであるのに対し,引用発明においては,当該事項の特定がない点。

(相違点2)
本願発明は「前記構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ」,「前記第1のUEを構成する前記ステップおよび前記第1のUEに送信するよう命令する前記ステップは,各々,前記基地局から送信される予め決定されたシグナリングを用いて実行される」ものであるのに対し,引用発明は「前記構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ」るものではなく,「前記第1のUEを構成する前記ステップおよび前記第1のUEに送信するよう命令する前記ステップは,各々,前記基地局から送信される予め決定されたシグナリングを用いて実行される」との事項の特定がない点。

第7 判断
前記相違点について検討する。

(相違点1について)
デバイス間同期信号のリソースとして,具体的にどのようなリソースを含むものとするかは,周知のデバイス間通信のリソースが適宜適用可能であるところ,「時間リソース」,「周波数リソース」,「時間および周波数リソース」は何れも周知のデバイス間通信のリソースである。してみれば,デバイス間同期リソースとして,「時間リソース,周波数リソース,または時間および周波数リソースを含む」ことは,当業者が容易に想到することができた事項である。

(相違点2について)
前記「第5」で検討したとおり,「専用シグナリングを用いて eNB が D2DSS を送信することを指示(命令)する。」ことは周知技術と認められる。そして,専用シグナリングは,予め命令のためのものとして eNB と UE 間で決定されなければ,命令として機能し得ないことは明らかであるから,「予め決定されたシグナリング」と言える。してみれば,引用発明において,eNB から UE-B への命令を「予め決定されたシグナリングを用いて実行される」ものとすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
次に,eNB が UE に対し情報の送信を命令するためには,当該送信に先立って当該送信に用いるリソースを構成しなければならないことは,技術的に自明であり,また,リソースの構成と当該リソースを用いた通信の命令をそれぞれ別のシグナリングで行うことは,常套手段であるから,D2DSS リソースの構成のためのシグナリングを D2DSS リソースのための専用シグナリングとは別にシグナリングされるものとすることは,当業者が容易になし得た事項である。
以上を総合すれば,引用発明において,「前記構成は,前記命令とは独立してシグナリングされ」,「前記第1のUEを構成する前記ステップおよび前記第1のUEに送信するよう命令する前記ステップは,各々,前記基地局から送信される予め決定されたシグナリングを用いて実行される」ようにすることは,当業者が容易に想到することができた事項である。

よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-04-01 
結審通知日 2020-04-06 
審決日 2020-04-22 
出願番号 特願2016-552258(P2016-552258)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 岩間 直純
本郷 彰
発明の名称 デバイス間同期のためのシステムおよび方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  

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