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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1366419
審判番号 不服2019-9784  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-24 
確定日 2020-10-08 
事件の表示 特願2018-189591「ワイヤハーネスの製造支援装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月23日出願公開、特開2019- 79793、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成29年11月21日(優先権主張 平成29年10月24日(以下,「原出願の優先日」という。))の出願である特願2017-223233号の一部を平成30年6月12日に新たな特許出願とした,特願2018-111498号の一部を平成30年10月5日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月 5日 :上申書の提出
平成30年12月27日付け :拒絶理由の通知
平成31年 3月 8日 :意見書,手続補正書の提出
平成31年 4月22日付け :拒絶査定(原査定)
令和 元年 7月24日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 2年 6月 4日付け :拒絶理由の通知(当審)
令和 2年 6月19日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,令和2年6月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ワイヤハーネスを製造する際に,前記ワイヤハーネスを構成する電線が配置される表示部を備え,
前記表示部は,前記ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を実寸大で表示し,前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の許容範囲であるプラス公差位置およびマイナス公差位置を表す公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示する,
ワイヤハーネスの製造支援装置。」

なお,本願発明2-4の概要は以下のとおりである。

本願発明2-4は,本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2016-206871号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同様。)

A 「【0013】
このワイヤーハーネス設計装置1は,CPU(Central Processing Unit)等によって構成され,ワイヤーハーネス設計装置1の各部を制御する制御部2と,各種の情報を記憶する記憶部3と,キーボード,マウス,ディスクドライブ等で実現される入力部4と,液晶ディスプレイ等で実現される表示部5と,プリンタ等の外部装置と通信を行う通信部6とを備える。
【0014】
記憶部3は,ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),ハードディスク等から構成され,CPUのプログラム30,3次元CADデータ31,ハーネス情報32,部品情報33,ルート情報35,ハーネスボード図36,電線ライブラリ34等を記憶する。」

B 「【0019】
ハーネスボード図36は,ワイヤーハーネスを構成する電線の布線位置を実際の寸法で直線化した布線指示線で表したものである。なお,ハーネスボード図36には,布線指示線の他に,ワイヤーハーネスを構成する電線の型式,電線長,コネクタの型式等が各布線指示線36aに対応して記載されていてもよい。
【0020】
制御部2のCPUは,プログラム30に従って動作することにより,受付手段20,電線選択手段23,表示手段21,決定手段22,変換手段24等として機能する。なお,制御部2の各手段20?24は,全部又は一部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウエアによって実現されてもよい。
…(中略)…
【0022】
表示手段21は,3次元CADデータに基づいて,ワイヤーハーネスを除いた部品の立体画像を表示部5の画面に表示する。」

C 「【0036】
次に,表示手段21は,図4に示すように,電線選択手段23が選択した電線の候補を示す画面21aを表示部5に表示する。画面21aは,ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示210,212と,当該ルート及び条件を満たす電線の候補を示す表示211,213とを有する。表示210のうち条件の耐油性の○印は,耐油性が○印以上であることが条件であることを意味している。表示212のうち条件の屈曲性の◎印は,屈曲性が◎であることが条件であることを意味している。表示211,213は,電線の候補が複数ある場合は図示するように選択用のラジオボタン214を設ける。
…(中略)…
【0038】
(4)ハーネスボード図の作成
変換手段24は,記憶部3に記憶されているハーネス情報32及びルート情報に基づいて,決定手段22によってルートが決定されたワイヤーハーネスを,布線指示線として2次元状に展開したハーネスボード図36に変換し,そのハーネスボード図36を記憶部3に記憶する。
【0039】
図5は,ハーネスボード図36の一例を示す図である。ハーネスボード図36には,ワイヤーハーネスを構成する電線の布線位置を実際の寸法で直線化した布線指示線36aと,使用される電線の情報36bとが示されている。
【0040】
制御部2は,入力部4のキーボード等の操作に基づいて,記憶部3に記憶されているハーネスボード図36を通信部6を介してプリンタにより用紙に印刷する。印刷されたハーネスボード図36は,木製のハーネスボードに貼り付けられ,ワイヤーハーネスの製作に供される。」

D 「【図5】



したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「CPU(Central Processing Unit)等によって構成され,ワイヤーハーネス設計装置1の各部を制御する制御部2と,各種の情報を記憶する記憶部3と,キーボード,マウス,ディスクドライブ等で実現される入力部4と,液晶ディスプレイ等で実現される表示部5と,プリンタ等の外部装置と通信を行う通信部6とを備え,
前記記憶部3は,ハーネスボード図36等を記憶し,前記ハーネスボード図36は,ワイヤーハーネスを構成する電線の布線位置を実際の寸法で直線化した布線指示線で表したものであり,布線指示線の他に,ワイヤーハーネスを構成する電線の型式,電線長,コネクタの型式等が各布線指示線36aに対応して記載されていてもよく,
前記表示部5は,前記制御部2の表示手段21の機能により,3次元CADデータに基づいて,ワイヤーハーネスを除いた部品の立体画像,ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示と,当該ルート及び条件を満たす電線などを画面に表示し,
前記制御部2は,入力部4のキーボード等の操作に基づいて,記憶部3に記憶されているハーネスボード図36を通信部6を介してプリンタにより用紙に印刷し,印刷されたハーネスボード図36は,木製のハーネスボードに貼り付けられ,ワイヤーハーネスの製作に供される,
ワイヤーハーネス設計装置1。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2003-22720号公報)には,次の事項が記載されている。

「【0015】
【発明の実施の形態】図1はこの発明の一の実施の形態に係るワイヤーハーネス組立作業台の設計方法を示すフローチャートである。
【0016】まず,図1中のステップS01に示した自動車メーカーまたは機器メーカー等の顧客先が,適用対象(自動車や電気機器等)の種別及び部位の単位に分割されたワイヤーハーネスの設計図面を出図する(ステップS02)。後の工程では,この種別や部位毎にワイヤーハーネスが設計されることになる。この設計図面には,電気回路,電線及び付属部品といった各種構成部品の仕様についての情報が含まれる。また,出図される設計図面の情報出力方式は,2次元座標または3次元座標の電子情報と,その電子情報に基づいて製図として印刷された図面とを含む。
【0017】次に,ステップS03において,ステップS02で得られた電子情報を,IHS(ワイヤーハーネス製造設計システム)と呼ばれるコンピュータ用ソフトウェアプログラムに適したデータ形式になるようにデータ変換する。
【0018】そして,ステップS04において,熟練者によってワイヤーハーネスの設計がコンピュータ上で行われ,原寸の製造設計図面(原寸図)が設計される(ステップS05)。この原寸図は,図9に示した組立作業台1上のワイヤーハーネス3に対応して模したものであり,例えば図2のような2次元座標上の図面として設計される。この原寸図には,組立作業台10の板面を想定した2次元空間上において,1本または複数本数の電線の集合体である回路11の情報,コネクタ及びアース端子等の端末の情報,クランプまたはクリップ,チューブ,テープ巻き及びプロテクター等の保護材または外装部品等の各種付属部品12の情報,及び製造に必要となる各種寸法と公差の情報が含まれており,また,図中の*印で示した各種の組立て補助治具(端末用,クランプ用,分岐用等,目的に応じて多数の治具が新規設計または選択される)13の情報が併せて含まれる。」

したがって,引用文献2には,
「ワイヤーハーネスを製造するための組立作業台に示す原寸図の情報に公差情報を含むようにすること」
という技術的事項が記載されている。

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明では,「ワイヤーハーネス設計装置1」の表示部5が,3次元CADデータに基づいて,ワイヤーハーネスを除いた部品の立体画像,ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示と,当該ルート及び条件を満たす電線などを画面に表示し,制御部2が,記憶部3に記憶されているハーネスボード図36を印刷し,ワイヤーハーネスの製作に供されることから,「ワイヤーハーネス設計装置1」が作業者によるワイヤハーネスの製造を支援しているといえる。
そうすると,引用発明の「ワイヤーハーネス設計装置1」は本願発明1の「ワイヤハーネスの製造支援装置」に対応するといえる。

イ 引用発明の「表示部」は「3次元CADデータに基づいて,ワイヤーハーネスを除いた部品の立体画像,ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示と,当該ルート及び条件を満たす電線などを画面に表示」することから,本願発明1の「表示部」に対応するといえる。
また,引用発明の「表示部」は,「ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示と,当該ルート及び条件を満たす電線などを画面に表示」するところ,それらは“ワイヤハーネスを構成する電線の情報”とみることができることから,“ワイヤハーネスを製造する際に,前記ワイヤハーネスを構成する電線の情報を表示する”といえる。
一方,本願発明1の「表示部」は作業者を支援するために,「ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報」や「公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示する」ところ,それらは“ワイヤハーネスを構成する電線の情報”とみることができることから,“ワイヤハーネスを製造する際に,前記ワイヤハーネスを構成する電線の情報を表示する”といえる。
そうすると,引用発明の「ワイヤーハーネス設計装置1」と本願発明1の「ワイヤハーネスの製造支援装置」とは,後記する点で相違するものの,
“ワイヤハーネスを製造する際に,前記ワイヤハーネスを構成する電線の情報を表示する表示部”
を備えている点で一致する。

ウ 引用発明の「表示部」は,「ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示と,当該ルート及び条件を満たす電線などを画面に表示」するところ,「ワイヤーハーネスに含まれる電線のルート」を示す情報は,ワイヤハーネスの長さ方向に関係することは明らかであり,“ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報”とみることができることから,“ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を表示する”といえる。
一方,本願発明1の「表示部」は,「ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を実寸大で表示」するところ,“ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を表示する”とみることができる。
そうすると,引用発明の「表示部」と本願発明1の「表示部」とは,後記する点で相違するものの,
“ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を表示する”点で一致する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「ワイヤハーネスを製造する際に,前記ワイヤハーネスを構成する電線の情報を表示する表示部を備え,
前記表示部は,前記ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を表示する,
ワイヤハーネスの製造支援装置。」

(相違点)
(相違点1)
ワイヤハーネスを構成する電線の配置に関し,本願発明1では,「表示部」に「ワイヤハーネスを製造する際に,前記ワイヤハーネスを構成する電線が配置される」のに対して,
引用発明では,印刷されたハーネスボード図36が木製のハーネスボードに貼り付けられ,ワイヤーハーネスの製作に供されるものの,表示部にワイヤハーネスを構成する電線が配置されることは特定されていない点。

(相違点2)
表示部が表示するワイヤハーネスの長さ方向に関する情報に関し,本願発明1は,「ワイヤハーネスの長さ方向に関する情報を実寸大で表示」するのに対して,
引用発明は,ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートを示す情報を表示するものの,実寸大で表示するかどうか不明である点。

(相違点3)
表示部が表示する情報に関し,本願発明1は,「電線の一方および他方の端部が配置される位置の許容範囲であるプラス公差位置およびマイナス公差位置を表す公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示する」のに対して,
引用発明は,公差ゲージを電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示することは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点3について
事案に鑑みて,上記相違点3を先に検討すると,引用発明では,「表示部」が「3次元CADデータに基づいて,ワイヤーハーネスを除いた部品の立体画像,ワイヤーハーネスに含まれる電線のルートや条件を示す表示と,当該ルート及び条件を満たす電線などを画面に表示」するところ,ワイヤハーネスを製造する際に,表示部にワイヤハーネスを構成する電線を配置するものではないから,公差ゲージを電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示する動機付けは認められない。
加えて,引用文献2には,「ワイヤーハーネスを製造するための組立作業台に示す原寸図の情報に公差情報を含むようにすること」という技術的事項が記載されており,原出願の優先日前にそのような技術的事項が周知技術であったといえるが,表示部に,ワイヤハーネスを構成する電線を配置し,電線の一方および他方の端部が配置される位置の許容範囲であるプラス公差位置およびマイナス公差位置を表す公差ゲージを表示すること,公差ゲージを電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示することが,原出願の優先日前に当該技術分野の周知技術であったとすることはできず,当業者が適宜に選択し得た設計的事項であるとすることもできない。
そうすると,引用発明において,表示部が,電線の一方および他方の端部が配置される位置の許容範囲であるプラス公差位置およびマイナス公差位置を表す公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示すること,すなわち,本願発明1の上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。

イ まとめ
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4は本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の「表示部」が「前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の許容範囲であるプラス公差位置およびマイナス公差位置を表す公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示する,」(以下,「相違点3に係る構成」という。)と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要および原査定についての判断
原査定は,請求項1-4について引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
しかしながら,令和2年6月19日付け手続補正により補正された請求項1-4は,それぞれ「相違点3に係る構成」と同一の構成を有するものとなっており,
上記のとおり,本願発明1-4は,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
(1)当審では,請求項1の「前記表示部は,・・・公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部にそれぞれ表示する,」について,「公差ゲージ」を「それぞれ表示する」「前記電線の一方および他方の端部」は,いかなる表示位置を特定しているのか不明瞭であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年6月19日付けの手続補正により,「前記表示部は,・・・公差ゲージを前記電線の一方および他方の端部が配置される位置の近傍にそれぞれ表示する,」と補正がなされた結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項1を引用する請求項2-4についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-4は,当業者が引用文献1-2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-09-16 
出願番号 特願2018-189591(P2018-189591)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
P 1 8・ 537- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保 正典  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 西出 隆二
辻本 泰隆
発明の名称 ワイヤハーネスの製造支援装置  
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